JPH08135490A - エンジンのアイドル制御方法 - Google Patents

エンジンのアイドル制御方法

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JPH08135490A
JPH08135490A JP6278090A JP27809094A JPH08135490A JP H08135490 A JPH08135490 A JP H08135490A JP 6278090 A JP6278090 A JP 6278090A JP 27809094 A JP27809094 A JP 27809094A JP H08135490 A JPH08135490 A JP H08135490A
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JP
Japan
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amount
target
iscv
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air amount
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JP6278090A
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English (en)
Inventor
Masataka Igarashi
雅敬 五十嵐
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Subaru Corp
Original Assignee
Fuji Heavy Industries Ltd
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Publication date
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Publication of JPH08135490A publication Critical patent/JPH08135490A/ja
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    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/10Internal combustion engine [ICE] based vehicles
    • Y02T10/12Improving ICE efficiencies

Landscapes

  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 アイドル時の燃料噴射量に適合するアイドル
時の空気量をアイドル制御弁の応答性を考慮して決定す
ることで、燃料噴射の遅れをなくし且つ空気の遅れを最
小限にするとともに制御系の出力とアイドル制御弁の性
能とを合致させ、エンジントルクを応答性良く増減させ
て制御性の向上を図る。 【構成】 エンジンの図示トルクと線形関係にあるとみ
なせる行程吸入空気量Gaの目標値Gasetを算出す
ると、この目標行程吸入空気量Gasetから燃料噴射
量算出サブルーチンで燃料噴射量Gfを算出するととも
に、バルブ応答係数rとチャンバ容積Vとを乗算した仮
想チャンバ容積を用いた逆チャンバモデル式によりIS
CV通過空気量Qiscを算出し、このISCV通過空
気量Qiscに基づいてISCVのデューティ比DUT
Yiscを算出する。これにより、燃料噴射の遅れをな
くし且つ空気の遅れを最小限にするとともに系の出力と
アイドル制御弁の応答性を合致させ、エンジントルクを
追従性良く増減させて制御性を向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アイドル時の燃料噴射
量に適合する空気量を吸気系モデルを用いて算出し、こ
の空気量となるようアイドル制御弁を制御するエンジン
のアイドル制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、エンジンのアイドル回転数を負荷
外乱によらず一定に制御する方法として、図35に示す
ように、エンジン回転数と目標回転数との偏差にPI制
御器(あるいはPID制御器)を適用し、このPI制御
器の操作量として、アイドル空気量を調整するアイドル
制御弁(アイドルスピードコントロールバルブ;ISC
V)のバルブ開度を与える方法があり、ISCVによる
空気量をエアフローメータあるいは吸気管圧力センサな
どによって計測し、該吸入空気量に基づいて燃料噴射量
を決定し、この燃料噴射量に応じたエンジントルクを発
生させて回転数を目標回転数に一致させるようにしてい
る。
【0003】しかしながら、このようなトルクを制御し
て回転数を目標回転数と一致させる問題は、モータであ
るならば、トルクと線形関係にある電流をP分を主にし
た古典的なPI制御を行うことによって解決できるが、
エンジンの場合はトルクのパラメータが空気と燃料との
2要素存在するため、吸気系の空気に関する遅れや燃料
系の遅れが問題となり、上述のような制御方法では、負
荷変動に対する応答性、回転収束性に対する要求を十分
に満足させることは困難である。
【0004】吸気系の遅れに関しては、例えば、特開平
6−185391号公報に開示されているように、吸気
系に流体力学モデルを適用して遅れの問題を改善しよう
とする試みが一般に行われており、また、例えば、特開
平4−136448号公報には、内燃機関の回転数と吸
気管圧力を計測し、これらの計測値に基づいてアイドル
制御弁の開度を決定するとともに、計測値から吸気管圧
力の予測値を算出し、この予測値に比例した燃料噴射量
を算出することにより、空気及び燃料の遅れを改善しよ
うとする提案がなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ここで、従来のアイド
ル制御においては、操作量(ISCV開度要求)が増加
した後に、エンジントルクが増加するまでの追従遅れが
大きい。すなわち、操作量を増大してISCVの弁開度
(弁開口面積)を増加した後、まず、エンジンのシリン
ダ内(筒内)への空気流入までに遅れがあり、その次
に、筒内に吸入される空気量に見合った燃料量が筒内へ
流入するまでの遅れがある。従って、空気と燃料とが共
に揃い、エンジントルクが増加するまでには、相当大き
な遅れが発生し、応答性および回転収束性に対する要求
を満足できない。
【0006】これらの遅れの要因は、以下の4項目が直
列的に影響するためと考えられる。 (1)機械的なISCVの応答遅れ (2)ISCVを通過する空気量がシリンダ流入空気量
と等しくなるまでの時間遅れが存在するため、エンジン
トルクが増加するまでに遅れが発生する(吸気チャンバ
への空気充填による遅れ)。 (3)空気量を計測してから燃料噴射量を算出するた
め、計測遅れが存在し、エンジントルクが増加するまで
に遅れが発生する(空気量を計測するセンサの応答遅
れ)。 (4)燃料の吸気ポート壁面等への付着に起因する筒内
への燃料輸送遅れ。
【0007】前記第1の先行例(特開平6−18539
1号公報)に開示されている吸気系に流体力学モデルを
用いる技術をアイドル制御に適用した場合には、流体力
学モデルにより上記(2)の吸気チャンバへの空気充填
による遅れについては減少することができるが、上記
(1),(3),(4)による遅れについては解決でき
ず、ISCVの応答遅れ、ISCV作動後このISCV
による空気量を計測するセンサの応答遅れ、及び燃料輸
送遅れが直列的に加算されるため、アイドル制御におけ
る応答性および回転収束性を十分に向上することができ
ない。
【0008】また、前記第2の先行例(特開平4−13
6448号公報)では、吸気管圧力の予測値を算出して
該予測値に比例した燃料噴射量を算出するようにしてい
るため、上記(3)の計測遅れについては解決すること
ができるものの、上記(1),(2),(4)による遅
れについては解決できず、これらの機械的なISCVの
応答遅れ、吸気チャンバへの空気充填遅れ、及び燃料輸
送遅れが直列的に加算されるため、同様に、アイドル制
御における応答性および回転収束性を十分に向上するこ
とができない。
【0009】さらには、結果的に、制御系の出力とIS
CVの機械的応答性を含む性能仕様とが合致しないこと
で回転収束性の悪化に拍車を掛けるおそれがある。例え
ば、ISCVのバルブ開度を駆動パルス信号のデューテ
ィ比によって可変する、いわゆるデューティ制御を採用
する場合には、制御系のゲインが小さ過ぎてデューティ
比の振れ幅が過剰に小さくなることで、実際のISCV
の機械的応答性を下回る性能しか得られないといった事
態や、制御系のゲインが大き過ぎてデューティ比の振れ
幅が過剰に大きくなり、実際のISCVの機械的応答性
を越えて回転収束性が悪化するといった事態が発生す
る。
【0010】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、アイドル時の燃料噴射量を決定すると共に、この燃
料噴射量に適合するアイドル時の空気量をアイドル制御
弁の応答性を考慮して決定することで、燃料噴射の遅れ
をなくし且つ空気の遅れを最小限にするとともに制御系
の出力とアイドル制御弁の性能とを合致させ、エンジン
トルクを応答性良く増減させて制御性の向上を図ること
のできるエンジンのアイドル制御方法を提供することを
目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、エンジンの図
示トルクと線形関係にあるとみなせる物理量の目標値を
アイドル時のエンジン回転数に応じて設定するとととも
に、スロットルバルブ下流からシリンダ直前までをモデ
ル化したチャンバを、アイドル制御弁の応答性を考慮し
て予め決定された容積値を有する仮想チャンバとし、上
記物理量の目標値に基づく燃料噴射量に適合する上記ア
イドル制御弁の通過空気量を、上記仮想チャンバ内に蓄
積される空気質量と上記シリンダ内に吸入される空気質
量との和として算出し、上記通過空気量の算出値に基づ
いて上記アイドル制御弁の開度を定め、この開度信号を
上記アイドル制御弁に出力してアイドル回転数を制御す
ることを特徴とする。
【0012】
【作用】本発明では、エンジンの図示トルクと線形関係
にあるとみなせる物理量の目標値をアイドル時のエンジ
ン回転数に応じて設定し、この物理量の目標値に基づく
燃料噴射量に適合するアイドル制御弁の通過空気量を、
吸気系モデルによるチャンバ内に蓄積される空気質量と
シリンダ内に吸入される空気質量との和として算出し、
この通過空気量の算出値に基づいてアイドル制御弁の開
度を定める際、上記チャンバをアイドル制御弁の応答性
を考慮して予め決定された容積値を有する仮想チャンバ
