JPH08325191A - 有機酸を分離回収する方法および装置 - Google Patents

有機酸を分離回収する方法および装置

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JPH08325191A
JPH08325191A JP15122695A JP15122695A JPH08325191A JP H08325191 A JPH08325191 A JP H08325191A JP 15122695 A JP15122695 A JP 15122695A JP 15122695 A JP15122695 A JP 15122695A JP H08325191 A JPH08325191 A JP H08325191A
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polybasic organic
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separating
acid
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Minoru Morita
稔 守田
Masanori Sato
正則 佐藤
Satoshi Kono
吏志 河野
Fumio Hanada
文夫 花田
Yoshinori Matsunaga
義則 松永
Taro Kobayashi
太郎 小林
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Tokuyama Corp
Tsukishima Kikai Co Ltd
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Tokuyama Corp
Tsukishima Kikai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 多塩基有機酸を含有する被処理液を、アニオ
ン交換樹脂が充填されている分離塔を通過せしめて該多
塩基酸を該アニオン交換樹脂に吸着せしめ、ついで再生
液であるアルカリ水溶液で該多塩基有機酸をその塩とし
て溶離せしめ、この溶離液をイオン交換膜電気透析に付
して溶離液中の塩を多塩基有機酸とアルカリとに変換せ
しめて、多塩基有機酸を回収すると共に、アルカリをそ
の水溶液として、前記の分離塔に循環し再生液として再
使用する方法であり、かつ、そのための装置である。 【効果】 高純度の多塩基有機酸を効率よく、安価で、
かつ、安全に分離回収することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は有機酸を分離回収する方
法および装置に関し、さらに、詳細には、化学反応およ
び醗酵のそれぞれによって得られた、たとえば、くえん
酸のような多塩基有機酸を含有する反応生成液および培
養液ならびに天然物などの被処理液から、該多塩基有機
酸を分離回収する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】くえん酸
をはじめとする多塩基有機酸は、工業上、多量に使用さ
れている。たとえば、くえん酸は主として醗酵によって
得られているが、化学反応によっても製造されており、
果汁、清涼飲料、清涼剤および利尿剤などに酸味をつけ
るために使用され、また、アルミニウムおよび3価の鉄
などの金属イオンのマスキング剤として使用され、ま
た、各種の緩衝液の原料などとして広く使用されてい
る。
【0003】培養液、反応生成液および天然果汁などか
ら目的物質である多塩基有機酸の分離回収技術は、その
原料および製法などに応じて多岐にわたっている。たと
えば、多塩基有機酸の代表例であるくえん酸は、工業的
には、ぶどう糖および糖蜜などの各種の原料から醗酵法
によって製造されており、これらの醗酵法で得られた培
養液から常法によって除菌した清澄液から、従来は次の
ようにして分離回収されている。すなわち、前記の清澄
液に消石灰を投入して、くえん酸をくえん酸カルシウム
に変換してこれを回収し、回収されたくえん酸カルシウ
ムに硫酸を加えて、該くえん酸カルシウムをくえん酸と
石膏とに変換し、該石膏を沈殿せしめてこれを除去し、
くえん酸を分離回収する石灰硫酸法が広く使用されてい
る。
【0004】この方法において、前段でのくえん酸カル
シウムの回収および後段での石膏の除去には、遠心分離
および各種の濾過などの固液分離手段が採られている。
遠心分離には多大の動力が必要とされる。また、各種濾
過においては、くえん酸カルシウムの結晶および石膏の
結晶は、晶出条件にもよるが、通常は、微細であって、
濾布の目詰りが起きやすく、また、濾布上の結晶に多量
の母液が付着するためくえん酸の回収率を大幅に低下さ
せることになり、また、副生された多量の石膏を廃棄し
なければならず、そのためには多額の費用が必要とされ
ている。また、このようにして回収されたくえん酸水溶
液中には石膏が溶存しており、濃縮工程において石膏析
出によるスケーリングを防止し、製品のくえん酸の品質
を低下させないためには、この石膏を実質的に完全に除
去しなければならず、この後の工程でこの石膏を除去す
るための脱塩用のイオン交換樹脂による処理が必要とさ
れている。
【0005】また、培養液および培養液から除菌した清
澄液のそれぞれに、たとえば、トリラウリルアミンのよ
うな非水混和性アミンと、オレイン酸のような非水混和
性有機酸またはオクタノールのような非水混和性アルコ
