JPH08201339A - 電気化学式ガスセンサ - Google Patents

電気化学式ガスセンサ

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JPH08201339A
JPH08201339A JP7010815A JP1081595A JPH08201339A JP H08201339 A JPH08201339 A JP H08201339A JP 7010815 A JP7010815 A JP 7010815A JP 1081595 A JP1081595 A JP 1081595A JP H08201339 A JPH08201339 A JP H08201339A
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JP
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electrode
reference electrode
sensor
hydrogen
gas sensor
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JP7010815A
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Noriyuki Yamaga
範行 山鹿
Toru Fujioka
透 藤岡
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Panasonic Electric Works Co Ltd
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Matsushita Electric Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 基準電位である参照極の電位が周り環境の反
応活性ガスや温度・湿度雰囲気の変化等の影響を受けて
シフトしたりふらついたりすることをなくし、安定して
動作させることができる電気化学式ガスセンサを提供す
る。 【構成】 絶縁基板1の表面に参照極4を含む複数の電
極を設けると共に各電極及び電極間を覆う固体電解質膜
6を設けて形成される電気化学式ガスセンサに関する。
このような電気化学式ガスセンサにおいて、参照極4と
他の少なくとも一つの電極7との間に直流電源8を設け
る。参照極4上で水素を発生させて参照極4を安定な水
素電極とすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気化学式ガスセンサ
に関し、詳しくは、作用極、対極、参照極などの電極を
一連に被覆する固体電解質膜を備えて形成され、作用極
と対極で起こるガスの電気化学反応を利用して、雰囲気
中に含まれる一酸化炭素、水素、アルコール、窒素酸化
物、硫黄酸化物などの被検ガスを検知するために使用さ
れる電気化学式ガスセンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】絶縁基板の上に作用極、対極、参照極な
どの電極を設け、これらの電極を固体電解質膜で被覆す
ることによって繋いで形成される電気化学式ガスセンサ
は、例えば特開昭53−115293号公報や特開昭6
4−88354号公報等に開示されているように、特定
のガスが電極において電気化学反応する際に流れる電流
をもって、雰囲気中のガス、例えば一酸化炭素、水素、
アルコール、窒素酸化物、硫黄酸化物などを検知できる
ようにしたものであり、被検ガス種の選択により火災報
知、環境保全、工業用等の広い分野での利用が期待され
ている。
【0003】この種のガスセンサは、図13に示すよう
に、一枚の絶縁基板1の表面に作用極2、対極3及び参
照極4の少なくとも3個の電極を、各電極間に絶縁基板
1の表面が露出する露出面5を介在させるように設ける
と共に、これらの電極と露出面5を一連の固体電解質膜
6で被覆して形成されているものであり、この構成から
して、半導体製造技術の分野で利用されてきた薄膜形成
