JPH08310956A - 7−チアプロスタグランジン類を活性成分として含有する細胞遊走阻害剤およびその製造法 - Google Patents

7−チアプロスタグランジン類を活性成分として含有する細胞遊走阻害剤およびその製造法

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JPH08310956A
JPH08310956A JP11695195A JP11695195A JPH08310956A JP H08310956 A JPH08310956 A JP H08310956A JP 11695195 A JP11695195 A JP 11695195A JP 11695195 A JP11695195 A JP 11695195A JP H08310956 A JPH08310956 A JP H08310956A
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JP11695195A
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Kenichiro Kataoka
健一郎 片岡
Hiroko Tanaka
寛子 田中
Kunito Watanabe
邦人 渡辺
Noriaki Endo
則明 遠藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ケモカイン、例えばモノサイト遊走因子MC
P−1/MCAFにより惹起される細胞遊走および/ま
たは血管平滑筋細胞の遊走を阻害する薬剤を得る。 【構成】 下記式[I] [式中、R1は水素原子、C1〜C10の直鎖状もしくは分
岐したアルキル基、C2〜C10の直鎖状もしくは分岐し
たアルケニル基、置換もしくは非置換のフェニル基、置
換もしくは非置換のC3〜C10のシクロアルキル基、置
換もしくは非置換のフェニル(C1〜C2)アルキル基、
または1当量のカチオンを表す。R2は水素原子または
メチル基を表す。R3は、置換もしくは非置換の芳香族
基や、置換もしくは非置換のヘテロ環基で置換されてい
る直鎖状もしくは分岐したC1〜C5のアルキル基を表
す。]で表される7−チアプロスタグランジン類を活性
成分として含有する、ケモカインにより惹起される細胞
遊走および/または血管平滑筋細胞遊走の阻害剤、なら
びにその製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、細胞遊走の阻害剤に関
する。さらに詳しくは、7−チアプロスタグランジンE
1類を活性成分として含有する、ケモカインにより惹起
される細胞遊走または血管平滑筋細胞の遊走を強力に抑
制する阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】プロスタグランジン類は、血小板凝集抑
制作用、血管拡張作用、血圧降下作用、胃酸分泌抑制作
用、平滑筋収縮作用、細胞保護作用,利尿作用等多彩な
生理作用を有しており、心筋梗塞、狭心症、動脈硬化、
高血圧症、十二指腸潰瘍、分娩誘発、中絶等の治療また
は予防に有用な化合物である。なかでもプロスタグラン
ジンE1は強力な血小板凝集抑制作用、血管拡張作用を
有しており、すでに臨床において用いられている。
【0003】7−チアプロスタグランジンE1類は血小
板凝集阻害作用、降圧作用、血管拡張作用による抗血
栓、抗狭心症、抗心筋梗塞、抗動脈硬化、悪性腫瘍転移
防止作用を示したり、抗腫瘍作用を示すことが開示され
ている(特開昭53−68753号、特開昭58−11
0562号、特開昭59−29661号、特開昭60−
185761号、特開昭61−204163号公報)。
また、この7−チアプロスタグランジンE1類が糖尿病
におけるニューロパチーに有用性を示すことが知られて
いる(特開昭64−52721号公報)。さらに、この
7−チアプロスタグランジンE1類が血管平滑筋細胞の
遊走を阻害し、各種血管形成術、動脈バイパス手術など
の後に起こる血管の肥厚の抑制に有用であることが知ら
れている(WO 95/00150号公報)。
【0004】本明細書中に記載のω鎖構造中に芳香環を
持つ7−チアプロスタグランジンE 1類は、特開昭61
−30569号公報や特開昭61−204163号公報
中に、その構造や合成法が記載されている。
【0005】一方、ケモカイン(CHEMOKINE
S;別称INTERCRINES)は、リンパ組織や炎
症部位の活性化マクロファージや白血球などにより産生
され、分子量が約10Kdで、4個のシステインを有
し、塩基性かつヘパリン結合性を示す、ポリペプチド性
の炎症/免疫制御因子の総称である。例えばインターロ
イキン−8、MIP−1α/β(Macrophage Inflammat
ory Protein-1 α/βの略称)、MCP−1(Monocyte
Chemotactic Protein-1の略称)などがこれにあたる。
かかるケモカインは細胞遊走惹起活性およびインテグリ
ン等の細胞接着因子の発現増強作用、さらには細胞接着
の増強作用を有しており、炎症組織等への白血球の細胞
浸潤過程において細胞接着因子と共に重要な役割を担っ
ている(例えば、MICHIEL, D.(1993年)BIOTECHNO
LOGY 第11巻739頁、OPPENHEIM,J.J.ら(1991
年)ANNUAL REVIEW OF IMMUNOLOGY 第9巻617〜64
8頁、NEOTE, K.ら(1993年)CELL第72巻415
〜425頁、SCHALL, T.J.(1991年)CYTOKINE第3
巻165〜183頁、SPRINGER, T.A.(1994年)CE
LL第76巻301〜314頁など参照)。
【0006】これらの中で、MCP−1(別称MCAF
(MACROPHAGE CHEMOTACTIC AND ACTIVATING FACTORの略
称))は、マクロファージ、平滑筋細胞、繊維芽細胞、
血管内皮細胞などより種々の刺激に応じ産生されるケモ
カインであり、モノサイト、メモリーT細胞、ナチュラ
ルキラー細胞等に対し細胞遊走活性および細胞接着増強
作用を有し、さらには好塩基球からのヒスタミン放出因
子としての作用を有している(例えば、ROLLINS B.J.ら
(1991年)BLOOD第78巻1112〜1116頁、C
ARR M.W.ら(1994年)PROC. NATL. ACAD. SCI. USA
第91巻3652〜3656頁、JIANG, Y.ら(199
4年)AMERICAN JOURNAL PHYSIOLOGY第267巻C11
12〜C1118頁、ALLAVENA P.ら(1994)EUROP
EAN JOURNAL OF IMMUNOLOGY第24巻3233〜323
6頁、ALAM R.ら(1992年)JOURNAL OF CLINICAL I
NVESTIGATION第89巻723〜728頁など参照)。か
かるケモカインMCP−1は、モノサイト/マクロファ
ージ系細胞および/またはメモリーT細胞等が病変の進
展に深く関与している、粥状動脈硬化症、血管形成術等
における血管内膜障害後に発生する血管再狭窄、移植心
に発症する動脈硬化症、リウマチ性関節炎、糖尿病性細
小血管症等の疾病において、病変部位への血中モノサイ
ト/マクロファージおよび/またはメモリーT細胞等の
集積を惹起し、さらに集積したモノサイト/マクロファ
ージおよび/またはメモリーT細胞等を活性化すること
により、これらの病変の発症・進展に深く関わっている
ことが強く示唆されている(例えば、LEONARD, E.J.お
よびYOSHIMURA, T.(1990)IMMUNOLOGY TODAY第1
1巻97〜101頁、NELKEN, N.A.ら、THE JOURNAL OF
CLINICAL INVESTIGATION (1991)第88巻112
1〜1127頁、KOCH,A.E.ら、THE JOURNAL OF CLINIC
AL INVESTIGATION (1992)第90巻772〜77
9頁、HANAZAWA, S.ら、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CH
EMISTRY(1993)第268巻9526〜9532
頁、GRAVES, D.T.らAMERICAN JOURNAL OF PATHOLOGY
(1992)第140巻9〜14頁、EDGINGTON, S.M.
