JPH08164169A - 医療用エアーマット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は医療用エアーマットに関し、例えば
長期間、寝たきりの病人がベッド上等においてギャッジ
アップの姿勢をとる場合に、いわゆる臀部の底着き現象
を防止して褥瘡の発生を確実に防止するものである。 【構成】 マット本体１の長さ方向に並設した適宜数の
エアーセル２を可変セル部３Ａと固定セル部３Ｂとによ
るセル単体により形成し、可変セル部は所定時間毎にエ
アーの移送回路別に膨張または収縮を交互に繰り返し、
固定セル部には常時、給気が行われて膨張を維持して特
にギャッジアップ時の褥瘡を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は医療用エアーマットに関
し、例えば病人が長時間、褥瘡がなく使用するのに適す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】寝返り等を自らうてない重病人や障害者
が長期間、床に伏す場合、褥瘡が身体にできることがあ
る。褥瘡のできる原因としては、例えば寝具からの体圧
が身体の一定個所に略垂直方向または略水平方向から加
わったり、身体と寝具との間の接触面に摩擦力が加わる
等の外部的要因が加わること、血行不良を生ずること、
体力の衰えや栄養状態が悪くなる等の不健康な体質にな
ること、汗、失禁等により湿気のある状態が続くため身
体が過湿気味で糜爛ができ易い状況にあること、身体を
不潔にしたため細菌が繁殖すること等の要因が考えられ
る。そして褥瘡を防止するための医療用エアーマットと
して従来、次の構造のものがある。すなはち、ゴム、布
等の柔軟性材料で形成されたベースシートと、可撓性お
よび吸湿性を有するように布地に高重合ポリマーフィル
ムをラミネート加工等して形成され、内部に送り込まれ
るエアーの移送回路を異にするセルを前記ベースシート
の長さ方向に交互に並設した適宜数の略円筒状のエアー
セルと、該エアーセルをエアーの移送回路別に膨張又は
収縮を繰返すように所定時間毎にエアーを前記エアーセ
ルに送り込むエアーポンプとから構成される医療用エア
ーマットである。使用に際しては、病人がエアーマット
上に寝たまま、所定時間毎にエアーポンプを作動してエ
アーの移送回路を異にするエアーセル毎に所定時間づつ
エアーを送り込み、膨張または収縮を繰り返すことによ
り、病人等の体位をエアーマットの長さ方向において波
形に変化させ、局部的に強い体圧が一個所に集中して加
わるのを防止するとともに運動機能を高めて血行を促
し、褥瘡を防止しようとするものである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
のエアーマットは、本質的に病人がエアーマット上に仰
臥位（あおむけに寝たままの姿勢）での使用を前提とし
て設計されるものであり、褥瘡を防止しようとするもの
であった。この際、仰臥位においては仙骨付近に最も体
圧が集中する。従って病人をなるべく寝たきりにさせな
いために、積極的な離床を促進したり、例えばベッドに
敷設したエアーマット上での起座保持を積極的に促進す
るものではなく、ギャッジアップをしたままの姿勢（上
半身を起こしたままの姿勢）が長時間、維持することを
予定してはいなかった。

【０００４】そして、身体に加わる圧力を分散するとい
う点から考えると、病人が例えばエアーマット上に上半
身を起こしたままの座位の姿勢をとることは、仰臥位に
比較して褥瘡の発生の危険度が高く、座骨結節付近での
非常に狭いポイントで病人、自らが体重を支えることに
なる。このため、エアーマットのセルは体重により押潰
されて病人の臀部が例えばベッドの床面につく等のエア
ーマットのいわゆる底着き現象を生じて褥瘡等が生じ易
い原因になっていた。例えば病人がベッド上で傾斜角が
３０度以上のギャッジアップの姿勢を長時間とること
は、褥瘡ができ易く好ましくはなかった。

