JPH08283416A - 環状ホスファゼン化合物および有機薄膜el素子 - Google Patents

環状ホスファゼン化合物および有機薄膜el素子

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JPH08283416A
JPH08283416A JP7113755A JP11375595A JPH08283416A JP H08283416 A JPH08283416 A JP H08283416A JP 7113755 A JP7113755 A JP 7113755A JP 11375595 A JP11375595 A JP 11375595A JP H08283416 A JPH08283416 A JP H08283416A
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Junko Shigehara
淳孝 重原
Takefumi Nakanaga
偉文 中長
Yuji Tada
祐二 多田
Tetsuji Inoue
鉄司 井上
Kenji Nakatani
賢司 中谷
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐熱性や非晶質安定性が高く、未反応の残留
塩素や不純物が少ない化合物を得、これを有機薄膜EL
素子の有機化合物層、特に正孔注入輸送層に用い、特性
に優れた素子を得る。 【構成】 化10で示される環状ホスファゼン化合物を
合成し、これを有機薄膜EL素子に用いる。 【化10】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、環状ホスファゼン化合
物およびこの化合物を用いた有機薄膜のエレクトロルミ
ネセンス(以下単にELという)現象を利用した有機薄
膜EL素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】イーストマン・コダック社のC.W.T
angらにより開発された有機薄膜EL素子は、特開昭
59−194393号公報、特開昭63−264692
号公報、特開昭63−295695号公報、アプライド
・フィジックス・レター第51巻第12号第913頁
(1987年)、およびジャーナル・オブ・アプライド
フィジックス第65巻第9号第3610頁(1989
年)等によれば、一般的には陽極、正孔注入輸送層、発
光層、陰極の順に構成され、以下のように作られてい
る。
【0003】図1に示すように、まず、ガラスや樹脂フ
ィルム等の透明絶縁性の基板(1)上に、蒸着またはス
パッタリング法等でインジウムとスズの複合酸化物(以
下ITOという)の透明導電性被膜の陽極(2)が形成
される。次に正孔注入輸送層(3)として銅フタロシア
ニン(以下CuPcと略す)、あるいは1,1−ビス
(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
(融点181.4℃〜182.4℃)やN,N,N’,
N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−
4,4’−ジアミン(融点120℃)等のテトラアリー
ルジアミンを、0.1μm 程度以下の厚さに蒸着して形
成する。
【0004】次に正孔注入輸送層(3)上にトリス(8
−キノリノラト)アルミニウム(以下Alq3と略す)
等の有機蛍光体を0.1μm 程度以下の厚さで蒸着し、
発光層(4)を形成する。最後に、その上に陰極(5)
としてMg:Ag,Ag:Eu,Mg:Cu,Mg:I
n,Mg:Sn等の合金を共蒸着法により200nm程度
蒸着している。
【0005】また、安達らは発光層と陰極(5)の間
に、電子注入輸送層(6)を設け、素子を作製した。ア
プライド・フェズィックス・レター第57巻第6号第5
31頁(1990年)によると、その素子は、ITOの
陽極上に正孔注入輸送層(3)としてN,N’−ジフェ
ニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,
1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン[融点159〜
163℃、ガラス転移温度67℃(窒素下、20℃/分
の昇温速度のDSCで測定):以下TPDと略す。]、
発光層(4)として1−[4−N,N−ビス(p−メト
キシフェニル)アミノスチリル]ナフタレン、電子注入
輸送層(6)として2−(4−ビフェニリル)−5−
(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジア
ゾール(以下、単にBPBDという)、陰極(5)とし
てMgとAgの合金を順に積層している。
【0006】以上のように作られた素子は、透明電極側
を陽極として20〜30V 以下の直流低電圧を印加する
ことにより発光層に正孔と電子が注入され、その再結合
により発光し1000cd/m2 程度の輝度が得られる。し
かし、上記で示した正孔注入輸送材料は、CuPcは耐
熱性であるが、可視光線波長領域の吸収が大きく、また
結晶性であるために蒸着膜が凹凸になり、CuPcのみ
を正孔注入輸送材料として用いた素子はEL発光の取り
出し効率が低く、素子が電気短絡しやすくなる問題があ
った。
【0007】1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノ
フェニル)シクロヘキサンやN,N,N’,N’−テト
ラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジ
アミンあるいはTPDは、非晶質で平滑な蒸着膜が得ら
れ、可視波長領域での吸収もないが、融点およびガラス
転移温度が低いため、素子作成プロセスや素子駆動時の
発熱により、時間が経つにつれて膜が結晶化し素子が短
