JPH08214891A - 高度不飽和脂肪酸含有トリグリセリドを含む油脂の製造方法 - Google Patents

高度不飽和脂肪酸含有トリグリセリドを含む油脂の製造方法

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JPH08214891A
JPH08214891A JP7029745A JP2974595A JPH08214891A JP H08214891 A JPH08214891 A JP H08214891A JP 7029745 A JP7029745 A JP 7029745A JP 2974595 A JP2974595 A JP 2974595A JP H08214891 A JPH08214891 A JP H08214891A
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fatty acid
fat
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Yoshio Tominaga
嘉男 富永
Akio Sugihara
耿雄 杉原
Yuji Shimada
裕司 島田
Kazuteru Maruyama
一輝 丸山
Chikako Shiina
智香子 椎名
Hide Nakayama
秀 中山
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Maruha Corp
Osaka City
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Maruha Corp
Osaka City
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 油脂及び中鎖脂肪酸の存在下で、トリグリセ
リドの1,3−位のエステル結合にのみに作用するリパー
ゼを作用させることを特徴とする高度不飽和脂肪酸高含
有トリグリセリドを含む油脂の製造方法、並びに、油脂
及び中鎖脂肪酸の存在下で、トリグリセリドの1,3−位
のエステル結合にのみに作用する固定化リパーゼを作用
させて反応混合物を得るとともに該反応混合物中から固
定化酵素を回収し、油脂及び中鎖脂肪酸の存在下で前記
回収した固定化リパーゼを作用させて反応混合物を得る
ことを繰り返し行うことを特徴とする油脂の製造方法。 【効果】 本発明により、高度不飽和脂肪酸を高濃度に
含有するトリグリセリドを含む油脂が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高度不飽和脂肪酸を高
濃度に含有するトリグリセリドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高度不飽和脂肪酸の有する生理活
性が注目されている。特に、エイコサペンタエン酸(以
下「EPA」と称する) やドコサヘキサエン酸(以下
「DHA」と称する) は、動脈硬化症、血栓症などの成
人病に対する予防効果や制ガン作用、学習能の増強作用
など多くの生理活性作用を有していることが知られてい
る。そして、EPA、DHAの医薬品、特定保健用食品
への利用法について様々な検討がなされている。
【0003】EPAやDHAを主体とした高度不飽和脂
肪酸を濃縮する方法としては、例えば (1)クロマトグラ
フによる方法、(2) 液−液分配による方法、(3) 真空精
密蒸留による方法、(4) 二重結合への付加物による方
法、及びこれらを組合わせた方法が知られている(佃
信夫:食品工業,9下,30(1985))。しかし、これらの
方法により高度不飽和脂肪酸を濃縮するには、油脂を脂
肪酸に変換するか、そのアルカリ金属塩又は低級アルコ
ール等に変換する必要があり、これらを食品用に供する
ことはできない。
【0004】食品用に供することができるグリセリドの