技術や微細加工技術でもって、極めて小型で且つ精密に
製造することができるために、他のセンサに比べて優れ
ている点が多い。このガスセンサの一般的な作用機構
は、作用極2に一定の電圧をかけると、検出対象とする
ガス成分が作用極2で酸化又は還元反応を起こすと共
に、このとき生成されたイオンが固体電解質膜6内を移
動して対極3で還元又は酸化反応を起こし、そしてこの
酸化還元反応に伴って作用極2と対極3の間を流れる電
流を測定することによって、被検ガスの検出及び定量を
おこなことができる、というものである。
【0004】ここで、イオンを伝達させる電解質とし
て、従来は液体電解質やゲル状電解質を用いていたが、
これらのものは液漏れや溶媒の蒸発が生じるためにガス
センサの耐久性や信頼性に劣るという問題があり、この
問題点を解決するために、上記のように固体電解質膜6
を用いるガスセンサの開発が進められてきたのである。
この固体電解質膜6としては無機あるいは有機のものが
使用できるが、電解質として安定なパーフルオロスルホ
ネートポリマーが推奨される。
【0005】一方、参照極4は、作用極2の電位を一定
に維持するための基準電極としての機能を有する。すな
わち、電気化学反応を起こさせるために必要な作用極2
の電位は、被検ガスの種類によって異なるので、被検ガ
スに応じて作用極2の電位を所定の一定値に保つ必要が
あり、このために参照極4を基準にして作用極2に加え
る電圧を制御するのである。そして一般の液体電解質を
用いた電気化学システムにおいて参照極は水素電極であ
るが、これは水素ガスを必要とし取り扱いが不便である
ために、実用的には飽和カロメル電極が多用されてい
る。しかし飽和カロメル電極は形状が大きく、小型化を
目指したガスセンサには適用することが難しく、このた
めに固体電解質膜6を用いるガスセンサの参照極4にお
いては固体電解質内の空気の平衡反応を用いた空気極を
利用することが行なわれている。しかしながら、この空
気極はガスセンサの周り環境の温度・湿度の変化や空気
以外のより活性なガスの影響を大きく受け易く、基準と
なるべき電位が変動してしまい、この結果、ガスセンサ
の安定性が大きく損なわれるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の点に鑑
みてなされたものであり、基準電位である参照極の電位
が周り環境の反応活性ガスや温度・湿度雰囲気の変化等
の影響を受けてシフトしたりふらついたりすることをな
くし、安定して動作させることができる電気化学式ガス
センサを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、絶縁基板1の
表面に参照極4を含む複数の電極を設けると共に各電極
及び電極間を覆う固体電解質膜6を設けて形成される電
気化学式ガスセンサにおいて、参照極4と他の少なくと
も一つの電極7との間に直流電源8を設けて成ることを
特徴とするものである。
【0008】上記直流電源8は電圧が1.23V〜1.
5Vであることが好ましい。また上記参照極4は白金で
形成することが好ましく、さらに白金黒で形成すること
がより好ましい。また、直流電源8を設けた参照極4と
他の電極7及びこの電極4,7間を覆う固体電解質膜6
の厚みを他の部分よりも厚くするようにするのが好まし
い。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。図1は本
発明に係る電気化学式ガスセンサの一例を示すものであ
り、絶縁基板1の片側の表面に複数の電極が設けてあ
る。この複数の電極として図1のものは、作用極2と、
対極3と、参照極4と、第四の電極7とで構成するよう
にしてあるが、勿論これに限定されるものではない。参
照極4と第四の電極7は作用極2と対極3の間に配置さ
れるものであり、これらの各電極の表面及び各電極間の
絶縁基板1の露出面5に一連の固体電解質膜6を設けて
被覆してある。作用極2、対極3、参照極4、第四の電
極7の各電極は一部を外部機器の接続に用いられる端子
部2a,3a,4a,7aとして露出させてあり、固体
