JPH08170484A

JPH08170484A - 大断面トンネルの構築方法

Info

Publication number: JPH08170484A
Application number: JP6334426A
Authority: JP
Inventors: Kazuo Hattori; 一夫服部; Masayuki Otsuka; 正幸大塚; Yuzo Koga; 雄三古賀; Saburo Ishii; 三郎石井
Original assignee: Shimizu Construction Co Ltd; Shimizu Corp
Current assignee: Shimizu Construction Co Ltd; Shimizu Corp
Priority date: 1994-12-19
Filing date: 1994-12-19
Publication date: 1996-07-02

Abstract

(57)【要約】【目的】大断面トンネルのアーチ部の支保を確実かつ
簡易な構造としたトンネルを構築する。【構成】本設トンネル１０の掘削に先立ち、本設トン
ネル１０の天端位置に作業導坑１を構築し、作業導坑１
の天端位置から上方の地山に向けて長尺ロックボルト２
を打設する。さらに本設トンネル１０の両側位置に側壁
作業導坑３を構築し側壁作業導坑３の側壁位置からトン
ネル外方の地山に向けて長尺ロックボルト４を打設す
る。頂設作業導坑１と側壁作業導坑３との間の地山を本
設トンネル上半アーチ形状に倣って拡幅し、トンネル上
半アーチ部を構築する。引き続き所定の盤下げ及び支保
を行って所定トンネル断面を掘削する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は大断面トンネルの構築方
法に係り、特に不良な地山において、大きな掘削面積を
有する山岳トンネルを安全に掘削し、かつ支保構造を構
築するための大断面トンネルの構築方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、山岳トンネルでは、ＮＡＴＭ（：
New Austrian Tunneling Method）が標準支保方法とし
て定着してきた。このＮＡＴＭではトンネル周辺の地山
に支保作用を期待するため、周辺地山の地質状態に応じ
て支保形状及び構造並びに加背割（トンネル全掘削断面
を所定の掘削順序及び領域で区切った区割りを言う。）
を的確に設定することが重要である。すなわち、硬岩ト
ンネルでは、全断面掘削で支保工の寸法も軽量なもので
済み、ロックボルト等も不要であることが多い。一方、
都市ＮＡＴＭのような比較的地山状態の悪い地帯を掘削
するトンネルでは、適切なベンチ長（先進上半と後進下
半の切羽の位置の離れ、すなわち上半盤のトンネル方向
長さを言う。）に設定されたベンチカット工法により、
早期に吹付コンクリートによる支保リングの閉合を行う
ようにすることが好ましい。

【０００３】また、最近、拡幅工事が進められている高
速道路等で建設される道路トンネル等では掘削断面積が
１００ｍ²以上のものが計画、施工されてきている。こ
のような大断面トンネルは上半掘削半径が１０ｍ以上に
なるため、土砂トンネルのように地山強度が期待できな
い場合には、従来の上半先進のベンチカット工法のよう
なトンネル構築方法では、十分な支保構造で上半を支持
することができないため、上半掘削時の天端沈下量が過
大になってしまい、トンネル崩落のおそれもある。

