JPH08269880A - 染色均一性に優れたポリアミド繊維製染色布帛及びその製造法 - Google Patents

染色均一性に優れたポリアミド繊維製染色布帛及びその製造法

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JPH08269880A
JPH08269880A JP7073766A JP7376695A JPH08269880A JP H08269880 A JPH08269880 A JP H08269880A JP 7073766 A JP7073766 A JP 7073766A JP 7376695 A JP7376695 A JP 7376695A JP H08269880 A JPH08269880 A JP H08269880A
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polyamide
dyeing
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fiber
polyamide fiber
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JP7073766A
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Tetsuya Kato
哲也 加藤
Shigenori Imamura
▲茲▼規 今村
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 立体障害されたアミノ基を有する特定の化
合物をポリマに対し0.005〜0.5重量%という極
く少量含有するポリアミド繊維から布帛を製造し、緊張
下で高温熱セットした後、酸性染料で染色することによ
りポリアミド繊維製染色布帛を製造する。特に、ポリア
ミド繊維と弾性繊維とを交編織した布帛の場合に有効で
ある。 【効果】 布帛を緊張下で高温熱処理した後に酸性染
料で染色して染色布帛としても、染め斑(例えばトリコ
ットにおける筋斑)が生じず染色均一性に優れた高品位
の製品布帛が安定して得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリアミド繊維製染色
布帛の染色均一性を大幅に改善させることに関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】ナイロン6繊維やナイロン66繊維のよ
うな一般的なポアミド繊維は溶融紡糸によって製糸され
る。即ち、エクストルーダーあるいは熱板によって溶融
されたポリアミドは、ギアポンプで計量された後、ポリ
マ通路を流れ、濾過材が充填された紡糸パック中を通
り、口金孔から吐出される。
【0003】この紡糸時の溶融ナイロンは、吐出までの
途中において、重合、解重合あるいは熱分解が若干生じ
重合度が変化してき易い。このために、酸性染料に対す
る染色性が変化したり、溶融紡糸性が低下するなどの好
ましくない変化が生じてき易い。特に、溶融紡糸の開始
直後や紡糸パックの口金交換直後には、この変化が大き
くなるので、これら紡糸開始直後のポリアミド繊維は、
安定製糸時の繊維に比べて紡糸糸切れが多く、しかも、
酸性染料での染色により淡染状態となる。
【0004】従って、この紡糸開始直後の繊維を安定製
糸時の繊維と混合して用いたときには布帛上において染
色斑が現われるという問題があった。特に、ポリウレタ
ン系弾性繊維と交編織した布帛の場合は、布帛の寸法や
形態を安定化させるために、染色仕上げに先立って緊張
下、高温で熱セット(例えば190℃,1分間の乾熱熱
セット)することが必要であるので、この熱セットによ
り紡糸開始直後の繊維の淡染化が一層促進され、紡糸開
始直後のナイロン繊維が混用された布帛において筋状の
染色斑は極めて目立つようになり、製品品位が大幅に悪
化するのであった。この筋状の染色斑は、布帛上の経方
向に淡染となり易い糸条が織込まれている結果、緊張下
での高温熱処理及び染色を経ることによって、その糸条
が他よりも明らかな淡染状態となり、経方向に延びる筋
状の染色斑として認識されるものであり、通常、経筋と
称されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これらの問題を解決す
るために、溶融紡糸の開始時あるいは新しい紡糸パック
を取付けた時には、紡糸巻取りを開始する前にポリマを
長時間押し流して廃棄する方法があるが、製品収率が大
幅に低下するという別の大きな問題があり、実用的な解
決手段とはなり得ない。
【0006】また、前記の問題を解決するために、紡糸
