JPH08325955A - 抗ピリング性溶剤紡糸セルロース系繊維、その繊維構造物及びその製造法 - Google Patents

抗ピリング性溶剤紡糸セルロース系繊維、その繊維構造物及びその製造法

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JPH08325955A
JPH08325955A JP16011295A JP16011295A JPH08325955A JP H08325955 A JPH08325955 A JP H08325955A JP 16011295 A JP16011295 A JP 16011295A JP 16011295 A JP16011295 A JP 16011295A JP H08325955 A JPH08325955 A JP H08325955A
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fiber
solvent
pilling
cellulase
strength
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JP16011295A
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Kiyoshi Otoi
清 音居
Sumio Abe
純夫 阿部
Masaru Kitamura
優 北村
Shohei Miyata
昌平 宮田
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KANEBO SILK EREGANSU KK
OMORI KIKAKU KK
OOMORI KIKAKU KK
Kanebo Ltd
Original Assignee
KANEBO SILK EREGANSU KK
OMORI KIKAKU KK
OOMORI KIKAKU KK
Kanebo Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】布帛の表面品位や表面感さらには布帛強度の面
での不均一性等で従来問題であった揉み叩き加工を採ら
ずに、均一な抗ピリング性と強度変動率が小さく、しか
も充分な実用布帛強度を保持すべく改質された溶剤紡糸
セルロース系繊維及び該繊維からなる繊維構造物を提供
する。 【構成】本発明者等はテンセル繊維の紡糸油剤であるア
ニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤はセルラーゼ
の触媒毒であることを見出した。その対策として、該繊
維の徹底的な熱水洗浄により、該界面活性剤の残留付着
量を0.05重量%以下に規制することにより、セルラ
ーゼ総酵素力価50000単位以下の非常に穏やかな条
件でのセルラーゼ加工が可能になり、その結果、高度な
抗ピリング性と均一な織編物強度を持ち、しかも繊維表
面がフィブリル化又はミクロフィブリル化構造でない溶
剤紡糸セルロース系繊維の製造を可能にした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は改質された抗ピリング性
溶剤紡糸セルロース系繊維、該繊維からなる繊維構造物
及びその製造法に係わり、特に限定された処理条件での
原綿、スライバー、紡績糸或いは織編物等のセルラーゼ
による改質加工で、前処理としての揉み叩き加工を実施
しなくても良好な抗ピリング性を有し、しかも均一性の
良好な実用繊維強度を保持した改質抗ピリング性溶剤紡
糸セルロース系繊維、該繊維からなる繊維構造物及びそ
の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】セルロース系繊維は、従来、綿,麻等の
天然繊維、レーヨン,キュプラ等の再生繊維が知られて
いる。再生繊維は木材パルプのセルロースをビスコース
レーヨンや銅アンモニウムレーヨンといった化合物誘導
体に化学反応せしめることで水系の溶媒に可溶性にした
後、湿式紡糸することで製造する。
【0003】溶剤紡糸セルロース繊維とは、精製パルプ
を誘導体に化学反応せしめることなく、特殊な有機溶
媒、例えばN−メチルモルホリン−N−オキシド、N−
メチルピペリジン−N−オキシド等に加圧、加温下に溶
解し、湿式紡糸又は乾式紡糸するもので極く最近工業生
産が開始されているが、現在商業的に実用化されている
ものとして、英国コートルズ社の「テンセル」(商品
名)が唯一知られている。このテンセルは再生セルロー
ス繊維に対して、精製セルロース繊維と非公式には分類
されている。
【0004】このテンセルを代表とする溶剤紡糸セルロ
ース系繊維は綿糸やレーヨンに比べて、繊維強度が非常
に強く、張りが有りながらレーヨン特有の柔らかい風合
を持っていることが特徴で、さらに湿潤時の繊維強度が
レーヨンと違って強く、さらに湿潤で縮みにくいといっ
た優れた特性を有している。
【0005】テンセルはN−メチルモルホリン−N−オ
キシドを溶剤とし湿式紡糸されたものであるが、上述の
優れた特性を持つ一方で、単繊維の構造が、スキン−コ
ア構造を持ち、このスキン層が湿潤摩擦や衝撃で非常に
フィブリル化し易く、さらに該フィブリルが絡んでピリ
ングし易いという欠点を持っている。そして、最近の溶
剤紡糸セルロース系繊維に関する技術開発は、ほとんど
がピリング化を効率良く、効果的に防止しうる抗ピリン
グ技術の開発に集中していると言っても過言では無い。
例えば、「ニューレーヨンの実際知識」(繊維社)28
0〜283頁には溶剤紡糸セルロース系繊維のピリング
発現機構及びセルラーゼによるピリングの分解除去手法
が理論的に解説されている。該解説に記述されているよ
うに、現在、溶剤紡糸セルロース系繊維の抗ピリング対
策としては、該繊維からなる布帛をロータリーワッシャ
ー等で揉み叩き加工を施すことで敢えて単繊維のスキン
層をフィブリル化さらにはピリング化させ、発生したフ
ィブリル及びピリングをさらに揉み叩き加工しながら、
セルラーゼで溶解除去する方法、いわゆるバイオ加工が
