JPH08505041A - 糖タンパク上もしくは糖脂質上のまたは遊離分子としてのオリゴ糖構造体の合成に用いるための、およびこれらの構造体を決定するクローン化遺伝子配列を単離するための方法および産物 - Google Patents

糖タンパク上もしくは糖脂質上のまたは遊離分子としてのオリゴ糖構造体の合成に用いるための、およびこれらの構造体を決定するクローン化遺伝子配列を単離するための方法および産物

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JPH08505041A JP6504587A JP50458794A JPH08505041A JP H08505041 A JPH08505041 A JP H08505041A JP 6504587 A JP6504587 A JP 6504587A JP 50458794 A JP50458794 A JP 50458794A JP H08505041 A JPH08505041 A JP H08505041A
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Abstract

(57)【要約】 遺伝子を単離する方法であって、下記のステップを含む方法が開示されている。(i)関心の対象である翻訳後特性を有する細胞を単離し、ここにおいてこの翻訳後特性は、細胞の表面上における関心の対象である膜結合オリゴ糖や多糖の存在、該細胞の抽出物における関心の対象である可溶性オリゴ糖や多糖の存在、または該細胞の抽出物における特にグリコシルトランスフェラーゼ活性の存在であり;(ii)単離した細胞の遺伝子材料からcDNAまたはゲノムDNAの遺伝子ライブラリーを作製し;(iii)宿主細胞をこの遺伝子ライブラリーで形質転換し;さらに(iv)当該形質転換された宿主細胞をスクリーニングし、関心の対象である翻訳後特性を有する宿主細胞を見い出し、これによって前記の遺伝子を含む細胞を得る。この方法はグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を得るのに使用できる。

Description

【発明の詳細な説明】 糖タンパク上もしくは糖脂質上のまたは遊離分子としてのオリゴ糖構造体の合成 に用いるための、およびこれらの構造体を決定するクローン化遺伝子配列を単離 するための方法および産物 本発明は、1991年6月19日に提出された米国特許出願第07/7159 00号の一部継続出願である。この米国特許出願第07/715900号は19 90年12月12日に提出され現在放棄されている米国特許出願第07/627 621号の一部継続出願である。この米国特許出願第07/627621号は1 990年2月14日に提出され現在放棄されている米国特許出願第07/479 858号の一部継続出願である。技術分野 : 本発明は、糖タンパク上もしくは糖脂質上のまたは遊離分子としてのオリゴ糖 または多糖構造体を合成するための方法および産物に関する。背景技術 : 炭水化物は生物学的化合物として重要な地位を占めるものであり、その構造は 非常に多岐にわたっている。この多様性は無原則ではなく、むしろ正確に組織特 異性および発生に関する発現パターンを示し特定のオリゴ糖構造体の集合からな っている。細胞内において炭水化物はその構成成分として働き、細胞内の粘度を 調節し、エネルギーを蓄え、あるいは細胞表面における鍵成分としての役割を果 たしている。数多くの部位特異的細胞間作用に細胞表面の炭水化物が関与してい る。例えば精子と卵子の合体や受精卵の移植のどちらにも細胞表面の炭水化物が 介在している。また、細胞接着性分子(例えばGMP−140、内皮白血球接着 分子−1(ELAM−1)およびMe1−14のようなリンパ球接着分子など) として機能する多くのタンパク質はレクチンに類似した構造的特徴を示し、特定 の細胞表面炭水化物構造と結合することが現在知られている(フェイジ、Tre nds Biochem.Sci.(1991)16:84−86)。グリコシ ル化タンパクは腫瘍関連抗原として現在多くの癌腫の存在を同定するのに用いら れている。単離されたオリゴ糖もそれ自身生物学的活性を示すことが判明してい る。 ある特定のガラクトースオリゴ糖は、赤血球でウロパトゲン性のカルス形成バ クテリアの凝集を抑制することが知られている(米国特許第4521592号) 。別のオリゴ糖はプラスミノーゲンアクチベータのレベルを高めることにより、 強いアンチトロンビン活性を有することが示されている(米国特許第48015 83号)。これと同じ生物学的活性が、オリゴ糖の結合を通して、アミノ糖タン パクと共同して医療機器において抗凝固効果を発揮する医療的表面を提供するた めに用いられている(米国特許第4810784号)。また別のオリゴ糖はグラ ム陽性抗生物質あるいは消毒剤として有用であるとされている(米国特許第48 51338号および4665060号)。さらにオリゴ糖は特定のバクテリアの 同定と診断においてバクテリア受容体部位として用いられてきた(米国特許第4 657849および4762824号)。 また、オリゴ糖はタンパクや脂質と結合してこれらに影響を与えることがよく 知られている(ラデマチャーら、Ann.Rev.Biochem.、(198 8)57:785)。オリゴ糖の内の特定のものはタンパクの安定性、血流から の生体内クリアランス速度、タンパク分解速度、熱安定性および溶解性に影響を 与えることが示されている。細胞表面炭水化物のオリゴ糖成分における変化が癌 性化した細胞中で認められている。別のオリゴ糖の変化が細胞分化において検出 されている(トーンら、テトラヒドロン・レポート(1989)45(17): 5365−5422)。よって生物学的機能についてのオリゴ糖の意義は非常に 大きい。 分子生物学におけるこれらの物質の基本的役割によって、広範な研究が行われ 、特にこれらの物質を合成するための有機合成法に関し開発努力が傾注されてき た。炭水化物を調製する合成手法はかなり進歩しているが、その技法は利用可能 な合成過程において必要とされる選択的保護および脱保護に関し無視できない難 点を伴っている。これらの難点に加えて炭水化物の単離・精製および構造決定に 関する問題点があることから、従来合成有機化学の手法で経済的に価値ある炭水 化物を産することができなかった。 酵素を用いる触媒的合成は、水性溶液中の温和な条件のもとで、好ましくない 副産物をほとんど生成せずに経済的かつ非常に高収率で炭水化物(例えばオリゴ 糖および/または多糖)を産することができ、過去の古典的な有機合成に比べ驚 異的な利点をもたらした。そのような酵素の例としてはグリコシルトランスフェ ラーゼなどが挙げられるが、これらのタンパクは低濃度でしか存在せず膜に結合 しているため単離するのが難しく、特に哺乳類などの真核細胞からの単離が困難 であった。 1987年現在、アミノ酸配列情報または抗グリコシルトランスフェラーゼ抗 体を用いる標準分子クローニング手法を用いてβ(1,4)ガラクトシルトラン スフェラーゼ(1986年)とα(2,6)シアリルトランスフェラーゼ(19 87年)にそれぞれ対応する哺乳類などの真核性のグリコシルトランスフェラー ゼcDNAを二つ単離することに成功している。上述した炭水化物の高価値に鑑 み、これに続くグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子とcDNAと単離するため の方法の改良およびこれらを用いた炭水化物合成の改良が強く望まれる。発明の開示 従って、本発明の目的は哺乳類など真核性のグリコシルトランスフェラーゼ遺 伝子とcDNAを簡便に単離する方法を提供することである。 本発明の他の目的はこれらの単離された遺伝子とcDNAを修飾してそれぞれ 対応した修飾グリコシルトランスフエラーゼを得る方法を提供することである。 本発明の更なる目的はこれらの修飾されていないあるいは修飾されている遺伝 子やcDNAを提供するとともに、これらに遺伝子導入手法や試験管内グリコシ ル化反応を適用し、例えば細胞表面オリゴ糖構造を改変するために用いることで ある。 本発明の発明者はこの度、上記の目的および以下の記述から理解される本発明 のその他の目的を全て満たす遺伝子転移手法を見いだした。本発明はその方法論 としては、グリコシルトランスフェラーゼの基質と受容体特性についてのすでに 存在する情報を利用し、細胞表面で発現されたこれらの酵素のオリゴ糖産物に特 異的な多くの抗体およびレクチン試薬を用いるものである。図面の簡単な説明 図1、2、3、4、5、6および7は本発明によって提供される6つのDNA 配列を示し、これらはグリコシルトランスフェラーゼをコードするものである。 図1はGDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1,3)−D−GlcN ac(/Glc)−α−(1,3/1,4)−フコシルトランスフェラーゼ(ル イスフコシルトランスフェラーゼ、Fuc−TIII)(配列認識番号1)とし て働くことができるタンパクをコードするDNA配列とコードされたタンパク( Fuc−TIII)(配列認識番号2)のアミノ酸配列を示す。 図2はマウスUDP−Gal:β−D−Gal(1,4)−D−GlcNac α(1,3)−ガラクトシルトランスフェラーゼ(配列認識番号3)をコードす るDNA配列とコードされたタンパク(配列認識番号4)のアミノ酸配列を示す 。 図3はヒトGDP−Fuc:β−D−ガラクトシドα(1,2)−フコシルトラ ンスフェラーゼ(配列認識番号5)をコードするDNA配列とコードされたタン パク(配列認識番号6)のアミノ酸配列を示す。 図4と5はGDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4)]−D−GlcNa Cα(1,3)−フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TIV)をコードする DNA配列(それぞれ配列認識番号7および9)とコードされたタンパク(Fu c−TIV)(配列認識番号8)を示す。図5もルイスフコシルトランスフェラ ーゼ(Fuc−TIII)(配列認識番号2)のアミノ酸配列を示す。 図6はGDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4)]−D−GlcNacα (1,3)−フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TV)(番号を付記した上 のヌクレオチド鎖)をコードするDNA配列(配列認識番号10)とその対応す るタンパク配列(FucTV)(配列認識番号11)を示し、合わせてルイス式 血液型におけるフコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TIII)(番号付記の ない下の配列)のDNA配列も示す。ルイスのフコシルトランスフェラーゼとの アミノ酸の違いをルイスDNA配列(配列認識番号12)の下方にルイスのアミ ノ酸を併記して示す。フコシルトランスフェラーゼのトランスメンブラン領域を 下線で示す。 図7はpCDNAl−α(1,3)Fuc−TVI(配列認識番号13)にお けるゲノムDNAインサートのコード部のDNA配列、および当該遺伝子の5’ および3’領域の一部を示す。pCDNAl−α(1,3)Fuc−TVI(こ れをα(1,3)FT DNAと標記する)におけるゲノムDNA断片によって コードされたGDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4)]−D−GlcNa cα(1,3)−フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TVI)とルイス式血 液型におけるフコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TIII)(これをルイス DNAと標記する)(配列認識番号12)のDNA配列の比較も図7中に示す。 DNA配列の確認位置は、同じ位置における同じヌクレオチド間に縦線(|)で 示す。また、配列が不明のところは(.)で示す。 得られたタンパク配列Fuc−TVIは、アルファベット一文字のコードでα (1,3)FT AAとして標記し、そのDNA配列(配列認識番号14)の上 方に示す。 図8は、異なるα(1,3)フコシルトランスフェラーゼ遺伝子発現ベクター またはコントロールベクターでトランスフェクトされ、細胞表面のオリゴ糖決定 基に対するモノクローナル抗体を用いた分析に供されたCOS−1細胞のフロー サイトメトリーの結果を示す棒グラフである。COS−1細胞はプラスミドpC DM7(pCDM7)、プラスミドpCDNAI(pCDNAI)、図1に記載 したα(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼ(ルイスのフコシルトラ ンスフェラーゼ、Fuc−TIIIとしても知られている。配列認識番号2)を コードするDNA配列を含有するpCDM7、または図4に記載したα(1,3 )フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TIV、配列認識番号8)、図6に記 載したα(1,3)フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TV、配列認識番号 11)あるいは図7に記載したα(1,3)フコシルトランスフェラーゼ(Fu c−TV、配列認識番号14)をコードするDNA配列を含有するpCDNAI のいずれかでトランスフェクトした。トランスフェクトしてから三日後に細胞を 収穫し、対H(抗H)、対ルイスx(抗Lex)、対シアリルルイスx(抗sL ex)、対ルイスa(抗Lea)または対シアリルルイスa(sLea)の各オ リゴ糖決定基に対するモノクローナル抗体(図中左上部に示す)で染色し、次い でフルオレセインと結合した第二抗体で染色した。その後、細胞をフローサイト メトリーで分析した。各トランスフェクト体集団(細胞の略25−30%がトラ ン スフェクトされ陽性の細胞表面マーカーを発現した)における抗原陽性細胞の平 均蛍光強度を棒グラフに示す。これらの分析の方法の詳細はローら、J.Bio l.Chem.(1991)266:17467−17477;ウェストンら、 J.Biol.Chem.(1992)267:4152−4160;ローら、 Cell(1990)63:475−484;およびエルンストら、J.Bio l.Chem.(1989)264:3436−3447)に記載されている。発明の最良の実施態様 一般に本発明は、細胞の翻訳後の特性を利用して細胞から遺伝子および/また はcDNAを単離する方法を提供する。この遺伝子および/またはcDNAが単 離される細胞は、単細胞あるいは多細胞組織体から得られる細胞のどちらでもよ い。 本発明においては、ある細胞の翻訳後の特性はその細胞がタンパクや脂質を酵 素的方法によって修飾する能力、すなわち一以上の単糖類をこのタンパクや脂質 に共有結合的に結合することによって修飾する能力、をもって定義されるかある いはタンパクや脂質分子からそのような置換基を特異的に除去する酵素的方法に よって改変する能力をもって定義する。 一実施例においては、本発明方法は以下の4つの基本ステップを包含する: (i)関心の対象である翻訳後の特性−すなわちある特定の膜結合オリゴ糖や多 糖類(糖タンパクや糖脂質)、溶解性オリゴ糖や多糖、またはある特定の酵素活 性(下記参照)などの特性−を有する真核細胞(哺乳類の細胞など)を遺伝子供 与体として用いるために同定し; (ii)ドナー真核細胞(哺乳類の細胞など)の遺伝子材料からcDNAまたは ゲノムDNAの遺伝子ライブラリーを作製し; (iii)遺伝子導入のためのレシピエントとして適切な特定の真核宿主を同定 し、この真核宿主細胞(哺乳類細胞など)をこの遺伝子ライブラリーで形質転換 し;さらに (iv)形質転換された宿主細胞をスクリーニングし、関心の対象の翻訳後特性 を有する宿主細胞を検出する。 上記のようにして翻訳後の特性を得るに至った宿主細胞は、関心の対象である 翻訳後の特性に関連する遺伝子情報を有する。以下に既述する技法を用いてこの 遺伝子情報(遺伝子)を形質転換された宿主細胞から検索し、アクセルら(米国 特許第4634665号)やギルバートら(米国特許第4411994号)の標 準法を利用してこの翻訳後特性を与えることを特徴とする大量の遺伝子産物、即 ちグリコシルトランスフェラーゼ、を産生することができる。 上記のステップ(i)においてドナーの真核細胞(哺乳類細胞など)は、細胞 抽出液中における特定の酵素活性の検出や、その細胞の、膜に結合したあるいは 溶解性のオリゴ糖または多糖の検出に基づいて選択される。 このように、一実施例においては、細胞抽出液中に検出された酵素活性は翻訳 後にタンパク、脂質、またはオリゴ糖をグリコシル化する、あるいはグリコシル 基によって修飾する、動物酵素に起因し得る酵素活性であることができる。この 酵素活性は、これらの酵素のいずれかに対して特異的な基質を用いて検出できる 。そのような基質は公知である。 他の実施態様では、上記のステップ(i)において、細胞を選択するにあたり 、特定の細胞性の膜結合オリゴ糖および/または多糖の検出に基づいてこれを行 うことができる。 また他の実施態様では、上記のステップ(i)における細胞の選択は、細胞抽 出物中の溶解性オリゴ糖もしくは多糖または細胞から溶解放出されたオリゴ糖も しくは多糖の存在に基づいてこれを行うことができる。 本発明は、遺伝子産物についてのアミノ酸配列情報なしに、またその遺伝子産 物に特異的な抗体を入手する必要なしに組織体から遺伝子を単離する新規な遺伝 子導入方法を提供する。例えば、もしある特定の酵素をコードする遺伝子を探索 するときには、一連の細胞株培養物や培養組織を公知の標準法でスクリーニング し、特定の酵素活性(関心の対象である酵素に対応し、よってその細胞は探索し ている酵素の遺伝子を含有するかまたは発現する)をその細胞や組織の抽出物中 で検出することによって関心の対象である発現可能な遺伝子を含有する一以上の 細胞株や組織を同定する。もしその細胞におけるオリゴ糖や多糖の膜成分が関心 の対象であるなら、そのような膜特性を有する細胞株や組織を単離する。またも し溶解性オリゴ糖や多糖が関心の対象であるなら、そのものの抽出物中で検出可 能なオリゴ糖や多糖を有する細胞株や組織を単離する。 一旦そのような細胞株や組織が同定されたら、この単離された細胞に基づいて 遺伝子ライブラリーが製作される。この遺伝子ライブラリーはcDNAまたはゲ ノムDNAである。好ましい実施例においては、もし単離された細胞がある特定 の試薬に接触することで関心の対象である翻訳後の特性が高められやすい性質を 有している場合には、そのような試薬を用いることでこの細胞中のmRNA信号 を得ることができ、および/または、遺伝子自身を得ることができる。この遺伝 子は、その特定の遺伝子あるいは増幅された遺伝子セグメントに対応する増幅さ れたmRNAコピーを産し、最終的にcDNAコピーを産する。 そうでない場合にはcDNA遺伝子ライブラリーとゲノムDNA遺伝子ライブラ リーの両者を公知の方法によって得ることができる。一旦遺伝子ライブラリーが 得られると、これを用いて公知方法(例えばカルシウムリン酸塩沈降法、リポゾ ームトランスフェクション、DEAEデキストラントランスフェクション、マイ クロインジェクションなど)により宿主細胞を形質転換する。 本発明において有用な宿主細胞は好ましくはレクチンまたは抗体による希望の 翻訳後特性の検出に感受性が高いものである。すなわち形質転換された宿主細胞 における、膜結合オリゴ糖や膜結合多糖、糖タンパクまたは糖脂質のレクチンや 抗体を用いた検出に感受性が高いものである。しかしながら、そのようなレクチ ンや抗体の検出に対して感受性が高くない宿主細胞のスクリーニングも本発明に 従って酵素活性をスクリーニングすることによって行うことができる。 (A)宿主細胞(例えば哺乳類細胞)は、酵素(グリコシルトランスフェラーゼ )の触媒機能を発揮させかつ保存するために、真核細胞であるべきである。(B )宿主細胞は希望するものに類似の、あるいは同族の産生物のグリコシルトラン スフェラーゼ活性を顕著なレベルで発現してはならない。グリコシルトランスフ ェラーゼ関連遺伝子では、宿主細胞の形質転換が成功裏に行われたかどうかは細 胞抽出液中の対応する酵素活性を検出することで決定される。(C)他の特性と して、宿主細胞は適切な糖ヌクレオチド基質を合成することができ、これをゴル ジ体へ輸送するべきである(ゴルジ体にはグリコシルトランスフエラーゼ触媒領 域 が存在し機能している)。実質的にすべての野性型の動物細胞がこの機能を有し ている。(D)宿主細胞は希望するグリコシルトランスフェラーゼが要求する適 切な受容体基質(オリゴ糖、脂質またはタンパク)を合成する能力を有するべき であり、細胞の構造が細胞表面上に表れているかまたは細胞環境/媒体中へとそ の構造を放出するべきである。(E)宿主細胞は希望するグリコシルトランスフ ェラーゼをコードするかさもなくば希望するグリコシルトランスフェラーゼの発 現を決定するトランスフェクトされた配列の発現を許すものであるかまたはその 発現を提供するものであるべきである。これは公知技術による真核(哺乳類など )から真核(哺乳類など)へのゲノムDNAの導入やcDNA発現系に対して選 択されたベクター系に固有のものである。(F)宿主細胞は関連するグリコシル トランスフェラーゼをコードするかさもなくばこれの発現を決定するトランスフ ェクトされた配列の奪取を許すものであるべきである。 野性型の真核細胞(哺乳類細胞など)は一般にこれらの性質を有している。上 記の(B)や(D)の条件を満たさない特定の野性型の細胞が関心の対象であっ た場合、これを標準法によって突然変異させこれらの性質のいずれかを有する突 然変異細胞を得る。またもし酵素法に基づいた選択を行う場合には上述の(C) と(D)の条件は不要である。 一旦宿主細胞が形質転換されたら、集団はスクリーニングされ、関心の対象で ある遺伝子材料を含有する宿主細胞を検出する。これは宿主細胞が関心の対象と なっている翻訳後特性を有するかどうかを調べることによって達成される。言い 換えると形質転換された宿主細胞の抽出物中の酵素活性を検出することによって 、あるいは細胞上の膜結合性オリゴ糖や多糖を検出することによって、またある いは細胞の抽出物ないしは細胞の分泌物中の溶解性オリゴ糖や多糖を検出するこ とによって達成される。陽性の結果となった宿主細胞を単離し、関心の対象であ る遺伝子をこれらの形質転換された細胞から検索する。 もし宿主細胞がゲノムDNAトランスフェクションによって形質転換されてい るならば、遺伝子奪取(gene rescue)を次のようにして行うことができる。 (a)種に特異的な繰り返し配列でトランスフェクトされたゲノム配列を標識化 することによる、ハイブリッド化による分子クローニング;または (b)トランスフェクトされたゲノム配列の、マーカー配列に対する試験管内ま たは生体内連結による標識化。 もし宿主細胞を形質転換するのにcDNAが用いられれば、遺伝子/cDNA 奪取は次のようにして行うことができる。 (a)Hirtの手順によるエピソーム奪取、または (b)プラスミド標識による組み込みコピー奪取。 遺伝子奪取に関する詳細を以下の実施例に記載する。 適切なドナーと宿主細胞としては以下のものが挙げられる。 (I)ヒト血液型Hα(1,2)フコシルトランスフェラーゼー(エルンストら 、J.Biol.Chem.264:3436−3447、1989;ラジャン ら、J.Biol.Chem.264:11158−11167、1989;ラ ーセンら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:6674− 6678、1990)。 A)L細胞宿主−マウスの種 B)α(1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性を発現しない。またFucα (1,2)Gal構造を細胞表面に発現しない。 C)GDP−フコース、すなわちα(1,2)フコシルトランスフェラーゼの糖 ヌクレオチド基質を合成する。 D)当該酵素のアクセプター基質であるGalβ(1,4)GlcNAc−R分 子を合成し、それらを細胞表面で発現する。 E)マウス細胞はヒト遺伝子を発現できることが知られている。 F)マウス細胞はヒトAlu繰り返しDNA配列に類似したDNA配列を含まな い。これらのAlu配列(種に特異的な繰り返し配列)を用いてマウスのトラン スフェクト細胞株からヒト遺伝子を同定しかつこれを最終的に奪取する。 (II)マウスα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ−ラーセンら、P roc.Natl.Acad.Sci.USA、86:8227−8231、1 989)。 A)SV40ウイルスのラージT抗原を発現する腎細胞 − COS−1細胞株 、サルの種。 B)α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を発現しない。またGa lα(1,3)Gal構造を細胞表面に発現しない。 C)α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼの基質であるUDP−ガラク トースを合成する。 D)当該酵素のアクセプター基質であるGalβ(1,4)GlcNAc−R分 子を合成し、それらを細胞表面で発現する。 E)cDNAライブラリーのためのcDNA/COS−1細胞発現系 − 標準 法。 F)cDNAライブラリーのためのcDNA/COS−1細胞発現系 − 標準 法。 (III)ヒト・ルイス式血液型α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラ ーゼ−ジェー・エフ・クロウスカ−ラターロら、Genes and Deve lopment、vol.4、(1990)、ページ1288−1303。 A)SV40ラージT抗原を発現する腎細胞−COS−1細胞株、サル。 B)α(1,3)フコシルトランスフェラーゼ活性を顕著なレベルで発現しない 。また細胞表面のGalβ(1,4)[Fucα(1,3)]GlcNAc−R 構造を発現しない。 C)α(1,3)フコシルトランスフェラーゼの基質であるGDP−フコースを 合成する。 D)当該酵素のアクセプター基質であるGalβ(1,4)GlcNAc−R分 子を合成し、それらを細胞表面で発現する。 E)cDNAライブラリーのためのCDM 7/COS−1細胞発現系 − 標 準法。 F)cDNAライブラリーのためのCDM 7/COS−1細胞発現系 − 標 準法。 この遺伝子を選択する最後の段階においては、上記CとDの条件は不要となる 。なぜならcDNAクローンのプールをCOS−1細胞にトランスフェクトし、 次いでトランスフェクトされた細胞から調製された抽出物のα(1,3)フコシ ルトランスフェラーゼ活性を直接測定することによってcDNAクローンのプー ル はスクリーニングされるからである。 本発明の実施例の一態様によれは、本発明はグリコシルトランスフェラーゼを コードする遺伝子を単離する方法およびその方法によって単離された遺伝子を提 供するものである。このグリコシルトランスフェラーゼとしては、フコシルトラ ンスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコーサミニル トランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクト サミニルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、スルフォトラン スフェラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、アセチラーゼ、あるいは他のグ リコシルトランスフェラーゼが挙げられる。 各グリコシルトランスフェラーゼ は酵素によって伝達される異なったタイプの糖ととりわけ会合することが知られ ている(バイヤーら、「グリコシルトランスフェラーゼ、オリゴ糖構造の評価に おける利用、および構造−機能の関係」、Adv.Enzymology、(1 982)52:23−175 − 本明細書の一部を構成するものとしてここに 援用する)。このように、細胞中あるいは細胞上に存在するオリゴ糖、糖タンパ クまたは糖脂質について見いだされた特定の糖結合は特定のグリコシルトランス フェラーゼと会合する。そのような結合を同定するためには色々な方法が公知で あり(上記バイヤーらの文献を参照)、本発明の思想に沿ってそれらの方法を適 用し、対応するグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を単離するこ とができる。 本発明によって提供されるグリコシルトランスフェラーゼの一つであるシアリ ルトランスフェラーゼは以下のシアリン酸結合と会合する:(1)Siaα2→ 6Gal;(2)Siaα2→3Gal;(3)Siaα2→6GalNac; (4)Siaα2→6GlcNAc;(5)Siaα2→8Sia;(6)Si aα2→4Gal;および(7)Siaα2→4GlcNAc。 本発明によって提供されるグリコシルトランスフェラーゼの一つであるフコシ ルトランスフェラーゼは以下の結合と会合する:(1)Fucα(1→2)Ga lβ−;(2)Galβ(1→3)[Fucα(1→4)]GlcNAcβ−; (3)Galβ(1→4)[Fucα(1→3)]GlcNAcβ−;(4)G alβ(1→4)[Fucα(1→3)]Glc;(5)−GlcNAcβ(1 →4)[Fucα(1→6)]GlcNAcβ1→Asn;(6)−GlcNA cβ(1→4)[Fucα(1→3)GlcNAcβ1→Asn;(7)Fuc α(1→6)Galβ→;(8)Fucα(1→3)Galβ−;(a)Glc β1→3Fucα1→O−ThrおよびFucα1→O−Thr/Ser;(1 0)Fucα1→セラミド;および(11)Fucα1→3Fuc。 また本発明によって提供されるN−アセチルグリコーサミニルトランスフェラ ーゼは以下の結合と会合する:(1)GlcNAcβ1→4GlcNAc;(2 )GlcNAcβ1→Asn;(3)GlcNAcβ1→2Man;(4)Gl cNAcβ1→4Man;(5)GlcNAcβ1→6Man;(6)GlcN ACβ1→3Man;(7)GlcNAcα1→3Man;(8)GlcNAc β1→3Gal;(9)GlcNAcβ1→4Gal;(10)GlcNAcβ 1→6Gal;(11)GlcNAcα1→4Gal;(12)GlcNAcα 1→4GlcNac;(13)GlcNAcβ1→6GalNAc;(14)G lcNAcβ1→3GalNAc;(15)GlcNAcβ1→4GlcUA; (16)GlcNAcα1→4GlcUA;(17)GlcNAcα1→4Id UA。 さらに本発明によって提供されるガラクトシルトランスフェラーゼは以下の結 合と会合する:(1)Galβ1→4Glc;(2)Galβ1→4GlcNA c;(3)Galβ1→3GlcNAc;(4)Galβ1→6GlcNAc; (5)Galβ1→3GalNAc;(6)Galβ1→6GalNAc;(7 )Galα1→3GalNAc;(8)Galα1→3Gal;(9)Galα 1→4Gal(10)Galβ1→3Gal;(11)Galβ1→4Gal( 12)Galβ1→6Gal;(13)Galβ1→4キシロース;(14)G alβ1→1’スフィンゴシン;(15)Galβ1→1’−セラミド(16) Galβ1→3ジグリセリド;(17)Galβ1→O−ヒドロキシリジン;お よび(18)Gal−S−システイン。さらに本発明によって提供されるN−ア セチルガラクトーサミニルトランスフェラーゼは以下の結合と会合する;(1) (GalNAcα1→3)[(Fucα1→2)]Galβ;(2)GalNA cα1→Ser/Thr;(3)GalNAcβ1→4Gal;(4)GalN Acβ1→3Gal;(5)GalNAcα1→3GalNAc;(6)(Ga lNAcβ1→4GluUAβ1→3)n;(7)(GalNACβ1→41d UAα1→3−)n;(8)−Manβ→GalNAc→GlcNAc→Asn 。 本発明によって提供されるその他のグリコシルトランスフェラーゼは以下の結 合と会合する。 GalNAcに対して: Galβ1−3GalNAc Galβ1−4GalNAc Galα1−3GalNAc GluNAcβ1−3GalNAc GluNAcβ1−6GalNAc GlNAcα1−3GalNAc Siaα2−3GalNAc Siaα2−6GalNAc Galに対して; Galβ1−3Gal Galα1−3Gal Fucα1−2Gal GluNAcβ1−3Gal GluNAcβ1−4Gal GluNAcβ1−6Gal GluNAcα1−4Gal GalNAcα1−3Gal GalNAcβ1−3Gal GalNAcβ1−4Gal Siaα2−3Gal Siaα2−6Gal Glcに対して: Manα1−6Glc Manα1−4Glc GlcNAcに対して: Galβ1−4GlcNAc Galβ1−3GlcNAc Fucα1−3GluNAc Fucα1−4GluNAc Glcα1−4GlcNAc GlcNAcα1−4GlcNAc Siaα2−4GlcNAc Siaに対して: Siaα2−8Sia タンパクに対して: GalNAcα1−O−Ser/Thr。 本発明によって提供されるさらに他のグリコシルトランスフェラーゼの例とし ては、以下のものが挙けられる:β1,3GlcNAc−β1,3グルクロニル トランスフェラーゼ、グルクロン酸−β1,4−N−アセチルグルコーサミニル トランスフェラーゼ、アスパラギンN−アセチルグルコーサミニルトランスフェ ラーゼ、セリンβ−キシロシルトランスフェラーゼ、キシロースβ1,4−ガラ クトシルトランスフェラーゼ、ガラクトースβ1,3ガラクトシルトランスフェ ラーゼ、ガラクトースβ1,3グルクロニルトランスフェラーゼ、グルクロン酸 β1,4−N−アセチルガラクトーサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチル ガラクトーサミンβ1,3グルクロニルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラ クトーサミン−4−スルフォトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトーサミ ン−6−スルフォトランスフェラーゼ、アスパラギン−βN−アセチルグルコー サミニルトランスフェラーゼ、セリン/スレオニン−αN−アセチルガラクトー サミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコーサミン−β1,4ガラクト ーサミニルトランスフェラーゼ、ガラクトース−β1,3−N−アセチルグルコ ーサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコーサミン−6−スルフォト ランスフェラーゼ、ガラクトース−6−スルフォトランスフェラーゼ、グルク ロン酸−α1,4−N−アセチルグルコーサミニルトランスフェラーゼ、N−ア セチルグルコーサミンβ1,4−グルクロニルトランスフェラーゼ、ヘパリン− N−アセチル−グルコーサミン−N−アセチルトランスフェラーゼ、ガラクトー ス−1,6−N−アセチルガラクトシルトランスフェラーゼ、ヘパリン−N−ア セチルグルコーサミンスルフォトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコーサミ ン−α1,4−グルクロニルエピメラーゼ、N−アセチルグルコーサミン−6− スルフォトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコーサミン−N−スルフォトラ ンスフェラーゼ、グルクロニル−α1,4−N−アセチルグルコーサミニルトラ ンスフェラーゼ、イズロニル−2−スルフォトランスフェラーゼ、グルクロニル ーβ1,4−N−アセチルガラクトーサミニルトランスフェラーゼ、およびN− アセチルガラクトーサミン−α1,3−グルクロニルエピメラーゼ。 これらの酵素は以下の結合や結合組織多糖中のオリゴ糖構造と会合する(ロー デン・エル、”結合組織プロテオグリカン類の構造と代謝”、「Glyc2co grateoproteinsとプロテオグリカン類の生化学」、Wm.レンナ ーズ編、ページ267−371、プレナム出版、ニューヨーク。これを本明細書 の一部を構成するものとしてここに援用する。特にページ269、270、27 1中の表)。 上記のグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子および/またはcDNAは、クロ ーニングされた分子として得ることができるか、あるいは同族で適切な上記の結 合中に現れた翻訳後特性を用い本発明に従って宿主細胞株に伝達され、細胞を単 離する。この単離された細胞から遺伝子またはcDNAライブラリーが製作され るとともにグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子やcDNAが単離 される。 マンノシルトランスフェラーゼ類の構成員を包含する付加的な酵素としては、 α(1,2)マンノシルトランスフェラーゼ類、α(1,3)マンノシルトラン スフェラーゼ類、α(1,6)マンノシルトランスフェラーゼ類、およびβ(1 ,4)マンノシルトランスフェラーゼ類が挙げられ、下記に示すようにアスパラ ギンと結合したオリゴ糖中に形成された結合構造と会合する(さらにコーンフェ ルド・エフおよびコーンフェルド・エス(1985)「アスパラギン結合性オリ ゴ 糖の組み立て」、Annu.Rev.Biochem.、54、ページ631− 664を参照)。 その他のものとしては、セラミドグルコシルトランスフェラーゼとセラミドガ ラクトシルトランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼおよびN −アセチルニューラミニン酸(シアリン酸)をO−アセチル化するO−アセチラ ーゼか挙げられる。 略記法 Sia;シアリン酸 Gal;D−ガラクトース GalNac;D−N−アセチルガラクトーサミン Glc;D−グルコース GlcNAc;D−N−アセチルグルコーサミン Fuc;L−フコース Man;D−マンノース IdUA;L−イズロン酸 GlcUA;D−グルクロン酸 Xyl;D−キシロース Ser;セリン Thr;スレオニン Asn;アスパラギン 本発明の他の態様においては、本発明は、溶解性または固相のオリゴ糖、多糖 、脂質またはタンパクを得るための方法を提供する。本発明方法は、オリゴ糖ま たは多糖の前駆体を融合タンパク質に接触させることを包含する。用いられる酵 素は本発明によって提供されるグリコシル化されていないグリコシルトランスフ ェラーゼまたは融合タンパクであって、これは二つの成分を包含する:第一の成 分は少なくともグリコシルトランスフェラーゼにおいて触媒として機能する領域 (下記参照)であり、第二の成分は固相支持体に付着したタンパク質スペーサー かあるいは親和性リガンドを包含するタンパク成分である。本発明の酵素は、上 記前駆体を希望するオリゴ糖、多糖、糖脂質または糖タンパクへと転換すること によってこれらを得るものである。 本発明のめざましい利点は、一態様におい ては、グリコシル化されていないグリコシルトランスフェラーゼを提供できるこ とである。全部ではないにしても多くの天然に見いだされるグリコシルトランス フェラーゼ類は糖タンパクであると一般に考えられている。これらがオリゴ糖/ 多糖前駆体からオリゴ糖や多糖を産生するのに用いられるときには、これらの酵 素自身がグリコシル化される可能性がある。この(望ましくない)活性によって 出発物質が消費され、酵素活性不足をもたらす。本発明のグリコシル化されてい ないグリコシルトランスフェラーゼはこのような目立った欠点を有しない。それ らがグリコシル化されていない酵素として得られる理由は、関連するグリコシル 化メカニズムを欠いた微生物において産生された産物であるためかまたはグリコ シルトランスフェラーゼのグリコシル化が阻害されている動物細胞中において得 られるものであるためである。動物細胞中におけるグリコシルトランスフェラー ゼのグリコシル化の阻害は、単離されたグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を 公知の技法によって突然変異させ、グリコシルトランスフェラーゼ上のグリコシ ル化部位を除去することによって達成される。 本発明のグリコシル化されていないグリコシルトランスフェラーゼは、少なく ともグリコシルトランスフェラーゼの触媒として機能する領域に対応するものか ら、グリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子全体に対応するグリコシ ル化されていないタンパクに至る、グリコシル化されていないタンパクであるこ とができる。 他の態様においては、本発明は上記の二つの成分を包含する融合タンパクを提 供する:第一の成分は少なくともグリコシルトランスフェラーゼにおいて触媒と して機能する領域であり、第二の成分は固相支持体に付着したタンパク質スペー サーかあるいは親和性リガンドを包含するタンパク成分である。 グリコシルトランスフェラーゼはこの酵素をコードする遺伝子の三つの異なっ た領域に各々対応する三つのドメインを有することが知られている。遺伝子の3 ’末端に見いだされる遺伝子領域は触媒として働くドメインをコードすることが 知られている(ロー、「細胞生物学セミナー」(1991):289−307 。これを本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。本発明の融合 タンパクは少なくとも触媒として作用するドメインを含有するものであるか、全 タンパク配列を包含するものであってよい。このタンパクは公知の方法により第 二の成分に融合されて得られる。 第二の成分は、触媒機能ドメインを固相支持体に固定するか、または第二の成 分上の特異的親和リガンドの存在を利用してこれを回収することによって使用に 供することができる。第二の成分としてはStaph.プロテインAのIgG結 合ドメインを用いることができる。そのような融合タンパクはIgG−セファロ ースのようなIgGを含有する固相支持体に結合することができる。多くの他の 代替的タンパクがグリコシルトランスフェラーゼの触媒活性セグメントに融合で き、固相支持体への結合を達成することができる。そのようなタンパクおよびそ れらの各々のマトリックス関連レセプターとしては、ストレプトアビジン−ビオ チン、IgG重鎖−プロテインA、および実質的に他の公知タンパクやペプチド セグメントのいずれかであってそれに対して抗体が存在するかまたは抗体が調製 できるものが挙げられる。 他の実施例においては、本発明は、リコンビナント糖タンパク、糖脂質、また は遊離オリゴ糖を、例えば本発明に従って得られる酵素または本発明に従って得 られる組織体を用いて産生する方法を提供する。例えば、特定の翻訳後グリコシ ル化能を以下のステップによって宿主細胞に与えることができる:まず希望の遺 伝子またはcDNAを単離し、標準的な形質転換またはトランスフェクション技 法によって細胞中に導入し、トランスフェクトされたクローン化遺伝子産物の発 現が可能な組織体を得る;宿主細胞はトランスフェクトされた遺伝子によって決 定される上記翻訳後能力を獲得するが、細胞はトランスフェクト前にはこの能力 を現さない。あるいは上記の手法を行うにあたり、翻訳後の能力を決定する単一 のクローン化遺伝子を用いる代わりに、クローン化されていない遺伝子セグメン ト(例えば高分子量のゲノムDNA)またはクローン化されたゲノムDNA断片 やcDNA分子のライブラリーを用いることもできる。このようにして形質移入 された細胞に対して選択を行うが、選択は新たに獲得された希望の翻訳後の能力 を検出することによってなされ、この能力を発現するクローン細胞株系を単離す る。 他の態様においては、本発明によって得られる酵素は細胞表面のオリゴ糖分子 を修飾する試験管内反応において利用することができる。例えば、本発明者は血 液型AのUDP−GalNAcトランスフェラーゼとその基質であるUDP−G alNAcを精製し、試験管内でマウス細胞上の血液型Hのオリゴ糖決定基から 血液型A決定基へと変換した(エルンストら、J.Biol.Chem.(19 89)264:3436−3447)。これと同様な手続きを本発明によって得 られる酵素単独、あるいは他の利用可能なグリコシルトランスフェラーゼやグリ コハイドロラーゼに適用し、死んだあるいは生きている機能的な真核または原核 細胞の細胞表面のオリゴ糖構造に希望の性質を持たせるように修飾することがで きる。 付加的な特定の翻訳後のグリコシル化能を有する上記のような宿主細胞に、公 知のリコンビナント技法を適用して、糖タンパク、糖脂質または遊離オリゴ糖を 得ることができる。この細胞は翻訳後のグリコシル化能を有する特徴とともにリ コンビナント糖タンパク、糖脂質または遊離オリゴ糖を産生できるという特徴を 有している。 