形態で高度不飽和脂肪酸を濃縮する方法としては、極低
温溶剤分別法(ウインタリゼーション)(佃 信夫:食
品工業,9下,30(1985))やリパーゼを用いた選択的加
水分解法(特公平4-16519号公報) が知られている。し
かし、極低温溶剤分別法では極適温(−30〜−50℃) で
結晶化及び濾過する必要があり、しかも溶剤を除去しな
ければならず、工程が煩雑である。また、極低温溶剤分
別法では、EPAの豊富なイワシ油(EPA含量8〜16
%) を原料油として用いたとき、EPAの最大濃縮率は
30%であり、DHAの豊富なマグロあるいはカツオ眼窩
油(DHA含量25〜30%) を原料としたとき、DHAの
最大濃縮率は35%である。
【0005】このように、EPA、DHA等を極低温溶
剤分別法によって高濃度に濃縮する場合は、得られる高
度不飽和脂肪酸グリセリドの収率が15%以下と低く、生
産コストが極めて高くなるという問題点がある。また、
リパーゼの選択的加水分解反応を利用した方法、即ち、
キャンディダ・シリンドラシェ(Candida cylindracea)
が生産するリパーゼを使用して魚油を加水分解し、グリ
セリド中に高度不飽和脂肪酸を濃縮する方法(特公平4
-16519号公報) を用いる場合では、DHA濃度は50〜55
%まで濃縮できるが、EPAは濃縮できないという不便
がある。しかも、加水分解を受けにくいDHAでさえ
も、反応が平衡に達した時点で、反応前のDHA量の30
〜35%を遊離脂肪酸として損失してしまう。さらに、グ
リセリドの回収率も30〜35%とかなり低く、融点の高い
ジグリセリドが副生するという問題点もある。
【0006】従って、従来より、DHA等の高度不飽和
脂肪酸の損失を少なくし、ジグリセリドを副生すること
なく高度不飽和脂肪酸を高濃度に含むトリグリセリドを
製造する方法が要望されている。これまでに、トリグリ
セリドの1,3−位特異的リパーゼによるエステル交換反
応を利用し、炭素数8から14個の中鎖脂肪酸で構成され
ている油脂と炭素数18個以上の脂肪酸であるリノール
酸、リノレン酸、アラキドン酸、EPA、DHAを原料
として、トリグリセリドの2−位に中鎖脂肪酸を、1,3
−位に炭素数18個以上の脂肪酸を含有する油脂の製造方
法が知られている。(特開昭63-27988号公報) 。
【0007】また、1,3−位特異的リパーゼを用いたエ
ステル交換反応を利用して、魚油とオレイン酸を原料と
し、1,3−位にオレイン酸を含有し、2−位にDHAを
含有するトリグリセリドの製造方法も知られている(特
開平6-587594号公報) 。しかし、特開平6-587594号公報
記載の方法では、エステル交換に用いるオレイン酸が魚
油の構成脂肪酸の平均分子量に相当するため、グリセリ
ド中のDHA含量(重量%)を高めることはできず、ま
た、生成油脂中のトリグリセリド含量は約90%であり、
あまり高いものではない。また、特開昭63-27988号公報
記載の方法では、DHAを十分に濃縮することができな
いという問題点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高度不飽和
脂肪酸含量(重量%)を高めたトリグリセリドを含む油
脂の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
に基づいて鋭意研究を行った結果、トリグリセリドの1,
3−位を構成している長鎖脂肪酸を中鎖脂肪酸にエステ
ル交換することで、2−位に存在している高度不飽和脂
肪酸を高濃度に含有するグリセリドを製造することに成
功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明
は、油脂及び中鎖脂肪酸の存在下で、トリグリセリドの
1,3−位のエステル結合にのみに作用するリパーゼを作
用させることを特徴とする高度不飽和脂肪酸高含有トリ
グリセリドを含む油脂の製造方法である。