【０００５】本発明は上記従来の欠点を解決するもので
あり、長時間、寝たきりの病人がギャッジアップの姿勢
をとる場合に、いわゆる臀部の底着き現象を防止して褥
瘡の発生を確実に予防し得る医療用エアーマットを提供
するのにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、エアーの移送回路を異にする毎にマット本
体の長さ方向に並設した適宜数のエアーセルと、該エア
ーセルの移送回路毎に膨張又は収縮を繰返し行うように
所定時間毎に弁を切換えてエアーを送り込んだりまたは
排出させるエアーポンプとから成る医療用エアーマット
において、前記エアーセルは柔軟性材料を用いて少なく
とも可変セル部と固定セル部とよりなるセル単体により
形成され、前記可変セル部は所定時間毎にエアーの移送
回路別に膨張または収縮を交互に繰り返され、前記固定
セル部は常時、給気がされることにより膨張状態が維持
可能に配列されるという手段を採用した。

【０００７】

【作用】マット本体の長さ方向に適宜数十本並設したセ
ル単体の上層の可変セル部をエアーポンプにより移送回
路を異にする毎に膨張または収縮を繰り返し、下層の固
定セル部にはエアーポンプにより給気を行って常時、膨
張させて支持することにより体圧の分散を行う。

【０００８】

【実施例】以下、図１乃至図８に従って本発明の一実施
例につき説明する。１は横長のマット本体である。２は
前記マット本体１の長さ方向に例えば表面シート１ａに
包まれるように並設した適宜数のエアーセルであり、こ
のエアーセル２は例えば吸湿性を有する柔軟性材料、例
えば布地に高重合ポリマーフィルムをラミネート加工す
る等したものを用いて上下方向に可変セル部３Ａと固定
セル部３Ｂとの２層のセル層を有するセル単体３ａ，３
ｂ，３ｃ，３ｄ…を適宜数十本、並設することにより形
成される。

【０００９】このセル単体３ａ，３ｂ，３ｃ，３ｄ…を
形成するのには例えば図６乃至図８に示すように、規定
の大きさの柔軟性材料よりなる１枚のシートを断面略８
字状に折曲して対向した円筒部４，４′を連設し、該円
筒部４，４′の中間と上端または下端との閉鎖端縁５ａ
₁ ，５ａ₂ および左右の側縁５ｂ₁ ，５ｂ₂ との４個所
を例えば図６に示すように固着することにより、前記可
変セル部３Ａと前記固定セル部３Ｂとを形成する。この
ようにしたのは、材料の切断作業、折曲作業、位置合わ
せ作業、固着作業等の各作業と材料費等とを省いて安価
にエアーセル２を製作するためである。この際の固着手
段は、接着剤を用いて接着するか、または高周波溶着す
ることにより行われる。

【００１０】また前記可変セル部３Ａは、例えば奇数番
目に相当するセル単体３ａ，３ｃ…と、偶数番目に相当
するセル単体３ｂ，３ｄ…とはエアーの移送回路を異に
して所定時間毎にエアーの移送回路別に膨張または収縮
を交互に繰り返す。

【００１１】６は給気・排気手段であり、この給気・排
気手段６は前記エアーセル２の可変セル部３Ａの一側縁
部に略直線状に２本のパイプ７ａ，７ｂを上下に並設し
て形成される連結パイプ７と、奇数番目に相当する前記
セル単体３ａ，３ｃ…の可変セル部３Ａと、偶数番目に
相当するセル単体３ｂ，３ｄ…の可変セル部３Ａとの側
端に対応して２本の前記パイプ７ａ，７ｂを接続するた
めに、該パイプ７ａ，７ｂ側に配置されるコネクタ８，
８′とから形成される。