これらの後半に述べた実施例は、例えば新規なオリゴ糖分子を特殊な哺乳類細 胞(例えば特殊なまたは一般的な免疫機能を有する細胞)の表面に付加するため に利用することができ、得られる付加物は体内の特定の組織やその他の部位を標 的として治療や診断の用途に使用できる。特にそのような修飾された細胞はさら に、修飾された細胞の表面に付加された特定のオリゴ糖構造を特異的に認識する レクチン様の細胞接着分子を発現する組織を標的とすることができる。 他の実施態様では、本発明は細胞内のグリコシル化活性を阻止する方法を提供 する。この実施例においては、特定の翻訳後グリコシル化能が宿主細胞から除か れる。この結果を得るには、(i)遺伝子を不活化し、(ii)それ自身かその 近傍に一以上の遺伝子選択的マーカーを挿入する試験管内修飾を行った後で、標 準の形質転換または形質導入技法によって特定のクローン試薬を細胞に導入すれ ばよい。この修飾された不活性遺伝子は、標準法によって組換えを行うことによ り、効果的に内因性の機能性遺伝子と置き代わることができる。 もし必要ならば、このプロセスを2回以上行って2倍体(またはより高次の倍 体)の組織体において野性型遺伝子の両者を不活性化することができる。最終的 には、(二つの)非機能的遺伝子(今はこの遺伝子は除去すべき翻訳後の能力を 決定することができない)を有する細胞株が得られる。あるいは、本発明によっ て得られる遺伝子は、標準技法に準拠してアンチセンス定位に発現される状態で 形質転換または形質移入を行うことによって細胞に導入される。この結果、標準 のアンチセンス発現方法によって、それと同族の野性型の遺伝子の発現が除かれ る。細胞を、本発明によって得られる遺伝子に由来する配列を有するアンチセン ス合成オリゴ糖で処理することにより、標準法で同族の野性型の遺伝子の発現を 除去することができる。 あるいは、本発明によって得られた遺伝子を形質転換または形質移入によって 、好ましくない発現が新しい翻訳後修飾の発現によって除かれるように細胞中に 導入する。この手法は、共通のアクセプター基質上のいくつかのグリコシルトラ ンスフェラーゼの活性が互いに排他的であること、即ちα(1,2)フコシル化 はα(2,3)シアリル化を防ぐとともにこの逆も成り立ち、またα(1,3) ガラクトシル化はα(2,3)シアリル化を防ぐとともにこの逆も成り立つこと 、が観察から得られた。 細胞の翻訳後の能力(グリコシル化を含む)の付加あるいは除去によって、例 えば、診断または治療に用いうる脂質、タンパク、または遊離オリゴ糖を産生す るために用いられる宿主細胞株が得られる。グリコシル化などを含むそれらの物 質の特異的翻訳後修飾はそれらの物質の機能に影響を及ぼす。例えば、組織プラ スミノーゲンアクチベーターやエリスロポエチンなどのリコンビナントタンパク は、通常糖タンパクとして存在する。もしこれらの糖タンパク上に特定のオリゴ 糖が存在しそれらの生合成、血清中半減期、レセプターの相互作用または他の機 能について有益な効果をもたらすことが示されれば、本発明が提供する試薬と方 法を用いて特異的で機能的に最適なオリゴ糖構造を有するリコンビナントタンパ クを産する宿主を構築することができる。 この態様は、例えば特定のオリゴ糖分子を特定の種類の哺乳類細胞(例えば特 定のあるいは一般的な免疫機能)の表面から除去してそれらが生体の健常で生理 的な組織やその他の部位を標的とすることを阻止し、他の生理的でない標的に向 かうようにして治療や診断のために用いることができる。特にそのような修飾さ れた細胞は、それらが通常作用する組織から、他の種類の細胞に対して特異性を 有するレクチン様の細胞接着分子を発現する組織へと逸らすことができる。 他の態様においては、本発明は従来得ることができなかった量の遺伝子産物を 提供する。これらの遺伝子産物、即ちグリコシルトランスフェラーゼという酵素 は、酵素リアクターにおいて用いることができ、関心のある糖タンパク、糖脂質 、オリゴ糖または多糖を産することができる。本態様においては、クローングリ コシルトランスフェラーゼ遺伝子セグメントを標準のリコンビナントタンパク発 現系において使用して、その遺伝子でコードされた酵素を大量に生成することが できる。これらの酵素は大規模試験管内方式によるオリゴ糖や糖脂質の合成、あ るいはタンパクや糖タンパクのグリコシル修飾のために用いることができる。 そのような企図におけるアクセプターオリゴ糖は、以下のいずれかによっても たらされる。 (a)天然由来のあるいは化学合成による市販のモノ−、ジ−、または高次の糖 類; (b)本プロセスによって生成されたその他のリコンビナント酵素によって試験 管内で産生されるジ−または高次のオリゴ糖;または (c)翻訳後の能力が上記のエンジニアリング手法で得られたものであるような 細胞株から産生されるかあるいは精製されたジ−または高次のオリゴ糖。 この態様には、試験管内バイオリアクターを使用する二つの方法がある。その 一つにおいては、オリゴ糖アクセプターとヌクレオチド糖基質を、触媒活性を有 するグリコシルトランスフェラーゼに結合した固相マトリックスを含有するリア クターへと導入する。このマトリックスは上記の融合タンパクを用いて得ること ができるものであるが、この融合タンパクはグリコシルトランスフェラーゼの溶 解性セグメントとして触媒活性成分を含み、またこの成分は固相マトリックスへ と当該融合タンパクを結合するのに用いられるタンパクセグメントと融合されて いる。そのような融合タンパクの具体例としては、Staph.プロテインAの IgG結合ドメインのセグメントに融合していて触媒活性を有するマウスα(1 ,3)ガラクトシルトランスフェラーゼのセグメントが挙げられる(ラーセンら 、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)86、8227−823 1、1989)。 アクセプターおよびヌクレオチド糖基質を、そのようなリアクター中、適切な 温度、pH、およびその他の公知の条件下でオリゴ糖または多糖産物の希望する 量が得られるまで充分な時間をかけてインキュベートする。産生物は次いで公知 の方法により収穫される。 変法においては、ヌクレオチド糖基質と溶解性グリコシルトランスフェラーゼ の触媒ドメイン含有融合タンパクを、固相支持体に共有結合的に結合した(即ち 固相化された)オリゴ糖アクセプター分子を含有するリアクターに導入する。結 合は、オリゴ糖アクセプター分子の酵素的に修飾される部分を反応媒体として用 いるように、公知方法によって行われる。 本発明は、産生するタンパクの翻訳後修飾に関して特定の能力を有する動物細 胞系を生成する方法、並びに真核性由来の(例えば哺乳類などの動物の)タンパ クの翻訳後修飾をもたらす酵素の発現や生合成を決定する、クローン化された遺 伝子、クローン化された相補的cDNAおよびそれらのmRNAを単離する方法 を提供する。本発明は特に真核性由来の(例えば哺乳類などの動物の)糖結合物 を構築する翻訳後のプロセスを提供するにあたってこれらの遺伝子のタンパク産 物を最初に単離する必要がないという特徴を有するものであるが、これに限定さ れない。本発明は、翻訳後の段階においてグリコシル化や硫酸化、さらにはリン 酸化、メチル化、脂肪酸アシル化およびグリコシル修飾(グリコシルハイドロラ ーゼ)によってタンパクを修飾する真核性酵素(例えば哺乳類などの動物のもの )をコードするクローン化された遺伝子、クローン化された相補的cDNAおよ びそれらのmRNAを包含する。 本発明の用途としては次のものを挙げることができる: (i)特定の翻訳後能力を有する動物細胞の構築(診断や治療の用途)。 本発明方法は、特定の翻訳後修飾に依存してその有用性や効能が変わってしま う、診断や治療に用いる物質の産生のために適切な、宿主としての動物細胞株を 構築するために用いることができるものである。例えば、多くの治療用途に用い られるタンパク、ペプチド、リコンビナント等の生物学的効果は、それらに共有 的に結合しているオリゴ糖構造に決定的に依存していることがよくある。これら のオリゴの構造は、第一義的には上記治療用途の産物を製造するために用いられ る細胞中に見いだされる酵素であるグリコシルトランスフェラーゼ類の数と種類 に従って定まる。 動物細胞とイーストはこのようなグリコシル化反応を起こす能力を有する。し かしながら、すべての動物やイーストがこれらのグリコシルトランスフェラーゼ 酵素の全てを産生するわけではない。つまり、幾つかのオリゴ糖構造はすべての 動物やイーストによっては産生されない。この逆もまた真であり、即ち、酵素産 生細胞は有効な生物学的活性を阻止するオリゴ糖構造を作りだすグリコシルトラ ンスフェラーゼ類を表すものであるかもしれない。本発明は産生細胞中において 、特定のグリコシルトランスフェラーゼの能力を作りだすあるいは取り除くもの であって、これによって細胞が産生する物質の治療的効能を適正なものにするも のである。 このために用いられる従来の方法としては、リコンビナントや天然物を産生す るために最も適切な細胞株を同定する経験的な方法が挙げられる。この方法は一 般に最適なものではない、なぜなら適切な翻訳後修飾能力を有する細胞株は天然 に存在しないかあるいは適切に修飾された産物を多量に産生するために特に適し てはいないからである。また、経験的手法で同定された動物細胞株によって産生 された治療的物質上の好ましくない翻訳後修飾は、化学的手法によりあるいは酵 素的手法により除去されうるとしても、そのようなプロセスは費用がかかるかま たは効率が悪く、さらにはその両者であることもある。 従来の方法と比べた場合の本発明方法の利点としては、特定の翻訳後修飾能力 を有する細胞株を構築する能力が挙げられる。もしこれらの細胞株の構築が適切 になされれば、望ましくない翻訳後修飾を除去するために治療的あるいは診断的 物質を化学的あるいは酵素的に処理することを必要としない。さらに、不適切な 翻訳後修飾能を有するがその他の点では産生細胞として優れたものである細胞株 については、これを修飾してその産生物の正しい翻訳後修飾を達成することがで きる。 この方法により、特定の診断用あるいは治療用の動物細胞産生物の要求にまさ しく適合した翻訳後修飾能を有する動物細胞株を構築することができる。 (ii)オリゴ糖を酵素的方法によって効率的に合成あるいは産生するための適 切な反応試薬を単離するという用途(例えば酵素リアクターにおいて)。 オリゴ糖は、器官移植の分野において免疫調節反応試薬として治療的目的のた めに用いうるものである。特に、溶解性および固体相のオリゴ糖は、器官のドナ ーとレシピアントの間に主要血液型抗原系が異なることによる不適合性がある場 合には、抗体介在の器官移植拒否反応を阻止したり緩和したりするための治療薬 としての用途を有するであろう。また同様に、溶解性オリゴ糖は、バクテリア性 、ウイルス性、あるいは寄生虫性の病原体を、それらが侵入した動物の組織表面 上の糖複合体受容体へ付着させないように働く治療剤としての用途を有するであ ろう。 さらに、糖複合体は、発生と分化の過程において細胞間ないしは細胞とその環 境との間における調整接着現象に関与している。これらの現象の例としては精子 と卵子の接合が挙げられ、その最初の現象は着床の初期において有精卵が子宮壁 に付着することを仲介するものである。このような観察結果は、一例として、( 生物学的に「中性」な)オリゴ糖分子を避妊薬として使用する可能性が存在する ことを示すものである。 最近、特定構造のオリゴ糖か化学合成によって(但しこれは非効率的で費用が かさむ)、または天然資源からの単離によって(これは費用がかかり非効率的な 手続きによるものであって、しばしば大量の動植物材料を処理する必要があり、 また希望のオリゴ糖を他の汚染されたオリゴ糖から精製して得る必要があるもの である)産生されている。 本発明は、クローン化されたグリコシルトランスフェラーゼの遺伝子配列を単 離するメカニズムを提供するものであって、これによって大量の精製グリコシル トランスフェラーゼ酵素を経済的に合成できるという特徴を有するものである。 これらの酵素は、その構造体を酵素的に合成するための酵素リアクター(酵素を 溶液中に含有させるか、あるいは固相マトリックス上に固定化する)を構築する ために用いることができる。 この手法は種々の理由から、オリゴ糖の化学合成やその天然資源からの精製に よる手法よりもより効率的なものである。まず第一に、必要な化学物質は酵素基 質のみであり、この殆どは容易に入手でき、あるいは合成できるからである。第 二に、酵素的手法による合成は希望する物質と基質の加水分解によるヌクレオチ ドモノフォスフェートあるいはヌクレオチドジフォスフェートのみを産生するか らである。後者の二つの薬剤は、動物細胞中における上記反応の天然副生物とし て見いだされるものであって、基本的には毒性がなく、得られたオリゴ糖合成産 物から容易に分離できる。 これに対し、化学合成手続きによれば、除去しなければならない多くの副反応 産物を生成するのが普通であり、これらは有毒であることもある。また、天然資 源からのオリゴ糖の精製においては、天然物質中に存在する他の汚染オリゴ糖を 除去しなければならない。 第三の点として、酵素的触媒反応は非常に効率がよいことが挙げられる。基質 から産生物への変換は実質的に完全に達成される。これに対して、上記構造体の 化学合成は多工程からなるものであって、各工程における収率は100%には程 遠いものであるとともに、現行の化学合成手続きの全体的効率は、酵素による合 成で達成可能な効率に近づくものでない。また、天然物質からのオリゴ糖の精製 は、汚染された、無関係の、および/または望まないオリゴ糖から希望するオリ ゴ糖を分離するのに必要な精製手続きに固有の顕著なロスと、希望するオリゴ糖 の不十分な単離を伴うものである。 合成用途のためのグリコシルトランスフェラーゼ類は動物組織から精製するこ ともできるが、そのような精製はそれ自身では不充分である。なぜならこれらの 酵素は典型的には非常に低量で存在するものであるからである。本発明はこれら の酵素を多量に提供するための二つのメカニズムを提供する。 第一にこれは比較的多量の酵素を産生する動物細胞を構築、選択することによ ってなされる。あるいは本発明は、これらの酵素をコードするクローン化cDN Aを単離し、ないしはこれらの酵素をそのようなクローン化cDNAや遺伝子か らもたらされる情報を介してこれらの酵素をコードする合成遺伝子を構築するメ カニズムを提供する。これらのクローン化核酸配列は、次いで標準的リコンビナ ントDNA技術によって多量のグリコシルトランスフェラーゼを生成するために 用いることができる。 (iii)研究用試薬として直接用いることができる、もしくは研究的利用の ための抗グリコシルトランスフェラーゼ抗体を生成するために用いることができ るリコンビナントグリコシルトランスフェラーゼを生成するために好適な試薬を 単離するという用途。 本発明はこれらの酵素を多量に得るための二つのメカニズムを提供するもので あるが(上記(ii)参照、すなわち特別に構築された動物細胞、またはこれら の酵素をコードする天然若しくは合成遺伝子を利用するもの)、このメカニズム はオリゴ糖や糖タンパクの構造や機能を調べるための研究用道具として用いるこ とができるであろう。同様に、この方法によって産生された酵素やこの方法によ って提供された核酸配列およびタンパク配列は、その酵素に対する抗体を生成す るために用いることができるであろう(クローン化された酵素のcDNAや遺伝 子に由来する配列を有する合成ペプチドでの免疫、あるいはリコンビナント酵素 での直接的免疫によって)。 上記の抗体は、上記酵素の生合成や反応工程を研究するための研究用試薬とし ても用いることができるとともに、本明細書に記載するすべての用途における精 製の助剤としても用いることができる。 (iv)診断用試薬としてのグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体。 上記グリコシルトランスフェラーゼ類の内のあるものは体液中に存在する腫瘍 マーカーと関連がある。これらの酵素は典型的には体液中の活性試験で検定され てきたが、これは競合するグリコシルトランスフェラーゼ活性のために非特異的 となる場合がある。上記試験はまた感受性が低いこともある、なぜなら不活性酵 素が腫瘍マーカーとして有用である場合があるが、その場合にはそのような酵素 は酵素活性試験では検出されえないであろうからである。 本発明は上記の酵素に対する抗体を生成するメカニズムを提供するものである (クローン化されたグリコシルトランスフェラーゼcDNAや遺伝子からの情報 によって構築される合成ペプチドに対する、あるいはリコンビナントグリコシル トランスフェラーゼによって産生される酵素に対する、あるいはまた本方法によ って構築された動物細胞によって産生された酵素に対する、モノクローナル抗体 およびポリクローナル抗体)。特定のグリコシルトランスフェラーゼ類に対して 特異的な抗グリコシルトランスフェラーゼ抗体は、本手段によって得ることがで き、かつ、酵素活性試験をしのぐ特異性と感度で体液中のグリコシルトランスフ ェラーゼを検出、定量するために用いることができる。 (v)分泌性または細胞会合性糖複合体上に新規な糖複合体を生成するための グリコシルトランスフェラーゼ基質特異性のエンジニアリング。 本発明は、適切な公知の突然変異誘発方式によって、野性型の酵素が産生する 糖結合とは異なった糖結合を生成する突然変異体グリコシルトランスフェラーゼ を生成する試薬(クローン化グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子あるいはcD NA)および遺伝子工学的選択方法を提供するものである。この新規な結合は天 然にあるものでもないものでもよく、それらが結合している分子の生物学的活性 を高める成分としての用途を有する。あるいは突然変異誘発と選択的手法によっ て、負の優性を示すように作用する突然変異体を生成することができる。このよ うにして得られた負の優性の突然変異体は、それから得られる生成物が望ましく ないものである場合には、内因性グリコシルトランスフェラーゼ活性を不活化す るために用いることができる。 本発明は、上記酵素の表面発現産物を同定するために考案された方法によって グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子(および翻訳後修飾を行う酵素の合成へと 導く遺伝子)を単離することを可能とするものであり、標準的な分子クローニン グ法が要求する酵素精製の必要がない(すなわちその酵素の一次構造についての 情報やその酵素に対する抗体の必要がない)。 本発明方法を実行してみた一例における結果は、グリコシル化に関し特異的な 能力を有する細胞の生成であった。実施の詳細は、本発明の発明者によってなさ れた次の文献に記載されている:J.Biol.Chem.(1989)264 (6):3436−3447及びJ.Biol.Chem.(1989)264 (19):11158−11167、これらを本明細書の一部を構成する情報と しててここに援用する。 要点を述べれば、本発明方法のこの実施例においては、希望する糖複合体を構 築する特異的な能力を有する培養動物細胞株の生成が包含されるものであり、こ れは、希望する酵素を発現する細胞から得た遺伝子材料を用いて、希望するグリ コシルトランスフェラーゼやその産物を発現しない細胞中に外因性の遺伝子材料 を導入することによって達成される。次いで陽性選択手続きによって、細胞表面 において酵素産物を発現する形質移入細胞を同定する。続いてこの新たな表現型 をもたらした形質移入遺伝子配列を、遺伝子ライブラリ構築および核酸ハイブリ ダイゼーションを含む標準的手続きによって単離する。この方法によれば酵素を 精製する必要なしにグリコシルトランスフェラーゼの発現を決定する遺伝子材料 を単離できるものである。 遺伝子の単離方法は、分散し反復するヒトDNA配列(Alu)の利用を包含 する上記配列のハイブリダイゼーション手続きによる検出と単離の手続きによっ て示し、「タグ」付で形質移入された配列については他の方法によって示す。こ こで当該他の方法としては希望の遺伝子の同定・単離を核酸ハイブリダイゼーシ ョンや遺伝子選択手続きによって可能とするDNAマーカーの形質移入されたD NAへの連結が挙げられる(たとえばsupFまたはG418耐性”Neo”配 列)が、これに限定されるものではない。 適切な表現型を有する形質移入された細胞を選択するための方法として3つの 方法、即ちフローサイトメトリー、ロゼット法、およびパンニングを実施例I、 II、およびIIIにそれぞれ記述する。実施例においては酵素産物に特異的な 抗体を用いたか、他の非抗体試薬も表面発現された酵素産物を特異的に認識する ものであれば用いることができる(植物や動物のレクチンを含む)。 本発明が提供する酵素は、対応する生(native)酵素と比較してユニークな特 徴を有する。天然由来のグリコシルトランスフェラーゼを精製し、得られた産物 の相同性についての要求を提起した。とはいうもののこの相同性の要求は、調整 物をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって分析することによって なされた。古い(即ち1982年より前)文献においては、同質の(homogeneou s)酵素は、クーマシーブリリアントブルー染色あるいは他の染色法によって同 定されたが、それらは同時代の銀染色手法よりもはるかに感受性が低いものであ る。よってそのような調整物は同質とは言いかたいものであったことはほぼ確定 的である。 より新しい文献においては、銀染色法によって3つのグリコシルトランスフェ ラーゼが分析されている(すなわちラットのシアリル−T、GlcNAc−T− IおよびGlcNAc−T−II)。これらは実質的に汚染タンパクを含有しな いように見受けられる。それにもかかわらずこの精製手続きによって得られた最 終の精製タンパクの少量を上記した感受性を有する銀染色法で分析すると、その 感受性は充分なものではなく、使用した少量の精製タンパクにおいて約5−10 重量%の汚染物質のレベルを検出することができなかった。従って、本発明の前 においては、最低95%好ましくは最低98%の純度レベルを有するグリコシル トランスフェラーゼ類は得られていなかった。本発明のリコンビナントグリコシ ルトランスフェラーゼは、クローン化グリコシルトランスフェラーゼDNA配列 を用いて大量に、溶解した形態であるいはアフィニティー精製可能なタンパクセ グメントに融合した形で、さらに従前得られていなかった均質な状態で得ること ができるものである。 上記のように、本発明が提供するタンパクは非グリコシル化形態となしうると いう点でも従来得られたタンパクとは異なるものである。すべての天然由来グリ コシルトランスフェラーゼが糖タンパクでないにしても、多くのものがそれ自身 一以上のN−結合性および/またはO−結合性のオリゴ糖構造体を含有する。こ の構造体はそれ自身、当該酵素自身によって例えば酵素リアクター中などにおい てグリコシル化されるので、反応効率を低下させ酵素活性ロスを引き起こすアク セプタ基質と比肩するものである。この”自動グリコシル化”現象は、酵素およ び/またはバイオリアクターの触媒効率を不活化ないし低くする能力を有してい る。 クローン化グリコシルトランスフェラーゼ類の使用はこの問題を回避する方法 を提供するものである。まず、グリコシルトランスフェラーゼ類をグリコシル化 する能力のない大腸菌などの細菌性宿主中において、クローン化グリコシルトラ ンスフェラーゼを発現させると、多量のグリコシル化されていないグリコシルト ランスフェラーゼが産生される。これらのリコンビナントタンパクをバイオリア クター中で使用すると、そのタンパクはグリコシル化されていないので、上記の 理由により天然由来のグリコシル化された酵素よりその性能において勝るものと なる。 また、もしこれらの酵素をリコンビナント酵素をグリコシル化できる真核細胞 宿主中で発現することが必要な場合には、標準的な部位指向性突然変異誘発手法 で、リコンビナントタンパクから、動物細胞に対し当該酵素をグリコシル化させ るように作用するアミノ酸シグナルを除去するために用いることができる。この ような公知のシグナルとしては、アスパラギン結合性グリコシル化を許容するN −X−TまたはN−X−S単位を有するアスパラギン残基やO−結合性グリコシ ル化の基質であるいくつかのセリンおよびスレオニン残基が挙げられる。 グリコシルトランスフェラーゼをコードするDNA配列の改変については、標 準的突然変異誘発法によってそのN、S、T残基をコードするコドンを除去する か、または類似の物理的性質を有するがN−結合性またはO−結合性のグリコシ ル化を支援することができないアミノ酸を決定するコドンへと各々のコドンを変 化させることによってこれを行うことができる。本発明はまた独自の突然変異リ コンビナントグリコシルトランスフェラーゼ類を提供するものである。グリコシ ルトランスフェラーゼ遺伝子やcDNAの単離・発現は、天然に存在する酵素が 元来有する固定した特性よりも優れた特性を有する突然変異グリコシルトランス フェラーゼを生成する機会を提供するものである。以下に示す幾つかの特性を有 する突然変異グリコシルトランスフェラーゼを得るために、部位指向性もしくは ランダム突然変異誘発に基づく標準法を利用することができる。 (1)最小の触媒ドメイン: グリコシルトランスフェラーゼタンパクからのア ミノ酸除去を向上させることができるとともに、得られた突然変異グリコシルト ランスフェラーゼの活性試験を行うことができる。グリコシルトランスフェラー ゼ分子の異なった部分に関するすでに知られている機能に基づき、触媒活性を有 する突然変異グリコシルトランスフェラーゼであって(a)溶解性のもの(即ち 天然のグリコシルトランスフェラーゼを不溶性とするためバイオリアクターに用 いるのに不適切なものとする天然グリコシルトランスフェラーゼ上のトランスメ ンブランセグメントを欠くもの)、および(b)天然のグリコシルトランスフェ ラーゼよりも大幅に小さいもの(トランスメンブランセグメントと”幹”領域を 保持するもの。この何れもが触媒活性にとっては不要である)、であるような突 然変異グリコシルトランスフェラーゼが産生できるものと予想される。 タンパク重量に基づくと、突然変異グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子ある いはcDNAから得られる小さな触媒活性ドメインは、天然に存在して触媒的に 不活性なトランスメンブランおよび/または幹領域にそってタンパクの”荷物” (baggage)を有するより大きなグリコシルトランスフェラーゼよりも高い触媒 活性を示す。 このように、リコンビナント突然変異体由来の触媒ドメインは、オリゴ糖の試 験管内合成(例えばリアクターを用いて)に使用するためにははるかに効率的で ある。グリコシルトランスフェラーゼ類におけるmRNAの増幅手法: グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を単離するための遺伝子伝達に使用され る遺伝子工学的材料(cDNAライブラリ構築のためのmRNA、またはゲノム ライブラリ構築やゲノムDNA形質移入のためのゲノムDNA)のソースとして の細胞株に対し、上記方法を最適化するような処理を行う。細胞株に対する選択 手続きによってグリコシルトランスフェラーゼmRNAの安定状態のレベルを高 め、および/または選択された細胞のおのおのの遺伝子を増幅してその多コピー をドナー細胞に存在するようにさせる。これは、より多量のグリコシルトランス フェラーゼオリゴ糖産物をたとえば細胞表面などに発現する細胞の変種を選択す る手続きに細胞株を付すことによってなされる(化学的、照射、あるいはその他 の突然変異誘発方法のあとでまたはそれらの方法抜きで)。このタイプの手法を 実施例IIに示す。 オリゴ糖産物分子の多くが細胞内の同族グリコシルトランスフェラーゼ酵素分 子の多くと相関関係にあり、かつグリコシルトランスフェラーゼmRNAの安定 状態レベルの上昇と相関している。グリコシルトランスフェラーゼmRNAのレ ベルが高いことにより、それぞれのcDNAのより多くのコピーが高発現突然変 異細胞株から調製されたcDNAライブラリ中に存在することとなり、従ってこ のライブラリからグリコシルトランスフェラーゼcDNAを奪取する可能性が増 す。ある場合には、特定のmRNAがより高いレベルであるということは同族の グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子のコピー数の増加と関連している場合もあ ろう。そのような増幅されたグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子は、他の無関 係な遺伝子よりも細胞ゲノム中においてより大量に含まれ、あるいは親の選択さ れていない細胞株においてより大量に含まれるため、ゲノムDNAライブラリま たはゲノムDNA形質移入の手法による単離がより容易である。 形質移入の研究によって、癌遺伝子が幾つかのグリコシルトランスフェラーゼ 類の発現を増大させることを示すことができる。即ち、癌遺伝子を含有し容易に 入手できるベクターを用いる標準的な形質移入法によって、一以上の癌遺伝子に よる形質移入で細胞株を修飾し、その結果得られる形質移入されたクローンを試 験してグリコシルトランスフェラーゼレベルの上昇を調べることができる。その ようなクローンはまた、下記の実施例I、II、およびIIIに簡略に示すFA CSあるいはレクチン選択法によっても同定・選択することができる。これらの クローンは、上記のようにcDNAライブラリを調製するために用いることがで きる。 多くの化学的試薬が細胞株におけるグリコシルトランスフェラーゼの発現、あ るいは発現の増加をもたらすものとして示されている。これは細胞株の試験管内 分化と関連があると考えられ、そのような試薬としてはレチノール酸が挙げられ 、また、ジメトキシスルフォキシドで誘起されるヒトおよびマウスの造血前駆体 の分化と関連があると考えられる。これらはいくつかのグリコシルトランスフェ ラ ーゼの発現の増加を伴っている。これが起こる理由は問題のグリコシルトランス フェラーゼのmRNAの安定状態が上昇するためであり、これを利用してcDN Aライブラリ介在の形質移入手法によって同族のクローン化cDNAを単離する 能力を高めることができる(下記実施例11参照)。 酵素を精製する必要なしに細胞表面で酵素産物を検出する方法である、遺伝子 や動物グリコシルトランスフェラーゼ(あるいは他の翻訳後修飾酵素)をコード するクローン化cDNAを単離するための別法としては以下のものがある:希望 する酵素を発現した細胞や組織から調製されたmRNAを用いて、哺乳類または イースト宿主中においてクローン化cDNAを発現するプラスミドまたはファー ジ中にcDNAライブラリを構築する。このようにして得たcDNAライブラリ をスクリーニングして希望するcDNAを検出する。この検出は、多量の酵素を 発現しないかその表面発現された産物を発現しない宿主細胞株であるとともに必 要な酵素基質分子を有するものであってかつその表面上に酵素のオリゴ糖産物を 顕出することができる宿主細胞中に当該ライブラリを導入することによってなさ れる。cDNAライブラリに取り込まれた宿主細胞は、希望するcDNAを含有 する細胞を選択する選択手続きに付され、フローサイトメトリー、ロゼット法、 あるいはパンニング、および当該酵素のオリゴ糖産物に対して特異的な試薬によ って、対応する新規なオリゴ糖産物を発現する。希望する酵素の発現を指向する クローン化cDNAは、選択された細胞から標準法で単離される。 この手法は以下の技法とともに用いられる: 1.動物細胞への安定した形質移入、選択、次いで用いたベクターにより核酸 ハイブリダイゼーションまたはCOS細胞融合技法による希望のクローンcDN Aの奪取。 2.COSまたはWOP細胞への過渡形質移入、選択、次いでシード、Pro c.Nat’1.Acad.Sci.(USA)(1987)84:3365− 3369による方法、あるいは哺乳類細胞においてエピソームとして複製される cDNAクローンベクターを利用するものである類似の方法(マルゴルスキーら 、Mol.Cell.Biol.、(1988):2837−2847による 希望のクローン化cDNAの奪取。 3.イースト細胞の形質転換、選択、次いで核酸ハイブリダイゼーションによ る希望のクローン化cDNAの奪取。 加えて、哺乳類cDNA発現ライブラリはまた、関連あるグリコシルトランス フェラーゼ(または翻訳後修飾に関与する他の酵素)をコードするクローン化c DNAを含有するcDNA分子のプールを検出する酵素検定を用いて、シブの選 択法によってスクリーニングすることができる。特に、適当なグリコシルトラン スフェラーゼを発現する細胞から調製されたmRNAを用いてcDNAライブラ リを哺乳類発現ベクター(プラスミドまたはファージ)に構築することができる 。 このライブラリは、まずクローンを含有するバクテリア細胞のプール中に分配 してスクリーニングに付す。ここで各プールはそのライブラリのある分画を表す か、プールの総体は全ライブラリを表すものである。各プールの一部を取り置き 、残部(取りおかれたクローンのシブを含有する)はcDNA−ベクタ−DNA 分子(即ちプラスミドまたはファージDNA)を得るために処理する。各プール から調製したDNAは別個に、上記の適切な宿主細胞の一つに導入し(1、2、 および3を参照)、ついで適当な発現時間経過後、形質移入されたあるいは形質 転換された宿主細胞から抽出物を調製し、得られた抽出物が適切なグリコシルト ランスフェラーゼ活性を有するかどうか検定する。適切な酵素の合成を指向する プラスミドを含有することが判明した最小のプールを、取り分けておいたものか ら検索して再分割する。再びこれらの再分割されたプールの代表部分を取り置き 、残部(これも取りおかれたクローンのシブを含有する)を処理してプラスミド DNAを得、形質移入あるいは形質導入工程、発現、抽出、さらに酵素検定へと 移行する。このプロセスを、関連あるグリコシルトランスフェラーゼの発現を指 向する単一のクローンが単離されるまで繰り返す。このように、このプロセスは 、適切なクローン化cDNAや遺伝子を単離するために酵素産物の表面発現に依 存することがない。この手法の一例を実施例IIIに示す。 本発明で用いられる手続きは、必ずしも宿主の相補的遺伝子によって限定され る必要はない。本発明の遺伝子伝達に関する特徴は、通常レシピエント細胞にお いては発現しないかあるいは存在さえしない遺伝子の発現を可能とする点にある 。本明細書においては特にグリコシルトランスフェラーゼへの適用を記載するが 、 硫酸化、リン酸化、メチル化、脂肪酸アシル化、およびグリコシル修飾の除去( グリコシルハイドロラーゼ)等、他の翻訳後修飾の形態を制御する酵素や遺伝子 にも適用可能なものである。 ここまで記載した方法は、優性のグリコシル化の特徴を見いだす選択によるグ リコシルトランスフェラーゼ遺伝子やcDNAの単離に関するものであった。C OS細胞やWOP細胞において用いられる過渡的発現系もまたCOSやWOP宿 主中にすでに存在するグリコシルトランスフェラーゼトランスクリプトに同型の cDNAを同定しクローン化するために用いることができる。 特に”アンチセンス”定位に転写されたクローン化cDNAは、同族のグリコ シルトランスフェラーゼの発現をCOSあるいはWOP宿主から除去し、よって 劣性のグリコシル化の特徴をもたらすであろう。このようなDNA配列は、次い で再び以下に示す手続き(フローサイトメトリー、ロゼット法、およびパンニン グ)によって、実施例I、II、およびIIIに詳細に述べるように、発現が除 去されたグリコシルトランスフェラーゼによって認識されるオリゴ糖結合の表面 発現を選択する選択手続きに付して単離することができる。あるいは、シブ選択 手法を用いて内因性グリコシルトランスフェラーゼの発現を低減あるいは除去す るクローン化cDNA分子を酵素検定と同様にして同定することができる。 本発明のDNA配列と対応するグリコシルトランスフェラーゼを以下の表に示 す。 表1 A.Fuc−TIII(ルイス酵素)、配列認識番号1(DNA)および配列認 識番号2(タンパク)。 DNA: 少なくとも配列認識番号1のヌクレオチド位置199から1158 までであって、配列認識番号1の全体に至るまで。 タンパク:少なくとも配列認識番号2のアミノ酸位置43から361までであ って、配列認識番号2の全体に至るまで。 B.ネズミα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ、配列認識番号3(D NA)および配列認識番号4(タンパク)。 DNA: 少なくとも配列認識番号3のヌクレオチド位置463から1461 までであって、配列認識番号3の全体に至るまで。 タンパク:少なくとも配列認識番号4のアミノ酸位置63から394までであ って、配列認識番号4の全体に至るまで。 C.ヒトα(1,2)フコシルトランスフェラーゼ、配列認識番号5(DNA) および配列認識番号6(タンパク)。 DNA: 少なくとも配列認識番号5のヌクレオチド位置4782から578 3までであって、配列認識番号5の全体に至るまで。 タンパク:少なくとも配列認識番号6のアミノ酸位置33から3365までで あって、配列認識番号6の全体に至るまで。 D.Fuc−TIV、配列認識番号7(DNA)および配列認識番号8(タンパ ク)。 DNA: 少なくとも配列認識番号7のヌクレオチド位置2089から315 9までであって、配列認識番号7の全体に至るまで。 タンパク:少なくとも配列認識番号8のアミノ酸位置50から405までであ って、配列認識番号8の全体に至るまで。 E.Fuc−TV、配列認識番号10(DNA)および配列認識番号11(タン パク)。 DNA:少なくとも配列認識番号10のヌクレオチド位置247から111 1までであって、配列認識番号10の全体に至るまで。 タンパク:少なくとも配列認識番号11のアミノ酸位置43から374までで あって、配列認識番号11の全体に至るまで。 F.Fuc−TVI、配列認識番号13(DNA)および配列認識番号14(タ ンパク)。 DNA:少なくとも配列認識番号13のヌクレオチド位置255から1208 までであって、配列認識番号13の全体に至るまで。 タンパク:少なくとも配列認識番号14のアミノ酸位置43から359までで あって、配列認識番号14の全体に至るまで。 配列認識番号1は、GDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1,3)] −D−GluNAc(/Glc)α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラ ーゼとして機能することができるFuc−TIIIと命名されたタンパク配列をコ ードする。このタンパクは、本出願人の同時係属中の1990年10月25日出 願の米国特許出願番号第07/603,018号に開示された内皮白血球接着分 子−1(ELAM−1)に対するオリゴ糖リガンドを構築するために用いうる酵 素である。なお、上記米国出願をここに本明細書を構成する一部として援用する 。このリガンドはシアリル−ルイスx分子である。また、この酵素は、ここに記 述されるクローン化DNA配列で発現されたとき、哺乳類細胞中においてそれら の細胞上で特定の細胞表面糖複合体構造を新たな発現を生み出すように機能する 。このような構造は、以下の細胞表面糖複合体構造に対する抗体によって認識さ れる(図8と表2参照)。 SSEA−1またはルイスx Galβ(1,4)[Fucα(1,3)] GlcNAc シアリル−ルイスx NeuAcα(2,3)Galβ(1,4) [Fucα(1,3)]GlcNAc ルイスa Galβ(1,3)[Fucα(1,4)] GlcNAc シアリル−ルイスa NeuAcα(2,3)Galβ(1,3) [Fucα(1,4)]GlcNAc 上記のDNA配列(I)においては、アミノ酸位置43から361までに対応 する配列が機能的であるば、これより大きい全配列に至るものまでを用いてもよ い。 この酵素は、ここに記載するクローン化DNA配列によって発現されたとき、 DNA配列を発現する細胞から調製された抽出物中で検定すると、その名が示し ている酵素様式の作用を示す(表2参照)。この酵素によるオリゴ糖産物は、中 性またはα(2,3)シアリル化”タイプII”アクセプターにα(1,3)の 形態で結合したフコースを表すか、あるいは中性またはα(2,3)シアリル化 ”タイプI”アクセプターにα(1,4)の形態で結合したフコースを表す(下 表参照)。 SSEA−1またはルイスx Galβ(1,4)[Fucα(1,3)] GlcNAc シアリル−ルイスx NeuAcα(2,3)Galβ(1,4) [Fucα(1,3)]GlcNAc ルイスy Fucα(1,2)Galβ(1,4)[F ucα(1,3)]GlcNAc ルイスa Galβ(1,3)[Fucα(1,4)] GlcNAc シアリル−ルイスa NeuAcα(2,3)Galβ(1,3) [Fucα(1,4)]GlcNAc ルイスb Fucα(1,2)Galβ(1,3) [Fucα(1,4)]GlcNAc 本明細書の以後の部分においては、これらの産物は末端近傍のα(1,3)お よびα(1,4)フコース残基と称する。 この酵素の触媒ドメインは、発現研究によって局在化させることができた。こ のcDNAによってコードされた酵素の酵素特性および染色体の局在化研究の結 果、このcDNAはヒト・ルイス血液型遺伝子座の産物であることがわかる。 このDNA配列と対応するタンパクは次の用途を有する: (i)この酵素(診断薬や治療薬を産生するための酵素)の産物を表す末端近傍 のα(1,3)およびα(1,4)フコース残基によって、細胞表面上、細胞間 のまたは分泌されたタンパクあるいは脂質上におけるオリゴ糖の翻訳後修飾に関 する特定の能力を有する動物細胞を構築すること。 特に、本発明のクローン化DNA配列は、標準的な方法によって、通常は同族 酵素やその産物(オリゴ糖上の末端近傍のα(1,3)およびα(1,4)フコ ース残基)を発現しない哺乳類細胞株へと導入され、当該細胞中で”センス”方 向に転写される結果、細胞表面上、細胞間、または分泌された糖タンパクや脂質 上に末端近傍のα(1,3)およびα(1,4)フコース残基を発現できる細胞 株を産する。 あるいは、このクローン化されたDNA配列は、標準的な方法によって、同族 酵素やその産物(末端近傍のα(1,3)およびα(1,4)フコース残基)を発現する 哺乳類細胞株へと導入され、当該細胞中で”アンチセンス”方向に転写 される結果、細胞表面上、細胞間、または分泌された糖タンパクや脂質上に末端 近傍のα(1,3)およびα(1,4)フコース残基を発現できない細胞株を産 する。また、内因性のGDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1,3)] −D−GlcNAc(/Glc)α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラ ーゼ遺伝子は、同族の酵素を発現する哺乳類細胞において、相同リコンビナント 法や、ここに記載するDNA配列に基づく”アンチセンス”遺伝子発現もしくは オリゴヌクレオチド手法によって、さらにはまた内因性のGDP−Fuc:[β −D−Gal(1,4/1,3)]−D−GlcNAc(/Glc)α(1,3 /1,4)フコシルトランスフェラーゼを不活化するものであって突然変異誘発 および遺伝子選択図式から得られる、優性陰性突然変異フコシルトランスフェラ ーゼ配列を本明細書中の配列情報と組み合わせて用いて、ここに記載するDNA 配列で不活性化することができる。 この方法は、診断や治療のための材料を産生する宿主細胞として好適な動物細 胞株を構築するのに用いることができるが、ここにおいてそれらの材料の有用性 や効果は、クローン化されたDNA配列とそれと同族の酵素によって決定される 特定の翻訳後修飾に依存するものである。例えば、多くの治療的タンパクやペプ チド、リコンビナントなどの生物学的有効性は、それらの物質に共有結合的に結 合しているオリゴ糖構造に決定的に依存しているであろうという点についてはす でに知られている。このオリゴ糖の構造は、基本的には上記治療的産物を産生す るために用いた細胞中に見いだされるグリコシルトランスフェラーゼ酵素の数と 種類によって定まる。 動物細胞や酵母はこのようなグリコシル化反応を行う能力を有する。しかしな がら、すべてのグリコシルトランスフェラーゼ酵素が各動物細胞や酵母によって 産生されることはなく、従って幾つかのオリゴ糖構造(ここに記載するDNA配 列によってコードされる酵素によって生成される末端近傍のα(1,3)および α(1,4)フコース残基を含む)は、そのような動物細胞や酵母によっては産 生されない。 この逆もまた真であり、即ち、酵素産生細胞はここに記載するDNA配列でコ ードされるGDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1,3)]−D−Gl cNAc(/Glc)α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼに類似 のあるいはこれと同一のグリコシルトランスフェラーゼを発現するものであるか もしれない。 