JPH08503869A - 創傷用被覆剤 - Google Patents

創傷用被覆剤

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Abstract

(57)【要約】 創傷用被覆剤は、DPPH試験で遊離基活性が15〜80%の範囲にある化学的に変性させたポリマーからなる。該被覆剤は、持続性遊離基またはその前駆体である少なくとも一つの化学基を有する化学的に変性させたポリマーからなるものとすることができる。当該被覆剤は、創傷の環境下で分子酸素と反応して過酸化水素を形成することのできる少なくとも一つの化学基を有する化学的に変性させたポリマーからなるものとすることができる。当該被覆剤は、創傷の環境下でマクロファージの活性またはフィブロブラストの増殖あるいはその両方を剌激することのできる化学的に変性させたポリマーからなるものとすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】 創傷用被覆剤 【技術の分野】 本発明は創傷によい治癒環境を提供する被覆剤に関する。 好ましい創傷の治癒は、損傷を受けた組織の迅速で完全な再生を特徴とする。 創傷用被覆剤については、どのような被覆剤類が創傷の治癒を促進するのに最も 効果的かを明らかにする目的で研究にかなりの努力が払われてきた。創傷の治癒 のプロセスは複雑でまだ完全には理解されていない。第一日目を含めてとくに治 癒の初期の段階では、バクテリアを殺して細胞の破片や異物を除去するためにマ クロファージが活発に活動することが望ましい。この活動には通常炎症がともな う。たとえば第三日目から第七日目までのようなとくに治癒の後期の段階では、 早い速度で再生が行なわれるようにフィブロブラスト(繊維芽細胞)が活発に活 動することが望ましい。 創傷には、活性遊離基とくにヒドロキシル基(OH・)、ヒドロペロキシル基 (OOH・)、超酸化物アニオン(O2-)などの小さな酸素を含む遊離基が高 い濃度で存在することが多い。最後の二つのものはプロトン付加平衡状態にあり 、生理的pHではアニオンが支配的である。ただしヒドロペロキシル基は、超酸 化物アニオンより活性度の高い遊離基である。治癒の初期の段階ではこれらの基 の存在することがマクロファージを創傷中に引き込んで呼吸バーストを促進する ため好ましいと考えられている。しかし、これらの基が存在し続けることは好ま しくないとされる。これらの基によって炎症が持続して治癒が遅れ、ひどい場合 には 組織の壊死や恒久的な組織の損傷が生じると考えられるからである。これに対し て、過酸化水素(H2 2 )などの対でない電子をもたない酸化剤ははるかに害 が少ないと考えられている。実際にバードン、ジル、ライス・エヴァンスなどは 「Free Rad. Res. Commun.,Vol. 7(1989)」の149〜159頁において低レベ ルの過酸化水素(約10-8〜10-6M)がフィブロブラストの増殖を促進させる と記している。 【背景技術】 フローエ、ジアーツ、ベックマンなどは「炎症ハンドブック第5巻:炎症の薬 理学」(Elsevier Sience Publishers BV,1985)の255〜281頁において遊 離基スカヴェンジャ(捕捉剤)を炎症抑制剤として使用することを論じている。 超酸化物アニオンは、捕食された微生物を殺すという不可決の作用に役立つとい われている。過酸化物アニオンおよびヒドロキシル基などの反応生成物は細胞外 環境下において有害であり、おそらく炎症反応の自動維持および組織の損傷を招 くと考えられている。上記の著者などは、酵素過酸化物ディスムターゼ(SOD )の注射により各種の炎症状態の処置に成功したとしている。該酵素過酸化物デ ィスムターゼは下記の反応に対して触媒の作用をする。 2O2- +2H+ 2 +H2 2 これらの著者は、酵素によるよりも薬物による遊離基の捕捉の考え方に多くの 困難があることを指摘している。とくに遊離基とスカヴェンジャが反応すると新 たな遊離基が生成される。これに当初の基と同様な反応性がある場合にはなんら の利益が得られない。それほど反応性がない場合には、傷口から移動してそれま で は健康であった部分に損傷を生じるおそれがある。著者らは、生体内でのきわめ て反応性の高い基の捕捉は実行可能でもなくまた好ましくもない。 米国特許第4837024号は、繊維状タンパク質、コラーゲン、および、多 糖類であるグリコサミノグリカンの懸濁液からなり、創傷の治癒のプロセスを増 強し促進する組成物を開示している。グリコサミノグリカンは、フィブロブラス トまたは内皮細胞のために化学走性(走化性)を示すものであり、好ましいグリ コサミノグリカンは、ヘパリン、硫酸ヘパリン、およびヘパリンアルジネートで あるといわれる。ただし、アルジネートは、厳密にはグリコサミノグリカンでは ない。 国際公開番号WO91/11205の国際特許出願は、創傷の治癒に役立つ創 傷用被覆剤に用いることのできる生物高分子物質を開示している。その生物高分 子物質とは、少なくとも70%のマヌロン酸残分、たとえば、ある種の細菌性ア ルジネート、酸化グアーゴム、または、酸化マンナンを含む多糖類である。 国際公開番号WO91/12267の国際特許出願は、酸化抑制および炎症抑 制活性をもつ金属:ペプチド複合体を開示している。金属は、通常、銅(II)ま たはマンガン(II)であり、ペプチドはトリペプチドまたはテトラペプチドであ る。