JPH08256776A - 高効率発現ベクター - Google Patents

高効率発現ベクター

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JPH08256776A
JPH08256776A JP7065799A JP6579995A JPH08256776A JP H08256776 A JPH08256776 A JP H08256776A JP 7065799 A JP7065799 A JP 7065799A JP 6579995 A JP6579995 A JP 6579995A JP H08256776 A JPH08256776 A JP H08256776A
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JP
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dna
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dna sequence
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JP7065799A
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Takuji Kawashima
拓司 川島
Akiko Tanaka
昭子 田仲
Masayuki Kobayashi
正之 小林
Yukitaka Yamauchi
雪香 山内
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Morinaga Milk Industry Co Ltd
Original Assignee
Morinaga Milk Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 特殊な宿主細胞株を用いることなく、所望の
蛋白質を高度に生産する細胞株を容易に樹立することが
できる発現ベクターに挿入するためのスペーサーDN
A、及び該スペーサーDNAを挿入した発現ベクターの
提供。 【構成】 所望の蛋白質をコードする第1のDNA配列
とマーカー遺伝子である第2のDNA配列とを含み、第
2のDNA配列の5’末端側には内部リボゾーム認識部
位を有する真核細胞用発現ベクターを宿主真核細胞に導
入し、第2のDNA配列とともに第1のDNA配列のコ
ピー数を増幅させる方法において、真核生物のリボゾー
ムが認識し得るAUG配列をコードするATG配列と、
第2のDNA配列の開始ATG配列との間に、少なくと
も一部は蛋白質に翻訳されないか、又は該塩基配列が全
部翻訳された場合であっても第2のDNA配列と読取り
フレームがずれているスペーサーDNAを挿入すること
によって、第2のDNAの翻訳効率を低下させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特殊な細胞を使用する
ことなく、有用な蛋白質を多量に産生する細胞株を容易
に樹立する機能を有するスペーサーDNA及び該スペー
サーDNAを組込んだ発現ベクターに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、遺伝子工学の研究が進展し、組み
換えDNA技術による物質生産が実施されている。現
在、宿主として大腸菌を用いた組み換え技術による異種
蛋白質の生産方法はほぼ確立されたが、糖鎖の付与が必
須な物質又は異種細胞により生産させた場合にその生理
活性又は抗原性に変化が生じる物質の生産には、大腸菌
の宿主としての使用は不適当である。
【0003】最近、この問題を解決するために、動物細
胞を宿主として用いた物質生産用ベクター系が各種開発
されている。即ち、プロモーター、RNAスプライシン
グシグナル及びポリA付加のシグナルを主として有する
ベクター系である。この中で、所望の蛋白質を高度に生
産させるためには、プロモーターの選択が重要であり、
従来からプロモーターの改良、開発が盛んに行われてき
た[ミカエル・クリーグラー(Michael Kriegler)著、加
藤郁之進監訳、「動物細胞の遺伝子工学」、第1版、第
4ページ、宝酒造、1994年]。
【0004】また、宿主細胞に導入した遺伝子のコピー
数を増幅させることにより、所望の蛋白質を高度に生産
させる技術も開発されている。カウフマン(Kaufman) ら
[アメリカ特許第5,238,820号及びジャーナル
・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Mole
cular Biology)、第159巻、第601ページ、198
2年]は、所望の蛋白質を発現するDNA配列、及びジ
ヒドロ葉酸還元酵素(以下、「DHFR」と記載するこ
とがある)を発現するDNA配列を、それぞれ別個のプ
ロモーターにより発現させるプラスミドベクターを遺伝
子工学的に作製し、これをDHFRを欠損しているとい
う点において特殊な細胞であるDHFR欠損チャイニー
ズハムスター卵巣由来細胞株CHO細胞(以下、「DU
KX−B11細胞」と記載することがある)に、遺伝子
導入した。その後、DHFRのDNA配列を増幅する薬
剤であるメトトレキセートを添加した培養液により遺伝
子導入細胞を培養し、DHFRをコードするDNA配列
と共に、その近傍に存在する所望の蛋白質を発現するD
NA配列のコピー数をも増幅させる技術を開発した。
【0005】しかしながら、この技術は、極めて特殊で
あり、かつ種類も限定されたDHFR欠損細胞において
のみ効果的であり、現存する全ての培養細胞に適用でき
ず、必ずしも産業上有効な手段とはいえない。また、こ
の技術においては、DHFRのDNA配列のみが増幅さ
れる場合、又は増幅によりDNA配列の再構成[リアレ
ンジメント(Rearrengement) ]が生じる場合が存在する
ことも明らかにされており[ヌクレイック・アッシズ・
リサーチ(Nucleic Acids Research)、第19巻、第44
85ページ、1991年]、産業上利用するためには望
ましくない。
【0006】また、薬剤耐性遺伝子としてアデノシンデ
アミナーゼ(以下、「ADA」と記載することがある)
遺伝子を用いることにより、ADAのDNA配列を増幅
する薬剤であるXyla−Aを添加した培養液により細
胞を培養し、ADAをコードするDNA配列と共に、そ
の近傍に存在する所望の蛋白質を発現するDNA配列の
コピー数をも増幅させる技術も発明されている(特表昭
62−502662号公報)。しかし、特殊であるDU
KX−B11細胞において、特にこの技術は効果的であ
り[ミカエル・クリーグラー(Michael Kriegler)著、加
藤郁之進監訳、「動物細胞の遺伝子工学」、第1版、第
123ページ、宝酒造、1994年]、現存する培養細
胞、例えば、内在性ADAの高い胃腸組織又は胸腺組織
由来細胞等には適用不可能であり、産業上有効な手段で
はない。
【0007】更に、薬剤耐性遺伝子としてこれらのDH
FR遺伝子、又はADA遺伝子を用いた場合、培養液に
添加する動物血清中に含有される核酸前駆体を除去する
目的で、動物血清を透析する必要があり、産業上望まし
くない[ミカエル・クリーグラー(Michael Kriegler)
著、加藤郁之進監訳、「動物細胞の遺伝子工学」、第1
版、第131ページ、宝酒造、1994年]。
【0008】その他、目的遺伝子の発現量を増加させる
ため、薬剤耐性遺伝子に変異を加え、意図的に薬剤耐性
活性を低下させることにより、導入遺伝子コピー数の多
い細胞株を樹立する技術も開発されており、変異DHF
R[ヌクレイック・アッシズ・リサーチ(Nucleic Acids
Research)、第19巻、第4485ページ、1991
年]、変異Neo[ジーン(Gene)、第108巻、第19
3ページ、1991年]等を用いた当該技術が既に開発
されている。
【0009】しかしながら、これらの従来技術は、個々
の薬剤耐性遺伝子に対し、変異薬剤耐性遺伝子を遺伝子
工学的に単離、又は作製しなければならず、汎用性の低
い技術であり、産業上望ましくない。
【0010】一方、一般に真核生物では、mRNAの
5’末端に存在するキャップ構造を認識し、リボゾーム
がmRNAの翻訳を開始するが、ピコルナウイルス科に
属する脳心筋ウイルス(以下「EMCV」と記載するこ
とがある)では、mRNA中に含有される特殊な二次構