末端近傍のα(1,3)及びα(1,4)フコース残基は、哺乳類やその他の 真核性宿主によって産生される天然あるいはリコンビナントの治療薬または診断 薬(糖タンパクまたは糖脂質)の生物活性を改変(よかれあしかれ)するものと 考えられる。このようなリコンビナント剤を産生するために用いられる真核宿主 細胞は、本発明が記述するDNA配列情報や関連する情報によって変化を受ける が、この情報は、末端近傍のα(1,3)及びα(1,4)フコース残基を希望 する宿主においてここに記載するクローン化された配列全体または配列の一部を 発現させることによりリコンビナント産物上のオリゴ糖に付加させるものである 。あるいは、末端近傍のα(1,3)及びα(1,4)フコース残基は、上述の 形質移入された”アンチセンス”ベクター構築物、組換えに基づく遺伝子の不活 化、”アンチセンス”オリゴヌクレオチド手法もしくは負の優性の突然変異フコ シルトランスフェラーゼを用いることにより、宿主細胞において産生された産物 から除去することができる。 このプロセスに関する従来の”方法”としては、適切に修飾されたリコンビナ ントまたは天然の産物を得るために用いる手法であって、特定の酵素やこれと類 似のあるいは同一の機能を有する酵素を発現する、あるいはしない細胞株を同定 する経験的手法が挙げられる。これは常に最適なものとは限らない、なぜならこ の特定の翻訳後修飾能を有する細胞株は天然には存在しないかもしれないし、ま た適切に修飾された産物を多量に得るには適切でないかもしれないからである。 一方、経験的手法によって同定された動物細胞株から産生される治療的物質に存 在する末端近傍の不要なα(1,3)及びα(1,4)フコース残基は、化学的 にあるいは酵素的に除去しなければならないば、これは費用がかかるか、または 非効率である。 ここに記載するクローン化された機能的なDNA配列と上記の技法との組合わ せの使用を従来法に比べた場合の利点としては、末端近傍のα(1,3)及びα (1,4)フコース残基を糖タンパクや糖脂質のオリゴ糖上に生成する能力を特 異的に欠く株を構築できることがあげられる。適切に構築されれば、このように して得た細胞株からは、不要な末端近傍のα(1,3)及びα(1,4)フコー ス残基を除去するために治療・診断薬を化学反応や酵素反応に付す必要がない。 さらに、末端近傍のα(1,3)及びα(1,4)フコース残基がもし動物細胞 から産生される特定の診断・治療用産生物として望ましい場合には、細胞株をこ こに記載するクローン化DNA配列で処理して当該残基を生成することができる 。 (ii)オリゴ糖を酵素的手法によって効率的に合成、産生(例えば酵素リア クターを用いて)するのに適切な試薬の単離。 オリゴ糖は器官移植の分野において免疫調製反応剤としての治療的用途を有し ている。特に溶解性および固体相のオリゴ糖は、器官のドナーとレシピエントと の間にルイス式血液型を含む主要血液型抗原系の相違による不適合性が存在した 場合の抗体介在移植拒否反応を阻止、あるいは緩和する治療薬としての用途を有 する。また、溶解性オリゴ糖は、細菌性、ウイルス性、または寄生虫性の病原体 が動物組織に侵入したとき、その組織上に見いだされる糖複合体”レセプター” へこれらの病原体が付着するのを阻止する治療薬としての用途を有する。 例えば、ルイス血液型オリゴ糖抗体(末端近傍のα(1,3)及びα(1,4 )フコース残基を含む)の一部は、ウロパトゲン性の細菌のある形態のものに対 しては”レセプター”として働くという証拠がある。またさらに、末端近傍にα (1,3)及びα(1,4)フコース残基を含む糖複合体は、白血球−ELAM −1相互作用の様な細胞間の接着現象の調整や、発生と分化の過程における細胞 とその環境との間の接着現象の調整に関与している。これらの現象の例としては 精子と卵子の接合が挙げられ、その最初の現象は着床の初期において有精卵が子 宮壁に付着することを仲介するものである。このような観察結果は、一例として 、(生物学的に「天然の」)オリゴ糖分子を避妊薬として使用する可能性が存在 す ることを示すものである。この酵素によって構築されるオリゴ糖分子は白血球− ELAM間の相互作用を断ち、その結果抗炎症剤としての作用を有する。 現在、末端近傍にα(1,3)及びα(1,4)フコース残基を含有するオリ ゴ糖が化学合成によって(但しこれは非効率的であるか、費用がかさむか、ある いはその両者である)、または天然資源からの単離によって(これは費用がかか り非効率的な手続きによるものであって、しばしば大量の動植物材料を処理する 必要があり、また希望のオリゴ糖を他の汚染されたオリゴ糖から精製して得る必 要があるものである)産生されている。 ここに記載の本発明は、精製したGDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4 /1,3)]−D−GlcNAc(/Glc)α(1,3/1,4)フコシルト ランスフェラーゼ即ちFuc−TIIIを大量に合成するためのメカニズムを提 供する。本発明は、酵素バイオリアクター(溶解された、あるいは固相マトリッ クス上に固定化された酵素を使用するものであって、末端近傍にα(1,3)及 びα(1,4)フコース残基を含有する構造体を酵素的に合成可能ならしめる、 当該酵素(クコウスカ−ラターロら、Genes Devel.(1990) :1288−1303を参照)の触媒領域と融合したプロテインA成分を介すな どしてこのバイオリアクターを製作するために用いることができる。 この手法は、種々の理由から末端近傍にα(1,3)及びα(1,4)フコー ス残基を含有する構造体を化学的に合成する手法やそれらを天然物から精製する 手法よりもより効率的なものである。まず第一に、必要な化学物質は酵素基質と コファクターのみであり、この殆どは容易に入手でき、あるいは合成できるから である。第二に、酵素的手法によるそのような構造体の合成は、希望する物質と 、基質の加水分解によるヌクレオチドジフォスフェートのみを産生するからであ る。後者の薬剤は、動物細胞中において上記反応の天然副生物として見いだされ るものであって、基本的には毒性がなく、得られたオリゴ糖合成産物から容易に 分離できる。これに対し、化学合成手続きによれば、除去しなければならない多 くの副反応産物を生成するのが普通であり、これらは有毒であることもある。ま た、天然資源からのオリゴ糖の精製においては、天然物質中に存在する他の汚染 オリゴ糖を除去しなければならない。 第三に、酵素的触媒反応は非常に効率がよい。基質から産生物への変換は実質 的に完全に達成される。これに対して、オリゴ糖上の末端近傍にα(1,3)及 びα(1,4)フコース残基を化学合成するプロセスは多工程からなるものであ って、各工程における収率は100%には程遠いものであるとともに、現行の化 学合成手続きの全体的効率は、酵素による合成で達成可能な効率に近づくもので ない。また、末端近傍にα(1,3)及びα(1,4)フコース残基を含有する オリゴ糖を天然物質から精製するにあたっては、汚染された無関係のオリゴ糖か ら希望するオリゴ糖を分離するのに必要な精製手続きに固有の顕著なロスを伴い 、希望するオリゴ糖の単離も不十分である。 ここに記載のDNA配列によってコードされるGDP−Fuc:[β−D−G al(1,4/1,3)]−D−GlcNAc(/Glc)α(1,3/1,4 )フコシルトランスフエラーゼは、合成用途のため動物組織から精製することも できるが、そのような精製はそれ自身では不充分である。なぜならこの酵素は典 型的には非常に少量しか存在しないものであるからである。 本発明はこれらの酵素を多量に提供するための二つのメカニズムを提供する。 第一にこれは比較的多量の酵素を産生する動物細胞を構築、選択することによっ てなされる。あるいは、このクローン化核酸配列は、標準的リコンビナントDN A技術によって多量のグリコシルトランスフェラーゼを酵母中あるいは真核細胞 宿主において生成するために用いることができる。さらにこの酵素をコードする 配列に対し、標準的な分子クローニング図式あるいは突然変異誘発を適用して修 飾を行うことができ、野性型の酵素より好ましい新たな特性を有するリコンビナ ントフコシルトランスフェラーゼを産することができる。 たとえば、酵素に対する修飾は、それをより安定にするように、あるいはバイ オリアクターへの固定化に関しより適切なものとするように行うことができる。 (iii)研究用試薬として直接用いることができる、もしくは研究的利用の ためのGDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1,3)]−D−GlcN Ac(/Glc)α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼに対する抗 体を生成するために用いることができるリコンビナントGDP−Fuc:[β− D−Gal(1,4/1,3)]−D−GlcNAc(/Glc)α(1,3/ 1,4)フコシルトランスフェラーゼを生成するために好適な試薬を単離すると いう用途。 本発明は上記酵素を多量に産生するための二つのメカニズムを提供するもので あるが(上記(ii)参照、すなわち特別に構築された動物細胞、またはこれら の酵素をコードする天然若しくは合成遺伝子を利用するもの)、このメカニズム はオリゴ糖や糖タンパクの構造や機能を調べるための研究用道具として用いるこ とができるであろう。同様に、この方法によって産生された酵素やこの方法によ って提供された核酸配列およびタンパク配列は、本酵素に対する抗体を生成する ために用いることができるであろう(クローン化された酵素のcDNAや遺伝子 に由来する配列を有する合成ペプチドでの免疫、あるいはリコンビナント酵素で 自身を用いた免疫によって)。このような抗体は、上記酵素の生合成や反応工程 を研究するための研究用試薬としても用いることができるとともに、本明細書に 記載するすべての用途における精製の助剤としても用いることができる。 (iv)診断用試薬としてのグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体。 GDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1,3)]−D−GlcNAc (/Glc)α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼの異常発現はヒ トの悪性腫瘍と関連があり、この酵素が多くのヒト組織における悪性腫瘍につい てそれらを早期に検出するための腫瘍マーカーとしてこの酵素が役に立つことを 示唆している。酵素の腫瘍マーカーは典型的には体液中の活性試験で検定されて きたが、これは競合するグリコシルトランスフェラーゼ活性のために非特異的と なる場合がある。上記試験はまた感受性が低いこともある、なぜなら不活性酵素 が腫瘍マーカーとして有用である場合があるが、その場合にはそのような酵素は 酵素活性試験では検出されえないであろうからである。 本発明は、上記の酵素に対する抗体を生成するメカニズムを提供するものであ る(当該抗体とは即ち、GDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1,3) ]−D−GlcNAc(/Glc)α(1,3/1,4)フコシルトランスフェ ラーゼをコードするcDNAや遺伝子からの情報によって構築される合成ペプチ ドに対する、あるいは真核細胞もしくは原核細胞宿主によって産生されるリコン ビナント酵素に対する、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体)。 このGDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1,3)]−D−GlcNA c(/Glc)α(1,3/1,4)フコシルトランスフエラーゼに対して特異 的に産生された抗体は、酵素活性試験をしのぐ特異性と感度で体液中の本グリコ シルトランスフエラーゼを検出、定量するために用いることができ、悪性腫瘍の 早期発見を可能ならしめる腫瘍マーカーとして役立つ可能性を有するものである 。 (v)フコシルトランスフェラーゼ阻害剤あるいは不活化剤を見いだすための 天然および合成の化合物のスクリーニングにおいてリコンビナント酵素を使用す ること。 多くの研究において、細胞におけるオリゴ糖上の細胞表面末端近傍のα(1, 3)及びα(1,4)フコース残基の数の増加と、その細胞の悪性転移能力の間 には関連があることが判明している。もしそこに因果関係があるなら、本明細書 に記載の配列でコードされる酵素を阻害する薬剤は抗腫瘍剤としての作用を有す るであろう。また、最近の研究の多くによると、末端近傍α(1,3)及びα( 1,4)フコース結合を含有するシアリル化された中性のオリゴ糖は、炎症時に おけるセレクチン付着分子(ELAM−1;GMP−140;Me114/LA M−1)への白血球の付着の仲介に関与している。これらの研究が示唆している ことは、白血球上でのα(1,3)及びα(1,4)フコース結合の合成を防ぐ ことができる分子は、末端近傍のα(1,3)及びα(1,4)フコース結合を 合成・顕示する白血球の能力を低減あるいは除去するように機能するものであっ て、抗炎症医薬となりうるものであるということである。本明細書に記載の試薬 は、抗フコシルトランスフェラーゼ活性を示す化合物を単離・確認するためのス クリーニングに有用なものである、なぜなら本発明のクローン化配列に標準法を 適用して比較的多量の純粋なフコシルトランスフェラーゼを産生できるからであ る。また本発明の試薬はスクリーニングを補佐するものである、なぜなら潜在的 阻害剤の効果が純粋な酵素でテストされることになり、全細胞抽出物や部分的に 精製された酵素を使用した場合に起こりうる混同を生じないからである。 (vi)新規な糖複合体構造を分泌糖複合体あるいは細胞関連糖複合体上に生成 するためのグリコシルトランスフェラーゼ基質特異性のエンジニアリング。 本発明は、次の試薬a)クローン化GDP−Fuc:[β−D−Gal(1, 4/1,3)]−D−GlcNAc(/Glc)α(1,3/1,4)フコシル トランスフェラーゼcDNA)およびそれを単離するために用いる遺伝子工学的 選択方法を提供するものであって、本発明選択方法は、適切な突然変異誘発図式 に則り、野性型酵素によって産生されるグリコシド結合とは異なったグリコシド 結合を生成する突然変異体、GDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1, 3)]−D−GlcNAc(/Glc)α(1,3/1,4)フコシルトランス フェラーゼを生成可能ならしめるものである。上記の新規な結合は天然に存在す るものであっても存在しないものであっても良く、それらが結合した分子の生物 学的活性を亢進する成分としての用途が考えられるものである。 あるいは、突然変異誘発と選択の手段によって、負の優性の法則性のもとに働 く突然変異体GDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1,3)]−D−G lcNAc(/Glc)α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼを生 成することができる。このようにして得た優性の度合いが負である突然変異体は 、内因性のグリコシルトランスフェラーゼによる産物が望ましくない場合には当 該内因性グリコシルトランスフェラーゼの活性を不活化するために用いることが できる。生成される突然変異体GDP−Fuc:[β−D−Gal(1,4/1 ,3)]−D−GlcNAc(/Glc)α(1,3/1,4)フコシルトラン スフェラーゼはまた、例えば試験管内および生体内でオリゴ糖の種々の糖鎖(フ コース、マンノースなど)を加水分解するフコシダーゼとして機能するものでも ある。 (vii)ルイス遺伝子座に関して個体の遺伝子座を定めること。 本発明によるクローン化cDNAに対する遺伝子における、あるいはこれに結 合したDNA配列の多型性は、ルイス遺伝子座に関し、個体の遺伝子座を定める ために用いることができる。これは、器官移植手続きに関する用途とともに、生 体侵入時(例えば尿路感染など)に血液型構造を受容体として用いる病原体によ って引き起こされる感染のし易さを測る物差しとしての用途を有する。 配列認識番号3はマウスUDP−Gal:β−D−Gal(1,4)GlcN Acα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする。配列認識番号 5はヒトGDP−Fuc:β−D−ガラクトシドα(1,2)フコシルトランス フェラーゼをコードする。これらのタンパクの用途は、ほぼ配列認識番号1の酵 素に関して記述した内容と同じである。 配列認識番号5によってコードされる酵素の独特な応用としては、ラクトース アミンやネオラクトタイプβ−D−ガラクトシド上のチェーン・ターミネーター ・ガラクトース残基をα−2−L−フコース残基に酵素的にフコシル化すること が挙げられる。そのような修飾は、精製α(1,2)FT、あるいはその誘導体 類およびその基質であるGDPフコースを用いて、β−D−ガラクトシド残基で 終結しているアシアログリカンでインビトロで行うことができる。上記アシアロ グリカンは天然に存在するものであり、シアリン酸で置換した末端ガラクトース 部を有するグリカンを、試験管内でニュウラミニダーゼによって分解することに よって構築することができる。また、上記フコシル化は、グリカンが、α(1, 2)FT cDNAや遺伝子セグメントによって形質移入された哺乳類細胞にお いて発現されているときに起こるものと考えられる。そのようなα(1,2)フ コシル化グリカンは、高い溶解特性を有する可能性があり、また、血漿中半減期 が長くなる可能性があり(通常は糖タンパクのクリアランスを肝臓のアシアロ糖 タンパク受容体によって仲介する、末端ガラクトース残基がフコース残基によっ て覆われてしまうため)、かつ生物学的活性を亢進させるであろう。 オリゴ糖構造体における、組織特異性を有する発生上の発現パターンの調整に 関して細胞が用いる分子メカニズムについてはほとんど分かっていない。しかし ながらそのようなパターンは、恐らく主に同族のグリコシルトランスフェラーゼ 類の発現の協調的調整によって定まるものと考えられる。これらの酵素の多くが 同一のヌクレオチド糖基質あるいはオリゴ糖アクセプター基質を認識することか ら、それらは実質的に一次タンパクと核酸配列の類似性を示すことが予想され、 そのような類似性は、クロスハイブリダイゼーションによって関連グリコシルト ランスフェラーゼ遺伝子を単離することを容易にするであろう。 本発明者による分子クローニングによって、上述の幾つかのクローン化グリコ シルトランスフェラーゼcDNAの単離が可能となった。一次配列を比較するこ とにより、これらの酵素は実質的に同一である予想された形態の構造を保持して いることが判明した。 しかしながら、一対の他と異なるグリコシルトランスフェラーゼを例外として 、多くのものがほぼ同一のヌクレオチド糖基質またはオリゴ糖アクセプター基質 の要請を示しているとはいえ、これらの酵素の間には一次配列の類似性が実質的 に存在しない。その例外的な対であるネズミα1,3ガラクトシルトランスフェ ラーゼ配列(あるいはそのヒト疑似ホモローグ)と、ヒトα1,3N−アセチル ラクトースアミントランスフェラーゼ)とは、これらの酵素が異なったヌクレオ チド糖基質を用い、明確に異なるオリゴ糖アクセプター基質要請を示していると はいえ、一次タンパクと核酸配列の類似性がかなり高い。 以上を考え合わせると、上記の観察によって、幾つかのグリコシルトランスフ ェラーゼは構造上の関連を有するが、そのような関連は必ずしもヌクレオチド糖 あるいはオリゴ糖アクセプター基質の要請に関する情報からは予言できるとは限 らないことがわかる。 上記したように、本発明者は、ヒト・ルイス血液型フコシルトランスフェラー ゼをコードするクローン化cDNAを分離するために本発明の遺伝子移入手順を 使用した。本酵素は2個の異なるグリコシル転移反応を触媒する点において例外 的なグリコシルリトランスフェラーゼである。本酵素と血液型H α(1,2) フコシルトランスフェラーゼとの間の配列比較を行なうと、これら2つのフコシ ルトランスフェラーゼは、同一のヌクレオチド糖基質GDP−フコースを使い、 また置換されていないタイプIまたはタイプIIの二糖成分で終わるオリゴ糖を 利用できるのにも関わらず、異なった一次配列を維持することが分かる。 生化学的および遺伝子工学的なデータは、ヒトゲノムは表面局在のSSEA− 1決定基を構築する能力を有するフコシルトランスフェラーゼをコードする1以 上の構造遺伝子を含有していることを示している。これらの酵素は異なった受容 体基質特異性、および二価カチオンとN−エチルマレイミド失活に対する異なっ た反応性を示すため、ルイス・フコシルトランスフェラーゼとは異なったポリペ プチドであると考えられる。さらに、それらの発現はルイス式血液型フコシルト ランスフェラーゼ遺伝子座とは異なる座によって決定され、ルイスの遺伝子座パ ターンとは異った組織特異パターンを表す。 これらの酵素はルイス式血液型フコシルトランスフェラーゼと非常に類似した 特性を示すため、これらの酵素とそれに対応する遺伝子とは一次配列のレベルで 十分に関連づけられ、クロスハイブリダイゼーションの手法によってそれらを分 離できると発明者は認識した。したかって、他の実施例では、本発明はグリコシ ルリトランスフェラーゼをコードする遺伝子をクロスハイブリダイゼーションに よって分離するための方法を提供する。本発明に従って使用できるクロスハイブ リダイゼーション技術は一般に知られている。例えば、ラウアー(Lauer) ら、Cell(1980年)、20:119−130、フリッチ(Fritsc h)ら、Cell(1980年)、19:959−972、ヘインズ(Hayn es)ら、J.Biol.Chem.(1980年)、255:6355−63 67:およびプラウドフット(Proudfoot)ら、Proc.Nat.A cad.Sci. (USA)(1979年)76:5425−5439を参照。 これらの全てを本明細書の一部を構成するものとしてここに引用する。 上記のように、動物細胞によって構築されたオリゴ糖はそれらの構造が非常に 多様である。この多様性は不規則ではなく、正確な組織特異性と発生発現パター ンを示すオリゴ糖構造の特定のセットを含んでいる。これらの発現パターンを調 整するために細胞によって使用される分子メカニズムはあまり理解されていない 。しかし、上記パターンは、これらのパターンを決定するグリコシルリトランス フェラーゼの発現の協調調整によって主に決定されると思われる。最近の分子ク ローニングの努力の結果、幾つかのクローン化されたグリコシルリトランスフェ ラーゼcDNAの分離が可能となった。これらの酵素の一次配列を比較すること により、これらの酵素は事実上同一の推測された構造形態を維持することが明ら かとなった。しかし、これらの酵素の多くは事実上同一のヌクレオチド糖基質ま たはオリゴ糖受容体基質の要件を示すものの、1組の異なったグリコシルリトラ ンスフェラーゼを除き、これらの酵素の間では一次配列の類似性が実質的には存 在しないようである。例外の1組であるマウスα1,3ガラクトシルトランスフ ェラーゼ配列またはそのヒト配列相同体、およびヒトα1,3Nアセチルガラク トースアミン・トランスフェラーゼは、これらの酵素は異なったヌクレオチド糖 基質を使用し、異なったオリゴ糖受容体基質の要件を示すものの、一次タンパク および核酸配列が実質的に同じである。まとめると、これらの観察は、いくつか の グリコシルリトランスフェラーゼは構造的に関連しているが、それらの関係は、 ヌクレオチド糖またはオリゴ糖受容体基質の要件からは必ずしも予測できないこ とを示している。本発明者は最近、ヒト・ルイス血液型フコシルトランスフェラ ーゼをコードするクローン化されたcDNAを分離するために哺乳類遺伝子移入 手順を使用した(クコウスカ−ラターロ)ら、Genes Devel.、4: 1288−1303、1990年)。本酵素は2個の異なるグリコシル転移反応 を触媒する点において例外的なグリコシルリトランスフェラーゼである。本酵素 と血液型H α(1,2)フコシルトランスフェラーゼとの間の配列比較を行な うと(ラーセン(Larsen)ら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 、87:6674−6678、1990年)、これら2つのフコシルトラ ンスフェラーゼは、同一のヌクレオチド糖基質GDP−フコースを使い、また置 換されていないタイプIまたはタイプIIの二糖成分で終わるオリゴ糖を利用で きるのにも関わらず、異なった一次配列を維持することが分かる(クコウスカ− ラターロら、Gens Devel.、4:1288−1303、1990年; ラーセンら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:6674 −6678、1990年)。生化学的および遺伝子工学的なデータは、ヒトゲノ ムは表面局在のSSEA−1決定基を構築する能力を有するフコシルトランスフ ェラーゼをコードする1以上の構造遺伝子を含有していることを示している(ク コウスカ−ラターロら、Genes Devel.、4:1288−1303、 1990年;ポトビン(Potvin)ら、J.Biol.Chem.、265 :1615−1622、1990年)。これらの酵素は異なった受容体基質特異 性、および二価カチオンとN−エチルマレイミド失活に対する異なった反応性を 示すため、ルイス・フコシルトランスフェラーゼとは異なったポリペプチドであ ると考えられる(ポトビン(Potvin)ら、J.Biol.Chem.、2 65:1615−1622、1990年)。さらに、それらの発現はルイス式血 液型フコシルトランスフェラーゼ遺伝子座とは異なる座によって決定され、ルイ スの遺伝子座パターンとは異った組織特異パターンを表す(ワトキンズ(Wat kins)、Adv.Hum.Genet.、10:1−116、1980年) 。これらの酵素はルイス式血液型フコシルトランスフェラーゼと非常に類似した 特 性を示すため、これらの酵素とそれに対応する遺伝子とは一次配列のレベルで十 分に関連づけられ、クロスハイブリダイゼーションの手法によってそれらを分離 できると発明者は認識した。本発明者は、幾つかのそのようなクロスハイブリダ イジングヒト遺伝子の分離、それらの構造とDEAE−デキストラン媒介形質移 入後のCOS−1細胞中のそれらの発現の分析、およびそれらの受容体基質の特 性の分析を行なった。 そして、他の実施例においては、本発明は、GDP−Fuc:[β−D−Ga 1(1,4)]−D−GlcNAcα(1,3)−フコシルトランスフェラーゼ (Fuc−TIV)としての機能できるタンパク配列をコードするDNA配列( 配列認識番号7、図4に示す)を提供する。この酵素は、クローン化配列認識番 号7のDNA配列によって発現されたとき、哺乳類細胞中で機能し、これらの細 胞の特定の細胞表面糖複合体の新たな発現をひき起こす。 配列認識番号9の本DNA配列(図5にpFT−3DNAとして示す)は配列 認識番号7のDNA配列に含まれている。即ち、配列認識番号9のDNA配列は 、配列認識番号7の配列内のヌクレオチド位置1942から始まることが分かっ ている(ヌクレオチド位置1942−1944のコドン)。 本発明の実施例で提供されるDNA配列および対応するペプチドは、図4に示 す配列認識番号7の配列の少なくともヌクレオチド位置2089−3159、好 ましくは位置1942−3156からのセグメントに対応しなければならない。 これらのDNA配列は、末端に任意的に付加される更なるDNA配列を有しても よい。これらの懸垂(pendent)DNAは、任意の長さであることができ 、最長で図4に示すものに対応する長さまでである。 好ましい実施例では、本発明の上記実施例は、配列認識番号7の配列内少なく ともヌクレオチド位置2089−3159、好ましくは位置1942−3156 の間の配列に対応し、図4に示すこれらにセットに対応する更なるDNA配列を 各末端に任意的に付加したDNA配列、およびそれらに対応するタンパクを提供 する。この場合、これらの懸垂DNAおよび対応するタンパクは、任意の長さで あることができ、最長で図4に示す長さ迄である。 部分的に本酵素によって構築されるこれらの糖複合体構造は、ステージ特異性 胚抗原I(SSEA−1またはルイスx、構造:Galβ(1,4)〔Fucα (1,3)〕GlcNAc)に対する抗体によって、またVIM−2決定基であ るNeuAcα(2,3)Galβ(1,4)GlcNAcβ−(1,3)Ga lβ(1,4)〔Fuc α(1,3)〕GlcNAcに対する抗体によって認 識される。この酵素は、配列認識番号7のDNAによって発現されたとき、図8 および表2に示したようにそのDNA配列を発現する細胞から調製された抽出物 中でアッセイすると、その名前がほのめかしているように酵素的に機能する。 本酵素のオリゴ糖産物は、”タイプII”のGlcNAc残基(ラクトース〔 アミン〕受容体)へ、アルファ1,3構造で結合したフコースを表す。以下の説 明においては、これらの産物を末端近傍のα(1,3)フコース残基と称する。 上記のような3つの特定のクロスハイブリダイゼーションヒト遺伝子(配列認 識番号7、配列認識番号10および配列認識番号13)の分離、およびこられの 構造とDEAE−デキストラン媒介形質移入後のCOS−1細胞中に於ける発現 の分析、およびそれらの受容体基質特性の分析が下記の実施例(実施例IV、V :VI)に記載され、図8と表2にまとめられている。配列認識番号10の配列 (Fuc−TV)は、GDP−Fuc:〔β−D−Gal(1,4)〕−D−G lcNAc α(1,3)フコシルトランスフェラーゼとして機能できる特定の タンパク配列をコードする。この酵素は、上記のクローン化DNA配列によって 発現されたとき、哺乳類細胞中で機能し、これらの細胞上で特定の細胞表面糖複 合体構造の新たな発現を引き起こす。これらの構造は、ステージ特異性胚抗原I (SSEA−1またはルイスX、構造:Galβ(1,4)〔Fuc α(1, 3)〕GlcNAc)に対する抗体によって、またシアリル・ルイスx決定基で あるNeuAcα(2,3)Galβ(1,4)〔Fuc α(1,3)〕Gl cNAcに対する抗体によって認識される。この酵素は、上記のクローン化され たDNA配列によって発現されたとき、そのDNA配列を発現する細胞から調製 された抽出物中でアッセイすると、その名前がほのめかしているように酵素的に 機能する。本酵素のオリゴ糖産物は、“タイプII”のGlcNac残基(ラク トース〔アミン〕受容体)へ、アルファ1,3構造で結合したフコースを表す。 以下の説明においては、これらの産物を末端近傍のα(1,3)フコース残基と 称する。本酵素の触媒ドメインの位置は、配列認識番号11の配列のアミノ酸4 3−374を含むことが実験的に示された。 配列認識番号13および配列認識番号14(Fuc−TVI)のDNAおよび コードされたタンパクは以下のように使用される。 i.細胞表面または細胞内、または分泌タンパクまたは脂質のオリゴ糖、本酵 素の産物を表す末端近傍のα−(1,3)フコース残基による、翻訳後修飾に関 する特定の能力を有する動物細胞株の構築(バイオテクノロジー産業による診断 剤および治療剤の生産のため)。 即ち、本明細書で述べるクローン化DNAは、標準的な技術によって、同族の 酵素またはその産物(オリゴ糖上の末端近傍のα−(1,3)フコース残基)を 通常は発現しない哺乳類細胞株中に導入し、その細胞内で“センス”方向に転写 し、細胞表面または細胞内のオリゴ糖、または分泌タンパクまたは脂質上の末端 近傍のα−(1,3)フコース残基を発現できる細胞株を得る。あるいは、この クローン化DNA配列は、通常の技術によって、同族の酵素およびその産物(末 端近傍のαー(1,3)フコース残基)を発現する哺乳類細胞株中に導入し、そ の細胞内で“アンチセンス”方向に転写し、細胞表面または細胞内のオリゴ糖、 または分泌タンパクまたは脂質上に末端近傍のα(1,3)およびフコース残基 を発現できない細胞株を得るようにしてもよい。またあるいは、同族の酵素を発 現する哺乳類細胞におけるGDP−Fuc:〔β−D−Gal(1,4)〕−D −GlcNAc α(1,3)−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子を本明細書 で述べるDNA配列を用い、相同りコンビネーション技術、または本明細書で述 べるDNA配列に基づく“アンチセンス”オリゴヌクレオチドのアプローチ、ま たは内因性のGDP−Fuc:〔β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcNA c α(1,3)−フコシルトランスフェラーゼを不活化し、本明細書に記載す る配列情報に関連して、突然変異生成および遺伝子選択法を通して得られる負の 優性を示す突然変異体フコシルトランスフェラーゼ配列によって不活化してもよ い。 この方法は、クローン化DNA配列およびその同族酵素によって決定される特 定の翻訳後修飾に有用性または効力が依存する診断物質または治療物質のための 好適な宿主細胞となる動物細胞株を構築するために使用できる。例えば、多くの 治療タンパク、ペプチド、リコンビナント等の生物学的効果は、それらに共有結 合的に付加されるオリゴ糖構造に決定的に基づいている。これらのオリゴ糖の構 造は、主にこれらの治療産物を生産するのに使用される細胞内に発見されるグリ コシルトランスフェラーゼの数と種類によって定まる。動物細胞および酵母は、 これらのグリコシル化反応を行なう能力を有するが、グリコシルトランスフェラ ーゼ酵素の全てが各動物細胞または酵母によって産出されるものではなく、した がって、幾つかのオリゴ糖構造(本明細書で述べるDNA配列によってコードさ れる酵素によって生成される末端近傍のα(1,3)フコース残基を含む)はそ れらから産出されない。この逆も真である。即ち、生産細胞は、本明細書に記載 されたDNA配列によってコードされるGDP−Fuc:〔β−D−Gal(1 ,4)〕−D−GlcNAc α(1,3)−フコシルトランスフェラーゼと類 似または同一のグリコシルトランスフェラーゼを発現する。末端近傍のα(1, 3)フコース残基は、哺乳類または他の真核宿主細胞によって生産される天然の またはリコンビナントの治療または診断剤(糖タンパク、糖脂質)の生物学的活 性を変更するであろう(よかれあしかれ)。バイオテクノロジー産業がこれらの リコンビナント剤を生産するために使用する真核宿主細胞を、本発明に記載され たDNA配列情報およびそれに関連する情報を用いて変更し、本明細書に記載さ れたクローン化された配列の全てまたは一部を必要とされる宿主細胞において発 現することにより、末端近傍のα(1,3)フコース残基をリコンビナント産物 上のオリゴ糖に付加できるであろう。あるいは、形質移入した“アンチセンス” ベクター構造体、リコンビネーションに基づく遺伝子の不活性化、“アンチセン ス”オリゴヌクレオチドの手法、または上に概説した負の優性の突然変異体フコ シルトランスフェラーゼを使用することによって、これらの宿主細胞内に生成さ れる産物から末端近傍のα(1,3)フコース残基を除去してもよい。 このプロセスのために使用される従来方法には、この特定の酵素または、適切 な修飾りコンビナントまたは天然産物の生産のために類似したまたは同一の方法 で機能する酵素を発現する細胞と発現しない細胞株を認識するための経験的手法 を含む。この特定の翻訳後修飾能力を有する細胞株は天然に存在しないか、適切 に修飾された製品を高レベルで生産するのに適していないかも知れないため、こ のアプローチが常に最適ではない。一方、経験的手法によって同定された動物細 胞株が産生する治療材料上に存在する不要な末端近傍のα(1,3)フコース残 基は、化学的または酵素的に除去しなければならず、プロセスのコストが高くな るか効率が悪化する。上に概説した技術との関連で本明細書中に記載したクロー ン化した機能的DNA配列を使用することの利点には、他の従来の方法に比べ、 糖タンパクおよび糖脂質のオリゴ糖上に末端近傍のα(1,3)フコース残基を 生成する能力を特異的に欠く株を構築する能力を有することが含まれる。適切に 構築されたこれらの細胞株は、不要な末端近傍のα(1,3)フコース残基を除 去するための治療または診断材料の化学的または酵素的な処理の必要性を無くす 。さらに、動物細胞によって生産される特定の診断または治療製品にとって末端 近傍のα(1,3)フコース残基が必要であることが分かった場合、これらの残 基を生成するために細胞株を本明細書で述べたクローン化DNA配列を用いて処 理してもよい。 ii.オリゴ糖の能率的な酵素的合成と生産(例えば、酵素リアクターを用い て)に適した試薬の分離 オリゴ糖は、臓器移植の分野において免疫調節剤としての治療的有用性を有す る。特に、溶解性で固体相のオリゴ糖は、ルイス血液型システムを含む、主要血 液型抗原システムが臓器ドナーと受入患者との間で相違することによる不適合性 がある場合における抗体媒介臓器移植拒否反応を阻止するかまたは改善するため に使用される治療薬として使用できるであろう。同様に、可溶性のオリゴ糖は、 バクテリア性、ウイルス性、または寄生性の病原体が糖複合体“受容体”に付着 するのを阻止することによって機能する治療薬として使用されるであろう。この 糖複合体受容体は、これらの病原菌が侵入する動物組織の表面で見つかる。例え ば、ルイス血液型オリゴ糖抗原(末端近傍のα(1,3)フコース残基を含む) の一部はウロパソゲン性のバクテリアのいくつかの形に対して“受容体”として 働く。さらに、末端近傍のα(1,3)フコース残基などの糖複合体体は、発生 および分化のプロセス中における細胞間、および細胞とそれらの環境との間での 結合を変化させことと関連づけられている。これらの結合には、精子の卵子への 接合、着床初期における子宮壁への卵の付着の媒介などが含まれる。これらの観 察は、例えば、(生物学的に“天然の”)オリゴ糖分子を避妊薬として使用でき る可能性も存在するかもしれない。さらに、末端近傍のα(1,3)フコース残 基を含む特定の糖複合体は、免疫系の細胞、幾つかの腫瘍細胞、および血管の内 皮細胞の表面の間の付着の媒介に重要な役割を果たす接着分子のLECCAM/ セレクチンファミリーのためのリガンドとして関係付けられている。したがって 、本明細書で述べているクローン化されたフコシルトランスフェラーゼ配列を使 用し、抗炎症および抗腫瘍転移機能を保持する製薬特性を有するオリゴ糖型分子 を構築することができる。 現在、末端近傍のα(1,3)フコース残基を含むオリゴ糖は、化学的合成( 効率が悪く、コストが高い)、または天然のソースからの単離によって(時とし て多量の動物または植物材料の処理、および必要とされるオリゴ糖の他の汚染オ リゴ糖からの精製を必要とする、コストが高く、効率の悪い手続きを使用して) 生産されている。本明細書で述べられている発明は、精製されたGDP−Fuc :〔β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcNAc α(1,3)−フコシル トランスフェラーゼを多量に合成するメカニズムを提供する。このメカニズムは 、末端近傍のα(1,3)フコース残基を含む構成を酵素的に合成できる酵素バ イオリアクターを構築するのに使用できる(本発明者であるジョーン・ロウによ って発行された以前の原稿に記載されているように、溶液中の、または例えばプ ロテインA成分を介して固相マトリックス上に固定化された酵素が酵素の触媒領 域に融合される)。この方法は、末端近傍のα(1,3)フコース残基を含む構 造の化学的合成を含むアプローチ、および天然ソースからのそれらを精製するも のに比べ、種々の理由でより効率的である。第1に、必要とされる化学物質は酵 素基質のみであるが、これらは容易に入手でるか、さもなければ合成できる。第 2に、そのような構造の酵素的合成は、必要とされる産物と基質加水分解のヌク レオチド・二燐酸物のみを産出する。後者の化学物質は、動物細胞におけるこれ らの反応の天然副産物として発見されるものであり、比較的毒性が無く、そして 、オリゴ糖合成産物から容易に分離できる。これに対し、化学的合成手順では一 般に、除去しなければならない数々の副反応産物が生成し、それらは毒性を有 する。同様に、天然のソースからのオリゴ糖の精製は、天然の材料内に存在する 他の汚染オリゴ糖を除去する必要がある。第3に、酵素的触媒作用が際立って効 率的であり、基質をほぼ完全に製品に変換できる。これに対し、オリゴ糖上の末 端近傍のα(1,3)フコース残基の化学的合成は、複数工程のプロセスであり 、各工程での収率は100%よりかなり低く、現在の化学合成手順の累積効率は 、酵素合成によって可能な効率には達していない。同様に、天然の材料からの末 端近傍のα(1,3)フコース残基を有するオリゴ糖の精製は、オリゴ糖の種類 に関わらず、汚染物から必要とされるオリゴ糖を分離するために必要となる精製 手順に固有の大きなロスを伴い、必要とされるオリゴ糖の分離も不十分である。 本明細書で述べているDNA配列によってコードさされるGDP−Fuc:〔β −D−Gal(1,4)〕−D−GlcNAc α(1,3)−フコシルトラン スフェラーゼは、合成の目的のために動物の組織から部分的に精製されるが、こ れらの精製はそれ自体不十分である。これは、一般に当該酵素が非常に少量しか 存在しないことが主要な原因である。本発明は、本酵素の大量の生産を可能にす る2つのメカニズムを提供する。第1は、本酵素を比較的多量に産出する動物細 胞を構築して選択することによって行なわれる。あるいは、クローン化された核 酸配列に標準的なリコンビナントDNA技術を適用し、酵母または原核宿主細胞 内で多量のグリコシルトランスフェラーゼを産出する。さらに、この酵素をコー ドする配列を,標準の分子クローニング、または突然変異誘発を通して修飾し、 天然形の酵素に比べてより好ましい新規な特性を有するリコンビナント・フコシ ルトランスフェラーゼを得てもよい。例えば、酵素をより安定にし、バイオリア クター内での固定に対しての適合性を向上させるために酵素に対して修飾が行な われるかもしれない。 iii.研究用試薬として直接使用するか、研究での応用のために、GDP− Fuc:〔β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcNAc α(1,3)−フ コシルトランスフェラーゼに対する抗体を生成するリコンビナント・GDP−F uc:〔β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcNAc α(1,3)−フコ シルトランスフェラーゼを生産するのに適した試薬の分離 本発明は、オリゴ糖または糖タンパクの構造と機能を研究するための研究の道 具として使用されるであろう本酵素を多量に生成するための2つのメカニズムを 提供する(上記パラグラフii参照、すなわち、特別に構築される動物細胞、ま たはこれらの酵素をコードする天然または合成遺伝子を介して構築される)。同 様に、本方法によって生産される酵素、または本方法によって提供される核酸配 列およびそれらから誘導されるタンパク配列は、(合成ペプチドを介して)本酵 素に対する抗体を生成するために使用できる。また、これらの抗体は、これらの 酵素の生物学的合成と処理を研究するための研究用試薬として使用でき、また本 明細書に記載されている全ての使用のためのそれらを生成する時の助剤として使 用できる。 iv.診断用試薬としてのグリコシルトランスフェラーゼに対する抗体 GDP−Fuc:〔β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcNAc α(1 ,3)−フコシルトランスフェラーゼの異常発現は、ヒトにおける悪性腫瘍と関 連づけられており、本酵素が多数のヒト組織を含む悪性腫瘍の早期検出の腫瘍マ ーカーとして機能しているであろうことが示唆されている。典型的に、酵素腫瘍 マーカーは、活性試験により体液内において検定され、競合するグリコシルトラ ンスフェラーゼ活性のために、非特異性となることがある。不活性な酵素が腫瘍 マーカーとして有用であるが酵素活性試験では検出できない可能性もあるため、 これらの試験も感度が悪い。本発明は、本酵素に対する抗体(GDP−Fuc: 〔β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcNAc α(1,3)−フコシルト ランスフェラーゼをコードするクローン化DNA配列から得られる情報から構築 される合成ペプチドに対しての、または真核性あるいは原核性の宿主細胞によっ て発生されるリコンビナント酵素に対する抗体(モノクローナルおよびポリクロ ーナル抗体)を生成するメカニズムを提供する。このようにして生成されたGD P−Fuc:〔β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcNAc α(1,3) −フコシルトランスフェラーゼに対する特異的な抗体は、体液中の本グリコシル トランスフェラーゼを検出し測定するために使用でき、酵素活性試験を上回る特 異性と感度を有し、また悪性度の早期検出のための腫瘍マーカーとして機能する 可能性を有している。 