【発明の詳細な説明】三次元物体の表面に装飾層を積層するための方法および装置 発明の技術分野
本発明は膜プレスによって、三次元物体の表面に装飾層を被覆する方法に関す
る。この膜プレスは、膜によって分離されている各種の空圧に晒され得る2つの
チャンバを含み、チャンバの1つには装飾される物体が入り、この物体は装飾層
と接触される。装飾層は、膜に作用するチャンバ内の各種圧力によってプレスさ
れる。
本発明の他の目的は、三次元物体の表面に少なくとも1枚の装飾層を積層する
ための装置にあり、この装置はフード形の上側圧力チャンバ、圧力チャンバ内の
加熱手段、膜を固締して装飾層を圧力チャンバの下縁に形成する手段、被装飾物
体のための支持板、圧力チャンバと支持板のそれぞれを垂直に移動させて支持板
を互いに引離し被装飾物体の表面を装飾層と接触させる手段、圧力チャンバと膜
の間の空間に圧力を加える圧力手段、および膜と物体支持板との間の空間に吸引
力を加える吸引手段を含む。発明の背景技術
市場では各種の積層方法および装置が知られている。装飾シート材を大きな平
坦面に積層する装置は通常、シート材を平坦面上において展ばすための1つある
いは複数のローラを採用する。しかしながら、物体の表面が鋭角に曲っていたり
角ばっていると、装飾シート材を展ばすためにローラが常に使えるとは限らない
。なぜなら、ローラは鋭角部分や隅部に届くような形状になっていないからであ
る。
この種の他の装置は、鋭角あるいは屈曲した表面を有する。このような装置は
ベースと中空ヘッドを有し、その開放底部は柔軟薄膜つまり膜によって密閉され
ている(欧州公開特許第302703号)。使用に当っては被装飾三次元物体はベース
上に置かれ、装飾シートは物体の表面の上方に配される。その後、中空ヘッドが
物体上に載置され、膜は物体と接触する。次いで空気が中空ヘッド内に吸入され
薄膜は物体にぴったり接触して物体の形状となり、シート材は物体に付着する。
膜と膜プレスを含むこのような装置は、熱スタンプ薄片の装飾層を物体の表面に
積層するのにもまた用いられてきた。熱スタンプ薄片は、熱処理中に被装飾物体
の表面に貼布される。そのため、公知の積層装置は通常、物体の適用中の薄片に
熱を加えるための加熱手段を含む。上述の膜プレスの欠点は、使用される膜を比
較的厚くする必要があるということである。厚い膜を使うため、とくに鋭いカー
ブや隅部がある場合では膜は必ずしも物体の正確な形状には成り得ない。その結
果、積層は常に滑らかにゆくとは限らず、小さなしわやアワが形成されてしまう
。
また、このような装置には装置に個別の膜を使用することとなり、三次元物体
の表面に積層される膜として装飾シートを使うことができなくなる。例えば、米
国特許第1856694号、欧州特許第309601号、欧州公開特許第379844号、独国特許
第3706443号、独国特許第3801518号に記載の装置である。
これら公知の方法あるいは装置の共通特徴は、装飾シート材を比較的厚くして
、上側圧力および下側吸引チャンバ内の圧力差によって形成される力に耐えるの
に必要な安定性を持たせる必要があるということである。これらの問題は、装飾
シート材を加熱して柔かくする場合にとくに顕著である。なぜならこのような加
熱によって、シート材の強度はかなり低下するからである。しかしながら、比較
的厚いシート材を装飾層と膜として用いると、極めて鋭いカーブと鋭角とが装飾
されるべき三次元物体の表面にあるとき問題となる。もし装飾シート材を鋭角に
正しく追従させようとするなら、圧力および吸引チャンバ間に極めて高い圧力差
を形成しなければならない。このような圧力差はシート材を破る恐れがあり、し
たがって2チャンバ間の圧力差は零となり、装飾シート材は物体の表面にしっか
りと接着されることがなくなる。発明の開示
したがって、本発明の目的は、上記欠点を克服、少なくとも軽減するための方
