JPH0817031A - 垂直磁気記録媒体およびそれを用いた磁気記憶装置 - Google Patents

垂直磁気記録媒体およびそれを用いた磁気記憶装置

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JPH0817031A
JPH0817031A JP14594294A JP14594294A JPH0817031A JP H0817031 A JPH0817031 A JP H0817031A JP 14594294 A JP14594294 A JP 14594294A JP 14594294 A JP14594294 A JP 14594294A JP H0817031 A JPH0817031 A JP H0817031A
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magnetic
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JP14594294A
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English (en)
Inventor
Yoshifumi Matsuda
好文 松田
Masaaki Futamoto
正昭 二本
Nobuyuki Inaba
信幸 稲葉
Yoshihiro Shiroishi
芳博 城石
Mikio Suzuki
幹夫 鈴木
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 下地膜形成用のスパッタリング・ターゲット
に関する問題が生じないで、従来より優れた磁気特性と
結晶配向性を実現する。 【構成】 非磁性基板の上に直接または他の膜を介して
下地膜を形成し、その上にCo基合金などの六方晶系磁
性合金膜を形成する。前記下地膜は、Tiなどの六方晶
系の非磁性材料からなる第1層と、Crなどの体心立方
晶系の非磁性材料からなる第2層とが交互に積層された
膜より構成される。 【効果】 下地膜形成用のスパッタリング・ターゲット
に関する問題が生じないと共に、従来より優れた磁気特
性および結晶配向性が得られる。例えば1平方インチ当
り5ギガビット以上の高い面記録密度で情報を記録・再
生できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、垂直磁気記録媒体お
よびそれを用いた磁気記憶装置に関し、さらに言えば、
垂直磁気記録方式を用いた超高密度記録に好適な磁気デ
ィスク、磁気テープ、磁気カードその他の磁気記録媒体
と、その磁気記録媒体を用いて構成される磁気記憶装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、超高密度記録用の記録方式と
して「垂直磁気記録方式」が提案されている。この方式
では、特公昭57−17282号公報に開示されている
ように、Co−Cr合金よりなる垂直磁化膜が磁気記録
媒体に用いられる。
【0003】近年、情報量の増大や情報記憶装置のダウ
ンサイジングに伴い、磁気記録媒体の記録密度のいっそ
うの向上が要請されている。このため、前記Co−Cr
合金の垂直磁化膜と非磁性基板との間にTiの中間膜を
設け、その上に形成される垂直磁化膜の結晶性を制御し
て高いc面(軸)配向性を得る技術が提案されている
(特開昭49−74912号公報、特開昭58−143
18号公報参照)。
【0004】また、前記中間膜としてTi基合金膜を用
いて、真空蒸着法によっても保磁力の高い垂直磁化膜が
得られるようにした技術も提案されている(特開昭62
−143227、特開昭62−143228、特開昭6
2−143329号公報参照)。さらに、これを改良す
るため、前記Ti基合金の中間膜にTa、Nb、Cr等
の元素を添加し、さらにその添加元素の組成範囲を特定
することにより、垂直磁化膜のc面配向性と磁気特性を
改善し、もって良好な記録再生特性を得る方法も提案さ
れている(特開平1−263910号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】特開平1−26391
0号公報に記載されたTi基合金中間膜をスパッタリン
グ法により製作するには、得ようとする膜と同様な組成
を持つ合金ターゲットが必要である。前記添加元素のう
ちではTiに混じり難い添加元素(例えばTa,Nb,
Cr,V,Mo,W,Pt,Pdなど)が特性改善に有
効であるため、このような元素を添加する場合には均一
な組成の合金ターゲットを製作することが困難である。
【0006】そこで、この発明の目的は、下地膜形成用
のスパッタリング・ターゲットに関する問題が生じない
垂直磁気記録媒体を提供することにある。
【0007】この発明の他の目的は、従来より優れた磁
気特性および結晶配向性を有する垂直磁気記録媒体を提
供することにある。
【0008】この発明のさらに他の目的は、垂直磁気記
録方式特有の高い面記録密度(例えば1平方インチ当り
5ギガビット以上)で情報を記録・再生できる磁気記憶
装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1) この発明の第1の垂直磁気記録媒体は、非磁性
基板の上に直接または他の膜を介して形成された下地膜
と、その下地膜の上に形成された六方晶系磁性合金膜と
を備え、前記下地膜が、六方晶系の非磁性材料からなる
第1層と体心立方晶系の非磁性材料からなる第2層とが
交互に積層された膜より構成されることを特徴とするも
のである。
【0010】(2) この発明の第2の垂直磁気記録媒
体は、非磁性基板の上に直接または他の膜を介して形成
された下地膜と、その下地膜の上に形成された高透磁率
磁性膜と、その高透磁率磁性膜の上に形成された六方晶
系磁性合金膜とを備え、前記下地膜が、六方晶系の非磁
性材料からなる第1層と体心立方晶系の非磁性材料から
なる第2層とが交互に積層された膜より構成されること
を特徴とするものである。
【0011】(3) 前記第1および第2の垂直磁気記
録媒体において、前記非磁性基板としては、任意の材料
からなる基板が使用できる。例えば、強化ガラス基板、
表面にNi−Pメッキ層を形成したAl合金基板、表面
にSi熱酸化膜を形成したSi基板、セラミックス基板
などである。
【0012】前記非磁性基板と下地膜の間に配置される
他の膜としては、所望の特性を得るために必要な任意の
膜が使用できる。例えば、前記基板が単結晶Si基板の
場合はSi熱酸化膜が考えられ、前記基板がAl合金基
板の場合ではNi−Pメッキ層が考えられる。
【0013】前記下地膜を構成する前記第1層および第
2層は、それぞれ2層以上積層されているのが好まし
い。この場合に、この発明の効果が顕著に発揮されるか
らである。
【0014】前記高透磁率磁性膜と前記六方晶系磁性合
金膜との間に、他の膜、例えば純Tiの中間膜や、Ti
−15Ta、Ti−14Nb、Ti−10Cr等のTi
基合金の中間膜を配置してもよい。
【0015】(4) 前記第1層は、前記基板の表面に
垂直にc面(c軸)が優先配向した六方晶系の非磁性材
料から形成され、前記第2層は、前記基板の表面に垂直
に(110)面が優先配向した体心立方晶系の非磁性材
料から形成されるのが好ましい。
【0016】一般に、スパッタ法や真空蒸着法で成膜し
た場合、六方晶系の非磁性材料ではその最密面であるc
面(c軸)が優先配向し、体心立方晶系の非磁性材料で
はその最密面である(110)面が優先配向しやすい。
よって、このような材料から形成すれば、前記第1層お
よび第2層をスパッタ法や真空蒸着法で成膜することが
可能となるからである。
【0017】また、六方晶系の非磁性材料のc面と体心
立方晶系の非磁性材料の(110)面の格子間隔の違い
が10%程度以下になるようにすれば、それらの上下関
係を問わず、エピタキシャル成長が可能であるからであ
る。
【0018】さらに、交互に積層された六方晶系の非磁
性材料層と体心立方晶系の非磁性材料層の各界面におけ
る結晶格子のわずかな不整合により、成膜時にそれらの
層の結晶成長が抑制され、その結果、微細な結晶粒が得
られるからである。
【0019】(5) 六方晶系の非磁性材料からなる前
記第1層は、(a)Ti、Zr、HfおよびRuから成