v.フコシルトランスフェラーゼ阻止剤または不活化剤として天然または合成 化合物をスクリーニングするのに使用するリコンビナント酵素 数々の研究が、細胞のオリゴ糖上の細胞表面末端近傍のα(1,3)フコース 残基の数の増加と、その細胞の悪性的に転移する能力との間の関係について言及 している。もしそこに因果関係があるとすれば、本明細書中の配列によってコー ドされる酵素を阻止する薬は抗腫瘍剤としての活性を有する可能性がある。同様 に、最近の数多くの研究は、炎症中における選択接着分子(ELAM−1、GM P−140、Me114/LAM−1)への白血球の接着の媒介に、末端近傍の α(1,3)およびα(1,4)リンケージを含むシアリル化された中性のオリ ゴ糖を関連づけている。これらの研究は、白血球上のα(1,3)およびα(1 ,4)フコースリンケージの合成を阻止できる分子は、末端近傍のα(1,3) およびα(1,4)リンケージを合成しかつ表現する白血球の能力を低下または 除去でき、抗炎症医薬品となることを示唆している。本明細書に記載されている 試薬は、抗フコシルトランスフェラーゼ活性を示す化合物を分離し確認するため のスクリーニングのために有用であることがわかる。なぜなら、クローン化した 配列に標準的技術を適用することにより、比較的多量の純粋なフコシルトランス フェラーゼが得られるからである。細胞抽出物全体を用いたときや、部分的に精 製された酵素を用いたときに起こりうる効果の混同を生じることなく、潜在的な 阻止剤の効果が純粋な酵素についてテストされるため、これはスクリーニングに おける手助けになる。 vi.分泌または細胞に結合する糖複合体上の新規な糖複合体構造の生成に特 異的なグリコシルトランスフェラーゼ基質のエンジニアリング 本発明は、適切な突然変異誘発および遺伝子選択とともに使用することにより 、野性型酵素によって生成されるものとは相違するグリコシルリンケージを発生 する突然変異体GDP−Fuc:〔β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcN Ac α(1,3)−フコシルトランスフェラーゼを生成することができる試薬 (クローン化GDP−Fuc:〔β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcNA c α(1,3)−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子セグメント)を提供する 。この新規なリンケージは、天然に存在するかもしれないし、存在しないかもし れないが、それらが付加された分子の生物学的活性を高める成分として利用でき る。 本酵素は、他のα(1,3)フコシルトランスフェラーゼに類似した一次配列を 維持しているが、異なった1組の受容体基質利用性特性を示すため、指向性突然 変異誘発手続きを考えることができる。あるいは、負の優位性を示すように作用 する突然変異体GDP−Fuc:〔β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcN Ac α(1,3)−フコシルトランスフェラーゼを生成するために突然変異誘 発と選択アプローチを使用してもよい。このようにして得られる負の優性の突然 変異体は、そのような酵素の生成物が不要な場合には内因性グリコシルトランス フェラーゼ活性を不活化するのに使われる。また突然変異体GDP−Fuc:〔 β−D−Gal(1,4)〕−D−GlcNAc α(1,3)−フコシルトラ ンスフェラーゼは、例えば、試験管内および生体内においてオリゴ糖からの種々 の糖リンケージ(フコース、マノースまたはその他)を加水分解するフコシダー ゼとして機能するように生成される。 vii.本フコシルトランスフェラーゼ遺伝子座における個体の遺伝子型決定 本明細書で詳述されているDNA配列によってコードされるものと類似か同一 のフコシルトランスフェラーゼが幾つかのファミリー(科)では存在しないこと が発見されている。もしその不在が障害表現型と関連しているのであれば、この クローン化された遺伝子セグメントに対応する遺伝子内のまたは遺伝子に結合し たDNA配列多型が、遺伝子カウンセリングの目的のために、本遺伝子座におけ る個体の遺伝子型を決定するのに使用できる。同様に、そのような障害表現型の ための分子的背景がそのような現象と因果関係を有するのであれば、そのような 障害表現型のための分子の基礎は本明細書で述べられている遺伝子セグメントの 研究を通して明らかにされるであろう。 本発明の他の特徴は、本発明を示すための実施例についての下記の記載によっ て明らかになるであろう。しかし、本発明はその実施例に限定されるものではな い。 実施例 実施例I.α(1,2)フコシルトランスフェラーゼをコードするDNA配列のクローニン グと発現(DNA配列認識番号5、タンパク配列認識番号6) : ヒトα(1,2)フコシルトランスフェラーゼ遺伝子導入のための宿主として のマウスL細胞−マウスL細胞を遺伝子導入のための宿主としてテストした。マ ウスL細胞はこの目的のために広く用いられてきた。これらの細胞はゲノムDN Aを高効率でL細胞に導入することができ、また外因性DNA配列の安定した導 入を選択するための代謝あるいは抗生物質耐性に関する幾つかのダイアグラムを 利用することができる。 タイプIIのH構造を認識するモノクローナル抗体と共に蛍光活性化セルソー ティング法を用いて、細胞L細胞の表面におけるH Fucα(1,2)Gal 結合の発現を調べた。この抗H抗体によって染色された細胞は、対照のマウスI gMモノクローナル抗体で染色された細胞から得られるプロフィルおよびFIT C接合第二抗体によってのみ染色される細胞から得られるプロフィルと実質的に 同等なFACSプロフィルを示した。この結果から、L細胞は抗H抗体によって 検出可能な表面局在のFucα(1,2)Gal結合を発現しないことが判る。 本発明者はL細胞抽出物を試験して、表面発現されたH決定基がなかった理由 はα(1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性の欠損によるものであることを 確認した。α(1,2)フコシルトランスフェラーゼの試験のためのアクセプタ ーとしてはフェニル−β−D−ガラクトシドを用いた。この化合物はα(1,2 )フコシルトランスフェラーゼ類に特異的なアクセプターであって、これらの酵 素によって効率的に利用される一方、α(1,3)、α(1,4)、またはα( 1,6)結合を生成するフコシルトランスフェラーゼ類のアクセプターとしては 機能しない。L細胞抽出物は、多量の抽出物を用いて試験してもあるいはインキ ュベーション時間を延ばして試験しても、検出可能なα(1,2)フコシルトラ ンスフェラーゼ活性を有しない。A431細胞抽出物との混合実験の結果、検出 可能な酵素活性の見かけ上の不存在は阻害剤のためではないことが判明した。 発明者はN−アセチルラクトースアミン(Galβ(1,4)GlcNAc) 末端基を有する複合糖質のL細胞上の表面発現についても検討した。これらの末 端基は、ヒトα(1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性を補足する潜在的な アクセプター分子であってこれによって得られる表面発現されたFucα(1, 2)Gal結合を抗H抗体で検出することを可能とするものであると考えられる 。エリトリナクリスタガリ(ECA)から得られる凝集素をこの分析に用いた。 このレクチンは一以上の未置換N−アセチルラクトースアミン末端基を有するオ リゴ糖に対して高い親和性を示す。L細胞を、精製したFITCで標識されたE CA、あるいはハプテンN−アセチルラクトースアミンでプレインキュベートし 、かつFITCで標識されたECAで染色してFACS分析にかけた。その結果 、これらの細胞に大量のECAが結合していることおよびその結合はハプテンN −アセチルラクトースアミンによって効果的に阻止されることが示された。この 結果は、L細胞がN−アセチルラクトースアミン成分を含有するオリゴ糖を合成 するという予想と一致するものであり、これらの複合糖質の一部が修飾されない ままに残り細胞表面で発現していることを示唆している。 本発明者はさらにフコシルトランスフェラーゼ基質GDPフコースの合成能に ついてL細胞を試験した。この分析試験の結果、GDP−[3H]フコースとG DP−[3H]マンノースの両者が[2−3H]マンノースで標識された細胞から 調製された水性抽出物中に確認された。この細胞におけるGDP−[3H]フコ ースの細胞下の存在位置はこの分析試験では確認できない。効果的なゴルジ体フ コシルトランスフェラーゼ活性は、恐らくゴルジ腔におけるGDPフコースの基 質濃度の存在を要求するものと考えられる。これらの細胞はフコース代謝におけ る欠陥について選択されたものではないので、これらの細胞はゴルジ腔へ細胞質 合成化合物を輸送する能力を有するように思われる。このことは、これらの細胞 が放射性物質で標識されたフコースを膜複合糖質中へと導入することができるこ とを示すことによって確認される。この標識フコースの殆どは、N−結合性オリ ゴ糖のいくつかのもののアスパラギン結合性N−アセチルグルコーサミンに対す るα(1,6)結合の中のフコースを現しているであろう。 上記を総合すると、これらの試験は、(α−1,2)フコシルトランスフェラ ーゼ活性を決定するヒトDNA配列の導入・発現の後で、L細胞は表面に位置す るHFucα(1,2)Gal結合を現す能力を有することを示している。 α(1,2)フコシルトランスフェラーゼDNA配列に対するドナーとしての ヒトA431細胞−ヒトA431細胞株がタイプIとIIの血液型H構造を発現 することにより、これを遺伝子導入の源として検討した。A431細胞から調製 された抽出物は、フェニル−β−D−ガラクトシドを用いた試験でα(1,2) フコシルトランスフェラーゼ活性を有することが示されている。A431抽出物 によって作製された放射性標識化産物は、ヒト血清H(α−1,2)フコシルト ランスフェラーゼによって産生された正統[14C]フコシル化フェニル−β−D −ガラクトシドと同時にクロマトグラフされた。A431産物をα−L−フコシ ダーゼで分解すると定量的にL−フコースが得られた。これらの結果は、A43 1細胞が一以上の機能的な(α−1,2)フコシルトランスフェラーゼ遺伝子を 有し、よって遺伝子導入のためのヒトDNA源として適切であることを示してい る。 モノクローナル抗H抗体によって認識される表面分子を発現するマウス形質移 入体の単離−ヒトα(1,2)フコシルトランスフェラーゼの発現を決定するD NA配列を有するマウス細胞を単離するために、L細胞の単層培養物を、A43 1細胞とpSV2−neoプラスミドDNAから調製された高分子量のゲノムD NAと共に共形質移入した(30:1)。pSV2−neoとの共形質移入の後 、外因性DNA配列が安定的に導入されている形質移入体の選択を可能とする、 トランスフェクトされた細胞をG418含有培地において生育した。この手順に よって、本発明者は略60000個の独立したG418耐性形質移入体を示す細 胞集団を生成した。本方法は典型的には略1000kbのトランスフェクトされ た配列をレシピエント細胞のゲノム中に導入するものである。ヒトゲノムのサイ ズは略3×106kbであるので、ヒトゲノム半数体の略20コピーが一次形質 移入体のこの「ライブラリ」中に存在するものと本発明者は評価している。 パンニングと滅菌セルソーティングの組合せによってH抗体を発現する形質移 入体を選択した。トランスフェクトされた細胞の全集団を代表する細胞のプール を、タイプIIのH構造を認識するマウスIgMモノクローナル抗体と反応させ た。結合した抗H抗体による形質移入体に対し、ヤギ抗マウスIgMでコーティ ングされた滅菌皿上でパンニングによる最初の選択を行った。この段階で、本発 明者は本手続きがフローサイトメトリーによる選択よりもより効果的であること を見いだした。なぜなら本手続きによれば多数の形質移入体を迅速にかつ簡便に 処理することができるからである。パンニングによって選択された形質移入体を 、培養物に戻して引き続き選択のサイクルにかけて増幅した。この最初の選択の 後における細胞のFACSプロフィルには、抗H抗体に結合した細胞であること を明白に示すピークはなかった。しかしながら、FACSヒストグラム分析の結 果は、略0.13%の細胞が対照抗体で染色された細胞より一層明るく染色され たことを示していた。全細胞集団の最も明るい細胞3−5%の細胞を無菌的に収 集し、再び14日間培養後同じ手順によって再び選択を行った。3回の選択の後 、FACS分析によって抗H抗体で明るく染色された明確な細胞集団が現れた。 これらの細胞を収集して再び培養した。発見的手法を用いるために、形質移入体 をFACS選択と平行してパンニングによる選択にかけた。本発明者は、抗H抗 体に結合した細胞集団を富化するにはパンニングがより効果的であることを見い だした。これは恐らくIgM抗H抗体がH−陽性である形質移入体を凝集させ、 FACSによる選択に干渉するためであろう。 従って引き続く選択はすべてパンニングによって行った。パンニングをさらに 3回繰り返した後(合計7回のパンニング)、選択した集団における細胞の90 %以上が抗H抗体で明るく染色された。この集団からクローン分離集団を生成し 、各々のサブクローンについてFACSによってH抗原発現を分析した。多くの クローンは、H−発現のあるいは非発現の形質移入体からなる、表現型が混合し た細胞を出現させた。表現型の見かけ上の不安定さの理由は不明である。安定で 明るいH抗原陽性の表現型を示したクローンを一つ選択してさらに分析した(ク ローンmH1−12)。クローンmH1−12の表現型は、H発現の選択を行わ なかったにもかかわらず9カ月以上安定に維持された。 本発明者は、ネズミ(α−1,2)フコシルトランスフェラーゼ遺伝子がL細 胞集団における変異細胞中でめったに活性を示さないこと、あるいはトランスフ ェクション手続きそれ自身がこの遺伝子を活性化しかつ選択プロセスがこれらの 好ましくない事柄を引き起こすことがあることに関し、これらを防止する方策を 検討した。即ち、並行して行う対照実験において、pSV2−neoを選択マー カーとして用いて、L細胞から調製された高分子量のゲノムDNAでL細胞をト ランスフェクトした。次いで正しく上記の方法によってこれらの形質移入体をH 抗原発現に関し選択した。発明者は、H−発現細胞をネズミゲノム半数体の15 コピー以上の等価物を組み込んだ独立した形質移入体(少なくとも40000) の集合からH−発現細胞を検出あるいは単離することができなかった。 一次形質移入体は細胞表面のタイプII血液型H抗原および(α−1,2)フ コシルトランスフェラーゼ活性を発現する−クローンmH1−12を、タイプI I血液型H構造(Fucα(1,2)Galβ(1,4)GlcNAc−R)を 認識するモノクローナル抗H抗体で選択した。この抗体のmH1−12細胞に対 する結合は、抗体をタイプII H ハプテン2’−フコシルラクトース(Fu cα(1,2)Galβ(1,4)Glc)でプレインキュベートしたとき阻止 された。対照的に、抗H抗体とL−フコース、あるいは抗H抗体とN−アセチル ラクトースアミンないしラクトースの同じ濃度におけるプレインキュベーション では、この抗体のmH1−12細胞への結合を阻止しない。タイプII H構造 に関して特異的であることをすでに示した、異なったモノクローナル抗H抗体( BE2)をこれらの実験において使用したとき、本発明者は2’−フコシルラク トースとの結合の阻害を観察したが、他のハプテンとの結合の阻害は観察されな かった。これらの研究の結果は、mH1−12細胞は、末端Fucα(1,2) Gal結合と結合された、細胞表面における糖複合体を発現することを示唆して いる。 この結合の存在に関する付加的な証拠は、ヒト血漿から精製される結合特異性 血液型A(α−1,3)GalNAcトランスフェラーゼを利用することによっ て得られる。このグリコシルトランスフェラーゼは末端非還元基として血液型H アクセプターを絶対的に要求する。それはこの構造のガラクース部に対するα− 1,3結合中のN−アセチルガラクトーサミンの付加を促進し、GalNAα( 1,3)[Fucα(1,2)]Galという形の血液型A−反応性分子を構築 する。血液型Aグリコシルトランスフェラーゼの作用によって血液型A反応性の 決定基をmH1−12細胞表面上において生成することによって、タイプII H阻止の研究の結果から推測されるように、末端Fucα(1,2)Gal結 合の存在を確認できるであろう。 ホルマリン固定されたmH1−12細胞を、血液型A(α1,3)GalNA cトランスフェラーゼ、そのヌクレオチド糖基質(UDPGalNAc、1mM 、UDP−GalNAcのKmの約20倍)、およびこの酵素の活性を維持する バッファーからなる組成物でインキュベートした。得られた細胞を用いて、新た に合成された表面に局在する血液型A決定基質の存在を、モノクローナル抗A抗 体を用いた間接免疫蛍光法によって探索した。 A(α−1,3)GalNAcトランスフェラーゼとその基質で4時間インキ ュベートした後、血液型A決定基が細胞表面上に検出可能となった。UDP−G alNAcまたは血液型Aトランスフェラーゼの不存在下で行った対照反応にお いては、抗A抗体による染色は観察されなかった。L細胞はこれらのいずれの条 件においても抗H、抗Aとの結合を示さなかった。 本発明者はA酵素で処理された細胞を抗H抗体とともに染色し、表面発現され たH構造の喪失について試験した。H構造は、A酵素によってFucα(1,2 )Gal結合のガラクトースに付着しているN−アセチルガラクトーサミン分子 によって”マスク”されているはずである。A酵素とその基質の両者とともに4 時間インキュベーションすると、抗A抗体によって生成した染色は少しだけ低減 した。しかしながら、24時間転換反応を行うと、細胞表面のH反応性が実質的 に完全に消えてしまった。この結果は、強いA反応性が続く現象と一致する。A 酵素を含有するが基質を含有しない対照反応混合物で24時間処理した細胞は、 強い抗H染色を示した。このことから、24時間の反応の後にみられるH反応性 の喪失は、血液型A酵素組成物を汚染するグリコハイドロラーゼあるいはプロテ アーゼ活性によるH構造の破壊によるものでないことがわかる。長期間のインキ ュベーション後のH活性の喪失は、よってA酵素によって促進されたα−1,3 −結合性N−アセチルガラクトーサミンの付加による、H構造の”マスキング” の結果である。得られたこれらのデータから、mH1−12細胞は、正統的なH Fucα(1,2)Gal結合で集結する、細胞表面の糖複合体を発現すること がわかる。 mH1−12細胞から調製された抽出物を試験することにより、これらの細胞 はα−(1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性を発現することが確認された 。これらの反応におけるフコシル化された産物をα−フコシダーゼで分解するこ とにより、フコースの付着がαアノマー性結合であることが確認された。 一次形質移入体におけるヒトDNA配列の分析−サザンブロット分析によって 、mH1−12細胞株がヒトDNA配列を含有しているかどうかを調べた。BL UR8 Alu配列を、ヒトの配列を検出するために用いた。使用したハイブリ ダイズ条件および洗浄条件では、ヒトAluプローブはマウス配列とクロスハイ ブリダイズしなかったが、マウスL細胞DNA(10μg)に付加されたAlu 配列の幾つかのコピーの等価物を検出することができた。比較として、A431 DNAサンプル(3ng)は、高度に反復し、散在するAlu配列を予想させる 、分散したしかし比較的強いハイブリダイズ信号を示した。これらの条件の下で 、本発明者はmH1−12細胞(500ng)のゲノム中に多量のヒト配列を検 出した。この分析から、予想として、mH1−12細胞のゲノムはおよそ100 0kbのヒトDNAを含有することがわかる。 細胞表面のタイプII H抗原を発現する多数の二次形質移入体の単離および (α−1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性−本発明者は、mH1−12細 胞のゲノムにおける多くのヒト配列において、H−陽性表現型の発現を仲介する 特異的なヒト配列を同定、確認するために以下の手続きを行った。外因性ヒトD NAの量を低減するために、本発明者はmH1−12から調製されたDNAを用 いて”二次的な”形質移入体”ライブラリ”を生成し、これらのライブラリをス クリーニングしてH構造を発現する形質移入体を検出した。発明者は、このよう にして検出された、Hを発現する二次形質移入体は、それらのゲノム中において 検出できる、それぞれ少量のヒトDNA制限フラグメントを有するであろうと予 想した。発明者は幾つかの独立した二次形質移入体を単離しようとした、なぜな らH決定遺伝子に結合しているヒト配列は、これらのヒトフラグメントの部分集 合であって、独立して得られた、Hを発現する二次形質移入体それぞれにおいて 、同じ大きさの特徴的制限フラグメントとして確認されうることが予想されたか らである。 mH1−12細胞から調製されたゲノムDNAをpSV2−neoによってL 細胞中へ共形質移入した。このようにして4つの異なった二次ライブラリを生成 した(表I)。 頻度は、単離された一つの独立したHを発現する形質移入体/スクリーニング された形質移入体のプレートの数の比で表した。セルソーティングあるいはパン ニングによってスクリーニングされたライブラリに対しては、これは最小の評価 である。なぜならこれらの免疫選択手続きはH発現シブと、独立して得られたH −陽性形質移入体とを差別することを許容しないからである。少なくとも一つの 独立したH−発現形質移入体がこれらのライブラリのそれぞれに存在する。トラ ンスフェクション効率評価(「実験手順」参照)の結果、一次ライブラリmH1 に関し、また二次ライブラリmHs1、mHs3、mHs4、およびmHs5に 関し、各プレートは約2000の独立した形質移入体を含有していた。mHs2 二次ライブラリについては、スクリーニングに先立つプレート試験によって約5 0のコロニーが各プレートに存在することがわかった。クローンs2−1とs2 −2は二つの別個のプレートからロゼット法によって単離した。クローンs2− 3は約650の独立した形質移入体コロニーの細胞集団をパンニングすることに よって単離した。 パンニング手続きによって各ライブラリを独立にスクリーニングしてH発現形 質移入体を検出した。3ラウンド目のパンニングに先立ってFACS分析を行っ た結果、これらのライブラリのそれぞれはH抗体陽性の細胞を含有していた(抗 H抗体に結合した細胞の1−60%)。パンニングによる一連の選択を、細胞の 50−90%がH−陽性の表現型を示すようになるまで続けた。クローン細胞株 (S1−11とS3−6)をmHs1およびmHs2ライブラリ由来の集団から 確立した。この時これらの細胞株中の細胞の95%以上が抗H抗体で明るい染色 を示した。ライブラリmHs4とmHs5は細胞クローニング手続きに付さなか った代わりにパンニングによる付加的な選択を行った。合計11ラウンドの選択 の後、これらの細胞の約95%(mHs4ライブラリからの選択)および50% (mHs5ライブラリからの選択)がH抗原の発現を示した。 本発明者がmH1−12細胞株を構築するために用いたリン酸カルシウムトラ ンスフェクション手続きは、時として分別可能なプラスミド配列を、希望の表現 型を決定するトランスフェクトされたゲノムDNA配列と物理的に結合する場合 があった。pSV2−neo配列の、mH1−12一次形質移入体におけるH− 陽性表現型を決定するヒトDNA配列への結合は、H−発現二次形質移入体の同 定を簡便にし、分子クローニング手続きによる関連するトランスフェクトされた 配列の単離を容易にする。そのような結合を調べるためのテストとして、本発明 者はmH1−12一次形質移入体から調製したDNAでL細胞をトランスフェク トすることにより二次ライブラリ、mHs2を生成した。トランスフェクション にあたっては、外因性のpSV2−neo DNAは加えなかった。この手続き により、約50の独立したG418形質移入体が15個の径10cmの皿上に産 生した。この結果、pSV2−neo DNAを加えて二次ライブラリを生成し たときに得られたG418耐性コロニーの数に対して、数において40分の1の 低下が見られた(1皿当たりG418耐性細胞は2000まで)。 このmHs2ライブラリをまず原位置にて(in situ)ロゼット法によ ってスクリーニングし、抗H抗体に結合する形質移入体を迅速に確認した(下記 の「実験手順」参照)。約50のコロニーを含有する培養皿のそれぞれを、トラ ンスフェクションの16日後、他のいずれかの操作の前にこの方法でスクリーニ ングした。試験した15個の皿の内の二つにロゼット−陽性コロニーが各一個確 認された。これらの二個の独立したH−陽性コロニーをクローニングリングで単 離し、H−発現細胞株(s2−1とs2−2)をそれぞれから確立した。他の1 3個の皿上のコロニーを収穫することによって、付加的な独立したクローンH発 現形質移入体(s2−3)が単離され、これらをパンニングによる選択手続きに かけた後、細胞クローニングに付した。 結合していない単一コピーのマーカーの共形質移入が1%以下の頻度で起こっ た。mHs2ライブラリ(表I)中において発明者が観察したG418耐性の共 発現の頻度とH表現型は、これら二つのマーカーが一次形質移入体において結合 していることと合致する。あるいは、これらの頻度は、一次形質移入体中の多数 のコピーにおいて存在する、結合していないマーカーの共形質移入によって説明 されるかもしれない。いずれにしても、一次および二次ライブラリ(表I)にお いて観察されるH−発現形質移入体の出現頻度は、これらの形質移入体によって 発現されるH−陽性表現型が単一のトランスフェクトされた座によって決定され ることを示している。 代表的なH−発現性二次形質移入体(クローンs2−2)上における抗H反応 性表面分子は、H抗原−陽性の一次形質移入体mH1−12に対して適用したも のと同じ分析法によって、正統なH Fucα(1,2)Galリンケージであ ることが示された。s2−2細胞から調製された抽出物は(α−1,2)フコシ ルトランスフェラーゼ活性を有する事が見いだされた。(α−1,2)フコシル トランスフェラーゼ活性はまた他のH−発現性二次形質移入体のそれぞれから調 製された抽出物中に見いだされた。 独立したH−発現性二次形質移入体はヒトDNA配列を含有する共通の制限フ ラグメントを有する−発明者は、各H−陽性の二次形質移入体のゲノムは比 較的少量のヒトDNAを含有し、このDNAは、それぞれの形質移入体において 見いだされる(α−1,2)フコシルトランスフェラーゼの配列を制御するヒト 配列を包含するであろうと予想した。原則的に、これらの配列によって生成され る一以上の特性制限断片は各形質移入体において同定可能であるはずである。逆 にいえば、無関係なヒト配列は二次形質移入体においてランダムな制限パターン を示すはずである。発明者はそこで各形質移入体からゲノムDNAを単離し、種 々の制限酵素でこれらのDNAを分解し、得られた分解産物をサザンブロット分 析に付した。ヒトDNA配列を含有する制限断片がBLUR8 Aluプローブ で検出された。多くのDNA制限断片が各クローン化された二次形質移入体に存 在する。これらの細胞におけるヒトゲノムDNAの総量は25ないし55kbと 評価される。各クローン化された二次形質移入体のゲノムは2.7kbおよび3 .4kbの大きさのヒトDNA EcoRI制限断片の特性対を有する。これら の断片はまた、ライブラリmHs4およびmHs5からのパンニングによって選 択される細胞のプールにおいて明らかである。同様の分析から、各H−発現性二 次形質移入体のゲノムが共通の1.5および1.9kbのPstI断片と共通の 2.8kbのPvuIIヒトDNA制限断片を含有することが示されている。こ れらの結果は、上記の特性的ヒト制限断片内のまたはこれに結合したDNA配列 が、これらの形質移入体を選択するのに用いた細胞表面のH Fucα(1,2 )Gal結合の発現に関連し、さらにこれらの細胞に見いだされる(α−1,2 )フコシルトランスフェラーゼの発現と関連しているものであることを示唆する ものである。 形質移入体における共通のヒトDNA配列がこれらの細胞中における(α−1 ,2)フコシルトランスフェラーゼの発現を指向するものであることをさらに確 認するために、分子クローニングの手法によってこれらの断片を単離し、哺乳類 の過渡発現系においてその機能をテストした。H−発現性二次形質移入体中のH 表現型の発現と関連していることが既に判明している二つのヒトDNA−Eco RI断片を、二次形質移入体s2−2を用いて、ラムダファージベクター中で調 製したミニゲノムライブラリから単離した(「実験手順」参照)。これらの断片 が(α1,2)フコシルトランスフェラーゼの合成に向けての充分な遺伝子情報 を 有するかどうかを決定するために、これらはまず独立に、哺乳類コスミドベクタ ーpWE15中にサブクローニングした。このベクターはSV40の複製源を有 し、COS−1細胞中のエピソームのように効率的に複製を行う。得られたプラ スミドは3.4kbのEcoRI(プラスミド:pH3.4)または2.7kb のEcoRI断片(プラスミド:pH2.7)を含有していた。次にこれらのプ ラスミドを、個々にDEAEデキストラントランスフェクション(「実験手順」 参照)によってCOS−1細胞に導入し、トランスフェクトされた細胞は、その 後その(α1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性について検討した。発明者 は偽トランスフェクトCOS−1細胞あるいはpH2.7でトランスフェクトさ れたCOS−1細胞中において、検出可能な(α1,2)フコシルトランスフェ ラーゼ活性を見いださなかった。しかしながら、プラスミドpH3.4でトラン スフェクトされたCOS−1細胞は大きな(α1,2)フコシルトランスフェラ ーゼ活性を発現した。この抽出物によって生成されたフコシル化されたフェニル −β−Dガラクトシド産物のα−フコシダーゼ分解から、付着したフコースがα アノマー形状であることが確認された(「実験手順」参照)。 この(α1,2)フコシルトランスフェラーゼのpH活性プロフィルは、ヒト 血清分画、A431細胞およびH−発現性マウス形質移入体において見いたされ る(α1,2)フコシルトランスフェラーゼについて得られたプロフィルを鏡映 していた。同様に、COS−1細胞中に発現したリコンビナント酵素が示す見か けのミカエリス定数(GDP−フコース:Km=17.5μM;フェニル−β− D−ガラクトシド:Km=4.4mM)は、本発明者がヒト血清分画中、および 彼が分析した各細胞株中の(α1,2)フコシルトランスフェラーゼについて測 定した値と基本的に同一であった。以上を考え合わせると、これらの結果は、3 .4kb EcoRIの断片内のヒトDNA配列が(α1,2)フコシルトラン スフェラーゼをコードし、これらの配列はヒト血液型H(α1,2)フコシルト ランスフェラーゼ遺伝子の一部もしくは全部を包含するものであるという説を裏 付けるものである。pH3.4中の3.4kb EcoRI断片、pH2.7中 の2.7kb EcoRI断片、3.4kb断片に近接したDNA配列を配列決 定し、配列認識番号5を得た。 これらのクローン化されたヒトゲノムDNA配列の性質を特性化するために、 発明者はまず、プラスミドpH3.4中のインサートから種々の制限断片を単離 し、H−発現性で安定な形質移入体におけるトランスクリプトおよびH決定基と 同族(α1,2)フコシルトランスフェラーゼを発現するヒト細胞株A431に おけるトランスクリプトを同定・確認する能力について試験した。発明者は、p H3.4中のインサートからの1.2kb HinfI制限断片が、単一の、比 較的量の少ないA431細胞中の3.6kbのトランスクリプトを同定・確認す ることを見いだした。このプローブはまた、H−発現性マウスL細胞形質移入体 中においてトランスクリプトを検出するが、トランスフェクトされていない親L 細胞においてはこれを検出しない。 細胞表面のH構造の発現を指向するクローン化されたcDNAおよび(α1, 2)フコシルトランスフェラーゼ :発明者は1.2kb HinfI断片とコロ ニーハイブリダイゼーションによってA431細胞cDNAライブラリから二つ のハイブリダイゼーション陽性cDNAクローンを単離した。クローン化したc DNAについて、その表面局在性H抗原の発現決定能力と同族(α1,2)フコ シルトランスフェラーゼ活性を調べるために、哺乳類発現ベクターpCDM7中 にクローン化された最大のcDNAインサートからなるプラスミドを、そのベク ターのエンハンサー−プロモーター配列に関しセンス定位で構築した(pCDM 7−α(1,2)FT、「実験手順」参照)。pCDM7−α(1,2)FTで トランスフェクトされたCOS−1細胞のフローサイトメトリー分析によって、 このcDNAは細胞表面のH分子の発現を決定することが示された。さらに、p CDM7−α(1,2)FTでトランスフェクトされたCOS−1細胞は大きな α(1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性を発現したが、pCDM7でトラ ンスフェクトされた細胞はそうでなかった。発明者は、この(α1,2)フコシ ルトランスフェラーゼを用いて、この酵素に特異的であるとともにヒトHおよび Se(α1,2)フコシルトランスフェラーゼとを区別することができる人工的 なアクセプター(フェニル−β−D−ガラクトシド)についてその見かけのミカ エリス定数を決定した。得られた見かけのKm(2.4mM)は、発明者および 他の者が血液型H(α1,2)フコシルトランスフェラーゼについて測定した値 (発明者:3.1mM、他者:4.6mM、6.4mM、1.4mM)と略同じ レベルであった。また、この見かけのKmはpH3.4(4.4mM)でトラン スフェクトされたCOS−1細胞から調製された抽出物中の(α1,2)フコシ ルトランスフェラーゼが示す値と非常に近いものであった。この見かけのKmは ヒト乳酵素(15.1mM)中に見いだされる(α1,2)フコシルトランスフ ェラーゼの示す値−これはSe座によってコードされた(α1,2)フコシルト ランスフェラーゼを示すものであるが−とはかけ離れている。これらのデータは 、ヒトH血液型(α1,2)フコシルトランスフェラーゼによって示される動特 性を反映した動特性を有する(α1,2)フコシルトランスフェラーゼの発現を 、プラスミドpCDM7−α(1,2)FTにおけるcDNAが決定することを 示している。 cDNA配列はタイプIIトランスメンブレン糖タンパクを予示する: pCDM7−α(1,2)FTにおけるcDNAインサートは3373塩基対 の長さを有する。その対応するトランスクリプトは長さが3.6kbであって、 このcDNAが実質的に完全長であることを示唆している。二つの潜在的イニシ エーターコドンがその最初の175個のヌクレオチドにおいて見いだされる。し かしながら、これらのうちの二番目のもののみが哺乳類の翻訳開始に関連して配 列コンテスト中に含められる。メチオニンコドンは、365個のアミノ酸からな るタンパク(配列認識番号6)を予言する長いオープンリーディングフレームを 開始する。これに基づいて計算するとMrは41249Daである。このオープ ンリーディングフレームは3.4中の3.4kb EcoRI断片において見い だされるオープンリーディングフレームと共直線性である。予言されたタンパク 配列の水治療分析の結果、それは他の幾つかのクローン化されたグリコシルトラ ンスフェラーゼについてと同様に、タイプIIのトランスメンブランタンパクで あることがわかった。このトポロジーは、8個の残基NH2−末端細胞質ゾルド メイン、塩基性アミノ酸によってフランキングされた17個の残基疎水性トラン スメンブレンドメイン、および恐らくゴルジ固有で触媒機能を有する340個の アミノ酸COOH−末端ドメインを予言する。二つの潜在的N−グリコシル部位 がこの後者のドメインに見いだされるが、このことは、これが他のグリコシルト ランスフェラーゼと同様、糖タンパクとして存在する可能性を示唆している。こ の配列と、タンパクやDNAデータベース中の他の配列との間には顕著な類似性 は見いだされない(プロテイン・アイデンフィケーション・リソース、リリース 21.0、およびGenbank、リリース60.0)。ただしcDNAの3’ −未翻訳セグメント内の642bp配列は例外で、これはヒトAluコンセンサ ス配列に類似している。さらに発明者は、cDNA配列と、その予言されたタン パク配列や他のクローン化されたグリコシルトランスフェラーゼのcDNAとの 間にも、顕著な配列の類似性を見いださなかった。 cDNAでコードされたタンパクは(α1,2)フコシルトランスフェラーゼ である :上記の発現実験の結果は、cDNA配列によって予言されるドメイン構 造と合わせて考えると、それが(α1,2)フコシルトランスフェラーゼをコー ドするという仮定と合致している。それにもかかわらず、発明者はこの点を直接 確認したいと考え、それがこの酵素活性をトランス−決定する分子を代わりにコ ードする可能性を排除した。発明者は、哺乳類の発現ベクターpPRPTAにお けるスタフィロコッカス・アウレウス(Staph.aureus)プロテイン A(「実験手順」参照)のIgG−結合性ドメインの分泌された形態のものへ予 想されるタンパクの推定触媒ドメインを領域を融合し、ベクターであるpPRO TA−α(1,2)FTcを生成した。類似の構造体との類推から、発明者は他 のクローン化グリコシルトランスフェラーゼ(詳細は下記)を調製し、もしその cDNA配列が実際に(α1,2)フコシルトランスフェラーゼをコードするな ら、プラスミドpPROTA−α(1,2)FTcは、分泌され、溶解性でアフ ィニティー生成可能な(α1,2)フコシルトランスフェラーゼを生成するであ ろうことを期待した。実際、pPROTA−α(1,2)FTcでトランスフェ クトされたCOS−1細胞のプレートから調製された調整培地は、合計5790 ユニットの(α1,2)フコシルトランスフェラーゼを含有していた一方、合計 1485ユニットが細胞と会合していた。さらに、実質的に100%の放出(α 1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性が特異的にIgG−セファロースに保 持され、このマトリックスを徹底的に洗浄すると殆どが回収された。これとは対 照的であるが、発明者は、pCDM7−α(1,2)FTでトランスフェク トされたCOS−1中の活性の殆どは細胞会合性(3450ユニット)であって 、ごく微量の活性がこれらの細胞から調製された調整培地で検出されるにすぎな い(80ユニットまで)ことを見いだした。実質的にこの後者の活性はどのマト リックスとも結合していない。pCDM7またはベクターpPROTAでトラン スフェクトされたCOS−1細胞から調製された抽出物は、細胞と会合したまた は解放された(α1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性を検出可能なレベル で有しなかった、これらのデータは、pCDM7−α(1,2)FTにおけるc DNAインサートは(α1,2)フコシルトランスフェラーゼをコードすること 、および触媒活性を有する(α1,2)フコシルトランスフェラーゼを生成する のに充分な情報は推定トランスメンブレンセグメントの遠位の333のアミノ酸 を包含するものであることを示している。実施例I“(α1,2)フコシルトランスフェラーゼをコードするDNA配列の クローニングと発現”のための実験手順 本明細書全体を通して使用されている“L細胞”という語は、マウスLapr t-tk-細胞株を表す。 ラクトース、N−アセチルラクトースアミン、2’−フコシルラクトース(F ucα(1,2)Galβ(1,4)Glc)、UDP−GalNAc、フェニ ル−β−D−ガラクトシド、およびフィコール400をシグマから入手した。L −フコースをファンスティール(Pfanstiehl)研究所(ウォーキガン 、イリノイ州)から入手した。UDP〔1−3H〕N−アセチルガラクトースア ミン(8.7Ci/mmol)とD−〔U−14C〕マンノース(239mCi/ mmol)をデュポン−ニューイングランド・ニュークリア(DuPont−N ew England Nuclear)から入手した。D−〔2−3H〕マン ノース(16.3Ci/mmol)、L−〔6−3H〕フコース(72Ci/m mol)、L−〔1−14C〕フコース(58.7mCi/mmol)、GDP〔 U−14C〕−β−L−フコース(268mCi/mmol)、および〔α−32P 〕dCTP(3000Ci/mmol)をアマーシャム社(Amersham Corp.)から入手した。非放射性のGDP−フコースをエリック・ホームス (Eric Homes)博士(シアトル)からご提供頂いた。FITC−EC AをE−Y研究所(サンマテオ、カリフォルニア州)から入手した。プラスミド pSV2−neoをデービッド・チャプリン博士(ワシントン大学、セントルイ ス)から入手した。制限酵素(New England Biolabs、また はBoehringer Mannheim)を製造者の指示に従って使用した 。 抗血清: モノクローナル抗H、抗Aおよび抗B抗体(マウスIgM)をケムビオメド社 (Chembiomed,Ltd.)(アルバータ、カナダ)から購入した。モ ノクローナル抗H抗体BE2は、BE2ハイブリドーマ細胞株上清(下記参照) から調製した。抗マウスIgMとFITCで標識した抗マウスIgM(両方とも 抗原−アフィニティーによる精製、ヤギ)をシグマから入手した。 細胞株と培養: マウスLaprt-tk-細胞はデービッド・チャプリン博士から入手した。ヒ トA431細胞は、ブライアン・ホワイトレイ(Brian Whiteley )博士およびルイス・グレイサー(Luis Glaser)博士(ワシントン 大学、セントルイス)から入手した。BE2細胞はアメリカン・タイプ・カルチ ャー・コレクションから入手した。細胞は、10%の胎児ウシ血清(ハイクロン (Hyclone)、ローガン、ユタ州)を加えたダルベッコ(Dulbecc o)の修飾イーグル培地(GIBCO)中で生育した。形質移入した細胞は、G 418(GIBCO)(活性剤)を400μg/mlの割合で含む培地中で生育 した。 ゲノムDNAの調製: 高分子量のゲノムDNAを標準的な方法で培養された細胞から調製した。ゲノ ムDNAのサンプルをトリス−アセテート−EDTAで緩衝された0.3%アガ ロースゲルを通して電気泳動解析し、それらの完全性を確認するとともに、調製 物中の分子の平均サイズを見積もった。 形質移入: リン酸カルシウム沈降法により、ヒトゲノムDNAを用いてマウスL細胞の形 質移入を行った。DNAの沈降物(20−30μgのゲノムDNAと1μgのp SV2−neo)を用いて細胞(5×105個/100mmの皿)を一晩インキ ュベートした。mHs二次ライブラリを生成した形質移入には、外因性のpSV 2−neoDNAは含まれていなかった。翌日細胞を新しい培地に移し、その次 の日にG418による選択を行った。形質移入効率は、DNAを加えた1日後に 形質移入した細胞を収穫し、細胞懸濁液の一連の同じ希釈溶液を平板培養するこ とによって見積もった。希釈液の一方の組をG418選択下で生育し、他の組は 抗体無しで生育し、得られた形質移入効率を平板培養の効率によって補正できる ようにした。2週間の生育後、50%メタノールに0.2%のメチレンブルーを 溶解した溶液を用いて染色してコロニーを数えた。100mmの皿の上の5×1 05個の細胞を形質移入すると、典型的には約2000個の独立した形質移入が 得られる。 H−発現形質移入体の免疫的選択: 3mMのEDTAを含むPBSを用いてインキュベートすることにより、形質 移入体を培養皿から除去した。分離された細胞を洗浄し、染色培地(10mMの Hepes、pH7.4、0.1%のアジドナトリウム、2%胎児ウシ血清含有 ダルベッコの修飾イーグル培地)の中に再懸濁した。パンニング、またはセルフ ーティングを行っている間細胞の温度を4℃に維持した。細胞を低い密度で平板 培養することによって細胞のクローニングを行い、各細胞がコロニーを形成でき るようにした。各コロニーはクローニングシリンダーを用いて分離した。 パンニング−細菌性の培養皿(ファルコン1007、60mm)をパンニング のために用意した。50mMのトリス中に10μg/mlの割合で希釈した抗体 溶液(pH9.5)4mlを用いてヤギ抗マウスIgMを一晩4℃でインキュベ ートすることにより、ヤギ抗マウスIgMを皿に結合させた。抗体溶液を吸い上 げ、皿をPBSを用いて2回洗浄した。その後、1mg/mlの割合でウシ血清 アルブミンを含むPBSを用い、室温で少なくとも1時間インキュベートするこ とによって皿をブロック化した。