JPH08212533A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JPH08212533A
JPH08212533A JP31658695A JP31658695A JPH08212533A JP H08212533 A JPH08212533 A JP H08212533A JP 31658695 A JP31658695 A JP 31658695A JP 31658695 A JP31658695 A JP 31658695A JP H08212533 A JPH08212533 A JP H08212533A
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雄一 瀬田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 通常の使用条件下のみならず、高温高湿度条
件下においても、摩擦係数の大幅な増加を防ぎ、使用環
境にかかわらず長年月の使用に耐える磁気記録媒体を提
供する。 【解決手段】 保護膜として、窒素を含有するカーボン
質であり、保護膜中の窒素濃度が、保護膜の厚さ方向に
異なり、基板側の層の窒素濃度よりも表面側の層の窒素
濃度が高い保護膜を形成する。 【効果】 窒素化保護膜のCSS耐久性を最も効率的に
発揮させるべく、保護膜の表面側の層のみに窒素を、そ
のCSS耐久性の向上に有効な範囲内で存在させ、保護
膜の基板側の層では、膜強度の低下を引き起こす窒素濃
度を少なく或いはゼロとする。これにより、保護膜の強
度を高く維持した上で、通常の使用条件下のみならず、
高温高湿度条件下においても優れたCSS耐久性を示す
磁気記録媒体が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気記録媒体に係
り、特に、通常の使用条件下のみならず、高温高湿度条
件下においても優れた耐久性を示す薄膜型磁気記録媒体
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】薄膜型磁気記録媒体は、通常、磁性金属
又はそれらの合金をメッキ、蒸着又はスパッタリング法
等により、非磁性基板上に被着することにより磁性層を
形成して製造される。
【0003】ところで、磁気記録媒体は、実使用時にお
いては、磁気ヘッドと磁気記録媒体との摺動によって摩
耗損傷を受け、この結果、摩擦係数の上昇や磁気特性上
の劣化を起こす。この欠点を解決する方法として、磁性
層上に保護膜や潤滑膜を設けることが提案され、既に実
用化されている。
【0004】従来、保護膜としては炭素膜、酸化物膜、
炭化物膜、窒化物膜又はほう化物膜などが用いられてい
る。また、潤滑膜を形成する潤滑剤としては、液体潤滑
剤と固体潤滑剤があるが、一般には、例えば、パーフル
オロポリエーテルや高級脂肪酸又はその金属塩などが用
いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】磁気記録媒体の実使用
時において、ディスク媒体は停止状態から急速に回転加
速され、これに伴い、浮上ヘッドスライダに浮力が与え
られてヘッドは浮上する。使用後に電源が切断される
と、ディスク媒体を回転させているモータが停止し、ヘ
ッドと媒体とが物理的に接触を起こす。このような動作
を繰り返し起こさせて耐久性を調べる試験をコンタクト
・スタート・ストップテスト(以下「CSSテスト」と
略す。)と呼ぶ。このCSSテストにおいて、従来の磁
気記録媒体では、CSSの回数を重ねるにつれて摩擦係
数が増加し、摩耗により表面に損傷を与えたり、なんら
かの原因でヘッドスライダーに浮力が働かず、高速回転
中でも摺動し、ヘッド及び媒体が破壊するヘッドクラッ
シュという現象を生ずるという問題がある。
【0006】また、最近では、高温高湿状態でCSSテ
ストを行い、その特性を評価することが行われている。
一般に、高温高湿状態のCSSは、通常の室温、常湿環
境での評価より厳しく、例えば、ヘッドがディスク媒体
にはりつく、いわゆる吸着状態が発生したり、摩耗の発
生が通常の環境より早いCSS回数で生じたりする。こ
の摩耗を抑えるために潤滑膜の厚さを厚くすることが考
えられるが、この場合には、ヘッドとディクス媒体との
間にメニスカスが形成され、吸着が発生しやすくなると
いう不具合がある。
【0007】本発明は上記の問題点を解決するためにな
されたものであり、通常の使用条件下のみならず、高温