として系のゲイン調整を行う。
【0013】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明
する。図1〜図34は本発明の一実施例に係り、図1及
び図2はアイドル制御基本ルーチンのフローチャート、
図3は燃料噴射量算出サブルーチンのフローチャート、
図4はI分移動量算出サブルーチンのフローチャート、
図5及び図6は目標回転数移動量算出サブルーチンのフ
ローチャート、図7は負荷増減移動量算出サブルーチン
のフローチャート、図8は学習値算出サブルーチンのフ
ローチャート、図9は水温補正値算出サブルーチンのフ
ローチャート、図10は大気圧算出サブルーチンのフロ
ーチャート、図11は温度関数算出サブルーチンのフロ
ーチャート、図12はエンジン系の概略構成図、図13
はクランクロータとクランク角センサの正面図、図14
はカムロータとカム角センサの正面図、図15は電子制
御系の回路構成図、図16はアイドル制御のブロック
図、図17はアイドル制御に係わるECUの機能構成
図、図18はGa−NeマップによるP分制御の説明
図、図19はGa−NeマップによるI分制御の説明
図、図20は低水温時及び負荷変動時のGa−Neマッ
プの移動を示す説明図、図21はGa−Neマップの特
性を示す説明図、図22はGa−Neマップにおける始
動時制御を示す説明図、図23は始動時制御とGa−N
eマップとの関係を示す説明図、図24は行程吸入空気
量と吸気管圧力との関係を示す説明図、図25はチャン
バモデルの説明図、図26はエアコンON,OFF時の
回転数収束性を示す説明図、図27はDレンジシフト時
の回転数収束性を示す説明図、図28はP分の強さと回
転数及び吸気管圧力変動との関係を示す説明図、図29
は始動時の回転変動を示す説明図、図30は演算式にお
けるチャンバ容積の値を変化させた場合の回転変動とI
SCV開度変化を示す説明図、図31は水温補正による
ISCバルブ通過空気量の目標値及び実測値を示す説明
図、図32は低温始動時の目標ブースト圧及び実ブース
ト圧を示す説明図、図33はパワーステアリング転舵時
の回転数収束性を示す説明図、図34はISCVの特性
変化に対する学習を示す説明図である。
【0014】図12において、符号1はエンジン(図に
おいては水平対向4気筒型エンジンを示す)本体を示
し、このエンジン本体1には、シリンダヘッド2の吸気
ポート2aにインテークマニホルド3が連通され、この
インテークマニホルド3の上流にエアチャンバ4を介し
てスロットル通路5が連通されている。このスロットル
通路5の上流側には、吸気管6を介してエアクリーナ7
が取付けられ、このエアクリーナ7が吸入空気の取り入
れ口であるエアインテークチャンバ8に連通されてい
る。
【0015】また、上記排気ポート2bにエキゾースト
マニホルド9を介して排気管10が連通され、この排気
管10に触媒コンバータ11が介装されてマフラ12に
連通されている。一方、上記スロットル通路5にスロッ
トルバルブ5aが設けられ、このスロットル通路5の直
上流の上記吸気管6にインタークーラ13が介装され、
さらに、上記吸気管6の上記エアクリーナ7の下流側に
レゾネータチャンバ14が介装されている。
【0016】また、上記レゾネータチャンバ14と上記
インテークマニホルド3とを連通して上記スロットルバ
ルブ5aの上流側と下流側とをバイパスするバイパス通
路15に、アイドル空気量を調整するアイドル制御弁
(アイドルスピードコントロールバルブ;ISCV)1
6が介装されている。このISCV16は、後述する電
子制御装置50(ECU;図15参照)によって駆動さ
れる高速型のソレノイドバルブであり、本実施例におい
ては、ロータリ型ソレノイドにバイパス通路15の吸入
空気通路面積を調整する回動スライダが連設された構成
で、デューティ制御によって回動スライダの開口面積
(弁開度)が制御される。
【0017】さらに、上記ISCV16の直下流側に、
吸気圧が負圧のとき開弁し、またターボチャージャ18
によって過給されて吸気圧が正圧になったとき閉弁する
チェックバルブ17が介装されている。
【0018】上記ターボチャージャ18は、上記吸気管
6の上記レゾネータチャンバ14の下流側にコンプレッ
サが介装され、タービンが上記排気管10に介装されて
いる。さらに、上記ターボチャージャ18のタービンハ
ウジング流入口には、ウエストゲート弁19が介装さ
れ、このウエストゲート弁19には、ウエストゲート弁
作動用アクチュエータ20が連設されている。
【0019】上記ウエストゲート弁作動用アクチュエー
タ20は、ダイヤフラムにより2室に仕切られ、一方が
ウエストゲート弁制御用デューティソレノイド弁21に
連通される圧力室を形成し、他方が上記ウエストゲート
弁19を閉方向に付勢するスプリングを収納したスプリ
ング室を形成している。
【0020】上記ウエストゲート弁制御用デューティソ
レノイド弁21は、上記レゾネータチャンバ14と上記
吸気管6の上記ターボチャージャ18のコンプレッサ下
流とを連通する通路に介装されており、ECU50から
出力される制御信号のデューティ比に応じて、上記レゾ
ネータチャンバ14側の圧力と上記コンプレッサ下流側
の圧力とを調圧し、制御圧として上記ウエストゲート弁
作動用アクチュエータ20の圧力室に供給する。
【0021】すなわち、上記ECU50によって上記ウ
エストゲート弁制御用デューティソレノイド弁21を制
御し、上記ウエストゲート弁作動用アクチュエータ20
を作動させて上記ウエストゲート弁19による排気ガス
リリーフを調整することにより、上記ターボチャージャ
18による過給圧を制御するようになっている。
【0022】また、上記インテークマニホルド3に吸気
管圧力センサ(絶対圧センサ)22が通路23を介して
連通され、さらに、上記インテークマニホルド3の各気
筒の各吸気ポート2aの直上流側にインジェクタ25が
臨まされている。また、上記シリンダヘッド2の各気筒
毎に、その先端を燃焼室に露呈する点火プラグ26が取
付けられ、この点火プラグ26に連設される点火コイル
26aには、イグナイタ27が接続されている。
【0023】上記インジェクタ25には、燃料タンク2
8内に設けたインタンク式の燃料ポンプ29から燃料フ
ィルタ30を経て燃料が圧送され、プレッシャレギュレ
ータ31にてインジェクタ25への燃料圧力が調圧され
る。
【0024】また、上記吸気管6の上記エアクリーナ7
の直下流に、ホットワイヤ式あるいはホットフィルム式
などの吸入空気量センサ32が介装され、上記スロット
ルバルブ5aに、スロットル開度センサ33aとアイド
ルスイッチ33bとを内蔵したスロットルセンサ33が
連設されている。
【0025】さらに、上記エンジン本体1のシリンダブ
ロック1aにノックセンサ34が取付けられるととも
に、このシリンダブロック1aの左右両バンクを連通す
る冷却水通路35に水温センサ36が臨まされ、上記排
気管10の上記エキゾーストマニホルド9の集合部にO
2 センサ37が臨まされている。
【0026】また、上記シリンダブロック1aに支承さ
れたクランクシャフト1bにクランクロータ38が軸着
され、このクランクロータ38の外周に、電磁ピックア
ップなどからなるクランク角センサ39が対設されてい
る。さらに、上記エンジン本体1のカムシャフト1cに
連設するカムロータ40に、電磁ピックアップなどから
なる気筒判別用のカム角センサ41が対設されている。
尚、上記クランク角センサ39及び上記カム角センサ4
1は、電磁ピックアップなどの磁気センサに限らず、光
センサなどでも良い。
【0027】上記クランクロータ38は、図13に示す
ように、その外周に突起38a,38b,38cが形成
され、これらの各突起38a,38b,38cが、各気
筒(#1,#2と#3,#4)の圧縮上死点前(BTD
C)θ1,θ2,θ3 の位置に形成されており、本実施例に
おいては、θ1 =97°CA、θ2 =65°CA、θ3
=10°CAである。
【0028】上記クランクロータ38の各突起は、上記
クランク角センサ39によって検出され、BTDC97
°,65°,10°のクランクパルスがエンジン1/2
回転毎(180°CA毎)に出力される。そして、各信
号の入力間隔時間がタイマによって計時され、エンジン
回転数が算出される。
【0029】また、図14に示すように、上記カムロー
タ40の外周には、気筒判別用の突起40a,40b,
40cが形成され、突起40aが#3,#4気筒の圧縮
上死点後(ATDC)θ4 の位置に形成され、突起40
bが3個の突起で構成されて最初の突起が#1気筒のA
TDCθ5 の位置に形成されている。さらに、突起40
cが2個の突起で形成され、最初の突起が#2気筒のA
TDCθ6 の位置に形成されている。本実施例において
は、θ4 =20°CA、θ5 =5°CA、θ6=20°
CAである。
【0030】そして、上記カムロータ40の各突起が上
記カム角センサ41によって検出され、各気筒の燃焼行
程順を#1→#3→#2→#4とした場合、この燃焼行
程順と、上記カム角センサ41からのカムパルスをカウ
ンタによって計数した値とのパターンに基づいて、気筒
判別がなされる。
【0031】一方、図15において、符号50は、エン
ジン系を制御する電子制御装置(ECU)50であり、
このECU50は、燃料噴射制御、点火時期制御などを
行なうメインコンピュータ51と、ノック検出処理を行
なう専用のサブコンピュータ52との2つのコンピュー
タを中心として構成され、各部に所定の安定化電源を供
給する定電圧回路53や各種の周辺回路が組込まれてい
る。
【0032】上記定電圧回路53は、ECUリレー54
のリレー接点を介してバッテリ55に接続されており、
このバッテリ55に、上記ECUリレー54のリレーコ
イルがイグニッションスイッチ56を介して接続され、
イグニッションスイッチ56がONされてECUリレー
54のリレー接点が閉となったとき、各部へ電源を供給
すると共に、上記定電圧回路56は上記バッテリ55に
直接接続されており、イグニッションスイッチ56のO
N,OFFに拘らず、バックアップRAM61にバック
アップ用の電源を供給する。尚、上記バッテリ55に
は、燃料ポンプリレー57のリレー接点を介して燃料ポ
ンプ29が接続されている。
【0033】上記メインコンピュータ51は、CPU5
8、ROM59、RAM60、上記イグニッションスイ
ッチ56のON,OFFに拘わらず上記定電圧回路53
から常時バックアップ電源が供給されてデータを保持す
るバックアップRAM61、カウンタ・タイマ群62、
シリアル通信インターフェースであるSCI63、及
び、I/Oインターフェース64がバスライン65を介
して接続されたマイクロコンピュータである。
【0034】尚、上記カウンタ・タイマ群62は、フリ
ーランカウンタ、カム角センサ信号の入力計数用カウン
タなどの各種カウンタ、燃料噴射タイマ、点火タイマ、
定期割込みを発生させるための定期割込みタイマ、クラ
ンク角センサ信号の入力間隔計時用タイマ、及び、シス
テム異常監視用のウオッチドッグタイマなどの各種タイ