パック中の濾過部材(シリカ、アルミナあるいはステン
レススチールからなる濾過部材が一般的に使用される)
の表面を熱硬化性シリコンでコーティングする方法(特
開昭60−181307号公報、特開昭60−1813
08号公報)が提案され、かなりの効果が得られてい
る。しかし、紡糸パック中で溶融ポリマが接触する全て
の部材をコーティングすることは実際上不可能に近いの
でその改善効果には限界があり、さらなる改善が求めら
れていた。
【0007】あるいはまた、ポリアミドの変性を抑制す
る化合物として、いわゆる酸化防止剤、例えば立体障害
フェノール化合物、リン化合物、硫黄化合物、金属塩な
どがよく知られている(「高分子の劣化」産業図書
(株)発行)。しかし、これらの化合物はナイロン繊維
が融点よりかなり低い温度条件下で使用された時の特性
低下を抑制するためには有効であるが、溶融時の紡糸安
定性改善には殆ど効果がない。さらに、有機系酸化防止
剤等においては、一般に1重量%以上のように多くの配
合量が必要があり、溶融紡糸性の低下や着色などの弊害
が生じる。
【0008】さらにまた、深色性、鮮明性、染色堅牢性
という染色特性を改善するために、立体障害を有するア
ミノ基を有する化合物をポリアミドに0.5〜5重量%
添加する方法が特開平2−265966号公報で提案さ
れている。しかし、この方法では、全体的に染色特性を
向上できるものの、前記したポリマ物性斑に起因する染
色斑の問題を改善することは困難であった。
【0009】そこで、本発明は、上記のような従来技術
の欠点を解消し、布帛を緊張下、高温で熱セットしても
優れた染色均一性が得られ、しかも、繊維の着色や色調
悪化等の弊害を生じないポリアミド繊維製染色布帛を提
供することを主な目的とする。
【0010】このため、本発明は、溶融紡糸パック内部
材の表面コーティングをしなくてもポリアミドの溶融紡
糸開始時に生じるポリマ変性を防止することができ、染
色均一性を一段と向上させることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、本発明の染色均一性に優れたポリアミド繊維製染色
布帛は、酸性染料で染色されたポリアミド繊維製染色布
帛において、ポリアミド繊維が式1、式2或いは式3で
示される化合物のいずれか1種以上をポリマに対し0.
005〜0.5重量%含有し、かつ、緊張下で高温熱セ
ットされていることを特徴とする。
【化4】 (式中、R4 は2,2,6,6−テトラアルキルピペリ
ジル−4である。)
【0012】本発明は、ポリアミド繊維と弾性繊維とが
交編織されかつ酸性染料で染色されたポリアミド繊維製
染色布帛の場合に、特に有効である。
【0013】本発明の対象とするポリアミド繊維は、ナ
イロン6繊維、ナイロン66繊維あるいはそれらを主構
成単位とする共重合ナイロン繊維で代表される。そのポ
リアミドとしては、重合可能な2塩基酸と2酸塩基から
の縮重合ポリアミド、例えばポリヘキサメチレンアジパ
ミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド
(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンイソフタルア
ミド(6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD
−6)など、あるいは、重合可能なラクタム類からの開
環重合ポリアミド、例えばポリカプロラクタム(ナイロ
ン6)、ポリエナントラクタム(ナイロン12)などが
挙げられる。これら重合可能なポリアミド用モノマの2
種以上からの共重合体も使用できる。
【0014】そのポリアミドの重合度は、98%硫酸相
対粘度にして2.4〜3.5の範囲が適当である。アミ
ノ末端基量は特に限定されないが2.0〜6.0モル/
105 gが適当である。アミノ末端基が多過ぎれば製糸
性が損なわれ、少な過ぎると濃色染めが難しくなるの
で、好ましくない。ただ、本発明によると、付随的に若
干の濃色化効果も得られるので、通常のポリアミドより
も低い濃度のアミノ末端基量で十分に実用性のある染色
物を得ることもできる。
【0015】本発明では、このポリアミドに、前記した
式1、式2又は式3で示される化合物の少なくとも1種
をポリマに対し0.005〜0.5重量%という極く少
量を配合させることが必要である。
【0016】この化合物は、立体障害されたアミノ基を
有し、例えば、2,4,6−トリクロロトリアジンと
2,2,6,6−テトラアルキルピペリジル−4−アミ
ノピペリジンを反応させることにより合成することがで
きる。
【0017】その化合物の配合量は、ポリマに対し0.