高湿度条件下においても、摩擦係数の大幅な増加を防
ぎ、使用環境にかかわらず長年月の使用に耐える磁気記
録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体
は、非磁性基板上に強磁性金属薄膜が形成されると共
に、該強磁性金属薄膜上に保護膜が形成されてなる磁気
記録媒体において、該保護膜は、窒素を含有するカーボ
ン膜であり、かつ、該保護膜中の窒素濃度が保護膜の厚
さ方向に異なり、基板側の層の窒素濃度よりも表面側の
層の窒素濃度が高いことを特徴とする。
【0009】窒素をカーボン保護膜中に混入させること
による効果は耐久性の改善、特に高温高湿の状況下での
CSSライフの改善にある。
【0010】現在、保護膜として一般に使用されるの
は、水素化カーボン膜である。この膜は、通常の環境下
でのCSS耐久性には優れているが、高温高湿下では、
その原因は不明であるが性能が落ちる。しかし、カーボ
ン中に窒素を含有させる、或いは、水素化カーボン中に
窒素を含有させると、高温高湿下でのCSS耐久性が向
上する。この原因の詳細は明らかではないが、保護膜表
面の窒素と潤滑層との相互作用が強まることによるもの
と推定される。
【0011】しかしながら、保護膜の全膜厚に均等に窒
素を混合させた場合、CSS耐久性の向上に最も効果の
ある窒素濃度の範囲では、膜全体の強度が不足する。こ
れは窒素の濃度を増すに従って、膜の弾性率が低下する
ためと推定される。このため、かえってCSS耐久性が
低下する結果となる。
【0012】本発明においては、窒素化保護膜のCSS
耐久性を最も効率的に発揮させるべく、保護膜の表面側
の層のみに窒素を、そのCSS耐久性の向上に有効な範
囲内で存在させ、保護膜の基板側の層では、膜強度の低
下を引き起こす窒素濃度を少なく或いはゼロとする。
【0013】これにより、保護膜の強度を高く維持した
上で、通常の使用条件下のみならず、高温高湿度条件下
においても優れたCSS耐久性を示す磁気記録媒体が提
供される。
【0014】本発明の磁気記録媒体においては、CSS
耐久性の面から、保護膜の表面側の層の窒素濃度が4〜
30原子%であり、基板側の層の窒素濃度が0〜4原子
%であることが好ましい。また、膜特性の面から保護膜
の表面側の層の酸素濃度が5原子%以下であることが好
ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明につき更に詳細に
説明する。
【0016】まず、本発明における保護膜の形成方法に
ついて説明する。
【0017】本発明において、カーボン質保護膜中に窒
素を混入させる方法としては、保護膜をスパッタリング
により形成するに当り、スパッタガス(通常はArのよ
うな不活性ガスを用いる。)中に窒素ガス、一酸化窒素
ガス、二酸化窒素ガス、アンモニアガス等の窒素含有ガ
スを導入する方法、或いは、空気のような窒素ガス含有
の混合ガスを導入する方法が挙げられる。また、予め窒
素を含有させたカーボンターゲットを用いることもでき
る。これらのうち安価で毒性がなく、可燃性もない窒素
ガスを用いる方法が工業上有利である。
【0018】なお、窒素化カーボン膜の形成に当って
は、スパッタガス中に水素ガスや炭化水素ガスを同時に
混入させることにより、水素化かつ窒素化したカーボン
膜を形成することもできる。また、窒素ガス含有の混合
ガスとして空気を用いることで、窒素化かつ酸化したカ
ーボン膜を、更に水素ガスを混入することで窒素化、水
素化かつ酸化したカーボン膜を形成することができる。
【0019】これらの場合、スパッタガス中の空気の濃
度が高くなると形成されるカーボン膜中の酸素濃度も高
くなるが、膜中の酸素濃度が高くなりすぎると膜の特性
が劣化する。よって、スパッタガス中の空気濃度は、形
成されるカーボン膜の表面側の層の酸素濃度が1〜7原
子%程度、好ましくは5原子%以下となるように定める
のが望ましい。
【0020】本発明においては、保護膜としてこのよう
な窒素化カーボン膜を形成するに当り、保護膜の厚さ方
向で窒素濃度が異なり、保護膜の表面側の層の窒素濃度
が、保護膜の基板側の層(磁性層上に直接保護膜を形成
する場合には、磁性層との界面側の層)の窒素濃度より
も高い窒素化カーボン膜を形成する。
【0021】このように窒素濃度を保護膜の表面側と基
板側とで変化させる方法としては、カーボン膜をスパッ
タリング法で形成するに当り、スパッタガスの雰囲気を
分離可能な2つ以上のチャンバーにそれぞれカーボンタ