【０００４】そこで、ＮＡＴＭで施工する最近の大断面
トンネルでは、トンネル掘削断面を吹付コンクリート及
び鋼製支保工からなる中壁で先進トンネルと後進トンネ
ルとに２分割し、それぞれのトンネルをベンチカット工
法で掘削する中壁工法（ＣＤ工法）が採用されるように
なってきた。図５は中壁工法によって構築されたトンネ
ルの一例を示したトンネル横断面図である。同図には、
説明のためにかっこ数字(1)〜(5)で示した加背割と支保
パターンが示されている。この中壁工法では、トンネル
断面のうち、まず先進トンネル５０（加背割(1)、(2)に
相当）の上半(1)を掘削する。この上半(1)を掘削するに
は、まず切羽天端位置にフォアパイリング５１を施し、
完成トンネルの側壁位置からトンネル外方に向けて通常
のロックボルト５２を打設し、トンネル内空側に向けて
ＦＲＰロックボルト５３を打設し、さらに仮インバート
５４を施工して早期のリング閉合を図るようになってい
る。さらにベンチカット工法により所定のベンチ長をと
って下半(2)の掘削、吹付コンクリート、ロックボルト
５２の施工を行う。引き続き中壁５５を境界壁として後
進トンネル６０（加背割(4)、(5)に相当）の上半(3)、
下半(4)の施工を行う。そのとき先進トンネル５０の支
保材として機能していたＦＲＰロックボルト５３は撤去
される。さらに先進トンネル５０と後進トンネル６０と
を区画している中壁５５を、コンクリートブレーカ等で
取り壊して撤去する。さらにインバート(5)を掘削して
インバートコンクリート６１を施工し、トンネル全体の
覆工リングを閉合する。以上の施工サイクルによりトン
ネルを構築するので、大断面トンネル掘削による周辺地
山への影響を最小限にすることができる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、この中壁工
法では、先進トンネル５０と後進トンネル６０との境界
に位置し、トンネルアーチの沈下を抑止している中壁５
５を施工途中で撤去しなければならない。この中壁５５
はトンネル外周支保部材に準じた寸法、構造からなる。
このため、中壁５５を取り壊し、撤去するには、前述の
ように大型の破砕機械を投入して行わなければならな
ず、取り壊し作業の周辺では他の作業を中止する等の措
置が必要となり、トンネル全体工程に対して大きな影響
を占める。また、中壁５５の撤去によりトンネルアーチ
から荷重配分が一挙に支保工脚部に集中するため、脚部
の支持力が不足する場合にはトンネルアーチ全体が大き
く沈下するおそれもある。さらに作業面において、トン
ネル加背割の形状が複雑になる上、トンネル進行方向に
複数の切羽が進行するので、個々の切羽位置での作業空
間が小さくなり、掘削手順の輻輳により全体の作業効率
が低下するという問題がある。

【０００６】そこで、本発明の目的は上述した従来の技
術が有する問題点を解消し、中壁に代わる支保としてト
ンネル天端に、吊り下げ効果を有するロックボルト支保
を有するようにした大断面トンネルの構築方法を提供す
ることにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は本設トンネルの掘削に先立ち、該本設トン
ネルの天端位置に頂設作業導坑を構築し、該頂設作業導
坑の天端位置から上方の地山に向けて長尺ロックボルト
を打設し、該作業導坑位置から両側に向けての地山を前
記本設トンネル上半アーチ形状に倣って拡幅し、トンネ
ル上半アーチ部を構築し、引き続き所定の盤下げ及び支
保を行って所定トンネル断面を掘削するようにしたこと
を特徴とするものである。

【０００８】また、本設トンネルの掘削に先立ち、該本
設トンネルの天端位置に頂設作業導坑を構築し、該頂設
作業導坑の天端位置から上方の地山に向けて長尺ロック
ボルトを打設するとともに、前記本設トンネルの両側位
置に側壁作業導坑を構築して該側壁作業導坑の側壁位置
からトンネル外方の地山に向けて長尺ロックボルトを打
設し、前記頂設作業導坑と前記側壁作業導坑との間の地
山を前記本設トンネル上半アーチ形状に倣って地山拡幅
を行い、トンネル上半アーチ部を構築し、引き続き所定
の盤下げ及び支保を行って所定トンネル断面を掘削する
ようにしたことを特徴とするものである。

【０００９】

【作用】本発明によれば、本設トンネルの掘削に先立
ち、該本設トンネルの天端位置に頂設作業導坑を構築
し、該頂設作業導坑の天端位置から上方の地山に向けて
長尺ロックボルトを打設し、該作業導坑位置から両側に
向けての地山を前記本設トンネル上半アーチ形状に倣っ
て拡幅し、トンネル上半アーチ部を構築し、引き続き所
定の盤下げ及び支保を行って所定トンネル断面を掘削す
るようにし、または本設トンネルの掘削に先立ち、該本
設トンネルの天端位置に頂設作業導坑を構築し、該頂設
作業導坑の天端位置から上方の地山に向けて長尺ロック
ボルトを打設するとともに、前記本設トンネルの両側位
置に側壁作業導坑を構築して該側壁作業導坑の側壁位置
からトンネル外方の地山に向けて長尺ロックボルトを打
設し、前記頂設作業導坑と前記側壁作業導坑との間の地
山を前記本設トンネル上半アーチ形状に倣って地山拡幅
を行い、トンネル上半アーチ部を構築し、引き続き所定
の盤下げ及び支保を行って所定トンネル断面を掘削する
ようにしたことにより、従来の大断面トンネルの構築工
法に比べ、支保工部材の撤去作業等を最小限にすること
ができるとともに、永久支保部材としての各支保部材を
簡明な応力状態におくことができる。また、作業の輻輳
等をなくすことで、全体作業の効率化、安全性の向上を
図ることができる。