法と装置を提供することにあり、比較的薄いつまり柔軟な装飾層を三次元物体の
実際上どんな表面にも積層することが可能とさせることにある。
この目的を達成するため、本発明による装飾層を三次元物体に積層させる方法
は膜として積層体を用いる。積層体はキャリアフイルム、少なくとも1つの装飾
ラッカー層、キャリアフイルムに積層される感熱接着層を含む。積層体は全体が
、
2つのチャンバ内の圧力差により物体表面に押圧される。圧力差は、積層体のフ
イルム側上の加圧チャンバ内の大気圧より高い圧力および/または接着層との積
層体の側における吸引チャンバ内の吸引力とによって形成される。キャリアフイ
ルムは、接着層が硬化し装飾層が物体表面に固着してから装飾層から剥される。
本発明の実施に際しては、個々の比較的厚い膜も、比較的厚い装飾シート材も
用いない。そのかわりに、キャリアフイルムと、少なくとも1つのラッカー層と
感熱接着層の組合せとからなる積層体を用いる。上記組合せはフイルムから容易
に離せるので、少なくとも1つのラッカー層が接着剤の硬化によって物体の表面
に接合された後でも剥がすことができる。装飾層は強度を必要とせず極めて薄い
ので、積層体の強度はキャリアフイルムの強さと安定性によってのみ決まること
はいうまでもない。このフイルムは1度しか用いないので、物体により伸びてそ
の後最初の形と大きさに戻る弾性材を用いる必要はない。このようにして、本発
明に用いる積層体のフイルムは物体の三次元表面を完全にカバーするために伸び
るかどうかの観点からのみ選択できる。フイルムは薄い、例えばポリエステルで
もよい。本発明による積層体は物体の表面形状にぴったり適合する。それにも関
わらず、フイルムあるいは積層体が、物体の表面への適用中に破れたりする恐れ
はない。本発明の極めて重要な特徴は、少なくとも1つの装飾ラッカー層は自由
に選べるため、物体の装飾の自由度が高まるということである。
積層体として長い帯状のものが用いられることが好ましく、これは物体の装飾
工程が終ると少しずつ移送され、フイルムは装飾層から剥がされ、同時に新しい
積層体部分がくり出されて次の物体の表面の装飾に消費される。用いられる積層
体は熱スタンプ薄片であって透明なキャリアフイルムを有するものが好ましい。
適当な薄片は必要な特性を考えて開発され得る。すなわち、フイルムとラッカー
層の十分な伸長性と、フイルムの十分な強度である。もしキャリアフイルムが透
明ならば、これは装飾ラッカー層と接着層を放射加熱し得るという点で好ましい
。
もし積層体が物体の表面に押付けられる前に加熱されると、フイルムは軟化し
接着層の活性化がなされ、装飾層は三次元物体の不整表面に密着され得る。
好ましくは、積層体の加熱は少なくとも2段階で行なわれる。つまり、異なる
加熱エネルギによって、2つのチャンバ内の圧力差は同時に変動する。この方法
を行うと、装飾積層体は物体の不整表面に最も良好に合致しうる。さらに、積層
体は漸進的に物体表面と接触するため、積層体には均等に力が作用する。
積層体の加熱は放熱灯、できれば短波長(λ=0.9から1.6μm)の赤外線を出
すランプによって行なわれることが好ましい。このような放熱灯を用いることに
より、加熱エネルギの転換を素早くかつ容易にでき、スイッチさえ切れば積層体
はすぐに冷却されるので有利である。さらに、装飾層は短時間で物体の表面に固
く接着する。反対に、厚手の膜あるいは装飾層を用いる場合、それらの加熱は熱
面をそれらに接触させて伝熱して行なわねばならない。このような熱面は迅速に
冷却されるものではない。同時に、厚手の膜あるいは層はかなりの時間にわたっ
て熱を保持しているため、接着剤が装飾層を物体に接合するために時間を要する
。この点本発明の積層体は作業を短時間で終了させることができる。
加工時間をさらに短縮するため、積層体は、物体表面に接着された装飾層から