、BIO/TECHNOLOGY(1993)第11巻676〜68
1頁などを参照)。従って、MCP−1/MCAFによ
り惹起される細胞遊走を阻害する薬剤は、動脈硬化症、
血管形成術後再狭窄、移植心臓に発症する動脈硬化、糖
尿病性細小血管症、関節リウマチ、変形性関節炎等の治
療薬および/または予防薬として有用であることが期待
されるが、かかる細胞遊走阻害活性を有する低分子化合
物の報告はない。
【0007】また、プロスタグランジンE1が、好中球
に作用し、細胞内サイクリックAMPの誘導を介し、ロ
イコトリエンB4 あるいはFMLP(FORMYL-METHIONYL
-LEUCYL-PHENYLALANINE の略称)による細胞遊走を抑制
するとする報告があるが(例えば、HARVATH, L. ら、TH
E JOURNAL OF IMMUNOLOGY (1991)第146巻、2
24〜232頁などを参照)。一方、補体成分C5aに
よる細胞遊走は抑制しないとする報告(例えば、FARME
R, J.C.ら、AMERICAN REVIEW OF RESPIRATORY DISEASE
(1991)第144巻、593〜599頁などを参
照)や、プロスタグランジンE2あるいはその誘導体
(例えばミソプロストールなど)自体に好中球遊走活性
があるとする報告(例えば、ARMSTRONG, R.A. 、BRITIS
H JOURNAL OF PHARMACOLOGY (1992)第105巻SU
PPLEMENT 45Pなど参照)があるなど、好中球の遊走に対
するプロスタグランジンE1あるいはE2あるいはそれら
の誘導体の作用は、用いる遊走因子、あるいは実験条件
によって一定せず、必ずしも明確ではない。
【0008】また、FMLPによって引き起こされる細
胞遊走を、プロスタサイクリンあるいはその誘導体、あ
るいはプロスタグランジンE2が抑制するとする報告が
ある(例えば、KAINOH, M.ら、BIOCHEMICAL PHARMACOLO
GY(1990)第39巻477〜484頁、BATH, P.M.
ら、ARTERIOSCLEROSIS AND THROMBOSIS(1991)第
11巻254〜260頁など参照)。しかしながら、プ
ロスタグランジンE1あるいはE2やそれらの誘導体、あ
るいはプロスタサイクリンやその誘導体が、ケモカイ
ン、例えばモノサイト遊走因子MCP−1/MCAFに
より惹起される細胞遊走を阻害する活性を有するとする
報告はない。さらには、ケモカイン以外の因子により惹
起される細胞遊走を含めても、プロスタグランジンE1
あるいはプロスタグランジンE2、あるいはそれらの誘
導体が、プロスタサイクリンあるいはその誘導体と比較
して、より強力な細胞遊走阻害剤であるとする報告はな
い。
【0009】一方、経皮的冠動脈形成術(以下、「PT
CA」という)は虚血性心疾患の治療法として、患者へ
の侵襲度が低く優秀な初期治療効果があることから、近
年急速に進展してきた術法であり、国内でも年間3万例
を越え、米国でも30万例の手術実績があるといわれて
いる。しかしながら、PTCA後の30〜40%の患者
で術後数か月以内に冠状動脈の再狭窄が出現するという
最大の欠点は未解決のままである。PTCA後の再狭窄
発生のメカニズムとしては、R.Rossによる「血管障害−
反応仮説」を応用する考えが大筋で認められている(Nat
ure, Vol 362,P801-809)。すなわち何らかの原因で引き
起こされた血管内皮細胞障害が障害部位局所への血小板
粘着、凝集を惹起し、放出されたモノサイト遊走因子M
CP−1(別称MCAF(MACROPHAGE CHEMOTACTIC AND
ACTIVATING FACTORの略称))によって病変部位への血
中モノサイト/マクロファージの集積が惹起され、さら
に活性化されて、病変の発症・進展に深く関わっている
と考えられている。さらに、PDGF (ヒト血小板由来
成長因子) やサイトカイン等の放出により二次的な内膜
下での血管平滑筋細胞、細胞間物質の増殖が起こり、動
脈硬化が成立すると考えられている。そのため抗血小板
剤、抗凝固剤等によるPTCA後の再狭窄防止の治験が
試みられてきたが、現在、臨床上十分な効果を有する薬
剤は未だ見いだされていない。再狭窄発生のメカニズム
に深く関与していると考えられる、「血管平滑筋細胞の
内膜から中膜への遊走、および中膜での増殖」のいずれ
か、もしくは両方を抑制する化合物は、再狭窄防止の薬
剤として強く期待されており、この血管平滑筋細胞の遊
走を阻害する化合物として7−チアプロスタグランジン
1類(WO95/ 00150号)が報告されている。し
かし、その正常ヒト大動脈血管平滑筋細胞の遊走阻害作
用は、1nMで22.2%抑制、10nMでも41.0
%抑制といった程度である。また、これらの誘導体が、
ケモカイン、例えばモノサイト遊走因子MCP−1/M
CAFにより惹起される細胞遊走を阻害する活性を有す
るとする報告はない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、ケモカイン、例えばモノサイト遊走因子M
CP−1/MCAFにより惹起される細胞遊走および/
または血管平滑筋細胞の遊走を阻害する薬剤を見い出す
ことである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ケモカイ
ンにより惹起される細胞遊走を阻害する薬剤を創製すべ
く鋭意研究した結果、7−チアプロスタグランジンE類
が、ケモカイン、例えばモノサイト遊走因子MCP−1
/MCAFにより惹起される細胞遊走の強力な阻害剤で
あることや、血管平滑筋細胞の遊走の非常に強力に阻害
剤であること等を見い出し、本発明に到達した。
【0012】すなわち、本発明は、下記式[I]
【0013】
【化5】
【0014】[式中、R1は水素原子、C1〜C10の直鎖
状もしくは分岐したアルキル基、C2〜C10の直鎖状も
しくは分岐したアルケニル基、置換もしくは非置換のフ
ェニル基、置換もしくは非置換のC3〜C10のシクロア
ルキル基、置換もしくは非置換のフェニル(C1〜C2
アルキル基、または1当量のカチオンを表す。R2は水
素原子またはメチル基を表す。R3は、置換もしくは非
置換の芳香族基や、置換もしくは非置換のヘテロ環基で
置換されている直鎖状もしくは分岐したC1〜C5のアル
キル基を表す。]で表される化合物、またはその鏡像
体、あるいはそれらの任意の割合の混合物である7−チ
アプロスタグランジン類を活性成分として含有する、ケ
モカインにより惹起される細胞遊走の阻害剤および/ま
たは血管平滑筋細胞遊走の阻害剤である。
【0015】上記式[I]で表される7−チアプロスタ
グランジン類において、R1は水素原子、C1〜C10の直
鎖状もしくは分岐したアルキル基、C2〜C10の直鎖状
もしくは分岐したアルケニル基、置換もしくは非置換の
フェニル基、置換もしくは非置換のC3〜C10のシクロ
アルキル基、置換もしくは非置換のフェニル(C1
2)アルキル基、または、1当量のカチオンを表す。
【0016】かかるC1〜C10の直鎖状もしくは分岐し
たアルキル基の好ましい例としては、メチル基、エチル
基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチ
ル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、
イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチ
ル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げら
れ、C2〜C10の直鎖状もしくは分岐したアルケニル基
の好ましい例としては、ビニル基、アリル基,3−ブテ
ニル基、2−ブテニル基、4−ペンテニル基、2−ペン
テニル基、プレニル基(3−メチル−2−ブテニル
基)、2,4−ヘキサジエニル基、2,6−オクタジエ
ニル基、ネリル基、ゲラニル基、シトロネリル基、ファ
ルネシル基、アラキジル基などが挙げられる。置換もし
くは非置換のフェニル基の置換基の好ましい例として
は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、C2〜C7のアシル
オキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1