ーゲットを設置し、各チャンバー内のスパッタガスの窒
素含有量を変え、窒素濃度の低いスパッタガス雰囲気で
スパッタした後、窒素濃度の高いスパッタガス雰囲気で
スパッタするように、基板を順次の次のチャンバーに移
動させる。
【0022】この場合、真空状態を破らない連続真空状
態で、低濃度窒素化カーボン膜と高濃度窒素化カーボン
膜とを積層形成することが2層間付着性を良好に保つ上
で好ましい。また、2つのチャンバー間の分離は完全で
なくとも良く、この場合には、窒素濃度が膜の厚さ方向
に連続的に変化する窒素化カーボン膜が形成される。
【0023】なお、チャンバー間を移動させる他、バル
ブの切り換えにより、一つのチャンバー内において、窒
素濃度の低いスパッタガスを送給した後、窒素濃度の高
いスパッタガスを送給することによっても、本発明に係
る保護膜を形成することができる。
【0024】このようにして形成される保護膜の表面側
の層の窒素濃度は、Auger電子分光装置による表面
窒素濃度の測定値で4〜30原子%の範囲、特に5〜2
0原子%の範囲であることが好ましい。この窒素濃度が
4原子%未満であると、窒素混入による耐久性改善の効
果が顕著ではなく、また、30原子%より多い場合は保
護膜が脆くなり、耐久性がかえって低下する。
【0025】一方、保護膜の基板側の層の窒素濃度は、
保護膜の強度の面から0〜4原子%であることが好まし
い。
【0026】本発明においては、特に、保護膜は、窒素
濃度0〜4原子%の窒素化カーボン膜を厚さ100〜2
00Åに形成した後、窒素濃度4〜30原子%の窒素化
カーボン膜を厚さ50〜150Åに形成し、合計で15
0〜300Å程度の保護膜を形成するのが好ましい。
【0027】なお、本発明において、非磁性基板として
は特に制限はなく、通常、無電解めっき法により形成し
たニッケル−リン層を設けたアルミニウム合金板が用い
られるが、その他、銅、チタン等の金属基板、ガラス基
板、セラミック基板、炭素質基板又は樹脂基板を用いる
こともできる。
【0028】このような非磁性基板の表面には、下地層
として通常の場合、クロムをスパッタリングにより形成
する。このCr下地層の膜厚は通常50〜2000Åの
範囲とされる。
【0029】基板のCr下地層上に形成する強磁性金属
薄膜よりなる磁性層は、無電解めっき、スパッタリン
グ、蒸着等の方法によって形成される。この磁性層とし
ては、Co−P,Co−Ni−P,Co−Ni−Cr,
Co−Cr−Ta,Co−Ni−Pt,Co−Cr−P
t,Co−Cr−Pt−Ta系合金等の強磁性金属薄膜
が形成され、その膜厚は通常300〜700Å程度とさ
れる。
【0030】本発明においては、この磁性層上に上述の
方法に従って、保護膜を形成した後は、通常の場合、パ
ーフルオロポリエーテル等の潤滑剤を用いて、厚さ10
〜30Å程度の潤滑膜を形成する。
【0031】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えなり限
り以下の実施例により限定されるものではない。
【0032】実施例1〜8 表面の平均粗さが50〜60Åの直径3.5インチのア
ルミニウム合金製基板上に、スパッタリング法によりク
ロム下地層(厚さ400Å)、コバルト合金磁性層(厚
さ500Å)を形成し、次に保護膜として、水素化カー
ボン膜を150Åの厚さに形成し、引き続き隣接した別
チャンバー内で、水素化窒素化カーボン膜を50Åの厚
さに形成した。水素化カーボン膜は5μbarのスパッ
タ圧力で、Arガスに表1に示す割合で水素ガスを混合
させた混合ガスをスパッタガスとして、カーボンターゲ
ットを用いてスパッタリングすることにより形成した。
窒素化水素化カーボンは同じく5μbarのスパッタ圧
力で、Arガスに表1に示す割合で水素ガス及び窒素ガ
スを混合した混合ガスをスパッタガスとして、カーボン
ターゲットを用いてスパッタリングすることにより形成
した。
【0033】なお、実施例7,8においては、この窒素
化水素化カーボン膜の形成に当り、表1に示す酸素ガス
分率となるように更に空気を混合して、窒素化水素化酸
化カーボン膜を形成した。
【0034】この窒素化水素化カーボン膜上(或いは窒
素化水素化酸化カーボン膜)に、パーフルオロポリエー
テルの液体潤滑剤の膜厚を20Åの厚さに形成した。
【0035】得られたディスクについて、保護膜中の窒
素量をAuger電子分光装置を用いて求めた。その結
果、保護膜表面にはカーボンと窒素のみが検出され、感