造を形成するRNA、即ち、内部リボゾーム認識部位
(インターナル・リボゾーマル・エントリー・サイト(I
nternal Ribosomal EntrySite):以下「IRES」と記
載することがある)をリボゾームが直接認識し、IRE
Sから蛋白質への翻訳を開始する。IRESが有する特
殊な翻訳開始機構は産業上重要であり、IRESに関す
る発明がなされている(アメリカ特許第4,937,1
90号)。また、第1のDNA配列及び第2のDNA配
列との間に、IRESをコードするDNA配列を挿入
し、第1のDNA配列及び第2のDNA配列にコードさ
れる蛋白質をそれぞれキャップ構造、及びIRESから
発現するポリシストロニックmRNAを転写、発現する
ことを特徴とする発現ベクターも発明されており、内部
リボゾームエントリー部位を含むレトロウイルスベクタ
ー(特表平6−509713号公報)、発現ベクター
(特開平6−277074号公報)及び遺伝子産物の製
造方法(特開平6−78784号公報)等を例示するこ
とができる。
【0011】カウフマン(Kaufman) ら[ヌクレイック・
アッシズ・リサーチ(Nucleic AcidsResearch)、第19
巻、第4485ページ、1991年]は、IRESをコ
ードするDNA配列を利用し、所望の蛋白質とDHFR
を発現するポリシストロニックmRNA発現ベクターを
遺伝子工学的に作製し、DUKX−B11細胞に遺伝子
導入し、メトトレキセートを添加した培養液により遺伝
子導入細胞を培養し、DHFRをコードするDNA配列
及び所望の蛋白質を発現するDNA配列のコピー数を、
導入DNA配列の再構成を誘起することなく増幅させる
技術を開発した。しかし、前記のとおり、この技術は、
極めて特殊であり、かつ種類も限定されたDHFR欠損
細胞においてのみ適用され、現存する全ての培養細胞に
は適用できず、産業上有効な手段であるとはいえない。
【0012】また、IRESの塩基配列の一部に変異を
加えるか、又はIRESをコードするDNA配列の下流
に結合するDHFRのN末端に、数個のアミノ酸を結合
した変異DHFRをコードする遺伝子を遺伝子工学的に
作製し、故意にDHFRの発現量を低下させる技術も開
発されている[ジャーナル・オブ・ビロロジー(Journal
of Virology) 、第66巻、第1924ページ、199
2年]。しかしながら、遺伝子工学的に加えたこれらの
変異が、第2のDNA配列である薬剤耐性遺伝子の発現
量に及ぼす影響について、それぞれの薬剤耐性遺伝子に
ついて検討する必要があり、汎用性の低い技術であり、
産業上望ましくない。実際、DHFR遺伝子の場合、こ
れらの変異を加えた発現ベクターを構築し、細胞に遺伝
子導入し、メトトレキセートを添加した培養液により遺
伝子導入細胞を培養しても、遺伝子導入細胞株を樹立で
きないことが公知である[ジャーナル・オブ・ビロロジ
ー(Journal of Virology) 、第66巻、第1924ペー
ジ、1992年]。
【0013】更に、遺伝子導入細胞を単離するために用
いる薬剤耐性遺伝子、薬剤等も種々開発されているが、
広範囲の培養細胞において、所望の蛋白質を高度に生産
する細胞株を、高い効率で樹立し得る産業上有効な技術
は未だに存在しない[ミカエル・クリーグラー(Michael
Kriegler)著、加藤郁之進監訳、「動物細胞の遺伝子工
学」、第1版、第123ページ、宝酒造、1994
年]。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、前記従
来技術に鑑みて鋭意研究を行った結果、公知のIRES
をコードするDNA配列を利用したポリシストロニック
mRNA発現ベクターにおいて、IRESをコードする
DNA配列の3’末端に存在し、真核生物のリボゾーム
が認識し得るAUG配列をコードするATG配列と、薬
剤耐性遺伝子である第2のDNA配列の開始ATG配列
との間に、塩基配列の一部又は全部が蛋白質に翻訳され
ない1塩基対(以下「bp」と記載することがある)以
上の塩基配列から構成されるスペーサーDNAを挿入す
ることにより、IRESを介した薬剤耐性遺伝子である
第2のDNA配列の蛋白質への翻訳効率を、故意に低下
させた発現ベクターを作製して遺伝子導入することによ
り、特殊な宿主細胞を用いることなく、第1のDNA配
列にコードされる蛋白質を、高い効率で生産する細胞株
を極めて高率に樹立し得ることを見い出し、本発明を完
成した。
【0015】尚、該スペーサーDNAは、発現ベクター
の内部リボゾーム認識部位をコードするDNA配列の
3’末端に存在するATG配列と、薬剤耐性遺伝子であ
るDNA配列の開始ATG配列との間に挿入され、該ス
ペーサーDNAの一部又は全部の塩基配列が蛋白質に翻
訳されない。また、公知の技術のように、IRESの塩
基配列の一部に変異を加えるか、又はIRESをコード
するDNA配列の下流に結合する薬剤耐性遺伝子産物の
N末端に、数個のアミノ酸を付加した変異薬剤耐性遺伝
子産物をコードする遺伝子等の作製を必要としない。
【0016】本発明の目的は、特殊な宿主細胞を使用す
ることなく、第1のDNA配列にコードされる有用な蛋
白質を、高度に生産する細胞株を極めて高率に単離し、
しかも該細胞株の単離及び維持に要する高額な薬剤の使
用量を減少させうる発現ベクターに挿入するためのスペ
ーサーDNA、及び該スペーサーDNAを挿入した発現
ベクターを提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の本願の第1の発明は、所望の蛋白質をコードする第1
のDNA配列とマーカー遺伝子である第2のDNA配列
とを含み、第2のDNA配列の5’末端側にはIRES
を有する真核細胞用発現ベクターに挿入されるスペーサ
ーDNAであって、前記IRESの3’末端に存在し、
真核生物のリボゾームが認識し得るAUG配列をコード
するATG配列と、第2のDNA配列の開始ATG配列
との間に挿入され、かつ該塩基配列の少なくとも一部は
蛋白質に翻訳されないか、又は該塩基配列が全部翻訳さ
れた場合であっても第2のDNA配列と読取りフレーム
がずれているスペーサーDNAである。
【0018】前記発明の好ましい実施態様として、少な
くとも31塩基対からなるスペーサーDNA、及び配列
番号1〜配列番号3に記載のいずれかの塩基配列を有す
るスペーサーDNAが提供される。
【0019】本願の第2の発明は、次のa)〜f)のD
NA配列; a)プロモーター活性を有するDNA配列、 b)所望の蛋白質をコードする第1のDNA配列、 c)IRESをコードするDNA配列、 d)スペーサーDNA配列、及び e)マーカー遺伝子である第2のDNA配列、 を含む真核細胞用発現ベクターであって、前記スペーサ
ーDNA配列は、前記IRESの3’末端に存在し、真
核生物のリボゾームが認識し得るAUG配列をコードす
るATG配列と、第2のDNA配列の開始ATG配列と
の間に挿入され、かつ該配列の少なくとも一部は蛋白質
に翻訳されないか、又は該塩基配列が全部翻訳された場
合であっても第2のDNA配列と読取りフレームがずれ
ている、発現ベクターである。
【0020】本願の第三の発明は、所望の蛋白質をコー
ドする第1のDNA配列とマーカー遺伝子である第2の
DNA配列とを含み、第2のDNA配列の5’末端側に
はIRESを有する真核細胞用発現ベクターを宿主真核
細胞に導入し、該細胞の生育にマーカー遺伝子の発現を
必要とする物質の存在下で該ベクター導入細胞を培養す
ることによって、第2のDNA配列とともに第1のDN
A配列のコピー数を増幅させる方法において、前記IR
ESの3’末端に存在し、真核生物のリボゾームが認識
し得るAUG配列をコードするATG配列と第2のDN
A配列の開始ATG配列との間に、少なくとも一部は蛋
白質に翻訳されないか、又は該塩基配列が全部翻訳され
た場合であっても第2のDNA配列と読取りフレームが
ずれているスペーサーDNAを挿入し、第2のDNA配
列の翻訳効率を低下させることによって、増幅を促進さ
せることを特徴とする方法である。
【0021】上記のそれぞれの発明において、IRES
をコードするDNA配列は、EMCVウイルス由来であ
り、3’末端に真核生物のリボゾームが認識し得るAU
G配列をコードするATG配列を有すること、ATG配
列が、脳心筋炎ウイルス由来遺伝子のATG−11配列
であること、スペーサーDNAが少なくとも31塩基対
からなること及びスペーサーDNAが配列番号1〜配列
番号3のいずれかに記載の塩基配列を有することを、望