これらの可溶性複合体は活性治療物質として、また、傷または炎症部分の処 置用薬剤の調合に用いることができる。これらの複合体はSODとよく似た作用 をもつといわれる。 【発明の開示】 本発明の一側面に基づけば、創傷用被覆剤は、以下で定義する DPPH試験で15〜80%、好ましくは50〜70%の範囲内の遊離基活性を 有する化学的に変性させたポリマからなることを特徴とする。ある場合には、D PPH試験でのポリマの遊離基活性は、好ましくは50〜80%の範囲内、より 好ましくは60〜70%の範囲内である。他の場合には、当該活性は、好ましく は15〜70%、より好ましくは15〜50%、さらに好ましくは25〜40% の範囲内である。 本発明の他の一側面に基づけば、創傷用被覆剤は、持続性の遊離基またはその 前駆体である少なくとも一つの化学基を有する化学的に変性させたポリマからな ることを特徴とする。 本発明のさらに他の一側面に基づけば、創傷用被覆剤は、傷の環境下で分子酸 素と反応して過酸化水素を形成することのできる少なくとも一つの化学基を有す る化学的に変性させたポリマからなることを特徴とする。 本発明のさらに他の一側面に基づけば、創傷用被覆剤は、マクロファージの活 性またはフィブロブラストの増殖を刺激することのできる化学的に変性させたポ リマからなることを特徴とする。 化学的に変性させたポリマなる用語は、望ましい基を有しないまたは望ましい 活性をもたない基礎ポリマと望ましい基または望ましい活性を導入するための化 学試薬との反応生成物を意味するものである。基礎ポリマは、前記試薬と反応す ることができる官能基を有する。 本発明のさらに他の一側面に基づけば、創傷の処置方法は、本発明創傷用被覆 剤が創傷に適用されることを特徴とする。当該方法はさらに、創傷の治癒のプロ セスの異なる段階で本発明の異な る創傷用被覆剤を適用することを特徴とする。 この出願では、DPPH試験と称して後に試験方法1として記載する方法によ りポリマの遊離基の活性が評価される。これはより活性の高いポリマがより大き い色の変化を生じる比色定量法である。 持続性遊離基はまた安定性遊離基とも呼ばれる。これらは活性遊離基と区別さ れるが、この区別は程度の問題である。ヒドロキシル基およびヒドロペロキシル 基は活性遊離基の例である。これらは各種の電子対を有する分子と反応して新し い基を形成することができる。とくに、これらは、下に図式的に示すように電子 対を有する分子から水素原子を取り去ることができる。 X1 H+OH・→X1・+H2 O X1 H+HOO・→X1・+H22 ただし、X1・は有機基をあらわす。この反応が起こるためにはX1 −H結合 がやや不安定でなければならない。X1 Hが生物的に重要な分子である場合には 、この種の反応が炎症反応の中で発生して創傷の治癒のプロセスの後の段階でこ れらの活性遊離基の有害な作用を誘起すると考えられる。これに対して、持続的 遊離基は、X1 −H結合がきわめて不安定な場合を除いて、通常、創傷の環境下 で存在する種類の分子から水素を取り去ることができない。一般化学の分野で知 られるきわめて持続性の高い遊離基の例としては、トリフェニルメチルおよびジ フェニルピクリルヒドラジル(DPPH)基をあげることができる。 ある種の遊離基は、分子酸素と迅速に反応することができる。この種の反応の 三つの例を下に図式的に示す。 X2・+O2 →X2 OO・ X3 H・+O2→X3 +HOO・ X4-+O2 →X4 +O2- ただし、X2・、X3 H・、X4- 有機基をあらわす。この種の反応により新 しい活性遊離基が形成され、それがマクロファージの活性を刺激する可能性があ る。 持続性の遊離基の前駆体である化学基は対でない電子を含まない。これらの基 は、活性遊離基と反応して持続性の遊離基を生成することができる。この種の前 駆基を有するポリマは、通常、多くの理由から、最初から持続性の遊離基を有す るものよりも好ましいとされる。この種の基にはさまざまなものがあり、一般に 化学的に安定で調製が容易である。適応に選ばれた基は、一以上の遊離基反応に 参加することができる。それに対して持続性の遊離基は一つの反応にしか参加す ることができない。そのような場合には、前駆基は活性遊離基と反応して持続性 の遊離基を形成し、生成された持続性の遊離基がその後に第二代の活性遊離基を 抑制する。この種の前駆基は関係する物質の化学的性質に応じ、種々の形で一以 上の遊離基反応に参加することができる。たとえば、 I P1 +R・→(P1 R)・ (P1 R)・+R・→P1 2 II P2 H+R・→P2・+RH P2・+R・→P2 R P2・+P2・→P22 III P3 2 +R・→(P3 H)・+RH (P3 H)・+R・→P3 +RH Iの場合においては、P1 が活性遊離基R・を捕捉して持続性遊離基(P1 R )・を形成する。この持続性遊離基はさらにその後他の活性遊離基R・を抑制す る。IIの場合においては、活性遊離基R・がポリマP2 Hから水素原子を取り去 って持続性遊離基P2・を形成し、この持続性遊離基はさらにその後他の活性遊 離基R・または他の持続性遊離基P2・を抑制する。III の場合においては、活 性遊離基R・が連続的にポリマP3 2 から、また、さらに持続性遊離基(P3 H)・から水素原子を取り去る。他の場合には、前駆基の直接的な反応生成物と 活性遊離基が中間的な基を生成し、それが分解して持続性遊離基および電子対を もつ基を生じる。