フイルムを剥がす前に略室温にまで下げるのが望ましい。
本発明による方法の好ましい加工サイクルは次の段階を含む。
a)積層体に圧力あるいは吸引力を加えることなくこの積層体を予熱する(キャ
リアフイルムを軟らかくし展伸性を高めるため)、
b)物体表面の少なくとも一部分を積層体の接着および装飾層と接触させ(装飾
層を物体に予備接着させる)、
c)少なくとも2段階で積層体を加熱してゆき、同時に積層体の両面に吸引力と
圧力のそれぞれを加えて、積層体を物体に押付ける(このような積層体は物体の
三次元表面に滑らかに追従する)、
d)少なくとも吸引力が維持されている間に積層体を冷却する(装飾層を被装飾
物体の表面に密着維持するため)、
e)積層体の両側面のチャンバを排気する(一定の圧力状態を与えるため)、
f)接着剤が十分に硬化して装飾層が物体に固く接着したらキャリアフイルムを
剥がす。
フイルムの剥がしは通常、積層体を物体の装飾表面に対して横断方向に動かし
、装飾位置に積層体の新しい部分を移動させることによってなされる。段階dに
よる冷却を行うため、膜プレスの圧力チャンバは冷気て換気されその間吸引チャ
ン
バ内は吸引力が維持される。
少なくとも1つの装飾層を、上記方法を用いて三次元物体の表面に積層するた
めに好ましい装置は、上述の特徴を有するとともに、キャリアフイルム、少なく
とも1つの装飾ラッカー層、フイルムに積層された感熱接着層を含む積層膜は、
支持板と圧力チャンバの下縁の間に直接固締され、接着層は支持板と接触する。
このように少なくとも、接着層と接触する支持板の表面が接着層の軟化温度以下
に冷却される。圧力チャンバの下縁によって囲まれる開口を横切る膜として機能
する積層体を移送し伸長させるための供給手段と、放射加熱手段とが設けられる
。
本発明の装置は構造が簡単にも関わらず、上述の積層体とくに熱スタンプ薄片
により物体の三次元表面を装飾するとき良好な結果が得られる。この点について
、冷却された支持板が重要である。すなわち、積層体の装飾層が支持板に接着し
ないときだけ、本装置を永続的に作動させて、物体に接着された装飾層からキャ
リアフイルムを簡単に剥がすことが可能だからである。さらに、圧力チャンバと
支持板の間に積層体を直接固締することは、積層体が支持板に接着しないときだ
け可能である。このため供給手段は簡単な構造でよい。
各種の大きさの積層体を用いるには、圧力チャンバは積層体を支持板に固締す
るための下縁を備えた中間隔壁を交互に担持するための手段を有することが好ま
しい。これら隔壁は極めて簡単な構造になし得る。なぜなら積層体を支持板に押
付けて、隔壁と支持板間の空間を吸引しうるようにするだけでよいからである。
供給手段は積層体の貯蔵薄片を備えた巻取り機、圧力チャンバの下端と整列さ
れるガイドロール、物体から剥がされた後のフイルム上に残された装飾接着層用
の置き台を含むキャリアフイルム用の巻取りロールからなることが好ましい。上
記巻取り機はそれ自体公知のものであって本発明の装置に容易に採用できる。
上述したように、0.9から1.6μmの波長λをもつ加熱用の赤外線ランプを用い
ることが好ましい。この加熱手段は本発明の好適具体例によれば、水平および/
または垂直および/または角度的に調節できるため、任意の形状と大きさの被装
飾物体に用いられる。加熱ランプをいくつかのグループに分けてそれぞれ別々に
作動させることにより便利に用いることができる。
本発明によってもし物体を、その形状に合わせたベース板上に置いて支持板か
ら垂直方向に離し、ベース板の上方において水平方向に定置させ、次いで積層体
に本発明による圧力差を加えると、周辺縁からはみ出して物体の表面形状に追従
する。かくて、周辺縁も装飾層によって完全にカバーされる。
支持板の吸入用の中心開口を設け、ベース板をこの中心開口上に置き、空気路