4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよ
いC1〜C4のアルコキシ基、ニトリル基、ニトロ基、カ
ルボキシル基、(C1〜C6)アルコキシカルボニル基な
どが挙げられ、置換もしくは非置換のC3〜C10のシク
ロアルキル基の好ましい例としては、シクロプロピル
基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキ
セニル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シク
ロデシル基などが挙げられる。置換もしくは非置換のフ
ェニル(C1〜C2)アルキル基としては、該フェニル基
が上記したと同じ置換基で置換されているか非置換のベ
ンジル基、α−フェネチル基、β−フェネチル基などが
挙げられる。一当量のカチオンの好ましい例としては、
NH4 +、テトラメチルアンモニウム、モノメチルアンモ
ニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウ
ム、ベンジルアンモニウム、フェネチルアンモニウム、
モルホリニウムカチオン、モノエタノールアンモニウ
ム、ピペリジニウムカチオンなどのアンモニウムカチオ
ン;Na+、K+などのアルカリ金属カチオン;1/2 Ca
2+、1/2 Mg2+、1/2 Zn2+、1/3 Al3+などの2価も
しくは3価の金属カチオン等を挙げることができる。こ
れらのなかでもR1としては水素原子、C1〜C10の直鎖
状もしくは分岐したアルキル基、C2〜C10の直鎖状も
しくは分岐したアルケニル基が好ましく、水素原子また
はメチル基であるものが特に好ましい。
【0017】上記式[I]で表される7−チアプロスタ
グランジン類において、R2は水素原子またはメチル基
を表す。この中でも特にR2が水素原子であるものが好
ましい。
【0018】上記式[I]で表される7−チアプロスタ
グランジン類において、R3は、置換もしくは非置換の
芳香族基や、置換もしくは非置換のヘテロ環基で置換さ
れている直鎖状もしくは分岐したC1〜C5のアルキル基
を表す。かかる置換もしくは非置換の芳香族基や、置換
もしくは非置換のヘテロ環基で置換されている直鎖状も
しくは分岐したC1〜C5のアルキル基において、置換基
としての芳香族基の好ましい例としては、フェニル基や
ナフチル基などを挙げることができ、置換基としてのヘ
テロ環基の好ましい例としては、チエニル基、フラニル
基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基などを
挙げることができる。これらの芳香族基やヘテロ環基
は、さらに置換されていてもよく、この場合の置換基の
好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、
2〜C7のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されて
いてもよいC1〜C4のアルキル基、ハロゲン原子で置換
されていてもよいC1〜C4のアルコキシ基、ニトリル
基、ニトロ基、カルボキシル基、(C1〜C6)アルコキ
シカルボニル基などが挙げられる。これらの芳香族基や
ヘテロ環基上の置換基は、環上のどの位置に置換してい
てもよく、また、任意の組み合わせの複数の置換基によ
って、芳香族基やヘテロ環基が置換されていてもよい。
直鎖状もしくは分岐したC1〜C5のアルキル基としては
メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブ
チル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル
基、ペンチル基、などを挙げることができる。これらC
1〜C5のアルキル基に対して、上記の置換もしくは非置
換の芳香族基や、置換もしくは非置換のヘテロ環基は、
そのいずれの位置に結合していてもよい。これらの中で
も、R3としては、置換もしくは非置換の芳香族基で置
換されている直鎖状もしくは分岐したC1〜C5のアルキ
ル基が好ましく、中でも置換または非置換の、ベンジル
基や1−フェニルエチル基が特に好ましい。
【0019】上記式[I]で表される化合物において、
シクロペンタノン環上に結合している11位と12位の
置換基の立体配置は、天然のプロスタグランジンE1
ら導かれる立体配置を有している。そのために、この立
体異性体が特に有用であるが、本発明ではその鏡像体、
あるいはそれらの任意の割合の混合物も用いられる。ま
た、シクロペンタノン環上で硫黄原子とカルボニル基に
はさまれた8位の炭素は不斉炭素であるために、2種類
の立体異性体が存在するが、本発明ではいずれの立体異
性体も、またそれらの任意の割合の混合物も用いられ
る。さらに、R3が結合している15位の炭素も不斉炭
素であるために2種類の立体異性体が存在するが、本発
明ではいずれの立体異性体も、またそれらの任意の割合
の混合物も用いられる。なかでも15位の炭素は、天然
のプロスタグランジンE1から導かれるS配置であるも
のが好ましい。
【0020】本発明方法で用いられる、上記式[II]
で示される7−チアプロスタグランジン類の好ましい具
体例としては、下記に示した化合物を挙げることができ
る。 (1) 17,18,19,20−テトラノル−16−
フェニル−7−チアプロスタグランジンE1 (2) (16R)−18,19,20−トリノル−1
6−フェニル−7−チアプロスタグランジンE1 (3) (16S)−18,19,20−トリノル−1
6−フェニル−7−チアプロスタグランジンE1 (4) 17,18,19,20−テトラノル−16−
(3−クロロフェニル)−7−チアプロスタグランジン
1 (5) 17,18,19,20−テトラノル−16−
(4−クロロフェニル)−7−チアプロスタグランジン
1 (6) 17,18,19,20−テトラノル−16−
(2−メチルフェニル)−7−チアプロスタグランジン
1 (7) 17,18,19,20−テトラノル−16−
(3−メチルフェニル)−7−チアプロスタグランジン
1 (8) 17,18,19,20−テトラノル−16−
(3−チエニル)−7−チアプロスタグランジンE1 (9) 17,18,19,20−テトラノル−16−
(2−メトキシフェニル)−7−チアプロスタグランジ
ンE1 (10) 17,18,19,20−テトラノル−16
−(2−メトキシカルボニルフェニル)−7−チアプロ
スタグランジンE1 (11) 17,18,19,20−テトラノル−16
−(3−ニトロフェニル)−7−チアプロスタグランジ
ンE1 (12) (1)〜(11)の化合物の(8S)体 (13) (1)〜(11)の化合物の鏡像体 (14) (1)〜(11)の化合物のメチルエステル (15) (1)〜(11)の化合物のエチルエステル (16) (1)〜(11)の化合物のブチルエステル (17) (1)〜(11)の化合物のベンジルエステ
ル (18) (1)〜(11)の化合物ののナトリウム塩 また(1)〜(11)の化合物のω鎖の水酸基(15
位)部分についての立体異性体、およびこれらすべての
鏡像体もあわせて挙げられる。
【0021】7−チアプロスタグランジンE1類は公知
の方法により製造される。例えば、米国特許第4466
980号、同第5159102号、特開昭57−108
065号公報、特開昭58−110562号公報等に詳
細に記載されている。これら7−チアプロスタグランジ
ンE1類の合成法を概略すると以下のようになる。
【0022】
【化6】
【0023】これらの合成法において、式中のR1、R
2 、およびR3は上記式[I]における定義に等しい。
これらの反応に従えばω鎖上の置換基、すなわちR2
よびR3の異なった種々の化合物の合成が可能である。
【0024】さらに、上記式[I]で表される、本発明
で用いられる7−チアプロスタグランジン類の下記に示
す製造法も本発明に含有される。すなわち、下記式[I
I]
【0025】
【化7】
【0026】[式中、R2 、R3 は上記式[I]におけ
る定義と同じであり、R4はトリ(C1〜C7炭化水素)
シリル基、または水酸基の酸素原子とともにアセタール
結合を形成する基を表す。Mはリチウム原子、またはト
リ(C1〜C6炭化水素)スタニル基を表す。]で表され