【００１２】このコネクタ８，８′は例えば図３に示す
ように合成樹脂により平面略Ｔ字状に形成され、奇数番
目の相当する前記セル単体３ａ，３ｃ…の可変セル部３
Ａと、偶数番目に相当するセル単体３ｂ，３ｄの可変セ
ル部３Ａとの側端に対応して前記連結パイプ７の前記パ
イプ７ａ，７ｂに形成した切欠孔９内に着脱自在に嵌入
される左右の管端部１０ａ，１０ａと、該管端部１０
ａ，１０ａの略中央に設けられ、奇数番目の前記セル単
体３ａ，３ｃ…または偶数番目のセル単体３ｂ，３ｄ…
の可変セル部３Ａに接続される管端部１０ｂとから形成
される。この管端部１０ｂのエアーセル２までの長さは
自由に選択ができ、また必要によってはさらに接続用の
短管を用いて管端部１０ｂとエアーセル２とを接続して
もよい。そして、エアーの移送回路を異にする毎にマッ
ト本体１の長手方向に並設した可変セル部３Ａは所定時
間毎にエアーポンプＰから給気または排気が行われる
と、奇数番目の可変セル部３Ａまたは偶数番目の可変セ
ル部３Ａが交互に膨張または収縮を繰り返す。

【００１３】６′は同様に固定セル部３Ｂに給気または
排気をするための給気・排気手段であり、この給気・排
気手段６′は前記エアーセル２の固定セル部３Ｂの一側
縁部に略直線状に前記可変セル部３Ａと同様に２本のパ
イプ７′ａ，７′ｂを上下に並設して形成される連結パ
イプ７′と、固定セル部３Ｂとの側端に対応して２本の
前記パイプ７′ａ，７′ｂを接続するためのコネクタ
８，８′とから形成される。このコネクタ８，８′の構
造は前記実施例と同様のものが使用される。そしてエア
ーポンプＰからの給気により、固定セル部３Ｂは常時、
膨張される。この給気に要する時間は、例えばタイマー
による設定時間にて前記エアーポンプＰをコントロール
することにより容易に調整される。

【００１４】本発明の一実施例は以上の構成からなり、
使用にあたっては病人等が、例えばベッド上に敷設した
マット本体１に寝た状態でエアーポンプＰを作動させる
と、このエアーポンプＰは所定時間、例えば５分経過す
ると、エアーの移送回路が切換えられるので、マット本
体１の長手方向に適宜数十本、並設して移送回路を異に
したエアーセル２の奇数番目に配置されるセル単体３
ａ，３ｃ…と、偶数番目に配置されるセル単体３ｂ，３
ｄ…とのそれぞれの可変セル部３Ａは、エアーポンプＰ
の送風・排出作用により例えば５分毎にエアーが移送さ
れたり、または排出され、交互に膨張または収縮が繰り
返される。この際、マット本体１上の長手方向に、適宜
数十本、並設したエアーセル２のセル単体３ａ，３ｂ，
３ｃ，３ｄ，３ｅ…の上層の可変セル部３Ａに上下対向
して設けた下層の固定セル部３Ｂには、エアーポンプＰ
から常時、給気が行われて膨張され続けられている。

【００１５】従ってマット本体１の上層においては、可
変セル部３Ａが奇数番目のセル単体３ａ，３ｃ…と偶数
番目のセル単体３ｂ，３ｄ…とで交互に膨張または収縮
を繰り返し、下層においては各可変セル部３Ａの下方に
上下対向して連設した固定セル部３Ｂが常時、膨張し続
けることにより可変セル部３Ａを支持しているので、病
人はマット本体１上に仰臥している場合に、マット本体
１から受ける体位は長手方向に柔軟に変化され、局部的
に１個所に集中することがなく分散される。また寝たま
ま運動されることにより血行が促進されるので、褥瘡は
防止される。