をこの開口から物体の周囲の空間と支持板と積層体の間に通じさせることにより
構造を極めて単純にすることができる。とくに上記中心開口を用いることにより
、物体の形状によって様々な形のベース板を利用することができる。このような
ベース板は同じ支持板に嵌合される。同時に、空気路により、吸入作用あるいは
真空が支持板と積層体との間の空間全体に確実に得られる。
この構造においては、空気路はベース板と支持板との間の離隔エレメントから
なり、この実施例の場合、ベース板の下面と上面を連結する穴からなる。
物体を吸引素子によって支持板かベース板に保持することにより装飾後容易か
つ素早く移動できる。上記吸引素子は、支持板またはベース板の表面よりなるこ
とが好ましい。各板はガスケットによって包囲され、吸引ダクトと弁により吸引
手段に連結される。装置が物体用のベース板を含むとき、吸引素子はベース板の
上面に設けることが好ましい。ベース板は少なくとも1つの個別の吸引溝を有す
る。この溝は吸引素子を、支持板上の吸引ジョイントに連結する。この吸引溝は
ベース板内およびベス板下側の空気路と交差しない。上記ジョイントはまた、各
種のベース板に対して一元的に用いることができるため、ベース板の交換を迅速
に行うことができる。すなわち、ベース板を支持板上に置くだけで、ベース板の
吸引溝を支持板内の吸引ジョイントに連結することが可能となる。支持板と積層
体間の吸引真空は、いかなる場合でも得ることができる。なぜなら、ベース板は
必要な吸引空気用の通路を備えるからである。それにも関わらず、積層体と一方
の支持板との間の空間、および吸引素子のためのジョイントにおける吸引力は別
々に制御できうることはいうまでもない。
さらに、本発明による装置は、時間と放射熱の強度、そして圧力チャンバ内の
圧力の時間に対する変動、および吸引チャンバ内の吸引力をコントロールする制
御手段を備えることを特徴とする。この制御手段は、比較的自由な変動値をもっ
てコンピュータ制御され得る。制御手段は例えば、いくつかの加熱手段群のため
の別々の制御回路を含んでもよい。図面の簡単な説明
本発明を限定することなく、例示の目的のみで、本発明の一具体例を添付図面
を参照して説明し、同時に方法をより詳細に説明する。
第1図は、本発明の装置を一部縦断面で示す略図的前面図、
第2図は、装置の側立面図、
第3a図,第3b図は、2つの異なる位置における装置の最重要部分、つまり
フード形圧力チャンバ、支持板、ベース板、加熱手段を詳細に示す縦断面図、
第4図は、作動サイクル中の2つのチャンバにおける時間に関する圧力変動を
示す線図
第5図は、作動サイクル中の時間に依る2つの群の加熱手段の強度を示す線図
、実施例
図示のように装置は熱スタンプ薄片の装飾層を便座に積層するために用いられ
る。つまり、便座のような輪形材を装飾する場合、ベース板の構造に特殊な工夫
が必要である。それにも関わらず、装置の基礎構造は被装飾三次元物体に関係な
く同じである。「三次元物体」なる用語は常に、少なくとも数ミリの厚さと、面
より外側に突き出る被装飾表面とを有する物体のことをいうものである。したが
って、装飾層を適用するための公知のロール法を適用することはできない。
第1図および第2図に示すように、装置は枠1を有する。枠1の上部には、上
面2aと側壁2bからなるフード形圧力チャンバ2が担持される。第1,2およ
び3図に示すように、圧力チャンバ2の側壁2bの下縁はすべて支持ガスケット
3と同じ高さにある。ガスケットの目的は後述する。
圧力チャンバ2は放射加熱手段4a,4bを収容する。本実施例の場合、放射
加熱手段はツイン筒形の赤外線ランプであって、0.9〜1.6μmの波長λの赤外線
短波を放射する。各ランプは2つの群、つまりランプ4aの外側群とランプ4b
の内側群とに分けられる。両群は4つのツインランプからなり、外側ランプ4a
