JPH08151255A - アルミナ質焼結体およびその製法 - Google Patents

アルミナ質焼結体およびその製法

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JPH08151255A
JPH08151255A JP6293031A JP29303194A JPH08151255A JP H08151255 A JPH08151255 A JP H08151255A JP 6293031 A JP6293031 A JP 6293031A JP 29303194 A JP29303194 A JP 29303194A JP H08151255 A JPH08151255 A JP H08151255A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】高温での耐酸化性に優れ、さらに、破壊靭性と
高温強度に優れたアルミナ質焼結体およびその製法を提
供する。 【構成】アルミナ結晶粒子内に、平均結晶粒径が3μm
以下のペロブスカイト型分散相が全量中0.5体積%以
上分散しているアルミナ質焼結体である。ここで、ペロ
ブスカイト型分散相は、Nd,Sm,Eu,Gdの少な
くとも一種以上を含有することが望ましい。このような
アルミナ質焼結体は、ペロブスカイト型分散相を構成す
る金属元素を含有する溶液をアルミナ原料に添加混合
し、その混合物を乾燥して原料粉末とするか、あるいは
前記混合物を仮焼して原料粉末とし、該原料粉末を成形
し、焼成することにより得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強度,靭性に優れたア
ルミナ質焼結体およびその製法に関するものであり、例
えば、航空・宇宙業界,製錬業界,化学業界で用いられ
たり、ガスタ−ビンエンジン、自動車部品、切削工具材
料等に好適に使用されるアルミナ質焼結体およびその製
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、耐高温の構造部材として、ア
ルミナは耐環境性,高温強度ともに優れることで注目さ
れていたが、アルミナ固有の欠点である高温軟化と低靭
性により、その用途が限られていた。
【0003】そこで、近年では、アルミナの高温強度と
破壊靭性を向上させるために、種々の複合化が試みられ
ている。例えば、Al2 3 −SiCナノコンポジィッ
ト、Al2 3 −ZrO2 複合材料が知られており(例
えば、特開昭61−122164号公報、特開昭63−
139044号公報等参照)、このように複合化するこ
とで純粋なアルミナの焼結体より強度と靭性を向上する
ことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、上記
Al2 3 −SiCナノコンポジィットでは、Al2
3中に非酸化物のSiCを分散させているために、酸化
雰囲気において高温状態で使用される場合には耐酸化性
に欠けるという問題があった。
【0005】また、Al2 3 −ZrO2 複合材料は9
00℃付近の温度で強度が急激に低下するため高温強度
が低く、高温下において応力が作用するような状態での
使用には適しないという問題があった。
【0006】よって、本発明は、高温での耐酸化性に優
れ、さらに、破壊靭性と高温強度に優れたアルミナ質焼
結体およびその製法を提供することを目的とする。
【0007】
【問題点を解決するための手段】本発明者は、アルミナ
を高温構造材料として実用化するために、高温強度およ
び破壊靭性を改善する方法について鋭意検討した結果、
平均結晶粒径が3μm以下のペロブスカイト型分散相を
アルミナ結晶粒内に全量中0.5体積%以上分散させる
ことにより、塑性変形抵抗を向上させて高温強度を向上
することができるとともに、クラックの進展を妨害し、
破壊エネルギーを吸収する組織構成とし、これにより破
壊靱性を向上することができることを見出し、本発明に
至った。
【0008】即ち、本発明のアルミナ質焼結体は、アル
ミナ結晶粒子内に、平均結晶粒径が3μm以下のペロブ
スカイト型分散相が全量中0.5体積%以上分散してな
るものである。
【0009】ペロブスカイト型分散相としては、RMO
3 (R,Mは金属元素)の化学式で表される複合酸化物
であり、この中でも、アルミナ中では、AlMO3 (M
は金属元素)で表されるものが容易に形成される。ペロ
ブスカイト型分散相は、Nd,Sm,Eu,Gdの少な
くとも一種以上を含有することが望ましい。
【0010】本発明のアルミナ質焼結体では、ペロブス
カイト型分散相がアルミナ粒内に分散すると同時に、一