ましい態様としてもいる。
【0022】尚、本明細書において、DNA配列、DN
A断片又は遺伝子は、DNA、RNA又はこれらの化学
的修飾物であり、百分率は、特に断りのない限り、重量
による値である。
【0023】次に、本発明について詳述する。
【0024】<1>スペーサーDNA配列 本願の第1発明であるスペーサーDNAは、所望の蛋白
質をコードする第1のDNA配列とマーカー遺伝子であ
る第2のDNA配列とを含み、第2のDNA配列の5’
末端側にはIRESを有する真核細胞用発現ベクターに
挿入されるものである。このスペーサーDNAは、前記
IRESの3’末端に存在するATG配列(以下、「第
1のATG配列」ということがある)と第2のDNA配
列の開始ATG配列(以下、「第2のATG配列」とい
うことがある)との間に挿入されるものであり、その塩
基配列は、該塩基配列の少なくとも一部は蛋白質に翻訳
されないか、又は該塩基配列が全部翻訳された場合であ
っても第2のDNA配列と読取りフレームがずれている
ことが必要である。すなわち、本発明のスペーサーDN
Aの配列は、第1のATG配列と第2のATG配列との
間に存在したときに、第1のATG配列から開始された
翻訳が第2のATG配列に達する前に終了するか、ある
いは第1のATG配列から開始された翻訳の読取りフレ
ームが第2のDNA配列の読取りフレームと異なるよう
な配列である。そのためには、スペーサーDNAの塩基
数を3n+1又は3n+2とするか、あるいは3nであ
ってもその塩基配列中に1個以上のストップ・コドンを
含ませればよい(nは0又は正の整数である)。また、
スペーサーDNAの長さとしては、少なくとも31塩基
対であることが好ましい。特に好適な本発明のスペーサ
ーDNAとして、配列番号1〜配列番号3に記載の塩基
配列を有するスペーサーDNAを例示することができ
る。
【0025】上記のようなスペーサーDNAを、IRE
Sの3’末端に存在するATG配列と第2のDNA配列
の開始ATG配列との間に挿入することにより、第2の
DNA配列の翻訳は、本来IRESによって開始される
翻訳とは異なる部位から始まるため、翻訳効率を減少さ
せることができる。
【0026】次に本発明のスペーサーDNAの調製法を
例示するが、スペーサーDNAとしては上記の構造を有
していればよく、その調製法は特段制限されない。例え
ば、任意のプラスミドDNAの一部をポリメラーゼ・チ
ェイン・リアクション(Polymerase Chain Reaction :
以下「PCR」と記載することがある)法により増幅し
得る5〜40ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド
プライマーに、適当なDNA切断制限酵素認識部位を有
する5〜15ヌクレオチドが付加された合成オリゴヌク
レオチドを、それぞれセンスプライマー及びアンチセン
スプライマーとして用い、前記プラスミドDNAを鋳型
としてPCR反応を行うことによって、スペーサーDN
Aが得られる。
【0027】また、所望のスペーサーDNAを含有する
DNA配列を増幅し、適当なDNA切断制限酵素(例え
ば、SmaI、NruI、MscI等)により切断し、
所望のDNAを分離しても、本発明のスペーサーDNA
が得られる。それぞれのスペーサーDNAを含有するP
CR産物を低融点アガロースゲル電気泳動に供し、他の
不要成分から所望のDNA配列を分離し、フェノール法
により低融点アガロースゲルからDNA配列を回収し、
乾固することによっても、所望のスペーサーDNAを得
ることもできる。
【0028】また、公知の化学的合成法、通常の遺伝子
工学的方法又は入手可能な出発材料の利用によっても調
製することができる。その一例を示せば以下のとおりで
ある。 pUC8プラスミドDNAに、5〜40ヌクレ
オチドに加えて適当なDNA切断制限酵素認識部位を有
する5〜15ヌクレオチドを付加した合成オリゴヌクレ
オチドをセンス及びアンチセンスプライマーとし、スペ
ーサーDNAを公知のPCR法により増幅する。それぞ
れのスペーサーDNAを含有するPCR産物を低融点ア
ガロースゲル電気泳動に供し、他の不要成分からスペー
サーDNAを分離する。フェノール法により低融点アガ
ロースゲルからスペーサーDNAを回収し、乾固し、所
望のスペーサーDNAを得る。
【0029】尚、上記のように、スペーサーDNAの両
端に制限酵素切断部位を持たせるようにすると、第1の
ATG配列と第2のDNA配列との間に挿入しやすくな
る点で好ましいが、本発明にとって必須ではない。
【0030】<2>本発明の発現ベクター 本発明の発現ベクターは、次のa)〜f)のDNA配列
を含む発現ベクターである。
【0031】a)プロモーター活性を有するDNA配
列、 b)所望の蛋白質をコードする第1のDNA配列、 c)IRESをコードするDNA配列、 d)本発明のスペーサーDNA配列、及び e)マーカー遺伝子である第2のDNA配列。
【0032】上記のような構造を有する発現ベクターを
宿主真核細胞に導入し発現させると、スペーサーDNA
の介在によって、IRESにより開始されるマーカー遺
伝子である第2のDNA配列の翻訳効率を減少させるこ
とができる。その結果、発現ベクター導入細胞を取得す
る際に用いるマーカー遺伝子の発現を検出するための物
質、例えば薬剤耐性遺伝子の場合には薬剤、の量を減少
させることができる。また、ある種の薬剤耐性遺伝子の
ように、薬剤存在下で遺伝子が増幅されるものがある
が、そのような遺伝子を第2のDNA配列として用いる
と、その発現がスペーサーDNAにより押さえられてい
るので、増幅効率が上昇することが期待される。その結
果、遺伝子導入細胞を単離する際、遺伝子産物を高度に
生産する細胞株を高い効率で得ることができる。また、
目的の発現ベクター導入株を一定期間継代後、遺伝子導
入された細胞株を安定して得られる確率が高くなる。
【0033】上記プロモーターは、真核細胞発現用プロ
モーターであって、SV40初期プロモーター、RSV
プロモーター、TKプロモーター、CMVプロモータ
ー、MMTVプロモーター、β−アクチンプロモータ
ー、エロンゲーションファクタ−プロモーター等が挙げ
られる。又、CMVエンハンサー等のエンハンサーを有
していてもよい。
【0034】所望の蛋白質としては、宿主真核細胞中で
発現させることができるものであれば特に制限されない
が、例えば、酵素、生理活性物質、細胞構成蛋白質等、
より具体的にはβ−ガラクトシダーゼ等が挙げられる。
【0035】IRESをコードするDNA配列として
は、真核生物のリボゾームが認識し翻訳を開始する機能
を有する配列であれば制限されないが、特にEMCV由
来のIRESをコードする配列が好ましい。このIRE
SをコードするDNA配列を有するプラスミドは市販さ
れており、それを使用してもよい。尚、本明細書におい
て「IRES」というときは、特に断りのない限り、真
核生物のリボゾームが認識しうるAUG配列をコードす
るATG配列を含むものとする。このATG配列につい
ては後述する。
【0036】マーカー遺伝子としては、発現ベクターを
導入した細胞に特定の薬剤に対する耐性能を付与する能
力を有する遺伝子、すなわち薬剤耐性遺伝子が挙げられ
る。具体的には、ネオマイシン耐性遺伝子(Neo)、
DHFR遺伝子、ADA(アデノシンデアミナーゼ)遺
伝子、チミジンキナーゼ、ピューロマイシン耐性遺伝
子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐
性遺伝子、キサンチン・グアニンホスホリボシルトラン
スフェラーゼ遺伝子等が挙げられる。本発明において
は、特にNeoが好ましい。尚、ここでいう「遺伝子」
とは、プロモーターを含まないコード領域をいう。
【0037】本発明の発現ベクターにおいて、上記の
a)〜e)の各DNA配列に加えて、マーカー遺伝子の
3’末端側にポリA付加シグナルをコードするDNA配
列を保持させてもい。ポリA付加シグナルをコードする
DNA配列は本発明に必須ではないが、これを用いるこ
とにより所望の蛋白質を安定して発現させることができ
る点で好ましい。すなわち、ポリA付加シグナルの存在
によって、適当な長さのmRNAを生成させることがで
き、また、mRNAの安定性を増加させることができ
る。ポリA付加シグナルをコードするDNA配列として
は、転写産物にポリA配列を付加させることができるも
のであればよく、具体的にはSV40ポリA付加シグナ
ル、ウシ成長ホルモンmRNAのポリA付加シグナルを