は圧力チャンバ2の壁2bに沿う矩形状に配置され、内側ランプ4aは平行に配
置される。本装置の特徴によれば、外側ランプと内側ランプとを別々に作動さて
、被装飾物体の外側と内側とを異なる強度の放射熱で加熱することができる。
ランプ4aと4bは圧力チャンバ2の側壁2bと頂面2aとに取り付けること
ができるため、それらの位置は水平方向、垂直方向および/または角度を変更す
ることができる。第3a,3b図によれば、この変更は例えばガイドレール5を
用い、これに沿ってランプ4aと4bを水平方向に移動させることにより可能と
なる。垂直方向の場合は、長さを変えられるホルダ6が設けられる。ランプ4a
と4bはジョイント7で連結されるので、各ランプはホルダ6に対して傾けられ
る。つまり、ランプ4aはランプ4bと比較して位置が相違する。
第1図および第2図に示すように、圧力チャンバ2は垂直壁を備えた付加隔壁
9を交互に取り付けることができる手段8を有する。これの下縁にもガスケット
3が設けられており、圧力チャンバ2の側壁2bの下縁と同し高さである。付加
隔壁9は、圧力チャンバ2を種々サイズの積層体に適用できるものとし、小さな
積層体が用いられた場合でも、それが確実に支持板に固く固締されるようにする
ために設けられている。
枠1にはさらに積層体10を供給する手段が設けられる。これらの供給手段は貯
蔵ロール11を備えた巻取り機を含み、ロール11には用いられる積層体が十分な量
だけ蓄えられる。さらにいくつかの案内ロール12が設けられ、その内2個は第3
a,3b図に明示されるように、側壁2bあるいは圧力チャンバ2の隔壁9の下
縁と整列される。さらに、巻取り手段は、装飾および接着層の残りと共に、積層
体10のキャリアフイルムを巻取るためのロール13を有する。各層の残りは、フイ
ルムが被装飾物体から剥がされた後、フイルム上に残されたものである。巻取り
手段はさらにそれ自体公知の緊張手段を備えていることはもちろんである。第2
図に示す位置にある積層体10は、装飾層を物体に積層する前の状態である。
装置はさらに、第1図と第2図に示すようにピストン・シリンダ手段16によっ
て垂直運動を行うようにトラバース15に担持された支持板14を含む。トラバース
15を支持板14に対して正確に案内するために、ガイド棒17が設けられており、こ
のガイド棒17は枠1上のガイド18と協働する。
第3a,3b図に示すように、支持板14は側壁2bの下縁のガスケット3と協働
する担体面19と、両者間の積層体10を固締めするための圧力チャンバ2の隔壁9
とを有する。
感熱セメントからなる積層体10の接着層が支持板14の表面19に絶対に付着つま
り接着しないようにするため、支持板14は作動中の接着層の軟化温度以下にまで
冷却される。このために支持板14はダクト20を備えており、冷却液は一連のダク
ト20に、弁22付のパイプ21を経て入り、弁24付のパイプ23から出る。これら弁に
よりダクト20を通る冷却液の流量が個々に制御される。第3a,3b図はさらに
、支持板14の表面19に吸引開口25があり、これは導管16によって吸引手段(図示
せず)に連結されて弁27によって制御されることを示す。吸引ジョイント28はベ
ース板29の吸引素子を吸引導管26に連結し、従って吸引手段(図示せず)にも連
結する。ジョイント28における吸引力は弁30によって制御される。
第3a,3b図はベース板29上の被装飾物体31の位置を示す。第1,2および
3図に示すように、物体31はベース板をこえて水平方向に突出する必要がある。
さらにベース板29があるので物体31は、支持板14の表面19から垂直方向上向きに
ある程度離間される。
第3a,3b図に示すように、ベース板29の頂面32の形状は、物体31の形状に
合わせられる。物体は本実施例の場合便座であり輪形をなすため、ベース板の上