たとえば、カルボキシル基P4 CO2・は分解して持続性遊離 基P4・およびCO2・を生じる。 ある種の化学基には可逆的に解離して一対の持続性遊離基を形成するものがあ り、したがってこの種の基は持続性遊離基の前駆体である。一般化学の分野で知 られる例としては、へキサフェニルエタンは、可逆的に解離して二つのトリフェ ニルメチル基となる。 遊離基は、一般的に不飽和基との共役により安定させることができ、したがっ て、より持続性をもたせることができる。一般的には共役が大きいほど安定性が 大きくなる。したがって、やはり一般化学の分野から例をあげるとすれば、NH2 ・は高度に活性の遊離基であり、PhNH・の活性はははるかに低く、Ph2 N・はよく知られた持続性遊離基である。遊離基を安定させる不飽和基の例とし ては、芳香族環および複素環式芳香族環、たとえばアゾ芳香族環、脂肪族二重結 合、たとえばオレフィン二重結合をあ げることができる。対でない電子が、さらに、たとえばヒドロキシ基またはエー テル基の中の酸素原子あるいはアミノ基の中の窒素原子のように孤立電子対を有 するヘテロ原子の上あるいはカルボニル基またはイミノ基などの電子を取り上げ る不飽和基の上に非局在化している場合は、とくに遊離基を安定させるのに有効 である。場合によっては、遊離基が遊離基の中心の回りでの立体障害によって安 定することもある。 芳香族−脂肪族、および、複素環式芳香族−脂肪族第二級アミンは、とくに芳 香族または複素環式芳香族環がさらに上述したように置換される場合には、持続 性遊離基の前駆体である化学基の好ましい例としてあげることができる。 創傷用被覆剤として利用されて分子スケール上で創傷から隔てられたポリマが 、創傷の生物活性部位からくる遊離基と反応する能力によって創傷の治癒のプロ セスに明白に影響することは考えられない。 低濃度の過酸化水素(約10-8〜10-6M)がフィブロブラストの増殖を刺激 することは実証されている。これは、傷の治癒の後期の段階ではとくに好ましい 。遊離基の前駆体である基を有するポリマは、生理的環境下で分子酸素と頻繁に 反応して過酸化水素を生成することができる。このプロセスは、下記の過程をた どるものと考えられる。 Fe2+/Fe3+2 H+O2 → P2・+HOO・ P2 H+HOO・ → P2・+H2 2 ただし、P2 Hはこれまでのようにポリマをあらわす。この種 のポリマは、本発明の創傷用被覆剤に用いて価値がある。上のプロセスは中間基 としてヒドロペロキシ基を生成し、この基の存在は傷の治癒の後の段階を遅らせ ると考えられる。しかし、ある種のポリマは、ヒドロペロキシ基が傷の環境の中 に入る前にそれを抑制することができ、上に示したように過酸化水素を形成する 。 過酸化水素の濃度がたとえば10-5M以上に高まると、フィブロブラストの増 殖が抑制されることが実証されている。したがって、創傷の環境の中でこのよう な高濃度の過酸化水素の形成を招くポリマは、創傷の治癒の後の段階で用いられ る本発明の創傷用被覆剤には好ましくない。この種のポリマは、炎症活動の開始 が望まれる創傷の治癒の初期の段階で使用するのが好ましいであろう。 本発明の創傷用被覆剤にも用いられるポリマおよび活性遊離基を有するそれら の反応生成物は、生理的に有害な作用のないことが重要である。また、創傷用被 覆剤の中のいずれか特定のポリマの有効性は創傷の環境の複雑な生理作用に左右 され、また、そのような生理作用はまだ完全には理解されていないことを認識す る必要がある。ポリマ構造のわずかな変化でも比較的大きな影響がある場合もあ り得る。いずれにせよ、理論的予測は、常に実際の試行で実証されることが必要 である。 本発明の創傷用被覆剤に利用されるポリマは、持続性の遊離基またはその前駆 体である化学基を導入するための官能基を有する基礎ポリマの化学的変性によっ て製造される。基礎ポリマは、たとえばヒドロキシ官能ポリマとすることができ る。この種のポリマの例としては、自然に得られる多糖類または人工的に変性さ せ た多糖類をあげることができる。この種のポリマの他の例としては、ヒドロキシ エチルまたはヒドロキシプロピルアクリレートまたはメタクリレートなどのヒド ロキシ官能モノマ単位を組み込んだ付加ポリマをあげることができる。 一例として、持続性遊離基の前駆体たる化学基を導入するために官能基を有す るポリマが化学的に変性される場合を説明する。たとえば、はじめにヒドロキシ 官能ポリマを塩化シアヌル酸で処理し、つぎに第一級アミンRNH2 で処理する 。この場合、つぎのような反応が起こると考えられる。 ただし、Qはポリマリックバックボーンをあらわす。水素をこの種のポリマの アミノ基から取り去って持続性の遊離基を形成することができると考えられる。 適当なアミンRNH2 としては、イプシロンアミノカプロン酸およびグルコース アミンをあげることができる。二種類以上のアミンを混合物としてあるいは順次 付加して使用することもできる。あるいは、塩素含有ポリマ中間体を一種類のア ミン等価物と反応させ、残留塩素基を加水分解で除 去することもできる。これによって、下記の式の基を含むポリマが接触されると 考えられる。 またはその互変異性形。 他の例としては、ヒドロキシ官能ポリマをベンゾキノンと反応させ、酸化し、 さらに第一級アミンRNH2 で処理することも可能である。この場合、次の反応 が起こると考えられる。 中間体(IV)は、ハイドロキノン環を有することがわかる。