実施されている。従来、上述の揉み叩き加工、セルラー
ゼ加工は布帛で実施されて来たが、絡み防止対策を施し
た糸での揉み叩き加工やセルラーゼ加工の研究も着手さ
れている(特開平6−322667号公報、特開平7−
3626号公報参照)。
【0006】特開平5−117970号公報及び特開平
6−146168号公報にはセルロース分子間の架橋反
応によるフィブリル化防止技術が開示されている。又、
特開平6−146168号公報には比較例として樹脂加
工による該繊維のフィブリル化防止技術も記述されてい
る。
【0007】一般に繊維のフィブリル化とは、糸や布帛
への摩擦や衝撃で単繊維がさらに割繊され、割繊されて
発生したミクロ繊維が毛羽状に立ち上がる状態である。
紡績糸織物の場合、フィブリル化した布帛にさらに摩擦
や衝撃を加えて行った場合、ミクロ繊維同志及びミクロ
繊維と単繊維が複雑に絡んで毛玉になりピリングが発生
する。フィブリル化は絹繊維の染色時や着用時に白化現
象として良く見られるものであるが、絹繊維の場合は単
繊維の強度が適度なものであるため、発生したフィブリ
ルは摩擦や衝撃で引きちぎられピリングが発生すること
は無い。絹繊維の場合、フィブリル化は普通は好ましい
現象ではないが、時には布帛のピーチスキン加工として
利用される。
【0008】これに対して溶剤紡糸セルロース系繊維の
場合、前述のように単繊維強度が非常に強いため、発生
したフィブリルを摩擦や衝撃で引きちぎることが困難な
ため、著しくピリングし易い。そのため溶剤紡糸セルロ
ース系繊維の場合、前述のように揉み叩き加工で敢えて
フィブリル及びピリングを発生させ、これをセルラーゼ
加工で溶解除去する加工手段を採っている。一旦、表皮
層をフィブリル化それに続くセルラーゼ加工で溶解除去
した溶剤紡糸セルロース系繊維はもはや摩擦や衝撃でピ
リングが発生することは無い。
【0009】しかしながら、揉み叩き加工、セルラーゼ
加工は対象が布帛であれ糸であれ、それぞれが小ロット
生産で、しかも処理時間として数時間掛かり、大規模な
生産手法としては問題があった。さらに揉み叩き加工は
所詮、糸と糸又は布帛と布帛或いは異物との摩擦である
ためフィブリル化は不均一であり、さらに糸や布帛の損
壊も多い。又、それに続くセルラーゼ加工は両刃の剣で
あって、フィブリル及びピリングを溶解除去する一方
で、不均一な揉み叩き加工をカバーするためどうしても
過度の加工になり、セルロースの加水分解が進み過ぎ
て、糸や布帛本体の強度を不均一にしかも結果として著
しく脆化せしめる。即ち、全体として糸や布帛の揉み叩
き加工及びセルラーゼ加工は不均一であり、糸や布帛全
体に均一な加工と均一な実用強度を保持させることがか
なり難しく、結果として糸や布帛の表面品位や強度とい
った品質規格に不合格なものが多く発生し、加工の品質
管理の面でも問題があった。
【0010】さらに、揉み叩き加工、セルラーゼ加工を
施した溶剤紡糸セルロース系繊維布帛の表面はミクロフ
ィブリル化されていて、いわゆるピーチスキン調布帛の
風合を呈し、フォーマルな被服としては不適当であり、
この面からフラットな表面感てありながら摩擦や衝撃で
ピリング化しない溶剤紡糸セルロース系繊維布帛、即
ち、揉み叩き加工が施されてない抗ピリング性溶剤紡糸
セルロース系繊維布帛が要望されていたが、従来の加工
技術では揉み叩き加工が必要でこれは不可能であった。
【0011】布帛を樹脂加工することや、繊維間を架橋
する方法で溶剤紡糸セルロース系繊維のフィブリル化や
ピリング化を改善する検討もされているが、これらの方
法ではどうしても溶剤紡糸セルロース系繊維特有の柔ら
かい風合が損なわれ実用的で無い(特開平6−1461
68号公報参照)。又、完全なるセルロース構造ではな
くなり商品イメージは低下する。
【0012】ところで、繊維のピリングは単繊維強度の
高い場合に発生するものであることは前述の通りである
が、一般に抗ピリング加工としては、単繊維強度を実用
強度として問題の無い適度なレベルまで低下調整させる
技術手段が公知である。例えば、ポリエステルの紡績糸
に用いられる抗ピルポリエステルは、重合度を下げた
り、低重合度ポリエステルをブレンドする手法が通常の
手法である。
【0013】この手法を溶剤紡糸セルロース系繊維に導
入する場合、原料が天然物であり手段は制約されるが、
酸又はアルカリ或いはセルラーゼで、セルロースのβ−
1.4グルコシド結合を加水分解する方法は実用可能な
方法として当然考えられる。綿糸や再生セルロース系繊
維の場合にも該加水分解が実施される場合があるが、こ
の場合は単繊維強度はそれほど高くないため目的は、主
として風合改良である(特公昭49−38946号公
報、特開昭51−149995号公報、特開昭58−3
6217号公報、特開昭58−54082号公報参
照)。この場合にも見られるように、酸やアルカリを使
用すると繊維が過度に加水分解されて実用強度以下に極
端に脆化したり、分解生成物に起因する着色が惹起され
るため問題があり、実用的なセルロースの加水分解手段
にはもっぱらセルラーゼが使用されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は溶剤紡糸
セルロース系繊維の抗ピリング性改質について鋭意研究
した結果、本発明を完成したものである。本発明の目的
とするところは、上述したような布帛の表面品位や表面
感さらには布帛強度の面での不均一性等で従来問題であ
った揉み叩き加工を採らずに、均一な抗ピリング性と強
度変動率が小さく、しかも充分な実用布帛強度を保持す
べく改質された溶剤紡糸セルロース系繊維及び該繊維か
らなる繊維構造物を提供することに有る。さらに他の目
的は同じく揉み叩き加工によらない方法等によって、か
かる改質を工業的に有利に行いうる方法を提供するに有
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために次の構成を取る。即ち第1番目の発明は、溶
剤紡糸セルロース系繊維において、単繊維の表面が揉み
叩き加工によるフィブリル化又はミクロフィブリル化構