面32も輪形で中央にへこみ33がある。
物体31をベース板29に固定するため特別の吸引素子を設けるため、ベース板は
吸引溝34を備えており、この溝は物体に適用される表面32からジョイント28に通
じている。第3a,3b図に示すように、吸引溝34は2つのガスケット35によっ
て画定される領域内のベース板29の表面32上で終了している。これは、2つの輪
形ガスケット35、ベース板29の頂面32、物体31の下面で囲まれる空間が、吸引ジ
ョイント28と弁30を介して排気され、物体31がベース板29に吸着されることを意
味する。
ベース板29はさらに、ベース板29の下面と支持板14の上面19との間に左空気路
36を有する。これらの空気路36は図に示す実施例の場合、離隔素子44で形成され
る。しかしながら、このような空気路は、他の手段たとえば支持板14とベース板
29の間に蛇腹形多孔メタルシールを入れても形成することができる。さらに、ベ
ース板29のくぼみ33は穴37によって、ベース板29の下側にある空気路36と連結さ
れる。空気路36と穴37を介して、支持板14の頂面19にある吸引開口は、第3図に
示す位置にある積層体10の下側の全空間と連通される。その結果、支持板14の表
面19と積層体10の間の全空間は真空になる。したがって、ベース板29と物体31を
収容する吸引チャンバ38が形成される。このチャンバ38は、圧力チャンバ2の隔
壁9あるいは側壁2bの各下縁のガスケット3を介して支持板14に押し付けられ
る積層体10と支持板14によって画定される。
圧力チャンバ2内の圧力は、それぞれ弁41,42付のパイプ39,40を用いて空気
を導入あるいは排除することにより制御することができる。両側のパイプ39,40
は圧力チャンバ2の内部に連通され、内部空間が確実に排気されることが望まし
い。
上述の装置を用いる物体装飾は、以下のようにして行なわれる。
支持板14は第1および2図に示すように下方位置に移されるが、この位置は第
3図に示す位置より下側にある。この位置において物体31はベース板29上に置か
れ、吸引力によってベース板29上に固着される。この目的のために、弁30が開か
れ、物体の下側、2つの輪形ガスケット35、ベース板29の頂面32で囲まれた空間
は排気される。
さらに、次の積層体が移されて、圧力チャンバ2の側壁2bあるいは隔壁9の
下縁とガスケット3に接着される。十分な長さの積層体がロール11からくり出さ
れて、対応する長さのフイルムが別のロール13に巻き付けられる。積層体10は、
キャリアフイルムが圧力チャンバ2の側面により、装飾層と接着層は下端が下向
きであって被装飾物体31の表面に接触して積層されるような位置に配される。
通常、積層体10は公知の熱スタンプ薄片であって、少なくとも透明キャリアフ
イルム、1枚の装飾ラッカー層、そしてこの場合は感熱接着層をこの順序で含む
。熱スタンプ薄片の製造から分るように、装飾ラッカー層は加熱して活性化され
ると粘着力が増し表面に付着する性状のものとすることもできる。熱スタンプ薄
片は1枚だけでなく数枚の装飾ラッカー層を備えるが、これは特別な形状のもの
でもよいことは言うまでもない。この薄片は公知であるから詳しい説明は省略す
る。
例えば被装飾物体の表面に適用される極めて特殊なラッカー層あるいは接着剤
を用いて、個々の目的に合うようにされたものであれば他の種類の積層体を用い
てもよいことはもちろんである。いずれにしても装飾ラッカー層を物体に積層し
た後で、フイルムをラッカー層から容易に剥がせるものである必要がある。
物体31をベース板29上に置き、十分な長さの積層体10を圧力チャンバ2の下側
の作動位置に移動するとピストン・シリンダ機構16が作動して支持板14はベース
板29と物体31と共に圧力チャンバ2に向って上昇する。この結果、物体31の頂面