ールとを、石油留分のような非水混和性溶媒に溶解せし
めた溶液を接触せしめてくえん酸を抽出し、得られたく
えん酸抽出液からくえん酸を熱水で逆抽出する方法があ
る(たとえば、特開昭57−72935号公報および特
公昭57−55443号公報)。この方法は前記の石灰
硫酸法に比して動力が少なくて済み、かつ、収率が高い
との利点がある。その反面、この方法は人体にとっては
有害であり、かつ、危険物である有機溶媒を使用してお
り、その取り扱いには法律上の規制があり、また、工場
全体の安全対策および機械の安全対策などのために、多
額の設備費が必要とされている。
【0006】また、この方法では、溶媒抽出は低温下で
行なわれ、水による逆抽出は高温下で行なわれるが、清
澄液中のくえん酸濃度が希薄であり、大量の溶媒および
大量の清澄液を低温域および高温域を交互に循環させな
ければならないために、冷却および加熱に多大なエネル
ギーが必要とされる。さらに、塩類を多量に含有する糖
蜜を原料として使用した場合には、逆抽出して得られた
くえん酸水溶液中には多量の塩類が含有されることにな
り、この塩類の除去が必要とされるが、この塩類を実質
的に完全に除去することは、工業規模では容易ではな
い。
【0007】反応生成液または培養清澄液に含有されて
いるくえん酸をアニオン交換樹脂に吸着させた後、くえ
ん酸を再生液である水酸化ナトリウム水溶液によってく
えん酸ナトリムに変換せしめて、これを溶離せしめ、次
いで、くえん酸ナトリウム水溶液である溶離液をカチオ
ン交換樹脂を通過せしめて、くえん酸ナトリウムをカチ
オン交換樹脂に吸着せしめた後、希硫酸によってくえん
酸をカチオン交換樹脂から溶離せしめるとの方法が有り
得る。この方法は、高価な電力を多量使用している苛性
ソーダおよび硫酸を多量に、かつ、回収することなく使
用しているために、運転コストが高額となり、また、芒
硝をはじめとする各種の塩類が副生され、これらの塩類
を実質的に完全に除去することは、工業規模ではこれま
た容易ではない。
【0008】本発明者らは、石灰ならびに硫酸およびア
ルカリなどの高価な副原料を使用しないか、または、そ
の使用量を節減してコストを低減せしめ、副生の石膏お
よび塩類を生成せしめることがなく、従って、これらの
副生物塩類を除去する必要がないのでそのための多額の
費用が節減でき、また、有機溶媒を使用しないので高額
な設備を要せず、工場災害を惹起する危険性がなく、衛
生上の問題および環境保全上の問題がなく、さらに、製
品中に各種の塩類が多量に含有されることがない高純度
の有機酸を高い収率で分離回収する方法および装置を開
発すべく、鋭意、研鑚を重ねた結果、本発明に到達し
た。
【0009】
【課題を解決するための手段、作用】すなわち、本発明
は、多塩基有機酸を含有する被処理液から該多塩基有機
酸を分離回収する方法において、多塩基有機酸を含有す
る被処理液をアニオン交換樹脂が充填された分離塔を通
過せしめて、該多塩基有機酸を該アニオン交換樹脂に吸
着せしめ、次いでアルカリ水溶液を再生液として該分離
塔を流下せしめて該多塩基有機酸をその塩として溶離せ
しめて該多塩基有機酸塩の水溶液として該分離塔から流
出せしめ、該多塩基有機酸塩の水溶液をイオン交換膜電
気透析設備に導き、ここで該多塩基有機酸塩を対応する
多塩基有機酸およびアルカリのそれぞれに変換せしめ、
該多塩基有機酸および該アルカリをそれぞれ水溶液とし
て該イオン交換膜電気透析設備から排出せしめて、該多
塩基有機酸水溶液を回収し、他方、アルカリ水溶液を前
記の分離塔に循環し再生液として再使用することを特徴
とする有機酸を分離回収する方法である。
【0010】また、本発明の装置は、多塩基有機酸を含
有する被処理液から該多塩基有機酸を分離回収する装置
において、多塩基有機酸を含有する被処理液を通過せし
めて該多塩基有機酸を吸着せしめるためのアニオン交換
樹脂が充填された分離塔に、該分離塔から排出せしめら
れた該多塩基有機酸の塩を対応する該多塩基有機酸とア
ルカリとに変換させるためのイオン交換膜電気透析設備
が連設され、該イオン交換膜電気透析設備には該イオン
交換膜電気透析設備から排出せしめられた該多塩基有機
酸水溶液を回収する回収管および該アルカリ水溶液を前
記の分離塔に戻すための循環管が配設されてなることを
特徴とする有機酸を分離回収する装置である。
【0011】本発明において分離回収される多塩基有機
酸は、たとえば、糖類などの炭水化物を基質とした醗酵
法で得られる多塩基有機酸であって、2塩基脂肪族酸乃
至3塩基脂肪族酸が好適であり、3塩基脂肪族酸が特に
好適である。なお、ここで、脂肪族酸とは、直鎖構造ま
たは分枝を有する鎖式構造を有する有機酸と定義され
る。これらの多塩基有機酸の代表例として、くえん酸を
はじめとしてイタコン酸、りんご酸およびフマル酸など
を挙げることができる。本発明の方法で処理される被処
理液は、目的物質である多塩基有機酸を含有してさえい
ればよく、特に制限はないが、前記のような醗酵法によ
って得られた培養液および培養液から菌体を除去した清
澄液が好適である。また、これらの多塩基有機酸は化学
反応によっても得られるが、この化学反応によって得ら
れた反応生成液を被処理液とすることを妨げない。さら
にまた、天然果汁のような天然物も被処理液とすること
ができる。
【0012】また、前記の清澄液および反応生成液のそ
れぞれを部分的に精製しただけで、十分に精製されてい
ない半精製品を被処理液とすることができる。これらの
被処理液の多塩基有機酸の濃度には、多塩基有機酸の種
類および分離塔に充填されたアニオン交換樹脂の種類な
