JPH083193A - 新規生理活性物質 - Google Patents

新規生理活性物質

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JPH083193A
JPH083193A JP6136779A JP13677994A JPH083193A JP H083193 A JPH083193 A JP H083193A JP 6136779 A JP6136779 A JP 6136779A JP 13677994 A JP13677994 A JP 13677994A JP H083193 A JPH083193 A JP H083193A
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JP
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xaa
polypeptide
subunit
glu
lys
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Application number
JP6136779A
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English (en)
Inventor
Yoshihiro Fujimura
吉博 藤村
Yoshio Sawai
芳男 澤井
Shuji Miura
修治 三浦
Tomihisa Kawasaki
富久 川崎
Nami Hisamichi
奈美 久道
Yoshihiro Yanai
由太 谷内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yamanouchi Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Yamanouchi Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】分子量、構成成分、サイズおよびN末端アミノ
酸部分配列で特定されるトカラハブ由来のポリペプチド
であるトカラセチンに関する。 【効果】vWFと血小板膜GPIbの結合を阻害し、v
WF依存性の血小板凝集を阻害し、自体では血小板凝集
を惹起しない性質を有しており、高ずり応力による血小
板凝集のみを阻害する優れた抗血栓剤として、広範囲の
血栓塞栓症などの予防あるいは治療薬として有用。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、血小板の粘着・凝集を
阻害し、抗血栓作用を有するポリペプチドに関する。
【0002】
【従来の技術】動脈硬化、外科手術、外傷、分娩および
伝染性の疾病が血栓症すなわち血管内に血液の塊を形成
する危険の増大につながることは周知である。フォンウ
ィルブランド因子(von Willebrand Fa
ctor:以下vWFと略す)は、血液凝固第VIII
因子(血友病因子)と非共有結合による複合体を形成
し、担体蛋白としてその安定化および活性保持をはか
り、凝固血栓(二次止血)の形成に寄与する。もう1つ
の重要な働きは、生体内血管損傷部位における速やかな
血小板血栓(一次止血)形成への直接的な貢献である。
この一次止血は、血小板の血管内皮下組織への粘着、血
小板の活性化および粘着蛋白を介した血小板相互の凝集
[血小板膜糖蛋白(GP)IIb/IIIaとフィブリ
ノーゲンの結合が重要視されている]という一連の過程
で進行すると考えられているが、vWFはこの第一ステ
ップである露出血管内皮下組織に対する血小板の粘着反
応において両者間の架橋反応を促す分子糊としての役割
を果たしている。特に、vWFと血小板膜GPIbとの
結合反応が、血小板の内皮下組織への粘着に必須である
と考えられている。遺伝性出血性疾患として知られるフ
ォンウィルブランド病(vWFの量的あるいは質的異
常)やベルナール・スーリエ症候群(Bernard-Soulier
syndrome: 血小板膜GPIbの欠損症)において認めら