造を呈しておらず、繊維構造として完全なセルロース構
造のみから成るにもかかわらず抗ピリング性に改質され
ていることを特徴とする抗ピリング性溶剤紡糸セルロー
ス系繊維及び該繊維からなる繊維構造物を要旨とし、第
2番目の発明は、溶剤紡糸セルロース系繊維において、
単繊維の表面が揉み叩き加工によるフィブリル化又はミ
クロフィブリル化構造を呈しておらず、繊維構造として
完全なセルロース構造のみから成るにもかかわらず、平
均単繊維強度が3.5g/d以下、単繊維強度変動率が
20%以下に均一に改質されていて、該繊維からなる織
編物の家庭洗濯機法での抗ピリング試験にJISL−1
076法のピリング判定標準写真を準用しての判定で4
級以上の抗ピリング性であり、しかも該繊維からなる織
編物強度の均一性が良好に改質されていることを特徴と
する抗ピリング性溶剤紡糸セルロース系繊維及び該繊維
からなる繊維構造物を要旨とし、第3番目の発明は溶剤
紡糸セルロース系繊維の原綿、スライバー、紡績糸或い
は織編物のセルラーゼによる改質加工において、予め該
繊維に付着している紡糸油剤としてのアニオン界面活性
剤又はカチオン界面活性剤の付着量を0.05重量%以
下となるように熱水で洗い落とし、かつセルラーゼ加工
の総酵素力価(酵素力価(単位/g)×酵素濃度(%o
ws)×酵素加工時間(分))を50000単位以下に
規制することを特徴とする請求項1の抗ピリング性溶剤
紡糸セルロース系繊維及び該繊維からなる繊維構造物を
製造する方法を要旨とする。
【0016】本発明は要するに、溶剤紡糸セルロース系
繊維の紡糸油剤として常用されるアニオン界面活性剤又
は希に使用されるカチオン界面活性剤がセルラーゼの触
媒毒であること、そして該触媒毒作用はアニオン界面活
性剤又はカチオン界面活性剤の繊維への付着量を0.0
5重量%以下に規制した場合劇的に低減されること、そ
の結果、該繊維及び該繊維からなる繊維構造物のセルラ
ーゼ加工による抗ピリング加工が、前処理として揉み叩
き加工を実施しなくても可能であること、さらに又、ア
ニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤の付着量の規
制によりセルラーゼ加工を顕著に穏やかな、即ち総酵素
力価の小さい条件で可能ならしめたことに特徴があり、
又このことによって初めて布帛の表面感がピーチスキン
調でなく、しかも高度な抗ピリング性と均一性の良好な
実用繊維強度を持った溶剤紡糸セルロース系繊維及び該
繊維からなる繊維構造物の製造を可能ならしめたことに
特徴がある。
【0017】従来、溶剤紡糸セルロース系繊維及び該繊
維からなる繊維構造物に前処理として実施されていた揉
み叩き加工は、フィブリル化以外にセルラーゼの触媒毒
である紡糸油剤としてのアニオン界面活性剤又はカチオ
ン界面活性剤を不充分ながらも繊維から剥離させること
に潜在的な意味があったが、現実には該意味は認識され
ておらず、ましてやアニオン界面活性剤又はカチオン界
面活性剤を0.05重量%以下に規制する必要性が均一
なセルラーゼ加工に必要であることは全くと言っても過
言で無く意識されていなかった。その為、前処理として
の揉み叩き加工で無意識で熱水洗されていた以外、紡糸
油剤としてのアニオン界面活性剤又はカチオン界面活性
剤の上記規制に対して無策であり、その為、揉み叩き加
工をしない単なるセルラーゼ加工のみで、効果的な抗ピ
リング加工及び均一な実用繊維強度を持った抗ピリング
加工が出来ず、これは不可能と考えられていた。
【0018】即ち、現在唯一工業生産されている溶剤紡
糸セルロース系繊維はテンセルであることは前述した
が、通常、該系統繊維には紡糸油剤としてアニオン界面
活性剤希にはカチオン界面活性剤が0.3〜0.6重量
%付着している。従来、揉み叩き加工を実施しないで該
繊維の抗ピリングを目的にしたセルラーゼ加工に於い
て、紡糸油剤としてのアニオン界面活性剤又はカチオン
界面活性剤が触媒毒であり、該触媒毒の付着量を0.0
5重量%以下に規制する必要性が認識されていなかった
為、これをこのまま水洗せずに、或いは1回程度熱水洗
してセルラーゼ加工を実施するのが通例であった。1回
程度の熱水洗では、繊維に付着している紡糸油剤として
のアニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤はせいぜ
い3分の1程度にしか減少しておらず0.10〜0.2
0重量%程度残留付着している。
【0019】これをセルラーゼ加工で抗ピリングに改質
するには、触媒毒に打ち勝つ為、酵素力価1500〜1
800単位/gを持つ通常のセルラーゼの場合、酵素初
期濃度5g〜10g/ l、酵素反応時間2〜3時間の処
理が必要で、この場合、総酵素力価としては少なくとも
1500(単位/g)×0.5(%ows)×120
(分)=90000単位の作用が必要であった。これは
溶剤紡糸セルロース系繊維のバイオ加工の総酵素力価と
しては非常に激しいものであり、その為、紡糸油剤とし
てのアニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤の付着
ムラに応じて、該界面活性剤の付着量が少ない部分で局
部的にセルラーゼ加工が進み過ぎ、結果的にセルラーゼ
加工後の溶剤紡糸セルロース系繊維及び該繊維からなる
繊維構造物の単繊維強度変動率は40%を越え、部分的
に極度に平均単繊維強度が弱い箇所が発生し、溶剤紡糸
セルロース系繊維で構成される布帛は実用強度を満足し
ないことになる。
【0020】これに対して、セルラーゼ加工前の熱水洗
を3回以上実施し最後に遠心脱水を実施するとか、各回
の脱液に遠心脱水をする熱水洗を2回以上実施するとか
で、目標意識を持って徹底的に熱水洗し残留する紡糸油
剤としてのアニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤
を0.05重量%以下、好ましくは0.025重量%以
下に落とした場合、触媒毒の紡糸油剤としてのアニオン
界面活性剤又はカチオン界面活性剤が少なく、且つ該界