皿はその後直ぐに使用するか、ずっと4℃で保 管した。皿は使用する前にPBSで3回洗浄した。 パンニングすべき細胞は、抗H抗体を10μg/mlの割合で含有する染色培 地中に107/mlの濃度で再懸濁した。細胞を4℃で30分インキュベートし 、1mMのEDTA、0.1%のアジドナトリウムおよび2%のフィコール40 0 を含む10mlのPBS使用して細胞をペレット化することによって結合しない 抗体を除去した。遠心分離の後、上澄みを注意深く吸い上げ、細胞を染色培地中 に106/mlの割合で再懸濁した。細胞懸濁液の分割量3mlを、ヤギ抗マウ スIgMで被覆した60mmのパンニング皿に塗布した。その後皿を4℃で1時 間インキュベートし、血清を含まないダルベッコの修飾イーグル培地を用いて5 回すすぎ、非付着性の細胞を除去した。新鮮な血清に満ちた培地を皿に加え、組 織培養インキュベータに戻した。翌日、付着性の細胞をトリプシン−EDTAを 用いて除去し、標準的な組織培養皿に再び塗布した。選定を行う前に細胞を10 −18日生育した。 セルソーティング−モノクローナルIgM抗H抗体(染色培地中に10μg/ ml)、またはコントロールモノクローナルIgM抗B抗体(染色培地中に10 μg/ml)を用いて4℃で30分インキュベートすることにより、FACS分 析を行うために形質移入体を調製した。その後、氷冷した染色培地中で細胞を洗 浄し、フルオロセインを結合したヤギ抗マウスIgMを40μg/mlの割合で 含む染色培地中において4℃で30分インキュベートした。細胞を洗浄し、染色 培地中に再懸濁し、FACS(コウルター・エレクトロニクス、モデル エピッ クスC)による分析を行った。サンプルを前方および90°の光拡散にさらし、 死んだ細胞は分析対象から排除する。H−発現細胞を染色培地内で吸い上げによ って収集し、追加の選択の前に10−18日間の培養を再び行った。 ロゼット手順−抗H抗体に結合する形質導入体を同定するためにロゼット法を 使用した。約100−300個の細胞から成る分離されたコロニーを含む100 mmの皿の上でこの手順を行った。まずコロニーのプレートをPBSを用いて2 回すすぎ、マウスIgMモノクローナル抗H抗体を10μg/mlの割合で含む 4mlのPBS、2%の胎児ウシ血清、0.1%のアジドナトリウムを用いて4 ℃で1時間インキュベートした。その後、PBSを用いてプレートを3回すすぎ 、ヤギ抗マウスIgMを結合したヒト赤血球4mlを用いて4℃で30分インキ ュベートした(ヤギ抗マウスIgMは、塩化クロムを用いてヒトのO型の赤血球 に結合した。結合後、赤血球をPBSで洗浄し、PBS、2%胎児ウシ血清、0 .1%アジドナトリウム中に0.2%v/vで希釈し、直ぐに使用した。)。 その後、赤血球の懸濁液を注意深く吸い出し、プレートをPBSで穏やかにすす ぎ、ライトボックスの上で検査した。抗H抗体に結合したコロニーは、コロニー に付着する赤血球から成る“ロゼット”として顕微鏡で観察した。 血液型A(α−1,3)GalNAcトランスフェラーゼの精製: セファロース(Sepharose)4B(シグマ、ロット番号104F03 34)に対するアフィニティー・クロマトグラフィーによりヒト血液型Aの血漿 からA型トランスフェラーゼを分離した。酵素活性が最大の箇所を含むカラムの 分画を集め、マウス血清アルブミン(ベーリング・ダイアグノスティックス>9 8%)を1%の濃度で加え、分割量を使用するまでの間−80°Cで保管した。 最終調製物の活性を標準的な放射化学的方法によって測定した。1酵素ユニット は、1時間当たり1nmolのGalNAcを2’−フコシルラクトース受容体 に転換するものであると定義されている。 ペーパークロマトグラフイー: ワットマンNo.3mmまたはワットマンNo.1を用い、下記の溶媒系で下 降ペーパークロマトグラフィーを行った:溶媒Aは、酢酸エチル/ピリジン/水 (10:4:3)、溶媒Bは、ピリジン/水/酢酸エチル/(10:11:5: 36)(上相)。乾燥したクロマトグラムを1センチの帯に切断し、放射能で標 識された化合物を水を用いて溶離した。各溶離物の分割量内の放射能をシンチレ ーション計数管によって測定した。 L細胞のGDP−フコース含有量の分析: マウスL細胞内のGDP−フコースを同定するために、30mlの完全培地中 の250μCiのD−〔2−3H〕マンノースを用いて、細胞(2×106個)を 3日間標識付けを行った。細胞を収穫し、沸騰する湯浴中において60%エタノ ールを用いて5分間抽出した。ヌクレオチド糖を含有する水溶性の抽出物を真空 下で濃縮し、少量の水の中に再懸濁した。標識されていないGDP−マンノース (270nmol)とGDP−フコース(130nmol)を内部標準として加 え、混合物を、50mMの酢酸アンモニウム中で平衡セファデックス(Seph adex)G−25カラム(0.9×42cm)上でのゲル濾過クロマトグラフ ィー付した。溶出液を268nmで監視し、GDP−マンノースとGDP−フ コースを含む分画を集め、真空下で濃縮し、200μlの水の中に再懸濁した。 これを、弱い陰イオン交換カラム(AX300、4mm×24cm、ピアース・ ケミカル社)上でHPLCにより分画化した。100mMの酢酸トリエチルアミ ン(pH:7.0)中で平衡のとられたHPLCカラムにサンプルを塗布し、酢 酸トリエチルアミン(pH 7.0)の100から300mMの直線勾配を用い て、毎分2mlの流速で50分間溶出した。溶出液を268nmで監視し、分画 (0.5ml)を集めてシンチレーション計数を行い、後に分析した。標識され ていないヌクレオチド糖内部標準は、それらの固有の溶出時間(GDP−フコー スは35.5分、約800cpmsで、GDP−マンノースは33.0分、約1 000cpms)によって確認した。標識されていないGDP−フコースとGD P−マンノースとともに遊離する分画に対応する放射能ピーク物質を、0.1N のHClを用い、100℃で45分間加水分解した。その後、これらは、L−〔14 C〕フコースおよびD−〔14C〕マンノース標準と並行して、溶媒B中で20 時間、ワットマンNo.3MM上での下降ペーパークロマトグラフィーによって 分画化した。何れの場合も、加水分解された量の約30%を適切な単糖類として 回収した。 フコースで標識したグリコペプチドの分析: 放射標識したグリコペプチドを調製し、分析した。20mlの完全培地中の2 00μCiのL−〔6−3H〕フコースを用いてマウスL細胞(2×106個)に 3日間標識付けを行った。細胞を収穫し、クロロホルム、そして水を用いて抽出 し、最後の抽出の後に残ったペレットをプロナーゼ(ベーリング・ダイアグノス ティックス)を用いて分解した。その後、セファデックスG−25カラム上での ゲル濾過クロマトグラフィーによって脱塩した。この材料を真空下で濃縮し、分 割量を0.1NのHCl中において100℃で45分間加水分解した。この加水 分解物を、L−〔14C〕フコース標準と並行して、溶媒B中で20時間、ワット マンNo.3MM上での下降ペーパークロマトグラフィーにかけた。マクロ分子 材料内に存在する総量の約26%が放出され、放射能で標識されたフコース標準 を用いクロマトグラフィによって分離した。 GDP−フコース:β−D−ガラクトシド2−α−L−フコシルトランスフ ェラーゼのアッセイ : 培養された細胞をPBSで洗浄し、遠心分離によってペレット化し、0.5% のトリトンX−100を含む少量の25mM燐酸ナトリウム(pH 6.1)に 再懸濁した。タンパク質の濃度が約5mg/mlとなるように容積を調節した( BCA法、ピアース・ケミカル社)。典型的には、調製直後に抽出物のアッセイ を行った。標準アッセイは、40μlの25mM燐酸カリウムに5−20μlの 酵素溶液(典型的には30−100μgの細胞抽出タンパクまたは15μlの血 清)を溶解したもの、0.1%のトリトンX−100、3μMのGDP−〔14C 〕フコース、25mMのフェニル−β−D−ガラクトシド、および5mMのAT Pを含んでいた。反応混合物のpHを最終測定pHが6.1となるように調製し た。所定時間の後、20μlのエタノールを加えてアッセイを終了した。その後 、混合物を15,000×gで5分間遠心分離した。上澄みを集め、ワットマン のNo.1上に塗付し、溶媒Aの中で4時間、下降ペーパークロマトグラフィに よる分画を行った。その後上記のように放射能を測定した。何れの場合も、フェ ニル−β−D−ガラクトシド受容体を添加しない反応を並行して行い、内因性受 容体分子の補正が行えるようにした。フコシル化されたフェニル−β−D−ガラ クトシドを用いてクロマトグラフィーで分画された内因性受容体分子の産物はど のサンプルからも確認出来なかった。 α−フコシダーゼの分解: ペーパークロマトグラフィによりフコシルトランスフェラーゼのアッセイから 〔14C〕フコシルフェニル−β−B−ガラクトシド(約10,000cpm)を 分離し、水溶解物を真空下で濃縮し、5μlの水に再懸濁した。これを、5mM のクエン酸ナトリウムを含む最終容量が20μlの溶液(pH 6.0)中の0 .025ユニットのウシ腎臓α−L−フコシダーゼ(EC 3.2.1.51) を用いて、37℃で1時間分解した。混合物を溶媒Aの中で4時間、ワットマン No.1上での下降ペーパークロマトグラフィにより分画した。分解産物は、並 行して行われた正統の〔14C〕フコース、およびヒト血漿H(α−1,2)フコ シルトランスフェラーゼによって合成された精製〔14C〕フコシルフェニル−β −D−ガラクトシドの分離との比較によって同定された。 間接的蛍光抗体法: 8ウェルの組織培養チャンバースライド(ラブ−テック)上に塗布した細胞に 対して蛍光抗体法を実施した。分析の24時間前に、1ウェル当たり5×104 個の密度で細胞を塗布した。抗H抗体および抗A−次性抗体を、ウシ血清アルブ ミンを2mg/mlの割合で含むPBS中に、最終濃度が10μg/mlとなる ように希釈した。細胞と結合する一次性抗体を、FITCを結合したヤギ抗マウ スIgMを用いて検出し、ウシ血清アルブミンを2mg/mlの割合で含むPB S中に40μg/mlとなるように希釈した。 ハプテン阻止−塗布した細胞をPBSを用いて2回洗浄し、希釈した抗H抗体 100μl、または異なるオリゴ糖ハプテンをそれぞれ20mMの濃度で含有す る希釈した抗体100μlを使用し、4℃で30分インキュベートした。その後 チャンバーを2回洗浄し、FITCを結合したヤギ抗マウスIgMを100μl 添加した。4℃で30分放置した後、PBSを用いてチャンバーを3回洗浄し、 PBS中に溶解した3.7%のホルムアルデヒド中において、室温で10分細胞 を固定した。PBSを用いて細胞を2回洗浄し、チャンバーを除去し、25%の グリセロールを含有するPBS中にスライドを取り付けた。表面蛍光照明を備え たザイス・アキシオフォト(Zeiss Axiophto)写真用顕微鏡を用 いて蛍光顕微鏡検査法により細胞を検査した。 ヒト血液型A(α−1,3)GalNacトランスフェラーゼを用いた完全な 細胞の標識−培養スライドチャンバに塗布した細胞を150mMのNaClを用 いて2回洗浄し、150mMのNaClに3.7%のホルムアルデヒドを溶解し た溶液中において、室温で10分間固定した。細胞を150mMのNaClを用 いて3回洗浄し、完全なトランスフェラーゼ反応混合物または対照混合物100 μlを用いてインキュベートした。その完全なトランスフェラーゼ反応混合物は 、150mMのNaCl、15mMのMnCl2、50mMのカコジル酸ナトリ ウム(pH 6.8)、0.2%のウシ血清アルブミン、1mMのUDP−Ga lNAc、および1.14ユニットのヒトの血液型A(α−1,3)GalNa cトランスフェラーゼを含んでいた。対照混合物は、UDP−GalNAcまた は血液型A(α−1,3)GalNacトランスフェラーゼが除かれている以外 は 同じ成分を含んでいた。37℃でインキュベーションを行い、4時間または24 時間経過後に、PBSを用いてチャンバーを2回洗浄することによってインキュ ベーションを停止した。その後、ハプテン阻止の研究について上記したように、 マウスモノクローナル抗A、または抗H抗体を用いて間接的蛍光抗体法によって 細胞を分析した。 サザン・ブロッティング法: 制限酵素(1μgのDNA当たり8ユニット、一晩の分解)を用いてゲノムD NAを完全に分解した。トリス−ほう酸塩−EDTAで緩衝された0.6%のア ガロースゲルを用いた電気泳動によって制限断片を分画した。DNA断片を標準 的なサザン・ブロッティング法に従ってナイロンの膜(ハイボンド−N、アマー シャム社)に移した。ブロットは、50%のフォルマリン、5SSC、および1 50μg/mlの変性サケ精子DNAの中で、少なくとも2時間39℃で予備ハ イブリダイドした(1×SSCは150mMのNaCl、15mMのクエン酸ナ トリウム(pH 7.0)、1×PEはH50mMのトリス(pH 7.5)、 0.1%のピロ燐酸ナトリウム、1%のドテシル硫酸ナトリウム、0.2%のポ リビニルピロリドン(Mr40,000)、0.2%のフィコール(Mr400, 000)および5mMのEDTA)。ハイブリダイゼーションは同じ溶液中で3 9℃で少なくとも16時間行った。ブロットを、2×SSC、0.1%のドデシ ル硫酸ナトリウムの中で室温で4回洗浄し、0.75×SSC、0.5%のドデ シル硫酸ナトリウムの中で1回、65℃で30分洗浄した。300−ベースペア BamHI断片からなるBLUR8プローブをBLUR8プラスミドから分離し た。この断片を標識化するまえに、2回ゲル精製し、プラスミド配列による汚染 をなくした。ランダム・プライミング法を用い、少なくとも5×108cpm/ μgの特定の活性に対して〔α32P〕dCTPを用いてプローブを標識した。 ペーパークロマトグラフィー 酢酸エチル/ピリジン/水(10:4:3、溶 媒A)においてワットマンNo.40を用い、または95%エタノール/1Mの 酢酸アンモニウム(7:3、溶媒B)においてワットマンNo.3MMを用いて 下降ペーパークロマトグラフィーを行った。乾燥したクロマトグラムをオートラ ジオグラフィーで処理することによって14Cで標識された化合物を検出した。 それに代え、乾燥したクロマトグラムを1センチの帯に切断し、放射能によって 標識された化合物を水を用いて溶出した。各溶出液の分割量をシンチレーション カクテルと混合し、放射能をシンチレーション計数管によって測定した。 放射能で標識化された標準品の調製 20μlの100mMトリス−HClの 中で、ヘビ毒液フォスフォジエステラーゼ(EC 3.1.4.1、1μl、0 .003ユニット、ベーリンガー・マンハイム)を用い、pH8、37℃で1時 間、GDP−〔14C〕フコース(1nmol)の酵素開裂を行って〔14C〕フコ ース−1−燐酸を調製した。反応物を、GDP−〔14C〕フコースおよび〔14C 〕フコースと並行して、溶媒Bを用いてワットマンNo.3MM上で下降ペーパ ークロマトグラフィーによって20時間分画した。〔14C〕フコース−1−燐酸 (R fucose =0.45)を水を用いてクロマトグラムから溶出し、真空下で濃縮 した。α(1,2)フコシルトランスフェラーゼのアッセイのための後述の反応 条件を用い、ヒト血清中の(α1,2)フコシルトランスフェラーゼの活性によ り、GDP−〔14C〕フコース(3μM)とフェニル−β−D−ガラクトシド( 25mM)から〔14C〕フコシルフェニル−β−D−ガラクトシドを生成した。 この反応産物を、溶媒A中のワットマンNo.40上での下降ペーパークロマト グラフィーによって4時間分画した。〔14C〕フコシルフェニル−β−D−ガラ クトシドは、乾燥したクロマトグラムをオートラジオグラフィーで処理すること によって確認し、水を用いて紙から溶出させ、真空下で濃縮した。それに代え、 〔14C〕フコシルフェニル−β−D−ガラクトシドを下記のSep−Pakの手 順を用いてフコシルトランスフェラーゼアッセイ混合物から分離した。 細胞株および細胞の培養 COS−1細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー ・コレクションから入手し、10%の胎児ウシ血清を含むダルベッコの修飾イー グル培地中で生育した。 タンパク質の測定 タンパク質の濃度を、BCA法(ピアース・ケミカル社) により製造業者の指示に従って測定した。ウシ血清アルブミンを標準として使用 した。 細胞抽出物の調製 細胞をPBSを用いて洗浄し、ゴム製のポリスマンを用い て培養皿から取り出し、遠心分離によってペレットにした。細胞のペレットを、 冷たい1%のトリトンX−100(サーファクタンプスX−100、ピアース・ ケミカル社)の2倍量に再懸濁し、マイクロチップを備えたブランソンの超音波 処理機を用い、50%の出力で15秒超音波処理した。抽出物は直ぐにアッセイ するか、使用するまで−20°Cで貯蔵した。これらの条件下で、冷凍した抽出 物内の酵素の活性は数週間の間安定していたが、凍結解凍を繰り返すと急激に悪 化した。C3Hマウスからの組織を分離し、レーザーナイフを用いて刻み、1% のトリトンX−100の2倍量に再懸濁し、上記と同様に超音波処理し、150 0×gで5分間遠心分離し、上澄みを集めた。小腸を薄いポリプロピレンの棒の 上に裏返し、粘膜細胞を燐酸塩で緩衝した生理食塩水に掻き入れ、1500×g で遠心分離することによって細胞を集め、これによってマウスの腸粘膜抽出物を 調製した。その後、抽出物を上記のようにして調製した。 マウス腸(α1,2)フコシルトランスフェラーゼの部分的精製 予備的な実験の結果、マウス腸粘膜から調製した抽出物は、受容体に依存しな いでGDP−フコースを加水分解する活性を多く含んでいることが判明した。基 質加水分解は(α1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性の正確な測定に影響 を与えるため、腸抽出物を陰イオン交換クロマトグラフィーによって分画し、( α1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性からGDP−フコース加水分解活性 を分離した。手順は全て40℃で行った。2mlのトリトンによって可溶化され た抽出物をトリス−HCl(pH 7.6)に加えて10mMにし、10mMの トリス−HCl(pH 7.6)によって予め平衡化したDEAE−セルロース (DE52、ワットマン)を2ml(基礎量)用いて5分間処理した。酵素溶液 を濾過し、燐酸ナトリウムバッファーに加えて10mMにし、pHを6.1に調 製した。最初の抽出物中に存在した酵素活性の約47%が、DEAE−セルロー ス分画手順によって回収された。DEAE−セルロースを用いた2回目の処理に より、GDP−フコース加水分解活性を大きく減少させることなく(データは示 していない)酵素活性が大きく消失した。受容体の添加を行わないことを除き標 準的なフコシルトランスフェラーゼアッセイ状態の下で使用した場合、調製物は 、反応物に最初に存在していたGDP−フコースの2%未満しか加水分解しなか った。 血清の硫酸アンモニウム分画 非分泌者から採血した新鮮な血液から血清を調 製した。血液をガラス管の中で37℃で1時間凝固させ、上記したと全く同じよ うに硫酸アンモニウムによる沈降により直ぐに分画した。20%−40%の硫酸 アンモニア分画を、4℃で、4リットルの水で2回(各8時間)透析した。(α 1,2)フコシルトランスフェラーゼのアッセイを直ぐに行った。それに代え、 分画化した血清の一部を取り分け、使用するまで−20°Cで保存した。 ヒト乳(α1,2)フコシルトランスフェラーゼのイオン交換クロマトグラフ イー 文献に掲載された手順によりヒト乳から(α1,2)フコシルトランスフェラ ーゼを分離した。簡単に述べると、Se−陽性のドナーからの300mlの乳を 遠心分離により脱脂し、20mMのカコジル酸ナトリウム(pH 6.0)を用 いて十分に透析した。これを、20mMのカコジル酸塩(pH 6.0)中で平 衡化されたスルホプロピル−セファデックス(Sephadex)のカラム(2 .6×115cm)に塗布した。その後20mMのカコジル酸塩(pH 6.0 )1リットルを用いてカラムを洗浄し、20mMのカコジル酸塩(pH 6.0 )と20mMのカコジル酸塩に500mMのNaClに加えたもの(pH 6. 0)それぞれ1.5リットルから作られた直線勾配を用いて溶出した。分画(1 3ml)を集め、以下に述べるように、フェニル−β−D−ガラクトシド受容体 を使用して(α1,2)フコシルトランスフェラーゼのアッセイを行った。分画 130−144が(α1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性を含んでいた。 これらを組合せ、YM5膜(MWカットオフ=5,000)と適合したアミコン (Amicon)攪拌細胞中での限外濾過によって1mlに濃縮し、冷たい脱イ オン化水により平衡化した。濃縮された酵素の一部を取り分け、−80°Cで保 存した。 GDP−β−L−フコースとGDP−α−L−フコースの合成と特徴付け ニューンズ(Nunez)ら(Nunez et al、Can.J.Che m.、59、2086−2095、1981年)の方法を改良した方法によりG DP−β−L−フコースを合成し、精製した。以下に述べる改良した方法は、合 成工程の前の分画結晶によりアノマー1−フコピラノシル燐酸を分離する必要が なくなる。アノマー産物の分離は、最後の合成工程の後で行うHPLCによって 行う。 合成に使用するピリジンとテトラヒドロフラン(アルドリッチ)を水素化カル シウムの上で還流しながら沸騰させ、希釈し、4Å分子ふるいの上に供給した。 蒸発は全て、ロータリーエバポレーターの上で減圧状態で浴温を35℃以下にし て行った。L−フコースをニューンズら(Nunez et al、Can.J .Chem.、59、2086−2095、1981年)に記載されているのと 全く同じ方法でアセチル化した。得られた2,3,4−トリ−O−アセチル−α −およびβ−L−フコピラノースの混合物(2.7g、9.27mmol)をO −フェニレンフォスホクロリデートを用いて燐酸化した。アノマー1−フコピラ ノシル燐酸の混合物を含有する粗反応産物を、水の中で予め平衡化したDowe x−1カラム(HCO3 -、20−50メッシュ、1.5×23cm)上で分画し た。アノマー混合物を塗布した後、カラムを水(500ml)で洗浄し、400 mMのトリエチルアンモニウム重炭酸バッファー(pH 7.5、250ml) を用いて溶出した。トリエチルアンモニウム重炭酸溶出剤は、減圧下で蒸発させ 濃いシロップとした。シロップを水に溶解し、蒸発乾固した。この部分的に精製 された1−フコピラノシル燐酸のアノマー混合物(ビス−トリエチルアンモニウ ム塩、粗産物の収率:70%)をGDP−β−L−フコースの合成に用いた。初 めに、アノマー1−フコピラノシル燐酸(200mg)を乾燥ピリジンに何度も 溶解し、真空中で蒸発乾燥した。グアノシン5’−ホスホモルホリデート(40 0mg)を乾燥したアノマー1−フコピラノシル燐酸に加えた。混合物を乾燥ピ リジンに何度も再懸濁し、真空下で蒸発乾固させた。その後、反応混合物を乾燥 ピリジン(15ml)に懸濁し、室温でインキュベートした。GDP−β−L− フコースの形成は、弱陰イオン交換カラム(AX300、4.6mm×22cm 、ピアース・ケミカル社)上で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で毎 日モニターした。反応混合物からの分割量(10μl)を蒸発乾固し、水に溶解 し、GDP−〔14C〕フコース(2000cpm)と混合した。そして、サンプ ルを水中で平衡化されたHPLCカラムに塗布し、100%の水から250mM のトリエチルアンモニウム燐酸(pH 7.0)への直線勾配を用い、毎分 2mlの流量で60分間溶出した。溶出剤を268nmでモニターし、0.5m lの分画を集め、シンチレーション計数によって共結合したGDP−〔14C〕フ コースであることを確認した。268nmの吸収を示す3つのピークは約180 mMのトリエチルアンモニウム燐酸で溶出した。最初のピーク継続時間(38. 5分)は、GDP−α−L−フコース(下記参照)の継続時間と同じであった。 第2のピークは40.6分で溶出し、GDP−β−L−〔14C〕フコースの標準 物と一緒に溶出した。42.4分に溶出した第3の小さいピークは確認出来なか った。反応は本質的には5日後に完了すると判断した。最終反応混合物における βアノマーの割合は、約2:3であることを発見した。その後反応物を蒸発乾固 し、水に溶解した。調製用ヒドロポア(Hydropore)AXカラム(21 .4mm×25cm、レーニン・インストルメント社)上で上記の溶液からGD P−β−L−フコースを精製した。水溶液の分割量を水中で平衡化されたカラム に塗布 し、サンプルを100%の水から200mMのトリエチルアンモニウム 燐酸(pH 7.0)への直線勾配を用い、毎分10mlの流量で45分間溶出 した。溶出剤を268nmでモニターした。GDP−α−L−フコースが36. 2分に溶出した。GDP−β−L−フコースが38.5分に溶出した。GDP− β−L−フコースのピークを集め、減圧下で蒸発乾固した。水を用いた共蒸発を 繰り返して酢酸アンモニウムを除去した。GDP−〔14C〕フコースとともに溶 出した、我々が仮にGDP−β−L−フコースとした化合物をVG質量スペクト ロメーター(モデル7B−250S)を用いて陰イオン高速原子照射質量スペク トラム分析(キセノン)を行った。その結果(m/z〔M−H〕-588)はこ の同定結果と一致していた。化合物をプロトン分離13C NMR分光法によって 解析し、フコースのアノマー構造を確認し、その化合物をGDP−β−L−フコ ースであることを確認した。プロトン分離13C NMRスペクトルは、909. 5MHz、221ppmの走査幅で動作し32Kのデータ点を持つブルーカーW M360で得た。プローブ温度は38±1℃であった。共鳴はテトラメチルシラ ンに対してppm以下であると報告されている。この分析により、下記のスペク トルデータが得られた。13C NMR(D2O中に40μM、pH 7.0); グアニン:δ140.27(C1およびC8)、156.46(C2)、154 . 38(C4)、118.85(C5)、161.46(C6);リボシル成分: 89.36(C1)、76.06(C2)、73.6(C3)、86.4(C4 )、67.8(C5);フコシル成分:100.9(C1)、75.09(C2 )、73.94(C3)、73.71(C4)、73.02(C5)、17.3 5(C6)。GDP−L−フコースのアノマー形の区別は、フコース環のアノマ ーC(1)の化学的なシフトに基づいて行われる。βアノマーにおけるフコース のC(1)共鳴は、αアノマー(98.31ppm、下記参照)におけるアノマ ーC(1)の共鳴に対して下方にずれる。この化合物で得られた値は、GDP− β−L−フコースについてニューンズらが報告したものと本質的に同一であった 。グアニン、リボース、フコース環の炭素原子に起因する共鳴も文献の値に一致 している。 1−フコピラノシル燐酸のアノマー混合物の代わりに(α−L−(−)フコー ス−1−燐酸(シグマ)のジシクロヘキシルアンモニウム塩を使用したことを除 き、GDP−β−L−フコースの調製について述べたのと同様の方法でGDP− α−L−フコースを合成した。GDP−α−L−フコースの分析と精製は、GD P−β−L−フコースついて述べたと同じ条件でHPLCによって行った。仮に GDP−α−L−フコースと仮定したその精製化合物について陰イオン高速原子 照射質量スペクトラム分析(キセノン)を行った。その結果(m/z〔M−H〕- 588)はこの仮定と一致していた。化合物を13C NMR分光法によって解 析して下記のスペクトルデータを得た。13C NMR(D2O中に50μM、p H 6.97);グアニン:δ140.27(C1およびC8)、156.46 (C2)、154.41(C4)、118.84(C5)、161.46(C6 );リボシル成分:89.35(C1)、76.04(C2)、71.98(C 3)、86.4(C4)、67.8(C5);フコシル成分:98.31(C1 )、70.36(C2)、72.99(C3)、74.3(C4)、70.36 (C5)、17.88(C6)。この化合物(98.31ppm)におけるフコ ース環のC(1)共鳴は、ニューンズらが報告しているようにαアノマー構造に 一致している。グアニン、リボース環の炭素原子に起因する共鳴も、GDP−β −L−フコース内のこれらの原子について報告されている文献の値に一致して いる。GDP−β−L−フコースは、(α1,2)フコシルトランスフエラーゼ のための基質としては不活性であることが発見された。 GDP−L−フコース:β−D−ガラクトシド:2−α−L−フコシルトラン スフェラーゼのアッセイ チェスター(Chester)ら(Chester et al、Eur.J .Biochem.、69:583−593、1976年)によって報告された 手順を改良した方法によってフコシルトランスフェラーゼのアッセイを行った。 標準アッセイはGDP−〔14C〕フコース(3μM)、フェニル−β−D−ガラ クトシド(25mM)、ATP(5mM)、および25mMの燐酸ナトリウムバ ッファー20μl中に酵素溶液(1−10μl)を溶解したもの(pH 6.1 )を含有していた。予備アッセイに基づいて加える酵素活性の量を調整し、イン キュベーション(分画化した血清について4時間、他の酵素調製物については2 時間)の期間中において反応が直線的に行われるようにした。このような条件下 では、インキュベーションの期間中に基質の15%未満しか消費されなかった。 最適なpHを決定するために、25mMの酢酸ナトリウム、燐酸ナトリウムまた はトリス−HClを用いて緩衝した。種々のpH値のバッファーの濃縮溶液を予 め調製し、これを用いた。各反応物の最終pHをマイクロpHプローブを用いて 測定した。GDP−フコースの見掛けKm値を測定するためのアッセイにおいて は、GDP−〔14C〕フコースを、標識されていないGDP−フコースを用いて 、最終的な比放射能が26.3mCi/mmolとなるように希釈した。このス トック溶液におけるGDP−フコースの濃度は、水に希釈した分割量の254n mにおける紫外線の吸収から計算した。GDP−フコースの吸光係数は知られて いないので、GDP(254nmでε=13800、pH 7.0)の分子吸光 係数を計算に使用した。このストックを用いてアッセイにおいて種々の濃度(3 −300μM)を得た。これらのアッセイにおけるフェニル−β−D−ガラクト シドの濃度は、乳から由来の酵素を除き全て25mMであった。本受容体のため の酵素が示した見掛けKmは15.1mMであるので、0.75mMのフェニル −β−D−ガラクトシドの存在下で検査を行った。フェニル−β−D−ガラクト シドの見掛けKm値を測定するためのアッセイにおいては、受容体の濃度を0. 5か ら100mMに変化させた。これらのアッセイではGDP−〔14C〕フコースが 3μMの濃度で存在した。商業的に入手できるGDP−〔14C〕フコースの比較 的低い比放射能およびそのコストのため、実験では、そのKよりも十分低い基 質濃度を用いなければならなかった。アッセイは全て37℃にて行った。適切な 期間の後、20μlのエタノールを加えてアッセイを終了し、1mlの水を用い て希釈した。その後、混合物を15,000×gで5分間遠心分離した。その上 澄みは、実質的に放射能によって標識した産物を100%含んでいた。この上澄 みを集め、分割量を用い、フコシル化された産物の分離と数量化を以下に述べる 疎水性の相互クロマトグラフィ法によって行った。全てのアッセイは二重、三重 に行い、それらには受容体が存在しないものも含まれていた。外因性の受容体が 存在しないものにおいて得られた値を引いて、外因性の受容体分子が存在するも のの補正を行った。この背景となる受容体の“活性”は、常にフェニル−β−D −ガラクトシド受容体に組み込まれた放射能の3%未満であった。見掛け上のミ カエリス定数は、受容体の濃度率の測定のラインウィーバ・バークプロットから 得た。インターセプトは最小2乗評価法によって計算した。 疎水性の相互クロマトグラフィにに基づく分離手順は、多数のサンプルを高速 で処理するために開発されたものである。この手順により、使い捨てのC−18 Sep−Pakカートリッジ(ウォーターズ−ミリポア)上においてGDP−〔14 C〕フコースから〔14C〕フコシルフェニルーβ−D−ガラクトシドを分離で きる。Sep−Pakカートリッジの底を2穴のゴム製ストッパーの一方の穴に 取付け、カートリッジの頂部に5mlの注射器を取り付ける。ストッパの他方の 穴は真空源(約300mmHg)に取り付けた。取り付けられたSep−Pak カートリッジは、5mlのアセトニトリル、そして5mlの水で洗浄することに よって準備される。これは、取り付けた注射器のバレル内に各洗浄溶液を別々に 注入することによって行われる。(真空配管を取り付けた)ゴム製のストッパを 20mlのプラスチック製のシンチレーションバイアルの頂部に圧装したときに 作られる真空によって洗浄液がカートリッジを介して引き込まれる。注射器の内 容物は、カートリッジを介してバイアル内に吸い出す。その後、フコシルトラン スフェラーゼ反応サンプルを注射器に充填し、カートリッジを介して新しいシ ンチレーションバイアル内に吸い出す。〔14C〕フコシルフエニル−β−D−ガ ラクトシドはSep−Pakカートリッジ上に残る。そして2mlの水を用いて 3回吸い出しを行ってカートリッジを洗浄し、各洗浄水を新しいシンチレーショ ンバイアルに集める。50%のアセトニトリル2mlを用いて3回吸い上げるこ とにより〔14C〕フコシルフェニル−β−D−ガラクトシドを溶出する。シンチ レーションカクテル(10ml、バイオセイフII、リサーチ・プロダクト・イン ターナショナル)を各バイアルに加えて透明な溶液を得、それぞれにおける放射 能をシンチレーション計数によって測定する。分画1−4において溶出する放射 能は、製造業者から得た基質に不純物として存在するか(約1%)基質または産 物の加水分解によって形成されるGDP−〔14C〕−フコース、フコース−1− 燐酸、および〔14C〕フコースを表す。分画5−7は〔14C〕フコシルフェニル −β−D−ガラクトシドを表す。本手順により放射能の97%以上を回収できる 。再構築実験は、純粋な〔14C〕フコシルフェニル−β−D−ガラクトシドを実 質的に100%回収できることを示した。分離と回収はpHおよび酵素源に依存 せず、最高で2%の濃度で洗剤(トリトンX−100およびラブロール−PX) 耐性であった。この方法による産物の分離は、サンプル当たり約1分必要とした 。Sep−Pakカートリッジは、性能の劣化を伴うことなくずっと再使用でき た。 Sep−Pak法は〔14C〕フコース−1−燐酸からGDP−〔14C〕フコー スを分離できず、このためGDP−フコースを消費し、フコース−1−燐酸およ び/またはフコースを生成するヌクレオチドピロホスファターゼ活性を検出でき ない。そのため、全てのアッセイにおいてATP(5mM)を使用してヌクレオ チドピロホスファターゼ活性を阻止した。ヌクレオチドピロホスファターゼ活性 を効果的に阻止していることは、各酵素調製物を用いた模擬フコシルトランスフ ェラーゼアッセイの下降ペーパークロマトグラフィーにより確認した。各酵素源 を、フェニル−β−D−ガラクトシドを含まない標準アッセイカクテル20μl の中で37°Cで1−4時間インキュベートした。反応終了後、各々の分割量を ワットマンNo.3MMに塗り付け、溶媒Bの中で20時間下降ペーパークロマ トグラフィーにより分画化し、上記した方法で放射能を測定した。正統のGDP −〔14C〕フコース、〔14C〕フコース−1−燐酸、およびL−〔14C〕フコー スの標準物を並行してクロマトグラフィー処理した。このシステムはGDP−フ コース、フコース−1−燐酸、およびフコースを分離する。このため、インキュ ベーションの終わりにおいて残留するGDP−〔14C〕フコースの量を数値化し 、ピロホスファターゼ活性を見積ることができる。標準アッセイ状態下では、最 初に各模擬反応物中に存在していたGDP−〔14C〕フコースの97%以上が加 水分解せずにに残り、グリコシル化に利用できた。 また各酵素調製物を、〔14C〕フコシルフェニル−β−D−ガラクトシド産物 を加水分解し、(α1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性の精密な測定を妨 げる可能性のあるα−フコシダーゼについてテストした。酵素調製物を、フコシ ルトランスフェラーゼアッセイバッファーであるが、GDP−〔14C〕フコース またはフェニル−β−D−ガラクトシドを加えないものの中で、精製した〔14C 〕フコシルフェニル−β−D−ガラクトシド(7000cpm、10pmol) を用いてインキュベートした。これらの反応物を37℃で種々の時間インキュベ ートし、Sep−Pak法によって分画し、残留する〔14C〕フコシルフェニル −β−D−ガラクトシドの量を測定した。分画したヒト血清、およびマウス腸粘 膜抽出物は何れも多量のα−フコシダーゼ活性を含んでいた。しかし、10mM のL−フコースを反応カクテルに含ませることにより、これらの酵素調製物にお けるフコシダーゼ活性を効果的に阻止できた。したかって、これらの酵素源をア ッセイする場合には10mMのL−フコースを含ませた。大量のα−フコシダー ゼ活性は、他の細胞抽出物の何れからも検出されなかった。標準アッセイ条件下 では産物の加水分解が1時間あたり1%を越えることはなかった。これらの抽出 物を使用した再構築実験は、10mMの濃度のL−フコースは(α1,2)フコ シルトランスフェラーゼの活性を変更しないことを示した。 全体として、これらの実験は、分画化したヒト血清、ヒト乳、マウス腸粘膜、 または粗細胞抽出物のアッセイするために使用した条件の下では、測定された〔14 C〕フコシルフェニル−β−D−ガラクトシドの量は現実の酵素活性を反映し ていることを示した。これはGDP−フコースの基質の産物加水分解および受容 体に依存しない加水分解は何れも無視できたためである。 14C〕フコシルフェニル−β−D−ガラクトシドのα−フコシダーゼを用い た分解14C〕フコシルフェニル−β−D−ガラクトシド(約10,000cpm) を、5mMクエン酸ナトリウム(pH 6.0、最終容量20μl)に溶解した 0.025ユニットのウシ腎臓α−L−フコシダーゼ(EC 3.2.1.51 、シグマ)を用いて、37°Cで1時間分解した。この混合物を溶液Aの中で4 時間、ワットマンNo.40の上での下降ペーパークロマトグラフィによって分 画した。その分解産物を、並行して分離したL−〔14C〕フコースおよび〔14C 〕フコシルフェニル−β−D−ガラクトシドの標準物と比較することによって確 認した。 形質移入体クローンs2−2からのヒトDNA制限断片の分離 H−発現二次形質移入体s2−2から高分子量のゲノムDNAを分離し、Ec oRIを用いて完全に分解し、トリス−ほう酸−EDTA中で緩衝化した1%ア ガロースゲルを通して分画した。2.7kbと3.4kbのヒトEcoRIを含 むゲルの領域を3mm幅に分割し、これらに含まれているDNAを電気溶出によ って分離した。そのサイズ分画されたDNAを、放射能によって標識されたAl uプローブ(BLUR8)を用い、上記したハイブリダイゼーションおよび洗浄 条件を使用してサザン・ブロッティングにより分析した。2.7kbもしくは3 .4kbの断片を含む分画を別々に使用してlambda gtllにおけるフ ァージライブラリを調製した。これらのライブラリを放射能によって標識したB LUR8プローブを用いてスクリーニングした。第3のスクリーンから分離した 陽性ファージを使用してファージDNAを調製し、2.7kbのEcoRI断片 または3.4kbのEcoRI断片を含むファージをサザン・ブロッティングに より同定した。3.4kbまたは2.7kbのインサートをEcoRI分解によ りファージの腕から分離し、アガロースゲル電気泳動と電気溶出によって精製し 、pWE15におけるEcoRIサイトの間に個々にサブクローン化した。 COS−1細胞の形質移入 DEAE−デキストラン手順によってプラスミド DNAをCOS−1細胞内に形質移入した。形質移入してから72時間後、細胞 を収穫し、上記のようにして抽出物を調製し、抽出物を(α1,2)フコシルト ランスフェラーゼ活性、GDP−フコース加水分解活性、およびα−フコシダ ーゼ活性についてアッセイした。 ヒト(α1,2)FT cDNAクローンの分離 A431細胞cDNA哺乳 類発現ライブラリからの1.8×106組み換えクローンを、32Pによって標識 した1.2kbのHinfI断片(pH3.4)をプローブとして用い、コロニ ーハイブリダイゼーションによってスクリーニングした。フィルターを、上記の ハイブリダイゼーション溶液中で42℃で18時間雑種形成し、洗浄し、オート ラジオグラフィー処理を行った。2つのハイブリダイゼーション陽性コロニーを 得、さらに2回のハイブリダイゼーションとコロニーの精製によって分離した。 両方のハイブリダイゼーション陽性cDNAクローン中のインサートの予備的な 配列解析を行ったところ、それらのいずれもがpCDM7発現ベクタープロモー タ配列に対してアンチセンス方向であることを示した。したがって、発現の研究 のために最大のインサートをpCDM7中にセンス方向で再クローンし、その結 果得られたプラスミドをpCDM7−α(1,2)FTとした。 フローサイトメトリー分析 COS−1細胞を、上記のDEAE−デキストラ ン手順を使用し、プラスミドDNAを用いて形質移入した。形質移入された細胞 を72時間の発現期間の後で収穫し、マウスIgM抗Hモノクローナル抗体(ケ ムビオメッド(Chembiomed、10μg/ml)またはマウスIgM抗 ルイザモノクローナル抗体(ケムビオメッド、10μg/ml)を用いて染色し た。その後細胞を蛍光体を結合したヤギ抗マウスIgM抗体(シグマ、40μg /ml)を用いて染色し、フローサイトメトリーによって分析した。 ノーザンおよびサザン・ブロッティング A431ポリ(A)−プラスRNA (10μg/lane)についてノーザン・ブロッティング解析を行った。ゲノ ムDNA(10μg/lane)についてサザン・ブロッティング解析を行った 。ブロットを32Pによって標識した1.2kbのHinfI断片(pH3.4) を用いて調べた。 DNA配列解析 pCDM7−α(1,2)FT中のインサートを、T7DN Aポリメラーゼ(ファーマシア)とcDNAインサートの配列に従って合成され た20−merのオリゴヌクレオチドプライマを用いてサンガー(Sanger )の方法によって配列決定した。配列の解析とデータベース調査はマイクロ ゲニー・パッケージ(ベックマン)とウィスコンシン大学遺伝子コンピュータグ ループの配列分析ソフトウエアパッケージを使用して行った。 α(1,2)フコシルトランスフェラーゼ活性のアッセイ 細胞抽出物、形質 移入されたCOS−1細胞からの条件が整えられた培地、およびIgG−セファ ロース−結合酵素を調製し、上記の方法でα(1,2)フコシルトランスフェラ ーゼ活性についてアッセイを行った。1ユニットのα(1,2)フコシルトラン スフェラーゼ活性は、1時間当たりに形成される1pmolの産物であると定義 されている。受容体、フェニル−β−D−ガラクトシドの見掛けミカエリス係数 を上記したのと全く同じ方法で測定した。 プロテインA−α(1,2)FTフュージョンベクターの構築および解析 仮定の触媒領域と3’−未翻訳配列を含むcDNAインサートの3196bpS tuI/XhoI断片をpCDM7−α(1,2)FTから分離した。この断片 をクレノウ(Klenow)酵素を用いて平滑化し、燐酸化されかつアニールさ れたオリゴヌクレオチド(CGGAATTCCCCACATGGCCTAGG、 CCTAGGCCATGTGGGGAATTCCG)に連結した。このオリゴヌ クレオチドは、配列同定番号No.6のアミノ酸33から365に対応する、S tuIサイトに近い仮のトランスメンブレインの間にコード化配列を再構築する ために設計されたものである。連結された断片をゲル精製し、EcoRIを用い て分解させ、再びゲル精製を行った。このEcoRIによって結合した断片をp PROTAの特有のEcoRIサイトに連結した。pPROTA−α(1,2) FTcと名付けた、正しい方向の単一のインサートを含むプラスミドをDNA配 列決定によって解析し、ベクター、リンカーおよびインサートの結合部を横切る 配列を確認した。プラスミドpPROTA−α(1,2)FTC、pPROTA 、pCDM7−α(1,2)FT、またはpCDM7をCOS−1細胞に形質移 入した。72時間の発現期間の後、セファロースIgGマトリクスまたは対照セ ファロースIgGマトリクスに結合した細胞に関する培地中でのα(1,2)F T活性を数量化した。 