電解質膜6で被覆される部分が電気化学反応をおこなわ
せる反応部2b,3b,4b,7bとなるものである。
【0010】絶縁基板1としてはアルミナ、窒化アルミ
ニウム、シリコン等のセラミック製基板や、エポキシ樹
脂、フェノール樹脂等の樹脂製基板を使用することがで
きる。また固体電解質膜6は含水すると導電性を有する
化合物からなるものであり、パーフルオロスルホネート
ポリマー等の高分子化合物や、あるいは無機化合物を用
いることができる。パーフルオロスルホネートポリマー
からなる固体電解質膜6は、パーフルオロスルホネート
ポリマーを絶縁基板1の表面に塗布する等の手段で形成
することができる。さらに作用極2、対極3、参照極
4、第四の電極7の各電極は、真空蒸着やスパッタリン
グ等の通常の金属薄膜形成手段で形成することができ
る。これらの電極の材料は特に限定されないが、参照極
4は白金あるいは白金黒で形成するのが好ましい。
【0011】この複数の電極のうち、作用極2、対極
3、参照極4の三つの電極にポテンショスタット11を
接続して、電気化学式ガスセンサの出力を定電位電解法
で検知するようにしてあり、これは一般の電気化学式ガ
スセンサに従来から使用されているものをそのまま用い
ることができる。そして本発明では、この他に、参照極
4と第四の電極7との間に直流電源8が設けてある。こ
の直流電源8は参照極4を陰極とし、第四の電極7を陽
極とするように接続してある。図1の実施例では参照極
4と一つの電極7との間に直流電源8を設けるようにし
たが、電極7を複数設けてこの複数の電極7と参照極4
との間に直流電源8を設けるようにしてもよい。
【0012】上記のように形成される本発明に係る電気
化学式ガスセンサにあって、参照極4は検知対象ガスに
対応して作用極2の電位を一定に維持するための基準電
極としての機能を有するものであり、参照極4と第四の
電極7との間に直流電源8を接続することによって、参
照極4を安定な水素電極とすることができるようにして
ある。すなわち、直流電源8を参照極4上で水素が発生
する電位に設定すると、固体電解質膜6内の水素イオン
が 2H+ +2e- → H2 の式に従って水素ガスとなり、水素を発生する。この電
極反応の起こる電位は、0V(SHE;標準水素電極)
である。すなわち、この電極(参照極4)は電位0V
(SHE)の動的な水素電極であり、この水素発生反応
が起こる限りにおいて、周りの環境がどのように変化し
ようと電位0V(SHE)となる。このように参照極4
と第四の電極7との間に直流電源8を接続して参照極4
を安定な水素電極とすることによって、参照極4の電位
が周り環境の反応活性ガスや温度・湿度雰囲気の変化等
の影響を受けてシフトしたりふらついたりすることがな
くなり、センサ感度の出力の不安定さを解消することが
できると共にセンサ感度の出力異常を防ぐことができる
のである。
【0013】ここで、既述のように直流電源8は参照極
4を陰極(カソード)とし、第四の電極7を陽極(アノ
ード)となるように接続してある。そして参照極4で
は、 (陰極反応) H2 ← 2H+ +2e- 陰極電位 Ec=0V(vsSHE) 電極7では、 (陽極反応) H2 O → 2H+ +1/2O2 +2e
- 陽極電位 Ea=1.23V(vsSHE) の反応が起こり、全反応は、 (全反応) H2 O → H2 +1/2O2 となる。この場合、陽極反応と陰極反応の酸化還元電位
の差が理論分解電圧となる。
【0014】 理論分解電圧 Ed=Ea−Ec=1.23V 従って、参照極4と電極7との間に1.23V以上の電
位差を与えると、参照極4に水素が発生し、参照極4は
水素電極となる。しかし、分解電圧が1.5Vを超える
と、参照極4上に多量の水素が発生して水素の一部が作
用極2の上に流れ、作用極2で酸化反応を受けるおそれ
があり、その分、電気化学式ガスセンサの感度の誤差と
なるおそれがある。このため本発明では、直流電源8の
電圧が少なくとも1.23V以上、1.5V以下である
ことが好ましい。
【0015】本出願人は従前に、特開平1−21652
号公報において、参照極4を金で作成することによって