る群から選ばれた少なくとも1種の元素の層、または、
(b)(a)群の元素を主成分とする合金の層とするの
が好ましい。
【0020】c面配向したTi膜などの上には、c面配
向したCo−Cr合金等の六方晶系磁性合金膜がエピタ
キシャル成長するため、その第1層を前記(a)群の元
素の層とすれば、その上に前記六方晶系磁性合金膜がエ
ピタキシャル成長しやすくなるからである。その結果、
前記六方晶系磁性合金膜の結晶粒が微細になるという効
果が得られる。
【0021】Zr、HfおよびRuは、Tiと同様の六
方晶系結晶構造を有するので、これらを用いてもTiと
同様の効果が得られる。
【0022】(b)の場合、すなわち、前記第1層が前
記(a)群の元素を主成分とする合金の層である場合、
前記第1層がTa、Nb、Cr、Mo、V、W、Mn、
Ni、Cu、C、SiおよびGeから成る群から選ばれ
た少なくとも1種の元素を含んでいるのが好ましい。ま
た、その元素の組成比は1at%以上、7at%以下が
好ましい。
【0023】前記元素を含んでいると、結晶粒が微細化
し、c面配向性が向上するという効果が得られるからで
ある。また、1at%未満であると、上記の効果がほと
んど現われないばかりでなく組成の制御が困難になるか
らであり、7at%を越えると、合金ターゲットの作製
が困難になるからである。
【0024】前記(b)の場合、さらに、前記第1層に
含まれているTa、NbおよびCrのうちの少なくとも
1種の元素の組成比が、2at%以上、5at%以下で
あるのが好ましい。2at%未満であると上記の効果が
少なく、5at以下の方が合金ターゲットの作製がより
容易になるからである。
【0025】なお、前記組成比は、前記(a)群の元素
を主成分とする合金よりなる前記第1層が、前記群中の
2種以上の元素を含んでいる場合は、それら元素の総量
についての組成比を意味する。
【0026】(6) 前記(5)(b)の場合、すなわ
ち、前記第1層が前記(5)(a)群の元素を主成分と
する合金の層である場合、前記第1層が、Pt、Pd、
Ag、Ru、Os、PhおよびIrから成る群から選ば
れた少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。この場
合は、その元素の組成比は、0.1at%以上、7at
%以下であるのが好ましく、1at%以上、5at%以
下であるのがより好ましい。
【0027】前記元素を含んでいると、結晶粒が微細化
し、c面配向性が向上するという効果が得られるからで
ある。また、0.1at%未満であると、上記の効果が
ほとんど現われないばかりでなく組成の制御が困難にな
るからであり、7at%を越えると、合金ターゲットの
作製が困難になるからである。さらに、1at%未満で
あると、合金ターゲットの作製が困難になるからであ
り、5at%以下の方が合金ターゲットの作製が容易に
なるからである。
【0028】なお、前記含有量は、前記(5)(a)群
の元素を主成分とする合金よりなる前記第1層が、前記
群中の2種以上の元素を含んでいる場合は、それら元素
の総量の組成比を意味する。
【0029】(7) 体心立方晶系の非磁性材料からな
る前記第2層は、(c)Cr、Mo、W、V、Nbおよ
びTaから成る群から選ばれた少なくとも1種の元素、
あるいは、(d)(c)の元素を主成分とした合金の層
であるのが好ましい。
【0030】前記(d)の場合、前記第2層がTi、Z
r、HfおよびRuから成る群から選ばれた少なくとも
1種の元素をさらに含んでいるのが好ましい。また、そ
の元素の組成比は1at%以上、7at%以下であるの
が好ましく、2at%以上、5at%以下であるのがよ
り好ましい。
【0031】前記元素を含んでいると、結晶粒が微細化
するという効果が得られるからである。また、1at%
未満であると、上記の効果がほとんど現われないばかり
でなく組成の制御が困難になるからであり、7at%を
越えると、合金ターゲットの作製が困難になるからであ
る。さらに、2at%未満であると上記の効果が少な
く、5at%以下の方が合金ターゲットの作製がより容
易になるからである。
【0032】なお、前記含有量は、前記(c)群の元素
を主成分とする合金よりなる前記第2層が、前記群中の
2種以上の元素を含んでいる場合は、それら元素の総量
についての組成比を意味する。
【0033】(8) 前記下地膜のうち前記六方晶系磁
性合金膜に最も近い層には、前記第1層を配置するのが
好ましい。この場合、その第1層と前記六方晶系磁性合
金膜がいずれも六方晶系であるので、両者の結晶格子の
整合性が良好になる効果がある。
【0034】この場合、前記六方晶系磁性合金膜に最も
近い位置にある前記第1層は、前記(5)(a)群から
選ばれた少なくとも1種の元素、またはその元素を主成
分とする合金の層であるのが好ましい。これは、その第
1層を前記(5)(a)群の元素の層とすれば、前記
(5)で述べたように、その上に前記六方晶系磁性合金
膜がエピタキシャル成長しやすくなり、その六方晶系磁
性合金膜の結晶粒が微細になるという効果が得られるか
らである。
【0035】(9) 前記六方晶系磁性合金膜は、Co
の組成比が50at%以上のCo基合金の膜であり、且
つそのc面が前記基板の表面に垂直な方向に優先配向し
ているのが好ましい。この場合、Co基合金は結晶異方
性が大きく、c面を垂直に配向させることで垂直磁気記
録に好適であるからである。
【0036】また、50at%未満であると、極端に飽
和磁化が小さくなり、磁気記録材料として適さなくなる
からである。
【0037】前記Co基合金膜は、Cr、V、Mo、
W、Mn、Re、SmおよびOから成る群から選ばれた
少なくとも1種の元素Xを含んでいるのが好ましい。前
記元素を含んでいると、垂直保磁力が増大するという効
果が得られるからである。
【0038】またこの場合、1種の元素Xのみを含みC
o−Xで表わされる2元合金であるのがより好ましい。
特性のばらつきが少ないからである。
【0039】前記元素Xの組成比は、0.1at%以
上、25at%以下であるのが好ましい。0.1at%
未満であると、組成の制御が困難になるからであり、2
5at%を越えると、磁気異方性が極端に小さくなって
しまうからである。
【0040】(10) 前記(9)のCo基合金膜は、
さらにZr、Ti、Hf、Ta、Ru、Rh、Pdおよ
びPtから成る群から選ばれた少なくとも1種の元素Y
を含んでいてもよい。これは、前記元素Yを含んでいる
と、耐食性が向上するからである。
【0041】またこの場合、1種の元素Xと1種の元素
Yのみを含みCo−X−Yで表わされる3元合金である
のがより好ましい。元素Xと元素Yとによる垂直保磁力
の増大と元素Yによる耐食性の向上の相乗効果が得られ
るからである。
【0042】前記元素Yの組成比は0.1at%以上、
15at%以下であるのが好ましい。0.1at%未満
であると、組成の制御が困難になるからであり、15a
t%を越えると、飽和磁化が小さすぎて磁気記録に適さ
ないからである。
【0043】(11) 前記第2の垂直磁気記録媒体
は、前記下地膜の上に高透磁率磁性膜を介して前記六方
晶系磁性合金膜が形成された、いわゆる「垂直二層膜媒
体」である。
【0044】前記(2)の前記高透磁率磁性膜として
は、所望の特性を得るために必要な任意の膜が使用でき
るが、面心立方晶系のパーマロイ磁性膜あるいはパーマ
ロイを主成分とする合金磁性膜を用いるのが好ましい。
例えば、Mo−Cr−パーマロイ、Fe−20Ni合金
であるパーマロイ、Nb−パーマロイ、Mo−パーマロ
イ等である。
【0045】パーマロイ系の磁性膜の(111)面は、
前記第1層を形成するTiなどの六方晶系材料のc面
や、前記第2層を形成するCrなどの体心立方晶系材料
の(110)面との格子整合性が良いので、前記第1層
または第2層の上に形成するパーマロイ系磁性膜の結晶
粒が微細化し、その結果、そのパーマロイ系磁性膜の上
に形成される前記六方晶系磁性合金膜の結晶粒も微細化
されるからである。また、そのパーマロイ系の磁性膜の
上には、前記六方晶系磁性合金膜がエピタキシャル成長
しやすいからである。
【0046】(12) この発明の磁気記憶装置は、前
記(1)〜(11)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒
体と、その垂直磁気記録媒体に情報を記録・再生する磁