絡しやすくなる問題があった。
【0008】テレビジョン学会技術報告16巻、2号、
47頁(1992年)によると、脇本らは正孔注入輸送
層にTPDの単層蒸着膜を用い発光層にキナクリドン
(以下Qdという)を添加したAlq3蒸着膜を用いて
最高輝度68000cd/m2 (融解破壊直前)を得てい
る。この素子は4mA/cm2低電流駆動で初期輝度が275
cd/m2 得られるものの、輝度半減寿命は130時間であ
った。一般に有機薄膜EL素子は電流密度を上げて輝度
を上げると、劣化速度が速くなるという問題があり、高
輝度と長寿命を両立した素子を得るのは難しかった。
【0009】また、低分子のみから正孔注入輸送層は膜
の機械的強度も弱く、有機層が低分子の蒸着のみで形成
された素子はITOのエッチングパターンの段差部でシ
ョートしやすいという問題があり、これを改善すべくポ
リマー化を図った提案(東京農工大学 科学技術展’9
2 資料集 58頁第2項の化合物(1)、応用物理学
会第3回講習会(1993)予稿集112−113頁、
特開平5−310949号、同6−200244号)が
なされている。このなかで、上記資料集や予稿集および
特開平6−200244号には、側鎖にトリフェニルア
ミン系誘導体に由来する基を置換したポリホスファゼン
化合物が示されている。このようなポリホスファゼン化
合物は、環状ホスファゼンの塩素置換体を開環重合して
ポリマー化するとともに上記置換基を導入することによ
って合成していると考えられる。そして、上記予稿集に
記載のように、上記のポリホスファゼン化合物は、分子
量がポリスチレン換算で100万以上であり、側鎖の置
換率は70.7%である。
【0010】このように、上記のポリホスファゼン化合
物は、高分子であるがゆえに、未置換の塩素が側鎖に残
存すること、かつ精製が困難で高純度のものが得られな
いことなどから、上記予稿集にも述べられているよう
に、未反応の残留塩素や不純物による素子の特性劣化が
大きな問題となる。より具体的には、残留塩素と他の素
子材料との反応が生じること、不純物による注入キャリ
アのトラップや再結合・発光領域およびその近傍での励
起子の失活が生じること、などである。
【0011】従って、この点の改善が望まれている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、第一
に、耐熱性や非晶質安定性が高く、未反応の残留塩素や
不純物がなく、有機薄膜EL素子や有機薄膜太陽電池、
電子写真感光体等の光・電子機能を有する素子の有機化
合物材料に適用できる、新規な環状ホスファゼン化合物
を提供することである。第二に、この環状ホスファゼン
化合物を用いることにより、耐熱性の問題や結晶化、未
反応の残留塩素および不純物による劣化の問題を改善
し、高輝度で長寿命な有機薄膜EL素子を提供すること
である。
【0013】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(4)の本発明により達成される。 (1)下記化2で示され、ヘキサクロルシクロトリホス
ファゼンまたはオクタクロルシクロテトラホスファゼン
にN,N’−ジフェニル−N−(3−メチルフェニル)
−N’−(3−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビフ
ェニル−4,4’−ジアミンを反応させて得られるか、
またはこの反応の後さらにフェノールを反応させて得ら
れる環状ホスファゼン化合物。
【0014】
【化2】
【0015】[化2において、R1 およびR2 は、それ
ぞれ〔N,N’−ジフェニル−N−(3−メチルフェニ
ル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミノ〕−
3−フェニルオキシ基またはフェノキシ基を表し、R1
とR2 とは同一でも異なるものであってもよい。nは3
または4である。R1 同士およびR2 同士は同一でも異
なるものであってもよく、これらR1 およびR2 のうち
の2個以上は〔N,N’−ジフェニル−N−(3−メチ
ルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジア
ミノ〕−3−フェニルオキシ基である。] (2)上記(1)の環状ホスファゼン化合物を含有する
有機化合物層を少なくとも1層有する有機薄膜EL素
子。 (3)前記環状ホスファゼン化合物を含有する有機化合
物層が正孔注入輸送層であり、この正孔注入輸送層と発
光層とを有する上記(2)の有機薄膜EL素子。 (4)さらに電子注入輸送層を有する上記(3)の有機
薄膜EL素子。
【0016】
【作用】本発明の化2で示される環状ホスファゼン化合
物は、ヘキサクロルシクロトリホスファゼンまたはオク
タクロルシクロテトラホスファゼンを出発原料として合
成されるが、未反応の残留塩素が少ない。また、分子量
もそれほど大きくないため、精製も容易で不純物が少な
い。さらには、耐熱性に優れ、ガラス転移温度が高く、
非晶質安定性に優れる。このため、この化合物を有機薄
膜EL素子の有機化合物層、特に正孔注入輸送層に用い
た場合、未反応の残留塩素による発光層材料等の他の素
子材料との反応、不純物による注入キャリアのトラップ
や再結合・発光領域およびその近傍での励起子の失活な
どが防止される。また、耐熱性に優れ、安定性に優れた
非晶質薄膜が得られ、薄膜の結晶化が防止される。従っ
て、本発明の有機薄膜EL素子は高輝度で長寿命なもの
となる。
【0017】なお、特開平6−200244号等には、
正孔注入輸送層用の化合物として[N,N’−ジフェニ
ル−N−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニ
ル−4,4’−ジアミノ]−3−フェニルオキシ基を導
入したポリホスファゼン化合物が示されている。しか