参照極4の電位を安定化する技術を提供したが、本発明
では上記のように参照極4と他の電極7との間に直流電
源8を接続して参照極4を安定な水素電極とすることに
よって、参照極4の電位の安定化を達成しているため
に、参照極4を金で作成する必要はなく、本発明では既
述のように参照極4は白金あるいは白金黒で作成するの
が好ましい。
【0016】白金は水素電極反応に最も活性な電極触媒
であり、従って参照極4を白金で作成すれば、金など他
の金属触媒を使用する場合に比べて、水素発生反応の平
衡状態に達するまでの時間が早く、より安定な参照極4
となるのである。しかも作用極2や対極3は白金で作成
するのが一般的であるので、参照極4を同じ白金で作成
できれば、真空蒸着やスパッタリング等による電極作成
が容易になり、電気化学式ガスセンサーの作成がより簡
単になるものである。
【0017】また、白金黒は白金よりも有効面積が一桁
から二桁広くなるので、白金の場合よりも水素発生反応
の平衡状態に達する時間が一層早くなり、従って参照極
4を白金黒で作成すれば、より一層安定な参照極4とな
るものである。白金黒の作成は、例えば、絶縁基板の片
面に白金で参照極4を形成した後、この参照極4を塩化
白金酸溶液に浸漬して電解処理することによって、白金
の表面に白金黒を電着させるようにしておこなうことが
できるが、勿論、一般的に用いられる他の方法で作成し
てもよい。
【0018】図2は本発明の他の例を示すものであり、
直流電源8を設けた参照極4と他の電極7及びこの電極
4,7間を覆う部分の固体電解質膜6の厚みT1 が、作
用極2を覆う部分の固体電解質膜6の厚みT2 よりも厚
くなるように、固体電解質膜6を形成するようにしてあ
る。このように直流電源8を設けた参照極4と他の電極
7及びこの電極4,7間を覆う部分の固体電解質膜6の
厚みT1 を厚くすることによって、電極4,7間のイン
ピーダンスが低下して参照極4上の水素発生の電極反応
がより安定になり、特に雰囲気が低湿度状態になるとき
に固体電解質膜6のインピーダンスの上昇による水素電
極反応の阻害を防ぐことができ、参照極4の電位を安定
化させることができるものである。この厚みT1 は5〜
10μmの範囲に設定するのが好ましい。また作用極2
を覆う部分の固体電解質膜6の厚みT2 を厚くしないの
は、この部分の固体電解質膜6の厚みT2 を厚くすると
作用極2での検知ガスの拡散が悪くなってセンサ感度が
低下するためである。この厚みT2 は0.5〜1μmの
範囲に設定するのが好ましい。
【0019】
【作用】請求項1の発明では、参照極4と他の電極7と
の間に直流電源8を設けることによって、参照極4上で
水素を発生させて参照極4を安定な水素電極とすること
ができる。請求項2の発明では、直流電源8の電圧を
1.23V〜1.5Vにすることによって、参照極4で
水素を過多になることなく安定して発生させることがで
きる。
【0020】請求項3の発明では、参照極4を白金で形
成することによって、水素電極反応に最も活性な電極触
媒である白金で作成した参照極4において水素発生反応
が平衡状態に達するまでの時間を早くすることができ
る。請求項4の発明では、参照極4を白金黒で形成する
ことによって、白金よりも有効面積が広い白金黒で作成
した参照極4において水素発生反応が平衡状態に達する
時間を一層早くすることができる。
【0021】請求項5の発明では、直流電源8を設けた
参照極4と他の電極7及びこの電極4,7間を覆う固体
電解質膜6の厚みを他の部分よりも厚くすることによっ
て、この電極4,7間のインピーダンスが低下して参照
極4上の水素発生の電極反応がより安定になり、特に雰
囲気が低湿度状態になるときに固体電解質膜6のインピ
ーダンスの上昇による水素電極反応の阻害を防ぐことが
できる。
【0022】
【実施例】次に、本発明を実施例によって例証する。 (実施例1及び従来例)シリコン基板で作成した絶縁基
板1の表面にスパッタリング法で白金を蒸着することに
よって、図1に示すように作用極2、対極3、参照極4
の3電極と、第四の電極7の4つの電極を設け、次に、
その上を覆うようにポリパーフルオロスルホネートポリ