る有機リチウム化合物、または有機スズ化合物と、 CuQ [式中、Qはハロゲン原子、シアノ基、フェニルチオ
基、1−ペンチニル基、または、1−ヘキシニル基を表
す。]から調製した有機銅化合物と、下記式[III]
【0027】
【化8】
【0028】[式中、R1は上記式[I]における定義
と同じであり、R5はトリ(C1〜C7炭化水素)シリル
基、または水酸基の酸素原子とともにアセタール結合を
形成する基を表す。]で表される2−オルガノチオ−2
−シクロペンテノン類、またはその鏡像体、あるいはそ
れらの任意の割合の混合物とを反応させた後、さらに、 (R6CO)2O [式中、R6はC1〜C10の直鎖状もしくは分岐したアル
キル基、C2〜C10の直鎖状もしくは分岐したアルケニ
ル基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは
非置換のC3〜C10のシクロアルキル基、置換もしくは
非置換のフェニル(C1〜C2)アルキル基、置換もしく
は非置換のフェノキシ(C1〜C7)アルキル基を表
す。]または、 R6COCl [式中、R6は上記定義と同じである。]で表される化
合物と反応させ、下記式[IV]
【0029】
【化9】
【0030】[式中、R1、R2、およびR3は上記式
[I]における定義と同じであり、R4、R5、およびR
6 は上記定義と同じである。]で表される化合物を合成
し、必要に応じて脱保護、加水分解、塩生成反応、また
はエステル化反応に付することにより上記式[I]で表
される化合物、またはその鏡像体、あるいはそれらの任
意の割合の混合物である7−チアプロスタグランジン類
を得、さらに製薬的に許容される担体を加えることを特
徴とする前記の細胞遊走阻害剤の製造法である。かかる
7−チアプロスタグランジン類の合成経路を図示すると
次のようになる。ここで、スキーム中のR1、R2
3、R4、R5、およびR6は上記定義に等しい。
【0031】
【化10】
【0032】本発明方法において、出発原料である前記
式[III]で表される2−オルガノチオ−2−シクロペ
ンテノン類は公知の方法で得ることができる(特開昭6
0−185761号公報)。
【0033】前記スキーム1およびスキーム2におい
て、出発原料としてラセミ体を用いると、途中の中間体
はスキーム中に示した化合物とその鏡像体との混合物と
して立体特異的に合成経路を進んで行くので、上記式
[II]あるいは上記式[III]で示される化合物のいず
れか一方が光学活性ならば、適当な段階において分離す
ることにより各々の立体異性体を純品として単離するこ
とができる。
【0034】本発明方法(スキーム2)の第1ステップ
の共役付加反応では、有機銅化合物とともに、三価の有
機リン化合物、例えば、トリアルキルホスフィン(例え
ば、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィンな
ど)、トリアルキルホスファイト(例えば、トリメチル
ホスファイト、トリエチルホスファイト、トリイソブチ
ルホスファイト、トリブチルホスファイトなど)、ヘキ
サメチルホスホラストリアミド、あるいは、トリフェニ
ルホスフィンなどを用いると共役付加反応が円滑に進行
する。特にトリブチルホスフィン、ヘキサメチルホスホ
ラストリアミドが好適に用いられる。
【0035】本発明方法(スキーム2)は、非プロトン
性不活性有機溶媒存在下、上記式[II]で表される有機
リチウム化合物または有機スズ化合物と、CuQ(Qは
前記定義と同じ)から調製した有機銅化合物と、上記式
[III]で表される2−オルガノチオ−2−シクロペン
テノン類を反応させた後、酸無水物、酸クロライド、ま
たは混合酸無水物と反応させることにより行われる。
【0036】2−オルガノチオ−2−シクロペンテノン
類と有機銅化合物とは、化学量論的には等モル反応を行
うが、通常、2−オルガノチオ−2−シクロペンテノン
類1モルに対し、0.5〜5.0倍、好ましくは0.8
〜2.0倍、特に好ましくは1.0〜1.5モル倍の有
機銅化合物を用いて行われる。
【0037】2−オルガノチオ−2−シクロペンテノン
類と有機銅化合物の共役付加反応の反応温度は−100
℃〜50℃、特に好ましくは−78℃〜0℃程度の温度
範囲が採用される。反応時間は反応温度により異なる
が、通常−78℃〜−20℃にて約1時間反応させれば
十分である。
【0038】また、2−オルガノチオ−2−シクロペン
テノン類と有機銅化合物の共役付加反応で得られた反応
中間体と、酸無水物、酸クロライド、または混合酸無水
物とは、化学量論的には等モル反応を行うが、通常、酸
無水物、酸クロライド、または混合酸無水物が過剰にな
るようにして反応を行わせる。すなわち、2−オルガノ
チオ−2−シクロペンテノン類1モルに対し、1.0〜
10.0倍、好ましくは2.0〜5.0モル倍の酸無水
物、酸クロライド、または混合酸無水物を使用して反応
を行う。
【0039】2−オルガノチオ−2−シクロペンテノン
類と有機銅化合物の共役付加反応で得られた反応中間体
と、酸無水物、酸クロライド、または混合酸無水物との
反応の反応温度は−30℃〜50℃、特に好ましくは−
20℃〜30℃程度の温度が採用される。反応時間は反
応温度により異なるが、通常0℃〜20℃にて約15分
反応させれば十分である。
【0040】反応は有機溶媒の存在下で行われる。反応
温度下で液状であって、反応試剤とは反応しない不活性
の非プロトン性の有機溶媒が用いられる。かかる非プロ
トン性不活性有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘ
キサン、ヘプタン、シクロヘキサンのような飽和炭化水
素類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭
化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオ
キサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメ
チルエーテルのようなエーテル系溶媒、その他、ヘキサ
メチルホスホリックアミド(HMP)、N,N−ジメチ
ルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトア
ミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、
スロホラン、N−メチルピロリドンのようないわゆる非
プロトン性極性溶媒等が挙げられ、二種以上の混合溶媒
として用いることも可能である。また、かかる非プロト
ン性不活性有機溶媒として、有機銅化合物を製造するの
に用いた不活性溶媒をそのまま用いることもできる。す
なわち、この場合、有機銅化合物を製造した反応系内に
2−オルガノチオ−2−シクロペンテノン類を添加して
反応を行えばよい。有機溶媒の使用量は反応に円滑に進
行させるのに十分な量があればよく、通常は原料の1〜
100倍容量、好ましくは2〜20倍容量が用いられ
る。
【0041】三価の有機リン化合物は有機銅化合物の前
記した調製時に存在させておくこともでき、その系内に
2−オルガノチオ−2−シクロペンテノン類を加えて反
応を実施することもできる。
【0042】かくして、前記式[IV]で表される化合物
が得られる。本発明の製造法は立体特異的に進行する反
応を用いているために上記式[III]で表される立体配
置を持つ出発原料からは前記式[IV]で表される立体配
置を持つ化合物が得られ、上記式[III]の鏡像体から
は前記式[IV]の鏡像体が得られることになる。
【0043】反応後、得られる生成物は通常の手段によ
り反応液から分離、精製される。例えば抽出、洗浄、ク
ロマトグラフィーあるいはこれらの組み合わせにより行
われる。
【0044】さらにここで得られた前記式[IV]で表さ
れる化合物は、必要に応じて脱保護、加水分解、あるい
は塩生成反応に付すことによって、前記式[I]で表さ
れる化合物へと導くことができる。
【0045】ここで得られたR1が水素原子である化合
物は、必要に応じて、さらに、カルボン酸部分のエステ
ル化の反応に付すことができる。カルボン酸部分のエス
テル化は通常の化学反応を用いて行える。
【0046】化合物の水酸基の保護基(R4および/ま
たはR5)の除去は、保護基が水酸基の酸素原子と共に