れる易出血傾向は生体内におけるこの反応の重要性を示
唆している。
【0003】vWFと血小板膜GPIbとの結合反応
は、 in vitro では、非生理的モジュレーターであるリ
ストセチン(抗生物質の一種)やボトロセチン[ブラジ
ル産響尾蛇ボトロップス ジャララカ(Bothrops jarar
aca )由来蛋白]を用いて再現され、上記先天性疾患の
臨床診断にも用いられている。しかしながら、in vivo
での反応メカニズムの詳細は未だ明らかではなく、以下
のような仮説が考えられている。すなわち、血管破綻部
位において、vWFは血管内皮下組織に結合し、その結
果、vWF分子上に構造変化が起こり、血小板膜GPI
bとの結合能が発現され、血小板膜GPIbと結合する
というものである。この仮説において、vWFは、正常
流血中では決して血小板膜GPIbとは結合せず、血管
破綻時あるいはある特殊な流体力学下(高ずり応力)
で、はじめて結合することになる。高ずり応力は、動脈
硬化等の強い血管狭窄を伴う部位に発生し、病態とのか
かわりが最近特にクローズアップされてきた。高ずり応
力で誘導される血小板の凝集には、vWFと血小板膜G
PIbおよびvWFと血小板膜GPIIb/IIIaと
の結合が重要であり、一方、低ずり応力で誘導される血
小板の凝集には、フィブリノーゲンと血小板膜GPII
b/IIIaとの結合が重要視されている。
【0004】このような背景から、近年、vWFと血小
板膜GPIbの結合を抑制し、高ずり応力による血小板
の凝集のみを阻害する新しい抗血栓剤創製の試みがなさ
れている。Pengら(Biochemistry, 30, 11529-1153
6, 1991)は、ある種の蛇毒から血小板膜GPIbに作
用し、vWFの結合を阻害する新しい蛇毒蛋白アルボア
グレギンB(AL−B)を報告した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この蛋
白AL−Bはそれ自体で血小板凝集を惹起してしまい、
医薬品としての発展性を考慮すると、大きな障害となる
ことが予想される。本発明は、vWFと血小板膜GPI
bの結合を阻害し、vWF依存性の血小板凝集を阻害
し、自体では血小板凝集を惹起しない性質を有するポリ
ペプチドを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような状況下に、本
発明者らはトカラハブの毒液中に、vWF依存性の血小
板凝集を阻害する蛋白の存在を推定して鋭意探索した結
果、vWFと血小板膜GPIbの結合を阻害し、vWF
依存性の血小板凝集を阻害し、自体では血小板凝集を惹
起しない性質を有するポリペプチドを単離することに成
功し本発明を完成させるに至った。
【0007】すなわち、本発明は、下記物理化学的性質
で特定されるポリペプチドである。 (1)分子量、構成成分、サイズ:SDS−ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)の分析に
よる分子量が、28,900±5,000であり、還元
後16,100±3,000であるサブユニットα、1
5,400±3,000であるサブユニットβとからな
るポリペプチド。 (2)N末端アミノ酸部分配列: (a)ポリペプチドのサブユニットα:配列表1 (b)ポリペプチドのサブユニットβ:配列表2 (配列中、 Xaa はアミノ酸残基を意味する。)
【0008】本発明のポリペプチドは、 (a)リストセチンおよび/またはボトロセチンによる
ヒトホルマリン固定浮遊血小板およびヒト多血小板血漿
の凝集を阻害する。 (b)ウシvWFによるヒトホルマリン固定浮遊血小板
の凝集を阻害する。 (c)リストセチンおよび/またはボトロセチンによる
vWFのヒトホルマリン固定血小板への結合を阻害す
る。 (d)ヒト多血小板血漿を用いた高ずり応力により誘導
した血小板凝集を阻害するが、低ずり応力のそれは阻害
しない。 (e)ポリペプチド単独ではヒト固定血小板の凝集を惹
起しない。という薬理学的性質によっても特徴づけられ
るものである。なお、ポリペプチドは、 (f)GPIb結合蛋白であり、その結合部位がvWF