気ヘッドとを備えたことを特徴とするものである。
【0047】前記磁気ヘッドは、再生素子に磁気抵抗効
果素子を用いた記録・再生分離型ヘッドであるのが好ま
しい。磁気抵抗効果素子では高い再生出力が得られるた
め、例えば1平方センチ当り数ギガビット以上の記録密
度で記録・再生する場合にも十分なS/Nが得られるか
らである。
【0048】また、前記磁気抵抗効果素子はスピンバル
ブ型であるのが好ましい。従来の磁気抵抗効果素子に比
べて再生感度が高いからである。
【0049】(13) この発明の垂直磁気記録媒体
は、以上述べたような構成を有するものであるが、発明
者らは以下の方法により、種々の垂直磁気記録媒体を実
際に製作してその効果を確認した。
【0050】なお以下の説明では、説明の便宜上、M1
−aM2−bM3の記号を使用して合金材料の組成を簡
略表示する。ここで、M1は主成分金属元素、M2およ
びM3はそれぞれM1に添加された金属元素を示し、a
およびbは前記添加金属元素の含有率(組成比)をat
%(原子%)で示したものである。
【0051】Ni−Pをメッキしその表面を鏡面研磨し
たAl合金基板、強化ガラス基板、熱酸化したSi単結
晶基板等、種々の2.5インチ磁気ディスク用基板の上
に、dcマグネトロンスパッタ法で種々の交互積層下地
膜を製作した。その際の成膜条件は、基板温度:室温〜
400゜C、チャンバの背圧:10nTorr(1μP
a)以下、チャンバ内のArガス圧:1〜10mTor
r (0.1〜1.3Pa)、ターゲットへの投入電力
密度:1平方センチ当たり0.5〜10Wとした。
【0052】製作した下地膜は、厚さ0.1〜20nm
の種々の六方晶系非磁性層(第1層)と、厚さ0.1〜
20nmの種々の体心立方晶系非磁性層(第2層)とを
含んでおり、それらは交互に2回〜400回の範囲で積
層されている。これらの下地膜には、最下位あるいは最
上位に位置する層を前記六方晶系非磁性層としたものと
前記体心立方晶系非磁性層としたものが含まれている。
【0053】前記非磁性層を20回以上積層する場合
は、六方晶系非磁性体のターゲットと体心立方晶系非磁
性体のターゲットとをある円周に沿って固定し、その円
周に沿って前記基板を公転させながらスパッタを行なっ
た。その公転の回転数は10〜60rpmとした。
【0054】さらに、以上のようにして製作した各種下
地膜の上に、膜厚50〜200nmの種々のCo基合金
の磁性膜を形成し、さらにその上に膜厚10nmのカー
ボン保護潤滑膜を形成して、種々の構成の垂直磁気記録
媒体を得た。
【0055】これら垂直磁気記録媒体の記録・再生特性
は、薄膜ヘッドによる自己録再方式と、薄膜ヘッドとM
Rヘッドを複合した記録再生分離型ヘッドによる録再分
離方式の二つの方式で評価した。
【0056】図3(a)は、Co基合金の磁性膜がCo
−17Cr−5Ta合金磁性膜(膜厚100nm)であ
り、且つ前記のような下地膜を有する垂直磁気記録媒体
に磁界を加えた時の磁化曲線を示し、図3(b)は、前
記のような下地膜を有しない点以外はこの垂直磁気記録
媒体と同じ構成の垂直磁気記録媒体に磁界を加えた時の
磁化曲線を示す。
【0057】下地膜を有しない場合は、図3(b)の磁
化曲線より分かるように、印加磁界が小さい領域で磁化
の急峻な変化が見られるが、下地膜を有する場合は、図
3(a)より分かるように、図3(b)のような磁化の
急峻な変化が見られない。これは、Co−17Cr−5
Ta合金磁性膜が、成長の初期の段階から良好に結晶成
長していることを意味する。
【0058】また、同垂直磁気記録媒体について、基板
温度を260゜Cとして成膜した場合、膜面垂直方向の
保磁力Hc1および膜面垂直方向の異方性磁界Hk1
は、下地膜を有する場合はそれぞれ1.8kOeおよび
6.2kOeであるのに対し、下地膜を有しない場合は
それぞれ1.3kOeおよび5.8kOeであり、膜面
垂直方向の保磁力Hc1および異方性磁界Hk1のいず
れについても、下地膜を有する場合の方が大きかった。
これは、下地膜を形成することにより垂直磁気異方性が
増加することを意味する。
【0059】同垂直磁気記録媒体についてのX線回折に
よれば、Co−17Cr−5Ta合金磁性膜(膜厚10
0nm)の(002)反射の分散Δθ50は、下地膜を有
する場合は3°程度と極めて小さかった。これに対し、
下地膜を有しない場合は5°程度であった。これは、下
地膜を有する前記合金磁性膜が、下地膜を有しないもの
よりも優れた結晶配向性を有することを意味する。
【0060】さらに、同垂直磁気記録媒体について、磁
気的実効スペーシングを0.06μmとした録再分離方
式で記録・再生特性を測定したところ、孤立波再生出力
ELFは、下地膜を有するものの方が、下地膜を有しない
ものよりも6〜10dB程度大きかった。また、媒体S
/Nや出力半減記録密度D50についても、同様に、下地
膜を有するものの方が下地膜を有しないものよりも大幅
に向上していた。
【0061】なお、「媒体S/N」は、孤立波再生出力
と、300kFCIの記録密度で記録したときの媒体ノ
イズの積分値との比で定義される。
【0062】交互積層下地膜を有する同垂直磁気記録媒
体について、下地膜としてTi層のみを用いた場合と比
較すると、孤立波再生出力ELFが2〜3dB程度、媒体
S/Nが25〜35%、出力半減記録密度D50が20〜
30%向上していた。よって、この垂直磁気記録媒体
は、Ti層の下地膜を持つ垂直磁気記録媒体に対しても
記録・再生特性が改善されていることが分かる。
【0063】前記の磁気的実効スペーシングをさらに小
さくすれば、媒体S/Nや記録分解能などがさらに向上
することは言うまでもない。
【0064】なお、交互積層下地膜を有する同垂直磁気
記録媒体について、自己録再方式で測定した記録・再生
特性では、孤立波再生出力ELFが、Co−17Cr−5
Ta合金磁性膜を用いた面内磁気記録媒体(残留磁化M
rと磁性膜の膜厚との積が約120G・μm)と同程度
しかなかった。このため、1平方インチ当たり数Gb以
上の記録密度の磁気ディスク装置を構成するには、自己
録再方式では装置S/Nが不足する。よって、面内磁気
記録媒体の場合と同様に、MRヘッドを用いた録再分離
方式にすることが必要である。
【0065】さらに、前記のCo−17Cr−5Ta合
金磁性膜を用いた面内磁気記録媒体と、同磁性膜と交互
積層下地膜を用いた前記の垂直磁気記録媒体について、
録再分離方式での記録・再生特性を比較すると、磁気ヘ
ッドが磁気記録媒体の表面から0.07μm浮上してい
て磁気的実効スペーシングが約0.1μmの場合でも、
垂直磁気記録媒体の方が媒体S/NおよびD50のいずれ
についても向上していた。
【0066】
【作用】この発明の第1および第2の垂直磁気記録媒体
では、非磁性基板の上に直接または他の膜を介して形成
された下地膜が、六方晶系の非磁性材料からなる第1層
と体心立方晶系の非磁性材料からなる第2層とが交互に
積層された膜より構成されるので、第1層および第2層
用のスパッタリング・ターゲットとして、添加元素を含
まない六方晶系と体心立方晶系の非磁性材料のターゲッ
トを使用することができる。よって、従来のような下地
膜形成用のスパッタリング・ターゲットに関する問題が
生じない。
【0067】また、スパッタ法や真空蒸着法により前記
第1層と第2層とを交互に積層する際に、両層の上下関
係を問わずエピタキシャル成長が可能であり、しかも、
交互に積層された各層の界面における結晶格子のわずか
な不整合により結晶成長が抑制されるため、微細な結晶
粒が得られる。このため、従来より優れた磁気特性およ
び結晶配向性が得られる。
【0068】この発明の磁気記憶装置では、前記のよう
な構成を持つ第1または第2の垂直磁気記録媒体を用い
ているので、垂直磁気記録方式特有の高い面記録密度
(例えば1平方センチ当り5ギガビット以上)で情報を
記録・再生することが可能である。
【0069】
【実施例】以下、添付図面を参照しながらこの発明の実
施例を更に詳細に説明する。◆以下の実施例1〜5は、
垂直磁気記録媒体の記録再生に、面内磁気記録媒体と同
様のヘッドを用いた場合についての実施例である。
【0070】[実施例1]図1は、この発明の実施例1
の垂直磁気記録媒体8の断面を示す。この媒体8の中心
には、それを上下に貫通する透孔が設けてある。
【0071】図1において、非磁性基板1は面方位が