面活性剤の付着の濃淡の差が小さいため、総酵素力価の
非常に小さい条件で均一なバイオ加工が可能になる。例
えば、酵素力価1500〜1800単位/gの酵素の場
合、酵素濃度1g/ l、酵素反応時間2時間のセルラー
ゼ加工で均一性の良い抗ピリング性に改質された溶剤紡
糸セルロース系繊維及び該繊維からなる繊維構造物が得
られる。即ち、この場合、総酵素力価は最大でも180
0(単位/g)×0.1(%ows)×120(分)=
21600単位と非常に穏やかなものであり、その為セ
ルラーゼ加工後の平均単繊維強度が3.5g/d以下で
ありながら単繊維強度変動率が20%以下に均一に改質
され、その結果として、該繊維から成る織編物の家庭洗
濯機法での抗ピリング試験にJIS L−1076法の
ピリング判定標準写真を準用しての判定で4級以上の抗
ピリング性であり、しかも該繊維からなる織編物強度の
均一性が良好に改質された抗ピリング性溶剤紡糸セルロ
ース系繊維及び該繊維からなる繊維構造物が得られる。
【0021】以下、本発明の構成要件を具体的に説明す
る。本発明の溶剤紡糸セルロース系繊維とは、具体的に
は、現在のところ商業的に実用化されているテンセル
(商品名)が唯一該当する。従って、現在のところ本発
明に於いて、溶剤紡糸セルロース系繊維=テンセルであ
り、抗ピリング性溶剤紡糸セルロース系繊維=抗ピリン
グ性テンセルと考えて良い。そして本発明は原綿、スラ
イバー、紡績糸、或いは織編物等の溶剤紡糸セルロース
系繊維及び該繊維からなる繊維構造物の全てに適用でき
る。
【0022】本発明に於いては、現在、溶剤紡糸セルロ
ース系繊維のセルラーゼ加工の前処理として必ず実施さ
れている揉み叩き加工を行わないのが大きな特徴であ
る。その理由は前記に詳述の通りであるが、要約すれ
ば、これによってセルラーゼ加工後の溶剤紡糸セルロー
ス系繊維の品質の均一化、ピーチスキン調に限定されな
いフラットな表面感、工程の短縮等が実現出来る。尚、
本発明でピーチスキン調の布帛を製造したい場合は、本
発明でセルラーゼ加工した溶剤紡糸セルロース系繊維及
び該繊維からなる繊維構造物を布帛にした後揉み叩き加
工をすれば良い。本発明でセルラーゼ加工した溶剤紡糸
セルロース系繊維及び該繊維からなる繊維構造物の平均
単繊維強度は適度にしかも均一に調整されている為、揉
み叩き加工を実施してもピリングが発現することはもは
や無い。
【0023】本発明の抗ピリング性溶剤紡糸セルロース
系繊維の平均単繊維強度は3.5g/d以下、好ましく
は2.0g/d以上3.5g/d以下である。平均単繊
維強度が小さくなる程抗ピリング性は良好になるが、
2.0g/d以下では実質的な差は無く、実用繊維強度
を考慮した場合、必要以上に単繊維強度を小さくするの
は好ましくない。
【0024】本発明の抗ピリング性溶剤紡糸セルロース
系繊維の単繊維強度変動率は20%以下、好ましくは1
5%以下である。これはセルラーゼ加工前に紡糸油剤と
してのアニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤を徹
底的に洗い落とし、残留アニオン界面活性剤又はカチオ
ン界面活性剤を平均で0.05重量%以下、好ましくは
0.025重量%以下に規制することで穏やかな条件で
のセルラーゼ加工が可能になったことと、ムラ付きして
いたアニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤を洗い
落とし、該界面活性剤による触媒毒で、セルラーゼ加工
が繊維上で不均一に作用するのを防いだことによる。大
略、残留アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤が
0.025重量%以下で単繊維強度変動率は15%以
下、0.05重量%以下で単繊維強度変動率は20%以
下である。残留アニオン界面活性剤又はカチオン界面活
性剤が0.10重量%以上では、溶剤紡糸セルロース系
繊維の平均単繊維強度を3.5g/d以下に調整した場
合の単繊維強度変動率は40%以上になり、溶剤紡糸セ
ルロース系繊維からなる繊維構造物は部分的に強度不足
の箇所が発生し実用繊維としては採用できない。
【0025】平均単繊維強度を3.5g/d以下、単繊
維強度変動率を20%以下に調整することで、溶剤紡糸
セルロース系繊維は均一性の良い抗ピリング性に改質さ
れ、該繊維からなる織編物の家庭洗濯機法での抗ピリン
グ試験にJIS L−1076のピリング判定標準写真
を準用しての判定は4級以上、通常は5級となる。
【0026】本発明の家庭洗濯機法での抗ピリング試験
は、JIS L−0217の103法に準拠した方法
で、家庭用洗濯機(JIS L−0217の103号に
規定するもの)を使用し、衣料用合成洗剤2g/ lを含
む液温約40℃の洗濯液、浴比1:30で、試験片3枚
と負荷布2枚(計5枚)を5分間洗濯した後脱液し、次
に常温の水で2分間すすぎ洗いと脱液を各々2回行い、
試験片と負荷布を取り出しタンブル乾燥機で乾燥する
(吹き出し温度約70℃)。この操作を5回くり返し、
得られた試験片をJIS L−1076法のピリング判
定標準写真を準用して試験片の抗ピリング性を判定す
る。
【0027】本発明方法に於いては、揉み叩き加工に代
わって、溶剤紡糸セルロース系繊維に付着している紡糸
油剤として常用されるアニオン界面活性剤、或いは時に
配合されるカチオン界面活性剤を0.05重量%以下、
好ましくは0.025重量%以下に削減すべく、セルラ
ーゼ加工前に徹底的に熱水洗する必要がある。この為に
は、熱水洗を3回以上実施し最後に遠心脱水するとか、
熱水洗後に毎回遠心脱水する熱水洗を2回以上実施する
とかの方策が必要である。この際、助剤として、酸性亜
硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩や水酸化ナ
トリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ、或いはノニオ
ン界面活性剤系の洗浄剤や膨潤剤を添加した方が、アニ