マを便宜上総称するものであり、上記メインコンピュー
タ51においては、その他、各種のソフトウエアカウン
タ・タイマが用いられる。
【0035】また、上記サブコンピュータ52も、上記
メインコンピュータ51と同様、CPU71、ROM7
2、RAM73、カウンタ・タイマ群74、SCI7
5、及び、I/Oインターフェース76がバスライン7
7を介して接続されたマイクロコンピュータであり、上
記メインコンピュータ51とサブコンピュータ52と
は、上記SCI63,75を介してシリアル通信ライン
により互いに接続されている。
【0036】上記メインコンピュータ51のI/Oイン
ターフェース64には、入力ポートに、吸入空気量セン
サ32、スロットル開度センサ33a、水温センサ3
6、O2センサ37、吸気管圧力センサ22、車速セン
サ42、大気圧センサ44、及び、バッテリ55が、A
/D変換器66を介して接続されるとともに、アイドル
スイッチ33b、クランク角センサ39、カム角センサ
41、ラジエータファンスイッチ43、エアコンスイッ
チ45、自動変速機のシフト位置を検出するシフトスイ
ッチ46などが接続され、さらに、図示しない各種セン
サ及びスイッチ類が接続されている。
【0037】尚、マニュアルトランスミッション搭載車
(MT車)の場合は、上記シフトスイッチ46に代え、
シフト位置がニュートラルを検出するニュートラルスイ
ッチを用いるが、ニュートラルスイッチを省略しても良
い。
【0038】また、上記I/Oインターフェース64の
出力ポートには、イグナイタ27が接続されるととも
に、ISCV16、インジェクタ25、燃料ポンプリレ
ー57のリレーコイル、ウエストゲート弁制御用デュー
ティソレノイド弁21が駆動回路67を介して接続され
ており、さらに、図示しない各種のアクチュエータ類が
接続されている。
【0039】一方、上記サブコンピュータ52のI/O
インターフェース76は、入力ポートに、クランク角セ
ンサ39、カム角センサ41が接続されるとともに、A
/D変換器78、周波数フィルタ79、アンプ80を介
してノックセンサ34が接続されており、上記ノックセ
ンサ34からのノック検出信号が上記アンプ80で所定
のレベルに増幅された後に上記周波数フィルタ79によ
り必要な周波数成分が抽出され、上記A/D変換器78
にてデジタル信号に変換されて入力されるようになって
いる。
【0040】上記メインコンピュータ51では、各セン
サ類からの検出信号を処理し、燃料噴射量制御、点火時
期制御、アイドル制御などを行い、一方、上記サブコン
ピュータ52では、エンジン回転数とエンジン負荷とに
基づいてノックセンサ34からの信号のサンプル区間を
設定し、このサンプル区間でノックセンサ34からの信
号を高速にA/D変換して振動波形を忠実にデジタルデ
ータに変換し、このデータに基づきノック発生の有無を
判定する。
【0041】上記サブコンピュータ52のI/Oインタ
ーフェース76の出力ポートは、上記メインコンピュー
タ51のI/Oインターフェース64の入力ポートに接
続されており、上記サブコンピュータ52でのノック判
定結果がI/Oインターフェース76に出力される。そ
して、上記メインコンピュータ51では、上記サブコン
ピュータ52からノック発生有りの判定結果が出力され
ると、SCI63を介してシリアル通信ラインよりサブ
コンピュータ52からノックデータを読込み、このノッ
クデータに基づいて直ちに該当気筒の点火時期を遅ら
せ、ノックを回避する。
【0042】このようなエンジン制御において、上記メ
インコンピュータ51では、センサ・スイッチ類からの
信号入力処理、燃料噴射制御、点火時期制御、アイドル
制御に係わる各種ジョブが、一つのオペレーティングシ
ステム(OS)の管理下で効率的に実行される。このO
Sは、車輌制御のための各種マネジメント機能、及び、
このマネジメント機能に密着した内部ストラテジーを有
し、各種ジョブを体系的に結合し、等時間間隔処理によ
り各種ジョブを効率的に実行するようになっている。
【0043】以下、上記メインコンピュータ51による
アイドル制御について説明する。尚、サブコンピュータ
52はノック検出処理専用のコンピュータであるため、
その動作説明を省略する。
【0044】本発明によるアイドル制御は、図16に示
すように、アイドル回転数の変化に応じてPI制御器に
よってエンジンの図示トルクと線形関係にあるとみなせ
る物理量(行程吸入空気量)の目標値を設定し、この目
標値に基づき燃料噴射量を算出すると共に、この燃料噴
射量に適合したシリンダ吸入空気量を得るよう、上記燃
料噴射量の算出に並行して、吸気系モデル式の計算結果
を用いてISCV16の開度を決定することで、燃料噴
射の遅れをなくして回転収束性を向上する。
【0045】一般に、アイドル時の負荷外乱に対する回
転数収束性を向上させるためには、より高性能な制御器
を用いる、制御器の操作量に対するエンジントルクの追
従性を向上させるなどの手法が考えられるが、例えばサ
ーボモータのように、操作量(電流)に対してトルクの
追従性が良い回転体に対し、負荷外乱に対する回転数収
束性を向上させるには、よほどシビアな要求がない限り
通常のPID制御で充分であることから、制御器の操作
量に対してエンジントルクの追従性を向上させることが
できれば、古典的なPID制御器で十分である。
【0046】従って、本発明においても古典的なPID
制御器(但し、本実施例では、微分計算を含みノイズの
影響を受け易いD制御は用いない)を採用し、物理量の
目標値、すなわち、PI制御器の操作量として、1気筒
の1吸気行程当たりのシリンダ吸入空気質量で定義され
る行程吸入空気量Ga(単位;mg/cycle)を用
いる。この行程吸入空気量Gaは、エンジンの図示トル
クと線形関係にあると考えることができ、後述するよう
に、エンジン回転数をパラメータとして実験的に求めら
れたマップから求められる。
【0047】そして、アイドル時には、この行程吸入空
気量Gaに基いて、計測遅れなく燃料噴射量を算出する
とともに時間遅れを考慮した逆チャンバモデル式を用い
てISCV開度を算出するようにしており、これによ
り、エンジントルクの追従性を向上して既存のアイドル
制御よりも大幅な回転収束性の向上を実現することがで
き、エンストや回転変動によるフィーリングの悪化を招
くことなくアイドル回転数を低回転化して燃費を向上す
ることができる。
【0048】すなわち、前述のように、アイドル制御に
おける遅れは、(1)機械的なISCVの応答遅れ、
(2)吸気チャンバへの空気充填による遅れ、(3)空
気量を計測するセンサの応答遅れ(計測遅れ)、(4)
燃料の吸気ポート壁面への付着に起因する筒内への燃料
輸送遅れの4つの要因が直列的に影響するが、本発明で
は、アイドル時のエンジン回転数から直接的に、エンジ
ンの図示トルクと線形関係にあるとみなし得る1気筒の
1吸気行程当たりのシリンダ吸入空気質量で定義される
目標行程吸入空気量を設定し、この目標行程吸入空気量
に基づき、燃料噴射量と共にISCV16に対する制御
量を設定するので、アイドル時には空気量を計測して燃
料噴射量を決定する手法をとらず、(3)の空気量を計
測するセンサの応答遅れについては完全になくすことが
できる。さらに、上記目標行程吸入空気量に基づき、逆
チャンバモデル式を用いてISCVに対する制御量(I
SCV開度)を算出するので、上記(2)の吸気チャン
バへの空気充填による遅れは極微小値とすることができ
る。
【0049】尚、上記(1)の機械的なISCVの応答
遅れ、および(4)の輸送遅れについては、高速応答の
ISCVおよび壁面燃料付着の少ないインジェクタを採
用するとしても、これらの遅れをゼロにすることは不可
能である。しかし、本発明では、エンジン回転数に応じ
て設定した目標行程吸入空気量に基づき、燃料噴射量を
設定すると共にISCVに対する制御量を設定するの
で、機械的なISCVの遅れ、及び燃料輸送遅れは並列
的に発生することになる。
【0050】従って、アイドル時のエンジン回転数に応
じて上記目標行程吸入空気量を設定し、この目標行程吸
入空気量に基づき燃料噴射量を設定すると共に、目標行
程吸入空気量に基づき逆チャンバモデル式を用いてIS
CV16に対する制御量を設定することで、従来におい
て上述の4つの要因が直列的(加算的)に影響するアイ
ドル制御における遅れに対し、アイドル制御における遅
れは少なくとも1/4となり、大幅にエンジントルクの
追従性を向上することができる上に、予測制御で問題と
なるような不安定化の問題も全く解消することができ
る。
【0051】一方、非アイドル時には、本実施例では、
吸入空気量センサ32によって計測した吸入空気量に基
づいて燃料噴射量を制御する周知のLジェトロ方式によ
る燃料噴射制御を採用しており、このため、ECU50
(メインコンピュータ51)の機能構成としては、アイ
ドル時と非アイドル時とに対応して、図17に示すよう
に、吸入空気量算出部100、PI制御器に対応する目
標行程吸入空気量設定部101、通常制御/アイドル制
御切換部102、燃料噴射設定部103、逆チャンバモ
デルを用いたISCV通過空気量設定部104、ISC
V開度設定部105を基本構成として備えており、さら
に、エンジン回転数算出部106、目標回転数/負荷変
化予測部107、吸気管圧力検出部108、大気圧検出
部109、ISCV駆動部110、インジェクタ駆動部
111が備えられている。
【0052】そして、エンジンの運転状態がアイドル状
態か非アイドル状態かに応じ、吸入空気量算出部100
での吸入空気量センサ32からの信号に基づく吸入空気
量Qの算出と、目標行程吸入空気量設定部101での行
程吸入空気量Gaの目標値(目標行程吸入空気量)Ga
setの設定とが通常制御/アイドル制御切換部102
によって切り換えられ、燃料噴射設定部103に出力さ
れる。
【0053】本実施例においては、アイドルスイッチ3
3bがOFFの場合には、通常のLジェトロ方式による
燃料噴射制御の各種ジョブが実行され、アイドルスイッ
チ33bがON(スロットルバルブ5aが全閉)になる
と、アイドル運転状態と判別されてアイドル制御の各種
ジョブが実行されるようになっており、通常制御/アイ
ドル制御切換部102は、ジョブ切り換えのソフトウエ
アスイッチとなっている。
【0054】そして、燃料噴射設定部103では、アイ
ドル時に目標行程吸入空気量Gasetに基づいて燃料
噴射量を設定する一方、非アイドル時には吸入空気量セ
ンサ32で計測した吸入空気量Qに基づいて燃料噴射量
を設定し、インジェクタ駆動部111を介してインジェ
クタ25を駆動する。
【0055】非アイドル時の燃料噴射量の設定は、吸入
空気量算出部100で吸入空気量センサ32からの信号
に基づいて算出した吸入空気量Qと、エンジン回転数算
出部106でクランク角センサ39からの信号入力間隔
時間に基づいて算出したエンジン回転数Neとから、基
本燃料噴射量Tpを設定し(Tp=K・Q/Ne;Kは
インジェクタ特性補正定数)、この基本燃料噴射量Tp