どによって異なり、一概に特定し得ないが、実用上、通
常は、5〜30%(W/V)程度、好ましくは、10〜2
5%(W/V)程度とされる。たえば、多塩基有機酸がく
えん酸であり、アニオン交換樹脂が弱塩基性アニオン交
換樹脂である場合には、10〜25%(W/V)程度とさ
れる。
【0013】このような被処理液を、アニオン交換樹脂
が充填された分離塔を通過せしめて、被処理液に含有さ
れている多塩基有機酸を前記のアニオン交換樹脂に吸着
せしめる。分離塔に充填されるアニオン交換樹脂とし
て、実用上、通常は、弱塩基性アニオン交換樹脂が使用
される。使用される弱塩基性アニオン交換樹脂には特に
制限はなく市販品の何れでも使用し得るが、実用上、イ
オン交換容量が、1.2〜2.5ミリ当量(meq.)/ミリ
リットル(ml)(飽和湿潤樹脂)程度のものが好適に使
用される。なお、ここでイオン交換容量はイオン交換樹
脂の交換基の総数で表わされた、所謂、総交換容量とし
て定義される。
【0014】この弱塩基性アニオン交換樹脂の代表例と
して、ダイヤイオンWA-30(三菱化学株式会社の商
品)、アンバーライトIRA-410、アンバーライトIR-45お
よびアンバーライトIR-4B(いずれも、アンバーライト
Amberlite社の商品)ならびにダウエックスWGRおよびダ
ウエックスMWA-1(いずれもダウケミカル Dow Chemical
社の商品)などを挙げることができる。分離塔を流下せ
しめる被処理液の速度は、被処理液に含有されている多
塩基有機酸の種類および濃度、使用されるアニオン交換
樹脂の種類などによって異なり、一概に特定し得ない
が、実用上、通常は、アニオン交換樹脂1mlあたり毎時
1〜10ml程度、好ましくは、アニオン交換樹脂1mlあ
たり毎時2〜5ml程度とされる。この吸着工程におい
て、分離塔から排出された多塩基有機酸を実質的に含有
しない流出液は、所望により、活性汚泥処理などの各種
の処理を経て無害化されて、廃棄される。
【0015】多塩基有機酸を吸着したアニオン交換樹脂
は、アルカリ水溶液を再生液として該分離塔を流下せし
めて多塩基有機酸を多塩基有機酸塩に変換せしめ、これ
を溶離せしめて再生される。再生液としてのアルカリ水
溶液は、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニア水で
あり、就中、水酸化ナトリウムまたはアンモニア水が好
ましい。これらのアルカリ水溶液のアルカリの濃度は、
アニオン交換樹脂の種類、アニオン交換樹脂に吸着され
ている多塩基有機酸の種類およびアルカリの種類などに
よって異なり、一概に特定し得ないが、実用上、通常
は、0.1〜2規定(N)程度、好ましくは、0.5〜1.
5規定程度とされる。また、再生液の濃度に伴って溶離
液のpHも変動する。たとえば、アニオン交換樹脂が弱塩
基性アニオン交換樹脂であり、多塩基有機酸としてくえ
ん酸が吸着されており、再生液が水酸化ナトリウム水溶
液である場合に、再生液の水酸化ナトリウムの濃度を
0.5〜2.0N程度の範囲に保つことによって、溶離液
のpHは約2.0〜7.0の範囲に維持される。溶離液のpH
の変動は、溶離液のナトリウムなどのアルカリの含有率
が変動したためで、この含有率が高くなるに伴って溶離
液のpHは上昇する。
【0016】この再生工程において、多塩基有機酸は、
使用された再生液中のアルカリの塩としてアニオン交換
樹脂から溶離せしめられ、この多塩基有機酸のアルカリ
塩(以下 有機酸塩 と記すこともある)の水溶液が溶
離液として分離塔から排出せしめられる。アニオン交換
樹脂に吸着された多塩基有機酸は、その種々の塩または
それらの混合物として溶離液に含有されるが、この混合
物の塩の比率は再生液であるアルカリ水溶液の濃度と液
量とを制御して溶離液のpHを変化させることによって任
意に決定し得ることが判った。この溶離液自体、この溶
離液から所望のpHの区分を回収した液または常法によっ
て所望のpHに調整された溶離液は、電気透析に付され
る。
【0017】溶離液に含有される有機酸塩は、たとえ
ば、多塩基有機酸がくえん酸であり、再生液が水酸化ナ
トリウム水溶液である場合に、再生液の濃度を前記の範
囲に保持すれば、通常は、溶離液中のくえん酸は、くえ
ん酸第1ナトリウム(くえん酸水素1ナトリウムNaH2C6
H5O7)およびくえん酸第2ナトリウム(くえん酸2ナト
リウムNa2HC6H5O7)などの塩基性塩ならびにくえん酸第
3ナトリウム(くえん酸ナトリウムNa3C6H5O7 正塩)
などの混合物として得られる。この有機酸塩中の各塩相
互の比率は、再生液のアルカリ濃度と液量とを制御して
溶離液のpHを変化させることによって、任意に変化させ
ることができる。
【0018】前記の場合において、たとえば、溶離液の
pHを3.0〜6.0程度の範囲とすることにより、この溶
離液には、くえん酸が、くえん酸自体、くえん酸第1ナ
トリウム、くえん酸第2ナトリウムおよびくえん酸第3
ナトリウムなどの混合物(くえん酸1モルに対するナト
リウムの原子比1.6)が得られた。また、このような
くえん酸混合物を次の工程のイオン交換膜電気透析設備
によってその全量を分解してくえん酸とするための所要
電力量は、くえん酸第3ナトリウムのみから同様にして
くえん酸を得るための所要電力量の約1/2乃至2/3
で済むことも判明した。このように、この混合物の塩の
比率によって、次の工程のイオン交換膜電気透析設備の
所要電力量が変化する。
【0019】本発明の装置において、この分離塔を1本
または複数本とすることができる。この分離塔が1本の