実施例II:UDP−Gal:β−D−Gal(1,4)−D−GlcNAc α(1,3) ガラクトシルトランスフェラーゼ(DNA配列認識番号3、タンパク質配列認識 番号4)をコードするDNA配列のクローニングと発現: クローン化された官能的β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−D− グルコースアミニド α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼcDNAの を分離するための遺伝子転換のアプローチ 表面局在末端Gal(α1−3)G alリンケージの組織と特定細胞発現は、UDP−GalとN−アセチルラクト ースアミンとの間のグリコシル転移反応の触媒として働く同族の(α1−3)G Tsの発現とを関連づけている。COS−1細胞は、(α1−3)GTのための 受容体基質としては機能するが、本酵素または表面局在産物(下記参照)は発現 しない表面発現ポリラクトースアミン分子を構築する。したがって、本発明者は 、(α1−3)GTをコードするクローン化されたcDNAは、COS−1細胞 内で発現した場合、その酵素〔末端Gal(α1−3)Galリンケージ〕の表 面局在オリゴ糖産物を生成することを期待した。さらに、これらの特定の形質移 入体は、末端Gal(α1−3)Galリンケージと特定的に結合するレクチン (GS I−B4)によって被覆されたプレートへの付着によって分離できた。 標準的な過渡発現システムでは、COS−1細胞上の細胞表面分子の発現を決定 し、哺乳類の発現ベクターにおける大きなcDNAライブラリの構築を容易にで きる形質移入されたcDNAを奪取することができるため、上記のアプローチで は上記の標準的な過渡発現システムを使用した。 形質移入されたCOS−1細胞中でのGS I−B4結合活性を発現を決定す るクローン化されたcDNAの分離 マウスF9テトラトカルシノーマ細胞は( α1−3)GTを発現し、この酵素活性は、これらの細胞のレチノール酸によっ て誘発された差別化に付随して増加する。したかって、本発明者は、レチノール 酸によって差別化されたF9細胞からcDNA発現ライブラリを調製し、このラ イブラリをスクリーニングして、形質移入されたCOS−1細胞中でのGSI− B4結合活性を発現を決定するcDNAを得た。COS−1細胞内に形質移入し たとき、GS I−B4で被覆された培養皿への細胞の比付着性に向けられる表 面分子の発現を決定するプラスミド(pCDM7−αGT)を分離した。蛍光活 性化セルソーティングによりこれらの観測を確認した。pCDM7−αGT を用いて形質移入したが、pCDM7を用いては形質移入体していないCOS− 1細胞を、蛍光イソチオシアン酸を結合したGS I−B4を用いて明るく染色 した。これの染色は、本レクチンのハプテンであるラフィノーズによって阻止で きる。この観察は、pCDM7−αGTがI−B4によって同定される表面局在 分子の新たな発現、そして細胞表面のオリゴ糖上のGal(α1−3)Galリ ンケージの発現を決定することを示す。 cDNA配列分析によりトランスメンブレイン・トポロジーを有するタンパク 質を予想する。pCDM7−αGT(配列認識番号3、図2)中のcDNAイン サートは1500塩基対長さを持ち、pCDM7プロモータ配列に関してセンス 方向の単一の長いオープンリーディングフレームを含む。このリーディングフレ ームの最初の15コドンの中に3個のメチオニンコドンが発見される。本発明者 はこれらの最も近いものを、コザックの哺乳類の翻訳開始のためのルールに基づ き、イニシエーターコドンと名付けた。このリーディングフレームは、394ア ミノ酸長(配列認識番号4、図2)で、分子質量が46,472Daのタンパク 質を推定する。ヒドロパシィー分析は、本タンパクがタイプIIのトランスメンブ レイン分子の特徴を有することを示し、これは他の2つの哺乳グリコシルトラン スフェラーゼについて推定したものとトポロジー的に同一である。このトポロジ ーから、41アミノ酸の細胞質的に方向付けられたNH2−末端セグメント;塩 基性残基によってフランキングされた19個のアミノ酸からなる疏水性断片から なる単一のトランスメンブレイン領域;および最終的にはゴルジ腔に向けられる 大きな(多分触媒性の)COOH末端領域が予想される。2つの潜在的なN−グ リコシル化部位が存在し、このタンパク質は、他のグリコシルトランスフェラー ゼと同じ様にグリコプロテインとして合成されるであろうことを示している。こ のcDNA配列は、−90と−251にATGコドンを有する長い5’未翻訳領 域を含有しており、翻訳制御メカニズムは、この配列の発現の調節に関与してい ることを示唆している。これはトランスクリプトが上流のATGコドンも含む、 他の哺乳グリコシルトランスフェラーゼのレミニセンスである。このタンパク質 の推定のNH2−末端の端部は、ある形式のネズミβ−1,4−ガラクトシルト ランスフェラーゼに存在する特性的開裂信号配列を欠いている。 現在利用できるタンパクと核酸のデーターベース(プロテイン・アイデンティ フィケーション・リソース、リリース21.0、およびジーンバンク、リリース 60.0)の調査の結果、ネズミβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ とラットα−2,6−シアリルトランスフェラーゼを含め、(α1−3)GTD NA配列と非常に近い配列は発見されなかった。 触媒的に活性な分泌プロテインA−(α1−3)GTヒュージョンプロテイン の発現 本発明者はこのcDNAが(α1−3)GTをコードし、内因性の遺伝 子、トランスクリプト、タンパク質との相互作用により(α1−3)GT活性を 誘発するトランス−アクティング分子を代わりにコードするという可能性を同時 に除外できることを望んだ。したがって、本タンパク質(配列認識番号4の残基 63−394)の推定触媒領域に対応する配列を、哺乳類の発現ベクターpPR OTAの中で、スタフィロコカス オーレウス(Staphylococcus aureus)タンパクのIgG結合領域の分泌可能な形にインフレームで融 合し、ベクターpPROTA−αGTcを得た。このベクターを、触媒活性を有 する分泌溶解性プロテインA−(α1−3)GTフュージョンプロテインを発現 する能力をテストした。 pCDM7ベクターまたはpPROTAベクターを用いて形質移入したCOS −1細胞では、細胞に結合するかまたは放出された(α1−3)GT活性は検出 できなかった。これに対し、pCDM7−αGTまたはpPROTA−αGTc ベクターを用いて形質移入したCOS−1細胞から調製した抽出物は、合計4, 574および20,500ユニットの(α1−3)GT活性をそれぞれ含有して いた。また、pCDM7−αGTまたはpPROTA−αGTcを用いて形質移 入した細胞から調製された調整培地は、4,155および50,438ユニット の溶解性の(α1−3)GT活性をそれぞれ含有していた。重要なことは、pP ROTA−αGTcによって生成した放出活性はIgGセファロースマトリック スに結合することができたが、pCDM7−αGTによって生成した放出活性は 本アフィニティー吸収剤と相互作用しなかったことである。この結果は、クロー ン化されたcDNAは、(α1−3)GTをコードし、触媒活性(α1−3)G Tを生成するのに十分な情報が推定トランスメンブレインセグメントから遠い3 32アミノ酸の中に残ること、および酵素的に活性な状態の触媒ドメインを2連 のフュージョンプロテインの一部としてアフィニティー精製できることを示して いる。 (α1−3)GTの三糖産物の構造の測定 エキソグリコシダーゼ分解を用い てリコンビナント酵素によって生成したオリゴ糖の産物について推定されるα− アノマーリンケージを確認した。pPROTA−αGTcによって生成したIg G−セファロース結合酵素活性を用いることにより、UDP−〔14C〕Galお よびN−アセチルラクトースアミンから放射能で標識した三糖産物を調製した。 HPLCによって精製した三糖産物をガラクトシダーゼを用いて分解すると〔14 C〕Galが放出されたのに対し、三糖産物はβ−ガラクトシダーゼ分解に対し て完全に耐性があった。 N−アセチルラクトースアミン受容体におけるガラクトースの炭素3が、リコ ンビナント酵素によって形成されるグリコシドリンケージに関与することを確認 するため、本発明者は〔3H〕Galによって標識されたN−アセチルラクトー スアミン受容体を調製し、標準的な(α1−3)GT反応条件下で、IgG−セ ファロース結合プロテインA−(α1−3)GT活性と1mMのUDP−Gal を用いてインキュベートした。この反応による三糖産物を精製し、メチル化分析 を行った。放射性の2,4,6−トリメチルガラクトースを確認した。これらを 総合すると、リコンビナント酵素は、Gal(α1−3)Gal(β1−4)− GlcNAcを用いて三糖産物を構築するために、UDP−GalおよびN−ア セチルラクトースアミンを基質として使用できる。 ノーザン・ブロット分析 (α1−3)GT cDNAはF9テトラカルチノ ーマ細胞における3.6キロベースの単一のトランスクリプトにハイブリダイズ する。発明者が、コロニーハイブリダイゼーションによって分離された他のクロ ーン化された(α1−3)GT cDNAについてDNA配列を分析したところ 、pCDM7−αGT中のインサートは本トランスクリプトの5’末端を表すこ とが示された。本トランスクリプトの残る2.1キロベースは、発現クローニン グ手順によっては奪取されない未翻訳の配列からなっている。 レチノール酸によって差別化されたF9テトラトカルチノーマ細胞中における (α1−3)GTの比活性は、処理していないF9細胞の場合よりも約4倍高い 。ノーザン・ブロット分析の結果、安定状態での(α1−3)GTトランスクリ プトのレベルも、F9テトラトカルチノーマ細胞のレチノール酸によって誘発さ れた差別化に付随して増加する。こらの結果は、β−1,4−ガラクトシルトラ ンスフェラーゼについてF9細胞で報告された結果に類似しており、この細胞株 の試験管内での差別化に付随することが知られている細胞表面オリゴ糖構造にお ける動的変化は、グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子発現における大きな変化 に関連があることを示唆している。実施例II“UDP−Gal:β−D−Gal(1,4)−D−GlcNAc α (1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするDNA配列のクローニ ングと発現”のための実験手順 F9細胞cDNAライブラリの構築 シードとアルフォの手順を使用し、また 哺乳類の発現ベクターpCDM7を使用し、レチノール酸によって差別化された F9テトラトカルチノーマ細胞からポリ(A)+RNAを分離し、これからcD NAライブラリを調製した。pCDM7はベクターpCDM8の先祖である。p CDM7はpCDM8には存在するポリオーマ配列がないが、実質的に同一であ る。ライブラリは3×106個の独立したリコンビナントを含んでいた。 マウス(α1−3)GT cDNAクローンの単離 ライブラリの増殖部分か らプラスミドDNAを調製し、DEAE−デキストラン手順を用いてCOS−1 細胞中に形質移入した。(100mmの皿に)5×105個のCOS−1細胞を 入れたサンプル40個を、それぞれ50μgのプラスミドを用いて形質移入した 。72時間の発現期間の後、形質移入されたCOS−1細胞の単層を収穫し、 リフォニア シンプリシフォニア (Griffonia simplicifo lia)イソレクチンI B4(GS I−B4)によって被覆した皿上でパンニ ングした。0.1mMのCa2+と0.1mMのMn2+を含有する燐酸緩衝生理食 塩水(PBS)中に1ml当たり10μgのGS I−B4を溶かした溶液を用 いてレクチンパンニング皿を準備した。プラスミドDNA分子を付着性細胞から 奪取し、エスチェリチア・コリ(Escherichia coli)宿主細胞 MC1016/P3に形質転換した。プラスミドDNAをこれらの形質転換 体から調製し、同じ手順でさらにスクリーニングを行った。COS−1細胞での GS−IB4結合活性の発現を決定するプラスミドをスクリーニングするために シブ(Sib)選定を行った。2回目のスクリーニングから救助されたプラスミ ド分子を含むE.coli形質転換体を平面培養し、各々100−5000のコ ロニーを含む16個のプールを得た。プラスミドDNAを複製プレートから調製 し、個々にCOS−1細胞に形質移入し、形質移入体をI−B4で被覆した皿の 上でパンニングによってスクリーニングした。これらの実験は、1000個のコ ロニーの内の約1個がGS I−B4結合表現型を決定するクローン化されたc DNAを含んでいたことを示した。1つの“活性な”1000個のコロニーのプ ールを幾つかの小さいプールに分け、これらのそれぞれについてI−B4結合活 性をテストした。小さい活性のプールを順次用いて3回のシブ選択を行い、CO S−1細胞におけるGS I−B4結合活性の発現を導く単一のプラスミド(p CDM7−αGT)を同定した。 フローサイトメトリー プラスミドDNAを用いて形質移入したCOS−1細 胞を、形質移入後48〜72時間で収穫した。蛍光イソチオシアネートを結合し たGS I−B4を1ml当たり10μgで染色培地に溶解したもの、または5 0mMのラフィノースを用いて予めインキュベートした、蛍光イソチオシアネー トを結合したGS I−B4を使用して細胞を染色した。そして、上記したよう に細胞を蛍光活性化セルソーティングにより分析した。 ノーザン・ブロッティングおよびサザン・ブロッティングによる分析 ノーザ ン・ブロットを、放射能によって標識したpCDM7−αGTのcDMAインサ ートを用いてハイブリダイゼーション溶液中で42°Cでハイブリダイズした。 cDNAインサート内の配列に従って合成したオリゴデオキシヌクレオチドを用 い、チェーンターミネーション法によって配列決定を行った。配列データベース の調査と分析はウィスコンシン大学遺伝子工学コンピュータグループが出版して いる配列分析ソフトウエアパッケージを使用して行った。 (α1−3)GTおよび生成物の特性のアッセイ 形質移入したCOS−1細 胞から抽出物を調製した。細胞抽出物、形質移入されたCOS−1細胞からの条 件が整えられた培地、またはIgG−セファロース−結合酵素を対象に(α1 −3)GTについてアッセイを行った。1ユニットの(α1−3)GTの活性は 、1時間当たりに、N−アセチルアクトースアミンに形成される1pmolのG alであると定義されている。 HPLCで精製し、放射能で標識したオリゴ糖反応産物を、α−ガラクトシダ ーゼ(シグマ、20mU)またはβ−ガラクトシダーゼ(シグマ、1mU)を用 い、製造業者の推薦するバッファー中で37°Cで1時間分解を行った。反応産 物をその後HPLCで分画化した。標準的な手順に従って反応生成物のメチル化 分析を行った。 プロテインA−(α1−3)GTフュージョンベクターの構築と分析 指定触 媒ドメイン域を含む(α1−3)GT cDNAの1050塩基対断片を、Ec RIを用いて分解してpCDM7−αGTから切り出した。これを二本鎖リン カー(5’−ACGGAATTCCGT−3’)を用いてpPROTAのEco RIサイトにクローニングし、正しいリーディングフレームを維持し、プラスミ ドpPROTA−αGTcを得た。 プラスミドpPROTA−αGTc、pCDM7−αGTおよびpPROTA を個々にCOS−1細胞に形質移入した。72時間の発現期間の後、培地を収穫 し、低速(300×gで8分)と高速(100,000×gで1時間)で遠心分 離した。次いで上澄みを0.05%のツウィーン(Tween)20に調整し、 上記した予め平衡化したIgG−セファロース、またはセファロース6Bを10 0μl用い、4°Cで一晩、一括してインキュベートした。その後、マトリック スを十分に洗浄し、(α1−3)GTのアッセイに直接使用した。 実施例III:GDP−Fuc:β−D−Gal(1,4/1,3)−D−GlcNac(/G lc)−α(1,3/1,4)−フコシルトランスフェラーゼをコードするクロ ーン化されたヒトcDNAの単離(DNA配列認識番号1、タンパク配列認識番 号2) : 一実施例では、本発明は、最初に酵素を精製することなく、官能的α(1,3 )フコシルトランスフェラーゼ〔α(1,3)FT〕、またはα(1,4)フコ シルトランスフェラーゼ〔α(1,4)FT〕分子をコード化するクローン化さ れ たcDNAを分離するか、さもなければ、α(1,3)FTまたはα(1,4) FTの発現を決定することができる遺伝子伝達システムを提供する。その代わり 、本システムでは、これらの酵素の細胞表面発現オリゴ糖産物の検出を可能とし 、それらの酵素作用の特定のアッセイを提供するために現存の試薬を利用する。 このアプローチでは、クローン化された適切なcDNA分子を選択できる特定 の特性を有する受容体宿主細胞が必要となる。宿主は、α(1,3)FTsも同 族の表面Galβ(1,4)〔Fucα(1,3)〕GlcNAcリンケージ( SSEA−1構造)も発現してはならない。しかし、SSEA−1分子の表面出 現のための適切な基質を合成できなければならない。これらの基質にはヌクレオ チド糖GDP−フコース、グリコシル転移反応のためのオリゴ糖受容体として機 能する表面発現グリコ複合体分子が含まれる。こらの特徴の各々はCOS−1細 胞によって満たされる。 蛍光活性化セルソーター(FACS)分析は、COS−1細胞は表面局在SS EA−1決定基を発現しないことを示した。COS−1細胞の抽出物を用いて行 った酵素分析の結果、SSEA−1発現がないのは、α(1,3)FT活性の不 足が原因であることが分かった。本発明者は、COS−1細胞はそれらのGol giの中にGDP−フコースの基質レベルを含有していることを期待した。何故 なら、ある種の抗レクチン突然変異細胞株を除く、実質的に全ての哺乳細胞がG DP−フコースを合成し、それをゴルジ腔にトランスロケーションするためであ る。また、COS−1細胞は、形質移入されたcDNAによって決定されたα( 1,3)FT活性のための潜在的なオリゴ糖受容体を表す、置換されたポリラク トースアミンを含む表面発現グリコ複合体を構成する。本発明者は、α(1,2 )FTの発現を決定するために本発明者が以前示したクローン化されたヒト遺伝 子断片を用いた形質移入の後、COS−1細胞上の異なった端子にリンクしたフ コースのリンケージの発現を示し、上記の基質は表面発現した末端フコースの構 成に利用できることを確認した。したがって、本発明者は、COS−1細胞はα (1,3)FT決定cDNAを用いて形質移入に続き、表面発現SSEA−1分 子を構築できることを観察した。 α(1,3)FTの発現を決定するクローン化されたcDNAの分離と表面局 在るSSEA−1構造 ヒトA431細胞株は、α(1,4)FTの産物を表す細胞表面ルイス血液型 aおよびbの構造を発現することが示されている。A431抽出物を用いて行っ た酵素アッセイにより、細胞は対応するα(1,3)FT活性も発現することを 確認した。したがって、A431細胞mRNAを用い、哺乳類の発現ベクターp CDM7の中でcDNAライブラリを構築し、COS−1細胞に形質移入した。 形質移入した細胞を、SSEA−1決定だけのために効果のあるモノクローナル 抗体を使用し、シードの手順によってスクリーニングした。 選択手続きにおけるα(1,3)FTを決定するcDNAの量の増加に対応す るため、2’−フコシルラクトースを受容体基質として使用するアッセイを採用 した。この受容体はルイスα(1,3/1,4)FTと対立遺伝子でないヒトα (1,3)FTとを区別できる。これは、本受容体は前者の酵素によっては効果 的に使用されるが、後者の酵素によっては利用されないためである。このアッセ イでは、本発明者はA431 cDNAライブラリを用いて形質移入したCOS −1細胞、もしくは最初の選択によって分離された増殖プラスミドDNAを用い て形質移入した細胞内での酵素活性を検出できなかった。しかし、2回目の選択 によって得られた増殖プラスミドDNAは、COS−1細胞内に形質移入された ときに低レベルの酵素活性を導くことが分かった。パンニングによる3回目の選 択によって酵素活性の穏やかな増加が得られた。この段階で、クローン化された α(1,3)FT cDNAを同定して分離するために“シブ選択”を採用した 。3回目のパンニング選定によって分離されたクローンのプールを、形質移入し たCOS−1細胞中においてα(1,3)FT活性を生成する能力についてテス トした。これらの実験のために、500クローンの内の約1つがα(1,3)F T発現を決定するプラスミドを表すと推定した。約400クローンの1つの“活 性な”プールを幾つかに分け、得られたプールのそれぞれについて、形質移入し た細胞中における酵素活性能力をテストした。活性な16個のクローンプール内 の1つのクローン(pCDM7−α(1,3/1,4)FT)がα(1,3)F Tを非常に高いレベルで発現することを発見した。本プラスミドがSSEA−1 (ルイスx)決定基(図8)の表面発現をももたらすことを確認するためにFA CS解析を使用した。本プラスミドを用いて形質移入したCOS−1細胞は抗S SEA抗体によって明るく染色されるが、対照IgM抗H抗体によっては染色さ れない。これに対し、pCDM7ベクターのみを用いて形質移入した細胞は両方 の抗体による背景染色を示す。形質移入した細胞を抗ルイス抗体(図8)を用い て染色した実験でも同一の結果が得られた。 クローン化されたcDNAの推定タンパク質配列はトランスメンブレイン・ト ポロジーを推定する pCDM7−α(1,3/1,4)FT(配列認識号1)中のcDNAインサ ートは、ヌクレオチド長が2022で、72bpの5’未翻訳領域、1083b pの連続したオープンリーディングフレーム、およびポリ(A)末端で終わって いる867bpの3’未翻訳領域から成る。 このクローン化されたcDNAを、A431細胞内の単一の突出した2.3k bのトランスクリプトにハイブリダイズすると、本インサートが実質的に最大長 であることが分かる。弱い7.5kbの追加のトランスクリプトは現在のところ 未定義である。長いオプーンリーディングフレームの最初にあるイニシエーショ ンコドンはコザックのコンセンサス・イニシエーション配列に類似した配列内に 埋め込まれており、これの前に2個のインフレームのストップコドンかある。ま た、指定されたイニシエーターの上流側には単一の追加のATGがある。このA TGもコザック・コンセンサス配列に適合するが、非常に短いインフレーム配列 を開始する。上記の長いオプーンリーディングフレームは、Mr42,069D aの361アミノ酸タンパク(配列認識番号2)を推定する。最新のDNAとタ ンパクの配列データベース(プロテイン・アイデンティフィケーション・リソー ス(リリース21.0)およびジーンバンク(リリース60.0))を用いて配 列比較を行ったところ、ヒトAlu配列に類似の3’未翻訳領域内の断片を除き 、本配列に非常に類似した配列は確認できなかった。3’未翻訳領域は、機能の 重要性は未知の16ヌクレオチド配列の20個の縮重したコピーも含んでいる。 pCDM7−α(1,3/1,4)FT中のインサートによって推定された配 列と、4個の異なったクローン化した哺乳グリコシルトランスフェラーゼとを比 較したが、明らかなプライマリー配列の類似性は発見できなかった。また、これ らの酵素のプライマリー配列の類似性は広範囲にわたるものではないが、全体的 な構造組織は類似している。即ち、これらの酵素は、タイプIIのトランスメンブ レインタンパク質の代表であり、それぞれが、短いNH2末端の細胞質ドメイン 、単一のトランスメンブレインセグメント、および最終的にはゴルジ腔に存在す るより大きいCOOH末端触媒ドメインから成っている。推定されるタンパク配 列の検査とハイドロパシー分析の結果、本タンパクは類似の構造組織を保持する ことが示唆された。19個のアミノ酸から成り、塩基残基に隣接するアミノ末端 の近傍に単一の疎水性セグメントがある。この仮の単一アンカー配列はゴルジ腔 内に327個のアミノ酸を有し、サイトゾルコンパートメント内の15個の残基 を残す。 pCDM7−α(1,3/1,4)FTによってコードされるタンパクはフコ シルトランスフェラーゼである 発現データと本配列の他のグリコシルトランスフェラーゼに対する予想したト ポロジー類似性は、本cDNAがα(1,3)FTをコードすることを示してい る。しかし、これらのデータは、形式上には、本cDNA配列が、内因性の遺伝 子、トランスクリプトまたはタンパク質との相互作用によってα(1,3)FT 活性を翻訳決定する分子をコードする可能性があることと一致している。酵素活 性が本分子に直接関連していることを示すため、推定したポリペプチド(配列同 定番号No.2の残基43−361)の推定触媒ドメインを、哺乳類の発現ベク ターpPROTAの中で、スタフィロコカス オーレウス(Staphyloc occus aureus)プロテインAのIgG結合ドメインの分泌形態に融 合し、ベクターpPROTA−α(1,3/1,4−Ft)。を得た。このフュ ージョンプロテインは、フコシルトランスフェラーゼの仮のトランスメンブレイ ンのアンカーセグメントを欠いているため、それは分泌分子として合成され、I gGを含むマトリクス上でアフィニティー精製でき、その後α(1,3)FT活 性についてテストできるものと発明者は期待した。対照ベクターpCDM7また はROTAを用いて形質移入したCOS−1細胞は、細胞に結合するか細胞から 放出された酵素活性を生成しなかった。しかし、pPROTA−α(1,3/1 ,4)FTcまたはpCDM7−α(1,3/1,4)FTを用いて形質移入し た COS−1細胞から調製された調整培地は多量のα(1,3)FT活性を含んで いた。特に、pPROTA−α(1,3/1,4)FTcによって生成した放出 活性は事実上100%がIgG−セファロースマトリクスによって保持され、こ の活性の約24%が、綿密な洗浄の後でマトリクスから回収できる。これに対し 、pCDM7−α(1,3/1,4)FTによって生成した放出活性はアフィニ ティー吸収剤と相互作用しなかった。この結果は、クローン化された本cDNA によってコードされたタンパク質は、フコシルトランスフェラーゼをコードする こと、(α1,3)FT活性を生成するのに十分な情報が酵素のCOOH末端の 319アミノ酸中に存在すること、および酵素的に活性な状態にある酵素領域を 2連のフュージョンプロテインの一部としてアフィニティー的に精製するのに本 アプローチを使用できることを示している。 フコシルトランスフェラーゼはグリコシル化されたトランスメンブレインタン パクである 本酵素について推定されたトランスメンブレイン・トポロジーを確認するため 、フコシルトランスフェラーゼcRNAを調製し、一連の試験管内翻訳実験によ る分析を行った。これらの実験において生成した35S−メチオニンによって標識 された一次翻訳産物は約37,500Daの分子量を持って移動した。この観察 された分子量と推定した分子量(42,069DA)との差は、メンブレイン・ スパンニングタンパク質は時として、可溶性タンパクの分子量生成体に比べて異 常に早くSDSポリアクリルアミドを通して移動するという観察結果に一致して いる。この放射能で標識されたタンパクを、イヌ膵臓ミクロゾームの存在下で 験管内 翻訳によって生成させた時、それは約42,000DaのMrで移動した 。ミクロゾームの存在下で翻訳を行なった時における約6,000Daの増加が 観察され、これは、ミクロゾーム・メンブレインを横切っての共翻訳転座の間に 、ミクロゾーマル・オリゴサッカリルトランスフェラーゼによって2つのコア・ グリコシル化構造が2つの潜在的なアスパラギンによってリンクされたグリコシ ル化部位に加えられることを示唆している。また、この生成物はミクロゾームと ともに共沈降させ、タンパク質がミクロゾーム・メンブレイン中に共翻訳的に挿 入されるか、またはそれを横切って転座したことを示唆した。この放射能で標識 さ れた、ミクロゾームに結合したタンパク質をエンドグリコシダーゼHを用いて制 限的に分解したところ、その分子質量は、一次翻訳産物と実質的に同一の質量に 減少した。部分的なエンドグリコシダーゼHによる分解により、単一の残基コア のグリコシル化ユニットを含む分子から構成されると思われる中規模の付加バン ドが生成した。これらの結果は、コア・オリゴ糖構造の付加が、共翻訳実験にお いて観察されたタンパクのサイズの増加の原因であることを示している。これら の観察は、推定されたフコシルトランスフェラーゼアミノ酸配列中の2つの潜在 的なN−グリコシル化部位は、ミクロゾーム・メンブレインを横切っての転座の 間にグリコシル化されることを示している。 フコシルトランスフェラーゼの予想されるトランスメンブレイン・トポロジー はプロテアーゼ保護実験の結果によっても支持された。ミクロゾームの存在下に おける共翻訳は、プロテアーゼによる分解に対して抵抗力をもつ42,000D aのポリペプチドを産出する。プロテアーゼ分解による生成物は、分解されてい ないミクロゾーム結合のポリペプチドよりも僅かに早く移動する。この差は、ミ クロゾームの外面に出現することが予想される15個のNH2末端アミノ酸の幾 つかまたは全ての除去によるものである可能性が高い。翻訳の後のミクロゾーム の付加により、プロテアーゼに反応しやすくグリコシル化されていない、放射能 によって標識された生成物が得られ、タンパクのメンブレイン挿入は共翻訳的で あり翻訳の後に行なわれるものでないことを示した。プロテアーゼに反応しやす いグリコシル化された約34KDaのポリペプチドも実験中に少量確認すること ができる。このタンパク質の正確な性質は知られておらず、プロテイナーゼKの 濃度に依存して現れる。したがって、それは幾つかのミクロゾーマル小胞の完全 さが失われたときに生成する無傷のタンパクのタンパク断片を表すものと本発明 者は考えた。全体として、本ポリペプチドのバルクは、共翻訳的転座プロセスに よってミクロゾーマル・ルーメン内で隔離でき、N−グリコシル化される生成物 を最終的に産出できることことをこれらの実験が示している。これらの結果は、 フコシルトランスフェラーゼ配列から推定したタイプIIのトランスメンブレイン ・トポロジーと一致している。 フコシルトランスフェラーゼは2つの異なったグリコシルリンケージを構築で きる 一般的に各グリコシルトランスフェラーゼは、単一のグリコシル転移反応を行 ない、その結果単一のグリコシルリンケージを生成するコンピテントであると考 えられている。しかし、遺伝子学的および生物学的な研究は、ヒトのルイス血液 型遺伝子座は、幾つかのタイプIおよびタイプII受容体基質上にサブ末端Fu cα(1,3)およびFucα(1,4)リンケージを生成する単一のフコシル トランスフェラーゼの発現を決定するであろうことを示している。特に、ルイス 酵素は、受容体である2’−フコシルラクトースを使用できる唯一のヒト・フコ シルトランスフェラーゼであると考えられている。プラスミドpCDM7−α( 1,3/1,4)FTを、本受容体に基づく酵素アッセイを含む増加法を用いて 分離したため、そのcDNAインサートはルイス酵素をコードするものであるよ うに思われた。これを確認するため、本発明者は一連の分析を行なってリコンビ ナント酵素の受容体特異性を決定した。 pCDM7−α(1,3/1,4)FTを用いて形質移入したCOS−1細胞 の抽出物につき、GDP−〔14C〕フコースと、タイプI受容体であるラクト− N−ビオースIまたはタイプII受容体であるラクトースおよびN−アセチルラ クトースアミンとの間でのグリコシル転移に触媒作用を及ぼす能力をテストした 。公知のヒト・フコシルトランスフェラーゼによってこれらの受容体の各々から 形成できるモノフコシル化された生成物は2種類しかない。分子の末端Gal上 にFucα(1,2)リンケージを含むH活性の生成物と、単糖のC4ヒドロキ シル(タイプI受容体)またはそのC3ヒドロキシル(タイプII受容体)を介 してこれらの受容体のサブ末端単糖にα−アノマー構造でリンクしたフコースを 含むルイスxまたはルイスa活性の生成物とである。したがって、本発明者は、 反応生成物を、それぞれの受容体を有する可能性のある上記2種類の反応生成物 を区別し、酵素特異性を決定できる下降ペーパークロマトグラフィ法を用いて反 応生成物を分画化した。 本発明者は、ルイスx三糖3−フコシルラクトースのクロマトグラフィ移動度 特性を有する放射能によって標識された化合物を形成し、もう一つの可能性のあ る生成物であるタイプIIのH三糖と区別するためにラクトースがリコンビナン ト酵素によって利用されることを発見した。同様に、N−−アセチルラクトース アミンが受容体として使用される場合、これらの抽出物が3−フコース−N−ア セチルラクトースアミンを生成した。各生成物がα−フコシダーゼを用いて分解 されるとそれらから放射能で標識されたフコースが多量に放出され、これは酵素 が、アルファ・アノマー構造における受容体基質にフコースを結びつけているこ とを示している。これらの結果は、pCDM7−α(1,3/1,4)FTが、 SSEA−1決定基を表すGalβ(1,4)〔Fucα1,3〕GlcNAc リンケージの発現を決定することを示すフローサイトメトリーによる観察と一致 している。 さらに、タイプI受容体であるラクト−N−ビオースIを、H活性標準2’− フコシルラクト−N−ビオースIとは異なり、ルイスa三糖4−フコシルラクト −N−ビオースIとしての本質と一致した移動度を用いてクロマトグラフィを行 なった。また本生成物はα−フコシダーゼを用いた分解に対し反応し易かった。 これらの実験にアフィニティー生成されたプロテインA−フコシルトランスフェ ラーゼを用いた場合、3つの二糖類の全てについて同一の結果が得られた。まと めると、これらの結果は、リコンビナントフコシルトランスフェラーゼは、タイ プIIおよびタイプIの二糖類受容体上にFucα(1,3)およびFucα( 1,4)グリコシルリンケージを構成できることを示している。 相補的な一組の分析の中で、タイプIおよびタイプIIの血液型H三糖類をフ コシルトランスフェラーゼcDNAによってコードされた酵素のための受容体と してテストした。血液型Hα(1,2)−FTとGDP〔14C〕フコースを含む 細胞抽出物を使用し、末端ガラクトース残基のC2ヒドロキシルにある二糖前駆 体をフルコシル化することによって放射能で標識されたタイプIとタイプIIの H分子を調製した。その後、これらのHPLC精製され放射能で標識されたタイ プIおよびタイプIIのH受容体の各々を、標識されていないGDP−フコース およびpPROTA−α(1,3/1,4)FTcによって生成したアフィニテ ィー精製されたフコシルトランスフェラーゼ活性を使用する反応で使用した。こ れらの反応のHPLC分析によりタイプIまたはタイプII受容体を用いてそれ ぞれ生成したルイスb三糖およびルイスy三糖について推定したクロマトグラフ ィ移動度を有する、放射能で標識された新たな化合物を同定した。pCDM7− α(1,3/1,4)FTを用いて形質移入したCOS−1細胞から調製した抽 出物についても実質的に同一の結果が得られた。これらの実験の結果と類似のも のを表2にまとめた。 3番目の一連の実験では、本発明者は、シアリル・ルイスxおよびシアリル・ ルイスa三糖決定基を生成するために末端ガラクトース残基かα(2,3)リン ケージのシアル酸によって置換された“タイプI”または“タイプII”の受容 体上で本酵素が作用できることを示した。pCDM7−α(1,3/1,4)F Tを用いて形質移入し、モノクローナル抗シアリル・ルイスx抗体を用いて染色 したCOS−1細胞のフローサイトメトリー解析により、末端ガラクトース残基 がα(2,3)リンケージのシアル酸によって置換された“タイプII”受容体 に対するα(1,3)FT作用の産物であるシアリル・ルイスxのアンチゲン( 図8)の表面発現を本プラスミドが決定できることが示される。同様に、pCD M7−α(1,3/1,4)FTを用いて形質移入し、モノクローナル抗シアリ ル・ルイスa抗体を用いて染色したCOS−1細胞により、末端ガラクトース残 基がα(2,3)リンケージのシアル酸によって置換されたタイプI受容体に対 するα(1,4)FT作用の産物であるシアリル・ルイスaのアンチゲン(図8 )の表面発現を本プラスミドが決定できることが示される。これらの分析は、p CDM7−α(1,3/1,4)FTによってコードされたフコシルトランスフ ェラーゼは、タイプIまたはタイプII受容体のサブ末端GlcまたはGlcN Ac上に2つの異なったグリコシルリンケージを構成できること、およびこれは 、受容体上の末端ガラクトースのα(1,2)フコシル化またはα(2,3)シ アリル化の状態に依存しないことを示している。これらの特徴は、ヒト・ルイス 血液型遺伝子座によって決定されるフコシルトランスフェラーゼ活性について報 告されたものと同じであり、単一のフコシルトランスフェラーゼが2つの異なっ たグリコシルリンケージの形成に触媒作用を及ぼすことができることを示してい る。 フコシルトランスフェラーゼcDNAはヒト・ルイス血液型遺伝子座に対する ヒト・ゲノム配列シンテニーを同定する 遺伝子データは、ヒト・ルイス血液型は染色体19上の遺伝子座によって決定 されることを示している。したがって、ヒト染色体19の有無のみが異なる一組 のヒト−マウス・体細胞雑種をサザン・ブロット分析するために本フコシルトラ ンスフェラーゼcDNAを使用した。その結果は、高い厳密さで、フコシルトラ ンスフェラーゼcDNAが染色体19上に位置するクロスハイブリダイジング配 列を同定することを示している。酵素分析と合わせて考えると、これらのデータ は、クローン化された本cDNAはヒト・ルイス血液型遺伝子座の産物を表すこ とを強く示唆している。実施例III“GDP−Fuc:β−D−Gal(1,4/1,3)−D−Gl cNac(/Glc)−α(1,3/1,4)−フコシルトランスフエラーゼを コードするクローン化されたヒトcDNAの分離”のための実験手順cDNAライブラリの構築 標準的な手順を用い哺乳類の発現ベクターpCDM 7を使用し、ヒトA431細胞から分離したポリ(A)+RNAからcDNAラ イブラリを調製した。pCDM7にはベクターpCDM8に存在するポリオーマ 配列がないが、実質的に同一である。ライブラリは2.6×106個の独立した リコンビナントを含んでいた。 細胞株 マウス3T3−ヒト雑種株KLEJ−47およびKLEJ−47/P −1はハワード・グリーン(Howard Green)博士(ハーバード大学 、ボストン)から入手した。マウス3T3細胞はビィシュバ・ディギット博士( ミシガン大学、アン・アーバー)から入手した。他の全ての細胞株および細胞生 育のための条件は以前に文献に述べられているものと同様である。 パンニング皿の調製 パンニング皿は、それらを最初にヤギ抗マウスIgMで 被覆し、そしてモノクローナル抗SSEA−1抗体で被覆した(腹水はディ・ソ ルター(D.Solter)博士から提供を受けた、1:1000に希釈)。 cDNAライブラリのスクリーニング A431ライブラリを前述のようにし てスクリーニングした。パンニング皿に付着している形質移入されたCOS−1 細胞からプラスミドDNAを奪取し、形質転換により細菌宿主MC1061/P 3に導入した。形質転換体を、抗生物質選択下で培養溶液内で飽和するまで生育 し、分割量を冷凍貯蔵のために取り出し、培養物の残りをプラスミドDNAの 調製に使用した。このプラスミドDNAの一部を、抗SSEA−1パンニング皿 の上での形質移入と免疫的選択による増殖のために使用した。 FACS分析 形質移入されたCOS−1細胞を、マウスIgM抗SSEA− 1(抗ルイスx)モノクローナル抗体(腹水の1:1000稀釈)マウスモノク ローナルIgM抗Hあるいはルイスa抗体(ケムビオメッド社、エドモントン; 10μg/ml)、マウスモノクローナルIgM抗シアリル・ルイスx抗体(C SLEX、P.テラサキ、10μg/ml)、またはマウスモノクローナルIg G抗シアリル・ルイスa抗体(CSLEA,P.テラサキ、1:1000稀釈、 腹水)を用いて染色した。細胞をフルオレセイン結合ヤギ抗マウスIgM(シグ マ社;40μg/ml)で染色し、すでに発明者による文献記載のある蛍光活性 化セルソーティング法による分析に付した。ノーザンブロットおよびサザンブロット A431細胞のRNAを前記したノー ザンブロット分析に付した。プローブは、プラスミドpCDM7−α(1,3/ 1,4)FT中のcDNAインサートの5’末端から単離された1.7kbのX hol−Xbal断片からなるものであった。この断片は、ヒトAlu配列に類 似の配列を示す当該cDNAの部分を含有していない。このプローブはα[32P ]dCTPでニックトランスレーションすることにより比活性6×108cpm /μgについて標識された。 ゲノムDNAを調製し、前記したサザンブロッティングに付した。ブロットは 0.1xSSC、0.5%SDSで65℃、30分間最終洗浄した。使用したプ ローブは、それがランダムプライミング法で標識された他は、ノーザンブロット 分析と同条件であった。 配列決定 プラスミドpCDM7−α(1,3/1,4)FT中のcDNAイ ンサートの配列決定を、二重鎖プラスミドDNAテンプレートと市販の反応試薬 (ファルマシア)を用いるチェーンターミネーター法によって行った。両鎖はc DNAインサートの配列に従って合成した17−merあるいは19−merオ リゴヌクレオチドプローブで配列決定した。ベックマン・マイクロジニー・パッ ケージとシーケンス・アナリシス・ソフトウェア・パッケージ(ウィスコンシン 大学、遺伝子工学コンピューターグループ)を用いてDNA配列を集積し、分 析した。 試験管内・トランスクリプション−翻訳 プラスミドpCDM7−α(1,3 /1,4)FT DNAを、Notlを用いた分解により、クローン化したcD NAインサートから下流を直線化した。T7ポリメラーゼ・プロモータベースの試験管内 ・トランスクリプションキット(ファーマシア)を用いてこの直線化し たテンプレートトランスクリプションからキャップRNAトランスクリプトを生 成した。トランスクリプトはpCDM7のcDNAクローニングサイトに近いT 7プロモータから始まる。試験管内で作られたRNAトランスクリプトを用い、35 S−メチオニン(アマーシャム)の存在下で、製造業者の指示に従ってラビッ ト網状赤血球溶解産物試験管内・トランスクリプションシステム(ファーマシア )をプログラムした。イヌ膵臓ミクロゾーム・メンブレイン(プロメガ)(共翻 訳)の存在下で生成しるか、ミクロゾームの付加(後の翻訳的ミクロゾームの付 加)の前に生成したメンブレイン結合の放射能で標識された試験管内翻訳生成物 をショ糖クッションを通して、遠心分離により可溶性の反応成分のバルクから分 離した(0.5mMのショ糖、10mMのトリス7.4、150mMのNaCl 、170,000×gで60分)。エンドグリコシダーゼH分解のために、ミク ロゾームに結合した放射能で標識された製品を最初に50mMのクエン酸ナトリ ウム(pH 5.5)中に再懸濁し、SDS中で0.2%にし、100℃で4分 間加熱した。その後この材料の分割量を同量の水を用いて希釈し、37℃で20 時間、0.1%のBSA、0.5%のトリトンX−100、0.5mMのPMS F、40μg/mlのベスタチン、10μg/mlのα2マクログロブリン、お よび30μg/mlのE−64の存在下で、10mUまたは5mUのエンドグリ コシダーゼHを用いて分解した。これに代え、ペレットを氷冷した5mMのCa Cl2を含有する試験管内の翻訳バッファ中に再懸濁し、150μg/mlのプ ロテイナーゼKを用いて、氷上で1時間、1%トリトンX−100の存在化また は非存在下でインキュベートした。その後種々の放射能で標識された試験管内翻 訳産物を、62.5mMのトリス(pH 6.8)、100mMのジチオスレイ トール、2%のSDS、10%のグリセロール、および0.02%のブロムフェ ノールブルーの中で、100℃で4分加熱することによって変性し、還元した。 サンプル をSDSポリアクリルアミドを通して分画化し、ゲルをオートグラフィにかけた 。 フコシルトランスフェラーゼのアッセイ 培養した細胞をPBS中で洗浄し、 ゴム製のポリスマンを用いて掻くことによって収穫し、PBS中で再洗浄し、遠 心分離によりペレット化した。抽出物中の最終的なタンパク濃度が略5mg/m lになるように細胞のペレットを1%トリトンX−100中に再懸濁して細胞の 抽出物を調製した(BCA法、ピアース・ケミカル社)。 50mMのMOPS(pH 6.5)、25mMのMnCl2、10mMのL −フコース、5mMのATP、3mMのGDP−〔14C〕フコース(600,0 00cpm/nmolの比放射能、アッセイ当たり35,000cpm)、2. 5mMの受容体(即ち、2’−フコシルラクトース、N−アセチルラクトースア ミン、ラクトース、またはラクト−N−ビオースI)、および10μlの細胞抽 出物を含む最終容量が20μlの溶液中でアッセイを行なった。シブ選定プロセ スの間に行なわれるα(1,3)FT比活性を測定する場合、およびプロテイン A−フコシルトランスフェラーゼ・フュージョンタンパク実験の分析においては 、添加する細胞抽出物の量およびインキュベート時間を、比放射能を正確に反映 した(直線の)反応速度が得られる様に調製した。反応物を37℃で2−6時間 インキュベートし、20μlのエタノールの添加によって終了し、500μlの 水を用いて希釈した。