コードするDNA配列等が挙げられる。
【0038】本発明の発現ベクターに用いるベクターD
NA及び発現ベクターを導入する宿主真核細胞は、その
細胞中でベクターが機能するものであればよく、pMS
G(COS−7細胞)、pRC/CMV(CHO細
胞)、pREP4(NIH3T3細胞)等が挙げられ
る。ベクターDNAとして、プロモーター活性を有する
DNA配列、第2のDNA配列及びポリA付加シグナル
のいずれか又は全部を含むベクターを用いてもよい。
【0039】プロモーター活性を有するDNA配列と、
第1のDNA配列と、IRESをコードするDNA配
列、スペーサーDNA配列及び第2のDNA配列をこの
順に連結したものとを、ベクターに挿入することによっ
て、本発明の発現ベクターが得られる。第1のDNA配
列の発現効率を高めるためには、上記a)〜f)の各々
のDNA配列をこの順序で連結し、プロモーター活性を
有するDNA配列によって他のDNA配列が単一の転写
単位として、すなわちジシストロニックに発現させるこ
とが好ましい。
【0040】IRESをコードするDNA配列とスペー
サーDNAとの連結は、IRESをコードするDNA配
列の3’末端に存在し、真核生物のリボゾームが認識し
得るAUG配列をコードするATG配列の3’末端と、
スペーサーDNAの5’末端とを連結することによって
行う。EMCV由来のIRESをコードするDNA配列
のように、3’末端に存在し、真核生物のリボゾームが
認識し得るAUG配列をコードするATG配列が、リボ
ゾームにより開始コドンとして認識される場合には、そ
のATG配列の3’末端にスペーサーDNAを連結すれ
ばよい。EMCV由来のIRESをコードするDNA配
列においては、前記ATG配列としては、複数存在する
ATG配列のうちATG−11配列[ジャーナル・オブ
・ビロロジー(Journal of Virology) 、第66巻、第1
924ページ、1992年]が好ましい。
【0041】ポリオウイルスタイプのIRESのよう
に、IRESの3’末端に存在する真核生物のリボゾー
ムが認識し得るAUG配列をコードするATG配列が、
開始コドンとして認識されず、下流の離れた位置のAT
Gから翻訳が開始するものである場合には、IRESか
らそのATG配列までを含むDNA配列を用い、そのA
TG配列の3’末端にスペーサーDNAを連結する。ま
た、ATG配列としては、IRESによる翻訳開始機構
によってリボゾームが翻訳開始部位として認識し得るA
TG配列であれば、遺伝子工学的に作製し、任意の場所
に挿入したATG配列であってもよい。
【0042】スペーサーDNAをIRESをコードする
DNA配列と第2のDNA配列との間に挿入するに際
し、その両末端を、次のいずれかの方法により予め処理
する。 適当なDNA切断制限酵素により消化する; 適当なDNA修飾酵素により修飾する; 適当なDNA切断制限酵素認識配列を含有する合成D
NAリンカーをDNAリガーゼにより連結する; これらの処理を種々に組み合わせて処理する。
【0043】一方、ベクターDNAも適当なDNA切断
制限酵素(例えば、MscI、XbaI等)により切断
して直鎖状となし、スペーサーDNAの場合と同様に両
末端を処理し、スペーサーDNAとプラスミドDNAを
DNAリガーゼにより連結して、スペーサーDNAを挿
入した発現ベクターを得ることができる。
【0044】以下に、本発明の発現ベクターの具体的な
製造法として、EMCVのIRESをコードするDNA
を用いた方法を例示する。プロモーター活性を有するD
NA配列、所望の蛋白質をコードするDNA配列、3’
末端にATG−11配列を有するIRESをコードする
DNA配列、薬剤耐性遺伝子をコードするDNA配列、
及びポリAを付加するシグナルをコードするDNA配列
を含有するそれぞれのプラスミドDNAを、適当なDN
A切断制限酵素により消化し、他の不要成分からそれぞ
れのDNA配列を低融点アガロースゲル電気泳動により
分離する。フェノール法により低融点アガロースゲルか
らDNA配列を回収し、乾固し、所望のDNA配列を得
る。それぞれのDNA配列の両末端を適切なDNA切断
制限酵素、DNA修飾酵素等により処理し、DNAリガ
ーゼによりプラスミドDNAに挿入し、連結する。その
後、ATG−11配列と、薬剤耐性遺伝子をコードする
DNA配列の開始ATGコドンの間を、適当なDNA切
断制限酵素により消化し、直鎖状とする。これを適当な
DNA修飾酵素等により処理し、両末端を適当なDNA
切断制限酵素、又はDNA修飾酵素により処理した前記
スペーサーDNAを挿入し、DNAリガーゼにより連結
し、発現ベクタープラスミドを調製する。
【0045】本発明の発現ベクターは、前記動物細胞発
現用プロモーター以外に、次のDNA配列を含んでいる
ことが望ましい。
【0046】i)SV40初期スプライシング部位等の
スプライシング配列; ii)アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐
性遺伝子等、発現ベクター構築の過程で大腸菌を形質転
換する際に、特定の薬剤に対する耐性能を付与するDN
A配列; iii)SV40初期プロモーター等、動物細胞内で機能
するDNA複製開始点; iv)ColE1等、大腸菌内で機能するDNA複製開始
点; v)前記機能DNA配列の種々の組合せ
【0047】以上のようにして本発明のスペーサーDN
Aを挿入した発現ベクタープラスミドは得られるが、公
知の化学的合成法、通常の遺伝子工学的方法又は入手可
能な出発材料の利用によっても調製することができる。
その一例を示せば次のとおりである。
【0048】プロモーター活性を有するDNA配列、所
望の蛋白質をコードするDNA配列、ATG−11配列
を含有するIRESをコードするDNA配列、薬剤耐性
遺伝子をコードするDNA配列またはポリAを付加する
シグナルをコードするDNA配列を含有するプラスミド
DNAを適したDNA切断制限酵素により消化後、他の
不要成分からそれぞれのDNA配列を低融点アガロース
ゲル電気泳動により分離する。フェノール法により低融
点アガロースゲルからDNA配列を回収後、乾固し、所
望のDNA配列を得る。適したDNA切断制限酵素によ
り直鎖状にしたプラスミドDNAとそれぞれのDNA配
列をT4 DNAポリメラーゼと共に保温し、両末端を
平滑化する。
【0049】次に、T4 DNAリガーゼと共に保温
し、プラスミドDNAとDNA配列を連結し、プロモー
ター活性を有するDNA配列、所望の蛋白質をコードす
るDNA配列、ATG−11配列を含有するIRESを
コードするDNA配列、薬剤耐性遺伝子をコードするD
NA配列及びポリAを付加するシグナルをコードするD
NA配列を記載した順番で含有するプラスミドDNAを
得ることができる。該プラスミドDNAのATG−11
配列と、薬剤耐性遺伝子をコードするDNA配列の開始
ATG配列の間を適当なDNA切断制限酵素により消化
し、直鎖状にする。スペーサーDNAと混和後、T4
DNAポリメラーゼと共に保温し、両末端を平滑化す
る。次に、T4 DNAリガーゼと共に保温し、プラス
ミドDNAとスペーサーDNAとを連結することによ
り、所望のスペーサーDNAを挿入した発現ベクタープ
ラスミドを得ることができる。
【0050】次に試験例を示して本発明を更に詳述す
る。 <試験例1>この試験は、本発明の配列番号1〜配列番
号3に記載の塩基配列を有するスペーサーDNAを含む
DNA断片を確認するために行った。
【0051】(1)試料の調製 実施例1〜実施例3と同一の方法により、配列番号1〜
配列番号3に記載の塩基配列を有するスペーサーDNA
を含むDNA断片を調製した。
【0052】(2)試験方法 前記スペーサーDNAを常法(村松正実編、「ラボマニ
ュアル遺伝子工学」、第1版、第19ページ、丸善、1
988年)によりアガロースゲル電気泳動に供し、エチ
ジウムブロマイド染色(村松正実編、「ラボマニュアル
遺伝子工学」、第1版、第19ページ、丸善、1988
年)により可視化した。
【0053】(3)試験結果 この試験の結果は図1に示す通りである。図1は、本発
明のスペーサーDNAを含むDNA断片のアガロースゲ
ル電気泳動図であり、第1列、第2列、第3列及び第4
列はそれぞれDNAサイズマーカー、配列番号1、配列
番号2及び配列番号3に記載の塩基配列を示し、図の左
側の数字はサイズマーカーの塩基対(bp)の数を示
す。
【0054】図1から明らかなように、DNAサイズマ
ーカー(第1列)との比較から、所望のスペーサーDN