活性遊離基がこの 種の分子から水素原子を取り去って持続性遊離基を生成することは知られており 、したがってこの種の中間体は、それ自身が本発明の創傷用被覆剤における化学 的に変性されたポリマとして有用である。付加物(VI)が遊離基酸化を受けて持 続性遊離基を介してベンゾキノン誘導体となること、また、このベンゾキノン誘 導体自身が環に付いたアミノ基の存在のために持続性遊離基の前駆体であること がわかる。 さらに他の例としては、アルデヒド基などの反応性カルボニル基を有するポリ マをアミンとくに第一級脂肪族アミンで処理して化学的に変性することも可能で ある。この処理によりポリマにイミンまたはエナミン基が導入され、また、少な くとも二重結合に対してαの位置に取り去りが可能な水素原子が存在する場合に はこの種の基は持続性の遊離基の前駆体であると考えられている。イミン形成の メカニズムはつぎのとおりであると考えられる。 QCHO+RNH2 →QCH=NR ポリマにアルデヒド基を導入する一つの適当な方法は、アミド官能ポリマをジ アルデヒドで処理するものである。その場合に起こる主な反応はつぎのとおりで あると考えられる。 QCONH2 +CHOR'CHO→QCON=CHR'CHO ただし、R’はたとえばアルキレン基などの二価の有機基である。適当なアミ ド官能ポリマの例としては、アクリルアミドの付加ポリマおよびコポリマによっ て得られるものをあげることができる。ジアルデヒドのとくに適当な例はグルタ ルアルデヒドである。これは入手が容易な化合物で、とくに持続性遊離基の前駆 体 である第一級アミンとの反応によってその形成を促すことができる複雑な化学的 性質をもっている。グルタルアルデヒドは、自己縮合が可能でα、β−不飽和カ ルボニル基を形成し、また、上の観察もこの共役の伸張によってよく説明できる と考えられる。 ポリマにアルデヒド基を導入する他の方法としては、ヒドロキシ官能ポリマを 、(1)ジオキシラン、(2)ジアミン、および(3)ジアルデヒドで処理する ものがあげられる。つぎのような反応の構成が考えられる。 ただし、R1 、R2 、R3 は、たとえばアルキレン基などの二価の有機基であ る。したがって、これらのポリマは持続性遊離基の前駆体として二つのイミン基 を含む側鎖をもつと考えられる。適当なジオキシランの例としては、ブタン−1 、4−ジオルジグリシジルエーテルがあげられる。適当なジアミンの例としては 、1、2−ジアミノエタンがあげられる。適当なジアルデヒドの例としてはグル タルアルデヒドがあげられる。 本発明の創傷用被覆剤の一つの効果は、さまざまな基礎ポリマを使用できるこ と、および、基礎ポリマの化学的変性を行なうためにさまざまな化学試薬を使用 できることである。これによって遊離基の活性のレベルを任意に選び、効果的に ポリマを調製して使用することが可能となる。 本発明の創傷用被覆剤には、かなりの大きさのスペーサ基、たとえばバックボ ーンが6〜20の原子を含む基によってポリマのバックボーンから持続性遊離基 の前駆体である基が分離されたポリマを用いることが好ましい場合もある。この 種のポリマの前駆体である基は、創傷の環境からくる活性遊離基によりアクセス 可能であり、また、その結果それらとより容易に反応すると考えられる。この種 のポリマの例としては、ヒドロキシ官能ポリマが連続的にジオキラン、ジアミン 、ジアルデヒド、およびアミンと反応する場合をあげることができる。 持続性遊離基の前駆体である基を導入するために化学的に変性された付加ポリ マおよび多糖類は、本発明の創傷用被覆剤のポリマとしてとくに好ましいもので ある。 ポリマは、架橋することができる。これは、付加ポリマの生成に多官能モノマ を低い割合で組み込むことによって達成することができる。あるいは、官能基を 有するポリマを多官能架橋剤で処理することもできる。たとえば、ヒドロキシ官 能ポリマを塩化シアヌル酸またはジオキシランなどの試薬で処理することによっ てほぼある程度の架橋を起こすことができる。架橋は、ポリマの親水性を調節す る方法に用いることができる。一般に、架橋の程度を高めるとそれに対応して親 水性が低下する。かなりの量の流体を滲出する創傷の処置に用いられる創傷用被 覆剤には親水性の高いポリマを用いることが好ましいであろう。本発明の創傷用 被覆剤の一つの効果は、ポリマの親水性をその遊離基の活性の制御とは独立に制 御できることである。 創傷用被覆剤の材料は、当該材料の存在下で適当な哺乳動物の 細胞を培養することによりこれの評価を行なうことができる。マクロファージの 呼吸バーストを促進する・あるいは・ファゴサイト(食細胞)を刺激する材料は 、創傷の治癒の初期の段階では価値があると考えられる。また、炎症を起こし、 したがって壊死性の・または・かさぶたのある創傷、または、潰瘍などの慢性的 な創傷に治癒が始まるのを刺激する目的で、この種の材料を使用することもでき る。マクロファージの刺激を評価する標準的な方法を、後に試験方法2として説 明する。フィブロブラストの増殖を刺激する材料は、創傷の治癒の後の段階で価 値があると考えられる。標準的な評価方法は、後に試験方法3として説明する。 DPPH試験において低成績すなわち0〜10%の成績のポリマは、通常、マ クロファージの活性も・また・フィブロブラストの増殖も刺激しないために中性 的な行動を示す。DPPH試験で中程度の成績すなわち50〜70%の成績のポ リマは、通常、マクロフアージの活性を刺激する。