JPH0840935A - 家禽類のコクシジウム症に対して免疫を付与する方法 - Google Patents

家禽類のコクシジウム症に対して免疫を付与する方法

Info

Publication number
JPH0840935A
JPH0840935A JP6193855A JP19385594A JPH0840935A JP H0840935 A JPH0840935 A JP H0840935A JP 6193855 A JP6193855 A JP 6193855A JP 19385594 A JP19385594 A JP 19385594A JP H0840935 A JPH0840935 A JP H0840935A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
poultry
feed
trypsin inhibitor
coccidiosis
tiu
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP6193855A
Other languages
English (en)
Inventor
Yukihiro Motozono
幸広 本薗
Shiyokei Ri
書慶 李
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nisshin Seifun Group Inc
Original Assignee
Nisshin Seifun Group Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nisshin Seifun Group Inc filed Critical Nisshin Seifun Group Inc
Priority to JP6193855A priority Critical patent/JPH0840935A/ja
Publication of JPH0840935A publication Critical patent/JPH0840935A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Feed For Specific Animals (AREA)
  • Fodder In General (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines Containing Plant Substances (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】 トリプシンインヒビター(TI)含量が2.5×1
06〜6.0×106TIU/kgの飼料を家禽類の雛に少なくとも14
日令まで継続して給与して家禽類のコクシジウム症に対
して免疫を付与する方法及びそのための飼料。 【効果】 本発明による場合は、家禽類にコクシジウム
症に対して免疫を付与して家禽類のコクシジウム症によ
る斃死率を大幅に低減させ且つ家禽類を順調に生育させ
て体重増加を達成することができ、しかも抗生物質や化
学薬剤等を使用しないので副作用の発現、薬剤の使用に
よるコクシジウム症に対する薬剤耐性の問題、それらの
薬剤の人体への移行が生ずることがなく、また高価な常
山等を用いず生大豆や卵白等のTIを飼料中に少量添加
するだけなので、安全にかつ経済的に家禽類をコクシジ
ウム症から保護しつつ生産できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、家禽類のコクシジウム
症に対して免疫を付与する方法およびそのための飼料に
関する。詳細には、家禽類のコクシジウム症に対する免
疫を付与して、家禽類にコクシジウム原虫が寄生して
も、発育が阻害されたり、斃死したりすることがなく、
順調に生育させることのできる免疫付与方法およびその
ための飼料に関する。
【0002】
【従来の技術】鶏、七面鳥、うずら、ほろほろ鳥等の家
禽類のコクシジウム症は、寄生性のコクシジウム原虫の
感染によって起こる伝染病であり、世界的に多く発生し
ている。コクシジウム症は例えば鶏ではアイメリア・テ
ネラ(Eimeria tenella)、アイメリア・アセルブリナ
(E.acervulina)、アイメリア・ネカトリツクス(E.necat
rix)、アイメリア・ブルネツテイ(E.brunetti)、アイメ
リア・マキシマ(E.maxima)などにより、七面鳥ではアイ
メリア・メレアグリミテイス(E.meleagrimitis)、アイ
メリア・アデノイデス(E.adenoides)、アイメリア・ガ
ロパボニス(E.gallopovonis)などの寄生性原虫により引
き起こされることが知られている。これに感染した家禽
類は下痢、血便等の症状を呈し、治療が遅れた場合また
は症状が重い場合は斃死することも多く、斃死に至らな
い場合であっても発育が阻害される。特にブロイラーな
どの家禽類の飼育に当たっては、所定面積の飼育舎に多
数羽の家禽類を過密状態に入れて飼育することが広く行
われていることから、コクシジウム症が一旦発生すると
多数羽の家禽類が同時に感染して発病し、その被害が甚
大なものとなり易い。
【0003】家禽類へのコクシジウム原虫の寄生部位、
家禽類体内でのコクシジウム原虫の発育状態(発育
環)、病原性などはコクシジウム原虫の種類、家禽類の
種類などによってそれぞれ異なる。例えば、アイメリア
・テネラによって引き起こされる鶏のコクシジウム症の
場合は、アイメリア・テネラの成熟卵であるオーシスト
が餌などと一緒に鶏の口ばしによってついばまれて体内
に摂取され、これが鶏の筋胃で機械的な消化を受けてオ
ーシストの殻が破れてオーシスト中に含まれているスポ
ロシストが鶏の小腸に放出される。次いで、小腸に放出
されたスポロシストは小腸壁から分泌されるトリプシン
の作用を受けてスポロシストの殻が消化されて消失した
り破れて、スポロシスト中に含まれているスポロゾイト
が鶏の腸管内に放出される。このスポロゾイトが盲腸の
管壁に寄生して順にシゾント、ガメサイトおよびオーシ
ストへと変態すると共に盲腸壁に比較的大きな病巣をつ
くり、最後に未成熟オーシストとして鶏の総排泄腔より
糞便などと一緒に体外に排出されるという発育環を伴っ
て発生し、この発育環が通常約1週間程度で繰り返され
る。そして、盲腸壁における病巣が大きくなると、場合
によっては出血性腸炎を起こして斃死に至る。
【0004】鶏は餌だけでなく糞便などの餌以外のもの
を口ばしでついばんで体内に摂取する習性を有してお
り、そのため糞便などと一緒に排出されたコクシジウム
原虫のオーシストが餌や糞便などと一緒に鶏の体内に繰
り返して摂取されるという悪循環があり、特に糞便が溜
まり易い床構造を有する鶏舎で飼育されるブロイラーな
どの床飼(別名「平飼」または「フロアペン飼育」)に
おいては、一旦コクシジウム症が発生すると、これが同
じ鶏舎内に過密状態で飼育されている多くのブロイラー
に直ちに伝染、蔓延してその被害が極めて大きなものに
なる。
【0005】従来は、家禽類のコクシジウム症の予防や
治療に当たっては、抗生物質、合成抗菌剤からなる化学
療法剤およびワクチン等の生物学的製剤が主に使用され
てきた。しかしながら、抗生物質や化学療法剤では副作
用の発現、薬剤への耐性獲得による効果の減退等の問題
があり、またワクチンの場合は専ら予防のみであり治療
には使用できなかった。しかも、それらの薬剤を投与し