Aを含有するDNA断片、即ち約300bp、約270
bp及び約390bp、が得られたことが確認された。
【0055】<試験例2>この試験は、本発明の配列番
号1〜配列番号3に記載の塩基配列を有するスペーサー
DNAを挿入したスペーサーDNA挿入β−gal発現
ベクター1〜スペーサーDNA挿入β−gal発現ベク
ター3(実施例4〜6参照)を確認するために行った。
いずれの発現ベクターも、第1のDNA配列としてβ−
gal、及び第2のDNA配列としてNeoを有する。
【0056】(1)試料の調製 実施例4〜6と同一の方法により、スペーサーDNA挿
入β−gal発現ベクター1〜スペーサーDNA挿入β
−gal発現ベクター3を調製した。
【0057】(2)試験方法 前記スペーサーDNA挿入β−gal発現ベクターをD
NA切断制限酵素PstI(宝酒造社製)により消化
後、常法(村松正実編、「ラボマニュアル遺伝子工
学」、第1版、第19ページ、丸善社、1988年)に
よりアガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマ
イド染色(村松正実編、「ラボマニュアル遺伝子工
学」、第1版、第19ページ、丸善社、1988年)に
より可視化した。
【0058】(3)試験結果 この試験の結果は図2に示すとおりである。図2は、本
発明のスペーサーDNA挿入β−gal発現ベクターの
アガロースゲル電気泳動図であり、第1列、第2列、第
3列及び第4列は、それぞれDNAサイズマーカー、配
列番号1、配列番号2及び配列番号3に記載の塩基配列
を有するスペーサーDNA挿入β−gal発現ベクター
を示し、図の左側の数字はDNAサイズマーカーの塩基
対(kbp)の数を示す。
【0059】図2から明らかなとおり、DNAサイズマ
ーカー(第1列)との比較から、所望のスペーサーDN
A挿入β−gal発現ベクターの切断パターン、即ち約
9.8kbp、約9.0kbpと約0.8kbp、及び
約9.8kbp、が得られたことが確認された。
【0060】<試験例3>この試験は、特殊な宿主細胞
を用いることなく、導入β−gal高発現細胞株を容易
に樹立することを可能にする発現ベクタープラスミドに
挿入するための、最適な長さのスペーサーDNAを決定
するために行った。
【0061】(1)試料の調製 参考例2と同一の方法により、対照β−gal発現ベク
ター2を調製した。また、実施例4〜6と同一の方法に
より、配列番号1〜配列番号3に記載の塩基配列を有す
るスペーサーDNAを含む、スペーサーDNA挿入β−
gal発現ベクター1〜スペーサーDNA挿入発現ベク
ター3を調製した。
【0062】(2)試験方法 a)動物細胞への、スペーサーDNA挿入β−gal発
現ベクターの遺伝子導入方法 仔ウシ血清(ハイクローン社製)を10%含有するダル
ベッコMEM(日水製薬社製。以下DMEMと記載す
る)により、マウス胎芽由来線維芽細胞様NIH3T3
細胞(特殊法人理化学研究所から入手)を37℃、5%
CO2 気相下で継代培養した。尚、NIH3T3細胞
は、DHFR欠損細胞のように、選択薬剤耐性遺伝子を
欠損した特殊な細胞株ではないことが公知である(瀬野
悍二、小山秀機、黒木登志夫編著、「動物細胞培養マニ
ュアル」、第1版、第112ページ、共立出版、199
3年)。継代培養したNIH3T3細胞に、配列番号1
〜配列番号3のスペーサーDNAを含む、スペーサーD
NA挿入β−gal発現ベクターをリポフェクトアミン
(商標。ギブコBRL社製)試薬により、次のように導
入した。
【0063】スペーサーDNA挿入発現ベクター(1.
5μg)、リポフェクトアミン試薬(7.5μl)及び
DMEM(最終容量0.2mlに調整)を混和し、保温
(室温で45分間)した。更にDMEM(0.8ml)
を添加し、発現ベクター導入用溶液とした。この溶液に
よりNIH3T3細胞(約105 個/直径35mm培養
皿)を12時間培養し、仔ウシ血清を20%含有するD
MEMを1ml添加し、更に12時間培養した。その
後、直径100mmの培養皿に該細胞を播種し、25
0、400又は800μg/mlのG418(ギブコB
RL社製)を添加した培養液により、約14日間培養し
た。尚、G418を添加した培養液により細胞を培養し
たのは、スペーサーDNA挿入β−gal発現ベクター
が組み込まれたため、該発現ベクターの第2のDNA配
列にコードされ、かつIRESを介してmRNAから蛋
白質に翻訳されたNeoにより、G418耐性能が付与
された細胞株を選別するためである。
【0064】b)細胞内に蓄積したβ−gal蛋白質の
検出方法 細胞内に蓄積したβ−gal蛋白質の検出は、常法[ジ
ェー・マレイ(J. Murray) 編、「ジーン・トランスファ
ー・アンド・エクスプレッション・プロトコール」(Gen
e transfer and expression protocol) 、第1版、第2
17ページ、ヒューマナ・プレス(Humana Press)、19
91年]により次のとおり行った。培養皿に付着してい
る細胞をダルベッコリン酸緩衝液(日水製薬社製)によ
り2回洗浄し、2%ホルムアルデヒド及び0.2%グル
タールアルデヒド含有0.1Mリン酸緩衝液により固定
した(4℃、5分)。ダルベッコリン酸緩衝液により3
回洗浄し(室温)、0.1%X−gal(宝酒造社製)
・3mMフェリシアン化カリウム・3mMフェロシアン
化カリウム及び1.3mM塩化マグネシウム含有0.1
Mリン酸緩衝液(pH7.3)により24時間、37℃
で保温し、第1のDNA配列であるβ−gal遺伝子の
産物である細胞内に蓄積したβ−gal蛋白質の活性に
より青染される細胞コロニー(以下「陽性細胞コロニ
ー」と記載することがある)数の、全コロニー数に対す
る比率を算出した。
【0065】(3)試験結果 この試験の結果は、表1に示すとおりである。表1は、
陽性細胞コロニー出現率に及ぼすスペーサーDNA長の
効果についてまとめたものであり、スペーサーDNAを
挿入していない対照β−gal発現ベクター2を遺伝子
導入した細胞において、250μg/mlのG418を
添加した培養液を用いて発現ベクター導入細胞コロニー
を単離した場合、約11%が陽性細胞コロニーであっ
た。G418濃度を400及び800μg/mlまで増
加させても陽性細胞コロニー出現率はほとんど変化せ
ず、それぞれ約15%及び約21%であった。
【0066】
【表1】
【0067】一方、スペーサーDNAを組込んだ本発明
の発現ベクターでは、陽性コロニー出現率の増加は顕著
であり、特に、59bpのスペーサーDNAを組込んだ
β−gal発現ベクター2を遺伝子導入し、250μg
/mlのG418を添加した培養液により発現ベクター
導入細胞コロニーを単離した場合、全細胞コロニーの約
62%が、第1のDNA配列であるβ−gal遺伝子の
産物であるβ−galを大量に生産している陽性細胞コ
ロニーであった。G418濃度を400及び800μg
/mlまで増加させた場合、陽性細胞コロニー出現率は
更に増加し、それぞれ約73%及び約87%であった。
【0068】X−gal染色は、比較的感度の低いβ−
gal蛋白質の検出方法[ジェー・マレイ(J. Murray)
編、「ジーン・トランスファー・アンド・エクスプレッ
ション・プロトコール」(Gene transfer and expressio
n protocol) 、第1版、第217ページ、ヒューマナ・
プレス(Humana Press)、1991年]であることから、
スペーサーDNAを挿入したことにより、第1のDNA
配列にコードされるβ−galが大量に生産されたため
に、陽性細胞コロニー数が増加したことが認められた。
また、最適なスペーサーDNA長は、配列番号2のスペ
ーサーDNAに例示される59bpであることが判明し
た。
【0069】<試験例4>この試験は、X−gal染色
における陽性細胞株(以下「陽性細胞株」と記載するこ
とがある)取得率に及ぼす配列番号2のスペーサーDN
Aに例示される59bpのスペーサーDNAを挿入し
た、スペーサーDNA挿入β−gal発現ベクター2の
効果について、更に詳しく試験した。すなわち、遺伝子
導入細胞株を単離し、一定期間の継代培養後であって
も、導入遺伝子が安定して組み込まれた樹立細胞株の取
得率について検討した。
【0070】(1)試料の調製 参考例1及び参考例2と同一の方法により、対照β−g
al発現ベクター1及び対照β−gal発現ベクター2
を調製した。また、実施例5と同一の方法により、配列