し、この化合物はリニアーなポリマーであり、本発明の
環状の化合物とは明らかに異なるものである。
【0018】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。
【0019】本発明の環状ホスファゼン化合物は、化2
で示されるものである。化2について説明すると、化2
において、R1 およびR2 は、それぞれ[N,N’−ジ
フェニル−N−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビ
フェニル−4,4’−ジアミノ]−3−フェニルオキシ
基(OTPDと略すこともある)またはフェノキシ基
(OPh)を表し、R1 とR2 とは同一でも異なるもの
であってもよい。nは3または4である。従って、R1
とR2 とは複数個存在するが、R1 同士およびR2 同士
は同一でも異なるものであってもよい。これらR1 およ
びR2 のうちの2個以上は[N,N’−ジフェニル−N
−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−
4,4’−ジアミノ]−3−フェニルオキシ基である。
より好ましくは、n=3の場合R1 およびR2 のうちの
3個以上、n=4の場合4個以上が[N,N’−ジフェ
ニル−N−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェ
ニル−4,4’−ジアミノ]−3−フェニルオキシ基で
あることが好ましい。
【0020】このような環状ホスファゼン化合物は、n
=3または4に応じ、ヘキサクロルシクロトリホスファ
ゼンまたはオクタクロルシクロテトラホスファゼンを出
発原料とし、N,N’−ジフェニル−N−(3−メチル
フェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミ
ノ]−3−フェニルオキシ基のみを導入するときは、所
定量のN,N’−ジフェニル−N−(3−メチルフェニ
ル)−N’−(3−ヒドロキシフェニル)−1,1’−
ビフェニル−4,4’−ジアミンを反応させて得られ
る。また、N,N’−ジフェニル−N−(3−メチルフ
ェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミ
ノ]−3−フェニルオキシ基のほかにフェノキシ基を導
入したものを得る場合は、所定量のN,N’−ジフェニ
ル−N−(3−メチルフェニル)−N’−(3−ヒドロ
キシフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジア
ミンと反応させた後、さらに所定量のフェノールと反応
させて得られる。
【0021】上記の反応は、テトラヒドロフラン(TH
F)等の有機溶媒中で還流温度にて全体で(2段階反応
のときは合計時間で)12〜48時間程度行えばよい。
【0022】この場合の収率は85〜95%程度であ
る。
【0023】また、環状ホスファゼン化合物の同定は、
元素分析、マススペクトル、 1Hあるいは31P核磁気共
鳴スペクトル( 1Hあるいは31PNMR)、赤外吸収ス
ペクトル(IR)等によって行うことができる。
【0024】また、純度(質量%)は99.9%以上で
ある。この値は、液体クロマトグラフィーにより、分離
した目的物ピークの吸光度を測定して得られた値であ
る。
【0025】これらの環状ホスファゼン化合物は、出発
原料に由来する残留塩素がほとんどなく、塩素置換率
は、好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.5
〜100%である。
【0026】また、分子量は1500〜4500程度で
あり、融点mpは90〜140℃程度、ガラス転移温度
Tgは80〜120℃程度である。イオン化ポテンシャ
ルIpは5.2〜5.6eV程度である。このときの融
点、ガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)によ
り窒素雰囲気下10℃/分の昇温スピードで測定して求
めた値であり、イオン化ポテンシャルは理研計器(株)
表面分析装置AC−1により大気下で測定した光電的仕
事関数である。
【0027】これらの環状ホスファゼン化合物の具体例
を表1に示す。表1には化2のR1とR2 とnとの組み
合わせで示している。併せて、mp、Tg、Ipを示
す。また、表1の脚注には置換基OTPDおよびOPh
の構造式を示す。
【0028】
【表1】
【0029】本発明の環状ホスファゼン化合物は、融点
およびガラス転移温度の値からわかるように耐熱性や非
晶質安定性が良好であり、薄膜形成性に優れる。
【0030】このようなことから、本発明の環状ホスフ
ァゼン化合物は有機薄膜EL素子に用いることが好まし
い。環状ホスファゼン化合物は1種以上用いても2種以
上併用してもよい。環状ホスファゼン化合物は、合成経
路等により、[N,N’−ジフェニル−N−(3−メチ
ルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジア
ミノ]−3−フェニルオキシ基およびフェノキシ基の置
換数が異なる化合物の混合物として得られることがある
が、有機薄膜EL素子に用いる場合はこの混合物をその
まま用いることができる。このような使用目的では、未
置換の残留塩素による素子の特性劣化を防止できればよ
く、本発明の環状ホスファゼン化合物は残留塩素が極め
て少ないものであるため、置換基の種類や数等が異なる
化合物の混合物を使用しても全く支障がない。
【0031】以下、本発明の環状ホスファゼン化合物を
用いた本発明の有機薄膜EL素子について説明する。
【0032】本発明の有機薄膜EL素子は、本発明の環
状ホスファゼン化合物を含有する少なくとも一層の有機
化合物層を有する。本発明の化合物は正孔注入輸送性に
優れるため、正孔注入輸送層に用いることが好ましい。