た家禽類の肉や卵等を人間が食用とする場合には、家禽
類の体内に残留した薬剤の人体への移行の問題があり、
その使用量や投与期間に厳しい制限が必要であった。
【0006】
【発明の内容】かかる点から、本発明者らは、上記のよ
うな問題がなく、安全性の高い抗コクシジウム剤を得る
ことを目的として研究を行ってきた。そして、コクシジ
ウム症に感染した家禽類の腸管内ではトリプシン等の蛋
白質分解酵素の活性が異常に上昇していること、したが
ってトリプシンの活性を低下または失わせる物質、すな
わちトリプシンインヒビターを投与すると、家禽類のコ
クシジウム症を予防および治療できることを見出し、生
大豆、卵白、タンニン酸等のトリプシンインヒビターを
活性成分として含む抗コクシジウム剤を発明し、先に出
願した(特許第1490286号;特公昭63−383
24号参照)。そして、本発明者らは上記のような研究
を更に続けた結果、トリプシンインヒビターの一つであ
る生大豆と共に生薬の一種である常山を併用すると家禽
類のコクシジウム症が効果的に予防および治療できるこ
とを見出して特願平3−87245号(特開平4−30
0837号)として出願した。
【0007】本出願人による上記した特許第14902
86号の発明の抗コクシジウム剤および特願平3−87
245号の発明の抗コクシジウム剤は、いずれも家禽類
のコクシジウム症の治療に対して効果があり、これらの
抗コクシジウム剤をコクシジウム症に感染した家禽類に
投与することによって、家禽類がコクシジウム症で斃死
するのを大幅に低減させることができる。
【0008】そして、特許第1490286号および特
願平3−87245号の発明はいずれも、家禽類の体内
に寄生したコクシジウム原虫を完全に殺して家禽類のコ
クシジウム症感染を完全に無くすことを主たる目的とし
てなされており、そのため特許第1490286号の発
明では抗コクシジウム剤として作用する生大豆などのト
リプシンインヒビターを実際には極めて多量に家禽類に
投与している。そのため、特許第1490286号の発
明では、家禽類の体内に寄生したコクシジウム原虫がほ
ぼ完全に殺傷されて家禽類のコクシジウム症がほぼ完全
に治癒されるが、その一方で消化酵素としてして機能す
るトリプシンの活性が多量のトリプシンインヒビターの
使用によって大幅に低減されて、家禽類が本来有してい
る消化機能の低下を招き易く、その結果、コクシジウム
症による斃死は低減されるものの、家禽類の消化機能が
低下し、場合によっては下痢などの消化不良を生じ易く
なり、生育が充分に行われず体重が順調に増加しにくく
なっている。しかも、抗コクシジウム剤として用いられ
る生大豆などのトリプシンインヒビターは他の飼料用原
料に比べて割高であるため、家禽類の生産コストの上昇
につながり易い。
【0009】また、特願平3−87245号の発明も家
禽類の体内に寄生したコクシジウム原虫をほぼ完全に殺
すことを目的としているために、生大豆と共に生薬の一
種である常山の使用を必須にしており、極めて多数羽の
家禽類を一度に育成する養鶏業などでは、高価な常山の
使用は家禽類の生産コストの大幅な上昇を招き易く、そ
の実用化が行いにくいという点がある。またこの特願平
3−87245号の発明による場合は、常山は生薬では
あっても薬剤の一種であることに変わりがなく、しかも
常山は単独で販売されることが少なく他の化学薬剤など
と混合して販売されていることが多いので、家禽類のコ
クシジウム症の治療や予防を化学薬剤やその他の薬剤を
使用せずに行うということは実際は困難である。
【0010】上記のような状況下に、本発明者らは、コ
クシジウム症による家禽類の斃死を単に防止するだけで
はなく、消化不良などを無くして、家禽類を順調に生育
させることのできる家禽類のコクシジウム症の治療方法
および予防方法、更には高価な剤や原料などを使用する
ことなく、経済的に家禽類をコクシジウム症から守るこ
とのできる方法を求めて更に研究を続けてきた。その結
果、家禽類にコクシジウム症に対する免疫を付与して飼
育すれば、コクシジウム症に多少感染してもその抵抗力
によって斃死に至るような重い症状にならず、しかも消
化不良などの栄養障害を生じず、順調に生育させて体重
増加などを図ることができるのではないかという点に想
到した。そして、それを実現すべく検討を重ねた結果、
家禽類を飼育するに当たって、少量の所定量のトリプシ
ンインヒビターを含有する飼料を継続して給与すると、
家禽類の雛にコクシジウム症に対する免疫が付与され
て、家禽類の体内にコクシジウム原虫が寄生しても、体
内におけるコクシジウム原虫の増殖が抑制されて、発病
したり斃死したりすることがなくなり、健康またはほぼ
健康な状態を保ちながら順調に生育することを見出して
本発明を完成した。
【0011】すなわち、本発明は、トリプシンインヒビ
ターを2.5×106〜6.0×106TIU/kgの割
合で含有する飼料を家禽類の雛に少なくとも14日令ま
で継続して給与することを特徴とする家禽類のコクシジ
ウム症に対して免疫を付与する方法である。
【0012】更に、本発明は、トリプシンインヒビター
を2.5×106〜6.0×106TIU/kgの割合で
含有する飼料を家禽類の雛に21日令まで継続して給与
した後、トリプシンインヒビターを2.5×106
9.0×106TIU/kgの割合で含有する飼料を2
2日令から出荷までの家禽類に継続して給与することを
特徴とする家禽類のコクシジウム症に対して免疫を付与
する方法である。
【0013】そして、本発明では、家禽類の糞便中に含
まれるコクシジウム原虫のオーシスト数が5×10〜5
×105個/gであるように家禽類をコクシジウム症に
軽く感染させた状態で上記の方法を行って、家禽類のコ
クシジウム症に対して免疫を付与する方法をその好まし
い態様として包含する。
【0014】更に、本発明は、トリプシンインヒビター
を2.5×106〜6.0×106TIU/kgの割合で
含有することを特徴とする摂餌開始から21日令までの
家禽類の雛に給与するための飼料、トリプシンインヒビ
ターを2.5×106〜9.0×106TIU/kgの割
合で含有する22日令以降の家禽類に給与するための飼
料、並びにそれらの飼料を組み合わせた家禽類用飼料を
包含する。
【0015】上記した本発明の方法および飼料は、家禽
類を好ましくはコクシジウム原虫に軽く感染させながら
コクシジウム症に対して免疫を付与して、発病するのを
防止し、家禽類がコクシジウム症で斃死したり発育不良
に陥ったりするのを抑制するものであり、かかる点で、
家禽類に寄生したコクシジウム原虫の完全な殺傷、すな
わちコクシジウム症の完全治癒または完全予防を主たる
目的としてなされた上記した特許第1490286号お
よび特願平3−87245号の発明とは、その基本とす
る技術思想が相違しており、かかる点でこれらとは技術
内容が大きく異なっている。
【0016】本発明では、家禽類が摂餌開始後、少なく
とも14日令に達するまでの飼育期間に亙って、トリプ
シンインヒビターを2.5×106〜6.0×106TI
U/kgで含有する飼料を家禽類に継続して給与するこ
とが少なくとも必要である。ここで、本発明でいう「ト
リプシンインヒビターを2.5×106〜6.0×106
TIU/kgの割合で含有する飼料を少なくとも14日
令まで家禽類の雛に継続して給与する」とは、卵からか
えった家禽類の雛が最初に餌を摂取する時点から少なく
とも14日令に達するまでの飼育期間に雛に給与される
飼料がトリプシンインヒビターを2.5×106〜6.
