JPH08150569A - 圧電クランプ機構 - Google Patents

圧電クランプ機構

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JPH08150569A
JPH08150569A JP7074921A JP7492195A JPH08150569A JP H08150569 A JPH08150569 A JP H08150569A JP 7074921 A JP7074921 A JP 7074921A JP 7492195 A JP7492195 A JP 7492195A JP H08150569 A JPH08150569 A JP H08150569A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】圧電素子の変位を座屈の原理により拡大する梁
を備える圧電クランプ機構において、簡単な構造でクラ
ンパの開閉ストロークを広くする。 【構成】変位拡大用のレバーアーム3a,3bの端部間
に渡す座屈梁6の形状を山型とし、傾斜部8a,8bに
触手9a,9bを取り付ける。各触手9a,9bの先端
が梁6中央の平坦部に垂直な軸に向くようにして、対向
させて取り付けることにより、触手9a,9b自体が、
梁6中央の平坦部の変位に対して変位拡大機能を持つよ
うにする。梁の数をただ一本にできるので、圧電素子1
に対する負荷を減少させその発生変位量を増大させ、レ
バーアーム3a,3bでの変位量をを増加できる。レバ
ーアーム3a,3bでの変位量増加と、触手9a,9b
に対する変位拡大機能の付加とにより、クランパの開閉
ストロークが従来より更に大になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、圧電素子の発生変位を
拡大すると共にその拡大された変位を利用して2つの触
手間に物体をクランプするように構成した変位拡大機構
付きの圧電クランプ機構に関し、特に、直接または拡大
されて伝達された圧電素子の発生変位を座屈の原理によ
り拡大する梁を備える構造の圧電クランプ機構に関す
る。
【0002】
【従来の技術】圧電クランプ機構は、圧電素子が駆動電
圧に応じて発生する変位を一対の触手に伝達するように
構成して触手に開閉運動をさせ、物体をクランプする機
構である。このような圧電クランプ機構には、例えば特
開平1ー321170号公報に開示されているような、
複合型素子であるバイモルフ型圧電素子を駆動源として
用いるものと、単板型圧電素子や積層型圧電素子などの
ような単純型素子を用いるものとがあるが、後者の単純
型素子を用いるクランプ機構は前者のクランプ機構に比
べて、電気・機械エネルギー変換効率が高いという特長
を持つ。
【0003】ところが一般に、単純型の圧電素子は複合
型のものに比べて、エネルギー変換効率は高いものの発
生変位量は小さいという特性を持つことから、単純型素
子を駆動源とするクランプ機構には、圧電素子の発生変
位を拡大するための機構が欠かせない。この変位拡大機
構としては、従来、圧電素子の発生変位をレバーアーム
に伝達しててこの原理で拡大する構造のものが、良く知
られている。そのようなレバーアームを用いた変位拡大
機構付きの圧電クランプ機構が、例えば特開平5ー30
5574号公報、特開平1ー198037号公報あるい
は、特開平2ー68942号公報に開示されている。中
でも、特開平5ー305574号公報に記載されたクラ
ンプ機構は、レバーアームに加えて更に、レバーアーム
の出力変位を座屈の原理により拡大するための梁を備え
ているので、レバーアームだけしか持たない他の2つの
公報記載のクランプ機構に比べて、圧電素子からクラン
パ先端までの変位拡大率がより大きく、クランパの開閉
ストロークが大きい。
【0004】上記特開平5ー305574号公報記載の
圧電クランプ機構の斜視図を示す図5を参照すると、こ
の図に示すクランプ機構においては、取付け基板5の両
側面にレバーアーム3a,3bが、それぞれ第1ヒンジ
4a,4bを介して取り付けられている。このレバーア
ーム3a,3bの一端間には圧電素子1が、第2ヒンジ