アセタール結合を形成する場合には、例えば酢酸、p−
トルエンスルホン酸のピリジニウム塩または陽イオン交
換樹脂を触媒として、例えば、水、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン、アセトン、アセトニトリル等を反応溶
媒とすることにより好適に実施される。反応は通常−7
8℃〜50℃の温度範囲で10分〜3日間程度行われ
る。また、保護基がトリ(C1〜C7炭化水素) シリル基
の場合には、例えば酢酸、p−トルエンスルホン酸のピ
リジニウム塩、テトラブチルアンモニウムフルオライ
ド、セシウムフルオライド、フッ化水素酸、フッ化水素
−ピリジン等を触媒として、上記した反応溶媒中で同様
の温度で同程度の時間実施される。
【0047】水酸基の保護基を除去などを行い、水溶性
が高まった化合物のエステルの加水分解反応は、例え
ば、リパーゼ、エステラーゼ等の酵素を用い、水または
水を含む溶媒中で−10℃〜60℃の温度範囲で10分
〜24時間程度行うことができる。
【0048】本発明方法によれば、上記のようにして加
水分解反応により得られたカルボキシル基を有する化合
物は、次いで必要に応じて、さらに塩生成反応に付さ
れ、相当するカルボン酸塩を得ることができる。塩生成
反応は、カルボン酸とほぼ等量の水酸化カリウム、水酸
化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基性化合物、あ
るいはアンモニア、トリメチルアミン、モノエタノール
アミン、モルホリンとを通常の方法で中和反応させるこ
とにより行われる。
【0049】さらに、かかる7−チアプロスタグランジ
ンE1類の治療有効量と、製薬的に許容される担体とを
合わせて医薬組成物とすることにより、本発明の細胞遊
走阻害剤が得られる。すなわち、ケモカインにより惹起
される細胞遊走や、血管平滑筋の細胞遊走を阻害する薬
剤となる。したがって、この細胞遊走阻害剤は、PTC
A後の再狭窄の予防または治療剤として用いることもで
きる。
【0050】なお、前記の7−チアプロスタグランジン
1類は、α、βもしくはγーシクロデキストリン等と
包接化合物を形成せしめて用いることもできる。
【0051】本発明で用いられる7−チアプロスタグラ
ンジンE1類、またはその塩、または包接化合物を、例
えばPTCA後の再狭窄の予防または治療剤として臨床
に適応するに際しては、有効成分として前記の7−チア
プロスタグランジンE1類等と、固体または液体等の製
薬的に許容される担体とからなる医薬組成物に、さらに
必要に応じて希釈剤、すなわち賦形剤、安定剤等の添加
剤を加えた製剤とすることが好ましい。治療的投与に使
用すべき本発明の7−チアプロスタグランジンE1類等
の注射投与製剤は、通常滅菌状態でなければならない。
滅菌性は孔径0.2μmのメンブレンフィルターなどの滅
菌濾過膜を通して濾過することによって容易に達成され
る。
【0052】かかる医薬組成物において、上記有効成分
の担体成分に対する割合は1.0〜90%W/Wの間で
変動させることができる。治療的有効投与量は、投与方
法、年令、対象疾患などにもよるが、一般的に1μg〜
1mg/日/人である。個々の投与経路について、薬学
でよく知られている方法によって各化合物について個別
に体内への吸収効率を決定するのが望ましい。
【0053】剤形及び投与形態としては、顆粒剤、細粒
剤、散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤もしくは液剤等の剤
形にして経口投与してもよいし、または、座剤、エアゾ
ル剤、あるいは軟膏および皮膚パッチなどの局部製剤な
どにして非経口投与してもよい。注射剤として静脈内投
与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与してもよい。ま
た注射用の粉末にして用時調製してもよい。
【0054】経口、経腸もしくは非経口投与に適した医
薬用の有機または無機の、固体または液体の担体もしく
は希釈剤を、前記の7−チアプロスタグランジンE1
等を医薬製剤として調製するために用いることができ
る。錠剤、カプセル剤などに組み込み得る代表的な担体
もしくは希釈剤は、アカシア、トウモロコシ澱粉、また
はゼラチンなどの結合剤、微結晶性セルロースなどの賦
形剤、トウモロコシ澱粉やアルギン酸などの崩壊剤、ス
テアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、蔗糖や乳糖など
の甘味料を挙げることができる。剤形がカプセルである
場合には、上記の物質に加えて脂肪油などの液体担体を
含有してもよい。さまざまな種類の他の物質を被覆剤と
して、あるいは投与単位の物理形状の改良剤として使用
することができる。注射用の滅菌組成物は従来の医薬的
方法に従って製剤化することができる。例えば、水や天
然の植物油などの賦形剤や、オレイン酸エチルなどの合
成脂肪賦形剤に活性化合物を溶解または懸濁することが
好ましい。クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩などの緩衝
剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤を許容されている医
薬的方法に従って組み込むこともできる。
【0055】
【実施例】
[参考例1] (1E,3S)−1−ヨード−3−(tert−ブチル
ジメチルシロキシ)−4−フェニル−1−ブテンの合成
【0056】
【化11】
【0057】30mLの2口フラスコに、モレキュラー
シーブ3Aの粉末200mgを入れ、ヒートガンで加熱
しながら減圧乾燥した後、系内をアルゴン置換した。そ
こへ乾燥塩化メチレン2.5mLを加えて懸濁液とし
た。この懸濁液を攪拌下0℃に冷却し、Ti(i−Pr
O)4を118mL(0.2当量),D−酒石酸ジイソ
プロピル102mL(0.24当量)を順に加え、10
分間撹拌した。この懸濁液を−20℃に冷却し、(1
E)−1−(トリ−n−ブチルスタニル)−3−ヒドロ
キシ−4−フェニル−1−ブテン(ラセミ体)875m
g(2.0mmol)の乾燥塩化メチレン2.5mL溶
液およびtert−ブチルヒドロペルオキシド(3.0
M、2,2,4−トリメチルペンタン溶液)1.0mL
(1.5当量)を加えた。−20℃のまま約2時間攪拌
した後、温度を上げて−10℃でさらに3時間反応させ
た。反応液に水20mLを加えて反応を終了させ、2N
のNaOH水溶液100mLを加えてpH13〜14と
し、室温で15分間撹拌した。エーテル150mLを加
えてよく攪拌した後、Celite濾過し、分液し、さ
らに水層からエーテル150mLで抽出した。抽出液と
有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネ
シウムで乾燥した。無水硫酸マグネシウムを濾過によっ
て除いた後、ヨウ素507mg(2.0mmol)を加
えて室温で15分間撹拌した。反応液に飽和チオ硫酸ナ
トリウム水溶液70mLを加えて脱色し、分液後、水層
からエーテル150mLで抽出した。抽出液と有機層を
合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで
乾燥し、減圧濃縮した。得られた黄色の油状物885m
gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒;7%
→10% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、目的物
(1E,3S)−1−ヨード−3−ヒドロキシ−4−フ
ェニル−1−ブテンを238mg得た。(収率43%、
光学純度>99.8%ee(n=3)HPLC CHI
RALCEL OD;3%i−PrOH/ヘキサン;
1.5mL/分;UV 254nm)1 H-NMR (270 MHz, δppm, CDCl3) 1.70 (d, 1H, J = 4.3 Hz), 2.77 (dd, 1H, J = 13.6
Hz, 7.5 Hz), 2.88 (dd, 1H, J = 13.6 Hz, 5.0 Hz),
4.25 - 4.4 (br-m, 1H), 6.36 (dd, 1H, J = 14.3 H
z, 8.0Hz), 6.64 (dd, 1H, J = 14.3 Hz, 5.0Hz), 7.