結合部位と同一かその近傍である。 (g)還元すると終濃度3μg/mlでvWF依存性血小板
凝集阻害活性を失う。という性質をも有している。 従って、本発明には、上記(1)および(2)によって
特定される構造を有するポリペプチドは勿論、本発明ポ
リペプチドのアミノ酸配列中の一またはそれ以上の部位
において、一またはそれ以上のアミノ酸が欠失し、挿入
されまたは置換したポリペプチドも、上記ポリペプチド
のもつ(a)乃至(g)の性質、すなわちvWFと血小
板膜GPIbの結合を阻害し、vWF依存性の血小板凝
集を阻害し、自体では血小板凝集を惹起しない性質を有
することがあるので、かかる同効のポリペプチド(以下
同効物という)も含まれる。本発明における特に好適な
ポリペプチドとしては、上記トカラハブの蛇毒由来のポ
リペプチドあるいはその同効物、とりわけ本発明者らに
よって命名されたトカラセチン(Tokaracetin)あるい
はその同効物が挙げられる。
【0009】なお、本明細書において、ペプチドのN末
端部分アミノ酸配列の表記は、慣例に従い、左端をN末
端とし、C末端方向へ順に右に記載し、またIUPAC
−IUB生化学命名委員会による略号あるいは当該分野
における慣用略号に基づき、以下に例示したような三文
字表記のアミノ酸記号を用いて行っている。アラニン
Ala、アルギニン Arg、アスパラギン Asn、
アスパラギン酸 Asp、システイン Cys、グルタ
ミン酸 Glu、グルタミン Gln、グリシン Gl
y、ヒスチジン His、イソロイシン Ile、ロイ
シンLeu、リジン Lys、メチオニン Met、フ
ェニルアラニン Phe、プロリン Pro、セリン
Ser、トレオニン Thr、トリプトファン Tr
p、チロシン Tyr、バリン Val。また、Xaa
が示すアミノ酸残基は、天然のアミノ酸残基であればよ
く、具体的には例えば上述したアミノ酸の残基が挙げら
れる。
【0010】本発明の生理活性ポリペプチドは、ペプチ
ド合成装置を使用する合成方法によって製造することも
可能であるが、天然物からの単離精製法によって生産す
ることができる。天然物の起源としては、本発明ペプチ
ドの起源であるトカラハブ[Trimeresurus tokarensi
s]の蛇毒が最適なものとして挙げられるが、この蛇毒
のみに限定されるものではなく、上記(1)および
(2)の理化学的性質を備えたポリペプチド、あるいは
上記(a)乃至(g)の性質を有するポリペプチドの同
効物を含有する天然物であればよい。単離・精製は、例
えば天然物として蛇毒を用いるときは、蛇毒から粗毒を
抽出するかまたはせずして、前記(a)乃至(e)の特
性であるリストセチン、ボトロセチンによる血小板凝集
阻害活性、リストセチン、ボトロセチンによるvWFの
血小板への結合阻害活性、ずり応力により誘導した血小
板凝集阻害活性、およびペプチド自体の血小板凝集性、
必要によりさらに上記(f)乃至(g)の特性をも指標
としながら、種々の吸着剤に対する吸着親和性の差、種
々の溶剤に対する溶解性あるいは溶解度の差、2種の混
じり合わない液相間の分配の差、分子の大きさに基づく
溶出速度の差、溶液からの析出性あるいは析出速度の差
などを利用する種々の手段を適用して行われる。これら
の手段は、必要に応じて、単独であるいは任意の順序に
組合せ、また反復して適用することができる。粗毒を抽
出するときは、ポリペプチドを溶解可能な溶媒、ことに
メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアル
コール系の溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセ
トン、メチルエチルケトン、エーテル、テトラヒドロフ
ラン、ジオキサン、ジメチルスルオキシド、酢酸エチル
やアセトニトリルなどの有機溶媒や水、あるいはこれら
の混合溶媒を用い、必要なら加温撹拌下に行なうのが有
利である。 また、単離精製手段としては、特にSP−
セファロース(SP-Sepharose)FF、ヘパリン−セファ
ロース(Heparin-Sepharose)CL−6B、フェニル−