従って、本発明の化合物を正孔注入輸送層に用いる場合
について説明する。
【0033】本発明の有機薄膜EL素子の構成例を図1
から図3に示す。図1は、本発明の有機薄膜EL素子
を、基板(1)上に陽極(2)、正孔注入輸送層
(3)、発光層(4)、陰極(5)の順に構成した場合
の例である。また、図2は、図1の構成において、発光
層(4)と陰極(5)との間に、さらに、電子注入輸送
層(6)を設けた例である。また、図3は、図1の構成
において、素子上に封止層(7)を設け、さらに接着性
樹脂層(9)を介して封止板(8)を接着し、素子を密
封した例である。
【0034】図1〜図3に示すように構成した有機薄膜
EL素子では、正孔注入輸送層(3)側を正として電源
(10)にリード線(11)で接続し、一方陰極取り出
し口(12)からも電源(10)の負側にリード線(1
1)で接続し直流電圧を印加する。
【0035】以下、さらに詳しく素子材料および素子の
製造方法について説明する。
【0036】陽極(2)は、ガラスはプラスチックフィ
ルム等の透明絶縁性の基板(1)上にITO(仕事関数
4.6〜4.8eV)や酸化亜鉛アルミニウムのような透
明導電性物質を真空蒸着やスパッタリング法等で被覆し
た表面抵抗10〜50Ω/cm2、可視光線透過率80%以
上の透明電極、または金やプラチナを薄く蒸着した半透
明電極やポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン
等の高分子を被覆した半透明電極が望ましい。
【0037】しかし、別の場合として、陽極(2)が不
透明な場合には、正孔注入輸送層(3)を通して発光層
(4)へ正孔注入しやすい仕事関数の値の大きい金、プ
ラチナ、パラジウム、ニッケル等の金属板、シリコン、
ガリウムリン、アモルファス炭化シリコン等の仕事関数
が4.6eV以上、好ましくは4.6〜5.1eV程度の半
導体基板、もしくはそれらの金属や半導体を、絶縁性の
基板(1)上に被覆して陽極(2)に用い、陰極(5)
を透明電極もしくは半透明電極とすることもできる。陰
極(5)も不透明であれば、発光層(4)の少なくとも
一端が透明である必要がある。
【0038】陽極(2)の厚さは10〜300nm程度で
ある。
【0039】次に本発明の化合物を用いた正孔注入輸送
層(3)を陽極(2)上に形成する。しかし、層間の密
着性向上、劣化防止、色調の調整等の目的で特開平5−
271652号、特開平5−311163号、特開平5
−331286号、特開平4−230997号公報中に
記載または言及されている材料や米国特許第32654
96号明細書、同4025341号、同3873311
号、同3873312号、ヨーロッパ特許第29511
5号明細書、同295125号、同295127号の中
で述べられている正孔輸送性ポリマー材料の層またはC
uPcやフタロシアニン等の金属および無金属フタロシ
アニン類、耐熱性の低分子正孔注入輸送材料の層または
化3で表される低分子芳香族第三級アミン正孔輸送材料
の層、またはアモルファスのSiやSiC、Seなどの
無機化合物を含む層と積層し、2層以上の多層の正孔注
入輸送層を形成してもよい。また、本発明の化合物と混
合して用いてもよい。
【0040】
【化3】
【0041】なお、化3において、AおよびBは化4に
示されるものである。
【0042】
【化4】
【0043】化4中、R10はアルキル基等の一価の置換
基を表し、L0 はアルキレン基等の二価の連結基を表
す。pは0または1〜5の整数であり、qは0または1
〜4の整数であり、rは0または1〜3の整数である。
【0044】この際の正孔注入輸送層は真空蒸着法、ス
ピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、イ
オンプレーティング法、プラズマCVD法等各種の成膜
方法を適用して形成することができる。
【0045】正孔注入輸送層(3)の厚さは1〜100
nm程度とすればよく、2層以上設けるときも合計厚さを
この範囲にすればよい。
【0046】次に、正孔注入輸送層(3)上に発光層
(4)を形成する。用いる蛍光色素等の蛍光体の例とし
ては、米国ラムダフィズィック社のレーザーダイカタロ
グに記載されているクマリン4、クマリン120、クマ
リン2、クマリン151、クマリン307、クマリン5
00、フルオロール7GA等が挙げられる。その他、発
光層(4)に用いる蛍光体としては、可視領域に蛍光を
有し、適当な方法で成膜できる任意の蛍光体が挙げられ
る。
【0047】例えば、アントラセン、サリチル酸塩、ピ
レン、コロネン、ペリレン、テトラフェニルブタジエ
ン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセ
ン、8−キノリノールリチウム、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジ
クロロ−8−キノリノラト)アルミニウム、トリス(5
−クロロ−8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8
−キノリノラト)亜鉛、トリス(5−フルオロ−8−キ
ノリノラト)アルミニウム、トリス(8−キノリノラ
ト)スカンジウム、ビス[8−(p−トシル)アミノキ
ノリン]亜鉛錯体およびカドミウム錯体、1,2,3,
4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニ
ルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキ
シ−p−フェニレンビニレン、あるいは特開平4−31
488号公報、米国特許第5141671号明細書、同
4769292号明細書中で言及されている蛍光物質等
が挙げられる。
【0048】これらの発光層材料の成膜は真空蒸着法、
累積膜法、または適当な樹脂バインダー中に分散させて