をエンジン状態に対応する種々の補正項により補正して
最終的な燃料噴射量Tiを決定する周知の技術が適用で
きる。
【0056】一方、アイドル時には、目標行程吸入空気
量設定部101からの目標行程吸入空気量Gasetに
より、以下の(1)式で燃料噴射量Gf(単位;mg/c
ycle)を算出する。 Gf=Gaset・(F/A) … (1) 但し、F/A:目標燃空比 そして、上記(1)式によって算出される燃料噴射量Gf
に、例えば、適当な係数を掛けることにより、通常の基
本燃料噴射量Tpに変換することができ、非アイドル時
と同様の最終的な燃料噴射量Tiとすることができる。
【0057】すなわち、本来、PI制御によって操作し
たい量はエンジントルクであるが、このエンジントルク
とおよそ1次の関係にあると言って良いものとして、燃
料噴射量、行程吸入空気量、スロットルバルブ下流の吸
気管内絶対圧などが挙げられる。本実施例では、実際の
制御の計算の中では、便宜上、PI制御器の操作量とし
て行程吸入空気量Gaを用いるが、行程吸入空気量Ga
とは燃料噴射量Gfに目標空燃比(A/F)を掛けた量
であり、従って、(1)式により、行程吸入空気量Gaを
制御することは、PI制御の操作量を燃料噴射量Gfと
することと等価であり、実質的に燃料主導型のアイドル
制御となっている。
【0058】このような燃料主導型のアイドル制御で
は、万一、ISCV16が全開で固着して空気量が増加
したような場合にも、燃料噴射量Gfがエンジン回転数
に基づいて設定した目標行程吸入空気量Gasetによ
って与えられるため、空燃比がリーン化し、エンジント
ルクが増加しない。すなわち、従来のアイドル制御のよ
うに、ISCVで調節する空気量を計測して燃料噴射量
を算出する技術では、万一、ISCV16が全開で固着
した場合には、空気量の増加を計測して燃料噴射量も増
加してしまい、エンジンのトルクが増加してしまうが、
本発明の燃料主導型のアイドル制御では、このような不
具合が発生することがなく、安全が確保される。
【0059】以下、目標行程吸入空気量設定部101に
おける目標行程吸入空気量Gasetの設定について説
明する。この目標行程吸入空気量Gasetは、エンジ
ン回転数をパラメータとして実験的に求められた行程吸
入空気量のマップに対し、PI制御におけるI分(積分
成分)の移動やフィードフォーワード制御による目標回
転数移動及び負荷増減移動を行うことにより設定され
る。但し、後述するように、エンジン回転数Neが予め
設定したクランキング時の基準回転数(クランキング基
準回転数)Nst以下では、マップ値を用いず、吸気管
圧力センサ22からの信号によって吸気管圧力検出部1
08で計測した実際の吸気管内絶対圧力(ブースト圧)
Pに基づき目標行程吸入空気量Gasetを算出する。
【0060】まず、行程吸入空気量のマップについて説
明する。本発明によるアイドル制御は、行程吸入空気量
Gaを制御してエンジンの図示トルクを変化させ、この
図示トルクと摩擦トルク(フリクション)の釣合うエン
ジン回転数Neを目標回転数Ne0と一致させる制御で
あり、行程吸入空気量Gaの目標値は、図18に示すよ
うなマップ(Ga−Neマップ)を用いて決定される。
【0061】図18においては、アイドル時の目標回転
数Ne0でのエンジンのフリクションと、その回転数N
e0での行程吸入空気量Ga0が発生する図示トルクと
が釣合っており、仮にエンジン回転数Neが目標回転数
Ne0からずれると、その誤差に比例したエンジントル
クが発生することになる。すなわち、エンジンの図示ト
ルク(行程吸入空気量)とフリクションとの釣合点が目
標回転数Ne0となる行程吸入空気量Ga0が実験的に
求められると、この目標回転数Ne0から回転が低くな
るにつれて行程吸入空気量Gaを増加させ、回転が高く
なるにつれて行程吸入空気量Gaを減少させることにな
る。
【0062】このようにエンジン回転数Neに対して右
下がりのマップで行程吸入空気量Gaを与える(エンジ
ン回転数Neが増加すると行程吸入空気量Gaが減少す
る)ことは、回転が低くなると図示トルクを増加させ、
回転が高くなると図示トルクを減少させることであり、
例えば、急激な負荷増加によりフリクションが急増した
場合には、行程吸入空気量Gaが目標回転数Ne0のま
まで変わらなければエンジン回転数Neは“Ne0′”
まで落ち込むが、本制御では、行程吸入空気量はフリク
ションとマップの交点Ga1まで素早く増加し、エンジ
ン回転数Neは“Ne1”までしか落ちない。これがP
I制御におけるP分(比例分)の制御となる。
【0063】以上のP分制御は、負荷外乱に対する過渡
的な回転数収束性を大きく向上させることができるが、
定常的な誤差を完全にゼロにすることはできない。この
ため、負荷変化や燃焼のばらつき、エンジンの個体差な
どにより、P分だけでは行程吸入空気量(図示トルク)
とフリクションの釣合う回転数が目標回転数に一致しな
いことが考えられ、目標回転数に正確に収束させるため
には、I分(積分成分)の制御が必要となる。
【0064】すなわち、図19に示すように、破線で示
す行程吸入空気量Gaに対し、フリクションとの釣合点
が“F0”で目標回転数Ne0に一致しているとき、負
荷が増加して釣合点が“F1”になると、エンジン回転
数数Neは“Ne1”となる。このような場合、図19
(a)に示すように、Ga−Neマップを横軸(Ne
軸)に対して水平に移動させて行き、釣合点F1′を目
標回転数Ne0と一致させることにより、あるいは、図
19(b)に示すように、Ga−Neマップを縦軸(G
a軸)に対して平行に移動させて行き、釣合点F1′を
目標回転数Ne0と一致させることにより、I分制御を
実現できる。
【0065】尚、理論的には、図19(b)に示すよう
に、Ga−Neマップを縦軸方向に移動させるのが正し
いが、マップを縦軸方向に移動させる場合、条件によっ
ては高回転での燃料噴射量減少に対する処置が必要であ
るため、本実施例においては、マップを横軸方向に移動
させ、これをI分制御とする。
【0066】さらに、目標行程吸入空気量Gasetの
設定に際しては、低水温時やエアコンON時など、既知
のフリクション増加と目標回転数の増減が見込める場
合、フィードフォワード制御を追加し、全てをフィード
バックに頼るよりも良い応答が期待できるようにしてい
る。
【0067】すなわち、低水温時やエアコンON時な
ど、目標回転数が変わる場合には、図20に示すよう
に、予め、目標回転数移動量ΔNeだけGa−Neマッ
プを横軸(Ne軸)に対して水平に移動させてフリクシ
ョンとの交点を移動させ、その時の目標回転数と一致さ
せる。また、低水温時やエアコンON時など、センサや
スイッチにより、ある程度フリクション(負荷)の増減
が予測できる場合には、この負荷の増減に対し、Ga−
Neマップを縦軸(Ga軸)に対して平行に負荷増減移
動量ΔGaだけ移動させる。
【0068】目標回転数移動量ΔNe及び負荷増減移動
量ΔGaは、水温センサ36からの信号、ラジエータフ
ァンスイッチ43からの信号、エアコンスイッチ45か
らの信号、シフトスイッチ46からの信号、及び、バッ
テリ電圧VBに基づき、目標回転数/負荷変化予測部1
07において以下の条件下で個々に算出される。
【0069】
【0070】例えば、エアコンON直後のオーバーシュ
ートやエアコンOFF後のアンダーシュートについて調
べると、図26(b)に示す従来のアイドル制御に比較
し、本実施例では、図26(a)に示すように、エアコ
ンON直後のオーバーシュート及びエアコンOFF後の
アンダーシュートがかなり小さくなっており、エアコン
ON定常時の回転変動もない。
【0071】また、自動変速機のシフト位置変化による
回転変動を調べると、NレンジからDレンジへのシフ
ト、DレンジからNレンジへのシフト、あるいはこれら
のシフトを連続的に繰り返した場合、図27(b)に示
す従来のアイドル制御による回転変動に対し、本実施例
では、図27(a)に示すように、回転変動が小さくな
っており、Dレンジ→Nレンジへシフトした場合には、
目標回転数をステップ的ではなく緩やかに変化させるこ
とができる。これは負荷変動(ΔGa)と回転数移動
(ΔNe)とを個々に算出し、後述するように、負荷増
減移動量ΔGaはステップ的に変化させるが、目標回転
数移動量ΔNeは穏やかに変化させて、Ga−Neマッ
プを移動させているためである。
【0072】ここで、Ga−Neマップは、基本的に行
程吸入空気量Gaが右下がりのマップであれば良く、図
21に示すように、低,中,高回転域のRA,RB,RC
の3つの領域に大別される。まず、RB部では、目標回
転数で安定する行程吸入空気量Ga0が実験的に求めら
れ、ここでのマップの傾きの強さがP分の強さとなる。
【0073】このRB部における傾きの強さは、これに
よって負荷外乱による回転変動量が変化する重要な箇所
であり、例えば、図28(a),(b),(c)に示す
ように、RB部の傾きを、それぞれ、0.2mg/1r
pm、0.8mg/1rpm、2.0mg/1rpmと
変えてパワーステアリングを転舵し、回転変動及び吸気
管内圧力変動を調べると(但し、P分のみの影響を見る
ため、I分制御は作動していない)、傾きが強くなるに
つれて回転変動が小さくなることが解る。しかし、あま
り傾きを強くすると図28(c)のように定常時でも吸
気管内圧力が振れてしまい、好ましくない。このため、
RB部における傾きの強さは、回転変動と吸気管内圧力
とを考慮して適切に設定される。
【0074】また、RC部は、失火を防止してコーステ
ィングやレーシング後の滑らかさを得るため、緩やかに
Gaを減少させ、高回転域で、行程吸入吸気量を“0”
に落とさないようにしている。一方、RA部は、始動時
の行程吸入空気量との連続性を得るようグラフが曲がっ
ており(クランキング時に得られる行程吸入空気量に一
致させている)、正確には、非線形なP制御と言える。
【0075】そして、クランキング基準回転数Nst以
上でのRA部の傾きの強さは、RB部の傾きよりも緩やか
に設定され、クランキング基準回転数Nstより低回転
では、マップ値を与えず、次に述べる始動制御におい
て、吸気管圧力センサ22で計測したスロットルバルブ
5a下流の吸気管内絶対圧力(実ブースト圧;単位kP
a)Pから実際の行程吸入空気量Gaを算出する。
【0076】すなわち、本実施例では、クランキング基
準回転数Nst以下の始動時には、Ga−Neマップで
目標行程吸入空気量を与える燃料主導型よりも、実ブー
スト圧から算出した実行程吸入空気量から燃料噴射量を
決定するDジェトロ的手法の始動時制御を行っており、
制御の簡素化を図っている。
【0077】まず、吸気管圧力検出部108で計測した
ブースト圧Pが大気圧検出部109で大気圧センサ44
からの信号に基づいて計測した大気圧P0(単位;kP
a)と等しいときの行程吸入空気量をGamaxとする
と、通常、エンジン回転数が0rpmの場合は、吸気管
内圧力は大気圧であるため、行程吸入空気量はGama
xとなる。