2a,2bを介して取り付けられている。レバーアーム
3a,3bの他端間には一対の梁16a,16bが渡さ
れ、それぞれの両端が各レバーアーム3a,3bの端部
にリベット7で固定されている。これらの梁16a,1
6bそれぞれの中間部には、各梁に対して水平で直角の
方向に長片の触手19a,19bが取り付けられてい
る。
【0005】図5において、いま圧電素子1に外部から
駆動電圧を与えると、素子1は図中に矢印で示す方向に
ひずみ、変位を発生する。この変位は、第2ヒンジ2
a,2bを介してレバーアーム3a,3bの端部に伝達
され、更に、各レバーアーム3a,3bにおける第1ヒ
ンジ4a,4bを支点とするてこの原理により拡大され
て、各レバーアーム3a,3bの他端に矢印方向の動き
として伝達される。レバーアーム他端が変位することに
より、2つの梁16a,16bは座屈を起し、それぞれ
の中央部が図中矢印方向、つまり2つの梁16a,16
bが互いに近付く方向に変位する。その結果、各梁16
a,16bの中央部に水平方向に取り付けられた触手1
9a,19bが接触し、クランパは閉じる。素子1への
駆動電圧供給を停止すると素子1の変位が復帰するの
で、レバーアーム3a,3bおよび梁16a,16bは
それぞれ上述したとは逆方向に変位し、触手19a,1
9b先端が開く。
【0006】このように、図5に示す圧電クランプ機構
は、レバーアームに加えて更に、レバーアームの出力変
位を座屈により拡大する梁を備えているので、単にレバ
ーアームしか持たない拡大機構付き圧電クランプ機構に
比べて、クランパの開閉ストロークを大きく取れる。前
述の特開平5ー305574号公報によれば、図5にお
いて、圧電素子1として変位量7μmの積層型のものを
用い、27倍の拡大率を持つ変位拡大機構(レバーアー
ムと梁とを含む)に取り付けて、各触手の変位量がそれ
ぞれ190μmで、従ってクランパとしての開閉ストロ
ークが380μmの変位拡大機構付き圧電クランプ機構
を実現している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、変位
の拡大機構としては、てこの原理によるレバーアームを
用いたものの他にも、座屈の原理に基づく梁を用いたも
のがあり、特開平5ー305574号公報記載の技術に
よれば両方の拡大機構を組合せることによって、バイモ
ルフ型圧電素子を用いた圧電クランプ機構に比べて電気
・機械エネルギー変換効率が高く、触手先端間のクラン
プ力が大きく、開閉ストローク及びクランプ力の安定性
に優れたクランプ機構が得られる。しかも、その開閉の
ストロークは、レバーアームしか持たない他のどのよう
な拡大機構付きの圧電クランプ機構に比べても、大き
い。
【0008】ところで、上記特開平5ー305574号
公報記載の圧電クランプ機構においては、図5に示すよ
うに、各触手19a,19bが各梁16a,16bに対
して水平方向に飛び出すように、つまり、各梁16a,
16bの変位出力方向を示す軸に垂直に取り付けられて
いるので、それぞれの触手19a,19bの変位量は各
梁16a,16bの変位量に一致する。換言すれば、触
手19a,19bの部分には変位拡大機能はなく、クラ
ンパの開閉ストロークは、圧電素子1の発生変位量と、
レバーアームの拡大率と、梁16a,16bの拡大率と
だけで決ってしまう。従って、より大きな開閉ストロー
クを得ようとすると、圧電素子自体を大型化してその
発生変位量を大きくする、圧電素子の駆動電圧を高く
する、レバーアームでの拡大率および梁での拡大率を
大きくするなどの手段を講じなくてはならず、クランプ
機構としての信頼性や小型化が損われる可能性がある。
しかも、レバーアームの出力変位を拡大するための梁を
2本必要とするので構造が複雑な上、レバーアームの変
位拡大作用、延いては圧電素子の変位発生作用に対する
負荷が大きく、レバーアーム端部での変位量が低下す
る。
【0009】尚、従来用いられているレバーアーム19
a,19bはヒンジ4a,4bの強度を高めるなどのた
めに、例えばワイヤーカットなどの工法により取付け基
板5と一体的に加工されることが多く、その結果、構造
や加工が複雑となり、コスト高にならざるを得ない。従