マーの5wt%のアルコール溶液を15μl塗布し、室
温で一昼夜乾燥させた後に100℃で2時間熱処理して
厚み1μmの固体電解質膜6を設けることによって、図
1のような電気化学式ガスセンサ素子を作成した。そし
て作用極2、対極3、参照極4の3電極間にはポテンシ
ョスタット11を接続し、参照極4と第四の電極7との
間には直流電源8を接続した。この直流電源8には参照
極4上に水素が発生するように1.4Vの電位差が設け
てある。…(実施例1) 比較のために、第四の電極7及び直流電源8を設けない
他は、実施例と同様にして図13のような電気化学式ガ
スセンサ素子を作成し、作用極2、対極3、参照極4の
3電極間にはポテンショスタットを接続した。…(従来
例) 図3(a)は実施例1の電気化学式ガスセンサ素子のC
O100ppmにおけるセンサの応答波形を、図3
(b)は従来例の電気化学式ガスセンサ素子のCO10
0ppmにおけるセンサの応答波形をそれぞれ示し、図
4(a)は実施例1の電気化学式ガスセンサ素子のCO
1000ppmにおけるセンサの応答波形を、図4
(b)は従来例の電気化学式ガスセンサ素子のCO10
00ppmにおけるセンサの応答波形をそれぞれ示すも
のである。
【0023】図3(a)(b)にみられるように、CO
濃度が100ppmと低い場合には、実施例1のものも
従来例のものもCOガスに応答した波形が得られてい
る。しかし、CO濃度が1000ppmと高濃度になる
と、図4(a)(b)にみられるように、実施例1のも
のではCOガスに応答した波形が得られるのに対し、従
来例のものでは、初期はCOガスのみに応答している
が、直ぐにこのCOガスが参照極4の電位に影響を与え
てあたかも還元が起こったような応答波形を示し、正確
なCO濃度にあたるセンサ出力を与えていない。このよ
うに、実施例1のものはCO濃度が低濃度でも高濃度で
もCOの起因したセンサの応答波形を得ることができ、
安定したセンサ出力が得られることが確認される。
【0024】(実施例2及び比較例1,2)実施例1と
同様にして図1のような電気化学式ガスセンサ素子を作
成し、参照極4と第四の電極7との間に直流電源8を接
続した。この直流電源8の電位差は1.4Vとした。…
(実施例2) 実施例1と同様にして図1のような電気化学式ガスセン
サ素子を作成し、参照極4と第四の電極7との間に直流
電源8を接続した。この直流電源8の電位差は1.0V
とした。…(比較例1) 実施例1と同様にして図1のような電気化学式ガスセン
サ素子を作成し、参照極4と第四の電極7との間に直流
電源8を接続した。この直流電源8の電位差は1.7V
とした。…(比較例2) 図5は実施例2と比較例1,2のCO1000ppmに
おけるセンサの応答波形を示すものであり、図5(a)
は実施例2、図5(b)は比較例1、図5(c)は比較
例2の応答波形である。
【0025】電位差を1.4Vとした実施例2のもので
は図5(a)にみられるように安定なセンサ応答波形が
得られるが、電位差が1.0Vの比較例1のものでは図
5(b)にみられるように、前記従来例の場合と同様
に、途中から還元反応が起こったような奇妙な応答波形
を示し、正確なセンサ出力を与えないものであった。こ
れは、水素の発生の理論分解電圧が1.23Vであるた
め、電位差1.0Vで参照極4が十分な水素電極となっ
ていないためであると説明することができる。
【0026】また電位差を1.7Vにした場合には、電
位差1.0Vの比較例1のような奇妙な応答波形は示さ
ないが、図5(c)にみられるようにCOが存在しない
場合のブランクの電流値が極端に大きくなっているもの
であった。これは、参照極4上で発生した水素の一部が
作用極2側へ拡散していき、水素の酸化反応が起こった
ものと説明することができる。
【0027】図6は、直流電源8の電位差とセンサのブ
ランク電流との関係を測定した結果を示すものであり、
直流電源8の電位差が1.5Vを超えるところからブラ
ンク電流は大きくなることが分かる。以上のことから、
直流電源8の電位差が1.23V〜1.5Vの範囲内に
設定した実施例2のものは安定なセンサ波形を得ること