005〜0.5重量%必要であり、好ましくは0.00
5〜0.4重量%、さらに好ましくは0.01〜0.1
重量%である。
【0018】0.005重量%未満と少な過ぎる場合は
本発明の所期の目的を充分に達成することができない。
逆に0.5重量%を越える程に多過ぎる場合は、ポリア
ミドの染色性が大幅に変化し、混合斑が原因となる染め
斑が発生し易くなるので、本発明の所期の目的を達成す
るためには不適当である。
【0019】その添加時期は溶融紡糸する前の段階であ
ればいつでもよい。例えば、一般に粉末の状態で、所定
量をポリアミドポリマにドライブレンドする方法や、溶
剤に溶解あるいは分散させてポリアミドペレットにふり
かけた後に乾燥する方法によりポリアミド中に配合すれ
ばよい。また、その改質剤を多量にポリアミドポリマに
混合した後ペレット状に成形して高濃度ペレットを製造
し、この高濃度ペレットを、その改質剤を非含有のポリ
アミドペレットと混合させて、所望量の濃度に調整にす
るマスタペレット法によってもよい。あるいは、その改
質剤が変性しない条件の範囲内であれば、ポリアミドの
重合時に添加してもよい。
【0020】これらポリアミドには、さらに、艶消し
剤、耐熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの
添加剤が、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、
1種類以上含まれていてもよい。
【0021】本発明で用いるポリアミド繊維は一般的な
製糸方法によって製造すればよい。乾燥したポリアミド
ペレットを溶融紡糸機に供給し、250〜300℃程度
で溶融・濾過し、所定の孔径の紡糸ノズルから押出した
後、冷却、給油し、引取り、続いて延伸し、或いは、一
旦巻取った後に延伸し、チーズ状又はパーン状に巻上げ
る。また、高速で引取った後に、実質的に延伸すること
なく巻上げる方法によってもよい。巻上げる前に、必要
に応じて100〜200℃のような高温で熱固定しても
よいし、また、交絡処理してもよい。
【0022】このようにして製造されたポリアミド繊維
は、通常の方法によって、ポリアミド繊維単独で、ある
いは他繊維と混ぜて製編織され布帛とされる。この際、
他繊維として、ポリウレタン系弾性繊維、ポリアミド系
弾性弾性、ポリエステル系弾性繊維のような弾性繊維を
用いる場合には、交編や交織によって布帛とされる。
【0023】これら布帛、特に弾性繊維を交編職した布
帛は、染色仕上げするに先立って、緊張下、高温で熱セ
ット(プリセットと称する)される。その熱セット温度
は、乾熱処理の場合、一般に150〜230℃、好まし
くは170〜200℃である。スチームを用いる湿熱セ
ットの場合は常圧で100℃程度が一般的であるが、加
圧設備を用い120℃程度までの高温湿熱下でセットす
ることもでき、一般に90〜120℃であればよい。熱
セット温度が低過ぎる場合はセット効果が不足し、高過
ぎる場合はポリアミド繊維の強力低下や変色などの弊害
が生じてくるので好ましくない。
【0024】その熱セット時間は、湿熱か乾熱かによ
り、あるいは処理時間にもよるが、数秒から数分、一般
的には10〜60秒であればよい。
【0025】この緊張下、高温での熱セットは、製編織
されてなる布帛製品を定長、定幅の所定寸法に仕上げる
ために必要である。これに対し、無緊張熱セットでは、
熱セット時の自由収縮のために熱セット後の製品の寸法
を制御することができず、工業的実施には不適当であ
る。また、低温での緊張熱セットも、製品の定寸法化が
十分にできないので、工業的実施には不適当である。
【0026】その際の緊張条件は、布帛の幅の仕上げ目
標値により任意に設定すればよいが、熱処理装置への送
り込み速度と横方向の引張りとによって制御すればよ
い。例えば、連続式熱処理装置の場合、横方向の引張り
は、生機を引張って送り込むピンテンターの引張り率
(幅出し率)により制御すればよい。弾性繊維を交編織
した布帛の場合の幅出し率は一般に10〜30%が好ま
しい。また、熱セット装置内で緊張熱セットされるので
あれば、収縮率が大きい布帛の場合は0%以下の幅出し
率を設定してもよい。
【0027】上記のように緊張熱セットされた布帛は、
一般的な染色方法によって酸性染料で染色される。本発
明は、酸性染料で染色された布帛の染色均一性向上に極