場合には、この分離塔では、吸着、再生および洗浄が順
次行われるので分離塔からの溶離液は断続的に排出せし
められる。この場合には、分離塔の出口と、次の工程の
イオン交換膜電気透析設備との間に、緩衝タンクを設
け、この緩衝タンクに前記の分離塔からの溶離液を、一
旦、貯留せしめ、この緩衝タンクから溶離液をイオン交
換膜電気透析設備に連続的に供給して、多塩基有機酸を
連続的に分離回収することが好ましい。また、分離塔が
3本以上の場合には、吸着、再生および洗浄のそれぞれ
を、異なる分離塔で、並行して同時に行わせることによ
り、分離塔から溶離液を連続的に流出せしめ、次のイオ
ン交換膜電気透析設備を連続的に運転することができ、
多塩基有機酸の分離回収を連続して行うことができるの
で好ましい。
【0020】前記の分離塔から排出せしめられた溶離液
は、イオン交換膜電気透析設備に導かれ、ここで溶離液
中の多塩基有機酸塩は、該多塩基有機酸塩に対応する多
塩基有機酸とアルカリとに変換される。イオン交換膜電
気透析設備は、バイポーラ膜を具備しているものであれ
ばよく特に制限はなく、それ自体公知のものを何等制限
なく使用することができる。しかして、バイポーラ膜を
具備しているイオン交換膜電気透析設備には、バイポー
ラ膜とともに、カチオン交換膜および/またはアニオン
交換膜を具備しているものがある。
【0021】本発明において溶離液中の多塩基有機酸塩
がアンモニウム塩である場合に、この多塩基有機酸アン
モニウム塩を多塩基有機酸に効率よく変換せしめるため
には、バイポーラ膜とアニオン交換膜とを具備している
ものが好適に使用され、また、溶離液中の多塩基有機酸
塩がナトリウム塩などのアルカリ金属塩である場合に
は、この多塩基有機酸アルカリ金属塩を多塩基有機酸に
効率よく変換せしめるためには、バイポーラ膜とカチオ
ン交換膜とを具備しているものが好適に使用される。ま
た、多塩基有機酸塩としてアンモニウム塩を含有してい
る溶離液および多塩基有機酸としてアルカリ金属塩を含
有している溶離液は、それぞれ、該イオン交換膜電気透
析設備の電気透析槽のアルカリ室および酸室に供給され
る。多塩基有機酸およびアルカリは水溶液として、それ
ぞれ、該イオン交換膜電気透析設備の酸室およびアルカ
リ室から排出せしめられる。この多塩基有機酸水溶液は
回収され、所望により、脱色、濃縮および晶析などの処
理を経て、製品とされる。他方、このアルカリ水溶液
は、前記の分離塔に循環せしめられて、アニオン交換樹
脂の再生液として再使用される。
【0022】バイポーラ膜は、たとえば、「ソーダと塩
素」1994年第7号第18〜31頁、特に第23頁右欄に記載さ
れているように、「模式的には均質系のカチオン交換膜
とアニオン交換膜をはり合せたような構造であり、イオ
ンの透過はみられず、水の解離が促進され水素イオンと
水酸イオンへの分裂を促進する膜」と定義される。本発
明で使用されるバイポーラ膜の代表例として、ネオセプ
タBP-1(株式会社トクヤマの商品)を挙げることができ
る。
【0023】ここで使用されるカチオン交換膜は、カチ
オンの輸率が十分に大きく、反対荷電のイオンを実質的
に透過せしめないか、乃至は、この透過量が小さいもの
であればよく、特に制限はない。カチオン交換膜は、そ
のカチオンの輸率が、通常は、0.95以上、好ましく
は、0.98以上のものが使用される。また、反対荷電
のイオンの輸率が、通常は、0.05以下、好ましく
は、0.02以下のものが使用される。カチオン交換膜
の代表例として、ネオセプタCL-25T、ネオセプタCM-1、
ネオセプタCM-2、ネオセプタCMX、ネオセプタCMS、ネオ
セプタCLE-E、ネオセプタC66-10F、ネオセプタCMHおよ
びネオセプタCMB(いずれも株式会社トクヤマの商品)
などを挙げることができる。また、本発明で使用される
アニオン交換膜の代表例として、ネオセプタAM-1、ネオ
セプタAM-2、ネオセプタACS、ネオセプタAMH、ネオセプ
タAFMおよびネオセプタAMXなどを挙げることができる。
【0024】イオン交換膜電気透析設備における操作条
件は、設備自体の大きさ、イオン交換膜の種類、供給さ
れる溶離液の供給速度、溶離液に含有されている有機酸
塩の種類および濃度などによって異なり、一概に特定し
得ないが、ユニットセル(イオン交換膜の繰り返しの最
小単位 以下同様)あたりの印加電圧は、実用上、通常
は、1〜3ボルト(V)程度、好ましくは、1.5〜2V
程度とされ、また、電流は、実用上、通常は、1〜20
アンペア(A)/dm2程度、好ましくは、3〜15A/dm2
程度とされる。このイオン交換膜電気透析設備におい
て、分離塔からの溶離液中の多塩基有機酸塩は、対応す
る多塩基有機酸およびアルカリのそれぞれに変換せしめ
られて、該多塩基有機酸および該アルカリはそれぞれ水
溶液として、該イオン交換膜電気透析設備から排出せし
められる。
【0025】
【実施例】本発明を実施例によって、さらに具体的に説
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。 実施例1 培養液からのくえん酸の分離回収 醗酵によるくえん酸の製造および清澄液の取得: 培地組成 ぶどう糖 180g KH2PO4 1g MgSO4・7H2O 3g NH4NO3 2g K2SO4 1g これらを水に溶解して1lにする。
【0026】精製ぶどう糖を炭素源とする前記の組成の
培地3リットル(l)を用いて、アスペルギルス ニガ
Aspergillus niger を5日間、通気培養して、培養
液1lあたり153gのくえん酸が得られた。これは、対