スピンコートなどの方法でコーティイングすることによ
り行われる。
【0049】発光層(4)の膜厚は、単層または積層に
より形成する場合においても1μm以下であり、好まし
くは1〜100nmである。また、これらの蛍光性ポリマ
ーや分子にビニル基、アクリル基、メタクリロイルオキ
シメチル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイル
オキシエチル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ
メチル基、アクリロイルオキシエチル基、シンナモイル
基、スチレンメチルオキシ基、プロピオロイル基、プロ
パルギル基等の重合性、架橋性の基を導入した材料を用
いて成膜後に熱、光、放射線で重合、架橋することもで
きる。
【0050】また、発光層(4)中の蛍光体は、発光波
長変換、発光効率向上のために、米国ランダフィズィッ
ク社またはイーストマンコダック社のレーザーダイカタ
ログに記載されているクマリン系やキナクリドン系、ペ
リレン系、ピラン系等の、2種類以上の蛍光体をドーピ
ングするか、多種類の蛍光体の発光層を2層以上積層し
てもよく、そのうちの一方は赤外域または紫外域に蛍光
を示すものであってもよい。
【0051】図2に示すような構成とし、発光層(4)
上に電子注入輸送層(6)を積層する場合、電子注入輸
送材料の好ましい条件は、電子移動度が大きく、分子の
最低空軌道(LUMO)のエネルギーレベルが発光層材
料のLUMOのエネルギーレベルと同程度から陰極材料
のフェルミレベル(仕事関数)の間にあり、Ipが発光
層材料より大きく、成膜性がよいことである。さらに陽
極(2)が不透明で、透明もしくは半東名の陰極(5)
から光を取り出す構成の素子においては少なくとも発光
層材料の蛍光波長領域において実質的に透明である必要
がある。
【0052】本発明における電子注入輸送層には、2−
(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニ
ル)−1,3,4−オキサジアゾール(BPBD)、
2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジ
アゾール、および浜田らの合成したオキサジアゾール誘
導体(日本化学会誌、1540頁、1991年)等を用
いることができるが、上記例に特に限定されるものでは
なく、場合によっては発光層材料の例に挙げた化合物を
用いることが可能な場合もある。
【0053】電子注入輸送層(6)の成膜は真空蒸着
法、累積膜の方法により行われ、1〜100nmの厚さに
成膜される。
【0054】次に陰極(5)を発光層(4)または電子
注入輸送層(6)上に形成する。陰極は、電子注入を効
果的に行うために発光層(4)または電子注入輸送層
(6)と接する面に低仕事関数の物質が使われ、Li、
Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Al、Ag、I
n、Sn、Zn、Zr等の金属元素単体、または安定性
を向上させるためにそれらを含む2成分、3成分の合金
系が用いられる。
【0055】仕事関数の例としてはMg単体で約3.6
eVであり、MgにLi等アルカリ金属を添加した場合は
3.1〜3.2eVに低下する。アルカリ金属を含む低仕
事関数陰極を用いた場合には、さらにその上にアルカリ
金属を含まないMg、Al、Ag等の金属層を積層し保
護層としてもよい。陰極(5)の形成方法は、抵抗加熱
方法により10-3Pa以下の真空度の下で成分ごとに別々
の蒸着源から水晶振動子式膜厚計でモニターしながら共
蒸着する。このとき、0.01〜0.3μm 程度の膜厚
で形成されるが、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティ
ング法やスパッタリング法により共蒸着ではなく、合金
ターゲットを用いて成膜することもできる。
【0056】図3に示すように、素子の有機層や電極の
酸化を防ぐために素子上に封止層(7)を形成する構成
とするとき、封止層(7)は、陰極(5)の形成後直ち
に形成する。封止層材料の例としては、SiO2 、Si
O、GeO、MgO、Al23 、TiO2 、GeO
3 、ZnO、TeO2 、SbO3 、SnO、B23
の酸化物、MgF2 、LiF、BaF2 、AlF3 、F
eF3 、CaF2 等の沸化物、ZnS、GeS、SnS
等の硫化物等のガスおよび水蒸気バリアー性の高い無機
化合物が挙げられるが、上記例に限定されるものではな
い。これらを単体または複合して蒸着、スパッタリング
法、イオンプレーティング法等により成膜する。抵抗加
熱方式で蒸着する場合には、低温で蒸着できるGeOが
優れている。陰極保護のために、封止層中、または封止
層に接する面上に封止用無機化合物としてLi等のアル
カリ金属やCa等のアルカリ℃類金属との混合層を設け
てもよい。
【0057】さらに湿気の侵入を防ぐために市販の低吸
湿性の光硬化性接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン
系接着剤、架橋エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤シ
ート等の接着性樹脂層(9)を用いて、ガラス板等の封
止板(8)を接着し密封する。ガラス板以外にも金属
板、プラスチック板等を用いることもできる。
【0058】以上のように構成した有機薄膜EL素子
は、前述のように、正孔注入輸送層(3)側を正として
電源(10)にリード線(11)で接続し直流電圧を印
加することにより発光するが、交流電圧を印加した場合
にも正孔注入輸送層(3)側の電極が正に電圧印加され
ている間は発光する。本発明の有機薄膜EL素子は基板
上に2次元に配列することにより文字や画像を表示可能