オン界面活性剤又はカチオン界面活性剤を洗い落としや
すくなるので好ましい。
【0028】一方、このような処理で、アニオン界面活
性剤又はカチオン界面活性剤を0.05重量%以下に規
制する目標意識がない場合は、熱水洗無しでセルラーゼ
加工を実施するか、最良でも1回水洗後、自然脱液して
含水500〜600%のままセルラーゼ加工液に投入す
る程度が通例であるが、この程度の熱水洗ではアニオン
界面活性剤又はカチオン界面活性剤を0.05重量%以
下に規制することは不可能である。
【0029】本発明方法のセルラーゼとしては、セルロ
ース繊維の減量処理用として一般に市販されているセル
ラーゼが全て適用され、例えば、エンチロンCM−40
L(洛東化成工業(株))、セルクラスト1.5L(ノ
ボノルディスク(株))、酵素OP−8800(GEN
ENCOR社)、セルラーゼXP−425(長瀬生化学
(株))等である。これらのセルラーゼの酵素力価は通
常1500〜3000単位/gである。尚、この場合の
セルラーゼの酵素力価の1単位は、カルボキシメチルセ
ルロース(CMC)を基質とし、40℃、pH4.5に
於いて1分間に1μmolのブドウ糖を生成する活性で
ある。
【0030】本発明方法のセルラーゼ加工の最適温度
は、酵素の種類により若干異なるが、一般には50〜6
0℃である。50℃以下でも反応は進むが遅く、特別の
理由がないかぎりこれより低温で処理する意味はない。
本発明方法の処理中のpHは3.5〜6.5、好ましく
は4.5〜5.5に維持される。この際pH緩衝剤とし
て酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤を適宜使
用する。
【0031】本発明方法に於いては、酵素の触媒毒であ
るアニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤の繊維へ
の付着量を0.05重量%以下、好ましくは0.025
重量%以下に規制している為、セルラーゼ加工のセルラ
ーゼ濃度を劇的に少なくすることが可能で、総酵素力価
=酵素力価(単位/g)×酵素濃度(%ows)×処理
時間(分)として50000単位以下、好ましくは25
000単位以下に規制することが可能となる。これによ
って処理後の平均単繊維強度が3.5g/d以下であり
ながら、単繊維強度変動率は20%以下になり、均一性
の良い抗ピリング加工が出来るのが本発明の特徴であ
る。通常、酵素力価1500〜1800単位/gのセル
ラーゼ(例えば酵素OP−8800(GENENCOR
社)、セルクラスト(ノボノルディスク(株))、処理
時間として2〜4時間の場合、酵素濃度は1g/ l程度
が適当である。この場合の総酵素力価=1500〜18
00(単位/g)×0.1(%ows)×120〜24
0(分)=18000〜43200単位である。従っ
て、同一セルラーゼで酵素濃度を2倍にすれば処理時間
は1/2で良い。実用処方としては、むしろ作業の段取
り上最適のセルラーゼ加工時間を設定し、使用酵素の力
価に応じて総酵素力価の規制をクリアーする酵素濃度を
決定することになるが、通常セルラーゼ加工時間は2〜
3時間が適当である。
【0032】抗ピリング性溶剤紡糸セルロース系繊維に
付着しているアニオン界面活性剤又はカチオン界面活性
剤が0.05重量%を超える場合、触媒毒に打ち勝って
抗ピリング性に改質するためには高濃度の酵素濃度が必
要で、酵素OP−8800(GENENCOR社)やセ
ルクラスト(ノボノルディスク(株))での2〜3時間
のバイオ加工に必要な酵素濃度は5g〜10g/ lであ
るが、この場合の総酵素力価は少なくとも9万単位とな
る。この程度総酵素力価が大きくなると、たとえ抗ピリ
ング性に改質出来ても単繊維強度変動率が40%以上に
なり、繊維構造物に於いて強力の変動が大きくなり実用
繊維としては使用に耐えない。
【0033】総酵素力価を50000単位以下に抑えて
セルラーゼ加工が可能なのは驚くべきことで、例えば、
前記した公報特許で処理条件が明記されているものとし
て、特開平5−117970号公報の実施例19の表V
には溶剤紡糸セルロース系繊維のセルラーゼ加工の処方
が例示されているが、そのなかでセルクラスト(ノボル
ディスク(株)社製、技術資料より力価1500単位/
g)の1.0%ows溶液で60分処理しているが、こ
の場合の総酵素力価=1500(単位/g)×1(%o
ws)×60(分)=9万単位である。又、特開昭58
−36217号公報にはセルロース繊維の風合改良をセ
ルラーゼ処理により行っているが、その実施例1の場
合、3000〜6000(単位/g)のセルラーゼを溶
液濃度1.0%owsで4時間処理しているが、この場
合の総酵素力価=3000〜6000×1×240=7
2万〜144万単位である。
【0034】以上の方法でセルラーゼ加工した溶剤紡糸
セルロース系繊維及び該繊維からなる繊維構造物は、脱
液した後、原綿や紡績糸の場合は、必要に応じて後工程
に必要な油剤処理等の通常の工程を経て乾燥する。
【0035】なお、本発明の単繊維強度変動率は次の式
で計算する。
【数1】
【0036】以下実施例にて本発明を具体的に説明す
る。
【0037】実施例1 テンセル原綿(単繊維:1.5d/38mm長、英国コ
ートルズ社)についてはオーバーマイヤー型染色機、テ
ンセル紡績糸(30/1、撚数:18.7/インチ、構
成単繊維:同上)については噴射式染色機、テンセル織
物(仕上織設計織幅:114cm、経:100本/イン
チ、緯:70本/インチ、構成紡績糸:同上)について
は液流染色機を用いて各々セルラーゼ加工を行った。こ
の場合、各処理機とも液容量180 lのものを用い各種
形態テンセルを各々6Kgを処理した。まず、セルラー
ゼ加工に先立って、75℃の熱水180 lを循環させて
テンセル繊維上の紡糸油剤を洗い落とした。この際、3
0分間熱水洗した後一旦自然排水し、再び新鮮な熱水で
同様に熱水洗した。この操作を更に1回繰り返し最後に
遠心脱水機で脱水し乾燥した。熱水洗した各種形態のテ
ンセルに付着している紡糸油剤を熱テトラクロルエチレ