(100)の単結晶Si基板であり、2.5インチ磁気
ディスク基板の標準仕様を満たしている。この基板1の
上下両面は鏡面研磨してあり、その中心線平均面粗さ
(Ra)は0.3nm、最大面粗さ(Rmax)は3n
mである。この基板1の両面にはSi熱酸化膜(厚さ2
00nm)(図示省略)が形成してある。
【0072】非磁性基板1の上面のSi熱酸化膜の上に
は、基板1側から順に第1Ti層(厚さ10nm)2、
第1Cr層(厚さ10nm)3、第2Ti層(厚さ10
nm)2、第2Cr層3(厚さ10nm)、第3Ti層
2(厚さ20nm)が形成してある。交互に積層された
これら3層のTi層2と2層のCr層3とが、下地膜4
を構成する。各Ti層2は六方晶系の非磁性層を構成
し、各Cr層3は体心立方晶系の非磁性層を構成する。
【0073】最上層の第3Ti層2(厚さ20nm)の
上には、Co−17Cr−5Ta磁性合金膜5(厚さ1
00nm)が形成してあり、その上にはさらにカーボン
保護潤滑膜6(厚さ10nm)が形成してある。
【0074】非磁性基板1の下面のSi熱酸化膜の下に
は、上面に形成したのと同じ積層体が形成してある。す
なわち、基板1側から順に第1Ti層(厚さ10nm)
2’、第1Cr層(厚さ10nm)3’、第2Ti層
(厚さ10nm)2’、第2Cr層3’(厚さ10n
m)、第3Ti層2’(厚さ20nm)が形成してあ
る。交互に積層されたこれら3層のTi層2’と2層の
Cr層3’とが、下地膜4’を構成する。各Ti層2’
は六方晶系の非磁性層を構成し、各Cr層3’は体心立
方晶系の非磁性層を構成する。
【0075】最下層の第3Ti層2’(厚さ20nm)
の下には、Co−17Cr−5Ta磁性合金膜5’(厚
さ100nm)が形成してあり、その下にはさらにカー
ボン保護潤滑膜6’(厚さ10nm)が形成してある。
【0076】以上の構成を持つ垂直磁気記録媒体8は、
公知のdcマグネトロンスパッタ装置を使用して次のよ
うにして製作したものである。◆まず、上下両面を鏡面
研磨した単結晶Si基板1を熱酸化し、その上下両面に
Si酸化膜(厚さ200nm)を形成する。
【0077】次に、公知のdcマグネトロン装置を使用
し、基板1の上下両面のSi熱酸化膜の上下に、基板1
側から順に第1Ti層(厚さ10nm)2、2’、第1
Cr層(厚さ10nm)3、3’、第2Ti層(厚さ1
0nm)2、2’、第2Cr層(厚さ10nm)3、
3’、および第3Ti層(厚さ20nm)2、2’をそ
れぞれ形成し、下地膜4、4’を形成する。さらに、最
上層の第3Ti層(厚さ20nm)2の上にCo−17
Cr−5Ta磁性合金膜(厚さ100nm)5を、最下
層の第3Ti層(厚さ20nm)2’の下にCo−17
Cr−5Ta磁性合金膜(厚さ100nm)5’をそれ
ぞれ形成する。
【0078】ここで使用したdcマグネトロンスパッタ
装置のチャンバは、超高真空対応であり、背圧は5〜6
nTorr(7〜8μPa)に設定した。また、これら
の工程において、基板1の温度は260゜C、アルゴン
ガス圧は2mTorr(0.27Pa)、投入電力密度
は1平方センチ当たり2.8Wとした。
【0079】下地膜4、4’の形成に使用したスパッタ
リング・ターゲットは、純Tiおよび純Crのターゲッ
トである。磁性合金膜5、5’の形成に使用したスパッ
タリング・ターゲットは、Co−17Cr−5Ta合金
ターゲットである。
【0080】図2は、以上の構成を持つ垂直磁気記録媒
体8を用いた磁気ディスク装置の実施例を示す。◆図2
において、複数の垂直磁気記録媒体8はスピンドルに固
定され、磁気記録媒体駆動部12によって回転駆動され
る。各磁気記録媒体8の各面にそれぞれ対応して、磁気
ヘッド9が取り付けてある。これらの磁気ヘッド9は、
磁気ヘッド駆動部10によって駆動され、磁気記録媒体
8の直径方向に移動・位置決めされる。
【0081】ここでは、各磁気ヘッド9は、記録素子と
してギャップ長0.4μm、トラック幅1.0μm、巻
線数30回の薄膜型素子を使用し、再生素子としてシー
ルド間隔0.3μm、トラック幅0.8μmのスピンバ
ルブ型MRヘッドを使用した記録再生分離型としてあ
る。記録・再生時における磁気ヘッド9と磁気記録媒体
8間の隙間は0.05〜0.06μmに設定してある。
【0082】また、磁気ヘッド駆動部10には、ピエゾ
素子とボイスコイルモータによる2段アクチュエータを
用いてある。
【0083】記録再生信号処理系11は、当該磁気ディ
スク装置の外部の情報処理装置から送られた記録信号を
処理して磁気ヘッド9に与え、記録すべき情報を磁気記
録媒体8に記録する。また、磁気ヘッド9により、磁気
記録媒体8に記録された情報を読み出して得た再生信号
を処理して、当該磁気ディスク装置の外部の情報処理装
置に送る。
【0084】[実施例2]図4は、この発明の実施例2
の垂直磁気記録媒体8aの断面を示す。この垂直磁気記
録媒体8aの構成は、下地膜4、4’が多数のTi層と
Cr層を交互積層したものからなる点を除いて、図1に
示す実施例1の垂直磁気記録媒体8と同じである。
【0085】すなわち、基板1の上位にある下地膜4
は、基板1側から順にTi層2、Cr層3、Ti層2、
Cr層3・・・・・・というように、多数の薄いTi層
2とCr層3を交互に積層してなる多層膜部分(総厚3
0nm)4aと、この多層膜部分4aの最上層の上に形
成されたTi層2(厚さ20nm)とから構成されてい
る。
【0086】同様に、基板1の下位にある下地膜4’
は、基板1側から順にTi層2’、Cr層3’、Ti層
2’、Cr層3’・・・・・・というように、多数の薄
いTi層2’とCr層3’を交互に積層してなる多層膜
部分(総厚30nm)4a’と、この多層膜部分4aの
最上層の上に形成されたTi層2’(厚さ20nm)と
から構成されている。
【0087】下地膜4の最上層のTi層(厚さ20n
m)2の上には、Co−17Cr−5Ta磁性合金膜
(厚さ100nm)5と、カーボン保護潤滑膜6(厚さ
10nm)が順に形成してある。同様に、下地膜4’の
最上層のTi層(厚さ20nm)2’の下には、Co−
17Cr−5Ta磁性合金膜(厚さ100nm)5’
と、カーボン保護潤滑膜6(厚さ10nm)が順に形成
してある。
【0088】以上の構成を持つ垂直磁気記録媒体8a
は、図5に示すdcマグネトロンスパッタ装置を使用し
て製作したものである。この装置は次のような構成を有
する。図5において、種々のターゲットを配置可能な第
1スパッタ室26および第2スパッタ室27は、いずれ
も超高真空対応であり、ゲートバルブ16を介して基板
搬送室17にそれぞれ接続してある。基板搬送室17
は、ゲートバルブ16を介して基板出し入れ室13に接
続してある。基板搬送室17内には、一対の往復移動可
能な基板搬送棒18が取り付けてある。一方の基板搬送
棒18の先端は、第1スパッタ室26内まで到達可能で
あり、他方の基板搬送棒18の先端は、第2スパッタ室
27内まで到達可能である。
【0089】第1スパッタ室26には、電磁バルブ14
を介してターボ分子ポンプ15が接続され、そのターボ
分子ポンプ15にはさらに、電磁バルブ14を介してタ
ーボ分子ポンプ15が接続されている。これらのポンプ
15により、第1スパッタ室26の内部は所定の真空度
に設定される。
【0090】同様に、第2スパッタ室27にも、電磁バ
ルブ14を介してターボ分子ポンプ15が接続され、そ
のターボ分子ポンプ15にはさらに、電磁バルブ14を
介してターボ分子ポンプ15が接続されている。これら
のポンプ15により、第2スパッタ室27の内部は所定
の真空度に設定される。
【0091】基板搬送室17には、電磁バルブ14を介
してイオンポンプ19が接続されており、そのイオンポ
ンプ19により、基板搬送室17の内部は所定の真空度
に設定される。
【0092】基板出し入れ室13には、電磁バルブ14
を介してターボ分子ポンプ15が接続されており、その
ポンプ15により、基板出し入れ室13の内部は所定の
真空度に設定される。◆なお、図5において、符号28
は成膜中の垂直磁気記録媒体を示す。
【0093】以上の構成を持つdcマグネトロンスパッ
タ装置では、垂直磁気記録媒体8a用の非磁性基板1
は、基板支持台(図示省略)に載せられ、基板出し入れ
室13と基板搬送室17の間のゲートバルブ16を閉じ
た状態で、基板出し入れ室13に入れられる。そして、