5PW(Phenyl−5PW)などをカラム充填剤とするカラ
ムクロマトグラフィーや限外濾過などに付して実施する
のが有利である。
【0011】本発明の新規生理活性物質の特性は、下記
の方法により、定められたものである。 (物質)トカラハブ由来の蛇毒(凍結乾燥品)は日本蛇
族学術研究所より入手した。なお、トカラハブはクサリ
ヘビ科マムシ亜科に属し、トカラ列島の宝島と小宝島に
生息する特産種である(伏谷ら編,動物成分利用集成
水産・蛇・昆虫・漢方薬篇,p132,R&Dプランニ
ング,東京,1986)。捕獲は容易であり、毒の収量
もよいことから安価に得ることが出来る。粗毒を収集す
る方法は、まずトカラハブを生きたまま保定し、円錐形
液量器の縁を咬ませて蛇毒を吐き出させ、これを多量に
集めた後、若干の蒸留水で薄め、冷却遠心機により5℃
で遠心分離し、その上清を凍結乾燥することにより得ら
れる。このようにして得られた粗毒の凍結乾燥品は冷蔵
庫で保管することができる。また、SPセファロース、
ヘパリンセファロースはファルマシア社から、フェニル
−5PWは東ソーの製品を使用した。アクアサイドII
はカルビオケム社より購入した。
【0012】(血小板の調製)健常人(成人、男子)よ
り1/10容クエン酸ナトリウムにて採血を行い、DeMa
rco らの方法(J.Clin.Invest., 77, 1272-1277, 198
6)に従い多血小板血漿を、MacFarlane らの方法(Thro
mb.Diath.Haemorrh., 34, 306, 1975)に従い固定血小
板を調製した。
【0013】(血小板凝集アッセイ)凝集惹起剤である
リストセチンはコスモバイオ社より購入し、用いた二本
鎖ボトロセチンは、藤村らの方法(Biochemistry, 30,
1957-1964, 1991)により調製した。ヒトvWFは、De
Marco らの方法(J.Clin.Invest., 68, 321-328, 198
1)により調製し使用した。多血小板血漿、固定血小板
ともに自動血球計数器(MEK−5158、日本光電)
にて 3x108 /ml に調製して使用した。血小板凝集能
は、血小板凝集計(NBSヘマトレーサー801、二光
バイオサイエンス)を用いて測定した。すなわち、多血
小板血漿の場合血小板(80 μl)とサンプル(10 μl)
を37℃で3分間インキュベート後、リストセチン(1
mg/ml)あるいはボトロセチン(5 μg/ml)を 10 μl
添加し、透過光の変化を5分間記録し、その最大凝集率
から凝集阻害率を算出した。固定血小板の場合、血小板
(70μl)と精製ヒトvWF(5 μg/ml,10 μl)とサン
プル(10 μl)を37℃で3分間インキュベート後、リ
ストセチン(1 mg/ml)あるいはボトロセチン(5 μg/m
l)を 10 μl添加し、同様の方法で凝集阻害率を算出し
た。凝集惹起活性は、ヒト固定血小板(80 μl)と精製
ヒトvWF(5μg/ml, 10μl)を37℃で3分間インキ
ュベート後、サンプルを 10 μl 添加し、上記凝集計に
より凝集惹起活性を確認した。
【0014】(125IヒトvWFの固定血小板への結合
評価系)125I−ヨウ化ナトリウム(Na125I;アマシ
ャム社)を使用し、ヨードジェン(IodoGen)法による
精製ヒトvWFの125Iラベルを行った。放射比活性は
約3μCi/μgであった。バインディングアッセイは、藤
村らの方法(Blood, 77, 113-120, 1991)により行っ
た。すなわち、ヒト固定血小板(1x108/ml)、サンプ
ル、125I−vWF(1 μg/ml)、リストセチン(1 mg/
ml)あるいはボトロセチン(10 μg/ml)を30分間室
温にてインキュベート後、20%シュクロース上に載せ
10,000 gで5分間の遠心操作により血小板を遠沈し、結
合放射活性の測定を行った。なお、非特異的結合数はリ
ストセチンあるいはボトロセチンを添加しない場合の放
射活性により求め、これを総結合数から差し引くことに
より特異的結合数を算出した。
【0015】(GPIbへの結合評価系)トカラセチン
のGPIbへの結合部位がvWF結合部位と同一かその