15 - 7.4 (m, 5H)
【0058】100mLのナスフラスコに、(1E,3
S)−1−ヨード−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1
−ブテン1.96g(7.15mmol)、イミダゾー
ル535mg(1.1当量)を入れ、DMF20mLに
溶かし、さらにtert−ブチルジメチルシリルクロラ
イドを1.08g(7.15mmol)加え、40℃に
加熱し、1時間反応させた。反応液にヘキサン150m
Lを加え、有機層を分液後、飽和食塩水で洗浄し、無水
硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮した。得られた無色
の油状物質2.70gをシリカゲルカラムクロマトグラ
フィー(溶媒;ヘキサン)で精製し、目的物(1E,3
S)−1−ヨード−3−(tert−ブチルジメチルシ
ロキシ)−4−フェニル−1−ブテンを2.45g(収
率88%)得た。1 H-NMR (270 MHz, δppm, CDCl3) -0.22(s, 6H), -0.09(s, 6H), 0.83(s, 9H), 2.75
(d-like, 2H, J = 6.6 Hz), 4.44 (ddd, 1H, J = 12.9
Hz, 5.3 Hz, 1.0 Hz), 6.42 (dd, 1H, J = 14.3Hz,
1.0 Hz), 6.78 (dd, 1H, J = 14.3 Hz, 5.3Hz), 7.3
- 7.55 (m, 5H)
【0059】[実施例1] (11R,12S,13E,15S)−9−ブチリルオ
キシ−11,15−ビス(tert−ブチルジメチルシ
ロキシ)−16−フェニル−17,18,19,20−
テトラノル−7−チアプロスタ−8,13−ジエン酸メ
チルの合成
【0060】
【化12】
【0061】50mlの2口フラスコに (1E,3
S)−1−ヨード−3−(tert−ブチルジメチルシ
ロキシ)−4−フェニル−1−ブテン699mgを入
れ、系内を窒素置換した。そこへ乾燥エーテル4.0m
lを加え、溶液とした。その溶液を−78℃まで冷却
後、tert−ブチルリチウム(1.50M)2.40
mlを加え、−78℃のまま2時間攪拌した。さらにそ
こへ、ヘキシン銅260mgと、ヘキサメチルホスホラ
ストリアミド654μlの乾燥エーテル10ml溶液を
加え、−78℃のままさらに1時間攪拌し、銅試薬を生
成した。得られた銅試薬の中へ、(4R)−tert−
ブチルジメチルシロキシ−2−(5−メトキシカルボニ
ルペンチルチオ)−2−シクロペンテン−1−オン56
0mgの乾燥テトラヒドロフラン21mlの溶液を滴下
した。その反応混合液は−78℃のまま15分間、その
後、反応温度を上昇させ、−50〜−30℃で1時間攪
拌した。この反応液をさらに−30℃まで昇温し、無水
酪酸663μlを加え、室温まで反応温度を上げながら
終夜攪拌した。反応溶液は飽和硫酸アンモニウム20m
lへ注ぎ込み、反応を終了させた。その混合液を分液
後、水層からエーテルで抽出し、抽出液と有機層を合わ
せて無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その溶液を減圧
下濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%
酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、目的化合物(11
R,12S,13E,15S)−9−ブチリルオキシ−
11,15−ビス(tert−ブチルジメチルシロキ
シ)−16−フェニル−17,18,19,20−テト
ラノル−7−チアプロスタ−8,13−ジエン酸メチル
892mg(84.4%)を得た。1 H-NMR (270 MHz, δppm, CDCl3) -0.16 (s, 3H), -0.10 (s, 3H), 0.01 (s, 3H), 0.0
4 (s, 3H), 0.82 (s, 9H), 0.87 (s, 9H), 1.00 (t,
3H, J = 7.3 Hz ), 1.2 - 1.8 (m, 10 H),2.29 (t,
2H, J = 7.6 Hz ), 2.3 - 2.75 (m, 5 H), 2.90 (d
d, 1H, J = 16.2 Hz, 6.6Hz), 3.05 (d, 1H, J = 8.9
Hz ), 3.62 (s, 3H), 4.0 - 4.1 (m, 1H), 4.2 -4.
3 (m, 1H), 5.47 (dd, 1H, J = 15.5 Hz, 8.5Hz),
5.67 (dd, 1H, J = 15.5 Hz, 5.3 Hz), 7.1 - 7.3
(m, 5 H)
【0062】[実施例2] (11R,12S,13E,15S)−9−ブチリルオ
キシ−11,15−ジヒドロキシ−16−フェニル−1
7,18,19,20−テトラノル−7−チアプロスタ
−8,13−ジエン酸メチルの合成
【0063】
【化13】
【0064】テフロン製試験管に、アセトニトリル2m
lと、ピリジン0.5mlを入れ、氷冷した。そこへH
F−ピリジン溶液0.5mlを加えた。その溶液に、氷
冷下で、(11R,12S,13E,15S)−9−ブ
チリルオキシ−11,15−ビス(tert−ブチルジ
メチルシロキシ)−16−フェニル−17,18,1
9,20−テトラノル−7−チアプロスタ−8,13−
ジエン酸メチル423mgのピリジン0.5mlの溶液
を加え、氷浴を外して室温にもどしながら42時間攪拌
した。TLCで原料の消費を確認した後、反応溶液を酢
酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の混合液
(1:1 30ml)に注ぎ込んだ。有機層を分離後、
水層から酢酸エチル20mlで再抽出した。有機層を合
わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留
去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチ
ル:ヘキサン=1:1)で精製して、純粋な(11R,
12S,13E,15S)−9−ブチリルオキシ−1
1,15−ジヒドロキシ−16−フェニル−17,1
8,19,20−テトラノル−7−チアプロスタ−8,
13−ジエン酸メチルを無色の油状物質として243m
g(85%)得た。1 H-NMR (270 MHz, δppm, CDCl3) 1.01 (t, 3H, J = 7.4 Hz ), 1.3 - 1.9 (m, 8 H),
1.82 (br, 1H ), 2.3(br, 1H ), 2.30 (t, 2H, J =
7.3 Hz ), 2.44 (t, 2H, J = 7.2 Hz ), 2.4- 2.7
(m, 3 H), 2.75 - 2.95 (m, 3 H), 3.19 (d-like, 1
H, J = 6.2 Hz), 3.66 (s, 3H), 4.08 (br, 1 H),
4.38 (m, 1 H), 5.57 (dd, 1H, J = 15.5 Hz, 7.2 H
z), 5.75 (dd, 1H, J = 15.5 Hz, 6.0 Hz), 7.18 -
7.35 (m,5 H)
【0065】[実施例3] (11R,12S,13E,15S)−9−オキソ−1
1,15−ジヒドロキシ−16−フェニル−17,1
8,19,20−テトラノル−7−チアプロスタ−13
−エン酸の合成
【0066】
【化14】
【0067】20mLのナシ型フラスコに(11R,1
2S,13E,15S)−9−ブチリルオキシ−11,
15−ジヒドロキシ−16−フェニル−17,18,1
9,20−テトラノル−7−チアプロスタ−8,13−
ジエン酸メチル47mgを入れ、アセトン1.0mLに
溶解させた。そこへpH8のリン酸緩衝液10mLを加
えて懸濁液とした。よく攪拌下、この懸濁液にEste
rase(Porcine Liver由来;3.2M
(NH42SO4溶液)5滴を加え、室温で3時間激し
く攪拌した。反応溶液に1NのHClを8滴加えてpH
4とし、硫酸アンモニウムを飽和させて、酢酸エチルで
抽出した。有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥
した後、溶媒を減圧留去して得られた油状物質をPTL
C(3%CH3OH/酢酸エチル)で精製し、8位の立
体配置に由来するジアステレオ混合物として、目的化合
物(11R,12S,13E,15S)−9−オキソ−
11,15−ジヒドロキシ−16−フェニル−17,1
8,19,20−テトラノル−7−チアプロスタ−13
−エン酸を22.9mg(収率59%)得た。1 H-NMR (270 MHz, δppm, CDCl3) 1.1 - 1.8 (m, 6 H), 2.35 (t, 3H, J = 7.2 Hz ),
2.2 - 3.0 (m, 6 H),3.25 (d, minor, J = 6.3 Hz),
4.03 (m, 1H), 4.35 -4.5 (m, 1H), 5.55 -5.85 (m,
2H), 7.2 - 7.35 (m, 5 H)
【0068】[実施例4] (11R,12S,13E,15S)−9−オキソ−1
1,15−ジヒドロキシ−16−フェニル−17,1
8,19,20−テトラノル−7−チアプロスタ−13
−エン酸メチルの合成
【0069】
【化15】
【0070】100mLのナシ型フラスコに(11R,
12S,13E,15S)−9−オキソ−11,15−
ジヒドロキシ−16−フェニル−17,18,19,2
0−テトラノル−7−チアプロスタ−13−エン酸1
1.2mgを入れ、これをメタノール1mLおよびベン
ゼン5mLの混液に溶解した。この溶液に攪拌下室温
で、TMSジアゾメタン(10%ヘキサン溶液)を、黄
色がすぐに消えなくなるまで(約0.5mL)加えて、
メチルエステル化した。反応液を減圧留去すると、ジア
ステレオ混合物として目的化合物(11R,12S,1
3E,15S)−9−オキソ−11,15−ジヒドロキ
シ−16−フェニル−17,18,19,20−テトラ
ノル−7−チアプロスタ−13−エン酸メチルが10.