【００１６】また図５に示すように例えばベッドの上半
部が所望角度、起立する等して病人が必要に応じてマッ
ト本体１上において上半身を起こして座位の姿勢をとる
ギャッジアップが行われる場合に、膨張または収縮が交
互に行われる奇数番目のセル単体３ａ，３ｃ…と、偶数
番目のセル単体３ｂ，３ｄ…とは、常時、膨張されてい
る下層の固定セル部３Ｂにより支持されているので、病
人が座骨結節付近での非常に狭いポイントにて自らの体
重を支える場合でも、従来の例えばエアーマットのよう
にセルが体重により完全に押潰されることがない。従っ
て病人の臀部が例えばベッドの床面につくという底着き
は固定セル部３Ｂによりなくなる。

【００１７】この際、ベッド上におけるマット本体１の
傾斜角θが例えば３０度以上のギャッジアップの姿勢を
病人等がとると、仙骨Ｋと筋肉とが重力のために下方へ
移動し、しかも皮膚と皮下組織とがシーツＳに固定され
る等して体がずり落ちようとするが、下層においては固
定セル部３Ｂにより病人の体重は確実に支持されてずり
落ちを防止でき、シーツＳに対する摩擦に起因する固定
を軽減できるとともに上層においては奇数番目のセル単
体３ａ，３ｃ…と偶数番目のセル単体３ｂ，３ｄ…とに
よる可変セル部３Ａは、移送回路を異にする毎に交互に
膨張または収縮が滑らかに繰り返される結果、エアーマ
ット２に対して体圧が滑らかに分散される。従って、筋
肉から皮膚に向かう血管が引き伸ばされたり、捩じれた
りして血管が閉塞することがなく、しかも組織の虚血が
起こることがなくなる。このため、３０度以上の傾斜角
θのギャッジアップの姿勢を病人等がマット本体１上で
長時間、とった場合にも褥瘡ができるのを確実に防止で
きる。

【００１８】図９および図１０に示すものは本発明の他
の実施例であり、前記実施例においては、マット本体１
のセル単体３ａ，３ｂ，３ｃ，３ｄ…における可変セル
部３Ａと固定セル部３Ｂとを上下方向に２層対向して連
設しているが、この実施例においてはセル部３′Ａ，
３′Ｂを左右方向に連設したセル単体３′ａ，３′ｂ，
３′ｃ，３′ｄ…をマット本体１の長手方向に上下２層
づつ並設する構成により、上層に位置するセル単体３′
ａ，３′ｂ，３′ｃ，３′ｄ…を可変セル部としてエア
ーポンプＰを駆動することにより移送回路を異にする毎
に膨張または収縮を交互に繰り返し、しかも下層に位置
するセル単体３′ａ，３′ｂ，３′ｃ，３′ｄ…には常
時、エアーポンプＰから給気を行って固定セル部として
膨張を行うことにより上層のセル単体３′ａ，３′ｂ，
３′ｃ，３′ｄ…を支持する。そして病人がエアーマッ
ト２上に身体を横たえる場合にも、またギャッジアップ
して上半身が座位の姿勢をとった場合にも病人等はエア
ーマット２に対する体圧を分散するとともにシーツＳに
対してズレ動きや摩擦を防いて褥瘡を防止できる。

【００１９】上記各実施例において移送回路を異にする
上層の可変セル部の配列を１つおきにして交互に膨張ま
たは収縮をさせているが、これに限ることはなく、移送
回路は２つおきまたは３個おきの複数個毎に膨張または
収縮を繰り返すようにしてもよい。

【００２０】また上記第１実施例でのセル単体３ａ，３
ｂ，３ｃ，３ｄ…は、可変セル部３Ａと固定セル部３Ｂ
とを上下方向に対向して連設し、また他の実施例におい
てセル単体３′ａ，３′ｂ，３′ｃ，３′ｄ…は、セル
部３′Ａ，３′Ｂを左右方向に２個対向して連設するこ
とにより形成しているが、これに限ることがなくセル単
体の可変セル部やセル部の、または固定セル部やセル部
の設置個数は３個以上の複数個毎に膨張または収縮を繰
り返す移送回路に形成してもよい。