【0010】さらに、本発明は、油脂及び中鎖脂肪酸の
存在下で、トリグリセリドの1,3−位のエステル結合に
のみに作用する固定化リパーゼを作用させて反応混合物
を得るとともに該反応混合物中から固定化酵素を回収
し、次に、新たに油脂及び中鎖脂肪酸を加え、該油脂及
び該中鎖脂肪酸の存在下で前記回収した固定化リパーゼ
を作用させて反応混合物を得る工程を繰り返し行うこと
により、高度不飽和脂肪酸高含有トリグリセリドを95%
以上含有する油脂を得ることを特徴とする高度不飽和脂
肪酸高含有トリグリセリドを含む油脂の製造方法であ
る。
【0011】ここで、中鎖脂肪酸としては、炭素数6〜
12個を有する脂肪酸から選ばれるものであり、例えば、
カプリル酸又はカプリン酸等が挙げられ、高度不飽和脂
肪酸としては、例えば、アラキドン酸、ドコサヘキサエ
ン酸若しくはエイコサペンタエン酸又はこれらの組合せ
が挙げられ、油脂としては、例えば、魚油、オキアミ、
藻類又は菌類から抽出したものが挙げられる。
【0012】以下、本発明を詳細に説明する 本発明は、油脂のトリグリセリドの1,3−位を構成する
長鎖脂肪酸を中鎖脂肪酸にエステル交換することで、2
−位に存在する高度不飽和脂肪酸の含有比率を高め、該
高度不飽和脂肪酸を高濃度に含有せしめたトリグリセリ
ドを製造する方法である。すなわち、本発明は、油脂、
炭素数6から12個の脂肪酸の中から選択される一種類以
上の中鎖脂肪酸及び微量の水を原料とし、1,3−位特異
的リパーゼを作用させてエステル交換反応を行い、トリ
グリセリド中の2−位に多く含まれるDHA、EPAな
どの高度不飽和脂肪酸をトリグリセリドの型で効率良く
回収し、高度不飽和脂肪酸濃度を高めたトリグリセリド
を製造する方法である。
【0013】原料油脂のトリグリセリドを構成する脂肪
酸の平均分子量は、炭素数18の脂肪酸の分子量に相当す
る。本発明では、トリグリセリドの1,3−位を構成する
長鎖脂肪酸を、中鎖脂肪酸にエステル交換して1,3−位
に存在する脂肪酸の分子量を小さくすることにより、2
−位に存在する高度不飽和脂肪酸の濃度を高めることが
できる。エステル交換に用いる中鎖脂肪酸としては、炭
素数6から12個の中鎖脂肪酸であるのが好ましく、炭素
数8から10個の中鎖脂肪酸がさらに好ましい。
【0014】本発明において、油脂とは、構成脂肪酸に
高度不飽和脂肪酸を含有するトリグリセリドを意味す
る。高度不飽和脂肪酸含有油脂としては、たとえばマグ
ロ、カツオ、イワシ、サバ、サンマ、タラ、イカ、アジ
等の魚油の他、オキアミ、さらに、クロレラ、スピルリ
ナ等の藻類、モルティエラ属等の菌類から抽出した油脂
を挙げることができる。また、高度不飽和脂肪酸として
は、例えば、アラキドン酸、DHA若しくはEPA又は
これらの組合せ等が挙げられる。
【0015】本発明で用いることのできるリパーゼとし
ては、例えば、リゾプス(Rhizopus)属、リゾムコール
(Rhizomucor)属、アスペルギルス( Aspergillus属)
などの微生物が生産するもの、ブタ膵臓リパーゼなどが
挙げられる。かかるリパーゼについては、市販のものを
用いることができる。例えば、リゾプス・デレマー(Rh
izopus delemar) のリパーゼ(田辺製薬(株)製、タ
リパーゼ)、リゾムコール・ミイヘイ(Rhizomucor mie
hei)のリパーゼ(ノボ・ノルディスク(株)社製;リボ
ザイムIM)、アスペルギルス・ニガー( Aspergillus
niger)のリパーゼ(天野製薬(株);リパーゼA)等
が挙げられる。
【0016】上記のリパーゼの使用形態はそのまま用い
ても良く、また、セライトやイオン交換樹脂、セラミッ
クス担体などに固定されたリパーゼを用いてもよい。本
反応系に加える水分量は極めて重要で、水を含まない場
合はエステル交換が進行しにくくなり、また、水分量が
多い場合は加水分解が起こり、グリセリドの回収率が低
下する。従って、固定化酵素を用いたときの水分量は、