DPPH試験で高い成績すな わち50〜80%の成績のポリマは、通常、フィブルブラストの活性を刺激する 。これは、遊離基の存在によってマクロファージの活性が刺激されるがフィブロ ブラストの増殖が抑制される点でめざましいものであるということができる。す なわち従来、中程度の活性を有するポリマはマクロファージを刺激し、高い活性 のポリマはフィブロブラストを刺激することが期待されていたのかもしれないが 、実際はその逆だということである。 DPPH試験によれば、したがって、本発明にもとづく創傷用被覆剤が特定の 種類の創傷の処置に適しているかあるいは創傷の治癒のプロセスのある特定の段 階で使用するのに適していること を示すことができる。マクロファージの活性を刺激することが望まれる場合には 、化学的に変性させたポリマが、DPPH試験において15〜70%、より好ま しくは15ないし50%、さらに好ましくは25〜40%の範囲の結果を示すこ とが好ましい。この種のポリマは、炎症を刺激して慢性の創傷の清浄化を起こさ せるための本発明にもとづく創傷用被覆剤に使用できるであろう。マクロファー ジの活性とフィブロブラストの増殖をともに刺激することが望ましい場合には、 化学的に変性させたポリマが、DPPH試験において中間の50〜70%の範囲 の結果を示すことが好ましい。この種のポリマは、本発明にもとづく汎用の創傷 用被覆剤に使用することが好ましいであろう。 本発明の創傷用被覆剤は、当業者には公知の各種の方法でつくることができる 。一またはそれ以上の化学的に変性させたポリマを使用することができる。創傷 用被覆剤は、さらに、化学的に変性させた一以上のポリマに加えて他のポリマを 含むものとすることもできる。たとえば、化学的に変性させたポリマを膜状にし てそれを直接創傷に当てるようにすることもできる。あるいは、化学的に変性さ せたポリマを短繊維または連続する繊維の形にし、被覆剤にこの種のポリマをニ ット、織布、または不織布として組み込むこともできる。あるいは、化学的に変 性させたポリマをパウダまたはビーズの形にして・または・ハイドロコロイド・ または・ハイドロゲルにして創傷に塗布することもできる。ハイドロコロイドお よびハイドロゲルの被覆剤は、中程度または高度に親水性ポリマ、たとえばポリ (アクリルアミド)またはポリ(エチレンオキシド)を含むものとすることがで きる。本発明の創傷用 被覆剤に薬物を含ませることもできる。 本発明はまた、本発明創傷用被覆剤を創傷に適用する創傷の処置方法を含むも のである。処置の異なる段階では異なる種類の被覆剤を適用することができる。 通常、処置の初期の段階にはマクロファージの活性を増進する被覆剤が用いられ る。この種の被覆剤はまた炎症を刺激することにより慢性的な創傷の治癒のプロ セスを開始させるためにも用いることができる。ひとたび治癒が開始されれば、 フィブロブラストの増殖を刺激する被覆剤が用いられる。この被覆剤はまた、あ る程度までマクロファージの活性を刺激するためにも用いることができる。この ことは、通常、治癒の後の段階では望ましくないため、この段階では、フィブロ ブラストを刺激するがマクロファージの活性に及ぼす効果は最小限度である手当 て用品が用いられる。これは、処置法の中で通常はDPPH試験で高い結果を示 すポリマを使用することに対応する。 本発明の創傷用被覆剤に用いられるポリマの評価には、下記の試験方法が採用 された。 【試験方法1:ポリマの遊離基活性】 [DPPH試験] ポリマ材料の遊離基活性を評価するために、下記の方法が用いられた。これは 専門誌「Nature」第181巻(1958):1199頁にエム・エス・ブロイスが、 また、「Analytica1 Letters」第7巻(1974):41頁にピー・ダブリュー・バン ダ、エー・イー・シェリー、エム・エス・ブロイスが記載しているものを適用し たものである。材料40mgを2.5mlの希釈水の中に懸濁させた。必要な場 合には希釈HClまたはNaOHを添加して懸濁液 のpHが7.0となるように調節した。あるいは、材料を2.5mlの0.1M 、pH7.0の燐酸塩緩衝液中に懸濁させてもよい。2.5mlのメタノール系 10-4Mジフェニルピシルヒドラジル(DPPH)を添加し、混合物をよく振っ て20℃で暗所に保存した。試料の評価は、6時間にわたって524nm光の吸 光度を測定し、コントロールと比較することで行なった。とくに4時間後の数字 に注目した。4時間後のコントロールと比較した吸光度のパーセント値の減少を DPPH試験と呼ぶ。DPPH試験の再現性は±5%のオーダーであった。 ポリマ材料が水性メタノールにより高度に膨潤したり水性メタノールに溶けた 場合には当該方法を修正したものを使用した。希釈水を0.9%のw/v塩溶液 で置換した。吸光度は104 Gで10分間遠心分離後に得られた表面浮遊物で測 定した。 DPPHは、公知の持続性遊離基で524nmに強い吸収帯域を有する。遊離 基活性の高い材料は、上記の試験でより強くまたより早い脱色を生じることが知 られている。本発明の創傷用被覆剤に使用するのに適したポリマ材料は、通常、 4時間後に15〜80%の脱色を生じる。 【試験方法2:マクロファージ試験】 (a) マウスの腹膜滲出物細胞の調製 雌のWSPマウス(生後6〜12週)の腹膜空洞を0.5%の牛の新生児の血 清を含むイーグル媒質3mlで洗浄して休止マクロファージを採取した。