糖収率85%に相当する。この培養液から遠心分離によ
って菌体を除去して、清澄液を得た。 吸着:この清澄液を、直径25mmの円筒カラムに、弱塩
基性アニオン交換樹脂としてダイヤイオンWA-30(商品
名 三菱化学株式会社の商品)500mlが充填された分
離塔の塔頂から、2.5l/hrの速度で供給して、該分離
塔内を流下せしめ、清澄液中のくえん酸を該弱塩基性ア
ニオン交換樹脂に吸着せしめた。このときの、くえん酸
の吸着量は、この弱塩基性アニオン交換樹脂1lに対し
て230gであった。
【0027】溶離:吸着が終了した後に、該アニオン交
換樹脂を1lのイオン交換水で洗浄した。その後、該分
離塔の塔頂から、再生液として1N水酸化ナトリウム水
溶液1.7lを流下せしめ、該弱塩基性アニオン交換樹脂
に吸着せしめられたくえん酸をくえん酸の各種ナトリウ
ム塩に変換せしめて溶離せしめ、該弱塩基性アニオン交
換樹脂を再生した。このときの溶離液のpH3.0〜6.0
の区分を分取して回収した。この回収液中のくえん酸濃
度およびナトリウム濃度は、それぞれ90g/lおよび1
8.8g/lであった。
【0028】イオン交換膜電気透析:このくえん酸のナ
トリウム塩を含有する回収液を、イオン交換膜電気透析
設備の酸室に供給して、電気透析に付した。該イオン交
換電気透析設備には、その透析槽内に、それぞれの有効
膜面積が2dm2のバイポーラ膜(ネオセプタBP-1 株式
会社トクヤマの商品)5枚およびカチオン交換膜(ネオ
セプタCMX 株式会社トクヤマの商品)6枚が交互に配
設されており、これらの膜により、透析槽内には、互い
に連接せしめられた5つのユニットセルが形成せしめら
れている。また、これらの膜と直交する透析槽の端部に
白金製の陰・陽電極がそれぞれ配設されている。
【0029】ここでの電気透析の初期条件は、回収液の
供給速度および電流密度をそれぞれ6.8リトル(l)/hr
および10A/dm2としたときには、セル電圧は、1.8
ボルト(V)/ユニットセルであった。このイオン交換膜
電気透析設備からアルカリ室液として10%(W/V)の
水酸化ナトリウム水溶液および酸室液として10%(W
/V)のくえん酸水溶液がそれぞれ1.2l/hrおよび3.
3l/hr排出された。このときの、消費電力量はくえん
酸1kgあたり0.55Kwhであり、くえん酸の収率は、分
離塔では98%、イオン交換膜電気透析設備では98%
であり、分離塔からイオン交換膜電気透析設備までの全
通収率は96%となる。また、水酸化ナトリウム水溶液
は、前記の分離塔に循環せしめられてアニオン交換樹脂
の再生液として再使用された。他方、くえん酸水溶液は
活性炭による脱色を経た後、濃縮、晶析により純度9
9.5%の無水くえん酸とされた。本実施例における無
水くえん酸の収率および純度は、ともに従来法における
よりもはるかに良好であった。
【0030】実施例2 培養液からのイタコン酸の分離
回収 醗酵によるイタコン酸の製造および清澄液の取得: 培地組成 ぶどう糖 130 g NaCl 0.4g NH4NO3 2.5g コーンスティープリカー 4 ml HNO3 1.6ml MgSO4・7H2O 4.4g KH2PO4 1 g これらを水に溶解して1lにする。
【0031】精製ぶどう糖を炭素源とする前記の組成の
培地3リットル(l)を用いて、アスペルギルス テル
Aspergillus terrus を植菌し、130時間、通気培
養して、培養液1lあたり72gのイタコン酸が得られ
た。これは、対糖収率55%に相当する。この培養液か
ら遠心分離によって菌体を除去して、清澄液を得た。 吸着:この清澄液を、直径25mmの円筒カラムに、弱塩
基性アニオン交換樹脂としてダイヤイオンWA-30(商品
名 三菱化学株式会社の商品)500mlが充填された分
離塔の塔頂から、2l/hrの速度で供給して、該分離塔
内を流下せしめ、清澄液中のイタコン酸を該弱塩基性ア
ニオン交換樹脂に吸着せしめた。このときの、イタコン
酸の吸着量は、この弱塩基性アニオン交換樹脂1lに対
して213gであった。
【0032】溶離:吸着が終了した後に、該アニオン交
換樹脂を1lのイオン交換水で洗浄した。その後、該分
離塔の塔頂から、再生液として0.5N水酸化ナトリウム
水溶液2lを流下せしめ、該弱塩基性アニオン交換樹脂
に吸着せしめられたイタコン酸をイタコン酸の各種ナト
リウム塩に変換せしめて溶離せしめ、該弱塩基性アニオ
ン交換樹脂を再生した。このときの溶離液のpH3.0〜
6.0の区分を分取して回収した。この回収液中のイタ
コン酸濃度およびナトリウム濃度は、それぞれ48g/l
および10g/lであり、これはイタコン酸1ナトリウム
とイタコン酸2ナトリウムとの混合物であり、そのモル
比は、イタコン酸1ナトリウム:イタコン酸2ナトリウ
ム=82:18に相当する。
【0033】イオン交換膜電気透析:このようにして得
られたイタコン酸のナトリウム塩を含有する回収液を、
実施例1で使用したと同様のイオン交換膜電気透析設備
の酸室に供給して、電気透析に付した。ここでの電気透
析の初期条件は、回収液の供給速度および電流密度をそ
れぞれ6.8リトル(l)/hrおよび10A/dm2としたとき
に、セル電圧は、1.8ボルト(V)/ユニットセルであっ
た。このイオン交換膜電気透析設備からアルカリ室液と
して10%(W/V)の水酸化ナトリウム水溶液および酸
室液として5.3%(W/V)のイタコン酸水溶液がそれ
ぞれ1.2l/hrおよび6.1l/hr排出された。このとき
の、消費電力量はイタコン酸1kgあたり0.56Kwhであ
り、イタコン酸の収率は、分離塔では90%、イオン交