【0078】しかしながら、前述したように、低水温時
などフリクションが増加した場合には、フリクション増
加の分だけマップを移動させるため、理論的に不可能な
行程吸入空気量を要求することになる。この場合、図2
2に示すように、行程吸入空気量の値をGamaxでリ
ミットすると、低回移転域でマップが右下がりでない領
域が生じることに対する処置が必要であり、また、水温
などによる負荷もマップのパラメータとし、Ga−Ne
マップを2次元マップにすることなども考えられるが、
水温により多数のマップを作らねばならず、個々のマッ
プの傾きが変わって回転収束性が変化しないよう考慮し
なければならない。
【0079】よって、本実施例では、クランキング基準
回転数Nst以下の場合には、図23に示すように、G
a−Neマップでは行程吸入空気量Gaを与えず実ブー
スト圧Pより算出する。そして、この場合のISCV開
度は、クランキング基準回転数Nstでの目標行程吸入
空気量になるように制御され、エンジン回転数がクラン
キング基準回転数Nstを越えた場合に、燃料主導型の
アイドル制御へと自然につながり、空燃比もほぼ理論的
に制御できるようになる。ここで低水温時などに目標回
転数移動量ΔNeだけマップを移動させた場合には、N
st+ΔNeまで行程吸入空気量は実ブースト圧Pより
算出されることになる。
【0080】例えば、図29に示すように、始動時の回
転変動に対し、図29(b)の従来のアイドル制御で
は、始動時にかなりのオーバーシュートが発生するが、
本実施例では、図29(a)に示すように、始動時のオ
ーバーシュートを極めて小さくすることができる。
【0081】以上のGa−Neマップから具体的に目標
行程吸入空気量Gasetを設定するには、Ga−Ne
マップのマップ値を実際に動かすわけではなく、マップ
軸を動かすようにしている。
【0082】すなわち、具体的には、目標行程吸入空気
量設定部101で用いるGa−Neマップは、クランク
角センサ39からの信号に基づく実エンジン回転数Ne
に、目標回転数NSETに対するI分制御の移動量FBN
を加算し、目標回転数/負荷変化予測部107からのフ
ィードフォワード制御による目標回転数移動量ΔNeを
減算したマップ指示回転数IRPM(=Ne+FBN−
ΔNe)をパラメータとする基本吸入空気量マップとし
て構成されている。
【0083】そして、マップ指示回転数IRPMがクラ
ンキング基準回転数Nstを越えている場合、この基本
吸入空気量マップを参照して得られる基本行程吸入空気
量Gabaseに、同じく目標回転数/負荷変化予測部
107からのフィードフォワード制御による負荷増減移
動量ΔGaを加え、目標行程吸入空気量Gasetを設
定する。
【0084】また、マップ指示回転数IRPMがクラン
キング基準回転数Nst以下の場合には、吸気管圧力セ
ンサ22からの信号に基づいて吸気管圧力検出部108
で検出した実ブースト圧Pから実行程吸入空気量Gaを
計算により算出し、この実行程吸入空気量Gaを目標行
程吸入空気量Gasetとする。
【0085】図24に示すように、行程吸入空気量Ga
とブースト圧Pとは、以下の(2)式に示すように、簡単
な1次の関係にあることが実験的に確認されており、こ
の関係は、本来、エンジン回転数により異なるが、本実
施例においては、アイドル制御中は一定であると仮定す
る。 Ga=K1・P−K2 … (2) 但し、K1,K2:定数 詳細には、上記(2)式は、シリンダ容積をVcy、気体
定数をR、吸気温度をTとすれば、次の(3)式のように
表せる。
【0086】 Ga=K3・P・Vcy/(R・T)−K2 … (3) 但し、K3:定数
【0087】上記(3)式を利用することにより、実ブー
スト圧Pに対応する実行程吸入空気量実Gaの算出が行
え、また、次に説明するISCV通過空気量設定部10
4において、目標行程吸入空気量Gasetに対応する
目標ブースト圧Psetの算出が行える。
【0088】ここで、上記(3)式には、吸気温度Tの因
子が含まれているが、本実施例では、非アイドル時にL
ジェトロ方式による燃料噴射制御を採用している関係
上、吸気温センサを備えておらず、また、アイドリング
中はスロットルバルブ5aを通過する空気流量が0とみ
なせ、ISCV16を通過する空気の温度を考慮すれば
良いこと、ISCV16の空気通過部のすぐ横に冷却水
通路があることなどから、吸気温度Tを冷却水温TWに
等しいとみなし、上記(3)式における温度関数R・T
を、次の(4)式で示す温度関数Mで代用する。 M=R・TW … (4)
【0089】以上のようにして目標行程吸入空気量Ga
setが決定されると、この目標行程吸入空気量Gas
etが、前述したように、アイドル制御切換部102を
介して燃料噴射設定部103に出力されて燃料噴射量G
fが算出され、同時に、ISCV通過空気量設定部10
4へ出力されてISCV16の通過空気量Qiscが設
定される。
【0090】ISCV通過空気量設定部104及びIS
CV開度設定部105では、Δtで表される微小時間後
に、実際の1吸気行程当たりの筒内への吸入空気質量を
目標行程吸入空気量Gasetに一致させるべくISC
V16の開度(ISCV16の駆動パルス信号のデュー
ティ比)を設定し、ISCV駆動部110を介してIS
CV16を駆動する。
【0091】この場合、PI制御器の指示値としての目
標行程吸入空気量Gasetへの制御は、目標ブースト
圧Psetへの制御と考えて良く、行程吸入空気量Ga
を目標値Gasetにするためには、ISCV16の開
度を制御し、吸気管内圧力Pを目標ブースト圧Pset
まで変化させれば良い。
【0092】このため、ISCV通過空気量設定部10
4では、Δt時間後に、実ブースト圧Pが目標ブースト
圧Psetに一致するようなISCV通過空気量Qis
cを、以下に説明する逆チャンバモデル式を用いて算出
する。
【0093】すなわち、吸入系を単純化して考えると、
スロットルバルブ5a下流から吸気ポート2aに至るシ
リンダ直前までの経路には容積が存在し、図25に示す
ように、この部分をチャンバとするチャンバモデルが考
えられる。このチャンバモデルにおいて、チャンバ内へ
の空気の入出力関係を考えると、 Qisc:ISCV通過空気量 (単位;g/s) Qcy :シリンダ流入空気量 (単位;g/s) Wm :チャンバ内空気質量 (単位;g) として、アイドリング中はスロットル通過空気流量が0
であるため、Δt時間で吸気チャンバ内に蓄積される空
気質量すなわちチャンバ内空気質量Wmは、Δt時間で
ISCV16を通過してチャンバ内に流入する空気量す
なわちISCV通過空気量Qiscと、Δt時間にチャ
ンバから流出してシリンダ内へ吸入される空気質量すな
わちシリンダ流入空気量Qcyとの差であり、以下の
(5)式で表わすことができる。 (Wm(t+Δt)−Wm(t))/Δt=Qisc−Qcy … (5) 但し、Δtは計算周期(例えば10ms)
【0094】上記(5)式は、一般にチャンバモデル式と
呼ばれる式であり、この(5)式を逆にすると、ISCV
の通過空気量は、Δt時間で吸気チャンバ内の圧力Pが
目標ブースト圧Psetまで変化することでチャンバ内
に蓄積される空気質量と、Δt時間にシリンダ内に吸入
される空気質量との和として消費されていると考えるこ
とができ、気体の状態方程式を適用してISCバルブ通
過空気量Qiscを以下の(6)式(逆チャンバモデル
式)で求めることができる。 Qisc=(P(t+Δt)−P(t))・V/(M・Δt)+Qcy … (6) 但し、V:チャンバ容積 M:R・Tを代用する温度関数
【0095】また、シリンダ流入空気流量Qcyは、次
の(7)式で示すように、エンジン回転数Neと前述した
(3)式で算出される実行程吸入空気量Gaとから求める
ことができる。 Qcy=N・Ga・(Ne/2)・(1/60) … (7) 但し、N:気筒数
【0096】上記(6)式におけるP(t)の項は、ある時間
tでの実ブースト圧Pであり、また、P(t+Δt)の項
は、Δt時間後の目標行程吸入空気量Gasetに対応
する目標ブースト圧Psetであって、前述の(3)式を
逆にした以下の(8)式で与えることができる。
【0097】 Pset=(Gaset+K2)・M/(K3・Vcy) … (8)
【0098】以上のように、逆チャンバモデル式によっ
てISCV通過空気量Qiscを求めることで、チャン
バへの空気の充填遅れの影響を微少なものとすることが
でき、微小時間後の実際の行程吸入空気量Gaを、PI
制御器の指示値に精度良く一致させることができる。
【0099】ここで、前述の(6)式(逆チャンバモデル
式)におけるチャンバ容積Vは、式上では実際の吸気系
の形状によって定まる定数であるが、制御上はISCV
通過空気量Qiscのゲインとなっており、チャンバ容
積Vの値によってISCV通過空気量Qiscの値が変
わる。
【0100】このことは、ISCV16の上下流の差圧
とISCV通過空気量Qiscとの関数として与えられ
るISCV16の開度すなわちデューティ比がチャンバ
容積Vによって影響されることを意味し、このチャンバ
容積Vの値によってISCV16の応答性を決定するこ
とができる。
【0101】例えば、図30(a),(b),(c)に示
すように、V=250cc、V=1000cc、V=2
500ccと変化させた場合のエンジン回転数変動とデ
ューティ比の振れ幅の変化を調べると、チャンバ容積V
の値を大きくするにつれて、デューティ比の振れ幅が大
きくなるが、チャンバ容積VはQiscのゲインである
ため、小さくしすぎると、図30(a)のように、デュ
ーティ比の振れ幅は小さいが応答性が悪化し、負荷変化
時の回転収束性が悪化してしまう。
【0102】また、チャンバ容積Vの値を大きくしすぎ
ると、敏感になりすぎ、図30(c)のようにデューテ
ィ比の振れ幅が大きくなり、しまいにはバルブ吸入音が
発生することになる(注目すべきこととして、このよう
にデューティ比が大きく振れても回転は安定してい
る)。実用上は、デューティ比の振れ幅が図30(b)
のように10%以内であれば問題のないレベルであると
言える。
【0103】すなわち、前述の逆チャンバ式におけるチ
ャンバ容積Vをあたかも変数のように扱うことにより、
ISCV16の応答性を決定するセッティング定数とす
ることができ、これを仮想チャンバ容積V’と呼ぶこと
にすれば、この仮想チャンバ容積V’は、具体的は、吸
気系の形状によって定まるチャンバ容積Vに変数(バル
ブ応答係数)rを掛けたもので表すことができる。
【0104】従って、ISCV通過空気量Qiscを求
める前述の(6)式を以下の(9)式で置き換え、バルブ応答
係数rの値を変えることでISCV16の応答性のセッ
ティングを行うことができる。本実施例では、バルブ応
答係数rは、例えば、r=0.5〜2程度の値となり、
r=1のとき、以下の(9)式は通常の逆チャンバ式と一
致する。 Qisc=(P(t+Δt)−P(t))/Δt・r・V/M+Qcy … (9)
【0105】ISCV開度設定部105では、ISCV