めて有効である。なお、分散染料や塩基性染料で染色し
た布帛においては染斑の問題は実質的に生じないので、
本発明を適用する必要はない。
【0028】本発明で用いる酸性染料は、ポリアミド繊
維等の染色に一般的に使われる酸性染浴系の染料であ
り、例えば、含金染料、酸性染料(狭義)で代表され
る。
【0029】含金染料は、一般的に言うと、クロム、
銅、コバルト、鉄などの金属原子と色素分子とが配位結
合している金属錯塩染料であり、通常の含金属酸性染料
の他に、媒染染料や酸性媒染染料等を用いることもでき
る。
【0030】その含金染料としては、1:2型含金染
料、例えば、日本チバガイギー(株)製の“Irgalan Ye
llow GRL”,“Irgalan Red 4GL ”,“Irgalan Blue 3
GL”,“Irgalan Brown 2GL ”,“Irgalan Black BGL
”;日本化薬(株)製の“Kayakalan Yellow GL ”,
“Kayakalan Brown GL”,“Kayakalan Red BL”,“Ka
yakalan Olive GL”,“Kayakalan Black BGL ”;三井
東圧染料(株)製の“Lanafast Khaki GL ”,“Lanafa
st Brown BL ”,“Lanafast Grey BGL ”;住友化学工
業(株)製の“Lannyl Blue 3G”,“Lannyl Brown
R”,“Lannyl Black BG ”など、あるいは、1:1型
含金染料、例えば、日本チバガイギー(株)製の“Neol
an Yellow E-2R”,“Neolan Red GRE”,“Neolan Blu
e 3R”,“NeolanGreen E-3GL”,“Neolan Brown E-5G
L”,“Neolan Black WA ”;住友化学工業(株)製の
“Sumilan Black WA”;BASFジャパン(株)製の
“Palatin Fast Yellow ELN ”,“Palatin Fast Red G
REN ”,“Palatin Fast Violet SRN”,“Palatin Fas
t Blue GGN ”,“Palatin Fast Green BLN”,“Palat
in Fast Black WAN”などが挙げられる。
【0031】また、酸性染料(狭義)としては、三菱化
成(株)製の“Diacid Fast YellowR”,“Diacid Fast
Red 3BL ”,“Diacid Fast Black BR”;日本化薬
(株)製の“Kayanol Yellow NFG”,“Kayanol Red NB
R ”,“Kayanol Blue NR ”;三井東圧染料(株)製の
“Mitsui Nylon Fast Yellow 5G ”,“Mitsui NylonFa
st Red BB ”,“Mitsui Nylon Fast Blue G”;サンド
(株)製の“Nylosan Yellow N-5GL”,“Nylosan Red
N-GZ”,“Nylosan Blue N-GFL”,“Nylosan Navy N-R
BL”;住友化学工業(株)製の“Suminol Milling Yell
ow 3G ”,“Suminol Milling Red G ”,“Suminol Mi
lling Brown 3G”,“Suminol Milling Black B ”など
が挙げられる。
【0032】本発明におけるポリマ特性は次の方法で測
定される。
【0033】[硫酸相対粘度]試料を98重量%硫酸に
濃度1重量%となるように溶解し、オストワルド粘度計
によって、25℃の恒温で流下時間を測定する。硫酸の
流下時間に対する試料溶液の流下時間の比を標準試料に
よって、相対粘度に換算する。
【0034】[アミノ末端基量]試料をフェノール/メ
タノール混合溶液に溶解し、1/50規定の塩酸水溶液
で、チモールブルーを指示薬として中和滴定する。その
際の塩酸消費量からアミノ末端基量(モル/105 g)
を求める。
【0035】
【作用】ポリアミドを溶融紡糸する場合、溶融紡糸を開
始した直後は、紡糸機の溶融設備(メルター)やポリマ
通路や紡糸口金設備の表面に高温の活性度の高い酸素が
存在しているため、この部分に接触する溶融ポリマは酸
素と反応し過酸化物を形成し、潜在的に重合度低下や官