0×106TIU/kgの割合で含有する飼料からなっ
ていて、且つそのようなトリプシンインヒビター含有飼
料を常法にしたがって少なくとも14日令まで毎日雛に
給与することを意味する。
【0017】少なくとも14日令までの飼育期間に給与
する飼料中のトリプシンインヒビターの含有量が2.5
×106TIU/kg未満であると、家禽類の雛に対し
てコクシジウム症に対する免疫を付与することができな
くなり、一方6.0×106TIU/kgよりも多い
と、コクシジウム症感染による斃死は抑制できるもの
の、消化不良を起こし易くなって、雛が順調に生育しな
くなる。少なくとも14日令までの飼育期間に、雛に対
してコクシジウム症に対する免疫の付与を確実に達成で
き且つその飼育期間の雛の消化吸収能を低減させないと
いう点からは、少なくとも14日令までの飼育期間に給
与する飼料中におけるトリプシンインヒビターの含有量
は3.0×106〜5.0×106TIU/kgであるの
が好ましく、3.0×106〜4.0×106TIU/k
gであるのが更に好ましい。
【0018】また、トリプシンインヒビター含量が2.
5×106〜6.0×106TIU/kgである飼料を継
続して給与する期間は、摂餌の開始から14日令以上で
あれば、家禽類の雛に対してコクシジウム症に対するを
免疫を円滑に付与することができる。しかしながら、コ
クシジウム症に対する免疫を確実に付与する点からは、
トリプシンインヒビター含量が2.5×106〜6.0
×106TIU/kgである飼料を少なくとも19日令
まで継続して給与するのが好ましく、少なくとも21日
令まで継続して給与するのが一層好ましい。なお、本願
明細書では、14日令、19日令または21日令までの
飼育期間を総称して以下で「飼育前期」ということがあ
る。
【0019】そして、本発明では、家禽類の飼育前期に
おいて、飼育前期の雛をその糞便1g中に含まれるコク
シジウム原虫のオーシスト数が5×10〜5×10
5個、好ましくは1×102〜5×104個であるように
して雛をコクシジウム症に軽く感染させた状態で、トリ
プシンインヒビターを上記の割合で含有する飼料を継続
して給与するのが望ましく、そのようにすることによっ
て飼育前期の雛にコクシジウム症に対して一層高い免疫
力を付与することができる。すなわち、飼育前期の雛を
そのようにしてコクシジウム症に軽く感染させた状態で
トリプシンインヒビター含量が2.5×106〜6.0
×106TIU/kgである上記した飼料を飼育前期の
雛に給与する場合は、雛の体内にはコクシジウム原虫が
寄生しているものの、雛の排泄する糞便中のコクシジウ
ム原虫のオーシスト数はコクシジウム症の症状(発病状
態)を示す106個/g以上にまでは増加せず、通常、
5×105個/g以下に抑えられて、コクシジウム症に
感染していても発病したり斃死したりすることがなくな
り、消化不良や下痢血便などの症状を示さず、良好な生
育状態を保ちながら飼育することができる。
【0020】家禽類の雛をコクシジウム症に軽く感染さ
せながらトリプシンインヒビターを含有する上記した飼
料を給与する場合に、家禽類の雛が自然にコクシジウム
症に軽く感染していて糞便1g中のコクシジウム原虫の
オーシスト数が5×10〜5×105個であるときは、
トリプシンインヒビターを2.5×106〜6.0×1
6TIU/kgの割合で含有する飼料を給与して飼育
を行えばよい。そして、家禽類の雛がコクシジウム原虫
に自然感染している場合は、雛の糞便中のコクシジウム
原虫のオーシスト数は常時一定のレベルにはなく、一般
に増えたり減ったりするので、飼育前期の雛が、そのよ
うな糞便中のコクシジウム原虫のオーシスト数の増減の
ピークを2回以上経験するようにして雛をコクシジウム
原虫に軽く感染させながら本発明の免疫付与方法を行う
と、一層効果がある。
【0021】一方、雛の糞便中のコクシジウム原虫のオ
ーシスト数が5×10個/g未満であって雛の体内にコ
クシジウム原虫がほとんど寄生していない場合、すなわ
ち雛がコクシジウム原虫に自然感染していないか、また
は感染していてもその程度が極めて低い場合には、雛に
コクシジウム原虫のオーシストを投与して、糞便中のコ
クシジウム原虫のオーシスト数が上記した範囲になるよ
うに雛を軽くコクシジウム症に感染させて飼育を行うの
が好ましい。その場合に、卵からかえったばかりの雛は
抵抗力が弱いので、コクシジウム原虫のオーシストの投
与は5日令以降の雛に対して行うのが好ましく、雛の糞
便中のコクシジウム原虫のオーシストを例えば5日置
き、7日置きというように定期的に調べて、その結果に
応じてコクシジウム原虫のオーシストの投与を所定の間
隔をあけて、飼育前期の期間中に2乃至3回程度行うと
よい。
【0022】そして、本発明では、摂餌開始後、少なく
とも14日令まで、好ましくは少なくとも19日令にま
で、更に好ましくは少なくとも21日令までの家禽類の
雛にトリプシンインヒビターを2.5×106〜6.0
×106TIU/kgの割合で含有する飼料を給与する
ことによって、それ以降出荷まで期間(以下これを「飼
育後期」ということがある)に給与される飼料中におけ
るトリプシンインヒビターの含有量が2.5×106
IU/kg以下であっても(例えばトリプシンインヒビ
ター含有量の少ない通常の飼育後期用の飼料を使用して
出荷まで飼育を行っても)、コクシジウム症による発病
がなく、生育状態の良好な家禽類を極めて低い斃死率で
生産して出荷することができる。
【0023】しかしながら、トリプシンインヒビターを
含有する飼料の給与期間が長いほどコクシジウム症によ
る斃死率の低減、雛の成長促進の点でより効果があるの
で、トリプシンインヒビターを含有する飼料を出荷まで
給与するのが一層好ましい。そして、飼育前期にトリプ
シンインヒビター含有量が2.5〜6.0×106TI
U/kgの飼料を継続して給与した後、更にトリプシン
インヒビターが2.5×106〜9.0×106TIU/
kgの飼育後期用の飼料を出荷時点まで更に継続して給
与して飼育した場合には、それによってコクシジウム症