16を通過する空気の基本温度での質量流量からISC
V開度(デューティ比)を設定する。上記(9)式で算出
されるISCV通過空気量Qiscは質量流量であり、
吸気温度が変化すると空気温度の補正が必要であるが、
前述したように、本実施例では、吸気温度Tを冷却水温
TWで代用するため、セッティング時の基本温度Tba
seに対する冷却水温TWの比を水温補正値HIQとし
て用い(HIQ=TW/Tbase)、質量流量である
ISCV通過空気量Qiscを温度補正し、、以下の(1
0)式に示すようにQisc’に変換する。 Qisc’=Qisc・HIQ … (10)
【0106】この水温補正によるISCV16の通過空
気量の目標値と実測値は、図31(a)に示され、水温
補正無しの図31(b)に比較し、ISCV16の通過
空気量の目標値と実測値がほぼ等しくなっていることが
わかる。また、図32に示すように、−10℃での低温
始動においても、目標ブースト圧と実ブースト圧とがほ
ぼ一致しており、吸気温度Tを冷却水温TWで代用して
も問題なく、始動後すぐに目標回転数で安定しているこ
とから、低温始動性も良好である。
【0107】以上の(10)式で温度補正されたISCV
通過空気量Qisc’は、ISCV16の弁開度すなわ
ちISCV16を駆動するパルス信号のデューティ比D
UTYと、ISC16の前後の差圧(ISCV16の
上,下流の圧力差)Piとによって決定され、デューテ
ィ比DUTYは2次元関数fを用いて以下の(11)式で表
すことができる。 DUTY=f(Pi,Qisc’) … (11) 但し、Pi=P0−P
【0108】上記2次元関数fは、ISCV16の構造
などが複雑に関係し、理論的に求めることは困難なた
め、具体的には、ISCV16の特性実験の結果である
実測値を、差圧PiとISCV通過空気量Qisc’と
をパラメータとして2次元マップ化し、この2次元の特
性マップを参照することでデューティ比DUTYを求め
るようにしている。
【0109】このようにして設定されるデューティ比D
UTYは、応答性の向上が見込めるため、従来のアイド
ル制御におけるように、そのデータをかなり細かく設定
する必要がなく、デューティ比のビット数を少なくする
ことができる(例えば、10ビット→8ビット)。この
ため、ISCV16を駆動するための電子回路で扱うビ
ット数が少なくなり、ECU50内のゲートアレイの削
減などに大きく貢献し、コスト低下を図ることができ
る。
【0110】図33は、パワーステアリングを緩やかに
回転させた場合(図中、丸数字1参照)、フル転舵付近
で早い回転を与えた場合(図中、丸数字2参照)、素早
くロックからロックまで転舵した場合(図中、丸数字3
参照)の回転変動を示し、図33(b)に示す従来のア
イドル制御に対し、本実施例では、図33(a)に示す
ように、デューティ比DUTYのビット数を少なくする
ことで制御周期が荒いにも拘わらず、回転変動を極めて
小さく抑えることができ、また、空気過剰率λの変動も
明らかに小さく、空燃比制御性が優れていると言える。
【0111】さらに、上記2次元マップから求められる
デューティ比DUTYに対し、生産ばらつきに起因する
個々のISCV16の弁開口面積(弁開度)の相違、あ
るいはISCV16にカーボンが付着してISCV16
の弁開口面積の減少等でバルブの特性が変わった場合な
どに対処するため、上記2次元マップ値を基本デューテ
ィ比として、次の(12)式で示すように、学習値DUTY
LRによる補正を加えて最終的なデューティ比DUTY
iscとする。 DUTYisc=DUTY+DUTYLR … (12)
【0112】図34は、ISCV16にカーボンが付着
した場合の特性変化に対する学習補正の効果を示し、図
34(a)に示すように、カーボン未堆積の状態で目標
ブースト圧と実ブースト圧とが一致している状態からカ
ーボンが堆積し、学習補正が無い場合には、図34
(b)に示すように、目標ブースト圧と実ブースト圧が
一致しなくなって空気過剰率λがリッチ側に移行する
が、エンジン回転数はノーマルな初期状態とほぼ一致す
る。
【0113】この状態で、学習補正を行うと、図34
(c)に示すように、目標ブースト圧と実ブースト圧と
がほぼ一致し、空気過剰率λもノーマルな初期状態の値
とほとんど等しい値を示すようになる。
【0114】尚、簡易的には、ISCV特性マップを、
ISCV通過空気量Qisc’のみをパラメータとする
1次元マップとすることも可能であり、処理の簡素化が
期待できるが、常温、常圧での運転には大きな支障はな
いもののISCV16の負圧特性の変化に対しては十分
な配慮が必要である。
【0115】また、大気圧センサを備えていないシステ
ムでは、ISCV16の前後の差圧Piを正確に求める
ことができないが、システム電源ON時のエンジン始動
前の状態では、吸気管圧力センサ22の出力は等価的に
大気圧P0であるため、エンジン始動前であれば大気圧
P0を計測できること、また、アイドル中はブースト圧
が50kPa以下であるため、大気圧P0の影響はあま
り受けないとみなすことができること(ISCV16の
特性マップにおいても50kPa以下はほとんど同じ値
となる)などから、エンジン始動前に一度大気圧P0を
調べ、その後、大気圧一定としてISCV16の前後の
差圧Piを求めても良い。
【0116】次に、図1〜図11のフローチャートに基
づいてアイドル制御に係わる各ジョブについて説明す
る。
【0117】本実施例では、10ms毎のジョブを基本
ルーチンとしてISCV16をデューティ制御する一
方、この基本ルーチンで設定された目標行程吸入空気量
Gasetに基づき、所定タイミングで実行されるジョ
ブ(例えば、クランク角信号同期ジョブ)により燃料噴
射量Gfを算出する。
【0118】10ms毎の基本ルーチンで用いられる各
パラメータは、50ms、250ms毎に算出されてR
AM60の所定アドレスにそれぞれストアされ、50m
s毎の各ジョブでは、I分移動量FBN、目標回転数移
動量ΔNe、負荷増減移動量ΔGaがそれぞれ算出さ
れ、また、250ms毎の各ジョブでは、学習値DUT
YLR、水温補正値HIQ、大気圧P0、温度関数Mが
それぞれ算出される。
【0119】まず、10ms毎の基本ルーチンの説明に
先立ち、この基本ルーチンで用いられる各パラメータを
算出する各サブルーチンについて説明する。
【0120】50ms毎に実行される図4のI分移動量
算出サブルーチンでは、ステップS201で、以下の(1)
〜(4)の実行条件を全て満足した場合、すなわち、通
常のアイドル時であるか否かを判別する。 (1)エンジン停止状態でない。 (2)エンジン回転数Neが目標回転数NSETより低い
設定回転数(例えば、NSET−200rpm)以上であ
る。 (3)自動変速機のシフト位置がNレンジあるいはPレ
ンジである(MT車の場合はシフト位置がニュートラ
ル)。 (4)アイドルスイッチ33bがON後、設定時間が経
過している。
【0121】以上の条件のうち、一つでも満たされない
条件がある場合には、ルーチンを抜け、全ての条件を満
たしている場合、ステップS201からステップS202以降へ
進んで実エンジン回転数Neと目標回転数NSETとの誤
差分をステップ的に積分し、その量に応じてI分移動量
FBNを算出する。
【0122】そのため、ステップS202では、クランク角
センサ39からの信号に基づく実エンジン回転数Neが
目標回転数上限値NSET1以上か否かを調べ、Ne≧NSE
T1の場合(実エンジン回転数Neが上限値以上の場
合)、ステップS202からステップS203へ進んで、回転数
誤差分を積算するための変数IDFEを、設定値Aだけ
減算した値で書き換え(IDFE←IDFE−A)、ス
テップS206へ進む。
【0123】また、上記ステップS202で、Ne<NSET1
の場合(実エンジン回転数Neが上限値に達していない
場合)、上記ステップS202からステップS204へ進んで実
エンジン回転数Neが目標回転数下限値NSET2より低い
か否かを調べ、Ne≧NSET2の場合(実エンジン回転数
Neが目標回転数NSETに対して予め設定された上下限
の許容範囲内である場合)には、変数IDFEの値を保
持してルーチンを抜け、Ne<NSET2の場合(実エンジ
ン回転数Neが目標回転数下限値NSET2より低い場
合)、ステップS204からステップS205へ進んで、変数I
DFEに設定値Bを加算した値で変数IDFEを書き換
え(IDFE←IDFE+B)、ステップS206へ進む。
【0124】ステップS206以降では、変数IDFEの値
すなわち回転数誤差分が予め設定された範囲内にあるか
否かを調べ、変数IDFEの値に応じてI分移動量FB
Nを算出する。すなわち、ステップS206で変数IDFE
が設定値C以上か否かを調べ、IDFE≧Cの場合に
は、I分の移動量が少なく下限側から遠ざかり過ぎてい
るため、ステップS207で、前回のI分移動量FBNから
設定値Dを減算してI分移動量FBNをマイナス方向に
増加させ(FBN←FBN−D)、ステップS210で、変
数IDFEをリセットして初期値に戻した後、ルーチン
を抜ける。
【0125】一方、上記ステップ206でIDFE<Cの
場合、上記ステップS206からステップS208へ分岐して変
数IDFEが設定値Eより小さいか否かを調べる、そし
て、IDFE≧Eの場合には、現在のI分の移動量を保
持すべくステップS208からルーチンを抜け、IDFE<
Eの場合、I分の移動量が過剰で上限側から遠ざかり過
ぎているため、ステップS208からステップS209へ進ん
で、前回のI分移動量FBNに設定値Fを加算してI分
移動量FBNを増加させ(FBN←FBN+F)、前述
のステップS210で変数IDFEをリセットしてルーチン
を抜ける。
【0126】次に、図5及び図6の目標回転数移動量算
出サブルーチンについて説明する。前述したように、目
標回転数移動量ΔNeは、冷却水温TW、エアコンスイ
ッチ45、バッテリ電圧VB、シフトスイッチ46の状
態に応じて算出されるが、このサブルーチンでは、冷却
水温TWによる水温移動量ΔNeTW、エアコンスイッチ
45の状態によるエアコン移動量ΔNeACON、バッテリ
電圧VBによる電圧移動量ΔNeVBのうち、最大のもの
を目標回転数移動量ΔNeとし、これが“0”である場
合には、シフトスイッチ46による変速機移動量ΔNe
Dを目標回転数移動量ΔNeとして使用する。
【0127】このため、まず、ステップS301で、冷却水
温TWに基づいてマップを参照し、水温移動量ΔNeTW
を設定し、ステップS302で、この水温移動量ΔNeTWを
目標回転数移動量ΔNeとする(ΔNe←ΔNeTW)。
水温移動量ΔNeTWのマップは、低水温時ほど水温移動
量ΔNeTWの値が大きくなっており、フローチャート中
に図示するように、TW=−30°C近辺での最大値か
らTW=0°Cまで減少し、さらに、TW=80°Cまで
やや緩やかに減少してTW=80°Cで0となるような
特性となっている。
【0128】次いで、ステップS303へ進み、エアコンの