近傍であることは、トカラセチンのヒト固定血小板への
結合を、GPIb上のvWF結合部位を認識する抗GP
Ibモノクローナル抗体が阻害することにより確認し
た。125I−ヨウ化ナトリウム(Na125I;アマシャム
社)を用いて、ヨードジェン法にてトカラセチンのヨー
ドラベルを行った。バインディングアッセイは、Pen
gらの方法(Biochemistry 30,11529-11536,1991)によ
り行った。この際用いる抗体は、GPIb上のvWF結
合部位を認識する抗GPIbモノクローナル抗体であれ
ばいずれも用いることができるが、例えば、GUR20
−5(宝酒造)が使用できる。
【0016】(ずり応力依存性血小板凝集能評価系)コ
ーンプレート回転粘度計を用いて、福山らの方法(Thro
mb.Res., 54, 253-260, 1989)により測定した。すなわ
ち、既述多血小板血漿 360 μl とサンプル40 μl を添
加後、最初の15秒間 6 dyn/cm2 で、次の90秒間で
6 から 12 dyn/cm2 へ、さらに2分間で 12 から 108 d
yn/cm2 へとずり応力を変化させ、最後の90秒間 108
dyn/cm2 での凝集を観察した。
【0017】(蛋白濃度測定法)サンプルの蛋白濃度
は、バイオラッド社の色素結合アッセイキットを用い、
標準物質にウシ血清アルブミンを用いた標準曲線を基に
決定した。
【0018】(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳
動)Laemmli の方法(Nature, 227, 680-685, 1970)に
準拠し、16%のSDS-PAGEを用いて、蛋白量 1
μg で、非還元条件下および還元条件下に実施した。還
元サンプルバッファーは、終濃度5%にβ−メルカプト
エタノールを添加して調製し、サンプルにサンプルバッ
ファー1/2量を混合し、95℃4分間加温処理した。泳
動後のゲルは10%酢酸を含む30%イソプロピルアル
コール溶液に溶解したクマシーブリリアントブルーR−
250で染色し、5%酢酸を含む16.5%メタノール
溶液で脱色した。
【0019】(N末端アミノ酸配列決定)純化したポリ
ペプチドは、トリ−n−ブチルホスフィン(還元剤)お
よび4−ビニルピリジンにて還元ピリジルエチル化し、
逆相HPLC[充填剤:シンクロパック(Synchropak)
RP-18(シンクローム社)]にてトカラセチン−α、−
βに分け、それぞれについて気相アミノ酸シークエンサ
ー(Applied Biosystems,USA)で、N末端アミノ酸シー
クエンスを決定した。
【0020】
【発明の効果】本発明のポリペプチドは、前記のごとく
vWFと血小板膜GPIbの結合を阻害し、vWF依存
性の血小板凝集を阻害し、自体では血小板凝集を惹起し
ない性質を有しており、高ずり応力による血小板凝集の
みを阻害する優れた抗血栓剤として、血管の炎症並びに
代謝障害に基づく広範囲の血栓塞栓症の予防あるいは治
療薬として有用である。本発明のポリペプチドを有効成
分とする医薬組成物は、細菌や発熱物質を完全に除去し
たポリペプチドと通常製薬学的に許容される製剤化成
分、例えば希釈剤、安定化剤などの添加剤(例えば、生
理食塩水、注射用蒸留水、各種緩衝液、白糖、乳糖、ブ
ドウ糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトールな
どの糖類、アルギニン、グリシンなどのアミノ酸、モノ
エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノー
ルアミンなどのエタノールアミン類、ポリオキシエチレ
ン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン
高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油
などの界面活性剤その他常用の添加剤)を用いて、通常
注射剤(液剤、用時溶解型の凍結乾燥製剤など)として
調製され、非経口投与(例えば、静脈注射あるいは皮下
注射など)されるが、経口投与も可能である。