に対して一層高い免疫が付与された生育状態の極めて良
好な家禽類を、その斃死を一層抑制しながら生産するこ
とができ、極めて望ましい。
【0024】なお、上記において「トリプシンインヒビ
ターを2.5×106〜9.0×106TIU/kgの割
合で含有する飼料を飼育後期の家禽類に継続して給与す
る」とは、前記の飼育を終了した雛、好ましくは21日
令に達した雛に対して、それ以降から出荷までの飼育期
間に亙ってトリプシンインヒビター含量が2.5×10
6〜9.0×106TIU/kgである飼料を常法にした
がって継続して給与することを意味する。
【0025】そして、本発明では、家禽類の飼育後期に
おいても、飼育前期の雛におけるのと同様に、雛の糞便
1g中に含まれるコクシジウム原虫のオーシスト数が5
×10〜5×105個/であるようにしてコクシジウム
原虫に軽く感染させた状態でトリプシンインヒビターを
2.5×106〜9.0×106TIU/kgの割合で含
有する上記した飼料を継続して給与するのが望ましく、
そのようにすることによってコクシジウム症に対して一
層高い免疫力を付与することができる。一般に、雛の排
泄する糞便中のコクシジウム原虫のオーシスト数が5×
10〜5×105個/糞便1gであるように雛をコクシ
ジウム原虫に軽く感染させた状態でトリプシンインヒビ
ター含有量が2.5〜6.0×106TIU/kgであ
る飼料を継続して給与して前期の飼育を行った後、更に
トリプシンインヒビター含量が2.5×106〜9.0
×106TIU/kgである飼育を継続して給与して後
期の飼育を行った場合には、飼育後期の雛の糞便中には
通常5×10〜5×105個/糞便1g程度の数のコク
シジウム原虫のオーシストが含まれているのことが多い
ので、飼育後期の雛に外部からコクシジウム原虫のオー
シストを積極的に投与しなくても、雛をコクシジウム原
虫に軽く感染させた状態で飼育が行われることとなる。
【0026】ここで、本発明でいう飼料中におけるトリ
プシンインヒビターの含有量は、飼料1kg中に含まれ
るトリプシンインヒビターの含有量であって、下記のよ
うにして測定したときの値をいう。
【0027】飼料中のトリプシンインヒビター含有量の
測定法:Cereal Chemistry 51
3,376−382(1974)に記載されているM.
L.Kakadeらの方法に準じて、飼料中のトリプシ
ンインヒビター含有量を測定した。 (1)試薬・試液の準備または調製:トリス緩衝液 :トリス(ヒドロキシメチルアミノメタ
ン)6.05gと塩化カルシウム2水和物2.94gを
900mlの水に溶かし、1N塩酸溶液でpHを8.2
に調整し、これに水を加えて全体を1000mlとして
トリス緩衝液(0.05M;pH8.2;0.02M塩
化カルシウム含有)を調製する。基質(BAPA)溶液 :ベンゾイル−DL−アルギニ
ン−p−ニトロアニリド(BAPA)塩酸塩(メルク社
製)40mgをジメチルスルホキシド1mlに溶解し、
上記で調製したトリス緩衝液(温度37℃)を加えて全
量を100mlとして、37℃で保存する(用時調
製)。トリプシン溶液 :トリプシン(2回再結晶したもの;
塩類を含まず)(Worthington Biochemicals Corp.)
40mgを正確に測り、0.001M塩酸溶液200m
lに溶解する(冷蔵保存で2〜3週間安定)。0.01N水酸化ナトリウム水溶液 30%酢酸
【0028】(2)試料の調製:粉末試料はそのまま用
い、固形試料(丸大豆など)は冷却型粉砕機で粉砕し
て、100メッシュ通過のものを試料として用いた。 (3)検液の調製:上記(2)で調製した試料1gを精
密に計り、上記の0.01N水酸化ナトリウム溶液5
0mlを加えて、60分間撹拌して抽出を行う(この懸
濁液のpHは通常9.5〜9.8)。懸濁液のpHが
8.4未満の場合はpHが8.4〜10.0になるよう
に高濃度の水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを調製
して、前記の抽出を再度行う。遠心分離(3000rp
m、10分間)または濾過(No.5B濾紙)により不溶
物を除去した後、必要に応じて上記の0.01N水酸
化ナトリウム水溶液を用いて液を希釈して、次の(4)
に記載する操作法による場合にトリプシン活性を40〜
60%阻害するような液を調製して、検液とする。
【0029】(4)操作法:個々の試験管に上記(3)
で調製した検液をそれぞれ0ml、0.6ml、1.0
ml、1.4mlおよび1.8mlの割合で計って入
れ、水を加えて全量を2.0mlとする。個々の試験管
に上記のトリプシン溶液を2.0mlずる加えた後、
37℃の水浴に入れる。それぞれの試験管に予め37℃
に保温しておいて上記のBAPA溶液5.0mlを加
えて混合する。正確に10分経過後に、上記の30%
酢酸1.0mlを加えて混合して反応を停止させる。反
応を停止させた上記のそれぞれの液をNo.5Cの濾紙
を用いて濾過し、得られたそれぞれの濾液の410nm
における吸光度を、試薬ブランク液を対照にして測定す
る(試薬ブランク液の410nmにおける吸光度をゼロ
に補正してそれぞれの濾液の410nmの吸光度を測定
する)。ここで、試薬ブランク液としては、上記のト
リプシン溶液2.0ml、水2.0ml、上記の30
%酢酸1.0mlおよび上記のBAPA溶液5.0m
lを混合したものを用いる。試料として大豆を用いた場
合には410nmでの吸光度がほとんどゼロに近いの
で、試料ブランク液については、特別の場合以外は使用
する必要がない。もし必要な場合は、上記(3)のよう
にして調製した検液2.0mlに上記のBAPA溶液
5.0mlを加え、37℃に10分間放置した後、上記
の30%酢酸1.0mlを加え、更に上記のトリプ
シン溶液2.0mlを加え、次いで濾過して試料ブラン
ク液を調製するとよい。
【0030】上記の測定および下記の力価(トリプシン
インヒビター活性)の計算は、検液0mlのときのトリ
プシン活性を100%として、この活性を40〜60%
阻害する検液量を求めて行われる。なお、測定されたそ