加えた酵素量の0〜1,000%(重量%) 、好ましくは10
〜500%(重量%) であり、セライト又はセラミックス
担体に固定したリゾプス・デレマー(Rhizopus delema
r) のリパーゼ(田辺製薬(株)製、タリパーゼ)を用
いた時の水分量は、加えた酵素量の10〜100 %(重量
%)である。
【0017】リパーゼの使用量は反応条件によって適宜
決定すれば良く、特に制限されるものではないが、例え
ばセライトやセラミックス担体に固定化したリゾプス・
デレマーのリパーゼを用いたときは、反応混液の2.5 〜
10%(重量%)が適量である。エステル交換反応は、以
下の方法により行う。すなわち、上記魚油等に、炭素数
6から12個の中鎖脂肪酸、及びオレイン酸又はリノール
酸の一種を加える。これに適当な量(通常10,000〜30,0
00U/g)のリパーゼ及び蒸留水を加え、攪拌しながら10
〜70時間行えばよい。このときの反応温度は20〜40℃で
ある。
【0018】本発明で製造する反応後のトリグリセリド
は、高度不飽和脂肪酸が高濃度に濃縮されたトリグリセ
リドであり、該トリグリセリドと、過剰の中鎖脂肪酸及
びエステル交換されて生じた油脂(例えば魚油)の1,3
−位を構成する脂肪酸との混合物として存在している。
そこで、高度不飽和脂肪酸が高濃度に濃縮されたトリグ
リセリド(以下「高度不飽和脂肪酸濃縮トリグリセリ
ド」という)の精製は、アルカリ脱酸、水蒸気蒸留、分
子蒸留、真空精密蒸留、カラムクロマトグラフィー、溶
剤抽出のいずれか又はこれらを組み合わせることによ
り、上記のエステル交換された脂肪酸及び過剰の中鎖脂
肪酸を除去することによって行うことができる。
【0019】また、上記エステル交換反応を繰り返して
行うことにより、高度不飽和脂肪酸濃縮トリグリセリド
の含量を、高濃度(95%以上)に高めることができる。
すなわち、中鎖脂肪酸の存在下に、トリグリセリドの1,
3−位のエステル結合にのみ作用するリパーゼを油脂に
作用させて、1,3−位の脂肪酸が中鎖脂肪酸とエステル
交換された反応溶液を得る。
【0020】次に、該反応溶液から固定化酵素(固定化
リパーゼ)を回収し、次に、新たに油脂及び中鎖脂肪酸
を加え(水を加えない)、該油脂及び該中鎖脂肪酸の存
在下で前記固定化リパーゼを作用させて反応混合物を得
る。反応回数が少ない場合(例えば1〜2回等)は、得
られる油脂のトリグリセリド含量は90%前後であるが、
固定化酵素を用いて繰り返し反応を行うことにより、高
度不飽和脂肪酸高含有トリグリセリドを95%以上含有す
る油脂が得られる。
【0021】従来の技術では、油脂中のトリグリセリド
含量は約90%とあまり高いものではなかったのに対し、
本発明では、固定化酵素を繰り返し使用しても活性が落
ちることなく、その活性は維持され、高度不飽和脂肪酸
高含有トリグリセリドを95%以上(多くは99%以上)含
有する油脂が得られるものである。高度不飽和脂肪酸高
含有トリグリセリドを95%以上含有する油脂を得るため
の上記工程の反応回数は特に限定されず、リパーゼが失
活し、エステル交換能が低下しない限り繰り返すことが
可能である。例えば、本発明の条件下では、3〜150 回
繰り返すことができる。
【0022】反応に用いる酵素、反応条件については、
前記と同様である。本発明で製造した高度不飽和脂肪酸
濃縮トリグリセリドは、例えば、魚油の2−位に多く含
有するDHAをまったく遊離しないため、DHAの回収
率が極めて良いということが特徴に挙げられる。さら
に、本発明で提起した方法を用いると原料油脂の加水分
解はほとんど起こらず、エステル交換反応のみ進行する
ため、油脂の回収率も極めて高いという特徴も挙げられ
る。
【0023】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。但し,本発明は、これら実施例に限定されな
い。 〔実施例1〕マグロ油(ケン化価:184.5, EPA:5.