【0021】
【実施例】以下に実施例を掲記し本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明が実施例のみに限定されるべきでな
いことは勿論である。
【0022】実施例1(精製方法) 第1段階(step1):SPセファロースFFカラム
クロマトグラフィー 0.05%アジ化ナトリウム(NaN3)を含む50mMトリス塩酸
バッファー(0.05% NaN3 添加)pH 7.5(バッファー
A)200mlに溶解した2gの粗毒(不溶物質は2,50
0g,15分の遠心後除去)を出発材料に、バッファー
Aにて平衡化したSPセファロースFFカラム(1.6x25
cm)にサンプルを添加後、同バッファーにて流速60 ml
/hrで12時間洗浄し、素通り画分を除去後、0→0.3 M
塩化ナトリウムを用いたバッファーAのグラジエントを
同流速にて13時間の溶出を行ない、10mlずつの分
画に採取した。各分画のvWF依存性凝集を、ヒト固定
血小板を用いたウシ精製vWF凝集阻害を指標としてア
ッセイを行い、大きく3つの阻害活性画分を得た。3番
目の分画をプールし、ダイアフローメンブレン(PM1
0:アミコン)を用いて、限外濾過(モデル8050、
アミコン)を行い、全量約20mlに濃縮した後、0.1
M トリス塩酸バッファー(0.05% NaN3添加 pH7.4)(バ
ッファーB)に対し、4℃にて1昼夜透析した。
【0023】第2段階(step2):ヘパリンセファ
ロースCL−6Bカラムクロマトグラフィー step1において得た画分を、バッファーBにて1昼
夜平衡化したヘパリンセファロースCL−6Bカラム
(1.6x20 cm)に添加し、同バッファーにて流速60ml/hr
にて6時間洗浄し、素通り画分を除去後、0→0.4
M塩化ナトリウムを用いたバッファーBのグラジエント
を同流速にて11時間の溶出を行い、10mlずつの分
画に採取した。step1同様のアッセイにより阻害活
性画分をプールし、既述の方法にて、全量約10mlに
濃縮し、1.5M硫酸アンモニウムを含む50mM酢酸ナトリウ
ム pH 6.0(バッファーC)に対し、4℃にて1昼夜透
析した。
【0024】第3段階(step3):フェニルクロマ
トグラフィー 上記活性画分をバッファーCにて平衡化したフェニル−
5PW(Phenyl-5PW)カラム(7.5 mm×7.5 cm)に添加
しバッファーCの流速 1 ml/min でカラムを洗浄し、素
通り画分を採取した。サンプルは限外濾過(既述)とア
クアサイドIIで濃縮後、生理食塩水を用いて4℃にて
1昼夜透析した。ポリペプチドは濃縮後既述の蛋白定量
を行った。
【0025】step3の工程を経て得られたポリペプ
チドの活性を確認した結果は以下の通りである。 (1)血小板凝集阻害 これらポリペプチドは、ヒト固定血小板及びヒト多血小
板血漿のリストセチン、ボトロセチン凝集を 3 μg/ml
で完全に阻害した。また、ヒト固定血小板のウシvWF
による凝集を 3 μg/ml で完全に阻害した。さらに、ヒ
ト多血小板血漿のADP、コラーゲン凝集に対し 30 μ
g/ml で影響を与えなかった。 (2)バインディングアッセイ これらポリペプチドは、ボトロセチンによる125I−ヒ
トvWFのヒト固定血小板への結合、および125I−ウ
シvWFのヒト固定血小板への結合を 1 μg/mlで完全
に阻害した。 (3)ずり応力誘導血小板凝集阻害 これらポリペプチドは、ヒト多血小板血漿を用いた高ず
り応力により誘導した血小板凝集を 3 μg/ml で完全に
阻害したが、低ずり応力のそれは阻害しなかった。 (4)血小板凝集惹起活性 これらポリペプチドは、30 μg/ml で、ヒト固定血小板
の凝集を全く惹起しなかった。
【0026】純化したポリペプチド(蛋白量 1 μg)に
ついて、ウサギ筋肉由来のフォスフォリラーゼB(97.4
Kd)、牛血清由来の血清アルブミン(66.2 Kd)、卵白
由来のオバルブミン(45 Kd)、牛由来のカーボニック
アンヒドラーゼ(31 Kd)、大豆由来のトリプシンイン
ヒビター(21.5 Kd)および卵白由来のリゾチーム(14.