れぞれの吸光度から、試料ブランク液の吸光度を差し引
くときは、計算によって個々の試料ブランク液の補正吸
光度を求める(例えば、試料ブランク液の吸光度がAb
であるとすると、トリプシン活性を40〜60%阻害す
る検液の採取量が0.6mlのときには、補正吸光度の
値はAb×0.6/2.0となる)。
【0031】(5)力価(トリプシンインヒビター活
性)の計算:次式によりトリプシンインヒビター活性
(TI活性)を算出する。
【0032】
【数1】(i) 試料ブランク液を用いなかった場合: TI活性(TIU/mg)={(A0−Ax)/0.01}×(1/B)×D×(50/
W)×10-3 (ii) 試料ブランク液を用いた場合: TI活性(TIU/mg)={A0−(Ax−Ab×B/2)}/0.01×(1/B)
×D×(50/W)×10-3 式中、A0=検液0mlのときの吸光度 Ax=トリプシン活性を40〜60%阻害する範囲のとき
の吸光度 B =Axのときの検液量(ml) D =希釈率 W =試料採取量(g)
【0033】トリプシンインヒビターは蛋白質分解酵素
の一種であるトリプシンの活性を阻害する蛋白質であっ
て動・植物界に広く分布し、家禽類の飼料として一般に
用いられているトウモロコシ、マイロ、大豆粕、ナタネ
粕などにもトリプシンインヒビターが含まれている場合
が多い。しかしながら、従来の家禽類の飼料では、飼育
前期用の飼料および飼育後期用の飼料のいずれにおいて
も、トリプシンインヒビターの含有量は一般に2.5×
106TIU/kg未満であって、本発明で必要として
いる2.5×106TIU/kg以上には達しない。そ
こで本発明では、飼育前期に給与する飼料ではそのトリ
プシンインヒビター含有量が2.5×106〜6.0×
106TIU/kgの範囲になるように、また場合によ
り飼育後期に給与する飼料中のトリプシンインヒビター
含有量が上記した2.5×106T〜9.0×106TI
U/kgになるように、飼育前期用の飼料にトリプシン
インヒビターを添加してそれを家禽類に給与することが
必要である。
【0034】本発明では、飼料中に添加するトリプシン
インヒビターの種類は特に制限されず、家禽類に対して
悪影響を与えないものであればいずれでもよい。本発明
で使用し得るトリプシンインヒビターの例としては、生
大豆、卵白、全卵、フスマ、米糠、生小麦、馬鈴薯、落
花生、低変性脱脂大豆、タンニン酸、タンニン酸アルブ
ミン、桂皮、クコなどのトリプシンインヒビターを多く
含む天然の化合物や物質、またはそれらの化合物や物質
から分離したトリプシンインヒビター、或いはトリプシ
ンインヒビターを産生する微生物[例えばActinomycete
s(放線菌)など]またはそのような微生物から分離し
たトリプシンインヒビターなどを挙げることができ、こ
れらは単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよ
い。そのうちでも、本発明では、生大豆粉、卵白、全
卵、フスマ、米糠などのトリプシンインヒビターを多く
含む物質の1種または2種以上を使用するのが安全性、
経済性などの点から好ましく、生大豆、卵白、米糠が特
に好ましく用いられる。その場合に、生大豆、卵白、米
糠などのトリプシンインヒビター含有物質は粉状または
液状にして用いるのが飼料への配合の容易性および雛に
よる摂餌性などの点から好ましい。
【0035】家禽類の飼育前期に用いる飼料の内容(例
えば飼料用原料、配合組成など)、調製法などは、トリ
プシンインヒビターの含有量が上記した2.5×106
〜6.0×106TIU/kgの範囲である限りは特に
制限されず、家禽類の種類や日令などに応じて、従来用
いられている既知の飼料および飼料の調製法のいずれも
が使用できる。一般に飼育前期用の飼料は、飼育後期用
の飼料に比べて、粗蛋白質、ビタミン類およびミネラル
類の含有量を多くする一方で、総カロリーを低く調整し
てあり、本発明においてもそのような飼育前期用の飼料
を使用するのが好ましい。例えば、ブロイラーなどの鶏
用の飼料としては、トウモロコシ、マイロ、大豆粕、ナ
タネ粕、魚粉、油脂、炭酸カルシウム、リン酸カルシウ
ム、ビタミン類、ミネラル類などを用いて、これにトリ
プシンインヒビター含有量の多い上記した生大豆、卵
白、その他の材料を配合して飼料中におけるトリプシン
インヒビターの含有量を2.5〜6.0×106TIU
/kgに調節して使用することができる。
【0036】飼育前期用の飼料における生大豆などのト
リプシンインヒビター含有成分の配合量は、トリプシン
インヒビター含有成分中におけるトリプシンインヒビタ
ーの含有量、ベースとなる飼料中に元々含まれるトリプ
シンインヒビターの含有量などに応じて変わり得るが、
通常の鶏用の飼育前期用飼料中のトリプシンインヒビタ
ー含有量は一般に約2.1×106TIU/kg前後で
あり、一方生大豆中におけるトリプシンインヒビターの
含有量は一般に約45×106TIU/kg前後(約4
1×106〜48×106TIU/kg)であるので、生
大豆を用いる場合は、生大豆を生大豆を含めた飼育前期
用飼料の全重量に基づいて約1〜10重量%の割合で含
有させるとトリプシンインヒビター含有量が2.5〜
6.0×106TIU/kgの飼育前期用の飼料を得る
ことができる。また、トリプシンインヒビター含有物質
として卵白を用いる場合は、卵白中のトリプシンインヒ
ビター含有量は一般に約115×106TIU/kg前
後(約110×106〜120×106TIU/kg)で
あるので、卵白をも含めた飼料の全重量に基づいて、卵
白を約0.5〜7.5重量%の割合で含有させるとトリ
プシンインヒビター含有量が2.5〜6.0×106
IU/kgの飼育前期用の飼料を得ることができる。前
期用飼料の家禽類の雛への給与方法は何ら制限されず、
常法にしたがって給与すればよく、例えば飲料水と共に
自由に摂取させればよい。
【0037】飼育後期用飼料中のトリプシンインヒビタ
ーの含有量は、特に制限されず、トリプシンインヒビタ
ー含有量が2.0×106TIU/kg前後である従来