な薄型ディスプレーをすることができる。
【0059】なお、本発明の環状ホスファゼン化合物
は、ドナー性を有する有機半導体材料として有機薄膜E
L素子以外の光電変換素子、例えば太陽電池や光センサ
ーあるいは電子写真感光体への応用も可能である。
【0060】
【実施例】以下、本発明を比較例とともに示す実施例に
よって具体的に説明する。
【0061】<実施例1> (1) N,N’−ジフェニル−N−(3−メチルフェ
ニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン
(II)の合成
【0062】化5に示すスキームに従って以下のように
合成した。
【0063】N,N’−ジフェニルベンジジン(I)
(100mmol, 33.6g )、m−ヨードトルエン(1
00mmol, 24.0g )、銅粉(200mmol, 12.7
g )、炭酸カリウム(400mmol, 55.3g )、およ
びヨウ化第一銅(3mmol, 0.6g )をo−ジクロルベ
ンゼン500mlに加え、これらの混合物を24時間還流
した。反応終了後、銅粉および塩を濾過によって除き、
濾液を減圧下で濃縮した。この濃縮物をベンゼンに溶解
し、水で3回繰り返し洗浄した。ベンゼン溶液を濃縮
し、粗生成物42g を得た。シリカゲルを充填したカラ
ムで精製し、目的物30.7g を得た。収率:72%
(溶離液はヘキサン:80容量部とベンゼン:20容量
部を混合したものを用いた。)
【0064】
【化5】
【0065】(2) N,N’−ジフェニル−N−(3
−メチルフェニル)−N’−(3−メトキシフェニル)
−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(III−M
e) の合成
【0066】化6に示すスキームに従って以下のように
合成した。
【0067】N,N’−ジフェニル−N−(3−メチル
フェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミ
ン(II)(70mmol, 29.9g )、m−ヨードアニソ
ール(105mmol, 24.6g )、銅粉(140mmol,
8.9g )、炭酸カリウム(105mmol, 14.5g
)、およびヨウ化第一銅(2mmol, 0.4g )をo−
ジクロルベンゼン350mlに加え、これらの混合物を2
4時間還流した。反応終了後、銅粉および塩を濾過によ
って除き、濾液を減圧下で濃縮した。この濃縮物をベン
ゼンに溶解し、水で3回繰り返し洗浄した。ベンゼン溶
液を濃縮し、粗生成物36.5g を得た。シリカゲルを
充填したカラムで精製し、目的物35g を得た。収率:
94%(溶離液はヘキサン:70容量部とベンゼン:3
0容量部を混合したものを用いた。)
【0068】
【化6】
【0069】(3) N,N’−ジフェニル−N−(3
−メチルフェニル)−N’−(3−ヒドロキシフェニ
ル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(IV)
の合成
【0070】化7に示すスキームに従って以下のように
合成した。
【0071】N,N’−ジフェニル−N−(3−メチル
フェニル)−N’−(3−メトキシフェニル)−1,
1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(III−Me)
(65mmol, 34.6g )、ヨウ化トリメチルシリル
(170mmol, 34.0g )およびヨウ化ナトリウム
(170mmol, 25.5g )をスルホラン150mlに加
え、180℃で24時間反応した。反応液を水に投入し
た後、ベンゼンで生成物を抽出した。このベンゼン層
を、水で3回繰り返し洗浄した。濃縮し、粗生成物35
gを得た。シリカゲルを充填したカラムで精製し、目的
物28.0g を得た。収率:83%(溶離液はヘキサ
ン:80容量部とベンゼン:20容量部を混合したもの
を用いた。)
【0072】
【化7】
【0073】(4)化合物Aの合成 化8に示すスキームに従って以下のように合成した。
【0074】N,N’−ジフェニル−N−(3−メチル
フェニル)−N’−(3−ヒドロキシフェニル)−1,
1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(IV)(25mmo
l, 13.0g )のテトラヒドロフラン(300ml)溶
液にカリウム−t−ブトキシド(26mmol, 2.9g )
を加え、IVのカリウム塩を調製した。この溶液に、ヘ
キサクロルシクロトリホスファゼン(25unit mmol,
2.9g )のテトラヒドロフラン(50ml)溶液を添加
した後、還流温度で1時間反応した。次にフェノール
(175mmol, 16.5g )、ナトリウム(26g-ato
m, 3.2g )、テトラヒドロフラン(300mlで調製
したナトリウムフェノラートを先の反応液に添加し、還
流温度で24時間反応した。反応後、減圧下で濃縮し
て、これにベンゼンを加え、水で3回繰り返し洗浄し
た。ベンゼン層を濃縮し、粗生成物16.3gを得た。
シリカゲルを充填したカラムで精製し、目的物14.5
g を得た。(溶離液はヘキサン:50容量部とベンゼ
ン:50容量部を混合したものを用いた。)
【0075】
【化8】
【0076】原料仕込から計算した構造式は、N33
(OPh)3 (OTPD)3 (化合物A)である(分子
量:1965、収率:89%)。
【0077】生成物は、 1H−NMR、31P−NMR、
マススペクトルで同定を行い、目的物が合成できている
ことを確認した。
【0078】純度:99.9%(液体クロマトグラフィ
ーによる) マススペクトル:m/e1965 NMRスペクトル: 1H−NMR 図4、31P−NMR
図5 IRスペクトル:図6 元素分析:計算値/%: C,78.76;H,5.23;N,6.41;P,4.