ができ、安定したセンサ出力が得られることが確認され
る。
【0028】(実施例3及び比較例3)実施例1と同様
にして図1のような電気化学式ガスセンサ素子を作成
し、参照極4と第四の電極7との間に電位差1.4Vの
直流電源8を接続した。ここで、参照極4の電極材料は
白金である(他の極も白金)。…(実施例3) 参照極4の電極材料として金を用いる他は(他の極は白
金)、実施例1と同様にして図1のような電気化学式ガ
スセンサ素子を作成し、参照極4と第四の電極7との間
に電位差1.4Vの直流電源8を接続した。…(比較例
3) 図7及び図8は実施例3と比較例3のCO1000pp
mにおけるセンサの応答波形を示すものであり、図7
(a)はセンサ電源をONにしてから0.5時間後の実
施例3の応答波形、図7(b)はセンサ電源をONにし
てから0.5時間後の比較例3の応答波形である。図7
(c)はセンサ電源をONにしてから1.0時間後の実
施例3の応答波形、図7(d)はセンサ電源をONにし
てから1.0時間後の比較例3の応答波形である。図8
(a)はセンサ電源をONにしてから3.0時間後の実
施例3の応答波形、図8(b)はセンサ電源をONにし
てから3.0時間後の比較例3の応答波形である。図8
(c)はセンサ電源をONにしてから5.0時間後の実
施例3の応答波形、図8(d)はセンサ電源をONにし
てから5.0時間後の比較例3の応答波形である。
【0029】図7及び図8にみられるように、参照極4
の電極材料として金を用いた比較例3のものは、十分な
センサ応答波形を得るのに5.0時間を要するのに対し
て、参照極4の電極材料として白金を用いた実施例3の
ものは電源投入後、1.0時間後には正常なセンサ応答
波形が観測されることが分かる。 (実施例4及び比較例4)実施例1と同様にして図1の
ような電気化学式ガスセンサ素子を作成し、参照極4と
第四の電極7との間に電位差1.4Vの直流電源8を接
続した。ここで、参照極4は、絶縁基板1に形成した白
金を塩化白金酸溶液に浸漬して電解処理することによっ
て白金の表面に白金黒を付着させるようにして、白金黒
で作成した(他の極は白金)。…(実施例4) 実施例1と同様にして図1のような電気化学式ガスセン
サ素子を作成し、参照極4と第四の電極7との間に電位
差1.4Vの直流電源8を接続した。ここで、参照極4
の電極材料は白金である(他の極も白金)。…(比較例
4) 図9及び図10は実施例4と比較例4のCO1000p
pmにおけるセンサの応答波形を示すものであり、図9
(a)はセンサ電源をONにしてから5分後の実施例4
の応答波形、図9(b)はセンサ電源をONにしてから
5分後の比較例4の応答波形である。図9(c)はセン
サ電源をONにしてから10分後の実施例4の応答波
形、図9(d)はセンサ電源をONにしてから10分後
の比較例4の応答波形である。図10(a)はセンサ電
源をONにしてから30分後の実施例4の応答波形、図
10(b)はセンサ電源をONにしてから30分後の比
較例4の応答波形である。図10(c)はセンサ電源を
ONにしてから60分後の実施例4の応答波形、図10
(d)はセンサ電源をONにしてから60分後の比較例
4の応答波形である。
【0030】図9及び図10にみられるように、参照極
4の電極材料として白金を用いた比較例4のものは、十
分なセンサ応答波形を得るのに60分を要するのに対し
て、参照極4の電極材料として白金黒を用いた実施例4
のものは電源投入後、10分後には正常なセンサ応答波
形が観測されることが分かる。 (実施例5及び比較例5)実施例1と同様にして電気化
学式ガスセンサ素子を作成するにあたって、参照極4と
第四の電極7を覆う部分の固体電解質膜6の厚みT1
5μmに、作用極2を覆う部分の固体電解質膜6の厚み
2 を1μmにして、図2に示すような電気化学式ガス
センサ素子を作成し、参照極4と第四の電極7との間に
電位差1.4Vの直流電源8を接続した。…(実施例
5) 実施例1と同様にして、1μmの均一な厚みの固体電解
質膜6を設けた図1のような電気化学式ガスセンサ素子
を作成し、参照極4と第四の電極7との間に電位差1.