数匹の マウスの細胞をプールして50Gでゆっくり遠心分離し血小板を除いた。洗浄物 中の核のある細胞の数は、白血球ピペットを用いて、アリコート(試料の一部) を 希釈度「10中の1」の塩水中、1%w/vゲンチアナ・ヴィオレットおよび2 %v/v酢酸からなる白血球希釈液と混合して求めた。これに続き血球計数器を 用いて細胞を計数した。洗浄物中のマクロファージの相対的割合はアルファーナ フチルアセテートエステラーゼ法を用いて計算した。この方法については、スチ ュアート、ハベショー、デビッドソンが「実験免疫学ハンドブック第2版」(ブ ラックエル科学出版:ロンドン)に記載している。この方法を実行するための適 当なキットは、「リサーチ・キット91−A」の商品名でシグマ・ケミカル社か ら発売されている。マクロファージのパーセント値は50〜65%の間で変化し た。使用前に、洗浄物は希釈して1.5〜2.5×107 細胞/mlを含むもの とした。 定量ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)試験。これはベーナーおよびネー サンらの「慢性肉芽腫疾病」(ニューイングランド、ジェイ・メッド)第278 巻(1968):971〜976頁に記載された定量NBT試験をベースにしてポリ マの試験ができるようにわずかに修正したものである。 実験は下記のようにして行なった。 [対照標準1] 3本のシリコン処理した遠心分離管にアールスの均衡塩類溶液(BSS)(0 .35ml)とシャン化カリウム(0.01Mの0.1ml)とを加えた。つぎ に0.1%NBTを含む塩化ナトリウム(0.80%の0.4ml)も加えた。 [対照標準2および実験管] 三本のシリコン処理した遠心分離管にBSS(0.35ml) とシャン化カリウム(0.01Mの0.1ml)とを加えた。つぎに0.1%N BTを含む塩化ナトリウム(0.85%の0.4ml)および0.05mlのラ テックス粒子(直径0.8ミクロン)も加えた。 上記の管を37℃の振とう水浴中で15分間前培養した。これらの前培養した 各管にマクロファージ懸濁液の0.1mlのアリコートを加えた。培養は30分 行ない、0.5N塩酸10mlを加えて終了させた。管は4℃、100Gにて1 5分間遠心分離した。表面浮遊物を吸い出すとともに、排気フード下の沸騰水浴 中で2mlのピリジンを用いて可視性の顆粒状粒子を10分間抽出した。つぎに 管を500Gで100分間遠心分離し、2mlのピリジンを用いて2回目の抽出 を行ない、二つの抽出物を組み合わせ、515nmでのピリジン・ブランクに対 する低下したNBTの紫色の光学濃度をPU8620紫外線分光光度計で求めた 。 [試験試料] 37℃の振盪水浴で30分間前培養したマクロファージ懸濁液0.1mlに、 試験するポリマの殺菌済み試料を加えた(0.1%w/v)。細胞が試料のポリ マに付着するのを防ぐために、懸濁液を攪拌し続ける必要があった。この懸濁液 の0.1mlのアリコートを実験用遠心分離管に加え、実験の残余部分は上述し たとおりに行なった。 結果は試料と対照標準との平均パーセント値の差で示した。 この試験方法によって、試験用ポリマに晒されたマクロファージの呼吸バース トを評価することができ、したがって創傷の環境下で起こり得る炎症刺激活性の 指標が得られる。 【試験方法3:フィブロブラストの菌株】 英国ハイワイコウムのICNフローからL929マウスのフィブロブラストを 入手した。 L929マウスのフィブロブラスト維持用菌株のための完全な成長媒質は、最 低必須媒質イーグル(変性)と、20mMのN−2−ヒドロキシエチルピペラジ ン−N’−2−エタンスルフォン酸(HEPES)に非必須アミの酸(1%v/ v)を加えたもの、2mLのL−グルタミン、100単位ml-1ペニシリン、1 00μgml-1ストレプトマイシン、および、10%の新生児の牛の血清(NB S)を含むアールの塩(EMEM)からなる。実験用菌株には、完全な成長媒質 にペニシリンとストレプトマイシンは加えなかった。 ストックのL929の細胞は液体窒素中に貯蔵した。新しい菌株は冷凍した株 から開始した。細胞を無菌の75cm3 菌株フラスコ内の完全なEMEM媒質の 中で37℃で成長させた。菌株は毎週継代させ、媒質は週3回交換した。この作 業の579回目および592回目の継代ではL929の細胞が用いられた。 細胞のトリプシン処理にはカルシウムおよびマグネシウムを用いずトリプシン (0.25%w/v)を含むアールの均衡塩類溶液(変性)が用いられた。 [第0日] L929マウスのフィブロブラスト細胞の懸濁液(1×105 細胞/ml)を 調製した。懸濁液5mlを25cm3 の各組織菌株フラスコに加えた。各実験ご とに三つの試験試料用フラスコと三つの対照標準用フラスコを調製した。菌株は 37℃で24時間 培養したが、その間に細胞はフラスコの表面に付着した。 試験用試料は下記のようにして殺菌した。ビーズを70%の水性エタノール中 において0.1%w/vの濃度で懸濁させ、3時間放置した。つぎに表面浮遊物 を傾瀉法で除去した。つぎに親水性ビーズを消毒水で3回洗浄した。疎水性ビー ズは95%の水性エタノールに1時間懸濁させた。いずれの場合も回収したビー ズは無菌キャビネット内で空気乾燥させた。 [第1日] 懸濁媒質を実験用フラスコから除去し、それを試験するポリマの試料を含む5 mlの媒質と交換した。対照標準のフラスコ内の媒質は、これを除去して5ml の新鮮な媒質と交換した。 [第3日および第6日] 第3日および第6日(それぞれ試験する試料を加えてから2日目および5日目 )に、一つの試験試料を入れた三つのフラスコと三つの対照標準を培養器から取 り出した。フラスコは手短にトリプシンで処理して細胞をフラスコおよび試料か ら、また、細胞相互から離すようにした。第6日では、細胞が強固に試料に付着 している場合にトリプシン処理は20〜30分間も要することが多かった。穏や かに振とうすると引き剥がしがうまくいった。細胞の損傷あるいは細胞の溶解を 避けるために強く振盪することは避けた。つぎにターナー、スピラツー、シュミ ットが「J.Pharm.Pharmacol」第41巻(1989):775〜780頁に記載し ているような血球計数計チャンバを用い、イメージアナライザを援用するか、ま たは、視覚で計数して細胞の濃度を測定した。 結果は試料および対照標準の細胞濃度の平均の間のパーセント 値の差であらわした。 この試験は、試料がフィブロブラストの増殖を剌激するかどうかを評価するも のである。フィブロブラストの増殖は、たとえば第3日と第7日との間など、創 傷の治癒の後の段階がとくに望ましい。 【実施例】 以下、実施例によって本発明を説明する。以下の説明中、部分および割合は、 他に指定のないかぎり重量である。 [実施例1] (a)ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)ビーズ(PHPMAビーズ) の調製 2Lの反応フラスコにリービッヒコンデンサと攪拌器とを装備し、これをサー モスタットバス内に配置して窒素で清浄した。水1L中に10gのポリ(N−ビ ニルピロリドン)(安定剤)を加えたものをフラスコに入れた。つぎに200g のヒドロキシプロピルメタクリレート(モノマー)、10gのエチレングリコー ルジメタクリレート(架橋剤)、および、0.525gのアゾビスイソブチロニ トリル(開始剤)の混合物を、フラスコを攪拌しながら徐々に加えた。サーモス タットバスによって温度を70℃まで上げ、反応混合物を4時間この温度に保持 した。ポリマビーズを回収し、洗浄して未反応モノマーを除去し、乾燥させた。 つぎに、得られたビーズをふるいに掛けて分別した。以下の例では、通常、直径 約100μmのビーズを用いた。 (b)s−トリアジン官能性をもつポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート) ビーズの調製 実施例1の(a)工程で説明した方法により調製した1gのPHMAビーズを 50mlのフラスコ内に10mlの12%水酸化ナトリウムと共に入れ、その混 合物を氷−塩のバス内で冷却した。4.6gのシアヌル酸塩化物(25mmol )を100mlのアセトンに溶かし、新鮮な溶液を氷−塩のバス内で冷却した。 この溶液20ml部分をビーズの懸濁液に攪拌しながら加えた。90分後、氷− 塩のバスから混合物を取り出し、さらに90分間放置した。ついで濾過によりビ ーズを回収し、50%水性アセトン、アセトン、および、水で順次洗浄した。 (c)誘導ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)ビーズの調製 実施例1の(b)工程で生成した処理済みビーズを、ついで他の50mlフラ スコに入れた後、溶液中にイプシロン−アミノカプロン酸8mmolを含む40 mlかつ0.5Mの水性燐酸塩緩衝液(pH7.8)で処理した。混合物は室温 で24時間放置し、その後に処理済みビーズと同様にして誘導ビーズを回収した 。これをエタノールで洗浄し、空気乾燥させた。このビーズに元素分析(とくに 窒素に関して)を行ない、誘導反応が起きたことを確認した。これらのビーズに は参照番号142を付した。 [実施例2] 実施例1(a)工程と(b)工程で説明した方法によりs−トリアジン官能性を もつPHPMAビーズを調製した。つぎに、イプシロン−アミノカプロン酸の代 わりにD−グルコースアミン用いた以外は実施例1(c)で説明したと同様の方 法で上記調製物を処理した。緩衝剤で処理したアミン溶液は、24後に傾瀉法で 捨てて 代わりに新鮮なアリコートを用い、その後、さらに24時間反応を継続させた。 誘導ビーズは上記と同様にして回収した。 [実施例3] 「セファデックスG25コース」の商品名でファーマシア社が発売している架 橋デキストランのビーズを水で洗浄して保存剤を除去し、実施例1の(b)工程 および(c)工程で説明した方法により処理した。 [実施例4] 「セファデックスG25コース」の商品名でファーマシア社が発売している架 橋デキストランのビーズを水で洗浄して保存剤を除去し、実施例1の(b)工程 および実施例2で説明した方法により処理した。これらのビーズには参照番号1 22を付した。 [実施例5] (a)デキストランビーズとジオキシランとの反応 10gのデキストランビーズ(セファデックスG25コース)を水洗し、蒸留 水で膨潤させた。膨潤したビーズの重量は47gであった。これを磁気攪拌器を 備えたフラスコ内に入れた。つぎに以下の試薬を順次加えた。(i)24mlか つ1MのNaOH、(ii)50mgのNaBH4、および、(iii)10mlのブ タン−1、4−ジオール・ジグリシジル・エーテル。5−7時間攪拌を続け、そ の後にビーズをガラス漏斗上で回収して水で十分に洗浄した。 (b)オキシラン官能性ビーズとジアミンとの反応 実施例5の(a)工程で調製したビーズを40mlの蒸留水中に10mlのエ チレンジアミンを含む溶液に加えた。