JPH08174157A - 引上げ連続鋳造用鋳型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 引上げ連続鋳造におけるブレークアウト及び
偏肉の防止。 【構成】 環状の水冷ジャケット11の内側にスリーブ２
を装着し、冷却ジャケット11を耐火物層14にて覆い、ス
リーブ２の内面が型孔20となった引上げ連続鋳造用鋳型
において、型孔20の下部にブレークアウト防止用の内向
き環状突条61を有するブレークリング６を具え、スリー
ブ２の外面には該ブレークリング６よりも上位置に１又
は複数の環状溝３を開設している。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、引上げ連続鋳造用鋳型
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】公知の引上げ連続鋳造は、図５に示す如
く、上下に貫通した型孔(20)を有する冷却鋳型(１)の下
部を溶湯(５)中に浸けて、型孔(20)の下部開口から溶湯
を浸入させ、該溶湯を型孔周囲から冷却して凝固させつ
つ、溶湯凝固殻(50)を間欠的に引上げて管体(５)を形成
する。

【０００３】上記冷却鋳型(１)は、熱伝導率が高く耐熱
性に優れた材料で形成されたスリーブ(２)を環状の冷却
ジャケット(11)によって包囲し、該冷却ジャケット(11)
の外周を耐火物層(14)で保護している。スリーブ(２)の
内面が、製造すべき管体(５)の外径に対応する型孔(20)
を構成している。

【０００４】冷却鋳型(１)内の湯面下に於いて、溶湯が
凝固して引上げ可能な部分と、充分に凝固しておらず引
上げに耐えられない部分とが連続しており、その連続部
とスリーブ(２)の内面とが交わる部分が溶湯凝固殻(50)
の引上げ下端となる。

【０００５】溶湯凝固殻(50)の引上げ下端の高さ位置
は、スリーブ(２)の温度状況と、溶湯の温度及び凝固状
況で決まる。それらの状況が変れば、溶湯凝固殻(50)の
引上げ下端位置は上下に移動する。特に鋳造の初期は、
前記状況が大きく変化して引上げ下端位置は上方に移動
する傾向にあり、安定状態になる前に湯面に達し、連続
鋳造が途切れてしまう所謂ブレークアウトが発生する問
題があった。

【０００６】そこで出願人は、以前図４に示す如く、ス
リーブ(２)の下端に接してブレークリング(６)を配備
し、該リング(６)の突条(61)より下方にて凝固した溶湯
凝固殻(50a)を、突条(61)によって作用する大なる引上
げ抵抗によって破断せしめ、それによって溶湯凝固殻(5
0)の引上げ下端を突条(61)の位置に一定させることによ
り、ブレークアウトを防止する冷却鋳型を提案した(例
えば特願平４−３６８８８)。

【０００７】

【本発明が解決しようとする課題】上記冷却鋳型によ
り、ブレークアウトの発生を抑えることが出来たが、鋳
造管体(５)の肉厚が一様と成らず偏肉となる問題が残っ
ていた。出願人は、長年の実験から引上げ連続鋳造によ
る管体の偏肉のメカニズムを考察したところ、図３に示
す結論に至った。

【０００８】冷却水奪熱のアンバランス及び制御出来な
い因子によって、鋳型の同一高さ領域での周方向の冷却
能にアンバランスを生じ、これが図４のＡに示すブレー
クリング(６)に接近した部分、即ち、溶湯の引上げ下端
近傍の凝固殻形成の速度が周方向に不均一となる。スリ
ーブ露出面への湯流れのアンバランスも、凝固殻の形成
速度の不均一の一因と考えられる。

【０００９】凝固殻形成速度の不均一は、当然に凝固殻
の肉厚差となって現れる。凝固殻の薄い部分は厚い部分
に比べて収縮が大きく、凝固殻の外径に周方向に不均一
が生じ、凝固殻の引上げ途上で、型孔と凝固殻との間に
隙間、即ち、エアーギャップが生じ、然もエアーギャッ
プに大小が生じる。これが、スリーブの周方向の温度の
不均一、即ち、前述の鋳型の周方向の冷却能のアンバラ
ンスを一層助長する。

【００１０】又、エアーギャップの大小の差は、図４の
Ｂに示す、凝固殻の成長領域でのスリーブの周方向の冷
却能の不均一を招来し、凝固殻の間欠引上げ毎に凝固殻
を成長させる途上で凝固殻成長の不均一を生じ、前述の
肉厚差を更に助長する。上記の様にして、一旦凝固殻に
周方向の肉厚差が生じると、これが、湯面下において、
スリーブの上部から下部に、下部から上部に互いに冷却
能に悪影響を与え合い、益々、凝固殻の肉厚差を助長す
ることになる。