部は粒界に分散しても良く、この場合には、粒界に分散
する量が少量であればアルミナ母相の粒成長を抑制する
効果により材料の高強度化に寄与する。しかし、粒界部
分に過量に分散するとアルミナ材料の特性を損なうた
め、粒界部分に分散するペロブスカイト分散相は焼結体
全体の50体積%以下であることが望ましい。
【0011】また、アルミナ結晶粒内に分散するペロブ
スカイト型分散相の平均結晶粒径は3μm以下とする必
要がある。平均結晶粒径が3μmよりも大きくなると高
温高強度化効果および高靭性化効果が著しく低下するか
らである。ペロブスカイト型分散相の平均結晶粒径は、
特には1μm以下とすることが望ましい。
【0012】ペロブスカイト型分散相のアルミナ結晶粒
内への分散量は、全量中0.5体積%以上であることが
必要である。これは、分散量が全量中0.5体積%より
も少ない場合には、アルミナに対する高強度化、高靭性
化効果が殆どないからである。この分散量は、特には1
〜20体積%とすることが望ましい。
【0013】本発明のアルミナ質焼結体は、例えば、ペ
ロブスカイト型分散相を構成する金属元素を含有する溶
液をアルミナ原料に添加混合し、その混合物を乾燥し原
料粉末とするか、あるいは前記混合物を仮焼して原料粉
末とし、該原料粉末を成形し、焼成することにより得ら
れる。
【0014】ペロブスカイト型分散相を構成する金属元
素粉末あるいはその酸化物粉末をアルミナ原料と混合
し、その成形体を焼成する場合でも、ペロブスカイト型
分散相をアルミナ結晶粒内に分散した本発明のアルミナ
質焼結体を得ることができる。
【0015】しかしながら、原料混合の均一性が低いた
めに、分散相が3μm以上に成長したり、アルミナの粒
界に分散したりするため、粒内での分散相は溶液として
添加混合する場合に比べて少なく、十分な高強度と高靭
を達成できないこともある。
【0016】前記ペロブスカイト型分散相を形成する金
属元素を含有する溶液としては、水酸化物溶液、有機,
無機溶液等どれでもよい。また、アルミナ原料は、市販
のアルミナ粉末を使用すればよいが、添加の金属元素と
同様に、アルミニウム元素を含む溶液を用いても可能で
ある。
【0017】成形には公知の成形手段が用いられるが、
例えば、金型プレス,鋳込み成型,押出成型,射出成
型,冷間静水圧プレスなどがある。
【0018】焼成法としては公知の焼成法が用いられる
が、例えば、ホットプレス法,常圧焼成法,ガス加圧焼
成法があり,さらに、これらの焼成後に熱間静水圧処理
(HIP)処理、およびガラスシール後HIP処理し
て、対理論密度比95%以上の緻密な焼結体を得る。焼
成温度は低ければ焼結体が緻密化しにくく、逆に高すぎ
ると分散相が粒成長して、強度と靭性向上の効果が失わ
れる可能性があるため、1400〜1850℃、特に1
500〜1750℃であることが好ましい。
【0019】本発明のアルミナ質焼結体には、例えば、
マグネシア,ジルコニア,ムライト,ガーネット,βア
ルミナ等の酸化物、複合酸化物を一定量添加含有して
も、特性は殆ど劣化しないたため、組織制御あるいは靱
性を向上する点からこれらの物質を材料に複合すること
も可能である。
【0020】
【作用】一部の金属元素はアルミナと反応し、ペロブス
カイト構造の複合酸化物を生成する。このペロブスカイ
ト構造の複合酸化物は一般的に高温での安定性がよく、
アルミナ母相中での拡散や粒成長が発生しにくい特性を
有するため、アルミナ粒内で微細に分散する可能性を持
った化合物である。よって、ペロブスカイト構造の化合
物を形成する金属元素をアルミナに添加すれば、アルミ
ナ結晶粒内に微細なペロブスカイト構造の化合物が分散
した焼結体が得られる。
【0021】特に、Nd,Sm,Eu,Gdなどとアル
ミニウム元素とが反応して形成されるペロブスカイト相
は特に安定性が高く、室温から高温まで高いヤング率を
有するため、室温強度と破壊靭性および1400℃まで
の高温強度が優れたアルミナ質焼結体が得られる。
【0022】即ち、本発明のアルミナ質焼結体では、ア
ルミナ結晶粒子内に、平均結晶粒径が3μm以下のペロ
ブスカイト型分散相を全量中0.5体積%以上分散した
もので、高温での耐酸化性を損なうことなく、従来より
優れた高温強度と破壊靭性を有する高温構造材料を提供
することができるのである。
【0023】従来のアルミナ質焼結体は特に酸化雰囲気
で室温から高温まで安定した特性を有するが、高温では
転位の運動が発生しやすいため、軟化、塑性変形する。
また、室温では、アルミナ結晶内にクラックが進展しや
すいため、破壊靭性が低い。
【0024】本発明のアルミナ質焼結体は、上記従来の