能基の変化などの変性を起こし易くなっている。この様
な状態のポリマから溶融紡糸されてなる繊維は、布帛に
編織された後に緊張下で強い熱処理を受けると、過酸化
物が分解してポリアミド分子鎖を攻撃し、急激な重合度
低下や、官能基、特にアミノ末端基の変化が生じてく
る。この結果アミノ末端基が大きく関与する酸性染料に
対する染色性が大幅に低下し、淡染状態となる。
【0036】これは、緊張下で高温熱処理を受けること
によって生じる繊維重合度やアミノ末端基の低下の程度
が、溶融紡糸開始直後の繊維の場合に特に大きく、一般
に数%以上の低下が生じるからである。
【0037】この淡染状態の間接的な原因となる紡糸機
内の活性度の高い酸素は、溶融紡糸を続けていくと徐々
にポリマとともに排出されていくので、ある程度のポリ
マを溶融紡糸した後(一般的には溶融紡糸後24時間以
上経過後)の定常状態の製糸で得られる繊維において
は、緊張下で高温熱処理されても、重合度やアミノ末端
基の低下は極めて小さく、淡染の問題は生じない。
【0038】この結果、溶融紡糸直後の繊維が定常状態
で製糸された繊維中に混入して布帛が製造され緊張下で
高温熱セットされ酸性染料で染色されて染色布帛となっ
た場合に、筋状の染色斑が発現していたのである。
【0039】そこで、溶融紡糸直後の繊維の淡染化を回
避するために、本発明では、ポリアミド中に極く微量の
改質剤(即ち、前記した式1、式2又は式3の化合物)
を配合して、ポリマ中のアミノ基やアミド基に配位さ
せ、これら基を保護することとしたものである。この結
果、活性酸素が存在する場合でもポリマ変性を回避する
ことができ、緊張熱処理時に生じる重合度やアミノ末端
基の低下を極めて小さく抑えることができ、緊張熱処理
時の染色性低下を防止できるのである。例えば、本発明
によると、緊張熱処理による硫酸相対粘度やアミノ末端
基量の低下を2%未満の水準まで抑えることができるの
である。
【0040】
【実施例】
[実施例1]硫酸相対粘度が2.70、アミノ末端基量
が4.8モル/105 gであるナイロン66ペレット
に、前記した式1の化合物を、それぞれ、0.75、
0.50、0.10、0.04、0.005、0.00
1重量%ずつドライブレンドした後に乾燥した。
【0041】得られた改質剤を配合したそれぞれのペレ
ット、又は、配合しなかったペレットをそれぞれエクス
トルーダ型溶融紡糸機に供給し、290℃で溶融紡糸
し、1000m/分の速度で引き取った後、引き続き延
伸して70デニール24フィラメントのナイロン66繊
維糸条を得た。
【0042】溶融紡糸及び延伸を開始した直後から5日
間の間に採取したナイロン66繊維糸条と、ポリウレタ
ン系弾性繊維糸条(東レ・デュポン(株)製の“オペロ
ン”タイプ40−127)とを交編して、幅220cm、
ウェル密度54−62ウェル/インチの2ウェイトリコ
ットを編成した。この生機を20%拡幅(幅出しと称す
る)しながら、190℃で1分間熱セットした後、酸性
染料で染色した。染料は "Mitsui Brilliant Milling R
ed BL" を用い、濃度0.65% owf. の条件で染色し
た。
【0043】染色して得られたトリコットは、染色前に
緊張下高温熱セットされたことにより、寸法安定性も編
地形態安定性も良好であった。
【0044】この染色されたトリコットについて、染斑
(特に経筋)の有無による布帛品位、及び、染斑部分の
繊維の粘度低下率を測定した。さらに溶融紡糸時の糸切
れ回数を測定した。それらの結果を表1に示した。
【0045】布帛品位は、布帛上の染斑(経筋)の程度
を蛍光灯下、肉眼で観察することによって判定した。
【0046】染斑部分の繊維の粘度低下率: 経筋と
して認められた染斑部分の繊維を取出し、その硫酸相対
粘度を測定した。トリコットに製編後、緊張熱処理する
前の繊維の硫酸相対粘度を基準とし、粘度の低下の割合
を求め、粘度低下率とした。式1の改質剤を配合しなか
った場合( No.1)や、その配合量が少な過ぎた場合
( No.2)では、肉眼によって容易かつ明確に認められ
る極めて悪い淡染の経筋が発生していた。
【0047】これに対し、本発明で特定した改質剤を特
定量配合した場合( No.3〜6)では、経筋が全くない
品位良好な布帛が得られた。しかも、溶融紡糸時の糸切
れが少なく製糸性も良好であった。
【0048】また、その改質剤が多過ぎた場合( No.