【００１１】又、鋳型の冷却能が高い程、偏肉は顕著で
あることも経験的に分った。本発明は、湯面下におい
て、湯面側の冷却鋳型の冷却能の変化が、ブレークアウ
ト防止用環状突条の近傍に可及的に及ばない様に、又、
環状突条近傍よりも湯面側の冷却能を低めることによ
り、凝固殻の偏肉を可及的に小さくできる引上げ連続鋳
造用冷却鋳型を明らかにするものである。

【００１２】

【課題を解決する手段】請求項１の冷却鋳型は、環状の
水冷ジャケット(11)の内側にスリーブ(２)を装着し、冷
却ジャケット(11)を耐火物層(14)にて覆い、スリーブ
(２)の内面が型孔(20)となった引上げ連続鋳造用鋳型に
おいて、型孔(20)の下部にブレークアウト防止用の内向
き環状突条(61)を有するブレークリング(６)を具え、ス
リーブ(２)の外面には該ブレークリング(６)よりも上位
置に１又は複数の環状溝(３)を開設している。

【００１３】請求項２の冷却鋳型は、環状の水冷ジャケ
ット(11)の内側にスリーブ(２)を装着し、冷却ジャケッ
ト(11)を耐火物層(14)にて覆い、スリーブ(２)の内面が
型孔(20)となった引上げ連続鋳造用鋳型において、型孔
(20)の下部にブレークアウト防止用の内向き環状突条(6
1)を有するブレークリング(６)を具え、スリーブ(２)の
外面には該ブレークリング(６)よりも上位置に１又は複
数の環状溝(３)及びスリーブ(２)の軸心に沿って延びる
縦溝(４)をスリーブ(２)の周方向に略等間隔に開設して
いる。

【００１４】請求項３の冷却鋳型は、環状の水冷ジャケ
ット(11)の内側にスリーブ(２)を装着し、冷却ジャケッ
ト(11)を耐火物層(14)にて覆い、スリーブ(２)の内面が
型孔(20)となった引上げ連続鋳造用鋳型において、型孔
(20)の下部にブレークアウト防止用の内向き環状突条(6
1)を有するブレークリング(６)を具え、スリーブ(２)の
外面には該ブレークリング(６)よりも上位置にて、環状
スリーブの軸心に沿って延びる縦溝(４)をスリーブ(２)
の周方向に略等間隔に開設している。

【００１５】

【作用及び効果】スリーブ(２)の下端に接してブレーク
リング(６)を配備し、該リング(６)の突条(61)より下方
にて凝固した溶湯凝固殻(50a)を、突条(61)によって作
用する大なる引上げ抵抗によって破断せしめ、それによ
って溶湯凝固殻(50)の引上げ下端を突条(61)の位置に一
定させることにより、ブレークアウトを防止できる。

【００１６】スリーブ周方向に冷却能のアンバランスが
生じても、該スリーブ外周の環状溝(３)によって、該溝
を挟んで上下の冷却能の変化は伝達され難くく、従っ
て、従来の様に、溝から上の冷却能の変化と、溝から下
の冷却能の変化が互いに悪影響を及ぼし合って、肉厚差
を助長することを抑えることができ、偏肉の小さな管体
(５)を形成することができる。

【００１７】環状溝(３)から上方に縦溝(４)を開設し
て、スリーブ(２)の冷却能を環状溝の下方よりも小さく
すれば、一層偏肉を防止できることが分った。ブレーク
リング(６)と環状溝(３)との間の上下区間は、溶湯凝固
殻(50)の引上げ下端位置を決定する区間であり、この領
域のスリーブ外周には溝は存在しておらず冷却能を低下
させていない。従ってこの区間に流れ込んでスリーブに
接する溶湯を速やかに凝固させて溶湯凝固殻の引上げ下
端位置を安定させることができ、ブレークリング(６)か
ら上位置でのブレークアウトを防止できる。更に、環状
溝(３)を省略し、縦溝(４)を開設するだけでも、従来よ
りも偏肉を小さくすることが分った。

【００１８】

【実施例】図１は本発明の冷却鋳型(１)を示しており、
該冷却鋳型(１)は、内壁が銅製のモールド(12)である環
状の冷却ジャケット(11)の下面及び外周面を耐火物層(1
4)で保護している。冷却ジャケット(11)の内部には冷却
水が充満する水室(13)が形成されている。

【００１９】モールド(12)の内側にスリーブ(２)が嵌合
され、実施例のスリーブ(２)は、下部スリーブ(21)に上
スリーブ(22)を接続して形成され、上下のスリーブは、
黒鉛、窒化ホウ素等の熱伝導性及び耐熱性に優れた材料
にて形成されている。下部スリーブ(２)の下端は、冷却
ジャケット(11)の水室(13)の底面の高さ位置或いはそれ
よりも下方に位置し、下部スリーブ(21)の上端は、湯面
の近傍に達している。

【００２０】下スリーブ(21)の外周にはスリーブの下端
位置から下スリーブ(21)の全長の略１／３の位置に１又
は複数の環状溝(３)を開設している。実施例のスリーブ
(２)は、内径６０mm、外径８０mm、環状溝(３)はスリー
ブ下端から２５mm、３５mmの位置に２本開設し、溝幅は
１mm、溝深さは５mmである。