そのゲートバルブ16を開いてから基板搬送室17に搬
送される。この時、基板搬送室17と第1スパッタ室2
6または第2スパッタ室27の間のゲートバルブ16は
閉じた状態にある。
【0094】基板搬送室17内に搬送された基板1は、
基板搬送室17と第1スパッタ室26または第2スパッ
タ室27の間のゲートバルブ16を開いてから、いずれ
か一方の基板搬送棒18に押されて第1スパッタ室26
または第2スパッタ室27内に送られる。
【0095】基板1は、基板搬送棒18の操作により、
第1スパッタ室26と第2スパッタ室27の間を移動可
能である。すなわち、例えば、最初に第1スパッタ室2
6内に送られた基板1は、基板搬送棒18を用いて基板
搬送室17内に引き出すことができる。その後、基板搬
送室17内を移動し、基板搬送棒18を用いて第2スパ
ッタ室27内に送られることができる。
【0096】次に、このdcマグネトロンスパッタ装置
を使用して図4の垂直磁気記録媒体8aを製作する方法
について説明する。
【0097】基板1の導入前に、第1および第2のスパ
ッタ室26、27は、ターボ分子ポンプ15を電磁バル
ブ14を介して直列に連結した排気系により、背圧を5
〜6nTorr(7〜8μPa)に設定する。また、第
1スパッタ室26にはTiターゲット20、Crターゲ
ット21およびカーボンターゲット25を、図5に示す
ように配置する。第2スパッタ室27にはCo−17C
r−5Ta合金ターゲット22、Co−16Cr−4T
a合金ターゲット23およびMo−Cuパーマロイター
ゲット24を、図5に示すように配置する。なお、第2
スパッタ室27内のCo−16Cr−4Ta合金ターゲ
ット23およびMo−Cuパーマロイターゲット24
は、後述の実施例6で使用するものである。
【0098】基板1は、第1および第2のスパッタ室2
6、27の内部で公転可能であり、第1スパッタ室26
内のTiターゲット20、Crターゲット21およびカ
ーボンターゲット25はいずれもその公転軌道上に位置
している。同様に、第2スパッタ室27内のCo−17
Cr−5Ta合金ターゲット22、Co−16Cr−4
Ta合金ターゲット23およびMo−Cuパーマロイタ
ーゲット24は、基板1の公転軌道上に位置している。
【0099】まず、上下両面にSi酸化膜(厚さ200
nm)を形成した基板1を基板出し入れ室13内にセッ
トし、ターボ分子ポンプ15によって所定の真空度に調
整する。その後、イオンポンプ19によって所定の真空
度に調整した基板搬送室17を通って、基板搬送棒18
により第1スパッタ室26に送り、そこで260゜Cに
加熱する。
【0100】次に、その加熱した基板1を、図5の矢印
の向きに60rpmの回転速度で公転させながら、Ti
ターゲット20に1平方インチ当り5.6Wの投入電力
密度で、Crターゲット21に1平方センチ当り0.4
2Wの投入電力密度で電力を供給して成膜を行なう。こ
の時のTi層の成膜速度は0.165nm/s、Cr層
の成膜速度は0.0195nm/sである。こうして、
基板1の両面に厚さ30nmの多層膜をそれぞれ形成す
る。
【0101】この工程で得られる多層膜の総厚は30n
mである。ここで、TiとCrは、それぞれ0.165
nmと0.0195nmだけ交互に堆積される。厳密に
言えば、それぞれ1原子層以下の厚さであるから、層と
言うよりはむしろ両者が複雑に混ざりあった状態にあ
る。この積層膜は、図4に示す垂直磁気記録媒体8aの
多層膜部分4a、4a’をそれぞれ構成する。
【0102】次に、基板1の公転を止め、Tiターゲッ
ト20に対向する位置に固定する。そして、Tiターゲ
ット20に1平方センチ当り2.8Wの投入電力密度で
電力を供給し、多層膜部分4a、4a’の上下面に厚さ
20nmのTi膜2、2’をそれぞれ形成する。こうし
て、基板1の上下両面に交互積層下地膜4、4’をそれ
ぞれ形成する。なお、この工程における基板1の温度は
260゜C、アルゴンガス圧は2mTorr(0.27
Pa)とした。
【0103】続いて、基板搬送棒18を用いて、下地膜
4、4’を形成した基板1を第1スパッタ室26より基
板搬送室17に引き出し、第2スパッタ室27内に送
る。そして、基板1をCo−17Cr−5Taターゲッ
ト22に対向する位置に固定する。そこで、Co−17
Cr−5Taターゲット22に1平方センチ当り2.8
Wの投入電力密度で電力を供給し、厚さ100nmのC
o−17Cr−5Ta磁性合金膜5、5’を下地膜4、
4’の上下面にそれぞれ形成する。なお、この工程にお
ける基板1の温度は260゜C、アルゴンガス圧は2m
Torr(0.27Pa)とした。
【0104】さらに、基板搬送棒18を用いて、磁性合
金膜5、5’を形成した基板1を第2スパッタ室27よ
り基板搬送室17に引き出し、再び第1スパッタ室26
内に送る。そして、カーボンターゲット25に対向する
位置に固定した後、そのカーボンターゲット25に1平
方センチ当たり3.2Wの投入電力密度で電力を供給し
て、磁性合金膜5、5’の上下面に厚さ10nmのカー
ボン保護潤滑膜6、6’をそれぞれ形成する。なお、こ
の工程における基板1の温度は150゜C、アルゴンガ
ス圧は10mTorr(1.3Pa)とした。◆こうし
て、図4に示す垂直磁気記録媒体8aを得た。
【0105】[実施例3]実施例3の垂直磁気記録媒体
は、実施例2の垂直磁気記録媒体8a(図4参照)にお
いてTi層2、2’の代わりにZr層を用いた以外は、
実施例2と同じ構成を持つ。この垂直磁気記録媒体は、
実施例2の垂直磁気記録媒体8aの製作工程において、
Tiターゲット20に代えてZrターゲットを配置する
ことにより、上記実施例2と同様にして製作したもので
ある。
【0106】[実施例4]実施例4の垂直磁気記録媒体
は、実施例2の垂直磁気記録媒体8a(図4参照)にお
いてTi層2、2’の代わりにHf層を用いた以外は、
実施例2と同じ構成を持つ。この垂直磁気記録媒体は、
実施例2の垂直磁気記録媒体8aの製作工程において、
Tiターゲット20に代えてHfターゲットを配置する
ことにより、上記実施例2と同様にして製作したもので
ある。
【0107】[実施例5]実施例5の垂直磁気記録媒体
は、実施例2の垂直磁気記録媒体8a(図4参照)にお
いてTi層2、2’の代わりにRu層を用いた以外は、
実施例2と同じ構成を持つ。この垂直磁気記録媒体は、
実施例2の垂直磁気記録媒体8aの製作工程において、
Tiターゲット20に代えてRuターゲットを配置する
ことにより、上記実施例2と同様にして製作したもので
ある。
【0108】[比較例1]比較例1の垂直磁気記録媒体
は、実施例1の垂直磁気記録媒体8(図1参照)におい
て交互積層下地膜4、4’を除いた点以外は、実施例1
と同じ構成を持つ。この垂直磁気記録媒体は、実施例1
の垂直磁気記録媒体の製作方法において、下地膜4、
4’の工程を設けずに基板1の両面の熱酸化膜の上下に
直接、Co−17Cr−5Ta磁性合金膜5、5’を形
成したものである。
【0109】[比較例2]比較例2の垂直磁気記録媒体
は、実施例1の垂直磁気記録媒体8(図1参照)におい
て交互積層下地膜4、4’に代えて純Tiよりなる下地
膜を設けた点以外は、実施例1と同じ構成を持つ。この
純Ti下地膜は、実施例1の垂直磁気記録媒体の製作方
法における下地膜4、4’と同一の成膜条件で形成した
ものである。すなわち、チャンバ背圧:5〜6nTor
r(7〜8μPa)、基板1の温度:260゜C、アル
ゴンガス圧:2mTorr(0.27Pa)、投入電力
密度:1平方センチ当たり2.8Wである。
【0110】[試験1]実施例1〜実施例4、比較例1
および比較例2の垂直磁気記録媒体のそれぞれについ
て、磁気特性、結晶学的特性および記録・再生特性を測
定した。その結果を表1および表2に示す。
【0111】(1)磁気特性 実施例1〜4、比較例1および2の各磁気記録媒体につ
いて、その中心より半径25mmの円周上の1点を中心
として直径7mmの円板状に切り出し、試料とした。そ
の後、これら試料の片面(下面)のカーボン保護潤滑
膜、六方晶系磁性合金膜および下地膜を取り除いてから
振動試料型磁力計(VSM)にセットし、それらの磁化
曲線を求めた。さらに、それら磁化曲線より磁気特性を
求めた。
【0112】表1には、飽和磁化Ms、膜厚方向の残留
磁化Mr1、膜面方向の残留磁化Mr2、膜厚方向の保磁
力Hc1、膜面方向の保磁力Hc2、異方性磁界Hk1、