って、レバーアームを用いなくても十分なクランプの開
閉トロークが得られれば、小型化、軽量化、低価格化の
点で都合が良い。
【0010】従って本発明は、座屈梁を備える拡大機構
付きの圧電クランプにおいて、クランパの開閉ストロー
クを更に増大させることを目的とするものである。
【0011】本発明の他の目的は、従来の変位拡大機構
から構造の複雑なレバーアームを取り除いても十分なク
ランパの開閉ストロークを持つ、小型、軽量で経済性に
富む圧電クランプ機構を提供することである。
【0012】本発明の更に他の目的は、上記のような開
閉ストロークの大きい圧電クランプ機構を、簡単な構造
で実現することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の圧電クランプ機
構は、外部から与えられた電圧に応じて一軸に沿う方向
にひずみを発生して変位する圧電素子と、直接または拡
大して伝達された前記圧電素子の変位を座屈の原理によ
り拡大する梁と、前記梁の座屈運動に応じて開閉する二
つの触手からなるクランパとを少なくとも含む圧電クラ
ンプ機構において、前記クランパを構成する二つの触手
を一本の梁に取り付けることにより、それら触手に、触
手先端の開閉方向の移動量が前記梁の変位量を拡大した
ものとなるようにする、変位拡大機能を付与したことを
特徴とする。
【0014】
【実施例】次に、本発明の好適な実施例について、図面
を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施例の
斜視図である。同図を参照すると、本実施例において圧
電素子1が、素子1の変位を伝達する手段としての細く
くびれたT字状の第2ヒンジ2a,2bの平坦面にエポ
キシ樹脂などの接着剤で接続されている。第2ヒンジ2
a,2bはレバーアーム3a,3bに接続されており、
それぞれのレバーアーム3a,3bは変位伝達手段とし
てのてこの支点にあたる細くくびれた第1ヒンジ4a,
4bに接続されている。又、第1ヒンジ4a,4bは、
取付け基板5の両側面に接続されている。第1ヒンジ4
a,4bと、第2ヒンジ2a,2bと、レバーアーム3
a,3bと、取付け基板5とからなる拡大機構部品は、
SUS304材、42NiーFe合金材などの高剛性の
材料を用いて、一体構造で製作されている。
【0015】レバーアーム3a,3bの先端には、りん
青銅などのばね性を有する金属材料をプレス打抜き及び
曲げ加工で製造した梁6が、リベット7により接続され
ている。この梁6は予め、矢印方向に湾曲形成されてい
る。又、梁6の傾斜部8a,8bには、開き角が90度
以上の「く」の字型の触手9a,9bが取り付けられて
いる。各触手9a,9bは、長い方の辺が梁6の変位出
力方向を示す軸(つまり、梁6中央の平坦部に垂直な
軸)に向くようにして、短い方の辺が接着剤あるいは溶
接により梁6の各傾斜部8a,8bに固着されている。
【0016】このように構成された圧電クランプ機構に
おいて、外部から圧電素子1に駆動電圧を加え素子1に
矢印方向のひずみを生じさせ変位させると、その変位は
第2ヒンジ2a,2bを介して、各レバーアーム3a,
3bに伝達される。レバーアーム3a,3bでは、第1
ヒンジ4a,4bを支点とするてこの原理により、レバ
ーアーム3a,3bの先端で変位が拡大される。レバー
アーム3a,3b先端の拡大出力変位が梁6にその長手
方向の変位として伝えられるので、梁6はその両端から
長手方向に圧縮荷重を受け、座屈する。その結果、レバ
ーアーム3a,3b先端の変位が周知の座屈理論によ
り、梁6中央の平坦部で矢印方向の変位として拡大され
る。更に、上記梁6中央平坦部の矢印方向への動きに応
じて、梁6の傾斜部8a,8bに固着された触手9a,
9bの先端が、互いに拡がるように矢印方向に変位す
る。このとき、各触手9a,9bそれぞれの変位量は、
梁6中央平坦部分の矢印方向の変位量を拡大したものに
なる。
【0017】図2は、本実施例における梁6と触手9
a,9bの動きを示す図であって、本実施例を取付け基
板5に垂直な上面から見た図である。実線が圧電素子1