【００２１】下部スリーブ(21)の下端に接してブレーク
リング(６)が配備される。該ブレークリング(６)は、下
部スリーブ(21)と同じ材料にて形成され、内面は下端側
が徐々に拡大するテーパ面(62)となり、上端の内径は前
記スリーブの内径よりも小さい。ブレークリング(６)の
上端外周には環状の凹段部(63)が形成され、該凹段部(6
3)に下部スリーブ(２)の下端が嵌合し、ブレークリング
(６)の上端内面は、スリーブ(２)を一周する突条(61)と
なっている。

【００２２】然して、該溶湯を型孔周囲から冷却して凝
固させつつ、溶湯凝固殻(50)を間欠的に引上げて管体
(５)を形成する。スリーブ(２)の下端に接して配備した
ブレークリング(６)の突条(61)より下方にて凝固した溶
湯凝固殻(50a)は、突条(61)によって作用する大なる引
上げ抵抗によって破断する。それによって溶湯凝固殻(5
0)の引上げ下端を突条(61)の位置に一定させることによ
り、ブレークアウトを防止できる。

【００２３】スリーブ(２)外周に開設した環状溝(３)に
よって、該溝の上方から下方に、及び下方から上方に互
いの冷却能の変化は伝達され難くく、従って、従来の様
に、溝から上の冷却能の変化と、溝から下の冷却能の変
化が互いに、悪影響を及ぼし合って、肉厚差を助長する
ことを抑え、偏肉の小さな管体(５)を形成することがで
きる。

【００２４】図２は、下部スリーブ(21)に２本の環状溝
(３)を開設することに加えて、該環状溝(３)の近傍から
下部スリーブ(21)の上端に抜ける縦溝(４)をスリーブの
周方向に略等間隔に開設した他の実施例を示している。
縦溝(４)は幅５mm、深さ１mmで、２４〜４８本程度設け
ている。環状溝(３)近傍から上位置の冷却能は、環状溝
(３)の存在により、ブレークリング(６)近傍の冷却能よ
りも小さくなっており、この方が、偏肉になり難いこと
が分った。

【００２５】又、環状溝(３)を省略して、縦溝(４)だけ
でも、従来の様に、全く溝の存在しないスリーブに比べ
て、偏肉は小さいことが分った。本発明は上記実施例の
構成に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載の
範囲で種々の変形が可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の冷却鋳型の断面図である。

【図２】他の実施例のスリーブの断面図及び平面図であ
る。

【図３】偏肉のメカニズを説明するためのフローチャー
トである。

【図４】出願人が以前提案したブレークリングを具えた
冷却鋳型の断面図である。

【図５】従来例の断面図である。

【符号の説明】

(１) 冷却鋳型 (２) スリーブ (３) 環状溝 (４) 縦溝 (６) ブレークリング (61) 突条

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 環状の水冷ジャケット(11)の内側にスリ
   ーブ(２)を装着し、冷却ジャケット(11)を耐火物層(14)
   にて覆い、スリーブ(２)の内面が型孔(20)となった引上
   げ連続鋳造用鋳型において、型孔(20)の下部にブレーク
   アウト防止用の内向き環状突条(61)を有するブレークリ
   ング(６)を具え、スリーブ(２)の外面には該ブレークリ
   ング(６)よりも上位置に１又は複数の環状溝(３)を開設
   した引上げ連続鋳用鋳型。
2. 【請求項２】 環状の水冷ジャケット(11)の内側にスリ
   ーブ(２)を装着し、冷却ジャケット(11)を耐火物層(14)
   にて覆い、スリーブ(２)の内面が型孔(20)となった引上
   げ連続鋳造用鋳型において、型孔(20)の下部にブレーク
   アウト防止用の内向き環状突条(61)を有するブレークリ
   ング(６)を具え、スリーブ(２)の外面には該ブレークリ
   ング(６)よりも上位置に１又は複数の環状溝(３)及びス
   リーブ(２)の軸心に沿って延びる縦溝(４)をスリーブ
   (２)の周方向に略等間隔に開設した引上げ連続鋳造用鋳
   型。
3. 【請求項３】 環状の水冷ジャケット(11)の内側にスリ
   ーブ(２)を装着し、冷却ジャケット(11)を耐火物層(14)
   にて覆い、スリーブ(２)の内面が型孔(20)となった引上
   げ連続鋳造用鋳型において、型孔(20)の下部にブレーク
   アウト防止用の内向き環状突条(61)を有するブレークリ
   ング(６)を具え、スリーブ(２)の外面には該ブレークリ
   ング(６)よりも上位置にて、環状スリーブの軸心に沿っ
   て延びる縦溝(４)をスリーブ(２)の周方向に略等間隔に
   開設した引上げ連続鋳造用鋳型。