は第3a図に示すように積層体10の接着層と装飾層とゆっくり接触する。積層体
10の巻取りあるいは供給手段内に設けられた緊張手段(図示せず)により、積層
体は圧力チャンバ2の底に架橋したまま緊張維持されて物体31の上昇に追従した
圧力チャンバ2内に入り、第3b図に示す状態になる。
支持板14が第3b図の位置に達すると直ちに、圧力チャンバ2の側壁2bある
いは隔壁9の下縁にあるガスケット3と支持板14の頂面19との間でクランプされ
る。この結果、圧力チャンバ2内の空間は積層体10によって膜状に2つのチャン
バに分けられる。つまり、積層体10の上側の正圧チャンバ43と積層体の下側の吸
引チャンバ38であり、チャンバ38内のベース板29上には被装飾物体31が置かれる
。
第3b図の位置に達すると、積層工程が始まる。
積層体をより容易に引伸ばし、柔軟にするため、加熱ランプ4a,4bを吸引
チャンバ38が最終的に閉じる前に一時的に作動してもよい(第3b図)。例えば
約5秒間点灯できる。
チャンバ38,43が閉じると、直ちに加熱強度は高められる。この場合、少なく
とも2段階で高めるのがよい。ランプ4a,4bは2つの群に分けられるので、
各群を異なる強度で作動させてもよい。このような工夫は被装飾物体31の形状に
よって必要となる。
加熱ランプ4a,4bで積層体10を強く加熱するのと同時に、積層体10の上側
のチャンバ43は加圧される。たとえば、パイプ39の弁41が開いて空気が空間43に
入るが、この時パイプ40の弁42は閉じられている。同時に弁27が開くため、吸引
手段からの吸引力は空気路36とベース板29の穴37を介して空間38に加えられる。
加熱で多少柔軟かつ弾力的になりつつある積層体10は、空間38内の吸引力と空
間43内の圧力によって物体10の上面に向けて吸引され押付けられる(第3b図で
破線10′で示す)。
空間43内の圧力と空間38内の真空つまり吸引力が最終値に達すると、この値は
しばらく保持される。次いでランプ4a,4bのスイッチが切られるが、少なく
とも空間38内の吸引力は維持される。
このように、積層体10の接着層を冷却して、装飾層を物体31の装飾表面に固く
接着させる必要がある。
積層サイクルを短縮するには、圧力チャンバ2内の空間43を冷却空気で入れ換
える必要がある。このためにはパイプ40内の弁42を単に開き、冷却空気を空間32
に循環させればよい。この換気中、空気38内の吸引力は保持される。
十分な換気が終了すると、弁42は再度閉じられ、その後空間43内の圧力が高め
られる。この圧力は再び積層体10に作用し、これを装飾表面に押付ける。この押
圧工程は、例えば約10秒間行なわれる。
これが終了すると、装飾ラッカー層は物体31の表面に固く接着されたものと考
えられる。したがって、常圧に戻すことが可能となり、少なくとも弁42が開かれ
る。しかしながら、同時に弁41を閉じることもできる。この時弁27は閉じられる
。次に行なわれる空間38の換気は、支持板14を圧力チャンバ2とガスケット3に
対して下向きに動かすことによって簡単に行なわれる。積層体10が圧力チャンバ
2の底開口を覆って張力により伸びると、積層体10の少なくとも一部が支持板14
の頂面19から離れる。支持板14をさらに下降させると、積層体10のキャリアフイ
ルムは物体31の表面から剥がれ、装飾層と接着層のそれぞれは物体31に付着する
。支持板14が第1,2図に示す位置に達すると直ちに、積層体10は物体31から完
全に離れ、基本的に水平の位置に定置されて、圧力チャンバ2の底開口は閉じら
れる。このようにして弁30が閉じて物体31の下側に作用する吸引力は消えるので
、物体はベース板29から容易に取り外すことができる。
上述の各工程は加熱時間および加熱温度、圧力と吸引力をそれぞれ変えること
によって、各種の積層体と物体に適用することができる。さらに、少なくとも2