番号2に記載の塩基配列を有するスペーサーDNAを含
む、スペーサーDNA挿入β−gal発現ベクター2を
調製した。
【0071】(2)試験方法 a)動物細胞へのβ−gal発現ベクターの遺伝子導入
方法 試験例3と同一の方法により、対照β−gal発現ベク
ター1、対照β−gal発現ベクター2、又はスペーサ
ーDNA挿入β−gal発現ベクター2を、NIH3T
3細胞に遺伝子導入した。試験例3と同一の方法によ
り、種々の濃度のG418を添加した培養液により約1
4日間培養後、常法(東京大学医科学研究所制癌研究部
編、「細胞工学実験プロトコール」、第1版、第224
ページ、秀潤社、1991年)により、クローニングシ
リンダーを用いて細胞コロニーを単離し、更に約1週間
継代培養し、樹立細胞株とした。
【0072】b)細胞内に蓄積したβ−gal蛋白質の
検出方法 試験例3と同一の方法により行った。
【0073】(3)試験結果 この試験の結果は、表2に示すとおりである。陽性細胞
株取得率に及ぼすスペーサーDNA挿入β−gal発現
ベクター2の効果についてまとめた表2に示されるよう
に、第1のDNA配列にコードされるβ−gal、及び
第2のDNA配列にコードされるNeoをそれぞれ別個
のmRNAとして発現する対照β−gal発現ベクター
1を遺伝子導入した細胞株では、800μg/mlのG
418を添加した培養液により発現ベクター導入細胞株
を単離した場合、約7%が陽性細胞株であった。一方、
β−galとNeoをコードするポリシストロニックm
RNAを発現し、かつ59bpのスペーサーDNAが挿
入されているスペーサーDNA挿入β−gal発現ベク
ター2を遺伝子導入した場合、250μg/mlのG4
18により、発現ベクター導入細胞株を選別することに
より、全コロニーの約33%が陽性細胞株であった。G
418濃度を400及び800μg/mlに増加させた
場合、陽性細胞株取得率は更に増加し、それぞれ約53
%及び約62%に達した。
【0074】
【表2】
【0075】一方、スペーサーDNAが挿入されていな
いβ−galとNeoをコードするポリシストロニック
mRNAを発現する対照β−gal発現ベクター2を遺
伝子導入した細胞では、G418濃度を400及び80
0μg/mlまで増加させても陽性細胞株取得率はほと
んど変化せず、それぞれ約21%及び約13%であっ
た。
【0076】以上の結果から、スペーサーDNA挿入β
−gal発現ベクター2を遺伝子導入することにより、
NIH3T3細胞に例示される特殊でない細胞株におい
ても、導入した遺伝子にコードされる蛋白質を、高度に
生産する細胞株を高効率に単離し得ることが立証され
た。また、約G418に例示される遺伝子導入細胞株の
樹立に要する高価である薬剤の使用量を減少させても、
導入遺伝子産物を高度に生産する細胞株を高効率で樹立
できることが示された。
【0077】<試験例5>この試験は、導入した遺伝子
にコードされる蛋白質を、高度に生産する細胞株の濃縮
における、スペーサーDNA挿入β−gal発現ベクタ
ーの効果について検討するために行った。
【0078】(1)試料の調製 参考例1及び参考例2と同一の方法により、対照β−g
al発現ベクター1及び対照β−gal発現ベクター2
を調製した。また、実施例5と同一の方法により、配列
番号2に記載の塩基配列を有するスペーサーDNAを含
む、スペーサーDNA挿入β−gal発現ベクター2を
調製した。
【0079】(2)試験方法 試験例4と同一の方法により、対照β−gal発現ベク
ター1、対照β−gal発現ベクター2又はスペーサー
DNA挿入β−gal発現ベクター2を、NIH3T3
細胞へ遺伝子導入した。試験例3と同一の方法により、
種々の濃度のG418を添加した培養液により約14日
間培養後、発現ベクター導入細胞コロニー数を計測し
た。
【0080】(3)試験結果 この試験の結果は、図3に示すとおりである。図3は、
G418濃度とG418耐性コロニー数との関係を示
し、図の縦軸及び横軸は、それぞれG418耐性コロニ
ー数(対数)及びG418濃度を示し、図中●、▲及び
○は、それぞれスペーサーDNA挿入β−gal発現ベ
クター2を遺伝子導入した細胞、対照β−gal発現ベ
クター2を遺伝子導入した細胞及び対照β−gal発現
ベクター1を遺伝子導入した細胞を示す。
【0081】図3から明らかなとおり、本発明のβ−g
alとNeoをコードするポリシストロニックmRNA
を発現し、かつ59bpのスペーサーDNAが挿入され
ているスペーサーDNA挿入β−gal発現ベクター2
を遺伝子導入した細胞の場合、G418濃度を250μ
g/mlから800μg/mlまで増加させた場合、細
胞コロニー数は顕著に減少し、800μg/mlのG4
18により得られた細胞コロニー数は、250μg/m
lのG418により得られた細胞コロニー数の約8%で
あった。
【0082】一方、スペーサーDNAが挿入されていな
いβ−galとNeoをコードするポリシストロニック
mRNAを発現する対照β−gal発現ベクター2を遺
伝子導入した細胞では、細胞コロニー数は顕著に減少せ
ず、G418濃度を250μg/mlから800μg/
mlまで増加させた場合、同様の比較において、細胞コ
ロニー数は約28%になった。また、第1のDNA配列
にコードされるβ−gal及び第2のDNA配列にコー
ドされるNeoをそれぞれ別個のmRNAとして発現す
る対照β−gal発現ベクター1を遺伝子導入した細胞
でも、細胞コロニー数は大きく減少せず、G418濃度
を250μg/mlから800μg/mlまで増加させ
た場合、細胞コロニー数は約44%であった。
【0083】また、スペーサーDNA挿入β−gal発
現ベクター2を遺伝子導入した場合、対照β−gal発
現ベクター1叉は2を遺伝子導入した場合に比較し、相
対的に細胞コロニーの出現数は大きく減少した。すなわ
ち、800μg/mlのG418により対照β−gal
発現ベクター2導入細胞を選別した場合と比較し、25
0μg/mlのG418によりスペーサーDNA挿入β
−gal発現ベクター2を選別した場合、細胞コロニー
の出現数は対照β−gal発現ベクター2を導入した場
合の約70%まで減少した。
【0084】以上の結果から、本発明のスペーサーDN
A挿入β−gal発現ベクター2を遺伝子導入し、選択
薬剤の濃度を増加した場合、導入遺伝子産物高度生産細
胞株の濃縮が、効果的に行われていることが立証され
た。
【0085】<参考例1>(対照β−gal発現ベクタ
ー1の製造) スペーサーDNAとIRESをコードするDNAを含有
せず、第1のDNA配列と第2のDNA配列にコードさ
れる蛋白質を別個のプロモーターより、別個のmRNA
として発現する対照β−gal発現ベクター1を、公知
の方法(村松正実編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、
第1版、丸善社、1988年)により次のとおり製造し
た。
【0086】pact−β−galDNA(ニッポンジ
ーン社製)からニワトリβ−アクチンプロモーターDN
A配列断片を分取し、これをプラスミドDNA pRc
/CMV(インビトロジェン社製、SV40プロモータ
ーによりNeoを発現する)のCMVプロモーターDN
A配列中のDNA切断制限酵素NcoI認識部位、及び
クローニング部位のHindIII認識部位の間に挿入
し、連結した。
【0087】得られたプラスミドのニワトリβ−アクチ
ンプロモーターDNA配列の下流に、プラスミドDNA
pSG5(ストラタジーン社製)から分取したウサギ
β−グロビン遺伝子イントロンIIスプライシングアク
セプター部位DNA配列を挿入し、連結した。
【0088】更に、上記プラスミドのウサギβ−グロビ
ン遺伝子イントロンIIスプライシングアクセプター部
位DNA配列の下流にプラスミドDNA pMSG(フ
ァルマシア社製)のSV40ポリAシグナルDNA配列
断片を分取し、これを挿入し、連結した。
【0089】更に、プラスミドDNA pCH110
(ファルマシア社製)に含有される、β−galをコー
ドするDNA配列を分取し、ニワトリβ−アクチンプロ
モーターDNA配列と、SV40ポリAシグナルDNA
配列の間に、第1DNA配列として挿入し、連結した。
【0090】このようにして、スペーサーDNAとIR
ESをコードするDNA配列を含有せず、第1のDNA
配列及び第2のDNA配列にコードされる蛋白質(それ
ぞれβ−gal及びNeo)を別個のプロモーターよ
り、別個のmRNAとして発現する図4の(a)に示す