換膜電気透析設備では98%であり、分離塔からイオン
交換膜電気透析設備までの全通収率は88%となる。ま
た、水酸化ナトリウム水溶液は、前記の分離塔に循環せ
しめられてアニオン交換樹脂の再生液として再使用され
た。他方、イタコン酸水溶液は活性炭による脱色を経た
後、濃縮、晶析により純度98%のイタコン酸とされ
た。
【0034】実施例3 培養液からのリンゴ酸の分離回
収 醗酵によるフマル酸からリンゴ酸の製造および清澄液の
取得: 培地組成 ぶどう糖 22 g 尿素 2 g KH2PO4 2 g コーンスティープリカー 10 ml MgSO4・7H2O 2 g フマル酸カルシウム 5 g これらを水に溶解して1lにする。
【0035】精製ぶどう糖を炭素源とする前記の組成の
培地3リットル(l)を用いて、ブレヴィバクテリウム
アンモニアゲネス Brevibacterium ammoniagenes
植菌し、24時間、通気培養した後、培養液1lあたり
220gのフマル酸を添加しアンモニア水で中和しなが
ら、引き続き24時間反応を行わせた。その結果、1l
あたり200gのリンゴ酸を含有する培養液が得られ
た。これは、フマル酸からリンゴ酸への反応収率78%
(モル/モル)に相当する。この培養液から遠心分離に
よって菌体を除去して、清澄液を得た。 吸着:この清澄液を、直径25mmの円筒カラムに、弱塩
基性アニオン交換樹脂としてダウエックスWGR(商品名
ダウケミカル社の商品)500mlが充填された分離塔
の塔頂から、2l/hrの速度で供給して、該分離塔内を
流下せしめ、清澄液中のリンゴ酸を該弱塩基性アニオン
交換樹脂に吸着せしめた。このときの、リンゴ酸の吸着
量は、この弱塩基性アニオン交換樹脂1lに対して21
9gであった。
【0036】溶離:吸着が終了した後に、該アニオン交
換樹脂を1lのイオン交換水で洗浄した。その後、該分
離塔の塔頂から、再生液として2Nアンモニア水0.8l
を流下せしめ、該弱塩基性アニオン交換樹脂に吸着せし
められたリンゴ酸をリンゴ酸の各種アンモニウム塩に変
換せしめて溶離せしめ、該弱塩基性アニオン交換樹脂を
再生した。このときの溶離液のpH3.0〜6.0の区分を
分取して回収した。この回収液中のリンゴ酸濃度および
アンモニウム濃度は、それぞれ130g/lおよび33g
/lであり、これはリンゴ酸2アンモニウムに相当す
る。
【0037】イオン交換膜電気透析:このようにして得
られたリンゴ酸のアンモニウム塩を含有する回収液を、
イオン交換膜電気透析設備のアルカリ室に供給して、電
気透析に付した。該イオン交換電気透析設備には、その
透析槽内に、それぞれの有効膜面積が2dm2のバイポー
ラ膜(ネオセプタBP-1 株式会社トクヤマの商品)6枚
およびアニオン交換膜(ネオセプタAMX 株式会社トク
ヤマの商品)5枚が交互に配設されており、これらの膜
により、透析槽内には、互いに連接せしめられた5つの
ユニットセルが形成せしめられている。また、これらの
膜と直交する透析槽の端部に白金製の陰・陽電極がそれ
ぞれ配設されている。
【0038】ここでの電気透析の初期条件は、回収液の
供給速度および電流密度をそれぞれ0.6リトル(l)/hr
および5A/dm2としたときに、セル電圧は、2.7ボル
ト(V)/ユニットセルであった。このイオン交換膜電気
透析設備からアルカリ室液として0.9%(W/V)のア
ンモニア水溶液が得られた。また、酸室には、この酸室
の電気伝導度を高めるために支持電解質として希硫酸が
供給されたが、酸室液として30%(W/V)のリンゴ酸
水溶液が0.26l/hrで排出された。
【0039】このときの、消費電力量はリンゴ酸1kgあ
たり1.77Kwhであり、リンゴ酸の収率は、分離塔では
95%、イオン交換膜電気透析設備では97%であり、
分離塔からイオン交換膜電気透析設備までの全通収率は
92%となる。また、アンモニア水溶液は、前記の分離
塔に循環せしめられてアニオン交換樹脂の再生液として
再使用された。他方、リンゴ酸水溶液は活性炭による脱
色を経た後、濃縮、晶析により純度99%のリンゴ酸と
された。これらの実施例における有機酸の収率および純
度は、ともに従来法におけるよりもはるかに良好であっ
た。
【0040】実施例4 有機酸分離回収装置 本発明の有機酸分離回収装置を、図面によって説明す
る。図1は、本発明の装置の原理を示すためのフローシ
ートである。この有機酸分離回収装置の、主要部は、3
本で1組の分離塔1,2および3、これらの分離塔に連設せ
しめられたイオン交換膜電気透析設備4ならびに該イオ
ン交換膜電気透析設備と分離塔とを接続するアルカリ液
循環管5および目的物質である多塩基有機酸を含有する
有機酸水溶液をイオン交換膜電気透析設備4から排出せ
しめるための有機酸液排出管9である。分離塔1,2および
3にはアニオン交換樹脂11,21および31がそれぞれ充填さ
れている。また、分離塔1,2および3には、塔頂に供給管
12,22および32がそれぞれ接続され、他方、塔底に排出
管13,23および33がそれぞれが接続されている。
【0041】排出管13、23および33は、分岐管14、24お
よび34のそれぞれを介して廃液管6に接続せしめられて
いる。さらに、排出管13、23および33は、連絡管15、25
および35のそれぞれを介して溶離液供給管7に接続せし
められている。溶離液供給管7および水供給管8は、イオ
ン交換膜電気透析設備4の頂部にそれぞれ接続せしめら
れている。
【0042】イオン交換膜電気透析設備4は、電気透析
槽41の内部に2枚のバイポーラ膜42,42と、該バイポー
ラ膜同士の間に介在せしめられたカチオン交換膜43とが