そのインキュベートが完了し、希釈された反応物を15, 000×gで5分間遠心分離した。各反応物の上澄み50μlの放射能を計数し て放射能の総量を測定し、各200μlをDowex−1クロマトグラフィによ って分画した。カラムから溶出する放射能で標識された中性の材料は、生成物形 成の測定として直接計数した。酵素の比放射能は、1時間でGDP−フコースか ら受容体に伝達された1mgの細胞抽出物タンパク当たりのフコースのpmol と定義されている。また、中性の生成物を、下降ペーパークロマトグラフィとH PLCにより下記の様にしてさらに分析し、それらのアイデンティティを確認し た。受容体を添加しない反応を並行して行い、内因性受容体分子への転換、およ び基質と産物の加水分解をを補正できるようにした。これらの対照実験は、GD P−〔14C〕フコース内の放射能の2.6%未満が、受容体を添加しない場合に 中性 生成物として発見されたこと、および本材料の実質的に全てのものが〔14C〕フ コースを表したことを示した。 放射性物質で標識されたH−タイプIとH−タイプIIの分子を受容体として 用いた場合については、放射性物質で標識されていないGDPフコースをGDP −[14C]フコースの代わりに用い、反応を16時間継続した。残存する未反応 の中性放射性標識受容体基質と中性放射性標識産物をDowex−1クロマトグ ラフィーで単離し、次いでHPLCで分析した。放射性物質で標識されたH−タイプIとH−タイプII受容体の調製 . ヒトα(1,2)FT活性を含有する細胞抽出物を用いて放射能で標識された H−タイプIとH−タイプIIの受容体分子を合成した。細胞抽出物は、ヒトα (1,2)FTをコードするヒトDNAセグメントを含むマウスL細胞形質移入 体であるmH1−12から調製した。これらの抽出物は検出可能なα(1,3) FT活性またはα(1,4)FT活性を含んでいない。ラクト−N−ビオースI (20mM)またはN−アセチルラクトースアミン(20mM)を、100μg のmH1−12抽出タンパク質を用い、3μMのGDP−〔14C〕フコースを含 む25mMのカコジル酸ナトリウム(pH 6.2)40μlの中で、37℃で 16時間インキュベートした。40μlのエタノールを加えて反応を終了させ、 200μlの水で希釈した。沈澱したタンパクを12,000×gで5分遠心分 離して除去し、上澄み中の中性で放射能で標識した反応産物をDowex−1ク ロマトグラフィによって分離した。中性で放射能で標識した各々の物質の大部分 を含むH−タイプIの三糖分子(ラクト−N−ビオースI反応)またはH−タイ プII三糖分子(N−アセチルラクトースアミン反応)を以下に述べる方法でH PLCによって精製した。 HPLCおよび下降ペーパークロマトグラフィによる生成物の分析 アフィニティ精製したプロテインA−フコシルトランスフェラーゼ・ヒュージ ョンプロテインによって、もしくはpCDM7−α(1,3/1,4FT)によ ってプログラムされたCOS−1抽出物、タイプIまたはタイプII二糖受容体 、およびGDP−〔14C〕フコース(上記参照、フコシルトランスフェラーゼア ッセイ)によって生成した、放射能で標識化された中性反応生成物を下降ペ ーパークロマトグラフィまたはHPLCクロマトグラフィによって分画し、それ らの構造を決定した。HPLCによって分析したサンプルを70%アセトニトリ ルに溶解し、アセトニトリル:水(70:30)で平衡化したDynamax6 0A(一次アミンカラム、レイニン・インスツルメント、4.14mm×25c m)に塗布した。アセトニトリル:水(70:30から40:60)の直線勾配 を用いて、1分当たり1mlの流量で1時間化合物を溶出した。溶出液をベック マン・インスツルメントのオンラインラジオアイソトープ検出器を用いてモニタ ーした。下降ペーパークロマトグラフィによって分析したサンプルを水に溶解し 、フェニル/イソプロパノール/蟻酸/水(85:5:10:100、下層)中 でワットマンNo.40を通して分画した。クロマトグラフィ(図6、パネルA では40時間、パネルBでは48時間)の後、空気乾燥したクロマトグラムを1 cmの帯に切断し、放射能で標識された化合物を2mlの水に溶出した。各溶出 液を10mlのシンチレーションカクテルと混合した後、シンチレーション計数 によって放射能を測定した。HPLCで精製した14Cで標識したタイプIおよび タイプIIのH活性三糖標準物は、14Cで標識したタイプIおよびタイプIIの H活性受容体三糖類について上記したようにして調製した。 α−L−フコシダーゼ分解 中性で、HPLCで精製され放射能で標識化され たフコシルトランスフェラーゼ産物をα−L−フコシダーゼで分解し、付加した フコースのアルファ・アノマー構造を確認した。(1,3)〔14C〕フコシル− N−アセチルラクトースアミン、(1,3)〔14C〕フコシル−2’−フコシル ラクトース、(1,3)〔14C〕フコシルラクトース、および(1,4)〔14C 〕フコシルラクト−N−ビオースIをHPLCで精製し、各々の分割量(10, 000から20,000cpms)を、100mUのα−L−フコシダーゼ(E .C. 3.2.1.51、ボーリンガー・マンハイム)を用い、100mMの クエン酸ナトリウム(pH 5.5)70μlの中で、37℃で22時間分解し た。Dowexカラムクロマトグラフィーによって脱塩し、上記の条件を使用し てHPLC分析を行なった。分解生成物を、並行して行なったL−〔14C〕フコ ースおよび〔14C〕フコースで標識した受容体の分離との比較によって確認した 。それぞれのケースにおいて、α−L−フコシダーゼ分解によりL− 〔14C〕フコースが多量に放出された。 pPROTA−α(1,3/1,4)FTcの構築と分析 指定フコシルトラ ンスフェラーゼ触媒領域を含んでいるcDNAインサートのA1344bpのS mal−BamHl断片をpCDM7−α(1,3/1,4)FTから分離した 。この断片をDNAポリマラーゼIのクレノウ断片を用いて平滑化し、その端を キナーゼ化した二本鎖リンカー(5’CGGAATTCCG 3’)に連結した 。連結した断片をゲル精製し、EcoRIを用いて分解し、再度ゲル精製した。 この断片をPPROTAの特異的なEcoRIサイトに挿入した。単一のインサ ートを適切な方向で含む1つのプラスミド(pPROTA−α(1,3/1,4 )FTc)をDNA配列決定によって分析し、ベクター、リンカーおよびインサ ートの間の結合点を横切る推定した配列を確認した。 プラスミドpPROTA−α(1,3/1,4)FTc、pCDM7−α(1 ,3/1,4)FTまたはpPROTA(各50μg)を、DEAE−デキスト ラン媒介形質移入によって個々にCOS−1細胞(100mmの皿の各々に対し て500,000個)に導入した。72時間の発現期間の後、各プレートから培 地(10ml)を収穫し、低速(300×Gで8分)と高速(100,000× Gで1時間)で遠心分離した。そして上澄みを0.05%のツウィーン20に調 整し、直接アッセイするか、IgG−セファロース結合の研究に使用した。Ig G−セファロースまたはセファロース6Bを製造業者(ファーマシア)が述べて いるようにして予め平衡化し、ダルベッコの修飾イーグル培地(FCS/DME M)中の10%胎児ウシ血清で平衡化した。形質移入したCOS−1細胞から調 製された既知量の酵素活性を含む処理された上澄みの分割量を、平衡化したIg G−セファロースまたはセファロース6Bを100μl用いて4℃で一晩、一括 してインキュベートした。上澄みをアッセイ(“フロースルー”活性)のために 保存した。その後、マトリクスを遠心分離により、50mMのトリス(pH 7 .5)1ml、1mg/mlのウシ血清アルブミンを用いて9回、20mMのト リス(pH 7.5)1ml、5mMのCaCl2、0.05%のツウィーン2 0を用いて2回、そしてFCS/DMEMを用いて1回洗浄した。その後、マト リクスを同量のFCS/DMEMに再懸濁した。この懸濁液をα(1,3)FT 活性 のアッセイに直接使用した。 実施例IV:GDP−Fuc:β−D−Gal(1,4)−D−GlcNAc α(1,3) フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TIV、DNA配列認識番号7、タンパ ク配列同定番号No.8)をコードするDNA配列のクロスハイブリダイセーシ ョンによるクローニングと発現 : 本発明者は以前に、ヒト・ルイス式血液型フコシルトランスフェラーゼ(配列 認識番号2)をコードするクローンcDNA(配列認識番号1)を分離するため に哺乳類の遺伝子転換手順を使用した。生化学的および遺伝子的データは、ヒト ゲノムは表面局在ルイスx決定基(Galβ1→4〔Fucα(1→3)Glc NAc−)を構成する能力を有するフコシルトランスフェラーゼをコードする2 つまたはそれ以上の構造遺伝子を含んでいることを示していることに本発明者は 気が付いた。これらの酵素は受容体基質特異性、および2価カチオンとN−エチ ルマレイミド失活に対して異なる反応性を示すため、本酵素はルイス・フコシル トランスフェラーゼとは異なったポリペプチドであると考えられた。さらに、そ れらの発現は、ルイス式血液型フコシルトランスフェラーゼの遺伝子座とは異な る座によって決定せれ、それらはルイスの座によって決定される発現パターンと 相違する組織特異パターンを表す。これらの酵素はルイス式血液型フコシルトラ ンスフェラーゼに非常に似通った特性を示すため、それらに対応する遺伝子は一 次配列のレベルで十分に関連づけられ、クロスハイブリダイゼーションのアプロ ーチによってそれらを分離できると発明者は考えた。彼および他の研究者が、同 じ基質を使うグリコシルトランスフェラーゼ配列がそれらの一次核酸またはアミ ノ酸の配列に全く関係していないことを以前に示したのに関わらず彼はこれを考 えた。なぜなら、彼はフコシルトランスフェラーゼは非常に類似した基質要件を 示したこと、かつそれぞれのケースで構成された1以上のオリゴ糖産物がルイス フコシルトランスフェラーゼによって作られたものと同一であることを知ってい たためである。 これらのα(1→3)フコシルトランスフェラーゼが構造的に関連する遺伝子 ファミリーによってコードされる可能性を考慮し、彼はクローン化したルイス・ フコシルトランスフェラーゼcDNAを用い、クロスハイブリダイゼーション法 によって他のかようなものを分離することを探究した。低ストリンジェンシイ・ サザン・ブロット・ハイブリダイゼーション実験によって、ルイスα(1,3) フコシルトランスフェラーゼcDNAのコード領域が強いハイブリダイゼーショ ンヒトDNA制限フラグメントならびにいくつかの弱いハイブリダイゼーション フラグメントを検出することが明らかとなった。弱いハイブリダイゼーションフ ラグメントは、制限酵素の使用に関わらず常に検出され、正統のルイス遺伝子と 異なる1以上のDNA配列は多分強いハイブリダイゼーションフラグメントによ って表されていることを示唆した。これらの配列の分子的性質をさらに検査する ため、彼はヒトλファージゲノムDNAライブラリをルイスcDNAプローブを 用いて低ストリンジェンシィでスクリーニングした。全部で18のファージが約 5個のヒトゲノム均等を表すファージから分離した。これらのファージの内の1 6個のサザン・ブロット分析により、それらの制限パターンとハイブリダイゼー ション信号強度に基づき3グループに分けることができた。中程度のハイブリダ イゼーション強度のグループを表す6個のファージを確認した。3.6kbのク ロスハイブリダイゼーションPstI制限フラグメントを本グループを代表する ファージからサブクローン化した。このフラグメントのルイスプローブを有する ヒトゲノムDNAで検出されたクロスハイブリダイゼーションフラグメントに対 する関係を決定するために、ルイスコーディング配列プローブを用いてクロスハ イブリダイゼーションした本フラグメントの400bpのAvaII−PvuI Iセグメントも使用して低ストリンジェンシィでサザン・ブロットをプローブし た。サザン・ブロットを生成するのに使用した各酵素についてAvaII−Pv uIIプローブは1つの強いハイブリダイゼーションフラグメントを検出し、1 以上の弱いハイブリダイゼーションフラグメントを検出した。強いハイブリダイ ゼーションフラグメントの各々は、同じ酵素によって生成されルイスプローブに よって検出される弱いハイブリダイゼーションフラグメントの1つと対応してい た。同様にルイスプローブを用いて検出された強いハイブリダイゼーションフラ グメントの各々は、AvaII−PvuIIプローブに対して弱いハイブリダイ ゼーションを示すフラグメントと対応していた。これらの結果は、このプローブ とこれから誘導される3.6kbのフラグメントは、ゲノムDNAサザン・ブロ ット上でルイスプローブによって検出される弱いクロスハイブリダイゼーション DNA配列を表すことを示した。 相同のDNA制限フラグメントは、ルイス式血液型α(1,3/1,4)フコ シルトランスフェラーゼcDNAと類似性を有するポリペプチドを推定する単一 の長いオープンリーディングフレームを維持する 3.6kbのPStIフラグメント(配列認識番号7)のDNA配列分析によ り、ルイスcDNAプローブ(図4および図5)にクロスハイブリダイゼーショ ンされる配列に対応する3’部分内の単一の長いオープンリーディングフレーム が同定された。このリーディングフレームは、哺乳類の翻訳開始のためのコザッ クのコンセンサスルールに一致した配列コンテクスト内に発見されるメチオニン コドンから始まる。また、このリーディングフレームによって予想されるタンパ ク配列のハイドロパシィー分析は、そのNH2終端の単一の疎水性セグメントを 示し、推定されたポリペプチド(配列認識番号8)は哺乳グリコシルトランスフ ェラーゼにおいて典型的なタイプIIのトランスメンブレイン定位を維持してい ることを示唆している。このリーディングフレームは、その遠方の部分において 、ルイス・フコシルトランスフェラーゼ(図5)の対応する部分と多量のアミノ 酸配列の同一性を共有している。これらの配列は、ルイス・フコシルトランスフ ェラーゼの触媒領域内においてそれらのCOOH末端位置の間において最大の類 似性を有している。後者の酵素の“ステム”およびトランスメンブレイン領域内 において予想されるNH2端に向けて配列の逸脱が起こる。 DNA制限断片によってmRNAトランスクリプトがHL−60ミエロイド細 胞中に検出される :このセグメントが官能性α(1,3)フコシルトランスフェ ラーゼ遺伝子を表す可能性を試験するために、その一部をプローブとして用いて 、そのような酵素を発現することが知られている細胞株中のトランスクリプトを 同定した。HL−60ヒト細胞株を用いた理由は、これらのミエロイド系統細胞 がルイスα(1,3)フコシルトランスフェラーゼとは異なった一以上のα(1 ,3)フコシルトランスフェラーゼを発現することが知られているからである。 オープンリーディングフレームの一部に対応する400bp AvaII− PvuIIセグメントを用いてこれらの細胞から単離したポリアデニル化された mRNAのノーザンブロット分析を行った結果、4つの異なったトランスクリプ トが同定された。対照的に、ルイスcDNAを用いて同じ分析を行ったときには 、トランスクリプトは検出されなかった。この結果は、HL−60細胞によって 発現されたフコシルトランスフェラーゼがクローン化されたPstIセグメント 中のオープンリーディングフレームによってコードされる可能性と一致している 。 相同なDNA制限断片中のオープンリーディングフレームはα(1,3)フコ シルトランスフェラーゼの発現を決定する : このセグメントがα(1,3)フコシルトランスフェラーゼをコードするかど うかを決定するために、3.6kb PstI断片を哺乳類の発現ベクター中に クローン化し、得られたプラスミド(pCDNAl−Fuc−TIV、「実験手 順」参照)を形質移入することによって2種類の哺乳類宿主細胞に導入した。形 質移入された細胞を、ベクター依存性細胞表面糖複合体発現に関して、およびフ コシルトランスフェラーゼ活性に関して分析した。三つの実験において、COS −1細胞とCHO細胞を宿主として使用したが、その理由はとちらの細胞株も検 出可能なα(1,3)−およびα(1,4)フコシルトランスフェラーゼ活性を 通常発現しないからである。同様にCOS−1およびCHO細胞は検出可能な量 の細胞表面のGalβ1→4[Fucα(1→3)]GlcNAc−(ルイスx 、SSEA−1)成分、またはα2→3シアリル化誘導体(NeuAcα2→3 Galβ1→4[Fucα(1→3)]GlcNac−、シアリル ルイスx) を通常発現しない。しかしながらこれらの細胞は通常、そのような分子に対する 前駆体として機能できる、フコシル化されていない中性のオリゴ糖、およびα2 →3−シアリル化されたタイプIIのオリゴ糖の表面顕出(surface display) を、形質移入されたルイスcDNA発現ベクターによってコードされたα(1, 3)フコシルトランスフェラーゼの作用によって維持する。COS−1細胞はま たルイスa(Galβ1→3[Fucα(1→4)]GlcNAc−)およびシ アリルlewis a(NeuNAcα2→3Galβ1→3[Fucα(1→ 4)]GlcNAc−)成分に対するタイプI前駆体の表面顕出を維持する。ベ クターpCDNAIを用いた理由は、このプラスミドは哺乳類宿主中の、外因性 でサブ クローン化された配列をそのベクター中のサイトメガロウイルスの直接的アーリ ープロモーター配列によって効果的に転写するからである。 最初の生化学的分析においては、プラスミドpCDNAI−Fuc−TIVに よって形質移入されたCOS−1細胞から調製された抽出物のベクター依存性フ コシルトランスフェラーゼ活性を、幾つかの低分子量アクセプター基質を用いて 試験した。標準フコシルトランスフェラーゼ試験(「実験手順」参照)において は、pCDNAI−Fuc−TIVで(対照の形質移入体によってでなく)形質 移入された細胞から調製された抽出物は、タイプIIのジサッカライドアクセプ タ−N−アセチルラクトースアミンを利用してクロマトグラフモビリティー(「 実験手順」参照)を有する放射性産物を生成する、フコシルトランスフェラーゼ 活性(296pmol/mg−h)を有する。このモビリティーは、正統Gal β1→3[Fucα(1→4)]GlcNAc(R2'-fucosyl-N-acetyllactosa mine =0.85)に特徴的なものである。しかしながら、これらの試験条件にお いては、2つの他の中性のタイプII分子(2’フコシルラクトース、ラクトー ス)が、それらの抽出物中におけるフコシルトランスフェラーゼに対するアクセ プター基質として、N−アセチルラクトースアミン程は効果的に機能しなかった (2’フコシルラクトース、ラクトースのそれぞれに対して17および10pm ol/mg−h)。タイプIの基質、ラクト−N−ビオースIを用いて検出され たのはごく少量の伝達だけであった。 同様にして、発明者は、シアリル化アクセプタ−NeuNAcα(2→3)G alβ(1→3)GlcNAc−(1pmol/mg−hより少量)へのフコー スの伝達を、N−アセチルラクトースアミン(474pmol/mg−h)に対 して比較的大きな活性を示す抽出物中においてすら検出しなかった。対照的に、 これらの同じ条件下で、ルイス血液型フコシルトランスフェラーゼを含有する抽 出物は、シアリル化されたアクセプター(297pmol/mg−h)とN−ア セチルラクトースアミン(526pmol/mg−h)の双方を利用し、それぞ れシアリルルイスx四糖およびルイスx三糖(「実験手順」参照)を生成した。 このように、この酵素によって試験管内で示された制限されたアクセプターの優 先順位(preference)は、ルイスα(1,3/1,4)フコシルトランスフェラ ー ゼ(これは試験した5つのアクセプターのそれぞれを効果的に利用できるもので ある)によって示されたものと好対照を示す。これらの結果を表2にまとめた。 pCDNAI−Fuc−TIVによって形質移入されたCOS−1細胞はまた 、フローサイトメトリー分析にかけ、これらのオリゴ糖産物の新たなベクター依 存性表面発現を検出し、この酵素の生体内アクセプター基質要求の評価を行った 。形質移入されたCOS−1細胞は、ルイスx成分Galβ1→4[Fucα( 1→3)]GlcNAc−)(図8)に対するモノクローナル抗体で陽性の染色 結果を示し、一方、インサートなしのpCDNAlベクターで形質移入された細 胞はこの決定基を発現しなかった。しかしながら、pCDNAl−Fuc−TI Vで形質移入されたCOS−1細胞あるいはその対照プラスミドはシアリルルイ スx抗原に対し特異的な抗体を染色しなかった(図8)。同様に、形質移入され た細胞は、検出可能なルイスaまたはシアリルルイスa分子の表面発現を示さな かった。 末端にα(2→3)−結合性シアリン酸を有するポリラクトースアミノグリカ ン類も、単一の内部α(1,3)結合性フコースを、末尾から二番目のラクトー スアミン繰り返し単位のN−アセチルラクトースアミン残基上に保持するものと して存在する。この決定基(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ 1→3Galβ1→4[Fucα(1→3)]GlcNAc−)はモノクローナ ル抗体VIM−2によってミエロイド細胞の表面上に検出可能であり、タイプI Iポリラクトースアミンアクセプター上のα(1,3)フコシルトランスフェラ ーゼ(このものの末端ガラクトース残基はα(2,3)シアリン酸成分で置換さ れている)の作用によって構築できる。ルイスα(1,3/1,4)フコシルト ランスフェラーゼで形質移入されたCOS−1細胞もプラスミドpCDNAl− Fuc−TIVで形質移入されたCOS−1細胞もこの決定基を検出を可能とす る量において顕出しない。 実質的に同等の結果を、プラスミドpCDNAI−α(1,3)FTmlu( 「実験手順」参照)で形質移入されたCOS−1細胞を用いることによって得る ことができる。このベクターは図4のbp1904からオープンリーディングフ レームに対応する配列を包含する。これらの結果は、図4中のオープンリーデ ィングフレームがこのフコシルトランスフェラーゼ遺伝子のコード部位に対応す るという仮説に対しての付加的な証拠を提供するものである。 更に、酵素活性がこのタンパクに直接的に関連しているものであることを示す ために、予想されたポリペプチド(配列認識番号8においてアミノ酸番号50か ら405)の推定触媒ドメインを、哺乳類ベクターpPROTAのスタフィロコ ッカス・アウレウス・プロテインAのIgG結合ドメインの分泌形態のものに融 合し、ベクターpROTA−α(Fuc−TIV)cを生成した。この融合タン パクはフコシルトランスフェラーゼの推定トランスメンブレイン固定セグメント を欠如しているかも知れないので、発明者はIgG含有マトリックス上にアフィ ニティー精製できる分泌分子として合成できるのではないかと考え、α(1,3 )FT活性について試験した。対照ベクターpCDM7、またはpPROTAで 形質移入されたCOS−1細胞は検出可能な細胞と会合した或いは細胞から遊離 した酵素の活性を生じなかった。しかしながら、pPROTA−α(Fuc−T IV)cで形質移入されたCOS−1細胞から調製された調整培地は、N−アセ チルラクトースアミンで試験したところ、顕著なα(1,3)FT活性を有して いた。pPROTA−α(Fuc−TIV)cによって生成した遊離された酵素 活性の実質的に100%がIgG−セファロースマトリックスで特異的に保持さ れている。これらの結果はこのクローン化されたDNAセグメントによってコー ドされたタンパクはフコシルトランスフエラーゼをコードすること、およびα( 1,3)FT活性を生成するのに充分な情報がこの酵素のCOOH−末端の35 6のアミノ酸中に存在することを示している。 pCDNAl−Fuc−TIV(CHO−FT3細胞)で形質移入されたCH O細胞株から調製される抽出物を生化学的に分析すると、形質移入されたCOS −1細胞から得られる結果と類似の結果を生ずる。標準のフコシルトランスフェ ラーゼ試験(実験手順参照)においては、抽出物は対照の形質移入された細胞株 CHO−Vから調製された抽出物は、N−アセチルラクトースアミン、2’フコ シルラクトース、ラクトース、またはラクト−N−ビオースI、あるいはNeu Acα(2→3)Galβ(1→4)GlcNAcで試験したとき、α(1,3 )フコシルトランスフェラーゼ活性を有しなかった。対照的に、CHO−FT3 株 で調製された抽出物は、α(1,3)フコシルトランスフェラーゼ活性(59. 1pmol/mg−h)を有し、この後者はタイプIIのジサッカライド・アク セプターであるN−アセチルラクトースアミンを利用して、正統Galβ(1→ 4)[Fucα(1→3)]GlcNAc(R2'-fucosyl-N-asetyllactosamine =0.85)(「実験手順」参照)に特徴的なものである放射性産物を生成した 。これらの試験条件においては、CHO−FT3抽出物はタイプIIアクセプタ ー分子2’フコシルラクトースとラクトースをかなり低い効率で利用するもので あった(それぞれ5.8pmol/mg−hおよび2.0pmol/mg−h) 。これらの抽出物を、タイプIの基質であるラクト−N−ビオースIを用いて検 出したとき、およびシアリルルイスx前駆体であるNeuNAcα2→3Gal β1→4GlcNAcを用いて検出したとき、実質的に伝達は検出されなかった (前者、後者とも<pmol/mg−h)。これらの結果は、形質移入されたC OS−1細胞から調製された抽出物から得られた物質を確認するとともに、第一 の評価として、COS−1とCHOの遺伝子的背景は酵素のこれら5つの低分子 量アクセプター物質の利用能にさほど強く影響を与えないことを確認するもので ある。 一つの顕著で重要な例外は、CHO−FT3細胞を用いたフローサイトメトリ ー分析は実質的に形質移入されたCOS−1細胞を用いたそれと同一であること が判明したことである。CHO−FT3細胞は、抗ルイスx抗体で均一で明るい 染色を示したか、シアリルルイスx分子に対する指向性を有する抗体ではそうな らない。対照の形質移入された細胞はどの抗体でも染色されない。期待されたよ うに、どの細胞株も中性およびα2→3−シアリル化ルイスaアイソマーに対す る抗体で染色されない。なぜならCHO細胞はタイプI前駆体を構築するからで ある。しかしながら、これらの細胞は、形質移入されたCOS−1細胞とは重大 な差異を有する。この差異とは、ルイスα(1,3/1,4)フコシルトランス フェラーゼcDNA(pCDM7(1,3/1,4)FT)により形質移入され たCHO細胞のように、多量のVIM−2決定基を発現することである。 形質移入された細胞からの抽出物を用いて行い、表2に要約して記載した生化 学的分析の結果を合わせて考えると、図8に示したフローサイトメトリー分析、 プロテインA遺伝子融合実験、およびDNA配列分析は、プラスミドpCDNA 1−Fuc−TIVがα(1,3)フコシルトランスフェラーゼをコードするこ とが結論される。プラスミドpCDNAl−α(1,3)FTmluもまた、こ の酵素が図4に示したオープンリーディングフレームによってコードされること を示している。これらの結果はさらに、この酵素はタイプII前駆体を利用する ことができるがタイプIは利用できないことを示し、このことは、この酵素はシ アリルルイスx決定基を形成するにあたって、α2→3シアリル化タイプII糖 複合体を有効に利用できないということを示唆している。実施例IV”GDP−Fuc:β−D−Gal(1,4)−D−GlcNAcα (1,3)フコシルトランスフェラーゼ:(Fuc−TV)をコードするDNA 配列のクロスハイブリダイゼーションによるクローニング、および発現”の実験 手順細胞培養:使用したCOS−1細胞、CHO形質移入体、およびA431細胞 の入手源および培養条件は前記の通り(エルンストら、J.Biol.Chem .(1989)265:3436−3447およびラジャンら、J.Biol. Chem.(1989)264:11158−11167参照)。ヒトHL−6 0細胞株はスティーブ・クンケル博士(ミシガン大学、Ann Arbor)か ら提供を受けた。HL−60細胞は10%胎児ウシ血清とダルベッコの修飾イー グル培地で生育した。 抗体:抗Lex抗体抗SSEA−1(ソルターら、Proc.Nat.Aca d.Sci.(USA)(1978)、75:5565−5569)(マウスモ ノクローナルIgM、腹水)を使用した。抗Hおよび抗ルイスa抗体(マウスモ ノクローナルIgM、抗原アフィニティにて精製)はケムバイオメッド社(エド モントン、アルバータ州)から購入した。抗シアリル・ルイスx抗体CSLEX l(福島ら、Cancer Res.(1984)44:5279−5285) (マウスモノクローナルIgM、HPLCにて精製)および抗シアリル・ルイス a抗体CSLEAl(チアら、Cancer Res.(1985)45:43 5−437)(マウスモノクローナルIgG3、硫酸アンモニウムにて沈降)を 使用した。抗VIM−2はブルース・メイチャー博士(サンフランシスコ州立大 学)から提供された。マウスIgG抗体組成物(MsIg)はコールター社から 購入した。フルオレセイン複合ヤギ抗マウスIgMまたはIgG抗体はシグマ社 から購入した。 ヒトゲノムライブラリの構築:高分子量のヒトゲノムDNAは末梢血液白血球 から前記のように調製した(エルンストら、1989)。ゲノムDNAは制限エ ンドヌクレアーゼSau3Aを使用して部分分解した。部分分解されたゲノムD NAは食塩水勾配による超遠心分離によってサイズ分画した。8kbから20k bの間のDNAフラグメント富化分画を、あらかじめ末端をSau3Aフラグメ ントに適合するように部分的にdTTPおよびdCPTで満たしたXhoIで分 解したラムダFIX(ストラダジーン)ファージの腕に連結した。連結した混合 物は試験管中で市販のパッケージ用抽出物(ストラダジーン)を用いてパッケー ジとし、大腸菌宿主TAP90(パッターロンら、Nucl.Acids Re s.1987、15:6298)により標定されている。プラーク・ハイブリダ イゼーションにより約1.0x106のリコンビナント・ラムダファージが選択 された。プラーク・リフトはニトロセルロースフィルター(シュライチャーおよ びシュエル)を使用して調製し、42℃で16時間、50%フォルムアミド、5 X SSC、10Xデンハーツ溶液、および0.1%SDS中で予備ハイブリダ イゼーションした。フィルターは35℃で72時間、10%硫酸デキストラン、 および1mlあたり100マイクログラムの変性鮭精子DNAを含んだ予備ハイ ブリダイゼーション溶液中でハイブリダイズした。プローブは、[α−32P]d CTPで標識したルイス式血液型α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラ ーゼをコードするcDNAインサートの5’末端から単離した1.7kbXho l−Xbalフラグメントで構成されたものである。フィルターは室温、2X SSCで20分間づつ3回リンスし、ついで50℃で40分間、1X SSCお よび0.5%SDSで各1回リンスした。そのあとフィルターをオートラジオグ ラフィにかけた。2回の追加プラーク・ハイブリダイズサイクルの後、18の独 立したハイブリダイズ陽性のプラークが検定された。ファージDNAは液状溶解 産物から調製し、ついで制限エンドヌクレアーゼ分解およびサザン・ブロット分 析により特性判定を行った。 DNA配列分析:ファージDNAはPstIで分解し、ヒトα(1,3/1, 4)フコシルトランスフェラーゼcDNAと相同の3.8kbフラグメントはゲ ル精製し、pTZ18RのPstI部位に連結した。単一のインサートを含有す る代表的なサブクローンをpFT−3と命名した。970bpのハイブリダイゼ ーション陽性のAvaII−PstI断片をpFT−3中のインサートから単離 し、pTZ18Rにサブクローニングした。このプラスミド沖のインサートのD NA配列を、T7 DNAポリメラーゼ(ファルマシアLKBバイオテクノロジ ー社)およびフランキング・プラスミド配列、ついでインサート配列に基づいて 合成したオリゴヌクレオチドを使用し、ジデオキシ鎖決定法により配列決定した 。この配列データはさらに追加の合成デオキシヌクレオチドを作るために使用し 、それをpFT−3中のインサートの他の部分を配列するために使用した。配列 分析はウイスコンシン大学の遺伝子工学コンピューターグループによる配列分析 用ソフトウエアパッケージを使用した。 サザンブロット分析: 高分子ヒトゲノムDNAを末梢全血から調製した。ゲノムDNA(10μg) を制限エンドヌクレアーゼで分解し、0.8%アガロースゲルで分画後、サザン ブロット分析に付した。異なったプローブによって得られたハイブリダイゼーシ ョンパターンを比較するために、単一のゲル上に電気泳動された制限分解物の同 じセットから同じブロットを調製した。サザンブロットを、35℃に保持された 温度でハイブリダイズされた。サザンブロットを、ルイスα(1,3/1,4) フコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするヒトcDNAの5’末端を表すプ ラスミドpCDM7−α(1,3/1,4)FTの1.7kbXhoI−Xba I断片で探索した。またこれに代えて、サザンブロットを、pFT−3中のイン サートから単離した400bpのAvaII−PvuII断片で探索した。ハイ ブリダイゼーションの後、ブロットを2X SSCの0.5%SDSで室温で2 回、10分間洗浄し、オートラジオグラフィーにかけた。 ノーザンブロット分析: 培養細胞から全RNA調製した。次いで、ポリA+RNAを商業的に供給され ているカラム(クロンテック)および製造業者が提唱する手順を用いるオリゴd Tセルロースカラムクロマトグラフィーによって全RNAより単離した。RNA サンプルをホルムアルデヒド含有の1.0%アガロースゲルを通して電気泳動し 、次いでナイロン膜(ハイボンド−N、アマーシャム社)へと形質移入した。ノ ーザンブロットを、61℃で1時間、1X PE(16)、5X SSC、1% ドデシル硫酸ナトリウム、および100μg/mlの剪断サケ精子DNA中で予 備ハイブリダイズした。プロットは同じハイブリダイゼーション溶液中で61℃ で少なくとも16時間ハイブリダイズした。プローブはpFT−3中のインサー トから単離した400bpのAvaII−PvuII断片で放射性標識した。ハ イブリダイゼーションに続いて、ブロットに対し、2X SSCで各10分間の 室温での洗浄を3回繰り返し、さらに2X SSCと0.2%SDS中で62℃ で30分間洗浄した。pFT−3中のインサートの形質移入及び発現 : プラスミドpFT−3におけ る3.8kbのPstIインサートを切断し、哺乳類発現プラスミドpCDNA l(試験管内ゲン)中のPstI部位にクローン化した。単一のインサートをプ ラスミドのCMVプロモーターエンハンサー発現に関してセンス定位で有する一 つのプラスミドをpCDNAl−Fuc−TIVと命名し、引き続く分析に用い た。 安定に形質移入されたCHO細胞株の構築と放射性物質による標識: CHO −Ade−C細胞をScaI−線形化pCDM7−Fuc−TIVで形質移入し 、10モル倍量のEcoRI−線形化pSV2−Neo中で共沈降した。単一の クローンSSEA−1−陽性細胞株(CHO−FT3)がこの集団から得られた 。CHO−FT3から調製される細胞抽出物は、アクセプターN−アセチルラク トースアミンで試験したところ、多量のα(1,3)フコシルトランスフェラー ゼ活性を有していた。 FACS分析:プラスミドDNAsを形質移入されたCOS−1細胞は形質移 入から48−72時間後に採取され、染色用媒体で希釈したモノクローナル抗体 で染色した。抗ルイスaおよび抗H抗体(マウスIgMモノクローナル;抗原ア フィニティにて精製;ケムバイオメッド社、エドモントン)は10μg/mlで 使用した。抗SSEA−1(マウスモノクローナルIgM;腹水)は1:100 0に希釈して使用した。抗シアリル・ルイスx(マウスモノクローナルIgM; 腹水からHPLCにて精製)は10μg/mlで使用した。抗シアリル・ルイス a(マウスモノクローナルIgG3;腹水の硫酸アンモニウム沈降物)は1:1 000に希釈して使用した。対照のマウスIgG3抗体(MsIg、コールター 社)を10μg/mlの濃度で使用した。抗−VIM−2抗体(マウスモノクロ ーナルIgM、腹水)は1:200に稀釈して使用した。細胞はフルオレセイン ・イソチオシアネート複合ヤギ抗マウスIgMまたはIgGにより適宜染色し、 FACScan(ベクトンーディキンソン)分析に付した。 フコシルトランスフェラーゼ評価分析:形質移入したCOS−1細胞から1% Triton X−100を含む細胞抽出物を調製した。フコシルトランスフェ ラーゼ評価分析を、50mMカコジル酸ナトリウム、pH6.2、5mM AT P、10mM フコース、20mM MnCl2、3μM GDP−14C−フコ ース、および5μlの細胞抽出物(30μgのタンパク)を含む合計20μlで 行った。受容体基質を最終濃度20mMになるように添加した。37℃で1時間 反応させ、20μlのエタノールを加えて反応を終結させ、そのあとさらに60 0μlの蒸留水を加えた。それぞれの反応物の分割量(50μl)をシンチレー ション計測器にかけ、それぞれの反応中の合計放射能量を計測した。別の分割量 (200μl)を、400μlのDowex 1X2−400(フォルメート状 )を含むカラムにかけた。フラクションを通過した液、およびそれに続く2μl の溶出水溶液を回収しプールした後、分割量をシンチレーション計測器にかけ、 中性産物に導入された放射性フコースの量を計測した。加工ペーパークロマトグ ラフィーによって、受容体N−アセチルラクトースアミンが形成した産物の構造 を確認した。Dowexカラム溶出液における中性産物は、凍結乾燥によって濃 縮し、少量の水に再懸濁した後、ワットマンNo.40によって分画した(フェ ノール/イソプルパノール/ギ酸/水=85:5:10:100、低層)。クロ マトグラフィー(40時間)の後、風冷したクロマトグラムを1cmのストリッ プに切断し、これを2mlの水で溶出した。各溶出液の放射能を、10mlのシ ンチレーションカクテルと混合した後、シンチレーションカウンターで計測した 。 アフィニティー精製した、プロテインA−ルイスフコシルトランスフェラーゼ 融合タンパクを用いて、この分析に使用するための、正統で、放射性標識を有す るGalβ(1→4)[14C−Fuc(1→3)]GlcNAc標準を調製した 。この融合タンパクを、20mMのN−アセチルラクトースアミン、150μm のDGP−[14C]フコース(sp.act.=3800cpms/nmol) を用いて標準のフコシルトランスフェラーゼ反応混合物中にインキュベートした 。中性で放射性標識化された産物は、70%アセトニトリル水溶液を含有するイ ソクラクティク勾配を用い、ウオーターズ・炭水化物分析カラムによるアミン吸 着の高速液体クロマトグラフィー(流速1ml/分)で精製した。得られた精製 物(17nmol)を14C−NMR(複合炭水化物研究所センター、アセンズ、 ジョージア州)による分析に付した。サンプルを繰り返し重水中で交換し、50 0MHzでNMR分析を行った。プロトンNMRスペクトルは28℃でBruk erAM500上に記録した。化学シフトはアセテートに対するものである(δ 、1.908ppm)。予想された三糖、Galβ(1→4)[Fucα(1→ 3))GlcNAcが500MHxの分光分析で確認された。28℃の重水中で 記録されたスペクトルは、GlcNAc(α−アノマー)に対し、δがほぼ5. 102ppmにおいてH−1信号を示した。Galについてはδがほぼ4.46 7および4.454ppm(それぞれ三糖のα−およびβ−アノマー)、またF ucについてはδがほぼ5.102ppmであった。GluNAcのβアノマー に対するアノマー信号は残基HODピーク(δはほぼ4.72ppm)によって 不明瞭であった。GlcNAc N−アセチル基のメチル信号とFucのC6プ ロトンは、δがそれぞれ約2.302及び1.178ppmの箇所であった。こ れらの化学シフトは、正しい三糖Galβ(1→4)[Fucα(1→3)]G lcNAcについての発行された文献情報と一致した。 α−L−フコシルトランスフェラーゼの分解: 中性の、クロマトグラフィー精製した放射性標識化フコシルトランスフェラー ゼ産物をα−L−フコシダーゼで分解し、接着したフコースのα−アノマー形状 を確認した。3−[14C]フコシル−N−アセチルラクトースアミンを下降ペー パークロマトグラフィーで上記のように精製し、分割量(7000cpms)を pH5.5のクエン酸ナトリウム100mM溶液の20μl中で、37℃、22 時間で40mUのα−L−フコシダーゼ(E.C.3.2.1.51、ベーリン ガー−マンハイム)で分解した。Dowexカラムクロマトグラフィーによって 反応物を脱塩し、上記の条件で高速液体クロマトグラフィー分析に付し放射性標 識化標準を製作した。分解産物は、L−[14C]フコースと3−[14C]フコシ ル−N−アセチルラクトースアミン出発物質を平行して分離した分離体と比較し て同定した。L−[14C]フコースの定量的遊離はα−L−フコシダーゼ分解に よって達成された。 実施例V: クロスハイブリダイゼーションによるGDP−Fuc:β−D−Gal(1,4 )−D−GlcNAcα(1,3)フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TV 、DNA配列認識番号10、タンパク配列認識番号No.11)の単離: ルイス式血液型α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼcDNAに クロスハイブリダイゼーションするヒトゲノムDNAセグメントの分子クローニ ング:低ストリンジェンシイ・サザン・ブロット・ハイブリダイゼーション実験 によって本発明者には、ルイス・フコシルトランスフェラーゼcDNAのコード 領域が強いハイブリダイゼーション制限フラグメントならびにいくつかの弱いハ イブリダイゼーション制限フラグメントを検出することが明らかとなった。 本発明者は、強いハイブリダイゼーション(制限)フラグメントがルイス・フ コシルトランスフェラーゼcDNAに似た1つまたはそれ以上の遺伝子を表して いるものと期待した。これらの配列の分子的性質をさらに調べるために、上記実 施例IVに記述したように、本発明者はヒト・ラムダ・ファージ・ゲノムDNA ライブラリをルイスcDNAプローブを用いて低ストリンジェンシイでスクリー ニングした。ほぼ5つのヒトゲノム等価物を代表するファージから合計18のフ ァージを単離した。これらファージの内16のサザン・ブロット分析の結果、そ れらの制限パターンおよびハイブリダイゼーション信号強度に基づいて、それら が3つのグループに分類されることがわかった。強いハイブリダイゼーション強 度の分類に入るいくつかのファージが同定された。これらのファージの1つから 単離されたクロスハイブリダイゼーション制限フラグメントかサブクローン化さ れ配列された。 相同のDNA制限フラグメントは、ルイス式血液型α(1,3/1,4)フコ シルトランスフェラーゼcDNAに非常によく似たポリペプチドを推測させる単 一の長いオープンリーディングフレームを保持する:サブクローン化されたフラ グメントのDNA配列分析において、それらの3’部分に単一の長いオープンリ ーディングフレームのあることが確認された。このフレームは塩基対1に始まり 、塩基対1125で終わる(配列認識番号10)(図6参照)。このリーディン グフレームは、コザックのほ乳類翻訳開始のコンセンサス・ルールの配列コンテ キストにみられるメチオニン・コドンで始まっている。このリーディングフレー ム から推測されるタンパク配列(配列認識番号11)の水治療分析において1つの 疎水性セグメントがNH2末端にあることが予想され、推測されるポリペプチド が、ほ乳類グリコシルトランスフェラーゼに典型的なタイプIIトランスメンプ ラン定位を有していることを示唆している。このリーディングフレームは全長に わたって、ルイス・フコシルトランスフェラーゼcDNAの対応部分と非常に高 いアミノ酸および核酸配列の同一性を有している(図6)。この配列類似性はわ ずか2、3の位置で異なっているだけであり、明らかに異なっているのはオープ ンリーディングフレーム内の塩基対139である。ルイスcDNAに対してこの 33塩基対が挿入されていることにより、ルイス・フコシルトランスフェラーゼ cDNAとに比し11個のアミノ酸が挿人されたポリペプチドを作ることになる 。これら2つのDNA配列、およびそれらから誘導されたタンパク配列が実質的 に類似していることから、本発明者はこの新しいクロスハイブリッド配列は、フ コシルトランスフェラーゼをコードした、未だ規定されたことのない遺伝子の、 単一のエクソン配列を表すものであると期待した。 