8%,DHA:23.3%) 100gに、炭素数6から12個の中
鎖脂肪酸、および、オレイン酸又はリノール酸のうちの
一種類を100g加えて、セライト545(和光純薬工業(株)
製)で固定化したリゾブス・デレマー(Rhizopus dele
mar) のリパーゼ(田辺製薬(株)製、タリパーゼ 15,0
00U/g)5g 、蒸留水2.5mlを加えて、500rpmで攪拌し
ながら30℃で16時間エステル交換反応を行った。
【0024】エステル交換反応後の反応混液は、十分平
衡に達していた。次いで、該反応混液からエステル交換
されて生じた魚油由来の遊離脂肪酸及び交換されなかっ
た過剰の中鎖脂肪酸をアルカリ脱酸法によって水層に除
去することによって、下記の通り高度不飽和脂肪酸濃縮
グリセリドを得ることができた。なお、得られたグリセ
リド中の脂肪酸組成は、常法に従ってメチルエステル化
した後、キャピラリーカラムガスクロマトグラフィーに
より分析した。
【0025】また、グリセリド組成については、クロマ
ロットS−III( (株) ヤトロン製)に試料を適量スポッ
トし、ベンゼン:クロロホルム:酢酸(50:20:0.5(v/
v))の混合溶媒で展開した後、イヤトロスキャンTH-10(
(株) ヤトロン製) で分析を行った。結果を表1に示
す。
【0026】
【表1】
【0027】上記の通り、高度不飽和脂肪酸、特にDH
Aを濃縮するためにエステル交換する脂肪酸は、炭素数
6から12個の中鎖脂肪酸であることが好ましい。中で
も、炭素数8および10個の中鎖脂肪酸はDHAの濃縮効
率が極めて良く、炭素数8および10個の中鎖脂肪酸にエ
ステル交換した結果、DHAの濃度はともに約30%に達
した。炭素数8個のカプリル酸でエステル交換した場
合、グリセリド画分の回収率は68.9%(重量%)であ
り、モル%に換算すると92.9%であった。
【0028】なお、この高度不飽和脂肪酸濃縮グリセリ
ドを5℃の冷蔵庫に一ケ月保管したが、結晶の析出はま
ったく見られなかった。カプリル酸をマグロ油中に導入
することにより、DHAの濃縮のみならず、5℃の保管
試験においても曇りの生じない油脂を製造することがで
きた。また、アルカリ脱酸法により水層中に除去した脂
肪酸画分中の脂肪酸組成を測定した結果、DHAのピー
クは検出されなかったため、DHAの脂肪酸画分中への
損失はほとんどないことも確認できた。
【0029】〔実施例2〕マグロ油(ケン化価:184.5,
EPA:5.8%,DHA:23.3%) 100gに、炭素数6
から12個の中鎖脂肪酸及びオレイン酸、リノール酸のう
ちの一種類を100g加えて、セラミックス担体(日本ガイ
シ(株)製;SM-10)で固定化したリゾプス・デレマー
Rhizopus delemar) のリパーゼ(田辺製薬(株)
製;タリパーゼ20,000U/g)5g 、蒸留水2.5mlを加え
て、 130往復/分で振盪しながら30℃で24時間エステル
交換反応を行った。
【0030】エステル交換反応後の反応混液は、十分平
衡に達していた。反応後、固定化酵素はすみやかに沈降
するため、上澄みの油分のみを回収し、実施例1と同様
の方法により、下記表2の脂肪酸組成を有する高度不飽
和脂肪酸濃縮油脂を得ることができた。なお、油脂分析
の方法は実施例1と同様の方法で行った。結果を表2に
示す。
【0031】
【表2】
【0032】〔実施例3〕マグロ油(ケン化価:184.5,
EPA:5.8%,DHA:23.3%) 100gに、炭素数6
から12個の中鎖脂肪酸及びオレイン酸、リノール酸のう
ちの一種類を100g加えて、実施例2と同じ方法でセラミ
ックス担体(日本ガイシ(株)製;SM-10)で固定化した
リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar) のリパーゼ
(田辺製薬(株)製;タリパーゼ 20,000U/g)5g 、蒸
留水2.5mlを加えて、 130往復/分で振盪しながら30℃
で24時間エステル交換反応を行った。反応後、固定化酵
素はすみやかに沈降するため、反応混液をしばらく静置
してから上澄みの油分のみを除去し、固定化酵素を回収
した。
【0033】この固定化酵素にマグロ油100g、炭素数8
又は10個の脂肪酸100gを加え、再びエステル交換反応を
行った。このような方法でエステル交換反応を30回繰り
返した。繰り返し反応を行った後の各混液は、十分平衡
に達していた。以下に、繰り返し反応を行った後の各反
応混液中のグリセリド組成および脂肪酸組成を示す(表