への印加電圧を0Vにしてその変位を復帰させたときの
状態を示し、破線が圧電素子1に電圧を与えて触手9
a,9bを開かせたときの状態を示す。図2において、
圧電素子1に駆動電圧を与えると、梁6の両端は梁の長
手方向(紙面左右方向。以後、X方向とする)で圧縮さ
れ、中央平坦部がその長さを保ったまま紙面上方向(以
後、Y方向とする)に移動する。いま、梁6の傾斜部の
長さをLL 、平坦部の長さを2LH 、圧電素子1の変位
復帰時に梁6がX軸となす角をβ0 、各触手9a,9b
の梁6からの長さをLA 、梁6に対する取付け角をα、
圧電素子1に駆動電圧を与えたとき梁6がX軸となす角
をβ、梁6中央平坦部のY方向の移動量をDY 、触手9
a,9b先端のX方向の移動量をDX とすると、梁6の
出力変位量DY に対する触手9a,9bの変位量DX
比つまり触手における拡大率nは、
【0018】
【0019】で表される。ここで、0°≦β0 <β<9
0°であるので、COSβ<COSβ0 すなわち、CO
Sβ−COSβ0 <0 であり、SINβ>SINβ0
すなわち、SINβ−SINβ0 >0 である。
【0020】一方、90°<αであるので、α<180
°とすれば、すなわち90°<α<180°とすれば、 COSα<0、SINα>0 である。
【0021】従って、上述の式右辺の括弧の中は必ず
正になり、触手9a,9bの取付け角αとその長さLA
及び梁6の傾斜部の長さLL を適当に設計することによ
り、触手9a,9bの変位量DX を梁6の出力変位DY
よりも大きくできる。言い換えれば、触手9a,9bに
より、梁6の変位量を更に増幅することができる。
【0022】その後、圧電素子1への印加電圧を降下さ
せると圧電素子1は変位が元へ復帰するように変位量を
減らすので、レバーアーム3a,3bおよび梁6がこれ
まで述べたとは反対方向に変位し、触手9a,9bは先
端が閉じるように移動する。このような動作に基づき、
圧電素子1に電圧を印加して2つの触手9a,9bの先
端を拡げ、それらの間に試料を置いてから電圧を降下さ
せることにより、試料をクランプすることができる。
【0023】本実施例では、圧電素子1に積層型の素子
を用い、梁6の構造を、傾斜部の長さLL =7.54m
m、中央平坦部の長さ2LH =2.00mm、変位復帰
時にX軸となす角β0 =6°5′19″とした。この拡
大機構で圧電素子1に駆動電圧を与えて11μmの変位
を発生させたとき、梁6の変位量はDY =0.30mm
であり、圧電素子1から梁6中央平坦部までの変位拡大
率は27倍であった。このとき梁6がX軸となす角はβ
=8°23′9″であった。そして、この梁6に長さL
A =15.0mmの触手9a,9bを角α=99°5
4′40″で取り付けたとき、触手9a,9bそれぞれ
の先端のX方向の移動量はそれぞれ、DX=0.60m
mであった。つまり、触手9a,9bにおける変位拡大
率は2.0倍であった。更に、触手9a,9bの長さを
A =30mmとし取り付け角α=97°59′56″
とすると、触手での変位拡大率は4.0倍となり触手9
a,9b先端ではDX =1.20mmにもなった。これ
に対し、図5に示した従来のクランプ機構で本実施例に
おけると同一の圧電素子およびレバーアームを用い、圧
電素子1を同一の電圧で駆動した場合、圧電素子1の発
生変位量は7μmであり、触手19a,19b先端の変
位量はそれぞれ0.19mmであった。以上のことか
ら、本実施例においては、触手9a,9bが梁6に対し
て変位拡大作用を持つのみならず、圧電素子1の発生変
位量そのものも増大していることが分る。本実施例の圧
電クランプ機構では梁の数がただ一本であるので、レバ
ーアーム3a,3bの変位拡大作用に対する負荷、換言
すれば圧電素子1の発生変位作用に対する圧縮力が従来
の1/2に軽減されている。本発明における圧電素子1
の発生変位増大はこの負荷軽減効果により得られたもの
である。
【0024】上述のように本実施例によれば、クランパ
としての開閉ストーロークが従来のクランプ機構の3〜
6倍程度のものを実現できる。触手9a,9bの長さを
長くすれば、更に大きな開閉ストロークを持つクランプ
機構を容易に実現できる。そして一般に、圧電素子1へ