【００２１】しかも上記各実施例において下層の固定セ
ル部は、ギャッジアップ時においても常時、エアーポン
プＰにより給気を行って膨張を維持することにより病人
の臀部の底着を防止するようにしているが、固定セル部
を適宜数本の数ブロック毎に区分してギャッジアップの
不必要個所部分の固定セル部については膨張または収縮
させるようにしてもよい。また上記実施例においては、
可変セル部に対して給気または排気を行うエアーポンプ
Ｐと同一のエーアポンプＰを用いて固定セル部の給気を
制御しているが、可変セル部と固定セル部とに対するエ
アーの給気または排気の制御は個別のエアーポンプＰに
よって制御してもよい。

【００２２】さらに上記実施例の可変セル部に小孔を設
けることにより、夏期等においてエアーを噴出させて汗
を乾かしたり、体臭等の臭いを消したりすることもでき
る。

【００２３】

【発明の効果】以上のように本発明は、長期間、寝たき
りの病人がギャッジアップの姿勢をとる場合に、臀部の
いわゆる底着現象を防止して褥瘡の発生を確実に予防で
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す部分切欠斜面図であ
る。

【図２】同じく要部の拡大斜面図である。

【図３】本実施例に使用する給気・排気手段の連結パイ
プとコネクタとの接続状態の一例を示す分解斜面図であ
る。

【図４】同じく断面図である。

【図５】同じくギャッジアップした使用状態の一例を示
す断面図である。

【図６】同じく本実施例のセル単体の一例を示す正面図
である。

【図７】同じくその断面図である。

【図８】同じくセル単体の他例を示す断面図である。

【図９】本発明の他の実施例を示す部分切欠斜面図であ
る。

【図１０】同じくそのエアーマットを示す分解斜面図で
ある。

【符号の説明】

１ マット本体 ２ エアーセル ３ａ セル単体 ３ｂ セル単体 ３ｃ セル単体 ３ｄ セル単体 ４ 円筒部 ４′ 円筒部 ６ 給気・排気手段 ６′ 給気・排気手段 ７ 連結パイプ ７′ 連結パイプ ７ａ パイプ ７ｂ パイプ ８ コネクタ ８′ コネクタ Ｐ エアーポンプ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エアーの移送回路を異にする毎にマット
   本体の長さ方向に並設した適宜数のエアーセルと、該エ
   アーセルをエアーの移送回路別に膨張又は収縮を繰返し
   行うように所定時間毎に弁を切換えてエアーを送り込ん
   だりまたは排出させるエアーポンプとから成る医療用エ
   アーマットにおいて、前記エアーセルは柔軟性材料を用
   いて少なくとも可変セル部と固定セル部とよりなるセル
   単体により形成され、前記可変セル部は所定時間毎にエ
   アーの移送回路別に膨張または収縮を交互に繰り返さ
   れ、前記固定セル部は常時、給気がされることにより膨
   張状態が維持可能に配列することを特徴とする医療用エ
   アーマット。
2. 【請求項２】 前記可変セル部と前記固定セル部とは上
   下方向に２層のセル層を形成するように前記セル単体を
   縦に配列したことを特徴とする請求項１に記載の医療用
   エアーマット。
3. 【請求項３】 前記可変セル部と前記固定セル部とは左
   右方向にセル部を対向して設けた前記セル単体を横に複
   数層、配列したことを特徴とする請求項１に記載の医療
   用エアーマット。
4. 【請求項４】 前記セル単体は規定の大きさの柔軟性材
   料よりなる１枚のシートを断面略８字状に折曲して対向
   した円筒部が連設され、該円筒部の中間と側縁との閉鎖
   端縁および左右の側縁との合計４個所を固着することに
   より前記可変セル部と固定セル部とを形成したことを特
   徴とする請求項１、または請求項２、請求項３の何れか
   に記載の医療用エアーマット。