既知の飼育後期用の飼料をそのまま給与してもよい。し
かしながら上記したように、本発明では、飼育後期用の
飼料におけるトリプシンインヒビター含有量を2.5×
106〜9.0×106TIU/kgに調整しておくのが
望ましく、4.5×106〜6.0×106TIU/kg
に調整しておくのがより望ましい。そしてその飼料をで
きるだけ長く、より好ましくは出荷まで継続して給与す
ることによって、飼育前期に家禽類の雛に付与されたコ
クシジウム症に対する免疫が飼育後期にもそのまま円滑
に継続して付与されて、家禽類をその斃死率を大幅に低
減させながら且つその生育状態を極めて良好に保ちなが
ら、家禽類の飼育、生産を行うことができる。トリプシ
ンインヒビター含有量が2.5×106〜9.0×106
TIU/kgである飼育後期用の飼料の調製に当たって
は、通常の鶏用の飼育後期用飼料中のトリプシンインヒ
ビター含有量は一般に約2.0×106TIU/kg前
後であるので、これに生大豆、卵白、その他のトリプシ
ンインヒビター含有物質を加えて、飼育前期用の飼料の
場合と同様にして、トリプシンインヒビターの含有量が
2.5×106〜9.0×106TIU/kgである飼育
後期用の飼料を調製すればよい。
【0038】家禽類の飼育後期に用いる飼料の内容(例
えば飼料用原料、配合組成など)、調製法などは特に制
限されず、家禽類の種類や日令などに応じて、従来用い
られている既知の飼料および飼料の調製法のいずれもが
使用できる。一般に飼育後期用の飼料は、飼育前期用の
飼料に比べて、粗蛋白質、ビタミン類およびミネラル類
の含有量を少なくする一方で、総カロリーを高く調整し
てあり、本発明においてもそのような飼育後期用の飼料
を使用するのが好ましい。飼育前期用の飼料と同様に、
ブロイラーなどの鶏用の飼育後期用の飼料は、例えば、
トウモロコシ、マイロ、大豆粕、ナタネ粕、魚粉、油
脂、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ビタミン類、
ミネラル類などを用いて製造することができる。 飼育後期用の飼料の家禽類への給与方法も何ら制限され
ず、従来既知の方法で行えばよい。
【0039】更に飼育前期用飼料および/または飼育後
期用飼料中にトヨイ菌(Bacillustoyoi)、納豆菌(Bac
illus natto)、枯草菌(Bacillus subtillus)、宮
入菌(Clostridium butyricum)、ビフィズス菌(Bifi
dobacterium thermophilum)、乳酸菌(Lactobacillus
acidophilus)のうちの1種または2種以上を同時に
含有させておくと、コクシジウム症に対する免疫付与だ
けでなく、クロストリジウム、キャンピロバクター、大
腸菌などの細菌性感染症の予防や治療をも行うことがで
きる。
【0040】本発明の方法および飼料は、鶏、七面鳥、
うずら、ガチョウ、ほろほろ鳥等の家禽類、特に床飼
(別名「平飼」または「フロアペン飼育」)と称され
て、鶏の総排泄腔から排泄された糞便が床に溜まったま
ま飼育が行われることの多い飼育法に適しており、その
うちでも所定面積の鶏舎に多数羽の雛を詰め込んで床飼
によって飼育を行うことが多く、そのためコクシジウム
症への感染率やコクシジウム症の発生率の高いブロイラ
ーの飼育に対して特に適している。
【0041】
【実施例】以下に実施例などにより本発明を具体的に説
明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下
の例中、糞便中のコクシジウム原虫のオーシスト数の測
定は次のようにして行った。
【0042】糞便中のコクシジウム原虫のオーシスト数
の測定法:鶏の飼育鶏舎の新鮮糞便20gを採取し、容
量500mlのプラスチックビンに入れ、これに水38
0mlを加えてよく混合した後(希釈倍率20倍)、1
〜2時間静置する。これを駒込ピペットでよく混合した
後、固形物をピペット内に吸い込まないようにして液を
ピペットで採取し、プランクトン計算盤上に、45°の
傾斜角度で1滴落とし、18mm×18mmのカバーグ
ラスを載せて水平に置く。プランクトン計算盤上を9視
野程度観察してコクシジウム原虫のオーシストのおおま
かな数を確認する。プランクトン計算盤には、1mmの
幅で18列の線が刻まれてあり、その1列に20以上の
オーシスト数が観察される場合は、任意に選んだ3列分
のオーシスト数を数えて、1列当たりの平均値を算出す
る。1列当たりのオーシスト数が20未満の場合は、オ
ーシスト数を正確に知るために、プランクトン計算盤上
の全オーシスト数を数える。前記で数えたコクシジウム
原虫のオーシストを、その大きさおよび形態によって以
下の表1に示す4種に区別し、それぞれのオーシスト数
を測定する。
【0043】
【表1】 コクシジウム原虫の種類 オーシストの大きさ(μm) オーシストの形状 アイメリア・テネラ 22.0×19.0 卵円形 アイメリア・アセルブリナ 18.3×14.6 卵円形 アイメリア・ネカトリツクス 20.4×17.2 細長い卵円形 アイメリア・マキシマ 42.5×21.5 卵円形
【0044】次いで、以下の計算法により、糞便1g当
たりのコクシジウム原虫のオーシスト数を算出する。な
お、以下の計算のために、使用した駒込ピペットで採取
した1mlの液が、ピペットから滴下させた場合に何滴
になるかを確認しておく。
【0045】
【数3】(1)プランクトン計算盤上の全オーシスト数
を数えた場合: オーシスト数(個/糞便1g)=Na×C×D (2)プランクトン計算盤上の3列のオーシスト数を数
えて1列当たりの平均を採った場合: オーシスト数(個/糞便1g)=N1×C×D×18 [但し、上記式中、Na=プランクトン計算盤上の全オ
ーシスト数、N1=プランクトン計算盤上の1列当たり
のオーシスト数の平均値、C=駒込ピペットによる液1
ml当たりの滴数、D=希釈倍率(20倍)を示す]
【0046】《実施例 1》 (1) 1日令のチャンキー雄の雛(平均体重約46.