対照β−gal発現ベクター1を製造した。
【0091】図4は、各種発現ベクターの模式図であ
り、(a)(b)及び(c)は、それぞれ本参考例の対
照β−gal発現ベクター1、参考例2の対照β−ga
l発現ベクター2及び実施例4〜実施例6の本発明のβ
−gal発現ベクターを示す。
【0092】<参考例2>(対照β−gal発現ベクタ
ー2の製造) 第1のDNA配列(β−gal)と第2のDNA配列
(Neo)の間にIRESをコードするDNA配列を有
するが、スペーサーDNAが挿入されていない第1のD
NA配列と第2のDNA配列にコードされる蛋白質を発
現することのできるポリシストロニックmRNAを発現
する対照β−gal発現ベクター2[図4(b)]を、
公知の方法(村松正実編、「ラボマニュアル遺伝子工
学」、第1版、丸善社、1988年)により、次のとお
り製造した。
【0093】pCITE−1(ノバゲン社製)に含まれ
るATG−11配列を有するEMCVのIRESをコー
ドするDNA配列を分取し、対照β−gal発現ベクタ
ー1のβ−galをコードするDNA配列とNeoをコ
ードするDNA配列との間に挿入し、連結し、対照β−
gal発現ベクター2を製造した。尚、ATG−11配
列がNeoの開始ATGコドンになるように連結した。
【0094】
【実施例】以下に、実施例を示して本発明をさらに具体
的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定される
ものではない。
【0095】
【実施例1】(配列番号1のスペーサーDNAの製造) (1)スペーサーDNAの製造に用いるオリゴヌクレオ
チドプライマーの製造 本発明のスペーサーDNAを、PCRにより製造するた
め、プライマーとして用いる次のオリゴヌクレオチド
を、全自動DNA合成機(ABI社、381A)を用い
て公知の方法[ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nu
cleic Acids Research)、第12巻、第4539ペー
ジ、1984年]により合成した。
【0096】プライマー(1): 5'-GCTGGCCACAAGAGACAGGATGAGGATC-3'(配列番号4) プライマー(2): 5'-GAGCACAGCTGCGCAAGGAA-3'(配列番号5) プライマー(3): 5'-GCTGGCCAAGGCTTGACCGACAATTG-3'(配列番号6)
【0097】(2)配列番号1に記載の塩基配列を有す
るスペーサーDNAの製造 プラスミドDNAであるpRc/CMV(インビトロジ
ェン社製)を鋳型として、プライマー(1)及び(2)
を用いて、公知の方法[ヘンリー・エー・エルリッチ
(Henry A. Erlich )編、「PCRテクノロジー」、第
1版、第31ページ、ストックトン・プレス(Stockton
Press)、1989年]によりPCRを行い、配列番号
1に記載の塩基配列を有するスペーサーDNAを含有す
るDNA断片を製造した。
【0098】増幅したDNA断片を含むPCR産物をア
ガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染
色により可視化し、所望するDNA断片を含むアガロー
ス断片を切り出した。アガロース断片の5倍重量の10
mMTris−塩酸(pH7.5)、1mMEDTA溶
液を添加し、保温し(65℃、5分間)、再びアガロー
スを溶解した。その後、等量のフェノール溶液を添加
し、混和し、遠心(10,000×g、室温、3分間)
し、上清中に含まれるDNA断片をエタノール沈澱法に
より回収し、本発明の配列番号1に記載の塩基配列を有
するスペーサーDNAを含有するDNA断片を得た。
【0099】
【実施例2】(配列番号2のスペーサーDNAの製造) プラスミドDNAであるpRc/CMV(インビトロジ
ェン社製)をDNA切断制限酵素SmaI(宝酒造社
製)及びMscI(東洋紡社製)により処理した。配列
番号2のスペーサーDNAを含有する処理液をアガロー
スゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染色によ
り可視化し、所望のDNA断片を含むアガロース断片を
切り出した。アガロース断片の5倍重量の10mMTr
is−塩酸(pH7.5)、1mMEDTA溶液を添加
し、保温し(65℃、5分間)、再びアガロースを溶解
した。その後、等量のフェノール溶液を添加し、混和
し、遠心(10,000×g、室温、3分間)し、上清
中に含まれるDNA断片をエタノール沈澱法により回収
し、5’末端に実施例1と同一の方法により化学合成し
たリンカーDNA 5’−ATGG−3’をDNAリガ
ーゼにより連結し(16℃、30分間)、配列番号2に
記載の塩基配列を有するスペーサーDNAを含有するD
NA断片を得た。
【0100】
【実施例3】(配列番号3のスペーサーDNAの製造) pRc/CMV(100ng)をDNA切断制限酵素S
maI(宝酒造社製)及びNruI(宝酒造社製)によ
り消化し、T4 DNAポリメラーゼと共に保温し(3
7℃、5分間)、両末端を平滑化した。次に、T4 D
NAリガーゼと共に保温(16℃、30分間)し、両末
端を連結した。該プラスミドDNAを鋳型とし、前記プ
ライマー(2)及び(3)を用い、実施例1と同一の方
法により、配列番号3に記載の塩基配列を有するスペー
サーDNAを含有するDNA断片を得た。
【0101】
【実施例4】(スペーサーDNA挿入β−gal発現ベ
クター1の製造) 実施例1で製造した配列番号1に記載の塩基配列を有す
るスペーサーDNAを含有するDNA断片、及び対照β
−gal発現ベクター2をDNA制限酵素MscI(東
洋紡社製)により消化し、T4 DNAリガーゼ(宝酒
造社製)と共に保温し、(16℃、30分間)し、配列
番号1に記載の塩基配列を有するスペーサーDNAを対
照β−gal発現ベクター2に挿入し、所望のスペーサ
ーDNA挿入β−gal発現ベクター1[図4(c)]
を製造した。
【0102】
【実施例5】(スペーサーDNA挿入β−gal発現ベ
クター2の製造) ATG−11配列を含有するEMCVのIRESのDN
A配列を含有するプラスミドDNA pCITE−1
(100ng)、及びpBC−SK(+)(100n
g、クローンテック社製)を、DNA制限酵素AccI
(宝酒造社製)及びEcoRI(宝酒造社製)により消
化し、T4 DNAリガーゼと共に保温し(16℃、3
0分間)、連結することによって、pBC−SK(+)
にATG−11配列を含むEMCVのIRESをコード
するDNA配列を挿入した。該IRESをコードするD
NA配列を有するpBC−SK(+)(100ng)
を、DNA切断制限酵素MscI及びXbaI(いずれ
も宝酒造社製)により消化し、DNA切断制限酵素Sm
aI及びXbaIにより消化した対照β−gal発現ベ
クター1と混和し、T4 DNAリガーゼと共に保温し
(16℃、30分間)、配列番号2に記載の塩基配列を
有するスペーサーDNAを組込んだ所望のスペーサーD
NA挿入β−gal発現ベクター2[図4(c)]を製
造した。
【0103】
【実施例6】(スペーサーDNA挿入β−gal発現ベ
クター3の製造) 実施例3と同一の方法により、実施例2で製造した配列
番号3に記載の塩基配列を有するスペーサーDNAを含
むDNA断片、及び対照β−gal発現ベクター2を処
理し、配列番号3に記載の塩基配列を有するスペーサー
DNAを含有する所望のスペーサーDNA挿入β−ga
l発現ベクター3[図4(c)]を製造した。
【0104】
【発明の効果】以上詳述したとおり本発明は、スペーサ
ーDNA及び該DNAを組込んだ発現ベクターに関する
ものであり、本発明によって奏せられる効果は次のとお
りである。 1)特殊な宿主細胞株を用いることなく、第1のDNA
配列にコードされる有用な蛋白質を高度に生産する細胞
株を容易に樹立することができる。 2)遺伝子導入された細胞株の単離及び維持に要する、
高額な薬剤の使用量を減少することができる。
【0105】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:31 配列の型:核酸 鎖の数:両形態 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA配列 GCCACAAGAG ACAGGATGAG GATCGTTTCG C 31