ンで抽出し、これをエプトン法で測定してアニオン界面
活性剤の繊維への付着量を測定した。いずれの形態のテ
ンセルもアニオン界面活性剤の付着量は0.025重量
%以下であった。続いて熱水洗に使用した各染色機でセ
ルラーゼ加工を実施した。セルラーゼ加工の条件はセル
ラーゼとして酵素OP−8800(GENENCOR社
製、力価1800単位/g):0.10%ows、処理
液量:180 l、処理温度:55℃、pH:4.5(酢
酸/酢酸ソーダ緩衝液)、処理時間:2時間で行った。
この場合の総酵素力価=1800(単位/g)×0.1
(%ows)×120(分)=21600単位である。
続いて、処理液を80℃に昇温し15分間酵素の失活処
理を実施した。この後、遠心脱水機で脱水し、原綿及び
紡績糸についてはパンソフター−S(商品名:第一工業
製薬製)の水溶液に浸漬し該油剤を1.2重量%付着さ
せた後乾燥した。各形態のセルラーゼ加工済のテンセル
の平均単繊維強度、単繊維強度変動率を測定したが、い
ずれの形態のテンセルも平均単繊維強度が2.5〜3.
0g/d、単繊維強度変動率が15%程度であり(セル
ラーゼ加工前の平均単繊維強度4.8g/d、単繊維強
度変動率10%)、良好で均一な抗ピリング性として適
度な平均単繊維強度、単繊維強度変動率に調整されてい
た。セルラーゼ加工原綿については30/1の紡績糸に
紡績したあと仕上織設計で織幅:114cm、経:10
0本/インチ、緯:70本/インチの平織物に製織し
た。セルラーゼ加工紡績糸も同じ織設計で製織した。各
種形態でのセルラーゼ加工テンセル織物について、前記
した家庭用洗濯機法でのピリング試験を実施し、得られ
た試験布片をJIS L−1076法のピリング判定標
準写真を準用して判定した。以上の結果を表1にまとめ
て示す。
【0038】
【表1】
【0039】表1から分かるように、抗ピリング性は各
種形態のテンセルとも全て5級で全くピリングは発現し
ておらず良好であった。さらに、シングルタング法で、
各織物の染色前の平均引裂強度を測定した結果全て12
00g以上で衣料用織物として充分なものであった。
【0040】比較例1 セルラーゼ加工前の熱水洗を実施例1に準じて1回行
い、自然排水し、遠心脱水することなくテンセルのセル
ラーゼ加工を実施した。セルラーゼ加工前のテンセル繊
維に付着しているアニオン界面活性剤の量を実施例1に
準じて測定した結果、いずれの形態のテンセルも0.1
0重量%以上であった。又、セルラーゼ加工後の各種形
態テンセル繊維について平均単繊維強度、単繊維強度変
動率を測定したが、いずれも平均単繊維強度が4.0g
/d以上で、繊維強度調整がほとんど進んでいないこと
が分かる。続いて、実施例1に準じて抗ピリング性を試
験した所抗ピリング性は1級で激しくピリングが発現し
ていて著しく不良であった。ただし、シングルタング法
での平均引裂強度はいずれも1700g以上であった。
セルラーゼ加工前のテンセル綿に付着しているアニオン
界面活性剤量が0.10重量%程度の場合、抗ピリング
加工が実施例1の21600単位程度の総酵素力価では
ほとんど進まないことが分かる。以上の結果を表2にま
とめて示す。
【0041】
【表2】
【0042】比較例2 セルラーゼ加工前の熱水での水洗を全く実施せず各種形
態のテンセルを直接セルラーゼ加工した。この場合、ア
ニオン界面活性剤の付着量はいずれの形態のテンセルも
0.30重量%以上であった。セルラーゼ加工条件は、
酵素OP−8800(GENENCOR社製、力価18
00単位/g):0.5%ows、処理液量:180
l、処理温度:55℃、pH:4.5(酢酸/酢酸ソー
ダ緩衝液)、処理時間:2時間で実施した。この場合の
総酵素力価=1800(単位/g)×0.5(%ow
s)×120(分)=108000単位である。得られ
たセルラーゼ加工テンセルの平均単繊維強度はいずれの
形態のものも3.0g/d〜3.5g/d程度であった
が、単繊維強度変動率は40〜50%と非常に大きかっ
た。総酵素力価が大きい為、抗ピリング加工の為の繊維
強度調整は実施例1と同程度に出来たが、その分、強度
変動率が非常に激しいものになったことが分かる。続い
て、実施例1に準じて抗ピリング性を測定した結果、抗
ピリング性は2級以下でかなり不良であった。又、シン
グルタング法での平均引裂強度は単繊維強度変動率が大
きい為、いずれも1000g以下で、衣料用織物の実用
強度として問題であった。以上の結果を表3にまとめて
示す。
【0043】
【表3】
【0044】比較例3 実施例1に準じて各染色機で各種形態のテンセルを熱水
洗した。得られたテンセルのアニオン界面活性剤の付着
量はいずれも0.025重量%以下であった。続いて該
テンセルについてセルラーゼ加工を実施したが、この場
合の条件は、酵素OP−8800(GENENCOR社
製、力価1800単位/g):0.30%ows、処理
温度:55℃、pH:4.5(酢酸/酢酸ソーダ緩衝
液)、処理時間:2時間であった。総酵素力価=180
0(単位/g)×0.30(%ows)×120(分)
=64800単位である。得られたセルラーゼ加工した
各種形態のテンセルは総酵素力価が5万以上である為、
平均単繊維強度は1.5g/d程度、単繊維強度変動率
は20〜30%であり、抗ピリング加工の為の繊維強度
調整は必要以上にやや行き過ぎの感があり、強度変動率
もかなり大きくなった。このため実施例1に準じて抗ピ
リング性を試験した結果、抗ピリング性は5級で良好で
あったが、シングルタング法での平均引裂強度は700
g以下で実用衣料用強度としては不十分であった。以上
の結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】実施例2 実施例1に於いてセルラーゼ加工前の熱水洗を3回実施
したのを2回に減らし、2回目の終わりに遠心脱水し
た。その他は実施例1に準じてセルラーゼ加工を実施し
た。水洗後の各種形態テンセルに付着しているアニオン
界面活性剤はいずれも0.05重量%以下であった。
又、セルラーゼ加工後の平均単繊維強度はいずれも3.