の印加電圧と素子の変位量とは比例関係にあるので、素
子1に印加する電圧を制御することにより、触手先端の
開き量と試料をクランプしているときのクランプ力とを
微細に調整することが可能である。このような圧電クラ
ンプ機構は、例えばロボットハンドに取り付けてマニピ
ュレータとして使用することが可能であり、高温、高熱
あるいは刺激性、有毒性ガス雰囲気中などのような悪環
境下における微細作業に用いることができる。
【0025】次に、本発明の第2の実施例について、説
明する。図3は、本発明の第2の実施例の斜視図であ
る。同図を参照して、本実施例では、長方形の枠状フレ
ーム50の短い方の一辺51aに、圧電素子1の変位出
力面の一方が固着されている。固着には、エポキシ樹脂
などの接着剤を用いることができる。素子1のもう一方
の変位出力面とフレーム50のもう一方の短辺51bと
の間には、座屈梁6がブリッジ状に渡されている。フレ
ーム50は、SUSなどの耐蝕性の材料や42NiーF
e合金材などの低熱膨張性の材料を用いて、一体構造で
製作されている。梁6は、りん青銅などのばね性を有す
る金属材料をプレス打抜き曲げ加工で製作されている。
【0026】梁6の傾斜部8a,8bには、開き角が9
0度以上の「く」字型の触手9a,9bが取り付けられ
ている。触手9a,9bは、長い方の辺の先端が梁6の
変位出力方向を示す軸、つまり梁6中央の平坦部に垂直
な軸に向くようにして、短い方の辺が接着剤により梁6
の各傾斜部8a,8bに固着されている。触手の固定に
は、溶接を用いることもできる。
【0027】このように構成された本実施例の圧電クラ
ンプ機構において、外部から圧電素子1に駆動電圧を加
え図中に矢印で示す方向にひずみを生じさせ変位させる
と、その変位は梁6の長手方向の変位として伝えられる
ので、梁6はその片端から長手方向に圧縮荷重を受け、
座屈する。その結果、素子1の矢印方向の変位が周知の
座屈理論により梁6中央の平坦部で、紙面上向きの矢印
で示した方向の変位に変換され、且つ拡大される。更
に、上記梁6中央平坦部の紙面上方向への動きに応じ
て、梁6の傾斜部8a,8bに固着された触手9a,9
bの先端が互いに広がるように、図中に矢印で示す方向
に弧を描いて変位する。このとき、触手9a,9bそれ
ぞれの変位量は、梁6中央平坦部の紙面上向きの変位量
を拡大したものになる。
【0028】その後、圧電素子1への印加電圧を降下さ
せると、圧電素子1は変位が元へ復帰するように変位量
を減らすので、座屈梁6がこれまで述べた方向とは反対
方向に変位し、触手9a,9bは先端が閉じるように移
動する。このような動作に基づき、圧電素子1に電圧を
印加して2つの触手9a,9bの先端を広げ、それらの
間に試料を置いてから電圧を降下させることにより、試
料をクランプすることができる。
【0029】本実施例では、変位量9μmの積層型圧電
素子を変位発生源とし、長さLA =5.822mmの触
手9a,9bを取り付けると、触手先端の移動量D
X (図2参照)は、それぞれ0.195mmになる。こ
れに対し、図5に示した従来のクランプ機構では、同じ
性能の圧電素子で触手19a,19b先端の変位量はそ
れぞれ0.18mmである。すなわち、本実施例は変位
拡大機構としてのレバーアームを持たないので、クラン
パとしての開閉ストロークは第1の実施例に比べて減少
しはするが、その場合でもその開閉ストロークは、(レ
バーアームと、変位拡大機能を持たない触手とを組合せ
た拡大機構を備える)従来のクランプ機構以上になる。
しかも、その開閉ストロークは、触手9a,9bの長さ
により所望の値に設計できる。従って、本実施例によれ
ば、レバーアームを省くことにより、小型、軽量である
のみならず、加工費削減により低価格でありながら、し
かも従来以上の開閉ストロークを持つクランプ機構を実
現できる。
【0030】次に、図4は、本発明の第3の実施例の断
面図である。図4と図3とを比較すると、本実施例にお
いては座屈梁6の曲げ方向が第2の実施例におけると正
反対で、梁6は図中に矢印で示す紙面下向きに湾曲して
いる。又、それに応じて、触手9a,9b先端の向いて