【0106】配列番号:2 配列の長さ:59 配列の型:核酸 鎖の数:両形態 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GGGGAGCTTG GATATCCATT TTCGGATCTG ATCAAGAGAC AGGATGAGGA TCGTTTCGC 59
【0107】配列番号:3 配列の長さ:122 配列の型:核酸 鎖の数:両形態 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GCCAAGGCTT GACCGACAAT TGCATGAAGA ATCTGCTTAG GGTTAGGCGT TTTGCGCTGC 60 TTCGGGGAGC TTGGATATCC ATTTTCGGAT CTGATCAAGA GACAGGATGA GGATCGTTTC 120 GC 122
【0108】配列番号:4 配列の長さ:28 配列の型:核酸 鎖の数:両形態 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GCTGGCCACA AGAGACAGGA TGAGGATC 28
【0109】配列番号:5 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:両形態 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GAGCACAGCT GCGCAAGGAA 20
【0110】配列番号:6 配列の長さ:28 配列の型:核酸 鎖の数:両形態 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GCTGGCCAAG GCTTGACCGA CAATTG 26
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスペーサーDNAを有するDNA断
片のアガロースゲル電気泳動写真である。第1列、第2
列、第3列及び第4列はそれぞれDNAサイズマーカ
ー、配列番号1、配列番号2及び配列番号3に記載の塩
基配列を含有するDNA断片を示し、図の左側の数字は
サイズマーカーの塩基対(bp)の数を示す。
【図2】 本発明のスペーサーDNAを組込んだ発現ベ
クターのアガロースゲル電気泳動写真である。第1列、
第2列、第3列及び第4列は、それぞれDNAサイズマ
ーカー、配列番号1、配列番号2及び配列番号3に記載
の塩基配列を有するスペーサーDNA挿入β−gal発
現ベクターを示し、図の左側の数字はDNAサイズマー
カーの塩基対(kbp)の数を示す。
【図3】 G418濃度とG418耐性コロニー数との
関係を示す。図の縦軸及び横軸は、それぞれG418耐
性コロニー数(対数)及びG418濃度を示し、図中
●、▲及び○は、それぞれスペーサーDNA挿入β−g
al発現ベクター2を遺伝子導入した細胞、対照β−g
al発現ベクター2を遺伝子導入した細胞及び対照β−
gal発現ベクター1を遺伝子導入した細胞を示す。
【図4】 各種発現ベクターの模式図である。(a)
(b)及び(c)は、それぞれ本参考例の対照β−ga
l発現ベクター1、参考例2の対照β−gal発現ベク
ター2及び実施例4〜実施例6の本発明のβ−gal発
現ベクターを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山内 雪香 神奈川県座間市東原5丁目1番83号 森永 乳業株式会社生物科学研究所内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所望の蛋白質をコードする第1のDNA
    配列とマーカー遺伝子である第2のDNA配列とを含
    み、第2のDNA配列の5’末端側に内部リボゾーム認
    識部位(インターナル・リボゾーマル・エントリー・サ
    イト)を有する真核細胞用発現ベクターに挿入されるス
    ペーサーDNAであって、 前記内部リボゾーム認識部位の3’末端に存在し、真核
    生物のリボゾームが認識し得るAUG配列をコードする
    ATG配列と、第2のDNA配列の開始ATG配列との
    間に挿入され、かつ該塩基配列の少なくとも一部は蛋白
    質に翻訳されないか、又は該塩基配列が全部翻訳された
    場合であっても第2のDNA配列と読取りフレームがず
    れているスペーサーDNA。
  2. 【請求項2】 塩基配列が、少なくとも31塩基対から
    なる請求項1に記載のスペーサーDNA。
  3. 【請求項3】 塩基配列が、配列番号1〜配列番号3に
    記載のいずれかの塩基配列を有する請求項1又は2記載
    のスペーサーDNA。
  4. 【請求項4】 マーカー遺伝子が、薬剤耐性遺伝子であ
    る請求項1〜3のいずれか一項に記載のスペーサーDN
    A。
  5. 【請求項5】 次のa)〜f)のDNA配列; a)プロモーター活性を有するDNA配列、 b)所望の蛋白質をコードする第1のDNA配列、 c)内部リボゾーム認識部位をコードするDNA配列、 d)スペーサーDNA配列、及び e)マーカー遺伝子である第2のDNA配列、 を含む真核細胞用発現ベクターであって、 前記スペーサーDNA配列は、前記内部リボゾーム認識
    部位の3’末端に存在し、真核生物のリボゾームが認識
    し得るAUG配列をコードするATG配列と、第2のD
    NA配列の開始ATG配列との間に挿入され、かつ該配
    列の少なくとも一部は蛋白質に翻訳されないか、又は該
    塩基配列が全部翻訳された場合であっても第2のDNA
    配列と読取りフレームがずれている、発現ベクター。
  6. 【請求項6】 前記真核生物のリボゾームが認識し得る
    AUG配列をコードするATG配列が、リボゾームによ
    り翻訳コドンとして認識され得る請求項5記載の発現ベ
    クター。
  7. 【請求項7】 内部リボゾーム認識部位をコードするD
    NA配列が、ピコルナウイルス科に属する脳心筋炎ウイ
    ルス由来である請求項6記載の発現ベクター。
  8. 【請求項8】 内部リボゾーム認識部位をコードするD
    NA配列の3’末端が、少なくともATG−11配列ま
    で含む請求項7記載の発現ベクター。
  9. 【請求項9】 スペーサーDNAが、少なくとも31塩
    基対からなる請求項5〜8のいずれか一項に記載の発現
    ベクター。
  10. 【請求項10】 スペーサーDNAが、配列番号1〜配
    列番号3に記載の塩基配列を有する請求項5〜9に記載
    の発現ベクター。
  11. 【請求項11】 所望の蛋白質が、β−ガラクトシダー
    ゼ遺伝子である請求項5〜請求項10に記載の発現ベク
    ター。
  12. 【請求項12】 マーカー遺伝子がネオマイシン耐性遺
    伝子である請求項5〜請求項11に記載の発現ベクタ
    ー。
  13. 【請求項13】 所望の蛋白質をコードする第1のDN
    A配列とマーカー遺伝子である第2のDNA配列とを含
    み、第2のDNA配列の5’末端側には内部リボゾーム
    認識部位を有する真核細胞用発現ベクターを宿主真核細
    胞に導入し、該細胞の生育にマーカー遺伝子の発現を必
    要とする物質の存在下で該ベクター導入細胞を培養する
    ことによって、第2のDNA配列とともに第1のDNA
    配列のコピー数を増幅させる方法において、 前記内部リボゾーム認識部位の3’末端に存在し、真核
    生物のリボゾームが認識し得るAUG配列をコードする
    ATG配列と、第2のDNA配列の開始ATG配列との
    間に、少なくとも一部は蛋白質に翻訳されないか、又は
    該塩基配列が全部翻訳された場合であっても第2のDN
    A配列と読取りフレームがずれているスペーサーDNA
    を挿入し、第2のDNAの翻訳効率を低下させることに
    よって、増幅を促進させることを特徴とする方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2002090554A1 (fr) * 2001-05-09 2002-11-14 Gencom Corporation Vecteur de clonage
WO2013161958A1 (ja) 2012-04-27 2013-10-31 日本ケミカルリサーチ株式会社 新規な発現ベクター

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