4mg(収率90%)得られた。1 H-NMR (270 MHz, δppm, CDCl3) 1.3 - 1.7 (m, 6 H), 2.0 - 3.0 (m, 10 H), 2.31
(d, 2H, J = 7.3 Hz),3.33 (d, 1/3H, J = 6.6 Hz),
3.675 (s, 2/3H), 3.662 (s, 1/3H), 3.95- 4.07
(m, 1/2 H), 4.3 - 4.5 (m, 3/2 H), 5.56 (ddd, 2/3
H, J = 15.5, 8.3, 1.0 Hz), 5.7 - 5.85 (m, 4/3H),
7.15 - 7.35 (m, 5 H)
【0071】[実施例5] (11R,12S,13E,15S,16R)−9−オ
キソ−11,15−ジヒドロキシ−16−フェニル−1
8,19,20−トリノル−7−チアプロスタ−13−
エン酸の合成
【0072】
【化16】
【0073】10mLのナシ型フラスコに(11R,1
2S,13E,15S,16R)−9−ブチリルオキシ
−11,15−ジヒドロキシ−16−フェニル−18,
19,20−トリノル−7−チアプロスタ−8,13−
ジエン酸メチル19mgを入れ、アセトン1.5mLに
溶解させた。そこへpH8のリン酸緩衝液10mLを加
えて懸濁液とした。よく攪拌下、この懸濁液にEste
rase(Porcine Liver由来;3.2M
(NH42SO4溶液)150mLを加え、室温で2時
間激しく攪拌した。反応溶液に2NのHClを加えてp
H4とし、硫酸アンモニウムを飽和させて、酢酸エチル
で抽出した。有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾
燥した後、溶媒を減圧留去して得られた油状物質をPT
LC(酢酸エチル)で精製し、8位の立体配置に由来す
るジアステレオ混合物として目的化合物(11R,12
S,13E,15S,16R)−9−オキソ−11,1
5−ジヒドロキシ−16−フェニル−18,19,20
−トリノル−7−チアプロスタ−13−エン酸を8.0
mg(収率51%)得た。1 H-NMR (270 MHz, δppm, CDCl3) 1.2 - 1.7 (m, 6 H), 1.35 (d, 3H, J = 3.3 Hz),
2.35 (t, 3H, J = 7.2 Hz), 2.1 - 3.0 (m, 5 H),
3.28 (d, minor, J = 6.3 Hz), 3.95 (q, 1H, J= 7.8H
z), 4.2 - 4.4 (m, 2H), 5.50 (dd, 1H, J = 15.6 H
z, 7.8Hz), 5.64(dd, 1H, J = 15.6 Hz, 5.8Hz), 7.
15 - 7.35 (m, 5 H)
【0074】[実施例6]MCP−1惹起細胞遊走阻害活性の測定 表1に記載の被験化合物の細胞遊走阻害活性を調べる目
的で、モノサイト遊走因子MCP−1/MCAFによっ
て惹起される細胞遊走の測定を、ヒト前単球由来白血病
細胞THP−1(ATCC TIB203)を遊走細胞
として用い、FALKらの方法(J.Immunol.
Methods第33巻239〜247頁(198
0))に準じて以下のように行った。すなわち96穴マ
イクロケモタキシスチャンバー(Neuroprobe
社製)のチャンバー上室(200μl)にはTHP−1
細胞を2×106/ml(10%牛胎仔血清(FCS)添
加RPMI−1640培地(Flow Laborat
ories社製)、下室(35μl)には同液でリコン
ビナント・ヒトMCP−1(Peprotech社製)
を最終濃度20ng/mlになるように希釈したものを
入れ、両室の間にポリカルボネートフィルター(ポアサ
イズ5μm、PVP−free,Neuroprobe
社製)を固定し、37℃で5%CO2下に2時間インキ
ュベートを行った。フィルターを取り出し、Diff
Quick液(国際試薬社製)にてフィルター下面に遊
走した細胞を固定染色し、次いでプレートリーダー(M
olecular Device社製)にて、測定波長
550nmで測定し、3穴の平均値を求めることにより
遊走細胞数の指標とした。このとき、被験化合物を上室
にTHP−1細胞と共に各種濃度にして添加し、細胞遊
走阻害活性を求めた。細胞遊走阻害%は、{(上室に被
験化合物添加の場合の下室に添加したMCP−1による
遊走細胞数)−(上室に被験化合物無添加、下室にMC
P−1無添加の場合の遊走細胞数)}を{(上室に被験
化合物無添加の場合の下室に添加したMCP−1による
遊走細胞数)−(上室に被験化合物無添加、下室にMC
P−1無添加の場合の遊走細胞数)}で除することによ
って求めた。そして、50%の阻害を示した化合物の濃
度を阻害度:IC50とした。結果を表1に示す。これに
よれば、本願発明の薬剤は、MCP−1惹起細胞遊走を
阻害する活性を有することがわかる。
【0075】
【表1】
【0076】[実施例7]ヒト大動脈由来血管平滑筋細胞に対する遊走阻害活性の
測定 被験化合物の細胞遊走阻害活性を調べる目的で、ヒト血
小板由来成長因子(PDGF)によって引き起こされる
細胞遊走の測定を、正常ヒト大動脈由来血管平滑筋細胞
(クラボウ社製)を遊走細胞として用い、MaCarthyらの
方法(J. Cell.Biol.97,772−777(198
3))に準じて以下のように行った。すなわち、トラン
スウエルチャンバー(Costar社;登録商標)を使用し
て、阻害活性を測定した。このチャンバーは、孔径8μ
mのメンブレンフィルター(PVP−フリーポリカルボ
ネートフィルター、Nucleopore社;登録商標)を境に
上、下2層に区画されており、フィルターは、その下部
表面を5μgのラット テイルコラーゲン、タイプ I
(Becton Dickinson社)で表面加工した。チャンバー上
層(100μl)には、細胞を1.5×106/ml
(DMEM(Flow Laboratories 社製)+0.1%BS
A(ナカライテスク社製)で懸濁したもの)を入れ、下
層(600μl)には、同液で、ヒトPDGF(Becton
Dickinson社製)を最終濃度10ng/mlになるよう
に希釈したものをいれた。このとき、被験化合物を上、
下層共に各種濃度添加した。37℃で5%CO2下に6
時間放置した後、フィルターを除去し、99.7%メタ
ノールで固定化し、ヘマトキシリンおよびエオジンで染
色した。フィルター上部表面に接着した細胞を綿棒で除
去し、下部表面に移動した細胞数を、高出力顕微鏡下に
おいて(×200)細胞核を計数して決定した。通常、
フィルター1枚あたり、5箇所の視野を計測した。細胞
遊走は、5視野の平均細胞数±標準偏差で示した。有意
差検定は、Student's two-tailed t test で行った。な
お、阻害率(%)は無処置の場合の遊走細胞数に対する
被験化合物処理の場合の遊走細胞数の割合で示してあ
る。そして、50%の阻害を示した化合物の濃度を阻害
度:IC50とした。結果を表2に示す。これによれば、
本願発明の薬剤は、ヒト大動脈由来血管平滑筋細胞の遊
走を阻害する活性を有することがわかる。
【0077】
【表2】
【0078】
【発明の効果】本発明の7−チアプロスタグランジンE
類またはそれらの薬学的に許容される塩を活性成分とし