4g/羽)を80羽/区の割合で6区準備した。 (2) 下記の表2に示す飼育前期(1〜21日令)用
の基礎飼料および飼育後期(22〜42日令)用の基礎
飼料を準備した。
【0047】
【表2】 [基礎飼料] 前期用飼料 後期用飼料 配 合(重量部): トウモロコシ 40.0 45.0 マイロ 16.5 20.4 大豆粕 30.0 14.0 ナタネ粕 3.0 8.0 魚 粉 5.0 5.0 油 脂 3.0 5.4 炭酸カルシウム 0.8 0.9 リン酸カルシウム 1.2 1.0 ビタミンミックス 0.2 0.1 ミネラルミネラル 0.3 0.2 合 計 100.0 100.0 粗蛋白質含有量(%) 23 18 熱量(Kcal/kg) 3050 3200 トリプシンインヒビター 2.1×106 2.0×106 (TIU/kg)
【0048】(3) 第1区〜第6区の雛に対して下記
の表3に示した飼料を給与し、飲料水と共に自由に摂取
させて6週間(42日令まで)飼育した。
【0049】
【表3】
【0050】(4) また、上記した飼料の給与と共
に、5日令に第1区〜第6区の全区に対して、12日令
に第3区〜第6区の4区に対して、更に19日令に第4
区〜第6区の3区に対して、コクシジウム原虫のオーシ
ストを雛1羽につき1回当たり20000個(内訳:ア
イメリア・テネラ6000個、アイメリア・アセルブリ
ナ8000個、アイメリア・ネカトリツクス4000
個、アイメリア・マキシマ2000個)の割合で経口で
感染させた。 (5) 12日令、19日令、26日令、33日令およ
び40日令おいて糞便中のコクシジウム原虫の合計オー
シスト数(個/糞便g)を上記した方法で数えたところ
下記の表4に示すとおりの結果であった。更に、42日
令において各区ごとに雛の平均体重の測定と生存率を調
べたところ、下記の表5に示すとおりの結果であった。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】上記の表4および表5の結果から、トリプ
シンインヒビターの含有量が3.4×106TIU/k
gの飼料を19日令まで給与し、それ以後はトリプシン
インヒビター含有量が2.1×106TIU/kg以下
の通常の飼料を給与して飼育した第2区の場合は、第1
区に比べて、糞便中のコクシジウム原虫のオーシスト数
が減少しており、コクシジウム症に対する感染の程度が
軽く、しかも生存率も向上していて、増体重も大きくな
っており、生育状態が改良されていることがわかる。
【0054】そして、上記の表4および表5の結果から
は、21日令の時点までトリプシンインヒビターを2.
5×106〜6.0×106TIU/kgの範囲で含有す
る飼料を継続して給与している第3区〜第5区の場合に
は、雛の排泄する糞便中にはコクシジウム原虫のオーシ
ストが含まれるものの、その数はいずれの時点でも5×
105個/g以下で且つ大半の場合に104個/gのオー
ダーにあって雛の体内に寄生するコクシジウム原虫の増
殖が抑制されていて雛にコクシジウム症に対する免疫が
付与されていること、そしてその結果、第3区〜第5区
では42日令における雛の生存率が極めて高く(斃死率
が極めて低く)、しかも増体重が大きく良好に生育して
いることがわかる。そして、本発明の範囲内のトリプシ
ンインヒビター含有量を有する飼料を21日令以降も継
続している第4区および第5区、特に第5区の場合は、
コクシジウム症に対する感染状態がより低く保たれてい
て良好な免疫状態が付与されていて、生存率が一層高
く、しかも増体重が一層大きく、発育状態が極めて良好
であることがわかる。
【0055】それに対して、トリプシンインヒビターの
含有量が2.5×106TIU/kg未満である従来の
飼料を給与して飼育した第1区の場合は糞便中のコクシ
ジウム原虫のオーシスト数はいずれの時点でも105
/g以上であり場合によってはコクシジウム症の重症状
態を示す106個/g以上になっていて、コクシジウム
症に対する免疫が付与されておらず、その結果雛の生存
率が低く(斃死率が高く)、しかも増体重が小さくて、
生育状態が不良であることがわかる。
【0056】更に、21日令の時点までトリプシンイン
ヒビターを9.0×106TIU/kgという極めて多
量に含む飼料を継続して給与し、且つ22日令〜42日
令まではトリプシンインヒビターを13.5×106
IU/kgという極めて多量に含む飼料を継続して給与
している第6区の場合は、糞便中のコクシジウム原虫の
オーシスト数が極めて少なく、雛の体内に寄生するコク
シジウム原虫の数が大幅に減って、生存率は高くなって
いるが、増体重が小さく、生育状態が不良であることが
わかる。
【0057】
【発明の効果】本発明による場合は、家禽類のコクシジ
ウム症に対して良好な免疫を付与することができ、それ
によって家禽類の斃死率を大幅に低減させる(生存率を
大幅に高める)ことができると共に、家禽類を消化不良
など生ずることなく、順調に生育することができ、増体
重の大きい家禽類を円滑に生産することができる。ま
た、本発明による場合は、抗生物質や化学薬剤などの抗
コクシジウム剤を使用しないですむために、それらの使
用に伴う副作用の発現や、薬剤の使用によるコクシジウ
ム症に対する薬剤耐性の問題を生じない。
【0058】しかも、本発明による場合は、抗生物質や
化学薬剤などの抗コクシジウム剤を使用しないので、家
禽類の肉や卵等を人間が食用としても、それらの薬剤が
人体に移行するという問題がなく、安全で薬剤の無添加
の家禽類の肉や卵などを消費者に提供することができ
る。更に、本発明による場合は、高価な常山などを用い
る必要がなく、しかも生大豆や卵白などのトリプシンイ
ンヒビターを飼料中に少量添加するだけで家禽類にコク
シジウム症に対して良好な免疫を付与することができる
ので、安全にかつ経済的に家禽類をコクシジウム症から
保護しつつ生産することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C12N 9/99

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トリプシンインヒビターを2.5×10
    6〜6.0×106TIU/kgの割合で含有する飼料を
    家禽類の雛に少なくとも14日令まで継続して給与する
    ことを特徴とする家禽類のコクシジウム症に対して免疫
    を付与する方法。
  2. 【請求項2】 トリプシンインヒビターを2.5×10
    6〜6.0×106TIU/kgの割合で含有する飼料を
    家禽類の雛に21日令まで継続して給与した後、トリプ
    シンインヒビターを2.5×106〜9.0×106TI
    U/kgの割合で含有する飼料を22日令から出荷まで
    の家禽類に継続して給与することを特徴とする家禽類の
    コクシジウム症に対して免疫を付与する方法。
  3. 【請求項3】 家禽類の糞便中に含まれるコクシジウム
    原虫のオーシスト数が5×10〜5×105個/gであ
    るように家禽類をコクシジウム症に軽く感染させた状態
    で家禽類に対して免疫を付与する請求項1または2の方
    法。
  4. 【請求項4】 トリプシンインヒビターを2.5×10
    6〜6.0×106TIU/kgの割合で含有することを
    特徴とする21日令までの家禽類の雛に給与するための
    飼料。
  5. 【請求項5】 トリプシンインヒビターを2.5×10
    6〜9.0×106TIU/kgの割合で含有する22日
    令以降の家禽類に給与するための飼料。
  6. 【請求項6】 請求項4の飼料および請求項5の飼料を
    組み合わせた家禽類用飼料。