相同のDNA制限フラグメントは、α(1,3)フコシルトランスフェラーゼ の発現を決定する:このセグメントが機能性フコシルトランスフェラーゼをコー ドしているかどうかを調べるために、全オープンリーディングフレームを含んだ 1.94kb Earl−Xbalフラグメントをほ乳類発現ベクターに入れて クローン化し、得られたプラスミド(pCDNAl−Fuc−TV)を形質移入 により、ほ乳類宿主細胞に導人した。これらの実験では宿主としてCOS−1細 胞を使用したが、これはこれらの細胞が通常、ほとんど検知できないα(1,3 )およびα(1,4)フコシルトランスフェラーゼ活性を発現するからである。 同様に、COS−1細胞は通常、検知できるほどの細胞表面のGalβ1→4( Fucα(1→3)GlcNAc−(Lewis x,SSEA−1)またはG alβ1→3(Fucα(1→4)GlcNAc−(Lewis a)成分は発 現しない一方、そのような分子を構築するのに必要なフコシル化されないタイプ IIおよびタイプIオリゴ糖プレカーサーの表面出現を維持する。pCDNAI ベクターを使用したが、これはこのプラスミドがベクター中のサイトメガロウイ ルスの直前プロモーター配列により、COS−1宿主中の外因性のサブクローン 配列を効率的に転写し、これらの細胞中にマルチコピー・エピソームとして維持 さ れるからである。 pCDNAl−Fuc−TVを形質移入したCOS−1細胞を先ずフロー・サ イトメトリーにより分析し、あらためてこれらのオリゴ糖のベクター依存の表面 発現を検出した。形質移入されたこれらの細胞の大部分は、ルイスx成分(Ga lβ1→4(Fucα(1→3)GlcNAc−)に対するモノクローナル抗体 により明るく染色されたのに対し(図8)、インサートなしのpCDNAlベク ターを形質移入した細胞はこの発色がなかった。これに対しpCDNAl−Fu c−TVまたはこれでコントロールされたプラスミドを形質移入したCOS−1 細胞は、タイプIをベースとするルイスa三糖に特異性を持つ抗体によって染色 されることはなかった(図8)。 これらを考え合わせると、このセグメントは中性のタイプIIオリゴ糖プレカ ーサーを利用する能力のあるα(1,3)フコシルトランスフェラーゼをコード するか、この酵素はタイプIグリコ複合体を効率的に利用できず、従って強いα (1,4)フコシルトランスフェラーゼ活性は示さないということであり、これ らの結果はDNA配列分析の結果とも一致している。 末端ガラクトース残基がα(2、3)シアル酸成分で置換されたタイプII受 容体を利用することができるヒトα(1,3)フコシルトランスフェラーゼが1 つまたはそれ以上存在する可能性を裏付ける証拠がある。それらの酵素はこれら の分子をフコシル化することができ、シアリル−ルイスxの決定基(NeuAc α(2→3)Galβ(1→4[Fucα(1→3)]GlcNAc−)を生成 する。たとえば、ルイスフコシルトランスフェラーゼはこの反応を起こすことが できる。 したがって、明らかにプラスミドpCDNAl−Fuc−TVでコードされた フコシルトランスフェラーゼが、シアリル−ルイスx決定基を構築する能力があ るかどうかを調べることが注目された。COS−1細胞は、(NeuAcα(2 →3)Galβ(1→4)GlcNAc−)で終わる表面発現されたグリコ複合 体を維持する;これらはシアリル−ルイス構築のための受容体基質であって、形 質移入されたフコシルトランスフェラーゼ発現ベクターでコードされた酵素の働 きによって決定される。したがって、COS−1細胞にプラスミドpCDNAl −Fuc−TVを形質移入し、モノクローナル抗シアリル−ルイスx抗体で染色 し、フロー・サイトメトリー分析を行った。ベクター単体を形質移入した対照細 胞あるいはpCDNAl−α(1,3)−Fuc−TVを形質移入すると、逆対 照の抗体(抗−H)で染色された細胞に比べて、大量の染色が検出された(図8 )。 しかしながら、これらの細胞はタイプIがベースとなっているシアリル−ルイ スa決定基(NeuAca(2、3)Galβ(1,3[Fucα(1,4)] GlcNAc−)に特異性を有する抗体では染色されなかった(図8)。反対に 、本発明者は以前に、ルイス・フコシルトランスフェラーゼ発現のプラスミドp CDM7−α(1,3/1,4)FTを形質移入したCOS−1細胞の大部分は シアリルールイスxおよびシアリル−ルイスa抗体によって明るい染色を示すこ とを観察しており、これはこの酵素の受容体基質特異性の生化学分析で予想され た通りである。 プラスミドpCDNAl−Fuc−TVがα(1,3)フコシルトランスフェ ラーゼをコードするという結論は、pCDNAl−Fuc−TVを形質移入した COS−1細胞の抽出物中の酵素の受容体基質要求に関する生化学分析によって 確認された。予期した通り、これら抽出物中の酵素はタイプII二糖受容体N− アセチルラクトスミンを利用し、予想された産物Galβ(1→4)[Fucα (1→3)]GlcNAc)を産生した。この酵素はまた、三糖NeuAca( 2、3)Galβ(1,4)GlcNacを効率的に利用し、シアリルルイスx 四糖を産生した(表2)。このような条件のもとで、ラクトースを含む他のタイ プII分子およびα(1,2)フコシル化受容体Fucα(1→2)Galβ( 1→4)Glcは、非常に低い効率ではあったが、これらの抽出物中のフコシル トランスフェラーゼに対する受容体基質の働きをした(表2に要約)。 興味深いことに、タイプI基質のラクト−N−ビオースIも、同じく効率は低 かったが、この酵素によって利用された(表2)。このことは、この酵素が、効 率は低いがα(1,4)フコシルトランスフェラーゼの機能を有していることを 示唆しており、これはまた、フロー・サイトメトリー分析においてα(1,4) 構造が認められないことによっても示唆されていることである。この酵素が示し た受容体指向性は、ルイス・フコシルトランスフェラーゼが示すものと対照的で ある。ルイス・フコシルトランスフェラーゼはテストした4つの受容体すべてを 効率的に利用する。 酵素活性がこのタンパクに直接関係したものであることをさらに明確に示すた めに、想定されるポリペプチドの予想触媒領域(配列認識番号11のアミノ酸4 3から374)を、ほ乳類発現ベクターpPROTAの中で、スタフィロコッカ ス・アウレウス・プロテインA IgGの結合ドメインの分泌物に融合し、ベク ターpPROTA−Fuc−TVcを形成した。この融合タンパクはフコシルト ランスフェラーゼの想定されるトランスメンブレン固定セグメントが欠如してい ると考えられるために、本発明者はそれが分泌分子として合成され、IgGを含 んだマトリックス上でアフィニティ精製され、ついでそのα(1,4)フコシル トランスフェラーゼ活性を測定することを考えた。対照ベクターpCDM7また はpPROTAを形質移入されたCOS−1細胞は検知できるほどの細胞の会合 あるいは放出による酵素活性は生じなかった。pPROTA−Fuc−TVcを 形質移入したCOS−1細胞から得られた調整媒体では、N−アセチルラクトス ミンを用いて分析すると、大量のα(1,3)フコシルトランスフェラーゼ活性 を含んでいた。pPROTA−Fuc−TVcにより作られ放出された活性のほ ぼ100%が、IgG−セファロース・マトリックスにより特異的に捕捉された 。これらの結果は、このクローン化されたDNAセグメントによってコードされ たタンパクがフコシルトランスフェラーゼをコードしていることを示しており、 α(1,3)フコシルトランスフェラーゼ活性を発生させるのに十分な情報が、 この酵素のCOOH末端の332個のアミノ酸の中に存在していることがわかる 。フロー・サイトメトリー分析ならびにDNA配列分析の結果を考え合わせると これらの実験はプラスミドpCDNAl−Fuc−TVが新規なα(1,3)フ コシルトランスフェラーゼをコードしたものであることを示している。 実施例V:”クロスハイブリダイゼーションによるGDP−Fuc−β−D−Gal(1, 4)−D−GlcNAcα(1,3)フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−T V)の単離”の実験手順細胞培養:使用したCOS−1細胞の入手源および培養条件は前記の通り。エ ルンストら、J.Biol.Chem.(1989)265:3436−344 7およびラジャンら、J.Biol.Chem.(1989)264:1115 8−11167参照。 抗体:抗Lex抗体抗SSEA−1(マウスモノクローナルIgM、腹水)を 使用した。(ソルターら、Proc.Nat.Acad.Sci.(USA)( 1978)、75:5565−5569)抗Hおよび抗ルイスa抗体(マウスモ ノクローナルIgM、抗原アフィニティにて精製)はケムバイオメッド社(エド モントン、アルバータ州)から購入した。抗シアリル・ルイスx抗体CSLEX l(福島ら、Cancer Res.(1984)44:5279−5285) (マウスモノクローナルIgM、HPLCにて精製)および抗シアリル・ルイス a抗体CSLEAl(チアら、Cancer Res.(1985)45:43 5−437)(マウスモノクローナルIgG3、硫酸アンモニウムにて沈降)を 使用した。フルオレセイン複合ヤギ抗マウスIgMまたはIgG抗体はシグマ社 から購入した。 ヒトゲノムライブラリの構築:高分子量のヒトゲノムDNAは末梢血液白血球 から調製した。ゲノムDNAは制限エンドヌクレアーゼSau3Aを使用して部 分分解した。部分分解されたゲノムDNAは食塩水勾配による超遠心単離によっ てサイズ分画した。8kbから20kbの間のDNAフラグメントを富化した分 画を、あらかじめ末端をSau3Aフラグメントに適合するように部分的にdT TPおよびdCPTで満たしたXholで分解したラムダFIX(ストラダジー ン)ファージの腕に連結した。 連結した混合物は試験管中で市販のパッケージ用抽出物(ストラダジーン)を 用いてインピトロでパッケージとし、大腸菌宿主TAP90上で滴定した。プラ ーク・ハイブリダイゼーションにより約1.0x106のリコンビナント・ラム ダファージが選別された。プラーク・リフトはニトロセルロースフィルター(シ ュライチャーおよびシュエル)を使用して調製し、42℃で16時間、50%フ ォルムアミド、5XSSC、10Xデンハーツ溶液、および0.1%SDS中で 予備ハイブリダイゼーションした。フィルターは35℃で72時間、10%硫酸 デキストラン、および1mlあたり100マイクログラムの変性鮭精子DNAを 含んだ予備ハイブリダイゼーション溶液中でハイブリダイゼーションした。プロ ーブは、[α−32P]dCTPで標識化したルイス式血液型α(1,3/1,4 )フコシルトランスフェラーゼをコードするcDNAインサートの5’末端から 単 離した1.7kb Xhol−Xbalフラグメントで構成されたものである。 フィルターは室温、2X SSCで20分間づつ3回リンスし、ついで50℃で 40分間、1X SSCおよび0.5%SDSで各1回リンスした。そのあとフ ィルターをオートラジオグラフィにかけた。2回の追加プラーク・ハイブリダイ ゼーションサイクルの後、18の独立したハイブリダイゼーション陽性のプラー クが同定された。ファージDNAは液状溶解産物から調製し、ついで制限エンド ヌクレアーゼ分解およびサザン・ブロット分析により特性判定が行われた。 DNA配列分析:ファージDNAは種々の制限酵素で分解し、ヒトα(1,3 /1,4)フコシルトランスフェラーゼcDNAと相同のフラグメントはゲル精 製し、pTZ18Rのマルチクローン化部位に連結した。代表的なサブクローン はT7DNAポリメラーゼ(ファルマシアLKBバイオテクノロジー社)および 合成オリゴヌクレオチドを使用し、フランキング・プラスミド配列、ついでイン サート配列に基づいてジデオキシ鎖決定法により配列した。この配列データはさ らに追加の合成デオキシヌクレオチドを作るために使用し、それをインサートの 残りの部分を配列するために使用した。配列分析はウイスコンシン大学の遺伝子 工学コンピューターグループによる配列分析用ソフトウエアパッケージを使用し た。 プラスミドpCDNAl−Fuc−TVの構築: 1.94kb Earl−Xbalフラグメントを、強くハイブリダイズされ たファージから取り出した代表的ファージから単離し、大腸菌(E.coli) DNAポリメラーゼIのクレノウ断片で平滑化し、ほ乳類発現プラスミドpCD NAl(インビトロゲン)のEcoRVおよびXbal部位に入れてクローン化 した。プラスミドのCMVプロモーター・エンハンサー配列のセンス定位に単一 インサートを有するプラスミドをpCDNAl−Fuc−TVと命名した。 FACS分析:プラスミドDNAsを形質移入されたCOS−1細胞は形質移 入から48−72時間後に採取され、染色用媒体で希釈したモノクローナル抗体 で染色した。抗ルイスaおよび抗H抗体(マウスIgMモノクローナル;抗原ア フィニティにて精製;ケムバイオメッド社、エドモントン)は10μg/mlで 使用した。抗SSEA−1(マウスモノクローナルIgM;腹水)は1:100 0に希釈して使用した。抗シアリル・ルイスx(マウスモノクローナルIgM; 腹水からHPLCにて精製)は10μg/mlで使用した。抗シアリル・ルイス a(マウスモノクローナルIgG3;腹水の硫酸アンモニウム沈降物)は1:5 00に希釈して使用した。細胞はフルオレセイン・イソチオシアネート複合ヤギ 抗マウスIgMまたはIgGにより適宜染色し、FACScan(ベクトン−デ ィキンソン)分析にかけた。 フコシルトランスフェラーゼ評価分析:形質移入したCOS−1細胞から1% Triton X−100を含む細胞抽出物を調製した。フコシルトランスフェ ラーゼ評価分析を、25mMカコジル酸ナトリウム、pH6.2、5mMATP 、10mM L−フコース、10mM MnCl2、3μM GDP−14C−フ コース、および5μlの細胞抽出物を含む合計20μlで行った。受容体基質を 最終濃度20mMになるように添加した。37℃で1時間反応させ、20μlの エタノールを加えて反応を終結させ、そのあとさらに600μlの蒸留水を加え た。それぞれの反応物の分割量(50μl)をシンチレーション計測器にかけ、 それぞれの反応中の合計放射能量を計測した。別の分割量(200μl)を、4 00μlのDowex lX2−400、フォルメート状、を含んだカラムにか けた。フラクションを通過した液、およびそれに続く2μlの溶出水溶液を回収 しプールした後、分割量をシンチレーション計測器にかけ、中性産物に入った放 射性フコースの量を計測した。 実施例VI:クロスハイブリダイゼーションによるGDP−Fuc:β−D−Gal(1,4 )−D−GlcNAcα(1,3)フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TV I;DNA配列認識番号No.13、タンパク配列認識番号14)をコードする DNAのクローン化および発現 : 生化学および遺伝子工学の研究によって、ヒトゲノムは2つあるいはそれ以上 の明確に異なったGDP−L−フコース:β−D−ガラクトシド3−α−L−フ コシルトランスフェラーゼ類をコードしていることが示されている(ポトビンら 、J.Biol.Chem.265;1615−1622、1990;ワトキン スら、Adv.Hum.Genet.10:1−116、1980)。本発明者 は最近これらの酵素の1つをコードするクローン化cDNAについて記述したが 、これはヒト・ルイス式血液型遺伝子座の産物を表すものであると考えられる (クコウスカーラターロら、Genes Devel.、4:1288−130 3、1990)(DNA配列認識番号1およびタンパク配列認識番号2)。これ らのGDP−L−フコース:β−D−ガラクトシド3−α−L−フコシルトラン スフェラーゼ類が構造的に関連した遺伝子ファミリーにコードされている可能性 を考え、本発明者はクローン化されたフコシルトランスフェラーゼcDNAを用 い、クロスハイブリダイゼーション手法によりそれらの他のメンバーを単離しよ うと試みた。 ルイス式血液型α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼcDNAに クロスハイブリダイゼーションするヒトゲノムDNAセグメントの分子クローン :上記実施例IVおよびVで述べたように、低ストリンジェンシイ・サザン・ ブロット・ハイブリダイゼーション実験において、ルイス・フコシルトランスフ ェラーゼcDNAのコード領域は、強いハイブリダイゼーション制限フラグメン ト、ならびにいくつかの弱いハイブリダイゼーション制限フラグメントを検出す ることが明らかとなっている。これらの配列の分子的性質をさらに調べるために 、本発明者はヒト・ラムダ・ファージ・ゲノムDNAライブラリを、ルイスcD NAプローブを用いて低ストリンジェンシイでスクリーニングした。ほぼ5つの ヒトゲノム等価物を代表するファージから合計18のファージを単離した。これ らファージの内16のサザン・ブロット分析の結果、それらの制限パターンおよ びハイブリダイゼーション信号強度に基づいて、それらが3つのグループに分類 されることがわかった。強いハイブリダイゼーション強度の分類に入るいくつか のファージが同定された。これらのファージの1つから単離されたクロスハイプ リダイゼーション制限フラグメントがサブクローン化され配列決定された。 相同のDNA制限フラグメントは、ルイス式血液型α(1,3/1,4)フコ シルトランスフェラーゼcDNAに非常によく似たポリペプチドを推測させる単 一の長いオープンリーディングフレームを有する :サブクローン化されたフラグ メント(配列認識番号13)のDNA配列分析において、塩基対1に始まり、塩 基対1080で終わる単一の長いオープンリーディングフレームのあることが確 認された(図7参照)。このリーディングフレームは、コザックのほ乳類翻訳開 始のコンセンサス・ルールの配列コンテキストにみられるメチオニン・コドンで 始まっている。このリーディングフレームから推測されるタンパク配列(配列認 識番号14)の水治療分析において1つの疎水性セグメントがNH2末端にある ことが予想され、推測されるポリペプチドがほ乳類グリコシルトランスフェラー ゼに典型的なタイプIIトランスメンブラン定位を維持していることを示唆して いる。このリーディングフレームは全長にわたって、ルイス・フコシルトランス フェラーゼcDNAの対応部分に非常に高いアミノ酸(図示なし)および核酸配 列の同一性を有している(図7)。これら2つのDNA配列、およびそれらから 誘導されたタンパク配列が実質的に類似していることから、本発明者はこの新し いクロスハイブリッド配列は、フコシルトランスフェラーゼをコードした、未だ 規定されたことのない遺伝子の、単一のエクソン配列を表すものであると期待し た。 相同のDNA制限フラグメントは、α(1,3)フコシルトランスフェラーゼ の発現を決定する :このセグメントが機能性フコシルトランスフェラーゼをコー ドしているかどうかを調べるために、完全なオープンリーディングフレームを含 んだ1.2kbフラグメントをポリメラーゼ・チェーン反応により調製し、ほ乳 類発現ベクター中にクローン化し、そのプラスミド(pCDNAl−Fuc−T VI)を形質移入により、ほ乳類宿主細胞に導入した。これらの実験では宿主と してCOS−1細胞を使用したが、これはこれらの細胞が通常、ほとんど検知で きないα(1,3)およびα(1,4)フコシルトランスフェラーゼ活性を発現 するからである(クコウスカ−ラターロら、Genes Devel.,4:1 288−1303、1990)。同様に、COS−1細胞は通常、検知できるほ どのGalβ1→4[Fucα(1→3)]GlcNAc−(Lewis x, SSEA−1)またはGalβ1→3[Fucα(1→4)]GlcNAc−( Lewis a)成分を細胞表面に発現しない一方、そのような分子を構築する のに必要なフコシル化されないタイプIIおよびタイプIオリゴ糖プレカーサー の表面表示を維持する。(クコウスカ−ラターロら、Genes Devel. ,4:1288−1303、1990)。pCDNAIベクターを使用したが、 これはこのプラスミドがベクター中のサイトメガロウイルスの直前プロモーター 配列により、COS−1宿主中の外因性のサブクローン配列を効率的に転写し、 これらの細胞中にマルチコピー・エピソームとして維持されるからである(クコ ウスカ−ラターロら、Genes Devel.,4:1288−130 3、1990)。pCDNAl−Fuc−TVIを形質移入したCOS−1細胞 を先ずフロー・サイトメトリーにより分析し、あらためてこれらのオリゴ糖のベ クター依存の表面発現を検出した。形質移入されたこれらの細胞の大部分は、ル イスx成分(Galβ(1→4)[Fucα(1→3)]GlcNAc−)に対 するモノクローナル抗体により明るく染色されたのに対し(図8)、インサート なしのpCDNAlベクターを形質移入した細胞はこの発色をしなかった。これ に対し、pCDNAl−Fuc−TVIまたはそれでコントロールされたプラス ミドを形質移入したCOS−1細胞は、タイプIをベースとするルイスa三糖に 特異性を有する抗体によって染色されることはなかった(図8)。これらを考え 合わせると、これらの結果は、このセグメントは中性のタイプIIオリゴ糖プレ カーサーを利用する能力のあるα(1,3)フコシルトランスフエラーゼをコー ドするが、この酵素はタイプIグリコ複合体を効率的に利用できず、従ってα( 1,4)フコシルトランスフェラーゼ活性は示さないということであり、DNA 配列分析の結果と一致している。 末端ガラクトース残基がα(2、3)シアル酸成分で置換されたタイプII受 容体を利用することができるヒトα(1,3)フコシルトランスフェラーゼが1 つまたはそれ以上存在する可能性を裏付ける証拠がある。(ポトビンら、J.B iol.Chem.265;1615−1622、1990;ホルメスら、J. Biol.Chem.,261:3737−3743、1986;パルシックら 、Carbohyd.Res.、190:1−11,1989)。それらの酵素 はこれらの分子をフコシル化することができ、シアリル−ルイスxの決定基(N euAca(2→3)Galβ(1→4[Fucα(1→3)]GlcNAc− )を生成する。たとえば、ルイス・フコシルトランスフェラーゼはこの反応を起 こすことができる(パルシックら、Carbohyd.Res.、190:1− 11、1989;ロウら、Cell.,63:475−484、1990)。し たがって、明らかにプラスミドpCDNAl−Fuc−TVIでコードされたフ コシルトランスフェラーゼが、シアリル−ルイスx決定基を構築する能力がある かどうかを調べることが注目された。COS−1細胞は、(NeuAcα(2、 3)Galβ(1,4)GlcNAc−で終わる表面発現されたグリコ複合体を 維持する(ロウら、Cell.,63:475−484、1990;福田ら、J .B iol.Chem.263;5314−5318、1988);これらはシアリ ル−ルイス構築のための受容体基質であって、形質移入されたフコシルトランス フェラーゼ発現ベクターでコードされた酵素の働きによって規定される(ロウら 、Cell.,63:475−484、1990)。したがって、COS−1細 胞にプラスミドpCDNAl−Fuc−TVIを形質移入し、モノクローナル抗 シアリル−ルイスx抗体で染色し、フロー・サイトメトリー分析を行った。ベク ター単体を形質移入した対照細胞、あるいはpCDNAl−Fuc−TVIを形 質移入し、逆対照の抗体(抗−H、図8)で染色された細胞に比べて、大量の染 色が検出された。しかしながら、これらの細胞はタイプIがベースとなっている シアリル−ルイスa決定基(NeuAcα(2、3)Galβ(1,3)[Fu cα(1,4)]GlcNAc−)に特異性を有する抗体では染色されなかった (図8)。反対に、本発明者は以前に、ルイス・フコシルトランスフェラーゼ発 現のプラスミドpCDM7−α(1,3/1,4)FTを形質移入したCOS− 1細胞の大部分がシアリル−ルイスxおよびシアリル−ルイスa抗体(ロウら、 Cell.,63:475−484、1990)によって明るい染色を示すこと を観察しており、これはこの酵素の受容体基質特異性の生化学分析で予想された 通りである(パルシックら、Carbohyd.Res.、190:1−11、 1989)。 プラスミドpCDNAl−Fuc−TVIがα(1,3)フコシルトランスフ ェラーゼをコードするという結論は、プラスミドpCDNAl−Fuc−TVI を形質移入したCOS−1細胞の抽出物中の酵素の受容体基質要求に関する生化 学分析によって確認された。予期された通り、これら抽出物中の酵素はタイプI I二糖受容体のN−アセチルラクトスミンを利用し、予想された産物Galβ( 1→4)[Fucα(1→3)]GlcNAc−)を産生した。この酵素はまた 、三糖NeuAca(2,3)Galβ(1,4)GlcNAcを効率的に利用 し、シアリルルイスx四糖を生成した(表2)。このような条件のもとで、ラク トースを含む他のタイプII分子およびα(1,2)フコシル化タイプII受容体 Fucα(1→2)Galβ(1→4)Glcは、これらの抽出物中のフコシル トランスフェラーゼに対して、検知できるほどの効率の受容体基質の働きはしな かった。タイプI基質のラクト−N−ビオースIもこの酵素には利用されなか った。このことは、この酵素がα(1,3)フコシルトランスフェラーゼとして だけ働くことを示唆しており、これはまた、フロー・サイトメトリー分析によっ ても示唆されているところである。この酵素が示した受容体指向性は、ルイス・ フコシルトランスフェラーゼが示すものと対照的であり、ルイス・フコシルトラ ンスフェラーゼはテストした4つの受容体すべてを効率的に利用する(クコウス カ−ラターロら、Genes Devel.,4:1288−1303、199 0;モリコーンら、Eur.J.Biochem.,191:169−176、 1990)。図8に示されているフロー・サイトメトリー分析の結果、およびD NA配列分析を考え合わせると、これらの生化学実験は表2に要約したように、 プラスミドpCDNAl−Fuc−TVIは、明確に異なった独自の受容体特異 性を備えた新規なフコシルトランスフェラーゼをコードしている。 Fuc−TVIのタンパク配列はFUC−TVおよびFUC−TIIIの配列 と非常によく似ていることから、触媒活性のある、分泌されたプロテインA−F uc−TVI融合タンパクは、Fuc−TVIの残基43から359(配列認識 番号14)を、pPROTA−α(1,3/1,4)FTcおよびpPROTA −Fuc−TVcを作るときに使用した同じ方法で、プロテインAセグメントに 融合させることによって作ることができるものと期待される。 実施例VI:”クロスハイブリダイゼーションによるGDP−Fuc:β−D−Gal(1, 4)−D−GlcNAcα(1,3)フコシルトランスフェラーゼ11(Fuc −TVI;DNA配列認識番号14、タンパク配列認識番号15)をコードする DNA配列のクローン化および発現”の実験手順細胞培養:使用したCOS−1細胞の入手源および培養条件は前記の通り(エ ルンストら、J.Biol.Chem.,265;3436−3447、198 9;ラジャンら、J.Biol.Chem.,264;11158−11167 、1989)。 抗体:抗Lex抗体抗SSEA−1(ソルターら、Proc.Nat.Aca d.Sci.(USA)、75:5565−5569、1978)(マウスモノ クローナルIgM、腹水)はデイバー・ソルター博士(ウイスター研究所、フィ ラデルフィア)から提供された。抗Hおよび抗ルイスa抗体(マウスモノクロー ナルIgM、抗原アフィニティにて精製)はケムバイオメッド社(エドモントン 、アルバータ州)から購入した。抗シアリル・ルイスx抗体CSLEXl(福島 ら、Cancer Res.、44:5279−5285、1984)(マウス モノクローナルIgM、HPLCにて精製)および抗シアリル・ルイスa抗体C SLEAI(ガルトンら、Ninth Int.Convoc.Immuno. 、Amherst、NY、pp.117−125、カルガー、バセル;チアら、 Cancer Res.、45:435−437、1985)(マウスモノクロ ーナルIgG3、硫酸アンモニウム沈降法)はP.テラサキ博士(UCLA、ロ サンゼルス)より提供された。プールされた抗マウスIgG抗体調製品(MsI G)はコールター社から購入した。フルオレセイン複合ヤギ抗マウスIgMまた はIgG抗体はシグマ社から購入した。 ヒトゲノムライブラリの構築:高分子量のヒトゲノムDNAを前記の通り、末 梢血液白血球から調製した(エルンストら、J.Biol.Chem.265; 3436−3447、1989)。ゲノムDNAは制限エンドヌクレアーゼSa u3Aを使用して部分分解した。部分分解されたゲノムDNAを食塩水勾配によ り超遠心分離によってサイズ分画した。8kbから20kbの間のDNAフラグ メント富化分画を、あらかじめ末端をSau3Aフラグメントに適合するように 部分的にdTTPおよびdCPTで満たしたXhol分解のラムダFIX(スト ラダジーン)ファージの腕に連結した。連結した混合物は試験管中で市販のパッ ケージ用抽出物(ストラダジーン)を用いてパッケージとし、大腸菌宿主TAP 90上で滴定した(パターソンら、Nucl.Acids.Res.、15:6 298、1987)。プラークハイブリダイゼーションにより約1.0x106 のリコンビナント・ラムダファージが選別された。プラーク・リフトはニトロセ ルロース・フィルター(シュライチャーおよびシュエル)を使用して調製し、4 2℃で16時間、50%フォルムアミド、5XSSC、10Xデンハーツ溶液、 および0.1%SDS中で予備ハイブリダイゼーションした。フィルターは35 ℃で72時間、10%硫酸デキストランおよび1mlあたり100マイクログラ ムの変性した鮭の精子DNAを含んだ予備ハイブリダイゼーション溶液中でハイ ブリダイゼーションした。プローブは、[α−32P]dCTPで標識化した(フ ェインバーグら、Anal.Biochem.、132:6−13、1983) ルイス式血液型α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼをコードした cDNAインサートの5’末端から単離した1.7kbXhoI−XbaIフラ グメントで構成されたものである(クコウスカ−ラターロら、Genes De vel.,4:1288−1303、1990)。フィルターは室温、2X S SCで20分間づつ3回リンスし、ついで50℃で40分間、1X SSCおよ び0.5%SDSで1回リンスした。そのあとフィルターをオートラジオグラフ ィにかけた。2回の追加プラーク・ハイブリダイゼーションサイクルの後、18 の独立したハイブリダイゼーション陽性のプラークが同定された。ファージDN Asは液状溶解産物(マニアティスら、「分子クローニング:研究所マニュアル 」、コールド・スプリング・ハーバー研究所、コールドスプリングハーバー、ニ ューヨーク、1982)から調製し、ついで制限エンドヌクレアーゼ分解および サザン・ブロット分析により特性判定が行われた。 DNA配列分析:ファージDNAは種々の制限酵素で分解し、ヒトα(1,3 /1,4)フコシルトランスフェラーゼcDNAと相同のフラグメントはゲル精 製し、pTZ18Rのマルチクローン化部位に連結した。代表的なサブクローン はT7DNAポリメラーゼ(ファルマシアLKBバイオテクノロジー社)および 合成オリゴヌクレオチドを使用し、フランキング・プラスミド配列、ついでイン サート配列に基づいてジデオキシ鎖決定法(サンガーら、Proc.Nat.A cad.Sci.USA、74:5463−5467、1977)により配列し た。この配列データはさらに追加の合成デオキシヌクレオチドを作るために使用 し、それをインサートの残りの部分を配列するために使用した。配列分析はウイ スコンシン大学の遺伝子工学コンピューターグループによる配列分析用ソフトウ エアパッケージを使用した(デベリュークスら、Nucl.Acids.Res .、12:387−395、1984)。 pCDNAl−Fuc−TVIへのインサートの形質移入と発現:1.2kb フラグメントをPCRにより生成した。これには強くハイブリダイズされたファ ージから取り出した代表的ファージから単離したDNAを使用し、ほ乳類発現プ ラスミドpCDNAl(インビトロゲン)のHindIII部位にクローン化し た。プラスミドのCMVプロモーター・エンハンサー配列のセンス定位に単一イ ンサートを持ったプラスミドをpCDNAl−Fuc−TVIと命名した。 FACS分析:プラスミドDNAsを形質移入されたCOS−1細胞は形質移 入から48−72時間後に採取し(ラジャンら、J.Biol.Chem.、2 64;11158−11167、1989)、前記のとおり染色用媒体で希釈し たモノクローナル抗体で染色した(クコウスカ−ラターロら、Genes De vel.,4:1288−1303、1990;エルンストら、J.Biol. Chem.265;3436−3447、1989)。抗ルイスaおよび抗H抗 体(マウスIgMモノクローナル;抗原アフィニティにて精製;ケムバイオメッ ド社、エドモントン)は10μg/mlで使用した。抗SSEA−1(マウスモ ノクローナルIgM;腹水)は1:1000に希釈して使用した。抗シアリル・ ルイスx(マウスモノクローナルIgM;腹水からHPLCにて精製)は10μ g/mlで使用した。抗シアリル・ルイスa(マウスモノクローナルIgG3; 腹水の硫酸アンモニウム沈降物)は1:1000に希釈して使用した。対照のマ ウスIgG3抗体(MsIg、コールター)は10μg/mlの濃度で使用した 。抗VIM-2抗体(マウスモノクローナルIgM;腹水)は1:200に希釈 して使用した。そのあと細胞はフルオレセイン・イソチオシアネート複合ヤギ抗 マウスIgMまたはIgGにより適宜染色し、前記FACScan(ベクトン− ディキンソン)分析にかけた(クコウスカ−ラターロら、Genes Deve l.,4:1288−1303、1990)。 フコシルトランスフェラーゼ評価分析:形質移入したCOS−1細胞から、前 述の手順(クコウスカ−ラターロら、Genes Devel.,4:1288 −1303、1990)を用いて、1%Triton X−100を含む細胞抽 出物を調製した。フコシルトランスフェラーゼ評価分析を、50mMカコジル酸 ナトリウム、pH6.2、5mM ATP、10mM L−フコース、20mM のMnCl2、3μM GDP−14C−フコース、および5μl(タンパク30 μg)の細胞抽出物を含む合計20μlで行った。受容体基質を最終濃度20m Mになるように添加した。37℃で1時間反応させ、20μlのエタノールを加 えて反応を終結させ、そのあとさらに600μlの蒸留水を加えた。それぞれの 反応物の分割量(50μl)をシンチレーション計測器にかけ、それぞれの反応 物中の合計放射能量を計測した。別の分割量(200μl)を、400μlのD owex lX2−400、フォルメート状、を含んだカラムにかけた(ラジャ ンら、J.Biol.Chem.、264;11158−11167、1989 )。フラクションを通過した液およびそれに続く2μlの溶出水溶液を回収しプ ールした後、分割量をシンチレーション計測器にかけ、中性物質に入った放射性 フコースの量を計測した。 表2は、前節で記述したように、形質移入されたCOS−1細胞に発現された リコンビナント・ヒトα(1,3)フコシルトランスフェラーゼ類を含んだ細胞 抽出物を使用して、低分子量受容体基質で得られる製品の相対生成比率を表した ものである。フコシルトランスフェラーゼ分析は、ロウら、J.Biol.Ch em.、(1991)、266:17467−17477;ウエストンら、J. Biol.Chem.、(1992)、267:4152−4160;およびク コウスカ−ラターロら、Genes Devel.、(1990)、4:128 8−1303に詳細に説明されている方法により行った。それぞれの酵素につい ては、それぞれの受容体オリゴ糖を飽和させる量(20mM、ただし2’−フコ シルラクトースは5mM使用)で、かつ3μMのGDP−14C−フコースの存在 下で、同じ抽出物を使用した。反応時間および酵素の量は製品産生が直線的関係 になるように調整した(GDPフコース基質の消費量15%以下)。ロウら、J .Biol.Chem.、(1991)、266:17467−17477;ウ エストンら、J.Biol.Chem.、(1992)、267:4152−4 160;およびクコウスカ−ラターロら、Genes Devel.,(199 0)、4:1288−1303に記載の通り、これらの製品はカラム・クロマト グラフィにより分離し、液体シンチレーション計測により定量し、それらの構造 は高速液体クロマトグラフィにより確認した。 上記の説明に照らせば、本発明は多くの修正法や変法が可能なことは明らかで ある。したがって、添付の請求の範囲において本発明は、特に本明細書中に説明 した以外の方法によっても実施することができることはいうまでもない。 配列表 (1) 一般的情報: (i)出願人:ロー,ジヨン ビー. (ii)発明の名称:糖タンパク上もしくは糖脂質上のまたは遊離分子として のオリゴ糖構造体の合成に用いるための、およびこれらの構造体を決定するクロ ーン化遺伝子配列を単離するための方法および産物 (iii)配列の数:14 (iv)あて名: (A) あて名:オブロン,スピバーク,マクレランド,メイヤー ア ンドヌースタッド,ピー.シー. (B) ストリート:1755 ジェフアーソン デイビス ハイウエ イ,4階 (C) 市:アーリントン (D) 州:バージニア (E) 国:アメリカ合衆国 (F) 郵便番号:22202 (v)コンピューター入力形式: (A) 媒体:フロッピーディスク (B) コンピューター:IBM PC 互換機 (C) オペレーティング システム:PC−DOS/MS−DOS (D) ソフトウェア:PatentIn Release #1.0,Version #1.25 (vi)本出願データー: (A) 出願番号:US (B) 出願日:1992年7月20日 (C) 分類: (viii) 代理人/エージェント 情報: (A) 氏名:ラバレイ,ジーン−ポール エム.ピー. (B) 登録番号:31,451 (C) 照会/処理番号:2363−060−55 (ix)通信情報: (A) 電話:(703)521−4500 (B) テレフアックス:(703)486−2347 (C) テレックス:248855 OPAT UR (2) 配列認識番号:1: (i)配列の特徴: (A) 長さ:2043 塩基対 (B) 型:核酸 (C) 鎖の数:不明 (D) トポロジー:不明 (ii)分子の型:cDNA (iv)アンチセンス:なし (xi)配列:配列認識番号:1: (2) 配列認識番号:2: (i) 配列の特徴: (A)長さ:361 アミノ酸 (B)型:アミノ酸 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:タンパク質 (xi)配列:配列認識番号:2: (2) 配列認識番号:3: (i) 配列の特徴: (A)長さ:1500 塩基対 (B)型:核酸 (C)鎖の数:不明 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:cDNA (iv)アンチセンス:なし (xi)配列:配列認識番号:3: (2) 配列認識番号:4: (i) 配列の特徴: (A)長さ:394 アミノ酸 (B)型:アミノ酸 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:タンパク質 (xi)配列:配列認識番号:4: (2) 配列認識番号:5: (i) 配列の特徴: (A)長さ:8174 塩基対 (B)型:核酸 (C)鎖の数:不明 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:DNA(genomic) (iv)アンチセンス:なし (xi)配列:配列認識番号:5: (2) 配列認識番号:6: (i) 配列の特徴: (A)長さ:365 アミノ酸 (B)型:アミノ酸 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:タンパク質 (xi)配列:配列認識番号:6: (2) 配列認識番号:7: (i) 配列の特徴: (A)長さ:3647 塩基対 (B)型:核酸 (C)鎖の数:不明 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:DNA(genomic) (iv)アンチセンス:なし (xi)配列:配列認識番号:7: (2) 配列認識番号:8: (i) 配列の特徴: (A)長さ:405 アミノ酸 (B)型:アミノ酸 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:タンパク質 (xi)配列:配列認識番号:8: (2) 配列認識番号:9: (i) 配列の特徴: (A)長さ:1488 塩基対 (B)型:核酸 (C)鎖の数:不明 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:DNA(genomic) (xi)配列:配列認識番号:9: (2) 配列認識番号:10: (i) 配列の特徴: (A)長さ:1316 塩基対 (B)型:核酸 (C)鎖の数:不明 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:DNA(genomic) (xi)配列:配列認識番号:10: (2) 配列認識番号:11: (i) 配列の特徴: (A)長さ:374 アミノ酸 (B)型:アミノ酸 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:タンパク質 (xi)配列:配列認識番号:11: (2) 配列認識番号:12: (i) 配列の特徴: (A)長さ:1086 塩基対 (B)型:核酸 (C)鎖の数:不明 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:DNA(genomic) (xi)配列:配列認識番号:12: (2) 配列認識番号:13: (i) 配列の特徴: (A)長さ:1654 塩基対 (B)型:核酸 (C)鎖の数:不明 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:DNA(genomic) (xi)配列:配列認識番号:13: (2) 配列認識番号:14: (i) 配列の特徴: (A)長さ:359 アミノ酸 (B)型:アミノ酸 (D)トポロジー:不明 (ii)分子の型:タンパク質 (xi)配列:配列認識番号:14:
【手続補正書】特許法第184条の8 【提出日】1994年2月15日 【補正内容】請求の範囲 1.配列認識番号14のアミノ酸配列をコードする配列を含む単離されたDN A断片。 2.配列認識番号13の塩基255から塩基1208までの配列を含む請求項 1に記載のDNA断片。 3.配列認識番号13の配列を含む請求項1に記載のDNA断片。 4.配列認識番号14のアミノ酸配列をコードするDNA配列を含むベクター 。 5.DNA配列が配列認識番号13の塩基255から塩基1208までを含む 請求項4に記載のベクター。 6.DNA配列が配列認識番号13の配列を含む請求項4に記載のベクター。 7.配列認識番号14の配列を有するタンパク質。 8.配列認識番号14の位置43−359に対応するアミノ酸配列を含むポリ ペプチド。 9.配列認識番号14のアミノ酸配列をコードする配列を本質的に含む請求項 1に記載のDNA断片。 10.配列認識番号13の塩基255から塩基1208までの配列を本質的に含 む請求項2に記載のDNA断片。 11.配列認識番号13の配列を本質的に含む請求項3に記載のDNA断片。 12.DNA配列が配列認識番号13の塩基255から塩基1208までを本質 的に含む請求項5に記載のベクター。 13.DNA配列が配列認識番号13の配列を本質的に含む請求項6に記載のベ クター。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AU,BB,BG,BR,BY,CA, CZ,FI,HU,JP,KP,KR,KZ,LK,M G,MN,MW,NO,NZ,PL,RO,RU,SD ,SK,UA,VN

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.配列認識番号14のアミノ酸配列をコードする配列を含む単離されたDN A断片。 2.配列認識番号13の塩基255から塩基1208までの配列を含む請求項 1に記載のDNA断片。 3.配列認識番号13の配列を含む請求項1に記載のDNA断片。 4.配列認識番号14のアミノ酸配列をコードするDNA配列を含むベクター 。 5.DNA配列が配列認識番号13の塩基255から塩基1208までを含む 請求項4に記載のベクター。 6.DNA配列が配列認識番号13の配列を含む請求項4に記載のベクター。 7.配列認識番号14の配列を有するタンパク質。 8.配列認識番号14の位置43−359に対応するアミノ酸配列を含むポリ ペプチド。
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