作動状態に応じエアコン移動量ΔNeACONを設定する。
すなわち、ステップS303でエアコンスイッチ45がON
かOFFかを調べ、エアコンスイッチ45がONの場合
にはステップS304へ進み、前回のエアコン移動量ΔNe
ACONに設定値KSを加算してエアコン移動量ΔNeACON
を増加させ(ΔNeACON←ΔNeACON+KS)、ステッ
プS305で、上記エアコン移動量ΔNeACONが上限値(例
えば、100rpm)に達したかを調べ、上限値以下
(ΔNeACON≦100rpm)の場合にはステップS309
へジャンプし、上限値に達した場合(ΔNeACON>10
0rpm)、ステップS306でエアコン移動量ΔNeACON
を上限値としステップS309へ進む。
【0129】これにより、エアコンスイッチ45がOF
FからONとなってエアコンコンプレッサ駆動負荷がか
かると、エアコン移動量ΔNeACONを上限値に達するま
で演算周期毎に設定値KSずつ漸次増加させて該エアコ
ン移動量ΔNeACONを緩やかに増加させ、制御性を安定
化するようにしている。そして、上限値に達した後、エ
アコン移動量ΔNeACONは、上限値に保持される。
【0130】一方、上記ステップS303で、エアコンスイ
ッチ45がOFFの場合には、ステップS307へ進んでエ
アコン移動量ΔNeACONが0に達したかを調べ、0に達
しているときには(ΔNeACON≦0)、ステップS309へ
ジャンプし、0に達していないとき(ΔNeACON>
0)、ステップS308で前回のエアコン移動量ΔNeACON
から設定値LSを減算してエアコン移動量ΔNeACONを
減少させ(ΔNeACON←ΔNeACON−LS)、ステップS
309へ進む。
【0131】すなわち、エアコンスイッチ45がONか
らOFFとなりエアコンコンプレッサ駆動負荷が解除さ
れると、エアコン移動量ΔNeACONを、0に達するまで
設定値ずつ漸次減少させることで、該エアコン移動量Δ
NeACONを緩やかに減少させ、同様に制御性を安定化す
るようにしている。
【0132】ステップS309では、エアコン移動量ΔNe
ACONと上記ステップS302での冷却水温TWによる目標回
転数移動量ΔNeとを比較して大小関係を調べる。そし
て、ΔNe≧ΔNeACONの場合には、ステップS311へジ
ャンプし、ΔNe<ΔNeACONの場合、ステップS310
で、エアコン移動量ΔNeACONを目標回転数移動量ΔN
eとして(ΔNe←ΔNeACON)ステップS311へ進む。
【0133】ステップS311では、バッテリ電圧VBに基
づきマップを参照して電圧移動量ΔNeVBを設定する。
この電圧移動量ΔNeVBは、図示するように、バッテリ
電圧VBが低下するほど大きくなり、VB=13V以上で
はΔNeVB=0となっている。この電圧移動量ΔNeVB
を設定した後は、ステップS312へ進み、上記ステップS3
11での電圧移動量ΔNeVBと、以前のステップにおいて
設定した目標回転数移動量ΔNe(水温移動量ΔNeT
W、エアコン移動量ΔNeACONのうち、大きい方)とを
比較し、ΔNe≧ΔNeVBの場合、ステップS314へジャ
ンプし、ΔNe<ΔNeVBの場合には、ステップS313
で、電圧移動量ΔNeVBを目標回転数移動量ΔNeとし
て(ΔNe←ΔNeVB)、ステップS314へ進む。
【0134】ステップS314では、目標回転数移動量ΔN
eが“0”か否か、すなわち、冷却水温TWが80°C
以上でエアコンスイッチ45がOFF、且つ、バッテリ
電圧VBが13V以上であり、水温移動量ΔNeTW、エ
アコン移動量ΔNeACON、電圧移動量ΔNeVBが全て0
か否かを調べ、ΔNe≠0の場合、水温移動量ΔNeT
W、エアコン移動量ΔNeACON、電圧移動量ΔNeVBの
うちの最大のものを目標回転数移動量ΔNeとしたまま
ルーチンを抜ける。
【0135】一方、上記ステップS314で、ΔNe=0の
場合には、上記ステップS314からステップS315へ進んで
シフトスイッチ46(MT車の場合はニュートラルスイ
ッチ)の信号に基づき変速機移動量ΔNeDを設定す
る。すなわち、ステップS315で変速機のシフト位置がN
レンジ(Pレンジを含む)か否かを調べ、Nレンジの場
合にはステップS316へ進み、前回の変速機移動量ΔNe
Dから設定値MSを減算して変速機移動量ΔNeDを減少
させ(ΔNeD←ΔNeD−MS)、ステップS317で、上
記変速機移動量ΔNeDが下限値(例えば、−100r
pm)に達したか否かを調べ、下限値以上(ΔNeD≧
−100rpm)の場合にはステップS321へジャンプ
し、下限値に達した場合(ΔNeD<−100rp
m)、ステップS318で変速機移動量ΔNeDを下限値と
しステップS321へ進む。
【0136】これにより、変速機のシフト位置がDレン
ジ(1,2,Rレンジを含む)からNレンジにシフトさ
れて駆動負荷が解除されると、変速機移動量ΔNeDを
下限値(−100rpm)に達するまで設定値MSずつ
漸次減少させることで、該変速機移動量ΔNeDを緩や
かに減少させ、制御性を安定化するようにしている。そ
して、このとき、各移動量ΔNeTW,ΔNeACON,ΔN
eVBが全て0であり、回転数移動量ΔNeを設定するた
めの変速機移動量ΔNeDは下限値に達した後、下限値
に保持される。
【0137】一方、上記ステップS315で変速機のシフト
位置がDレンジの場合には、ステップS319へ進んで変速
機移動量ΔNeDが0に達したか否かを調べ、0に達し
ているときには(ΔNeD≧0)、ステップS321へジャ
ンプし、0に達していないとき(ΔNeD<0)、ステ
ップS320で前回の変速機移動量ΔNeDに設定値NSを加
算して変速機移動量ΔNeDを増加させ(ΔNeD←Ne
D+NS)、ステップS321へ進む。
【0138】すなわち、変速機のシフト位置がNレンジ
からDレンジにシフトされて駆動負荷がかかると、変速
機移動量ΔNeDを0に達するまで設定値NSずつ漸次増
加させることで、該変速機移動量ΔNeDを緩やかに増
加させ、同様に制御性の安定化を図る。
【0139】そして、ステップS321で、変速機移動量Δ
NeDを目標回転数移動量ΔNeとして(ΔNe←ΔN
eD)ルーチンを抜ける。
【0140】また、図7の負荷増減移動量算出サブルー
チンでは、ステップS401で、冷却水温TWに基づく水温
負荷移動量ΔGaTW(マップ値)、エアコン作動(エア
コンスイッチ45がON)に基づくエアコン負荷移動量
ΔGaACON、自動変速機負荷(1,2,D,Rレンジ)
に基づく変速機負荷移動量ΔGaD、バッテリ電圧VBに
基づく電圧負荷移動量ΔGaVB(マップ値)、ラジエー
タファン作動(ラジエータファンスイッチ43がON)
に基づくラジエータファン負荷移動量ΔGaRADを合計
して負荷増減移動量ΔGaとし(ΔGa←ΔGaTW+Δ
GaACON+ΔGaD+ΔGaVB+ΔGaRAD)、ルーチン
を抜ける。
【0141】一方、図8は、250ms毎に実行される
学習値算出サブルーチンであり、ステップS501で、以下
の(1)〜(6)の条件を全て満足し、学習条件が成立
するか否かを判別する。 (1)エンジン停止状態でない。 (2)自動変速機のシフト位置がNレンジあるいはPレ
ンジである。 (3)アイドルスイッチ33bがOFF後、設定時間が
経過している。 (4)負荷増減移動量ΔGa=0 (5)エンジン回転数Neが目標回転数NSETに対して
予め設定された上下限の許容範囲内(NSET1≧Ne≧N
SET2)である。 (6)既に学習済みでない(学習フラグFがセットされ
ていない)。
【0142】そして、一つでも満たされない条件がある
場合には、ルーチンを抜け、全ての条件を満たして学習
可能であると判断した場合、ステップS502へ進んで、目
標ブースト圧Psetと実ブースト圧Pとの差(Pse
t−P)を、下限側の許容値である設定値G(プラス
値)と比較し、(Pset−P)≧Gの場合には、IS
CV16にカーボン等が付着して弁開口面積(弁開度)
がデューティ比DUTYiscの指示値より小さくなっ
ている可能性があるため、上記ステップS502からステッ
プS503へ進んで、許容値を越えた回数をカウントするた
めのカウンタDTYCT(正負の値をとるカウンタ)を
カウントアップし(DTYCT←DTYCT+1)、ス
テップS506へ進む。
【0143】一方、上記ステップS502で(Pset−
P)<Gの場合には、上記ステップS502からステップS5
04へ分岐して、目標ブースト圧Psetと実ブースト圧
Pとの差(Pset−P)を上限側の許容値である設定
値H(マイナス値)と比較し、(Pset−P)≧Hの
場合には許容範囲のため現在の学習値DUTYLRを保
持すべくルーチンを抜け、(Pset−P)<Hの場合
には、ISCV16の弁開口面積(弁開度)が生産時の
ばらつきなどの原因でデューティ比DUTYiscの指
示値より大きくなっている可能性があるため、ステップ
S505で、カウンタDTYCTをカウントダウンし(DT
YCT←DTYCT−1)、ステップS506へ進む。
【0144】ステップS506では、目標ブースト圧Pse
tと実ブースト圧Pとの差(Pset−P)が下限側の
許容値を越えた回数が設定回数以上になったかを判別す
るための設定値I(プラス値)とカウンタDTYCTの
値とを比較する。そして、DTYCT≧Iの場合には、
カーボン堆積などによりISCV16の弁開口面積(弁
開度)がデューティ比DUTYiscの指示値より小さ
くなったことが原因で、実ブースト圧Pが目標ブースト
圧Psetへの下限側の制御範囲をはずれたと判断し
て、ステップS507で、デューティ比DUTYiscを大
きくする方向(ISCV16の弁開度を大きくする方
向)に補正すべく、バックアップRAM61にストアさ
れている現在の学習値DUTYLRを設定値D1増加さ
せ(DUTYLR←DUTYLR+D1)、ステップS5
10で、学習値DUTYLRの書き換えが行われたことを
示すための学習フラグFをセットして(F←1)ルーチ
ンを抜ける。
【0145】また、上記ステップS506で、DTYCT<
Iの場合には、上記ステップS506からステップS508へ
分岐し、目標ブースト圧Psetと実ブースト圧Pとの
差(Pset−P)が上限側の許容値を越えた回数が設
定回数以上になったかを判別するための設定値J(マイ
ナス値)とカウンタDTYCTの値とを比較し、DTY
CT≧Jの場合には、現在の学習値DUTYLRを保持
すべくルーチンを抜け、DTYCT<Jの場合、生産時
のばらつきなどに起因してISCV16の弁開口面積
(弁開度)がデューティ比DUTYiscの指示値より
大きいことが原因で、実ブースト圧Pが目標ブースト圧
Psetへの上限側の制御範囲をはずれたと判断して、
ステップS509で、デューティ比DUTYiscを小さく
する方向(ISCV16の弁開度を小さくする方向)に
補正すべく現在の学習値DUTYLRを設定値D1だけ
減少させて(DUTYLR←DUTYLR−D1)前述
のステップS510を経てルーチンを抜ける。
【0146】尚、上記カウンタDTYCT及び学習フラ