4 Kd)をスタンダードとする16%のSDS−PAGE
で、非還元条件下および還元条件下に分子量を検量線を
用いて正確に計算したところ、還元前28,900、還
元後16,100および15,400のサブユニットか
らなることが判明した。
【0027】本発明者らは、このようにして得られたポ
リペプチドが上記各性質を有するものとして新規な物質
であると認め、トカラセチン(Tokaracetin)(還元前
SDS−PAGE分析で分子量が28,900と認めら
れたポリペプチド))と、還元後分離されたポリペプチ
ドにつき、トカラセチンサブユニットα(還元後SDS
−PAGE分析で分子量が16,100と認められたポ
リペプチド)、トカラセチンサブユニットβ(同15,
400)と命名した。
【0028】以上の結果から、本発明のトカラセチン
は、SDS−PAGEの分析による分子量が、28,9
00±5,000であり、還元後16,100±3,0
00であるサブユニットα、15,400±3,000
であるサブユニットβからなるヘテロダイマーであると
認められた。
【0029】step3の精製工程を経て得られたトカ
ラセチンの還元前および還元条件下における16%グラ
ジェントSDS−PAGEの泳動パターンを図1に示
す。図中レーン1は、上述SDS−PAGE分析の分子
量スタンダードであり、97.4 Kdはウサギ筋肉由
来のフォスフォリラーゼB、66.2 Kdは牛血清由来の血
清アルブミン、45 Kdは卵白由来のオバルブミン、31 Kd
は牛由来のカーボニックアンヒドラーゼ、21.5 Kdは大
豆由来のトリプシンインヒビター、14.4 Kdは卵白由来
のリゾチームである。図中レーン2は、step3で得
られたトカラセチン(1μg)の非還元条件下における泳
動パターンであり、同様にレーン1のスタンダードに対
する分子量として、約 28.9 Kdと算出されたものであ
る。レ−ン3は、step3で得られたトカラセチン
(1 μg)の還元条件下における泳動パターンであり、
レーン1のスタンダードに対する分子量として検量線を
用いて約 16.1 Kdと算出されたものがトカラセチンサブ
ユニットαであり、同様に約 15.4 Kdと算出されたもの
がトカラセチンサブユニットβである。
【0030】step3の精製工程で得られたトカラセ
チンを炭酸アンモニウムに透析後凍結乾燥した粉末をサ
ンプルとし、このサンプル 300 mg に塩酸グアニジン 6
00 mg を添加し、400 μl の 0.3M トリス塩酸バッファ
ー(pH 8.3)を加えて撹拌し、200 μl のミリキュー
(MilliQ)水を加えて約 1 mlとした。20 μl のトリ−
n−ブチルホスフィン(還元剤)、次に 10 μl の4−
ビニルピリジンを加え3時間放置後、逆相HPLC[充
填剤:シンクロパック(Synchropak) RP-18]にてトカ
ラセチン−α、−βに分け、これらについて既述の方法
でN末端アミノ酸部分配列を確認した結果、それぞれ配
列表1、2の配列であることが確認された。
【0031】step3で得られたトカラセチンについ
て、その活性を確認したところ、トカラセチンは、ヒト
固定血小板及びヒト多血小板血漿のリストセチン、ボト
ロセチン凝集を 3 μg/ml で完全に阻害し、ヒト多血小
板血漿のADP、コラーゲン凝集に対し 30 μg/ml で
影響を与えなかった。また、バインディングアッセイの
ボトロセチンによる125I−ヒトvWFのヒト固定血小
板への結合および125I−ウシvWFのヒト固定血小板
への結合を 1 μg/ml で完全に阻害した。また、トカラ
セチンは 30 μg/ml でヒト固定血小板の凝集を全く惹
起せず、自体では血小板凝集を惹起しないことが確認さ
れた。
【0032】実施例2(トカラセチンの還元アルキル
化) 実施例1のstep3で得られたトカラセチンの 300
μg/ml を、10 mM ジチオスレイトール(DTT:dithiothr
eitol)を含む 50 mM トリス塩酸バッファー(pH 8.6)
で37℃、30分間インキュベート後、80 mM ヨードア
セトアミド(IAA:iodoacetamide)を含む 50 mM トリス
塩酸バッファー(pH 8.6)を添加し、室温で30分間放置
した。SDS−PAGEによる分子量測定を行い、トカ
ラセチンが16,1、15,4Kdのサブユニットに還
元されたことを確認した。この還元トカラセチンのvW
F依存性血小板凝集阻害活性はウシ精製vWF 5 μg/m
lによるヒト固定血小板凝集阻害により確認した。その
結果、還元トカラセチン(終濃度3μg/ml)のvWF
依存性血小板凝集阻害活性は、完全に消失していた。
【0033】実施例3(125I−トカラセチンのヒト固
定血小板への結合)125 I−ヨウ化ナトリウム(Na125I;アマシャム社)
を用いて、ヨードジェン法にてトカラセチンのヨードラ
ベルを行った。ラベル蛋白の放射比活性は、2〜3.4 μC
i/μg であった。この125I−トカラセチン(1 μg/m