膜面方向の角形比(Mr2/Ms)を示している。膜厚
方向の保磁力Hc1、膜厚方向の残留磁化Mr1および異
方性磁界Hk1が大きく、Hc2および(Mr2/Ms)
が小さいほど、膜厚方向の磁気的異方性が大きくかつ磁
気的異方性の分散が少ないことを示すため、垂直磁気記
録媒体として好適な磁気特性であると言える。
【0113】なお、すべての試料において、前記半径2
5mmの円と同心の他の円周上の4個所について同様の
測定を行なったが、磁気特性のばらつきはほとんど見ら
れなかった。
【0114】(2)結晶学的特性 X線回折法を用い、θ−2θ法における六方晶系合金磁
性膜すなわちCo−17Cr−5Ta合金磁性膜による
(002)反射の回折強度I002と、その(002)反
射のロッキング曲線の半値幅Δθ50を測定した。その結
果を表2に示す。I002が大きくΔθ50が小さいこと
が、c面配向性(結晶配向性)が良好であることの目安
になる。
【0115】(3)記録・再生特性 実施例1の磁気ディスク装置(図2参照)を構成する記
録再生系を用いて測定した。
【0116】表2には、孤立波再生出力ELF、出力半減
記録密度D50と媒体S/Nを示している。ただし、再生
出力、媒体ノイズ等の値は、磁気ヘッドの再生素子から
出力された直後の値(信号処理を行なう前の値)を用い
ており、ELFと媒体S/Nは、比較例1の値を1とした
相対値で表わしている。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】(4)評価 磁気特性では、表1より、実施例1〜5は比較例1に比
べて特に、膜厚方向の保磁力Hc1と異方性磁界Hk1
が大きくなっているので、垂直磁気記録媒体として好適
な膜厚方向の磁気異方性が向上していることが分かる。
比較例2との対比では、比較例1に比べると磁気特性の
改善度は少ない。
【0120】結晶学的特性では、表2より、実施例1〜
5のX線回折強度I002は比較例2のそれに比べて2倍
近い値であり、比較例1に対してもかなり大きくなって
いる。また、実施例1〜5の半値幅Δθ50は、比較例1
および2のそれに比べてかなり小さくなっている。よっ
て、実施例1〜5のc面配向性(結晶配向性)が改善さ
れていることが分かる。
【0121】記録・再生特性では、実施例1〜5の孤立
波再生出力ELF、出力半減記録密度D50および媒体S/
Nは、比較例1および2のそれに比べて大きくなってお
り、これらの特性のいずれについても改善されているこ
とが分かる。特に、比較例1に対する改善度が高い。
【0122】(5)その他 実施例1ないし実施例5において、Co−17Cr−5
Ta合金磁性膜5、5’に代えて、Co−22Cr、C
o−18Cr−8Pt、Co−16Cr−2W、Co−
20Cr−5Ti、Co−21Sm等の磁性膜を用いて
も同様の効果があった。さらに、Cr膜3、3’に代え
て、Mo、W、V、Nb、Ta等の膜を用いても同様の
効果があった。
【0123】[実施例6]実施例6は、垂直磁気記録に
適した単磁極ヘッドといわゆる垂直二層膜媒体とを組み
合わせた場合の実施例である。
【0124】図6は、実施例6の垂直磁気記録媒体8b
の断面を示す。この媒体8bの中心には、実施例1およ
び2の媒体8、8aと同様に、それを上下に貫通する透
孔が設けてある。
【0125】図6において、非磁性基板1は面方位が
(100)の単結晶Si基板であり、1.8インチ磁気
ディスク基板の標準仕様を満たしている。この基板1の
上下両面は鏡面研磨してあり、その中心線平均面粗さ
(Ra)は0.3nm、最大面粗さ(Rmax)は3n
mである。この基板1の両面にはSi熱酸化膜(厚さ3
00nm)(図示省略)が形成してある。
【0126】非磁性基板1の上面のSi熱酸化膜の上に
は、Ti層とCr層とを交互に積層してなる下地膜4が
形成してある。この下地層4は、実施例1の磁気記録媒
体8(図1参照)の下地層とほぼ同様の構成を持ってい
る。すなわち、基板1側から順に第1Ti層(厚さ10
nm)2、第1Cr層(厚さ5nm)3、第2Ti層
(厚さ5nm)2、および第2Cr層3(厚さ5nm)
の4層が積層された構成である。各Ti層2は六方晶系
の非磁性層を構成し、各Cr層3は体心立方晶系の非磁
性層を構成する。
【0127】実施例1の媒体8では、下地膜4が5層か
ら構成され、その最上層はTi層(厚さ20nm)であ
るのに対し、この実施例6では、下地膜4が4層から構
成され、その最上層が第2Cr層3である点で、両者は
異なっている。
【0128】最上層の第2Cr層2(厚さ5nm)の上
には、Mo−Cr−パーマロイ高透磁率磁性膜7(厚さ
500nm)が形成してあり、その上にCo−16Cr
−4Ta磁性合金膜5(厚さ50nm)が形成してあ
る。すなわち、2層の磁性膜が積層されているのであ
る。Co−16Cr−4Ta磁性合金膜5の上に、カー
ボン保護潤滑膜6(厚さ10nm)が形成してある。
【0129】非磁性基板1の下面のSi熱酸化膜の下に
は、上面に形成したのと同じ積層体が形成してある。す
なわち、基板1側から順に、下地膜4’を構成する第1
Ti層(厚さ10nm)2’、第1Cr層(厚さ5n
m)3’、第2Ti層(厚さ5nm)2’、および第2
Cr層3’(厚さ5nm)が積層形成してある。各Ti
層2’は六方晶系の非磁性層を構成し、各Cr層3’は
体心立方晶系の非磁性層を構成する。
【0130】最下層の第2Cr層2’(厚さ5nm)の
下には、Mo−Cr−パーマロイ高透磁率磁性膜7’
(厚さ500nm)が形成してあり、その下にCo−1
6Cr−4Ta磁性合金膜5’(厚さ50nm)が形成
してある。Co−16Cr−4Ta磁性合金膜5の下に
は、カーボン保護潤滑膜6’(厚さ10nm)が形成し
てある。
【0131】以上の構成を持つ垂直磁気記録媒体8b
は、図5に示すdcマグネトロンスパッタ装置を使用し
て次のようにして製作したものである。◆基板1の導入
前に、第1および第2のスパッタ室26、27は、ター
ボ分子ポンプ15を電磁バルブ14を介して直列に連結
した排気系により、背圧を3〜4nTorr(4〜5μ
Pa)に設定する。
【0132】まず、上下両面にSi酸化膜(厚さ200
nm)を形成した基板1を基板出し入れ室13内にセッ
トし、ターボ分子ポンプ15によって所定の真空度に調
整する。その後、イオンポンプ19によって所定の真空
度に調整した基板搬送室17を通って、基板搬送棒18
により第1スパッタ室26に送り、そこで280゜Cに
加熱する。第1スパッタ室26内のアルゴンガス圧は
1.5mTorr(0.20Pa)とする。
【0133】次に、その加熱した基板1をTiターゲッ
ト20に対向する位置に固定し、そのTiターゲット2
0に1平方インチ当り5.6Wの投入電力密度で電力を
供給し、基板1の上下両面のSi酸化膜の上下に厚さ1
0nmの第1Ti層2、2’をそれぞれ形成する。
【0134】次に、その基板1をCrターゲット21に
対向する位置に固定した後、そのCrターゲット21に
1平方センチ当り5.6Wの投入電力密度で電力を供給
し、上下両面の第1Ti層2、2’の上下に厚さ5nm
の第1Cr層3、3’をそれぞれ形成する。
【0135】続いて、同じ成膜条件で、第1Cr層3、
3’の上下に厚さ5nmの第2Cr層3、3’を、さら
に、その上下に厚さ5nmの第2Cr層3、3’をそれ
ぞれ形成する。こうして、基板1の上下両面にそれぞれ
形成された下地膜4、4’を得る。
【0136】続いて、基板搬送棒18を用いて、下地膜
4、4’を形成した基板1を第1スパッタ室26より基
板搬送室17に引き出し、第2スパッタ室27内に送
る。そして、基板1をMo−Cr−パーマロイ・ターゲ
ット24に対向する位置に固定する。そこで、そのター
ゲット24に1平方センチ当り5.6Wの投入電力密度
で電力を供給し、厚さ500nmのMo−Cr−パーマ
ロイ高透磁率磁性膜7、7’を下地膜4、4’の上下面
にそれぞれ形成する。なお、この工程における基板1の
温度は280゜C、アルゴンガス圧は1.5mTorr
(0.20Pa)とした。
【0137】続いて、基板1をCo−16Cr−4Ta
ターゲット23に対向する位置に固定し、Mo−Cr−
パーマロイ高透磁率磁性膜7、7’の場合と同じ成膜条
件で、Co−16Cr−4Ta磁性合金膜5、5’をM
o−Cr−パーマロイ高透磁率磁性膜7、7’の上下に
それぞれ形成する。