72 測定値/%: C,78.49;H,5.39;N,6.22;P,4.54 融点95℃、ガラス転移温度86℃(表1に記載、示差
走査熱量測定(DSC)による)
【0079】<実施例2>N,N’−ジフェニル−N−
(3−メチルフェニル)−N’−(3−ヒドロキシフェ
ニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(I
V)(250mmol,130g )のテトラヒドロフラン(3
000ml)溶液にカリウム−t−ブトキシド(260mm
ol, 29g )を加え、IVのカリウム塩を調製した。こ
の溶液に、ヘキサクロルシクロトリホスファゼン(25
unit mmol,2.9g )のテトラヒドロフラン(50ml)
溶液を添加した後、還流温度で24時間反応した。処理
ならびに精製は実施例1と同様に行った。
【0080】1H−および31P−NMRならびに元素分
析からN33 (OTPD)6 (化合物B)を確認し
た。
【0081】<実施例3>実施例1のヘキサクロルシク
ロトリホスファゼン2.9g に代えて、オクタクロルシ
クロテトラホスファゼン1.3g を使用し、実施例1と
同様の処理ならびに精製を行った。
【0082】1H−および31P−NMRならびに元素分
析からN44 (OPh)4 (OTPD)4 (化合物
C)を確認した。
【0083】<実施例4>実施例2のヘキサクロルシク
ロトリホスファゼン2.9g に代えて、オクタクロルシ
クロテトラホスファゼン1.3g を使用し、還流反応を
24時間行い、実施例2と同様の処理ならびに精製を行
った。
【0084】1H−および31P−NMRならびに元素分
析からN44 (OTPD)8 (化合物D)を確認し
た。
【0085】<実施例5>厚さ200nmのITO透明電
極(陽極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセト
ン、エタノールを用いて超音波洗浄した。その基板を煮
沸エタノール中から引き上げて乾燥してUV/O3 洗浄
した後、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、真空
槽を1×10-4Pa以下まで減圧した。
【0086】次いで、実施例1の化合物N33 (OP
h)3 (OTPD)3 (化合物A)を蒸着速度0.1〜
0.2nm/secで約50nmの厚さに蒸着し、透明な非晶質
性の薄膜を得た。これを大気中より過酷な環境である3
0℃−100%RHおよび60℃−90%RHの恒温層
に3ケ月間以上放置しても結晶化は起こらず、安定な非
晶質状態を維持しており、高い薄膜形成能と放置安定性
を示した。また、同様にして作製した膜について、AC
−1でIpを測定したところ、5.5eVであった(表1
に記載)。
【0087】<実施例6>実施例2〜4の化合物につい
ても、実施例5と同様に実験したところ、実施例5と同
様、3ケ月間以上放置しても結晶化は起こらなかった。
また蒸着膜のIpは表1に示すとおりである。
【0088】<比較例1>実施例1の化合物の代わり
に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチ
ルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジア
ミン(TPD)を用いた以外は実施例5と同様な方法に
て薄膜を作製し、30℃−100%RHの恒温層に放置
したところ、3日目に結晶化が始まった。
【0089】<実施例7>厚さ200nmのITO透明電
極(陽極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセト
ン、エタノールを用いて超音波洗浄した。その基板を煮
沸エタノール中から引き上げて乾燥してUV/O3 洗浄
した後、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、真空
槽を1×10-4Pa以下まで減圧した。
【0090】まず、実施例1の化合物N33 (OP
h)3 (OTPD)3 (化合物A)を蒸着速度0.1〜
0.2nm/secで約50nmの厚さに蒸着し、正孔注入輸送
層とした。さらに、減圧状態を保ったまま、トリス(8
−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を蒸着速度
0.1〜0.2nm/secで約50nmの厚さに蒸着し、発光
層とした。さらに、減圧状態を保ったまま、MgAg
(重量比10:1)を蒸着速度0.2〜0.3nm/secで
約200nmの厚さに蒸着して陰極とし、EL素子を得
た。
【0091】このEL素子に直流電圧を印加すると、約
3V で目視可能な発光をし始め、最高輝度は11V にお
いて18600cd/m2 (電流密度755mA/cm2)であっ
た。また、この素子を乾燥雰囲気下10mA/cm2の一定電
流密度で連続駆動させた。初期は、5.9V で300cd
/m2 、輝度の半減時間は約500時間で、その間の駆動
電圧の上昇は6.3V であった。
【0092】<実施例8>実施例7において、正孔注入
輸送層に実施例4の化合物N44 (OTPD)8 (化
合物D)を用いた以外は同様にして素子を得、特性を調
べた。その結果、約3V で目視可能な発光をし始め、最
高輝度は11V において25000cd/m2(電流密度7
55mA/cm2)であった。また、この素子を乾燥雰囲気下
10mA/cm2の一定電流密度で連続駆動させた。初期は、