l)は、ヒト固定血小板に強く結合し、この結合は飽和
的であった。また、この結合は、GPIb上のvWF結
合部位を認識することが既に確認されている抗GPIb
モノクローナル抗体(10 μg/ml)により完全に阻害さ
れた。つまり、トカラセチンは、GPIb結合蛋白であ
り、かつその結合部位はvWF結合部位と同一かその近
傍にあることが判明した。スキャッチャードプロット
(Scatchard Plot)による解析の結果、結合のKd値は
3.91±1.36 nmol/lであり、血小板1個あたりの結合数
は 47,440±2,780 であった。
【0034】
【配列表】配列番号:1 配列の長さ:49 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド フラグメント型:N末端フラグメント 配列: Asp Cys Pro Ser Gly Trp Ser Ser Phe Lys Gln Tyr Cys Tyr Lys 1 5 10 15 Pro Phe Lys Gln Leu Lys Thr Trp Glu Asp Ala Glu Arg Phe Cys 16 20 25 30 Leu Glu Gln Val Lys Gly Ala His Leu Val Ser Ile Glu Xaa Tyr 31 35 40 45 Xaa Xaa Ala Val 46
【0035】配列番号:2 配列の長さ:43 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド フラグメント型:N末端フラグメント 配列: Asp Cys Pro Ser Asp Trp Ser Ser Tyr Asp Glu His Cys Tyr Arg 1 5 10 15 Val Phe Gln Gln Lys Met Asn Trp Glu Asp Ala Glu Lys Phe Cys 16 20 25 30 Thr Gln Gln His Lys Gly Xaa His Leu Xaa Xaa Tyr Glu 31 35 40
【図面の簡単な説明】
【図1】トカラセチンの非還元条件下、還元条件下にお
けるSDS−PAGE分析による電気泳動パターンを示
す図面である。図中、レーン1は相対的に低分子量のス
タンダード、レーン2はトカラセチン(非還元条件
下)、レーン3はトカラセチン(還元条件下)の泳動パ
ターンである。左側の数値(Kd)はスタンダードの分子
量を、右側に記載した数値は本発明トカラセチンの分子
量とトカラセチン−α、トカラセチン−β(それぞれ
α、βで記述)のサブユニットのサイズをそれぞれ示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三浦 修治 奈良県橿原市南八木町2丁目4番地6 (72)発明者 川崎 富久 茨城県つくば市千現1丁目18番地5 パレ スハピネス203 (72)発明者 久道 奈美 茨城県つくば市春日2−37 2−402号 (72)発明者 谷内 由太 茨城県つくば市二の宮3丁目13番地1 ル ーミーにのみや423

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の物理化学的性質で特定されるポリペ
    プチド。 (1)分子量、構成成分、サイズ:SDS−ポリアクリ
    ルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)の分析に
    よる分子量が、28,900±5,000であり、還元
    後16,100±3,000であるサブユニットα、1
    5,400±3,000であるサブユニットβとからな
    るポリペプチド。 (2)N末端アミノ酸部分配列: (a)ポリペプチドのサブユニットα; Asp Cys Pro Ser Gly Trp Ser Ser Phe Lys Gln Tyr Cys Tyr Lys Pro Phe Lys Gln Leu Lys Thr Trp Glu Asp Ala Glu Arg Phe Cys Leu Glu Gln Val Lys Gly Ala His Leu Val Ser Ile Glu Xaa Tyr Xaa Xaa Ala Val (b)ポリペプチドのサブユニットβ; Asp Cys Pro Ser Asp Trp Ser Ser Tyr Asp Glu His Cys Tyr Arg Val Phe Gln Gln Lys Met Asn Trp Glu Asp Ala Glu Lys Phe Cys Thr Gln Gln His Lys Gly Xaa His Leu Xaa Xaa Tyr Glu (式中 Xaa は、アミノ酸残基を意味する)
  2. 【請求項2】 トカラハブ[Trimeresurus tokarensis]
    由来のものである請求項1記載のポリペプチド。
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