アルミナ質焼結体の欠点を解決したものである。
【0025】
【実施例】ペロブスカイト相を形成する金属元素(N
d、Sm、Eu、Gd)の硝酸塩水溶液を、酸化物に換
算した組成比が表1に示すようになるように市販のアル
ミナ粉末(純度99.9%)に添加し、回転ミルで混合
した。得られたスラリーにアンモニア水を加えてpH値
を7以上とし、上記の金属元素を水酸化物とするととも
に、アルミナと一緒に沈澱させる。この沈澱物を乾燥
し、酸化雰囲気中において500℃〜1000℃で2時
間仮焼処理することにより、アルミナに上記金属酸化物
が均一且つ微細に分散する複合粉体を得る。また、試料
No.7は、Sm酸化物粉末を原料とした。
【0026】
【表1】
【0027】そして、上記の複合粉体を1t/cm2
圧力で金型成形した後、3t/cm2 の圧力で冷間静水
圧処理を加え、表1に示すような焼成条件で大気中にお
いて2時間焼成した。焼結体の対理論密度比(相対密
度)を表1に示す。
【0028】また、本発明者は試料No.1〜7について
は、X線回折測定により焼結体がα−Al2 3 とペロ
ブスカイト相の二相であることを確認した。また、鏡面
に加工した試料を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で
観察することにより、母相のアルミナ粒内にペロブスカ
イト相が分散していることを確認した。図1に試料No.
4の組織図を示す。図1において符号1はアルミナ結晶
であり、符号2はペロブスカイト相であり、粒界にもペ
ロブスカイト相が析出している。さらに、格子点数集計
法により測定した粒内分散ペロブスカイト相の全量に対
する体積分を表1に示す。また、走査型電子顕微鏡写真
上でアルミナ結晶粒子内の100個の析出粒子の粒径を
測定し、その平均値を算出し、表1に示す。
【0029】得られた焼結体をJIS−R1601にて
指定されている形状まで研磨し抗折試料を作製した。こ
の試料についてJIS−R1601に基づく室温および
1400℃での4点曲げ抗折強度試験を実施した。ま
た、ビッカース圧痕法により破壊靭性(K1c)を測定し
た。結果を表1に示した。
【0030】表1の結果から、アルミナ結晶粒子内に、
平均結晶粒径が3μm以下のペロブスカイト型分散相が
全量中0.5体積%以上分散した本発明の試料No.1〜
6は、従来のアルミナ質焼結体(試料No.8,9)と比
較して、室温と高温強度および破壊靭性を大幅に向上す
ることが判る。
【0031】
【発明の効果】本発明のアルミナ質焼結体では、安定性
が高く、室温から高温まで高いヤング率を有するペロブ
スカイト相を、アルミナ結晶粒子内に、3μm以下で全
量中0.5体積%以上分散したので、高温での耐酸化性
を損なうことなく、従来より優れた高温強度と破壊靭性
を有する高温構造材料を提供することができる。
【0032】また、本発明のアルミナ質焼結体は、例え
ば、ペロブスカイト型分散相を構成する金属元素を含有
する溶液をアルミナ原料に添加混合し、その混合物を乾
燥して原料粉末とするか、あるいは前記混合物を仮焼し
て原料粉末とし、この原料粉末を成形し、焼成すること
により容易に得られる。ペロブスカイト型分散相を構成
する金属元素を含有する溶液をアルミナ原料に添加混合
し、その混合物を用いることにより、ペロブスカイト型
分散相をアルミナ結晶粒子内に確実に存在させ、かつ、
ペロブスカイト型分散相の粒成長を抑制し、本発明のア
ルミナ質焼結体を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料No.4の組織図である。
【符号の説明】
1・・・アルミナ結晶 2・・・ペロブスカイト型分散相

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミナ結晶粒子内に、平均結晶粒径が3
    μm以下のペロブスカイト型分散相が全量中0.5体積
    %以上分散していることを特徴とするアルミナ質焼結
    体。
  2. 【請求項2】ペロブスカイト型分散相は、Nd,Sm,
    Eu,Gdの少なくとも一種以上を含有することを特徴
    とする請求項1記載のアルミナ質焼結体。
  3. 【請求項3】ペロブスカイト型分散相を構成する金属元
    素を含有する溶液をアルミナ原料に添加混合し、その混
    合物を乾燥して原料粉末とするか、あるいは前記混合物
    を仮焼して原料粉末とし、該原料粉末を成形し、焼成す
    ることを特徴とするアルミナ質焼結体の製法。
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