7)は、改質剤のブレンド斑に起因する濃色の経筋が発
生し布帛品位が不良であった。しかも、溶融紡糸性が悪
くなり糸切れが多発した。
【0049】
【表1】
【0050】[実施例2]硫酸相対粘度が2.70、ア
ミノ末端基量が4.5モル/105 gのナイロン6ペレ
ットに、前記した式2の化合物(改質剤)をポリマに対
し0.05重量%配合して、実施例1と同じ方法で溶融
紡糸して、50デニール17フィラメントのナイロン6
繊維糸条を製糸した。また、その改質剤を配合しないナ
イロン6についても同様に製糸した。
【0051】製糸して得られた繊維は、紡糸直後(3時
間以内)と、紡糸開始から24時間後とに区分してそれ
ぞれサンプリングした。これらの4種類の繊維につい
て、それぞれ4糸条ずつ合糸してから、筒編み機を用い
て筒編み地を作成した。これらの筒編み地を熱収縮しな
いように金枠に固定した後、熱風送風式のオーブン中で
所定温度(180℃又は195℃)に加熱して熱セット
した。熱セット後に、実施例1と同じ染料、染色条件で
染色した。
【0052】得られた染色布帛の明度(L値)、硫酸相
対粘度及びアミノ末端基量をそれぞれ測定し、それらの
結果を表2に示した。
【0053】染色布帛の明度(L値): カラーマシン
(カラーマシン社製)を用いて、該当色に相当する波長
の光反射量を求め、標準試料と対比して、明度(L値)
を求めた。肉眼で染め差として認識できる水準は、その
明度(L値)の差(ΔL)が1以上である。
【0054】さらに、紡糸直後(3時間以内)の繊維糸
条と、紡糸開始から24時間後の繊維糸条とを混用した
ナイロン6繊維糸条と、実施例1で用いたと同じポリウ
レタン系弾性繊維糸条とから、実施例1と同様に2ウェ
イトリコットを製造し、上記と同様の180℃又は19
5℃、1分間での高温緊張熱セット、140℃、1分間
の低温緊張熱セット、又は、無緊張状態での180℃、
1分間熱セットを行い、染色した。得られた染色トリコ
ットの染め斑を実施例1と同様に評価し、さらに、その
トリコット製品の定長、定幅仕上げ性について相対評価
した結果、表3に示すとおりであった。
【0055】熱収縮を生じさせない緊張状態下で高温熱
セットすると、改質剤を含有しないナイロン繊維の布帛
の場合( No.9)は、紡糸開始直後の繊維の方が、開始
後24時間経過して巻上げた繊維よりもL値がかなり大
きく明らかな淡染状態となっていた。これは、粘度やア
ミノ末端基量が、紡糸開始直後の繊維の方がかなり低
く、ポリマ変性がかなり進行した結果、淡染状態となっ
たことがわかる(表2)。
【0056】このように染め差があると、紡糸開始直後
の繊維と開始後24時間経過して巻上げた繊維とを混用
した布帛を緊張状態下で高温熱セットした場合、はっき
りと認識される強い経筋が発生し、布帛品位は極めて悪
い物となった(表3)。
【0057】これに対し、緊張状態下で高温熱セットし
ても、改質剤を配合したナイロン繊維の布帛の場合( N
o.8)は、紡糸開始直後の繊維のL値、粘度及びアミノ
末端基量は、開始後24時間経過して巻上げた繊維のそ
れら値と殆ど同水準であり、紡糸開始直後のポリマ変性
が防止されたことがわかる(表2)。
【0058】従って、本発明によると、紡糸開始直後の
繊維と開始後24時間経過して巻上げた繊維とを混用し
た布帛を緊張状態下で高温熱セットしても、経筋は発生
せず、染色均一性に優れた布帛が得られた。しかも、高
温緊張熱セットされているので、トリコット製品は定
長、定幅の所定寸法に仕上げることができた(表3)。
【0059】また、改質剤を配合したナイロン繊維の布
帛でも、140℃,1分間と低温で緊張熱セットした場
合は、やや濃染になり、上記同様に染色均一性は良好で
あったが、熱セットが弱かったので、得られたトリコッ
ト製品の長さ、巾にばらつきがみられ、定長、定幅仕上
げ性はやや劣るものであった。
【0060】さらにまた、改質剤を配合しなかったナイ
ロン繊維の布帛でも、140℃,1分間と低温で緊張熱