JP6193855A 1994-07-27 1994-07-27 家禽類のコクシジウム症に対して免疫を付与する方法 Pending JPH0840935A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6193855A JPH0840935A (ja) 1994-07-27 1994-07-27 家禽類のコクシジウム症に対して免疫を付与する方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6193855A JPH0840935A (ja) 1994-07-27 1994-07-27 家禽類のコクシジウム症に対して免疫を付与する方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0840935A true JPH0840935A (ja) 1996-02-13

Family

ID=16314880

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP6193855A Pending JPH0840935A (ja) 1994-07-27 1994-07-27 家禽類のコクシジウム症に対して免疫を付与する方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0840935A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004002527A1 (ja) * 2002-06-28 2004-01-08 Ghen Corporation 抗鶏コクシジウム症組成物
WO2006101162A1 (ja) * 2005-03-24 2006-09-28 Sakoda Bio Labo Co., Ltd. 動物飼育用床敷材料、病原性微生物の増殖抑制剤、病原性微生物の増殖抑制方法、動物の飼育方法および飼料
CN102940153A (zh) * 2012-12-06 2013-02-27 山东新希望六和集团有限公司 一种改善肉质、蛋质的家禽饲料
CN103494013A (zh) * 2013-08-27 2014-01-08 安徽省瑞森生物科技有限责任公司 一种香椿肉鸡饲料及其制备方法
CN103931932A (zh) * 2014-03-27 2014-07-23 太仓市永发农场专业合作社 鹅绒增产的养殖饲料
WO2019244929A1 (ja) 2018-06-20 2019-12-26 住友化学株式会社 サバディラ種子を含む飼料添加組成物
CN113615639A (zh) * 2021-06-22 2021-11-09 贵州省畜牧兽医研究所 一种优质肉鸡林下生态养殖方法

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004002527A1 (ja) * 2002-06-28 2004-01-08 Ghen Corporation 抗鶏コクシジウム症組成物
WO2006101162A1 (ja) * 2005-03-24 2006-09-28 Sakoda Bio Labo Co., Ltd. 動物飼育用床敷材料、病原性微生物の増殖抑制剤、病原性微生物の増殖抑制方法、動物の飼育方法および飼料
CN102940153A (zh) * 2012-12-06 2013-02-27 山东新希望六和集团有限公司 一种改善肉质、蛋质的家禽饲料
CN103494013A (zh) * 2013-08-27 2014-01-08 安徽省瑞森生物科技有限责任公司 一种香椿肉鸡饲料及其制备方法
CN103494013B (zh) * 2013-08-27 2015-12-23 安徽省瑞森生物科技有限责任公司 一种香椿肉鸡饲料及其制备方法
CN103931932A (zh) * 2014-03-27 2014-07-23 太仓市永发农场专业合作社 鹅绒增产的养殖饲料
WO2019244929A1 (ja) 2018-06-20 2019-12-26 住友化学株式会社 サバディラ種子を含む飼料添加組成物
CN113615639A (zh) * 2021-06-22 2021-11-09 贵州省畜牧兽医研究所 一种优质肉鸡林下生态养殖方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11517551B2 (en) Lactylates for the prevention and treatment of infections caused by gram-positive bacteria in animals
RU2707076C2 (ru) Комбинация, композиция и способ введения комбинации или композиции животным
US5725894A (en) Coccidiosis-relieving agent and feed containing the same
EP1103190B1 (en) Feed for prevention and/or treatment of coccidiosis
Khushnazarov et al. DEVELOPMENT, EPISOTOLOGY, TREATMENT AND PREVENTIVE MEASURES OF EMERIOSIS IN RABBITS
JP2003238400A (ja) 抗コクシジウム組成物及びそれを含有する飼料
JPH0840935A (ja) 家禽類のコクシジウム症に対して免疫を付与する方法
US5215993A (en) Anticoccidial compositions
US4861758A (en) Coccidiocidal compositions
JPS63196515A (ja) 殺コクシジウム組成物
US6183742B1 (en) Applications of lysozyme dimer
ES2475266T3 (es) Combinación coccidicida para uso veterinario
JP2001081034A (ja) 動物用抗原虫剤
CN112891360A (zh) 脱氧土大黄苷的新用途
CN102266346B (zh) 一种防治球虫病的药物
JP3338928B2 (ja) 抗コクシジウム剤
Dorrestein Passerine and softbill therapeutics
Nowaczewski et al. Evaluation of the effectiveness of alternative methods for controlling coccidiosis in broiler chickens: a field trial
CN104968357B (zh) 用于预防及治疗球虫病的咸丰草及聚炔类化合物
JPS5843922A (ja) 家禽の抗コクシジウム症剤
JP2001354580A (ja) 抗コクシジウム剤
JP2003052315A (ja) ポリフェノール添加の養殖魚用飼料及びその添加剤
CN105311007B (zh) 苏拉明钠在制备抗鸡球虫药物中的应用
WO2019146652A1 (ja) 抗i型アレルギー剤、及び肥満細胞又は好塩基球の脱顆粒抑制剤、並びに抗認知症剤、及び短期記憶障害改善/抑制剤
CN117982535A (zh) 一种寄生虫抑制组合物及其应用

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20040106

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20041029

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041224

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20060110