3)。なお、油脂分析の方法は実施例1と同様である。
【0034】
【表3】
【0035】上記の通り、繰り返し反応を行うことによ
って、油脂中に含まれるトリグリセリドの含量が徐々に
上昇し、4回以上の繰り返し反応を行うと、99%以上の
トリグリセリドを含む高度不飽和脂肪酸濃縮油脂が得ら
れることがわかった。例えば、カプリル酸(表3,C8)
をエステル交換に使用し、固定化酵素を4回、5回、30
回繰り返し使用したとき、それぞれ99.3%、99.3%、9
9.5%であった。この場合、高度不飽和脂肪酸(DH
A;表3の脂肪酸組成の「22:6」)の含量は、4回、5
回、30回目の処理でそれぞれ30.5%、30.2%、30.1%で
あった。カプリン酸(表3,C10)をエステル交換に用い
た場合でも同様の結果である。
【0036】4回目の反応によって得られた油は、炭素
数8個のカプリル酸で交換した反応で70.2g 、炭素数10
個のカプリン酸で交換した反応で73.1g であり、グリセ
リドのモル回収率はそれぞれ91.3%、90.8%であったこ
とから、このエステル交換反応によって加水分解はほと
んど起こっていないことがわかった。なお、固定化酵素
を30回繰り返して使用しても、酵素活性の低下はまった
く認められなかった。
【0037】
【発明の効果】本発明により、高度不飽和脂肪酸を高濃
度に含有するトリグリセリドを含む油脂を製造すること
ができる。種々の生理活性作用を有する高度不飽和脂肪
酸濃縮トリグリセリドを回収率よく効率的に濃縮できる
ことは、医薬品、生化学試薬、食品等に幅広く利用する
ことが可能なことから、本発明は、産業上極めて有用で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 丸山 一輝 茨城県つくば市和台16番2 マルハ株式会 社中央研究所内 (72)発明者 椎名 智香子 茨城県つくば市和台16番2 マルハ株式会 社中央研究所内 (72)発明者 中山 秀 茨城県つくば市和台16番2 マルハ株式会 社中央研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 油脂及び中鎖脂肪酸の存在下で、トリグ
    リセリドの1,3−位のエステル結合にのみに作用するリ
    パーゼを作用させることを特徴とする高度不飽和脂肪酸
    高含有トリグリセリドを含む油脂の製造方法。
  2. 【請求項2】 油脂及び中鎖脂肪酸の存在下で、トリグ
    リセリドの1,3−位のエステル結合にのみに作用する固
    定化リパーゼを作用させて反応混合物を得るとともに該
    反応混合物中から固定化酵素を回収し、次に、新たに油
    脂及び中鎖脂肪酸を加え、該油脂及び該中鎖脂肪酸の存
    在下で前記回収した固定化リパーゼを作用させて反応混
    合物を得る工程を繰り返し行うことにより、高度不飽和
    脂肪酸高含有トリグリセリドを95%以上含有する油脂を
    得ることを特徴とする高度不飽和脂肪酸高含有トリグリ
    セリドを含む油脂の製造方法。
  3. 【請求項3】 中鎖脂肪酸が、炭素数6〜12個を有する
    脂肪酸から選ばれるものである請求項1記載の高度不飽
    和脂肪酸高含有トリグリセリドを含む油脂の製造方法。
  4. 【請求項4】 炭素数6〜12個を有する中鎖脂肪酸が、
    カプリル酸又はカプリン酸である請求項3記載の高度不
    飽和脂肪酸高含有トリグリセリドを含む油脂の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 高度不飽和脂肪酸が、アラキドン酸、ド
    コサヘキサエン酸若しくはエイコサペンタエン酸又はこ
    れらの組合せである請求項1記載の高度不飽和脂肪酸高
    含有トリグリセリドを含む油脂の製造方法。
  6. 【請求項6】 油脂が、魚油、オキアミ、藻類又は菌類
    から抽出したものである請求項1記載の高度不飽和脂肪
    酸高含有トリグリセリドを含む油脂の製造方法。
JP7029745A 1995-02-17 1995-02-17 高度不飽和脂肪酸含有トリグリセリドを含む油脂の製造方法 Pending JPH08214891A (ja)

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Cited By (9)

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