【0138】さらに、基板搬送棒18を用いて、Mo−
Cr−パーマロイ高透磁率磁性膜7、7’と磁性合金膜
5、5’とを形成した基板1を、第2スパッタ室27よ
り基板搬送室17に引き出し、再び第1スパッタ室26
内に送る。そして、カーボンターゲット25に対向する
位置に固定した後、そのカーボンターゲット25に1平
方センチ当たり6.0Wの投入電力密度で電力を供給し
て、磁性合金膜5、5’の上下面に厚さ10nmのカー
ボン保護潤滑膜6、6’をそれぞれ形成する。なお、こ
の工程における基板1の温度は150゜C、アルゴンガ
ス圧は10mTorr(1.3Pa)とした。◆こうし
て、図6に示す垂直磁気記録媒体8bを得た。
【0139】図6に示す垂直磁気記録媒体8bを用い
て、実施例1と同様の磁気ディスク装置(図2参照)を
製作した。磁気記録媒体8bに情報の記録・再生を行な
う磁気ヘッド9は、実施例1のそれとは異なり、記録素
子として主磁極膜厚0.3μm、トラック幅0.8μ
m、巻線数56回の単磁極型素子を使用し、再生素子と
してシールド間隔0.25μm、トラック幅0.6μm
のスピンバルブ型MRヘッドを使用した記録再生分離型
である。記録・再生時における磁気ヘッド9と磁気記録
媒体8b間の隙間は0.06〜0.07μmに設定して
ある。
【0140】[比較例3]比較例3の垂直磁気記録媒体
は、実施例6の垂直磁気記録媒体8bにおいて交互積層
下地膜4、4’を除いた点以外は、実施例6と同じ構成
を持つ。この垂直磁気記録媒体は、実施例6の垂直磁気
記録媒体の製作方法において、下地膜4、4’の工程を
設けずに基板1の両面の熱酸化膜の上下に直接、Mo−
Cu−パーマロイ高透磁率磁性膜5、5’を形成したも
のである。
【0141】[試験2]実施例6と比較例3の垂直磁気
記録媒体のそれぞれについて、磁気特性、結晶学的特性
(結晶配向性)および記録・再生特性を測定した。その
結果を表3に示す。
【0142】(1)磁気特性 実施例6および比較例3の各磁気記録媒体について、そ
の中心より半径15mmの円周上の1点を中心として直
径7mmの円板状に切り出し、試料とした。その後、こ
れら試料の片面(下面)のカーボン保護潤滑膜、六方晶
系磁性合金膜、高透磁率磁性膜および下地膜を取り除い
てから振動試料型磁力計(VSM)にセットし、それら
の磁化曲線を求めた。さらに、それら磁化曲線より磁気
特性を求めた。
【0143】なお、表3に示した磁気特性は、六方晶系
磁性合金膜5のみによるものである。この値は、予め別
の試料で高透磁率磁性膜7のみの磁気特性を測定してお
き、前記試料から測定した磁気特性からこれを差し引く
ことによって得たものである。
【0144】また、すべての試料において、前記半径1
5mmの円と同心の他の円周上の4個所について同様の
測定を行なったが、磁気特性のばらつきはほとんど見ら
れなかった。
【0145】(2)結晶学的特性(結晶配向性) X線回折法を用い、θ−2θ法における六方晶系合金磁
性膜すなわちCo−16Cr−4Ta合金磁性膜による
(002)反射のロッキング曲線の半値幅Δθ50を測定
した。Δθ50が小さいことが、c面配向性(結晶配向
性)が良好であることの目安になる。
【0146】(3)記録・再生特性 表3には、孤立波再生出力ELF、出力半減記録密度D50
と媒体S/Nを示している。ただし、再生出力、媒体ノ
イズ等の値は、磁気ヘッドの再生素子から出力された直
後の値(信号処理を行なう前の値)を用いており、ELF
と媒体S/Nは、比較例1の値を1とした相対値で表わ
している。
【0147】
【表3】
【0148】(4)評価 磁気特性では、表3より、実施例6は比較例3に比べ
て、膜厚方向の保磁力Hc1が大きく膜面方向の角形比
(Mr2/Ms)が小さくなっている。よって、実施例
6は、比較例3に比べて、垂直磁気記録媒体として重要
な磁気特性が大きく改善されていることが分かる。
【0149】結晶学的特性では、表3より、実施例6の
半値幅Δθ50は、比較例3のそれに比べて非常に小さく
なっている。よって、実施例6のc面配向性(結晶配向
性)が大きく改善されていることが分かる。
【0150】記録・再生特性では、実施例6の孤立波再
生出力ELF、出力半減記録密度D50および媒体S/N
は、比較例3のそれに比べて大きくなっており、これら
の特性のいずれについても改善されていることが分か
る。
【0151】(5)その他 実施例6において、Co−16Cr−4Ta合金磁性膜
5、5’に代えて、Co−21Cr、Co−14Cr−
3Pt、Co−15Cr−3W、Co−20Sm等の合
金磁性膜を用いても同様の効果が得られた。また、Mo
−Cr−パーマロイ高透磁率磁性膜5、5’に代えて、
Fe−20Ni合金であるパーマロイ、Nb−パーマロ
イ、Mo−パーマロイ等の高透磁率磁性膜を用いても同
様な効果が得られた。
【0152】さらに、高透磁率磁性膜9、9’と六方晶
系磁性合金膜7、7’との間に、純Tiの中間膜や、T
i−15Ta、Ti−14Nb、Ti−10Cr等のT
i基合金の中間膜を形成してもよい。こうすれば、六方
晶系磁性合金膜7、7’の結晶配向性や磁気特性が改善
されるので、いっそう望ましい。
【0153】上記実施例1〜6では、いずれも非磁性基
板1として熱酸化Si単結晶基板を用いているが、表面
がアモルファスな材料でかつ上記の熱酸化Si単結晶基
板と同等の表面平滑性があり、さらに少なくとも300
゜C程度の耐熱性があるガラス基板、カーボン基板ある
いは自然酸化膜のついたSi単結晶基板等も用いること
ができる。
【0154】
【発明の効果】この発明の垂直磁気記録媒体によれば、
下地膜形成用のスパッタリング・ターゲットに関する問
題が生じないと共に、従来より優れた磁気特性および結
晶配向性が得られる。
【0155】この発明の磁気記憶装置によれば、垂直磁
気記録方式特有の高い面記録密度(例えば1平方インチ
当り5ギガビット以上)で情報を記録・再生することが
可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の垂直磁気記録媒体の断面
図である。
【図2】(a)はこの発明の一実施例の磁気ディスク装
置の平面模式図であり、(b)はそのA−A’線に沿っ
た断面図である。
【図3】(a)は下地膜を有する垂直磁気記録媒体に磁
界を加えた時の磁化曲線を示し、(b)は前記下地膜を
有しない垂直磁気記録媒体に磁界を加えた時の磁化曲線
を示す図である。
【図4】この発明の他の実施例の垂直磁気記録媒体の断
面図である。
【図5】この発明の垂直磁気記録媒体の製作装置の一例
を示す概略図である。
【図6】この発明のさらに他の実施例の垂直磁気記録媒
体の断面図である。
【符号の説明】
1 :非磁性基板 2、2’:六方晶系非磁性層 3、3’:体心立方晶系非磁性層 4、4’:交互積層下地膜 5、5’:六方晶系磁性合金膜 6、6’:保護潤滑膜 7、7’:高透磁率磁性膜 8、8a、8b:垂直磁気記録媒体 9 :磁気ヘッド 10 :磁気ヘッド駆動系 11 :記録再生信号処理系 12 :磁気記録媒体駆動部 13 :基板出し入れ室 14 :電磁バルブ 15 :ターボ分子ポンプ 16 :ゲートバルブ 17 :基板搬送室 18 :基板搬送棒 19 :イオンポンプ 20 :Tiターゲット 21 :Crターゲット 22 :Co−17Cr−5Taターゲット 23 :Co−16Cr−4Taターゲット 24 :Mo−Cuパーマロイターゲット 25 :カーボンターゲット 26 :第1スパッタ室 27 :第2スパッタ室 28 :成膜中の垂直磁気記録媒体
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年11月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 城石 芳博 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 鈴木 幹夫 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基板の上に直接または他の膜を介
    して形成された下地膜と、その下地膜の上に形成された
    六方晶系磁性合金膜とを備え、前記下地膜が、六方晶系
    の非磁性材料からなる第1層と体心立方晶系の非磁性材
    料からなる第2層とが交互に積層された多層膜より構成
    されることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 非磁性基板の上に直接または他の膜を介
    して形成された下地膜と、その下地膜の上に形成された
    高透磁率磁性膜と、その高透磁率磁性膜の上に形成され
    た六方晶系磁性合金膜とを備え、前記下地膜が、六方晶
    系の非磁性材料からなる第1層と体心立方晶系の非磁性
    材料からなる第2層とが交互に積層された多層膜より構
    成されることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記第1層が、前記基板の表面に垂直に
    c面が優先配向した六方晶系の非磁性層であり、前記第
    2層が、前記基板の表面に垂直に(110)面が優先配
    向した体心立方晶系の非磁性層である請求項1または2
    に記載の垂直磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記第1層が、Ti、Zr、Hfおよび
    Ruから成る群から選ばれた少なくとも1種の元素の層
    である請求項1〜3のいずれかに記載の垂直磁気記録媒
    体。
  5. 【請求項5】 前記第1層が、Ti、Zr、Hfおよび
    Ruから成る群から選ばれた少なくとも1種の元素を主
    成分とする合金の層である請求項1〜3のいずれかに記
    載の垂直磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 前記第1層が、Ti、Zr、Hfおよび
    Ruから成る群から選ばれた少なくとも1種の元素を主
    成分とする合金の層であり、しかも、Ta、Nb、C
    r、Mo、V、W、Mn、Ni、Cu、C、Siおよび
    Geから成る群から選ばれた少なくとも1種の元素をさ
    らに含んでいる請求項1〜3のいずれかに記載の垂直磁
    気記録媒体。
  7. 【請求項7】 前記のTa、Nb、Cr、Mo、V、
    W、Mn、Ni、Cu、C、SiおよびGeから成る群
    から選ばれた少なくとも1種の元素の組成比が1at%
    以上、7at%以下である請求項6に記載の垂直磁気記
    録媒体。
  8. 【請求項8】 前記第1層に含まれているTa、Nbお
    よびCrのうちの少なくとも1種の元素の組成比が、2
    at%以上、5at%以下である請求項7に記載の垂直
    磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】 前記第1層が、Ti、Zr、Hfおよび
    Ruから成る群から選ばれた少なくとも1種の元素を主
    成分とする合金の層であり、しかも、Pt、Pd、A
    g、Ru、Os、PhおよびIrから成る群から選ばれ
    た少なくとも1種の元素をさらに含んでいる請求項5に
    記載の垂直磁気記録媒体。
  10. 【請求項10】 前記のPt、Pd、Ag、Ru、O
    s、PhおよびIrから成る群から選ばれた少なくとも
    1種の元素の組成比が0.1at%以上、7at%以下
    である請求項9に記載の垂直磁気記録媒体。
  11. 【請求項11】 前記のPt、Pd、Ag、Ru、O
    s、PhおよびIrから成る群から選ばれた少なくとも
    1種の元素の組成比が、2at%以上、5at%以下で
    ある請求項9に記載の垂直磁気記録媒体。
  12. 【請求項12】 前記第2層が、Cr、Mo、W、V、
    NbおよびTaから成る群から選ばれた少なくとも1種
    の元素の層である請求項1〜11のいずれかに記載の垂
    直磁気記録媒体。
  13. 【請求項13】 前記第2層が、Cr、Mo、W、V、
    NbおよびTaから成る群から選ばれた少なくとも1種
    の元素を主成分とした合金の層である請求項1〜11の
    いずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
  14. 【請求項14】 前記第2層が、Cr、Mo、W、V、
    NbおよびTaから成る群から選ばれた少なくとも1種
    の元素を主成分とした合金の層であり、しかも、Ti、
    Zr、HfおよびRuから成る群から選ばれた少なくと
    も1種の元素をさらに含んでいる請求項1〜11のいず
    れかに記載の垂直磁気記録媒体。
  15. 【請求項15】 前記のTi、Zr、HfおよびRuか
    ら成る群から選ばれた少なくとも1種の元素の組成比
    が、1at%以上、7at%以下である請求項14に記
    載の垂直磁気記録媒体。
  16. 【請求項16】 前記のTi、Zr、HfおよびRuか
    ら成る群から選ばれた少なくとも1種の元素の組成比
    が、2at%以上、5at%以下である請求項14に記
    載の垂直磁気記録媒体。
  17. 【請求項17】 前記下地膜を構成する前記第1層およ
    び第2層のうち、前記六方晶系磁性膜合金膜に最も近い
    層が、前記第1層である請求項1〜16のいずれかに記
    載の垂直磁気記録媒体。
  18. 【請求項18】 前記六方晶系磁性合金膜が、Coの組
    成比が50at%以上のCo基の合金膜であり、且つそ
    のc面が前記基板の表面に垂直な方向に優先配向してい
    る請求項1〜17のいずれかに記載の垂直磁気記録媒
    体。
  19. 【請求項19】 前記Co基合金膜が、Cr、V、M
    o、W、Mn、Re、SmおよびOから成る群から選ば
    れた少なくとも1種の元素を含んでいる請求項18に記
    載の垂直磁気記録媒体。
  20. 【請求項20】 前記のCr、V、Mo、W、Mn、R
    e、SmおよびOから成る群から選ばれた少なくとも1
    種の元素の組成比が、0.1at%以上、25at%以
    下である請求項19に記載の垂直磁気記録媒体。
  21. 【請求項21】 前記Co基合金膜が、さらに、Zr、
    Ti、Hf、Ta、Ru、Rh、PdおよびPtから成
    る群から選ばれた少なくとも1種の元素を含んでいる請
    求項19または20に記載の垂直磁気記録媒体。
  22. 【請求項22】 前記のZr、Ti、Hf、Ta、R
    u、Rh、PdおよびPtから成る群から選ばれた少な
    くとも1種の元素の組成比が、0.1at%以上、15
    at%以下である請求項21に記載の垂直磁気記録媒
    体。
  23. 【請求項23】 前記高透磁率磁性膜が、面心立方晶系
    のパーマロイ磁性膜または面心立方晶系のパーマロイを
    主成分とする合金磁性膜である請求項1〜22のいずれ
    かに記載の垂直磁気記録媒体。
  24. 【請求項24】 請求項1〜23のいずれかに記載の垂
    直磁気記録媒体と、その垂直磁気記録媒体に情報を記録
    ・再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記憶装置。
  25. 【請求項25】 前記磁気ヘッドが、再生素子に磁気抵
    抗効果素子を用いた記録・再生分離型ヘッドである請求
    項24に記載の磁気記憶装置。
  26. 【請求項26】 前記磁気抵抗効果素子がスピンバルブ
    型である請求項25に記載の磁気記憶装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2009017062A1 (ja) * 2007-07-30 2009-02-05 Showa Denko K.K. 垂直磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置

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WO2009017062A1 (ja) * 2007-07-30 2009-02-05 Showa Denko K.K. 垂直磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置

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