1組とされて並列して配設されている。また、電気透析
槽41の両端部には、それぞれ、陽極44および陰極45が設
けられている。このようにして、電気透析槽4の内部
は、これらの膜で仕切られて、陽極側から順次に透析室
46,47,48および49がそれぞれ形成せしめられている。カ
チオン交換膜43の陽極側の透析室47は酸室とされ、ま
た、カチオン交換膜43の陰極側の透析室48はアルカリ室
とされる。なお、溶離液供給管7および水供給管8は、前
記の酸室である透析室47およびアルカリ室である透析室
48にそれぞれ、接続されている。 透析室47の底部には
有機酸液排出管9が接続されている。また、透析室48の
底部にはアルカリ液循環管5が接続せしめられている。
アルカリ液循環管5の他端は、供給管12に、直接に、ま
た、供給管22および32に分岐管52および53を介してそれ
ぞれ接続されている。
【0043】分離塔1では脱液、洗浄が終了した処であ
り、ここでの排出液は排出管13、分岐管14および廃液管
6を順次経由せしめられて系外に排出せしめられ、所望
により、廃水処理に付される。分離塔2では多塩基有機
酸を吸着中であり、多塩基有機酸を含有する被処理液が
供給管22から供給され、塔内のアニオン交換樹脂21の層
を流下せしめられて、該被処理液中の多塩基有機酸は該
アニオン交換樹脂21に吸着され、他方、多塩基有機酸を
実質的に含有しない排出液は排出管23、分岐管24および
廃液管6を順次経由せしめられて系外に排出せしめら
れ、所望により、廃水処理に付される。
【0044】分離塔3では、多塩基有機酸を吸着したア
ニオン交換樹脂31の再生中であり、水酸化ナトリウムが
再生液として供給管32から供給され、アニオン交換樹脂
31の層を流下せしめられている。なお、この再生液は、
イオン交換膜電気透析設備4の透析室48からアルカリ液
循環管5および分岐管53を順次経由して循環せしめらた
アルカリ水溶液であり、不足分の再生液として新しいア
ルカリ水溶液が補充される。
【0045】この再生によって、アニオン交換樹脂31に
吸着されていた多塩基有機酸は多塩基有機酸のナトリウ
ム塩に変換せしめられてアニオン交換樹脂31から溶離せ
しめられ、多塩基有機酸の各種のナトリウム塩の水溶液
である溶離液として分離塔3の塔底から排出せしめら
れ、アニオン交換樹脂31は再生される。多塩基有機酸の
各種のナトリウム塩の水溶液である溶離液は、排出管3
3、連絡管35および溶離液供給管7を順次経由して、次の
イオン交換膜電気透析設備4の電気透析槽41の酸室であ
る透析室47に供給される。他方、水供給管8から水がア
ルカリ室である透析室48に補給される。
【0046】透析室47において、溶離液中の多塩基有機
酸の各種のナトリウム塩は多塩基有機酸イオンとナトリ
ウムイオンとに電解され、多塩基有機酸イオンは酸室で
ある透析室47に滞留するが、ナトリウムイオンはカチオ
ン交換膜43を透過してアルカリ室である透析室48に至
る。また、溶離液中の水および水供給管8から補給され
た水は透析槽41内の2枚のバイポーラ膜42,42の間で水
素イオンと水酸イオンとに電解され、2枚のバイポーラ
膜42,42を透過して水素イオンは陰極に向って、また、
水酸イオンは陽極に向って移動せしめられる。水素イオ
ンは、酸室である透析室47においてここに滞留している
多塩基有機酸イオンと結合して多塩基有機酸が生成され
る。この多塩基有機酸はその水溶液として有機酸液排出
管9を経由して回収される。
【0047】他方、水酸イオンは、アルカリ室である透
析室48内のナトリウムイオンと結合せしめられて水酸化
ナトリウムが生成される。この水酸化ナトリウムはその
水溶液としてアルカリ液循環管5、分岐管53および供給
管32を経由して、分離塔3の塔頂に再生液として戻され
る。また、不足分の水酸化ナトリウム水溶液は、アルカ
リ液補充管54から補充される。各分離塔でのこれらの工
程が終了すると、分離塔1,2および3では、それぞれ、吸
着、再生および脱液、洗浄の各工程に一斉に切換えら
れ、イオン交換膜電気透析設備に、引続いて溶離液が連
続して送られ、ここで溶離液中の有機酸塩は連続的に電
気透析に付される。
【0048】図2はバイポラー膜とカチオン交換膜との
複数組が具備されたイオン交換膜電気透析設備を示して
いる。すなわち、4枚のバイポラー膜42,42,42および42
のそれぞれの間に1枚のカチオン交換膜計3枚のカチオ
ン交換膜43,43および43が介在せしめられている以外
は、図1におけるイオン交換膜電気透析設備と本質的に
異なる処はない。
【0049】
【発明の効果】本発明によって、石灰ならびに硫酸およ
びアルカリなどの高価な副原料を使用しないか、また
は、その使用量を節減してコストを低減せしめ、副生の
石膏および塩類を生成せしめることなく、これらの石膏
および塩類を副生せしめないため、これらの副生物を除
去するための多額の費用が節減でき、有機溶媒を使用し
ないので高額な設備を要せず、工場災害を惹起する危険
性がなく、衛生上の問題および環境保全上の問題がな
く、さらに、製品中に各種の塩類が多量に含有されるこ
とがない高純度の多塩基有機酸を高い収率で分離回収す
ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の装置の原理を示すためのフロ
ーシートである。
【図2】図2はバイポラー膜とカチオン交換膜との複数
組が具備されたイオン交換膜電気透析設備を示してい
る。
【符号の説明】