グFは、システムイニシャライズ時に“0”に初期設定
され、前述したように、この学習値算出サブルーチンの
最初で学習フラグFが参照されるため、学習値DUTY
LRの書き換えはイグニッションスイッチ56がONさ
れてからOFFされるまでの間に一度だけ書き換えられ
る。
【0147】また、図9の水温補正値算出サブルーチン
では、ステップS601で、所定のタイミング毎に水温セン
サ36からの信号に基づいて検出される冷却水温TW
を、基本温度Tbaseで除算し、水温補正値HIQを
算出して(HIQ←TW/Tbase)、ルーチンを抜
ける。
【0148】さらに、図10の大気圧算出サブルーチン
では、ステップS701で、大気圧センサ44からの信号に
基づいて大気圧P0を計測してルーチンを抜け、図11
の温度関数算出サブルーチンでは、ステップS801で、ガ
ス定数Rと水温センサ36からの冷却水温TWとを乗算
して温度関数Mを算出し(M←R・TW)、ルーチンを
抜ける。
【0149】以上のようにして各パラメータが算出され
ると、10ms毎の基本ルーチンでは、ステップS101
で、ROM59から定数K3,K2、シリンダ容積Vc
yなどの既知の固定値を読み出すとともに、RAM60
から250msジョブで算出された温度関数Mの値を読
み出し、これらの値と吸気管圧力センサ22で計測した
実ブースト圧Pとを用いて前述の(3)式により実行程吸
入空気量Gaを算出する(Ga←(K3・Vcy/M)
・P−K2)。
【0150】次いで、ステップS102へ進み、クランク角
センサ39からの信号入力間隔時間に基づいて算出され
た実エンジン回転数Neに、50msジョブで算出され
るI分移動量FBNを加算し、さらに、同じく50ms
ジョブで算出される目標回転数移動量ΔNeを減算して
マップ指示回転数IRPMを算出する(IRPM←Ne
+FBN−ΔNe)。
【0151】続くステップS103では、マップ指示回転数
IRPMをパラメータとして基本行程吸入空気量のマッ
プを参照し、基本行程吸入空気量Gabaseを設定す
る。次いで、ステップS104へ進み、この基本行程吸入空
気量Gabaseに、50msジョブで算出される負荷
増減移動量ΔGaを加えて目標行程吸入空気量Gase
tを算出し(Gaset←Gabase+ΔGa)、ス
テップS105へ進む。
【0152】そして、ステップS105へ進むと、目標行程
吸入空気量Gaset、温度関数M、及び、ROM59
から読み出した各固定値K2,K3,Vcyを用いて前
述の(8)式により目標ブースト圧Psetを算出する
(Pset←(Gaset+K2)・M/(K3・Vc
y))。
【0153】続くステップS106では、上記ステップS102
で算出したマップ指示回転数IRPMとクランキング基
準回転数Nstとを比較し、通常のアイドル制御を行う
かクランキング時の極低回転域の始動時制御を行うかを
判別する。そして、IRPM≦Nstで極低回転域の始
動時制御と判別された場合には、ステップS107へ進み、
上記ステップS101で算出した実行程吸入空気量Gaを目
標行程吸入空気量Gasetとし(Gaset←G
a)。ステップS108へ進む。一方、上記ステップS106
で、IRPM>Nst(通常のアイドル制御)と判別さ
れた場合にはステップS108へジャンプする。
【0154】極低回転域の始動制御時には上記ステップ
S107で、通常のアイドル制御時には上記ステップS104で
算出された目標行程吸入空気量Gasetは、RAM6
0にストアされ、所定のタイミングで実行される図3の
燃料噴射量算出サブルーチンで参照される。この燃料噴
射量算出サブルーチンでは、ステップS151で、目標行程
吸入空気量Gasetに目標燃空比F/Aを乗算して燃
料噴射量Gfを算出し(Gf←Gaset・(F/
A))、ルーチンを抜ける。
【0155】そして、基本ルーチンでは、上記ステップ
S106あるいは上記ステップS107からステップS108へ進む
と、ISCV通過空気量Qiscを算出するために必要
なシリンダ流入空気量Qcyを前述の(7)式より算出し
(Qcy←N・Ga・Ne/2)、ステップS109へ進
む。
【0156】ステップS109では、上記ステップS105で算
出した目標ブースト圧Pset、上記ステップS108で算
出したシリンダ流入空気量Qcy、250msジョブで
算出されてRAM60の所定アドレスにストアされてい
る温度関数M、ROM59にストアされているチャンバ
容積Vの値及びバルブ応答係数r、吸気管圧力センサ2
2で計測した実ブースト圧Pを用い、前述の(9)式より
ISCV通過空気量Qiscを算出する(Qisc←
(Pset−P)・r・V/(Δt・M)+Qcy)。
【0157】この場合、ROM59には、バルブ応答係
数rとチャンバ容積Vとを個別にストアせず、これらの
値を乗算した仮想チャンバ容積V’をストアしておいて
も良いが、チャンバ容積Vを本制御システムを採用する
全エンジンに共通の定数として、個々のエンジン毎にバ
ルブ応答係数rを別にストアしておくことで、各エンジ
ン毎の実際の吸気系の形状のばらつきによるチャンバ容
積Vの差や、ISCV16の個体間のばらつきに対処す
ることが容易となる。
【0158】次に、ステップS110へ進み、上記ステップ
S109で算出したISCV通過空気量Qiscを、250
msジョブで算出されRAM60にストアされている水
温補正値HIQで温度補正し、Qisc’に変換すると
(Qisc’←Qisc・HIQ)、ステップS111で、
このQisc’と、250msジョブで算出されRAM
60にストアされているISCV16前後の差圧Piと
をパラメータとして基本デューティ比のマップを参照
し、基本デューティ比DUTYを設定する。
【0159】そして、上記ステップS111で基本デューテ
ィ比DUTYを設定した後、ステップS112へ進み、基本
デューティ比DUTYに250msジョブで算出される
学習値DUTYLRを加算してISCV16に出力する
最終的なデューティ比DUTYiscとし、ステップS1
13で、デューティ比DUTYiscをセットしてルーチ
ンを抜ける。
【0160】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、エ
ンジンの図示トルクと線形関係にあるとみなせる物理量
の目標値をアイドル時のエンジン回転数に応じて設定
し、この物理量の目標値に基づく燃料噴射量に適合する
アイドル制御弁の通過空気量を、吸気系モデルによるチ
ャンバ内に蓄積される空気質量とシリンダ内に吸入され
る空気質量との和として算出し、この通過空気量の算出
値に基づいてアイドル制御弁の開度を定める際、上記チ
ャンバをアイドル制御弁の応答性を考慮して予め決定さ
れた容積値を有する仮想チャンバとして系のゲイン調整
を行うため、燃料の遅れを解消し、空気の遅れの影響を
最小限とするのみならず、系の出力とアイドル制御弁の
応答性を合致させることができ、エンジントルクを追従
性良く増減させ、制御性を向上することができるなど優
れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アイドル制御基本ルーチンのフローチャート
【図2】アイドル制御基本ルーチンのフローチャート
(続き)
【図3】燃料噴射量算出サブルーチンのフローチャート
【図4】I分移動量算出サブルーチンのフローチャート
【図5】目標回転数移動量算出サブルーチンのフローチ
ャート
【図6】目標回転数移動量算出サブルーチンのフローチ
ャート(続き)
【図7】負荷増減移動量算出サブルーチンのフローチャ
ート
【図8】学習値算出サブルーチンのフローチャート
【図9】水温補正値算出サブルーチンのフローチャート
【図10】大気圧算出サブルーチンのフローチャート
【図11】温度関数算出サブルーチンのフローチャート
【図12】エンジン系の概略構成図
【図13】クランクロータとクランク角センサの正面図
【図14】カムロータとカム角センサの正面図
【図15】電子制御系の回路構成図
【図16】アイドル制御のブロック図
【図17】アイドル制御に係わるECUの機能構成図
【図18】Ga−NeマップによるP分制御の説明図
【図19】Ga−NeマップによるI分制御の説明図
【図20】低水温時及び負荷変動時のGa−Neマップ
の移動を示す説明図
【図21】Ga−Neマップの特性を示す説明図
【図22】Ga−Neマップにおける始動時制御を示す
説明図
【図23】始動時制御とGa−Neマップとの関係を示
す説明図
【図24】行程吸入空気量と吸気管圧力との関係を示す
説明図
【図25】チャンバモデルの説明図
【図26】エアコンON,OFF時の回転数収束性を示
す説明図
【図27】Dレンジシフト時の回転数収束性を示す説明
【図28】P分の強さと回転数及び吸気管圧力変動との
関係を示す説明図
【図29】始動時の回転変動を示す説明図
【図30】演算式におけるチャンバ容積の値を変化させ
た場合の回転変動とISCV開度変化を示す説明図
【図31】水温補正によるISCバルブ通過空気量の目
標値及び実測値を示す説明図
【図32】低温始動時の目標ブースト圧及び実ブースト
圧を示す説明図
【図33】パワーステアリング転舵時の回転数収束性を
示す説明図
【図34】ISCVの特性変化に対する学習を示す説明
【図35】PI制御による従来のアイドル制御のブロッ
ク図
【符号の説明】
1 エンジン 5a スロットルバルブ 16 ISCV(アイドル制御弁) Ne エンジン回転数 Ga 行程吸入空気量(エンジンの図示トル
クと線形関係にあるとみなせる物理量) Gaset 目標行程吸入空気量(エンジンの図示
トルクと線形関係にあるとみなせる物理量の目標値) Gf 燃料噴射量 V’ 仮想チャンバ容積 Qisc ISCV通過空気量(アイドル制御弁
の通過空気量) Wm チャンバ内空気質量(チャンバ内に蓄
積される空気質量) Qcy シリンダ流入空気量(シリンダ内に吸
入される空気質量) DUTYisc デューティ比(アイドル制御弁の開
度)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンの図示トルクと線形関係にある
    とみなせる物理量の目標値をアイドル時のエンジン回転
    数に応じて設定するととともに、スロットルバルブ下流
    からシリンダ直前までをモデル化したチャンバを、アイ
    ドル制御弁の応答性を考慮して予め決定された容積値を
    有する仮想チャンバとし、 上記物理量の目標値に基づく燃料噴射量に適合する上記
    アイドル制御弁の通過空気量を、上記仮想チャンバ内に
    蓄積される空気質量と上記シリンダ内に吸入される空気
    質量との和として算出し、 上記通過空気量の算出値に基づいて上記アイドル制御弁
    の開度を定め、この開度信号を上記アイドル制御弁に出
    力してアイドル回転数を制御することを特徴とするエン
    ジンのアイドル制御方法。
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