つの加熱素子群を採用して異なる強度の放射熱を利用することが可能である。
第4および5図は典型的な加工サイクルを示す。第4図の線図は空間43の圧力
チャンバ内の圧力と吸引チャンバ38内の吸引力のそれぞれを示し、第5図は赤外
線ランプの内側群と外側群の加熱サイクルを示す。
第4および5図に示す第1期間t1は予備時間であって、この間に支持板14が
必要量だけ移動し物体31がベース板29上に載置される。この運動中に、加熱手段
は期間p1に比較的低い熱量を与えられるが、内側群の加熱手段の強度は外側群
の強度より低い。
期間t2間に空間38,43が閉じると、直ちに空間43には圧力が空間38には吸引
力が生じ(第4図)、空間38に完全吸引力が生じる前に、空間43内には圧力が形
成される。約35秒間の期間t2には4つの異なる加熱期間がある。すなわち、低
熱量の加熱期間p1、内側群と外側群のランプにより高い熱量を加える期間p2
である。圧力チャンバすなわち空間43に完全圧力が形成されると、直ちに3番目
の加熱期間p3が始まる。この期間中、内側ランプは約80%の強度で作動し、外
側ランプ群は約90%の強度で作動する。本発明によれば、期間p3,p4中にお
いては、装飾層と被装飾物体によって定められる各種の強度で機能する。
十分な加熱時間が経過すると、すなわち期間p4が終了すると、開始期間t3
中、異なる圧力状態が形成され、この期間中弁41,42を開くことにより圧力チャ
ンバ2内の空間43は新しい空気で換気される。この換気期間は約10秒であって、
積層体は実質的に冷却されて層は確実に物体31の表面に付着する。4番目の期間
t4中において加熱条件が変化しなくとも(すなわち、加熱手段がオフされるな
どしなくとも)、圧力チャンバ内の圧力は弁42を閉じることによって再び上昇す
る。期間t4もまた10秒ほどである。十分高い圧力に達すると、直ちに圧力空間
43と吸引チャンバ38の最終換気が開始される。第4図に示すように期間t5は約
15秒である。
第4および5図に示すように、装飾層が確実に物体に付着するように、圧力チ
ャンバと吸引チャンバ間の圧力差が減少した後、直ちに加熱スイッチを切ること
が極めて重要なことが分かる。
圧力差と加熱条件の制御および、ピストン・シリンダ機構16による支持板14の
運動のコントロールは、コンピュータを用いると最も良い結果が得られる。多数
の試行が可能となるからである。テストを繰り返した結果、加熱手段の強度は0
から100%の間で変更することができ、圧力条件(t1からt5)と加熱条件(
p1からp5)を変化させるための期間は0と約60秒の間で変更することができ
る。
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(71)出願人 ビツォウニス,アタナシソス
南アフリカ共和国 2094 ヨハネスブルグ
デンヴァー メイン リーフ ロード
319
(71)出願人 ウィリアムス,ロイ エルウィン
南アフリカ共和国 アルバートン ブラッ
ケンフルスト ストレリツィア ストリー
ト ナンバー 11
(72)発明者 ビツォウニス,スピロス
南アフリカ共和国 2094 ヨハネスブルグ
デンヴァー メイン リーフ ロード
319
(72)発明者 ビツォウニス,アタナシソス
南アフリカ共和国 2094 ヨハネスブルグ
デンヴァー メイン リーフ ロード
319
(72)発明者 ウィリアムス,ロイ エルウィン
南アフリカ共和国 アルバートン ブラッ
ケンフルスト ストレリツィア ストリー
ト ナンバー 11
(72)発明者 シュペルテ,ヴィルフリート
ドイツ連邦共和国 ディーイー 8507 オ
ベラスバッハ キルヒェンヴェーク 79
(72)発明者 ヴィルト,ハインリッヒ
ドイツ連邦共和国 ディーイー 8510 フ
ュルス ゲラニエンヴェーク 8