セットした場合や無緊張状態で熱セットした場合は、そ
れら熱セットによる紡糸開始直後繊維のポリマ変性の促
進は小さく、得られた染色布帛の経筋発生は比較的弱
く、染色均一性は比較的良好であった。しかし、熱セッ
トが弱かったり無緊張下であったために、得られたトリ
コット製品の寸法はかなりばらつき、商品として不適当
な物であった。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【発明の効果】本発明によると、溶融紡糸直後の繊維と
安定製糸時の繊維とを混合して編織した布帛とし、緊張
下で高温熱処理した後に酸性染料で染色して染色布帛と
しても、染め斑(例えばトリコットにおける筋斑)が生
じず染色均一性に優れた高品位の製品布帛が安定して得
られる。
【0064】さらに、繊維の着色や色相変化等の好まし
くない変化を生じることなく染色均一製を改善できるの
で、均染性および色調等がともに良好なポリアミド繊維
製染色布帛が得られる。
【0065】また、本発明によると、溶融紡糸パック内
の部材表面をコーティングしなくても、染色均一性に優
れたポリアミド繊維製布帛が得られる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸性染料で染色されたポリアミド繊維
    製染色布帛において、ポリアミド繊維が式1、式2或い
    は式3で示される化合物のいずれか1種以上をポリマに
    対し0.005〜0.5重量%含有し、かつ、緊張下で
    高温熱セットされていることを特徴とする染色均一性に
    優れたポリアミド繊維製染色布帛。 【化1】 (式中、R4 は2,2,6,6−テトラアルキルピペリ
    ジル−4である。)
  2. 【請求項2】 ポリアミド繊維製染色布帛が、ポリア
    ミド繊維及び弾性繊維を交編織してなる染色布帛である
    ことを特徴とする請求項1記載の染色均一性に優れたポ
    リアミド繊維製染色布帛。
  3. 【請求項3】 弾性繊維が、ポリウレタン系弾性繊
    維、ポリアミド系弾性繊維、及びポリエステル系弾性繊
    維のうちの1種以上であることを特徴とする請求項2記
    載の染色均一性に優れたポリアミド繊維製染色布帛。
  4. 【請求項4】 ポリアミド繊維のアミノ末端基量が
    2.0〜6.0モル/105 gであることを特徴とする
    請求項1記載の染色均一性に優れたポリアミド繊維製染
    色布帛。
  5. 【請求項5】 式1、式2或いは式3で示される化合
    物のいずれか1種以上をポリマに対し0.005〜0.
    5重量%含有するポリアミド繊維から布帛を製造し、緊
    張下で高温熱セットした後、酸性染料で染色することに
    よりポリアミド繊維製染色布帛を製造することを特徴と
    する染色均一性に優れたポリアミド繊維製染色布帛の製
    造方法。 【化2】 (式中、R4 は2,2,6,6−テトラアルキルピペリ
    ジル−4である。)
  6. 【請求項6】 式1、式2或いは式3で示される化合
    物のいずれか1種以上をポリマに対し0.005〜0.
    5重量%含有するポリアミド繊維と弾性繊維とを交編織
    し、緊張下で高温熱セットした後、酸性染料で染色する
    ことによりポリアミド繊維製染色布帛を製造することを
    特徴とする染色均一性に優れたポリアミド繊維製染色布
    帛の製造方法。 【化3】 (式中、R4 は2,2,6,6−テトラアルキルピペリ
    ジル−4である。)
  7. 【請求項7】 緊張下での高温熱セットを、150〜
    230℃の乾熱、又は、90〜120℃の湿熱により行
    うことを特徴とする請求項5又は6記載の染色均一性に
    優れたポリアミド繊維製染色布帛の製造方法。
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