度を考慮して求めた窒素濃度は表1に示す通りであっ
た。そのまま表面をArイオンでたたきながらエッチン
グし、深さ方向のプロファイルを求めた。窒素原子は磁
性層界面側では検出されなかった。
【0036】なお、実施例7,8のディスクについて、
保護膜表面の酸素濃度をAuger電子分光装置により
測定したところ、表1に示す値であった。
【0037】また、得られたディスクを用いてCSS試
験を行った。ヘッドには、押し付け荷重5gのAl2
3 ・TiCスライダの薄膜ヘッドを用いた。ディスクを
4500rpmで5秒間回転させた後、電源を切って2
5秒間放置するのをCSS1サイクルとした。試験中の
環境は常温常湿(25℃、40%)で開始し、CSS2
000サイクル後、昇温、昇湿して、60℃、80%の
雰囲気でCSSを更に2000サイクル行った。その
後、降温、降湿し、常温常湿に戻して試験を継続して行
った。以降、CSSサイクル2000回ごとに、試験環
境を25℃、40%と60℃、80%とで交互に変化さ
せた。試験サイクルはCSS20000回とし、CSS
20000回後の摩擦係数を測定した。また、試験後に
ディスク表面の傷、汚れの有無を表面観察した。
【0038】結果を表1に示す。
【0039】比較例1〜3 実施例1と同様の方法により下地層及び磁性層を作製し
た後、Arガスに表1に示す割合で窒素ガス及び水素ガ
スを混合した混合ガスをスパッタガスとして、膜の厚さ
方向で均一な窒素濃度を持つ水素化窒素化カーボン膜の
保護膜を厚さ200Åに形成した。その後、実施例1と
同様にパーフルオロポリエーテルの潤滑膜を形成した。
【0040】得られたディスクについて、実施例1と同
様にして保護膜中の窒素濃度の測定及びCSS試験を行
い、結果を表1に示した。
【0041】比較例4,5 実施例1と同様の方法により下地層及び磁性層を作製し
た後、Arガスに表1に示す割合で水素ガスを混合した
混合ガスをスパッタガスとして、水素化カーボン膜の保
護膜を厚さ200Åに形成した。その後、実施例1と同
様にパーフルオロポリエーテルの潤滑膜を形成した。
【0042】得られたディスクについて、実施例1と同
様にして保護膜中の窒素濃度の測定及びCSS試験を行
い、結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】表1より、本発明によれば、通常の使用条
件下のみならず、高温高湿条件下においても摩擦係数の
大幅な増加を防ぎ、使用環境にかかわらず長年月の使用
に耐える磁気記録媒体が得られることが明らかである。
【0045】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の磁気記録媒
体によれば、通常の使用条件下のみならず、高温高湿度
条件下においても優れた耐久性を示す磁気記録媒体が提
供される。
【0046】請求項2の方法によれば、より一層耐久性
に優れた磁気記録媒体を得ることができる。
【0047】請求項3の方法によれば、高特性の磁気記
録媒体を得ることができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基板上に強磁性金属薄膜が形成さ
    れると共に、該強磁性金属薄膜上に保護膜が形成されて
    なる磁気記録媒体において、該保護膜は、窒素を含有す
    るカーボン膜であり、かつ、該保護膜中の窒素濃度が保
    護膜の厚さ方向に異なり、基板側の層の窒素濃度よりも
    表面側の層の窒素濃度が高いことを特徴とする磁気記録
    媒体。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の磁気記録媒体におい
    て、保護膜の表面側の層の窒素濃度が4〜30原子%で
    あり、基板側の層の窒素濃度が0〜4原子%であること
    を特徴とする磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の磁気記録媒体におい
    て、保護膜の表面側の層の酸素濃度が5原子%以下であ
    ることを特徴とする磁気記録媒体。
JP31658695A 1994-12-06 1995-12-05 磁気記録媒体 Expired - Lifetime JP3934697B2 (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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