0g/d〜3.5g/d程度、単繊維強度変動率は15
〜20%でかなり均一に強度調整されていた。これを実
施例1に準じて抗ピリング性を試験した結果、抗ピリン
グ性はいずれも4級でほぼ良好であった。又、シングル
タング法の平均引裂強度はいずれも1200g以上で衣
料用織物として充分なものであった。セルラーゼ加工前
の熱水洗をやや簡略化したためアニオン界面活性剤が若
干多く残り、その為セルラーゼ加工による繊維強度調整
が幾分進みにくく、繊維強度変動率がやや大きくなり、
抗ピリング性が実施例1に比してやや劣る結果になっ
た。以上の結果をまとめて表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】実施例3 テンセル・スライバー(500ゲレン=5.905g/
m、単繊維長:38mm)1本を連続した5槽から成る
水洗装置に極低速度で走らせ、75℃で連続熱水洗し紡
糸油剤を洗い落とした。各槽の大きさは長さ:5m、
幅:10cm、容量は100 lでスライバーが各槽を出
る毎にマングルでピックアップ50%に絞った。全滞留
時間は30分で熱水をスライバーに対して向流に流し、
最終槽に新しい熱水を1.0 l/分の割合で流入させ
た。得られたスライバーに付着しているアニオン界面活
性剤は0.021重量%であった。続いて第5槽を出て
マングルで絞ったスライバーを長さ:25m、幅:10
cm、容量500 lのバイオ加工槽に連続して走らせセ
ルラーゼ加工を実施した。この場合の条件はセルラーゼ
としてセルクラスト1.5L(ノボノルディスク製、力
価1500単位/g):1.00%ows、処理温度:
55℃、pH:4.5(酢酸/酢酸ソーダ緩衝)、処理
時間:30分であった。この場合の総酵素力価=150
0(単位/g)×1.0(%ows)×30(分)=4
5000単位である。バイオ加工液のピックアップ量5
0%に絞った後、長さ1mの炭酸ソーダ水溶液槽及び水
洗槽で酵素を失活させ、続いて同じく長さ1mの浸漬槽
で実施例1に準じて紡績油剤を付着させた後乾燥した。
得られたセルラーゼ加工スライバーの平均単繊維強度は
2.2g/d、単繊維強度変動率は13%で非常に均一
であった。これを綿紡績の通常の工程に準じて紡績し、
30/1(撚数18.7/インチ)のスライバーバイオ
加工のテンセル紡績糸を製造した。得られた紡績糸を用
いて、仕上げ幅:114cm、経:100本/インチ、
緯:70本/インチの平織物に製織した。これを実施例
1に準じて抗ピリング性及び平均引裂強度を試験した結
果、抗ピリング性は5級、引裂強度は1050gで良好
であった。
【0049】実施例4 実施例2のテンセル原綿のオーバーマイヤーによるセル
ラーゼ加工に於いて、1回目の熱水洗を苛性ソーダの
0.20%owsの水溶液で75℃で行った。30分間
熱水洗後一旦自然排水し、再び新鮮な水を所定量入れ、
塩酸でpH:7.0に中和した。その後75℃に昇温し
30分間熱水洗した後遠心脱水した。得られたテンセル
原綿に付着しているアニオン界面活性剤は0.025重
量%であった。熱水洗に苛性ソーダを混合することが、
紡糸油剤としてアニオン界面活性剤の洗い落としに効果
的であることが分かる。得られた原綿を実施例1に準じ
てセルラーゼ加工した。セルラーゼ加工後の平均単繊維
強度は2.8g/d、単繊維強度変動率は14%であっ
た。続いて実施例1に準じて抗ピリング性及び平均引裂
強度を試験した結果、抗ピリング性は5級で良好であ
り、引裂強度は1200gで実用衣料強度として充分で
あった。バイオ加工前の熱水洗に苛性ソーダを混合する
ことで熱水洗を簡略化出来ることが分かる。
【0050】実施例5 実施例2のテンセル原綿のオーバーマイヤーによるセル
ラーゼ加工に於いて、1回目の熱水洗をスコアロール
(商品名:花王(株)、ノニオン界面活性剤)の0.1
0%owsの水溶液で75℃で行った。30分間熱水洗
後一旦自然排水し、再び新鮮な水を所定量入れ75℃で
30分間熱水洗後遠心脱水した。得られたテンセル原綿
に付着しているアニオン界面活性剤は0.015重量%
であった。熱水洗にノニオン界面活性剤を混合すること
が、紡糸油剤としてのアニオン界面活性剤の洗い落とし
に効果的であることが分かる。得られた原綿を実施例1
に準じてセルラーゼ加工した。セルラーゼ加工後の平均
単繊維強度は2.6g/d、単繊維強度変動率は14%
であった。続いて実施例1に準じて抗ピリング性及び平
均引裂強度を試験した結果、抗ピリング性は5級で良好
であり、平均引裂強度は1150gで実用衣料として充
分であった。バイオ加工前の熱水洗にノニオン活性剤を
混合することで熱水洗を簡略化出来ることが分かる。
【0051】
【発明の効果】以上のように、本発明者等は溶剤紡糸セ
ルロース系繊維のセルラーゼ加工(いわゆるバイオ加
工)による抗ピリング加工において、該繊維の紡糸時に
紡糸油剤として付着しているアニオン界面活性剤又はカ
チオン界面活性剤がセルラーゼの触媒毒であること、そ
して該触媒毒作用はセルラーゼ加工の前処理として熱水