いる方向が、第2の実施例とは正反対である。すなわ
ち、触手9a,9b先端は圧電素子1が変位を発生して
いない状態で、開いている。本実施例では、圧電素子1
に駆動電圧を加えると、梁6の中央平坦部が紙面下方向
に移動し、触手9a,9bは先端が閉じるように移動す
る。この実施例では、触手9a,9bそれぞれの間に試
料を置いてから駆動電圧を印加し、触手9a,9bの先
端を閉じて試料をクランプする。
【0031】尚、前述した第1の実施例においても、第
2の実施例に対する第3の実施例のように、駆動電圧印
加の有無と触手先端の開閉状態との関係が互いに反対で
あるようにすることができる。その場合には、図1にお
いて、例えば、梁6の折り曲げの山がこれまでとは反対
に、取り付け基板5の方向を向くように変更すればよ
い。或いは、梁6の折り曲げ方向はこれまでどおりにし
ておいて、触手9a,9bの取り付けをこれまでとは反
対に、それぞれの触手先端が取り付け基板5の方向を向
くようにしてもよい。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、変位発
生源としての圧電素子と、直接または拡大されて伝達さ
れた圧電素子の変位を座屈の原理により拡大する梁と、
梁に取り付けられて梁の運動に応じて開閉する二つの触
手からなるクランパとを備える圧電クランプ機構におい
て、クランパを構成する二つの触手を一本の梁に取り付
けることにより、それら触手に、触手先端の開閉方向の
移動量が梁の変位量を拡大したものとなるようにする、
変位拡大機能を持たせている。
【0033】このことにより本発明によれば、クランパ
の開閉ストロークが従来のどのような圧電クランプ機構
よりも更に大きな圧電クランプ機構を提供できる。クラ
ンパの開閉ストロークは、触手の梁に対する取り付け角
あるいは長さを適当に設計することにより、任意に選択
することができる。
【0034】本発明の圧電クランプ機構において、梁の
数をただ一本とすると、圧電素子に対する負荷を軽減で
きるので、同一性能の圧電素子を同一条件で駆動した場
合でも、クランパとしての開閉ストロークをより増大さ
せることができる。しかも、梁の数が最小限であるので
構造が簡単で、部品の設計、管理あるいは組立てに関わ
る費用を低減できる。
【0035】本発明の圧電クランプ機構は、クランパを
構成する触手自体が梁の変位に対する拡大機能を備えて
いるので、重く、構造が複雑で、加工が難しく従ってコ
スト低減の障害となるレバーアームによる変位の拡大に
依存しなくても、これまで以上の開閉ストロークを得る
ことができる。すなわち、小型、軽量、低価格でしかも
開閉ストロークの大きい圧電クランプ機構を提供でき
る。
【0036】上記の圧電クランプ機構において圧電素子
に積層型のものを用いると、変位量の大きなクランプ機
構をより小型な形状で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の斜視図である。
【図2】図1に示す圧電クランプ機構において、駆動電
圧印加有りの場合および無の場合における、梁および触
手の状態を示す示す図である。
【図3】本発明の第2の実施例の斜視図である。
【図4】本発明の第3の実施例の断面図である。
【図5】レバーアームと座屈梁とからなる拡大機構を備
えた従来の圧電クランプ機構の一例の斜視図である。
【符号の説明】
1 圧電素子 2a,2b 第2ヒンジ 3a,3b レバーアーム 4a,4b 第1ヒンジ 5 取付け基板 6 梁 7 リベット 8a,8b 傾斜部 9a,9b 触手 16a,16b 梁 19a,19b 触手 50 フレーム 51a,51b 短辺

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外部から与えられた電圧に応じて一軸に
    沿う方向にひずみを発生して変位する圧電素子と、直接
    または拡大して伝達された前記圧電素子の変位を座屈の
    原理により拡大する梁と、前記梁の座屈運動に応じて開
    閉する二つの触手からなるクランパとを少なくとも含む
    圧電クランプ機構において、 前記クランパを構成する二つの触手を一本の梁に取り付