て含有する細胞遊走阻害剤は、ケモカイン、例えばMC
P−1/MCAFにより惹起される細胞遊走を阻害する
活性および、血管平滑筋細胞の遊走を阻害する活性を有
し、粥状動脈硬化症、血管形成術後再狭窄、移植心臓に
発症する動脈硬化、糖尿病性血管障害、関節リウマチ、
変形性関節炎等の、血中モノサイト等の病巣への集積を
特徴とすることのある疾患の予防、治療剤として有用で
ある。
【0079】また、例えば各種血管形成術、動脈バイパ
ス手術、器官(臓器)の移植術等の後に、主として血管
平滑筋細胞の増殖や遊走によって起こる血管の肥厚、閉
塞抑制剤として、あるいは血管肥厚、閉塞の予防、治療
剤(あるいは血管平滑筋細胞の増殖や遊走抑制剤)、さ
らには動脈硬化の予防、治療剤として有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 遠藤 則明 東京都日野市旭が丘4丁目3番2号 帝人 株式会社東京研究センター内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式[I] 【化1】 [式中、R1は水素原子、C1〜C10の直鎖状もしくは分
    岐したアルキル基、C2〜C10の直鎖状もしくは分岐し
    たアルケニル基、置換もしくは非置換のフェニル基、置
    換もしくは非置換のC3〜C10のシクロアルキル基、置
    換もしくは非置換のフェニル(C1〜C2)アルキル基、
    または1当量のカチオンを表す。R2は水素原子または
    メチル基を表す。R3は、置換もしくは非置換の芳香族
    基や、置換もしくは非置換のヘテロ環基で置換されてい
    る直鎖状もしくは分岐したC1〜C5のアルキル基を表
    す。]で表される化合物、またはその鏡像体、あるいは
    それらの任意の割合の混合物である7−チアプロスタグ
    ランジン類を活性成分として含有する、ケモカインによ
    り惹起される細胞遊走阻害剤。
  2. 【請求項2】 上記式[I]において、R1が水素原
    子、またはC1〜C10の直鎖状もしくは分岐したアルキ
    ル基であり、R3が置換もしくは非置換の芳香族基で置
    換されている直鎖状もしくは分岐したC1〜C5のアルキ
    ル基である請求項1記載の細胞遊走阻害剤。
  3. 【請求項3】 上記式[I]において、R1が水素原子
    またはメチル基であり、R3が置換もしくは非置換のフ
    ェニル基で置換された直鎖状もしくは分岐したC1〜C5
    のアルキル基である請求項1記載の細胞遊走阻害剤。
  4. 【請求項4】 上記式[I]において、R3が置換もし
    くは非置換のベンジル基である請求項3記載の細胞遊走
    阻害剤。
  5. 【請求項5】 上記式[I]において、R3が結合して
    いる炭素が不斉炭素であって、その絶対配置がS配置で
    ある請求項1から4のいずれかに記載の細胞遊走阻害
    剤。
  6. 【請求項6】 上記式[I]で表される化合物、または
    その鏡像体、あるいはそれらの任意の割合の混合物であ
    る7−チアプロスタグランジン類を活性成分として含有
    する血管平滑筋細胞遊走阻害剤。
  7. 【請求項7】 上記式[I]において、R1が水素原
    子、またはC1〜C10の直鎖状もしくは分岐したアルキ
    ル基であり、R3が置換もしくは非置換の芳香族基で置
    換されている直鎖状もしくは分岐したC1〜C5のアルキ
    ル基である請求項6記載の血管平滑筋細胞遊走阻害剤。
  8. 【請求項8】 上記式[I]において、R1が水素原子
    またはメチル基であり、R3が置換もしくは非置換のフ
    ェニル基で置換された直鎖状もしくは分岐したC1〜C5
    のアルキル基である請求項6記載の血管平滑筋細胞遊走
    阻害剤。
  9. 【請求項9】 上記式[I]において、R3が置換もし
    くは非置換のベンジル基である請求項8記載の血管平滑
    筋細胞遊走阻害剤。
  10. 【請求項10】 上記式[I]において、R3が結合し
    ている炭素が不斉炭素であって、その絶対配置がS配置
    である請求項6から9のいずれかに記載の血管平滑筋細
    胞遊走阻害剤。
  11. 【請求項11】 上記式[I]において、R1が水素原
    子またはメチル基であり、R3が置換もしくは非置換の
    ベンジル基である化合物、またはその鏡像体、あるいは
    それらの任意の割合の混合物である7−チアプロスタグ
    ランジン類を活性成分として含有する、PTCA後の再
    狭窄の予防または治療剤。
  12. 【請求項12】 上記式[I]において、R3が結合し
    ている炭素が不斉炭素であって、その絶対配置がS配置
    である請求項11記載のPTCA後の再狭窄の予防また
    は治療剤。
  13. 【請求項13】 下記式[II] 【化2】 [式中、R2 、R3 は請求項1における定義と同じであ
    り、R4はトリ(C1〜C 7炭化水素)シリル基、または
    水酸基の酸素原子とともにアセタール結合を形成する基
    を表す。Mはリチウム原子、またはトリ(C1〜C6炭化
    水素)スタニル基を表す。]で表される有機リチウム化
    合物、または有機スズ化合物と、 CuQ [式中、Qはハロゲン原子、シアノ基、フェニルチオ
    基、1−ペンチニル基、または、1−ヘキシニル基を表
    す。]から調製した有機銅化合物と、下記式[III] 【化3】 [式中、R1は請求項1における定義と同じであり、R5
    はトリ(C1〜C7炭化水素)シリル基、または水酸基の
    酸素原子とともにアセタール結合を形成する基を表
    す。]で表される2−オルガノチオ−2−シクロペンテ
    ノン類、またはその鏡像体、あるいはそれらの任意の割
    合の混合物とを反応させた後、さらに、 (R6CO)2O [式中、R6はC1〜C10の直鎖状もしくは分岐したアル
    キル基、C2〜C10の直鎖状もしくは分岐したアルケニ
    ル基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは
    非置換のC3〜C10のシクロアルキル基、置換もしくは
    非置換のフェニル(C1〜C2)アルキル基、置換もしく
    は非置換のフェノキシ(C1〜C7)アルキル基を表
    す。]または、 R6COCl [式中、R6は上記定義と同じである。]で表される化
    合物と反応させ、下記式[IV] 【化4】 [式中、R1、R2、およびR3は請求項1における定義
    と同じであり、R4、R5、およびR6 は上記定義と同じ
    である。]で表される化合物を合成し、必要に応じて脱
    保護、加水分解、塩生成反応、またはエステル化反応に
    付することにより上記式[I]で表される化合物、また
    はその鏡像体、あるいはそれらの任意の割合の混合物で
    ある7−チアプロスタグランジン類を得、さらに製薬的
    に許容される担体を加えることを特徴とする請求項1ま
    たは6記載の細胞遊走阻害剤の製造法。
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