4Vの直流電源8を接続した。…(比較例5) 実施例5及び比較例5の電気化学式ガスセンサの耐湿度
特性を評価するため、湿度雰囲気が20%、40%、6
0%、80%に調湿されたアクリル樹脂ボックス内に電
気化学式ガスセンサを入れ、CO濃度1000ppmの
センサ感度を測定した。結果を図11及び図12に示
す。図11(a)は湿度80%のときの実施例5のセン
サ応答波形、図11(b)は湿度80%のときの比較例
5のセンサ応答波形である。図11(c)は湿度60%
のときの実施例5のセンサ応答波形、図11(d)は湿
度60%のときの比較例5のセンサ応答波形である。図
12(a)は湿度40%のときの実施例5のセンサ応答
波形、図12(b)は湿度40%のときの比較例5のセ
ンサ応答波形である。図12(c)は湿度20%のとき
の実施例5のセンサ応答波形、図12(d)は湿度20
%のときの比較例5のセンサ応答波形である。
【0031】図11及び図12にみられるように、比較
例5のものは、湿度が40%、20%と低湿度になると
十分に安定な応答波形を得ることができなくなるのに対
して、直流電源8を接続した参照極4と第四の電極7を
覆う部分の固体電解質膜6の厚みT1 を厚くした実施例
5のものは、湿度20〜80%の広範囲な湿度範囲で安
定な応答特性を示すことが分かる。
【0032】
【発明の効果】上記のように請求項1の発明は、絶縁基
板の表面に参照極を含む複数の電極を設けると共に各電
極及び電極間を覆う固体電解質膜を設けて形成される電
気化学式ガスセンサにおいて、参照極と他の少なくとも
一つの電極との間に直流電源を設けるようにしたので、
参照極上で水素を発生させて参照極を安定な水素電極と
することができ、参照極の電位が周り環境の反応活性ガ
スや温度・湿度雰囲気の変化等の影響を受けてシフトし
たりふらついたりすることをなくし、センサ感度の出力
の不安定さを解消することができると共にセンサ感度の
出力異常を防ぐことができるものであり、安定したセン
サ感度を得ることができるものである。
【0033】また請求項2の発明は、直流電源の電圧を
1.23V〜1.5Vに設定するようにしたので、参照
極で水素を過多になることなく安定して発生させること
ができるものであり、参照極で発生した多量の水素の一
部が作用極の上に流れてセンサ感度の誤差となることを
防ぐことができ、参照電極電位を安定化してセンサ感度
の出力の不安定さを解消し、センサ感度の出力異常を防
ぐことができるものである。
【0034】また請求項3の発明は、参照極を白金で形
成するようにしたので、水素電極反応に最も活性な電極
触媒である白金で作成した参照極において水素発生反応
が平衡状態に達するまでの時間を早くすることができ、
センサ電源をONにした初期から参照極電圧を安定にし
てセンサ感度の出力の不安定さを解消し、センサ感度の
出力異常を防ぐことができるものである。
【0035】また請求項4の発明は、参照極を白金黒で
形成するようにしたので、白金よりも有効面積が広い白
金黒で作成した参照極において水素発生反応が平衡状態
に達する時間を一層早くすることができ、センサ電源を
ONにした初期からさらに早く参照極電圧を安定にして
センサ感度の出力の不安定さを解消し、センサ感度の出
力異常を防ぐことができるものである。
【0036】また請求項5の発明は、直流電源を設けた
参照極と他の電極及びこの電極間を覆う固体電解質膜の
厚みを他の部分よりも厚くするようにしたので、この電
極間のインピーダンスが低下して参照極上の水素発生の
電極反応をより安定にすることができ、低湿度の環境に
置かれた場合にも固体電解質膜のインピーダンスの上昇
による水素電極反応の阻害を防いで参照極電位を安定さ
せ、センサ感度の出力の不安定さを解消して、センサ感
度の出力異常を防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電気化学式ガスセンサの一例を示
すものであり、(a)は概略平面図、(b)は概略正面
図である。
【図2】本発明に係る電気化学式ガスセンサの他例を示
すものであり、(a)は概略平面図、(b)は概略正面
図である。
【図3】(a)は実施例1の電気化学式ガスセンサ素子
のCO100ppmにおけるセンサの応答波形を示すグ
ラフ、(b)は従来例の電気化学式ガスセンサ素子のC
O100ppmにおけるセンサの応答波形示すグラフで
ある。
【図4】(a)は実施例1の電気化学式ガスセンサ素子
のCO1000ppmにおけるセンサの応答波形を示す
グラフ、(b)は従来例の電気化学式ガスセンサ素子の
CO1000ppmにおけるセンサの応答波形を示すグ
ラフである。
【図5】実施例2と比較例1と比較例2のCO1000
ppmにおける電気化学式ガスセンサの応答波形を示す
ものであり、(a)は電位差1.4Vにおける実施例2