【００１０】

【実施例】以下本発明による大断面トンネルの構築方法
の一実施例を添付図面を参照して説明する。図１は本発
明によって構築されたトンネル支保構造の横断面図であ
る。同図にはトンネル内空を所定の加背割で掘削する順
序がかっこ数字(1)〜(6)で示されている。本トンネルで
は図１に示したようにトンネルの計画掘削断面の天端位
置に頂設作業導坑１が構築され、この作業導坑１内から
上方に向かって長尺ロックボルト２が打設されている。
この長尺ロックボルト２は、複数本の定尺ロックボルト
を公知のスリーブジョイント等の接続具で接続したロッ
クボルトで、その長さはロックボルト先端部が本設トン
ネル完成時に生じる地山緩み範囲外に位置するような長
さに設定されている。この長尺ロックボルト２によれ
ば、本設トンネル１０の上半アーチ部を掘削した際に生
じることが予想されるトンネル天端の沈下をあらかじめ
抑止することができる。なお、このときのトンネル周囲
の地山緩み範囲はあらかじめトンネル支保の設計段階で
ＦＥＭ等の解析により確認しておくことが好ましい。

【００１１】また、使用する長尺ロックボルトとして
は、異形鋼棒等の従来のロックボルトの他、鋼製ケーブ
ルボルト、ＦＲＰケーブル、グラウンドアンカー等に使
用されるテンドンを構成する鋼材を適用することも可能
である。テンドンの種類としては、ＰＣ鋼線、ＰＣ鋼よ
り線、ＰＣ鋼棒を挙げることができる。ロックボルトの
定着方式としては、従来の全面接着式の他、アンカー体
造成による先端固定式等、公知の種々の定着方式を適用
することができる。

【００１２】また、本実施例では側壁作業導坑３からト
ンネル外側のほぼ水平方向に向けて長尺ロックボルト４
が施工されている。この長尺ロックボルト４は、本設ト
ンネル上半の盤下げを行った際に作用する側圧による水
平変位をあらかじめ抑止する役割を果たす。なお、天端
長尺ロックボルト２及び側壁長尺ロックボルト４の打設
本数は前述の解析において、ロックボルトをモデル化し
て組み込んだ解析モデルによる解析結果から地山変位及
び支保部材の応力を検討して設定することが好ましい。
作業導坑の配置、数、断面形、ロックボルトの長さ、打
設方向についても本設トンネルの形状、掘削領域の地盤
定数を考慮した解析モデルによる解析結果をもとにして
適宜変更して適切な支保パターンを設定することが好ま
しい。加背割も、図１に示したもの以外に作業導坑位
置、トンネル断面積に応じて適宜設定することができ
る。

【００１３】次に、図１に示したトンネル支保構造から
なるトンネルの構築手順について、図２〜図３を参照し
て説明する。まず、計画トンネル１０の天端位置に頂設
作業導坑１を掘削する。本実施例の頂設作業導坑１は図
２（ａ）に示したようにアーチ部及び側壁部に吹付コン
クリートからなる支保部材５が施されている。本実施例
では仮インバートは施工されていないが、地山状態に応
じて仮インバートを覆工リング閉合することも好まし
い。なお、この場合には後にインバートを撤去する必要
がある。さらにこの頂設作業導坑１の天端位置から地山
上方に向けて長尺ロックボルト２を打設する。次いで、
底盤レベルが本設トンネルのＳ．Ｌ．（スプリングライ
ン）と一致するように側壁作業導坑３をトンネル両側位
置に構築する。そしてこの側壁作業導坑３から本設トン
ネルの両側地山に向けて複数本の水平長尺ロックボルト
４を打設する（（ｂ）参照）。この頂設作業導坑１と側
壁作業導坑３との切羽の進行の関係を図４（ａ）に示
す。