混合物を一晩 放置した後に、ビーズをガラス漏斗上で回収して水で洗浄した。 (c)アミン官能性ビーズとジアルデヒドとの反応 実施例5の(b)工程により調製したビーズ10gを50mlの0.5M燐酸 塩緩衝液(pH7.5)に加えた。10mlの25%水性グルタルアルデヒドを 加えて混合物を一晩40℃で培養した。ビーズをガラスの漏斗上で回収してグル タルアルデヒドの臭いが残らなくなるまで水で洗浄した。 (d)アルデヒド官能性ビーズとアミンとの反応 実施例5の(b)工程により調製したビーズを、3.6gのD−グルコースア ミンを含む100mlの0.015M燐酸塩緩衝液(pH7.5)に加えた。混 合物を一晩放置した後、ビーズをガラス漏斗上で回収し、水およびアセトンで洗 浄して真空除湿器内で乾燥させた。 別個の調製物には参照番号128および129を付した。 [実施例6] 実施例5の(d)工程においてグルコースアミンに代えてイプシロン−アミノ カプロン酸を用いた以外は実施例5を繰り返した。別個の調製物には参照番号1 32および133を付した。 [実施例7] (a)アルデヒド官能性をもつポリ(アクリルアミド)ビーズの調製 10gのポリ(アクリルアミド)ビーズを80mlの0.05MでpH7.5 の燐酸塩緩衝液に加えた。20mlの50重量%水性グルタルアルデヒド溶液を 懸濁液に攪拌しながら加え、一晩40℃で培養した。ビーズをガラスの漏斗上で 回収してグルタル アルデヒドの臭いが残らなくなるまで水で洗浄した。 (b)アルデヒド官能性ビーズのアミンとの反応 実施例7の(a)工程で調製したビーズを実施例5の(d)工程で説明したよう にD−グルコースアミンで処理した。別個の調製物には参照番号130および1 31を付した。 [実施例8] 実施例7の(b)工程においてD−グルコースアミンの代わりにイプシロン− アミノカプロン酸を用いたほかは、実施例7で説明したようにしてポリ(アクリ ルアミド)ビーズを処理した。別個の調製物には参照番号134および135を 付した。 [実施例9] ベンゾキノンの官能性をもつポリ(ヒドロキシプロプルメタクリレート)ビー ズの調製 実施例1の(a)工程で説明した方法によりPHPMAビーズを調製した。1 gのPHPMAビーズを50mlのフラスコ内に入れ、0.3g(3mmol) の結晶させたばかりのベンゾキノンを10mlのエタノールに溶かした溶液で処 理した。30mlの0.5M水性燐酸塩緩衝液(pH7.2)を懸濁液を攪拌し ながら加えた。室温で60分放置した後、処理したビーズを瀘過して回収し、5 0%水性エタノール、エタノール、水、塩の溶液、および水で順次洗浄した。処 理したビーズは、それぞれ実施例1の(c)工程および実施例2で説明したよう にしてイプシロン−アミノカプロン酸およびD−グルコースアミンと反応させた 。 [実施例10] ポリマー材料について試験方法1〜3を用いて評価し、下記の 結果を得た。配列は試験方法1の結果にしたがったものである。 遊離基の活性に対するポリマー構造の作用にわずかな違いがあ ることが明らにわかる。マクロファージ試験(試験方法2)での最良の結果は、 試料142で得られた。この試料のDPPH試験(試験方法1)での結果は33 %であった。フィブロブラスト試験(試験方法3)での最良の結果は、試料13 2/133で5日後に得られた。この試料のDPPH試験での結果は66%であ った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CZ,DE,DK,ES,FI,GB,H U,JP,KP,KR,KZ,LK,LU,LV,MG ,MN,MW,NL,NO,NZ,PL,PT,RO, RU,SD,SE,SK,UA,US,UZ,VN (72)発明者 バロウ トーマス リチャード イギリス国 コバントリ シーブイ5 6 エヌイー オールバニロード 207 (72)発明者 ターナ テレンス ダドリ イギリス国 カーディフ シーエフ3 7 エーゼット コウルチェスタアベニュー 86 (72)発明者 シュミト リスザード ヤーン イギリス国 ペナース シーエフ64 3ア ールピー レイバノクロード 120 (72)発明者 チューグ リップ ヤン イギリス国 カーディフ シーエフ2 4 エーエー カーセイズ ソールズバリロー ド 35エー

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.本明細書で定義されるDPPH試験で遊離基活性が、15〜80%の範囲に ある化学的に変性させたポリマーからなる創傷用被覆剤。 2.ポリマーのDPPH試験での活性が50〜80%の範囲にある請求の範囲第 1項記載の創傷用被覆剤。 3.ポリマーのDPPH試験での活性が15〜70%の範囲にある請求の範囲第 1項記載の創傷用被覆剤。 4.持続性遊離基またはその前駆体である少なくとも一つの化学基を有する化学 的に変性させたポリマーからなる創傷用被覆剤。 5.傷の環境下で分子酸素と反応して過酸化水素を形成することのできる少なく とも一つの化学基を有する化学的に変性させたポリマーからなる創傷用被覆剤。 6.傷の環境下でマクロファージの活性またはフィブロブラストの増殖あるいは その両方を刺激することのできる化学的に変性させたポリマーからなる創傷用被 覆剤。
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