1 分離塔 11 アニオン交換樹脂 12 供給管 13 排出管 14 分岐管 15 連絡管 2 分離塔 21 アニオン交換樹脂 22 供給管 23 排出管 24 分岐管 25 連絡管 3 分離塔 31 アニオン交換樹脂 32 供給管 33 排出管 34 分岐管 35 連絡管 4 イオン交換膜電気透析設備 41 電気透析槽 42 バイポーラ膜 43 カチオン交換膜 44 陽極 45 陰極 46 透析室 47 透析室 48 透析室 49 透析室 5 アルカリ液循環管 52 分岐管 53 分岐管 54 アルカリ液補充管 6 廃液管 7 溶離液供給管 8 水供給管 9 有機酸液排出管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 57/13 9450−4H C07C 57/13 57/15 9450−4H 57/15 59/245 9450−4H 59/245 59/265 9450−4H 59/265 (72)発明者 河野 吏志 東京都中央区佃2丁目17番15号 月島機械 株式会社内 (72)発明者 花田 文夫 山口県徳山市御影町1番1号 株式会社ト クヤマ内 (72)発明者 松永 義則 山口県徳山市御影町1番1号 株式会社ト クヤマ内 (72)発明者 小林 太郎 山口県徳山市御影町1番1号 株式会社ト クヤマ内

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多塩基有機酸を含有する被処理液から該
    多塩基有機酸を分離回収する方法において、多塩基有機
    酸を含有する被処理液をアニオン交換樹脂が充填された
    分離塔を通過せしめて、該多塩基有機酸を該アニオン交
    換樹脂に吸着せしめ、次いでアルカリ水溶液を再生液と
    して該分離塔を流下せしめて該多塩基有機酸をその塩と
    して溶離せしめて該多塩基有機酸塩の水溶液として該分
    離塔から流出せしめ、該多塩基有機酸塩の水溶液をイオ
    ン交換膜電気透析設備に導き、ここで該多塩基有機酸塩
    を対応する多塩基有機酸およびアルカリのそれぞれに変
    換せしめ、該多塩基有機酸および該アルカリをそれぞれ
    水溶液として該イオン交換膜電気透析設備から排出せし
    めて、該多塩基有機酸水溶液を回収し、他方、アルカリ
    水溶液を前記の分離塔に循環し再生液として再使用する
    ことを特徴とする有機酸を分離回収する方法。
  2. 【請求項2】 多塩基有機酸が2塩基脂肪族酸乃至3塩
    基脂肪族酸である請求項1記載の有機酸を分離回収する
    方法。
  3. 【請求項3】 多塩基有機酸がイタコン酸、りんご酸、
    フマル酸またはくえん酸である請求項2記載の有機酸を
    分離回収する方法。
  4. 【請求項4】 被処理液が、培養液または培養液を除菌
    して得られた清澄液である請求項1記載の有機酸を分離
    回収する方法。
  5. 【請求項5】 分離塔に充填されるアニオン交換樹脂が
    弱塩基性アニオン交換樹脂である請求項1記載の有機酸
    を分離回収する方法。
  6. 【請求項6】 アルカリが水酸化ナトリウムまたはアン
    モニア水である請求項1記載の有機酸を分離回収する方
    法。
  7. 【請求項7】 イオン交換膜電気透析設備が、バイポー
    ラ膜を具備するイオン交換膜電気透析設備である請求項
    1記載の有機酸を分離回収する方法。
  8. 【請求項8】 多塩基有機酸を含有する被処理液から該
    多塩基有機酸を分離回収する装置において、多塩基有機
    酸を含有する被処理液を通過せしめて該多塩基有機酸を
    吸着せしめるためのアニオン交換樹脂が充填された分離
    塔に、該分離塔から排出せしめられた該多塩基有機酸の
    塩を対応する該多塩基有機酸とアルカリとに変換させる
    ためのイオン交換膜電気透析設備が連設され、該イオン
    交換膜電気透析設備には該イオン交換膜電気透析設備か
    ら排出せしめられた該多塩基有機酸の水溶液を回収する
    回収管および該アルカリの水溶液を前記の分離塔に戻す
    ための循環管が配設されてなることを特徴とする有機酸
    を分離回収する装置。
  9. 【請求項9】 多塩基有機酸が2塩基脂肪族酸乃至3塩
    基脂肪族酸である請求項8記載の有機酸を分離回収する
    装置。
  10. 【請求項10】 多塩基有機酸が、イタコン酸、りんご
    酸、フマル酸またはくえん酸である請求項9記載の有機
    酸を分離回収する装置。
  11. 【請求項11】 被処理液が、培養液または培養液を除
    菌して得られた清澄液である請求項8記載の有機酸を分
    離回収する装置。
  12. 【請求項12】 分離塔に充填されたアニオン交換樹脂
    が弱塩基性アニオン交換樹脂である請求項8記載の有機
    酸を分離回収する装置。
  13. 【請求項13】 アルカリが水酸化ナトリウムまたはア
    ンモニア水である請求項8記載の有機酸を分離回収する
    装置。
  14. 【請求項14】 少なくとも3基の分離塔が配設されて
    なる請求項8記載の有機酸を分離回収する装置。
  15. 【請求項15】 イオン交換膜電気透析設備が、バイポ
    ーラ膜を具備するイオン交換膜電気透析設備である請求
    項8記載の有機酸を分離回収する装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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