【００１４】次いで、図２（ｃ）に示したように頂設作
業導坑１の支保部材５を撤去するとともに、本設トンネ
ル上半アーチ部６を、頂設作業導坑１と側壁作業導坑３
との間の地山をアーチ形状に倣って拡幅するようにして
掘削し、吹付コンクリート及び鋼製支保工からなる支保
部材７を施工する。この本設トンネル上半アーチ部６の
施工に先立ち、フォアパイリング８により切羽前方の地
山の安定を図ることが好ましい。このフォアパイリング
工法としては、樹脂充填方式、グラウト充填方式等、種
々の公知の切羽安定のための補助工法を適用することが
できる。この上半アーチ部６の掘削では、掘削土量が多
くなるため、同図（ｃ）に示したようなリングカットに
より大背９を残置させる掘削方法をとることが好まし
い。地山状態が良好な場合には大型の掘削機を切羽に投
入して図３（ｄ）に示したようにＳ．Ｌ．レベルまでの
掘削を一挙に行うことも可能である。いずれの場合にも
側壁作業導坑３の支保部材１１の撤去は切羽後方で行う
ようにし、切羽位置での掘削作業との輻輳を避けるよう
にすることが好ましい。なお、地山が良好な場合には、
側壁作業導坑３の施工を省略することもでき、この場合
には頂設作業導坑１からＳ．Ｌ．にかけての地山をアー
チ形状に切り下げるようにして上半部分の掘削を行うよ
うにする。

【００１５】また、上半リングカットから大背掘削の掘
削段階（図２（ｃ）〜図３（ｄ）、図４（ｂ）参照）の
掘削土量が最も大きいため、このときの地山荷重の増加
に対応するために、天端長尺ロックボルト２及び水平長
尺ロックボルト４の軸力管理を行い、必要に応じて増し
ボルト等のアーチ支保工の補強工法を講じることも好ま
しい。また、アーチ支保工の脚部の支持力増強のために
サイドパイリング、足付けボルトの打設、ウィングリブ
埋設等の補助工１２を施すことも好ましい（図３（ｄ）
参照）。さらに下半掘削とともに、下半支保工足付け部
１３及び側壁ロックボルト１４を施工し、上半アーチか
らの荷重が滑らかに地山に伝達されるようにする。最終
的にインバート１５を掘削して吹付コンクリートによる
インバートコンクリート１６を施工して全体の覆工リン
グ７、１６の閉合を行う（図３（ｅ）〜（ｆ）、図４
（ｃ）参照）。以上に示した一連の作業工程により大断
面の本設トンネル１０を安全かつ迅速に施工できる。

【００１６】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、本設トンネルへの拡幅工程の前に、トンネル
天端の吊り下げ支保効果、側壁部の水平変位抑止効果が
発揮されるようにしたので、従来のように所定の支保状
態にある主要支保部材を施工途中で撤去する必要がな
く、各支保部材を簡明な応力状態におくことができると
ともに、支保部材の永久化によりトンネル工事の工事コ
ストを削減できるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明によるトンネル支保構造の一実施例を示
したトンネル横断面図。

【図２】図１に示したトンネル支保構造によるトンネル
の構築方法の一連の作業の流れを横断面図で示した作業
順序図（その１）。

【図３】図１に示したトンネル支保構造によるトンネル
の構築方法の一連の作業の流れを横断面図で示した作業
順序図（その２）。

【図４】図２、図３に示したトンネル作業順序図に対応
したトンネル部分縦断面図。

【図５】従来のトンネル構築方法の一例として示した中
壁工法の加背割及び支保パターン概略図。

【符号の説明】

１頂設作業導坑２，４長尺ロックボルト３側壁作業導坑５，７支保部材６トンネル上半アーチ部１０本設トンネル

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者石井三郎東京都港区芝浦一丁目２番３号清水建設株式会社内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】本設トンネルの掘削に先立ち、該本設トン
ネルの天端位置に頂設作業導坑を構築し、該頂設作業導
坑の天端位置から上方の地山に向けて長尺ロックボルト
を打設し、該作業導坑位置から両側に向けての地山を前
記本設トンネル上半アーチ形状に倣って拡幅し、トンネ
ル上半アーチ部を構築し、引き続き所定の盤下げ及び支
保を行って所定トンネル断面を掘削するようにしたこと
を特徴とする大断面トンネルの構築方法。
【請求項２】本設トンネルの掘削に先立ち、該本設トン
ネルの天端位置に頂設作業導坑を構築し、該頂設作業導
坑の天端位置から上方の地山に向けて長尺ロックボルト
を打設するとともに、前記本設トンネルの両側位置に側
壁作業導坑を構築して該側壁作業導坑の側壁位置からト
ンネル外方の地山に向けて長尺ロックボルトを打設し、
前記頂設作業導坑と前記側壁作業導坑との間の地山を前
記本設トンネル上半アーチ形状に倣って拡幅し、トンネ
ル上半アーチ部を構築し、引き続き所定の盤下げ及び支
保を行って所定トンネル断面を掘削するようにしたこと
を特徴とする大断面トンネルの構築方法。