の応答波形を示すグラフ、(b)は電位差1.0Vにお
ける比較例1の応答波形を示すグラフ、(c)は電位差
1.7Vにおける比較例2の応答波形を示すグラフであ
る。
【図6】直流電源の電位差とセンサのブランク電流との
関係を示すグラフである。
【図7】実施例3と比較例3のCO1000ppmにお
ける電気化学式ガスセンサの応答波形を示すものであ
り、(a)はセンサ電源をONにしてから0.5時間後
の実施例3の応答波形を示すグラフ、(b)はセンサ電
源をONにしてから0.5時間後の比較例3の応答波形
を示すグラフ、(c)はセンサ電源をONにしてから
1.0時間後の実施例3の応答波形を示すグラフ、
(d)はセンサ電源をONにしてから1.0時間後の比
較例3の応答波形を示すグラフである。
【図8】実施例3と比較例3のCO1000ppmにお
ける電気化学式ガスセンサの応答波形を示すものであ
り、(a)はセンサ電源をONにしてから3.0時間後
の実施例3の応答波形のグラフ、(b)はセンサ電源を
ONにしてから3.0時間後の比較例3の応答波形のグ
ラフ、(c)はセンサ電源をONにしてから5.0時間
後の実施例3の応答波形のグラフ、(d)はセンサ電源
をONにしてから5.0時間後の比較例3の応答波形の
グラフである。
【図9】実施例4と比較例4のCO1000ppmにお
けるセンサの応答波形を示すものであり、(a)はセン
サ電源をONにしてから5分後の実施例4の応答波形の
グラフ、(b)はセンサ電源をONにしてから5分後の
比較例4の応答波形のグラフ、(c)はセンサ電源をO
Nにしてから10分後の実施例4の応答波形のグラフ、
(d)はセンサ電源をONにしてから10分後の比較例
4の応答波形のグラフである。
【図10】実施例4と比較例4のCO1000ppmに
おけるセンサの応答波形を示すものであり、(a)はセ
ンサ電源をONにしてから30分後の実施例4の応答波
形のグラフ、(b)はセンサ電源をONにしてから30
分後の比較例4の応答波形のグラフ、(c)はセンサ電
源をONにしてから60分後の実施例4の応答波形のグ
ラフ、(d)はセンサ電源をONにしてから60分後の
比較例4の応答波形のグラフである。
【図11】実施例5と比較例5のCO1000ppmに
おけるセンサの応答波形を示すものであり、(a)は湿
度80%のときの実施例5のセンサ応答波形のグラフ、
(b)は湿度80%のときの比較例5のセンサ応答波形
のグラフ、(c)は湿度60%のときの実施例5のセン
サ応答波形のグラフ、(d)は湿度60%のときの比較
例5のセンサ応答波形のグラフである。
【図12】実施例5と比較例5のCO1000ppmに
おけるセンサの応答波形を示すものであり、(a)は湿
度40%のときの実施例5のセンサ応答波形のグラフ、
(b)は湿度40%のときの比較例5のセンサ応答波形
のグラフ、(c)は湿度20%のときの実施例5のセン
サ応答波形のグラフ、(d)は湿度20%のときの比較
例5のセンサ応答波形のグラフである。
【図13】従来の電気化学式ガスセンサの一例を示すも
のであり、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図で
ある。
【符号の説明】
1 絶縁基板 2 作用極 3 対極 4 参照極 6 固体電解質膜 7 電極 8 直流電源

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絶縁基板の表面に参照極を含む複数の電
    極を設けると共に各電極及び電極間を覆う固体電解質膜
    を設けて形成される電気化学式ガスセンサにおいて、参
    照極と他の少なくとも一つの電極との間に直流電源を設
    けて成ることを特徴とする電気化学式ガスセンサ。
  2. 【請求項2】 直流電源の電圧が1.23V〜1.5V
    であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学式ガ
    スセンサ。
  3. 【請求項3】 参照極が白金で形成されていることを特
    徴とする請求項1又は2に記載の電気化学式ガスセン
    サ。
  4. 【請求項4】 参照極が白金黒で形成されていることを
    特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学式ガスセン
    サ。
  5. 【請求項5】 直流電源を設けた参照極と他の電極及び
    この電極間を覆う固体電解質膜の厚みを他の部分よりも
    厚くして成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれ
    かに記載の電気化学式ガスセンサ。
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