洗を徹底的に行い、アニオン界面活性剤又はカチオン界
面活性剤の繊維への付着量を0.05重量%以下、好ま
しくは0.025重量%以下に規制した場合、劇的に低
減されることを見出した。該規制により、酵素力価(単
位/g)×酵素濃度(%ows)×酵素加工時間(分)
で表される総酵素力価が50000単位、好ましくは2
5000単位以下の、従来の2分の1乃至4分の1程度
の非常に穏やかな総酵素力価でのセルラーゼ加工が可能
になった。その効果として次の項目等があげられる。
【0052】1.徹底的な熱水洗により総酵素力価が従
来の2分の1乃至4分の1と非常に穏やかなセルラーゼ
加工が可能になり、繊維強度変動率が20%以下、好ま
しくは15%以下の小さい範囲に抑制できるようになっ
た。その分、繊維強度調整の度合を大きく取れるように
なり、その結果、均一で実用的な布帛強度を持ち、且
つ、前処理として揉み叩き加工を施さなくても効果的な
抗ピリング加工が可能になり、フィブリル化又はミクロ
フィブリル化構造を呈していない溶剤紡糸セルロース系
繊維の製造が可能になった。 2.徹底的な熱水洗により繊維上のアニオン界面活性剤
又はカチオン界面活性剤の残留付着量の濃淡がほとんど
無く、且つ絶対量も極めて少なくなり、ミクロレベルで
のセルラーゼ加工の不均一性が無くなり、この分でも、
繊維強度変動率をより小さく抑制することが可能になっ
た。 3.従来、溶剤紡糸セルロース系繊維のセルラーゼ加工
の前処理として、必ず必要であった揉み叩き加工が不要
になり、布帛がいわゆるピーチスキン調表面に限定され
ない。又、本発明は揉み叩き加工のような機械的な作用
を施さないため、セルラーゼ加工の作用が均一になり布
帛の表面品位や品質が良好になった。 4.揉み叩き加工が不要になり、設備の大規模化、工程
の短縮が可能になった。 5.セルラーゼ加工の酵素濃度が小さくなり経済性が向
上した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北村 優 長野県小県郡丸子町大字東内774番地1 (72)発明者 宮田 昌平 神戸市東灘区深江南町1丁目3番5号

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶剤紡糸セルロース系繊維において、単
    繊維の表面が揉み叩き加工によるフィブリル化又はミク
    ロフィブリル化構造を呈しておらず、繊維構造として完
    全なセルロース構造のみから成るにもかかわらず抗ピリ
    ング性に改質されていることを特徴とする抗ピリング性
    溶剤紡糸セルロース系繊維及び該繊維からなる繊維構造
    物。
  2. 【請求項2】 溶剤紡糸セルロース系繊維において、単
    繊維の表面が揉み叩き加工によるフィブリル化又はミク
    ロフィブリル化構造を呈しておらず、繊維構造として完
    全なセルロース構造のみから成るにもかかわらず、平均
    単繊維強度が3.5g/d以下、単繊維強度変動率が2
    0%以下に均一に改質されていて、該繊維からなる織編
    物の家庭洗濯機法での抗ピリング試験にJIS L−1
    076法のピリング判定標準写真を準用しての判定で4
    級以上の抗ピリング性であり、しかも該繊維からなる織
    編物強度の均一性が良好に改質されていることを特徴と
    する抗ピリング性溶剤紡糸セルロース系繊維及び該繊維
    からなる繊維構造物。
  3. 【請求項3】 溶剤紡糸セルロース系繊維の原綿、スラ
    イバー、紡績糸或いは織編物のセルラーゼによる改質加
    工において、予め該繊維に付着している紡糸油剤として
    のアニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤の付着量
    を0.05重量%以下となるように熱水で洗い落とし、
    かつセルラーゼ加工の総酵素力価(酵素力価(単位/
    g)×酵素濃度(%ows)×酵素加工時間(分))を
    50000単位以下に規制することを特徴とする請求項
    1の抗ピリング性溶剤紡糸セルロース系繊維及び該繊維
    からなる繊維構造物を製造する方法。
JP16011295A 1995-06-01 1995-06-01 抗ピリング性溶剤紡糸セルロース系繊維、その繊維構造物及びその製造法 Pending JPH08325955A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015119820A (ja) * 2013-12-24 2015-07-02 株式会社ベネフィット 布製身の回り品

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015119820A (ja) * 2013-12-24 2015-07-02 株式会社ベネフィット 布製身の回り品

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