    けることにより、それら触手に、触手先端の開閉方向の
    移動量が前記梁の変位量を拡大したものとなるようにす
    る、変位拡大機能を付与したことを特徴とする圧電クラ
    ンプ機構。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の圧電クランプ機構におい
    て、 前記梁の形状を、長手方向が前記座屈運動における圧縮
    の方向に沿う軸に平行な帯状で、前記長手方向の中央部
    には前記圧縮の方向に沿う軸に平行な一平坦部を有し、
    その平坦部の前記長手方向の両外側には傾斜部を有する
    山型形状とすると共に、 前記梁の二つの傾斜部の一方には前記クランパを構成す
    る二つの触手の一方を他方の傾斜部には他方の触手を、
    前記梁中央部の一平坦部に垂直な軸と前記梁の長手方向
    に沿う軸とを含む平面内で開閉運動するように、取り付
    けたことを特徴とする圧電クランプ機構。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の圧電クランプ機構におい
    て、 前記梁の数をただ一本として、前記圧電素子に対する負
    荷を軽減させることにより、前記圧電素子の発生変位量
    を増大させたことを特徴とする圧電クランプ機構。
  4. 【請求項4】 請求項2又は請求項3記載の圧電クラン
    プ機構において、 前記圧電素子の発生変位を、伝達された発生変位量をて
    この原理により拡大するレバーアームを介して、前記梁
    に伝達するように構成したことを特徴とする出圧電クラ
    ンプ機構。
  5. 【請求項5】 請求項2又は請求項3記載の圧電クラン
    プ機構において、 前記圧電素子の発生変位を、直接、前記梁に伝達するよ
    うに構成したことを特徴とする圧電クランプ機構。
  6. 【請求項6】 高剛性を有し少なくとも二つの互いに対
    向する側面を持つ取付け基板と、 前記取付け基板の前記二つの側面に一つずつ取り付けら
    れた二つのレバーアームであって、それぞれはてこの支
    点となるヒンジを介して前記取付け基板に固定されたレ
    バーアームと、 前記二つのレバーアームの一端間に固着された圧電素子
    と、 前記二つのレバーアームの他端間に両端がそれぞれのレ
    バーアームに固定されるようにして渡された一本の梁で
    あって、長手方向の中央部には前記長手方向に平行な一
    平坦部を有しその平坦部の長手方向の両外側には傾斜部
    を有する山型形状の梁と、 前記二つの傾斜部のそれぞれに一つずつ取り付けられた
    二つの触手からなるクランパであって、それぞれの触手
    は、前記梁中央部の一平坦部に垂直な軸と前記梁の長手
    方向に沿う軸とを含む平面内で開閉運動するように取り
    付けられたクランパとを含むことを特徴とする圧電クラ
    ンプ機構。
  7. 【請求項7】 高剛性を有する枠状のフレームと、 前記フレーム内に位置し、変位出力方向の一端を前記フ
    レームの一辺に支持された圧電素子と、 前記圧電素子の変位出力方向の他端と前記フレームの前
    記一辺に向い合う対辺との間に渡された一本の梁であっ
    て、長手方向の中央部には前記フレームの二辺が作る平
    面に平行な一平坦部を有しその平坦部の長手方向の両外
    側には傾斜部を有する山型形状の梁と、 前記二つの傾斜部のそれぞれに一つずつ取り付けられた
    二つの触手からなるクランパであって、それぞれの触手
    は、前記梁中央部の一平坦部に垂直な軸と前記梁の長手
    方向に沿う軸とを含む平面内で開閉運動するように取り
    付けられたクランパとを含むことを特徴とする圧電クラ
    ンプ機構。
  8. 【請求項8】 請求項6又は請求項7記載の圧電クラン
    プ機構において、前記圧電素子が積層型のものであるこ
    とを特徴とする圧電クランプ機構。
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