5.9V で350cd/m2 、輝度の半減時間は約1000
時間で、その間の駆動電圧の上昇は5.2V であった。
【0093】なお、実施例7において、正孔注入輸送層
に、実施例2で合成した化合物B、実施例3で合成した
化合物Cをそれぞれ用いたEL素子を同様に作製し、実
施例7と同様に特性を調べたところ、実施例7、8と同
様の結果が得られた。また、化合物A〜Dの2種以上の
化合物を種々組み合わせて正孔注入輸送層に用いたEL
素子を作製し、同様に特性を調べた。この場合も上記と
同様の結果が得られた。
【0094】<比較例2>実施例7において、正孔注入
輸送層にTPDを用いた以外は同様にしてEL素子を
得、特性を調べた。その結果、約3.5V で目視可能な
発光をし始め、最高輝度は11V において11100cd
/m2 (電流密度675mA/cm2)であった。また、この素
子を乾燥雰囲気下10mA/cm2の一定電流密度で連続駆動
させた。初期は、5.6V で210cd/m2 あったが、約
130時間後に電流リーク(短絡)が起こり、輝度は半
減以下に大きく低下した。その間の駆動電圧の上昇は
2.3Vであった。
【0095】<比較例3>実施例7において、正孔注入
輸送層に特開平6−200244号に示されるポリホス
ファゼン化合物(化9)を用い、スピンコート法にて成
膜するほかは同様にしてEL素子を得、特性を調べた。
その結果、印加電圧が6V をこえたところで、目視可能
な発光をし始め、最高輝度は15V において約4000
cd/m2 (電流密度約270mA/cm2)であった。この素子
を乾燥雰囲気下10mA/cm2の一定電流密度で連続駆動さ
せた。初期は10.5V で150cd/m2 であったが、そ
の後の電圧上昇が大きく、輝度半減時間は短かった。
【0096】このものにおいて、特性が劣化するのは、
分子中に存在する残留塩素と不純物によると考えられ
る。
【0097】
【化9】
【0098】
【発明の効果】本発明の環状ホスファゼン化合物は、残
留塩素等の不純物がなく、高純度で透明な、高いTgを
持つ耐熱性化合物として得られる。さらには、それらを
有機薄膜EL素子の有機化合物層、特に、正孔注入輸送
層に用いることにより、高輝度で長寿命な有機薄膜EL
素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機薄膜EL素子の一構成例を示す断
面図である。
【図2】本発明の有機薄膜EL素子の他の構成例を示す
断面図である。
【図3】本発明の有機薄膜EL素子のさらに他の構成例
を示す断面図である。
【図4】本発明の化合物の 1HNMRスペクトルを示す
グラフである。
【図5】本発明の化合物の31PNMRスペクトルを示す
グラフである。
【図6】本発明の化合物のIRスペクトルを示すグラフ
である。
【符号の説明】
1 基板 2 陽極 3 正孔注入輸送層 4 発光層 5 陰極 6 電子注入輸送層 7 封止層 8 ガラス板 9 接着性樹脂層 10 電源 11 リード線 12 陰極取り出し口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中長 偉文 徳島県徳島市川内町加賀須野463番地 大 塚化学株式会社徳島研究所内 (72)発明者 多田 祐二 徳島県徳島市川内町加賀須野463番地 大 塚化学株式会社徳島研究所内 (72)発明者 井上 鉄司 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 中谷 賢司 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記化1で示され、ヘキサクロルシクロ
    トリホスファゼンまたはオクタクロルシクロテトラホス
    ファゼンにN,N’−ジフェニル−N−(3−メチルフ
    ェニル)−N’−(3−ヒドロキシフェニル)−1,
    1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンを反応させて得
    られるか、またはこの反応の後さらにフェノールを反応
    させて得られる環状ホスファゼン化合物。 【化1】 [化1において、R1 およびR2 は、それぞれ〔N,
    N’−ジフェニル−N−(3−メチルフェニル)−1,
    1’−ビフェニル−4,4’−ジアミノ〕−3−フェニ
    ルオキシ基またはフェノキシ基を表し、R1 とR2 とは
    同一でも異なるものであってもよい。nは3または4で
    ある。R1 同士およびR2 同士は同一でも異なるもので
    あってもよく、これらR1 およびR2 のうちの2個以上
    は〔N,N’−ジフェニル−N−(3−メチルフェニ
    ル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミノ〕−
    3−フェニルオキシ基である。]
  2. 【請求項2】 請求項1の環状ホスファゼン化合物を含
    有する有機化合物層を少なくとも1層有する有機薄膜E
    L素子。
  3. 【請求項3】 前記環状ホスファゼン化合物を含有する
    有機化合物層が正孔注入輸送層であり、この正孔注入輸
    送層と発光層とを有する請求項2の有機薄膜EL素子。
  4. 【請求項4】 さらに電子注入輸送層を有する請求項3
    の有機薄膜EL素子。
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