JPH08132628A - インクジェット記録ヘッドの作製方法およびインクジェット記録ヘッド - Google Patents

インクジェット記録ヘッドの作製方法およびインクジェット記録ヘッド

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JPH08132628A
JPH08132628A JP27237094A JP27237094A JPH08132628A JP H08132628 A JPH08132628 A JP H08132628A JP 27237094 A JP27237094 A JP 27237094A JP 27237094 A JP27237094 A JP 27237094A JP H08132628 A JPH08132628 A JP H08132628A
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幸久 小泉
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豊 森
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雅樹 片岡
Masa Suzuki
雅 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 異方性エッチングによりアンダーカットされ
る領域が大きくなっても、エッチングマスクにクラック
が生じることが防止できるインクジェット記録ヘッドの
作製方法を提供する。 【構成】 シリコン基板1にエッチングマスク2をパタ
ーニングした後、エッチング液を用いてエッチングす
る。エッチング時間が長くなると、図に示すように、エ
ッチングマスク2の下部のアンダーカットされる領域2
aが大きくなる。そうすると、マスクパターンの角部に
クラックが発生しやすく、クラックからエッチングマス
クの下がエッチングされ、形状不良を起こす。本発明で
は、マスクパターンの開口の角部を曲線状にして、クラ
ックの発生を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット記録ヘ
ッドの作製方法およびインクジェット記録ヘッドに関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】インクジェットの記録ヘッドのインク流
路形成方法としては、例えば、特開昭61−23095
4号公報に示すように、シリコン基板を用いて、異方性
エッチングにより、ノズルやインクリザーバを形成する
方法が知られている。
【0003】図10は、異方性エッチングによる溝の形
成方法の説明図であり、図10(A),(C)は平面
図、図10(B)は図10(A)のB−B線断面図、図
10(D)は図10(C)のD−D線断面図である。図
中、1はシリコン基板、2はエッチングマスク、3は溝
である。図10(A),(B)は、エッチングマスクを
パターニングした状態である。(100)面のシリコン
基板1の両面にエッチングマスク2を成膜し、上面の溝
を形成する部分のエッチングマスクを除去してシリコン
基板1を露出させる。
【0004】図10(C),(D)はエッチングを終了
した状態である。異方性エッチングのエッチング液とし
ては、例えば、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶
液や、エチレンジアミンピロカテコール等がよく知られ
ており、エッチングマスク2としては、窒化シリコン膜
(Si3 4 膜)、または、酸化シリコン膜(SiO2
膜)が一般的に用いられている。Si3 4 膜は、水酸
化カリウム水溶液を用いる場合は、ほとんどエッチング
されないため、シリコン基板を貫通させるなど長時間の
エッチングに用いることが可能である。異方性エッチン
グは、エッチング速度が結晶方向に依存していることを
利用したもので、シリコンの場合、(100)方向のエ
ッチング速度が(111)方向のエッチング速度に比べ
て非常に早いことを利用しているため、(111)面で
囲まれた精度のよい3次元構造でエッチングが終了し、
溝3が形成される。
【0005】(100)面を表面に持つシリコン基板1
を異方性エッチングしたときの断面形状を図10(D)
に示す。(111)面は(100)面に対して54.7
゜の角度を持っており、エッチング後は(111)面で
囲まれたV字溝が形成される。一方のシリコン基板に、
このV字状の溝3を形成し、2枚の基板を貼り合わせて
切断すると、溝3の断面に三角形のノズルが開口する。
このように作製したノズルは非常に精度がよく、高密度
化を進める上で有利である。
【0006】しかしながら、エッチング時間が長くなる
と、図11に示すように、エッチングマスク2の下部の
アンダーカットされる領域2aが大きくなる。例えば、
625μm厚のシリコン基板を貫通させるまでエッチン
グを行なう場合、8〜10μm程度がアンダーカットが
される。
【0007】このため、従来のマスクの形状では、図1
2に示すように、ひさし状になっているエッチングマス
クの角からクラック8が発生し、エッチング中にクラッ
クが進行して、クラック部分からエッチング液がエッチ
ングマスクの下に入り込み、本来エッチングしない領域
2bがエッチングされ、形状不良を起こすという問題が
ある。この問題は、内部応力の高いSi3 4 膜に顕著
に現れる。
【0008】クラックの発生を防止するには、エッチン
グマスクの厚さを薄くするなどの手段も効果はあるが、
完全にクラックを防止できないことや、エッチングマス
クが極端に薄くなると、ピンホールの発生が避けられ
ず、そこからエッチング不良を起こすことがある。
【0009】異方性エッチングでは、図10(D)で説
明したように、断面が一定角度の三角形状であるから、
この方法で作製したノズルは、三角形の断面積を変える
場合には、マスク寸法を変化するしか手段はなく、特に
高密度化した場合、隣接する溝間の幅が狭くなり、接着
面積が少なくなることになって、製作不良の発生の原因
となっている。これを改善するため接着剤の量を増加さ
せると、図13に示すように、接着剤9が三角形の溝3
の底角に溜まりやすく、ノズルの形状不良が発生しやす
い。また、従来の三角形ノズルでは、底角が54.7゜
と狭く、流路抵抗が大きいために、インク滴を吐出した
後のインクの再供給性の面からは不利な点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した事
情に鑑みてなされたもので、アンダーカットされる領域
が大きくなっても、エッチングマスクにクラックが生じ
ることが防止でき、また、断面積の大きい溝を形成する
ことができるインクジェット記録ヘッドの作製方法およ
びインクジェット記録ヘッドを提供することを目的とす
るものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、請求項1に記
載の発明においては、第1の基板にノズルとなる溝を形
成し、第2の基板と貼り合わせてインクジェット記録ヘ
ッドを作製するインクジェット記録ヘッドの作製方法に
おいて、前記第1の基板をエッチングして前記溝を形成
する際に、角部を曲線もしくは複数の鈍角で分割した形
状としたエッチングマスクを用いてエッチングを行なう
ことを特徴とするものであり、請求項2に記載の発明に
おいては、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド
の作製方法において、前記第1の基板として表面が(1
00)方位のシリコン基板を用い、結晶方位の違いによ
るエッチング速度の差を利用した異方性エッチングによ
り前記溝を形成することを特徴とするものである。
【0012】請求項3に記載の発明においては、第1の
基板にノズルとなる溝を形成し、第2の基板と貼り合わ
せてインクジェット記録ヘッドを作製するインクジェッ
ト記録ヘッドの作製方法において、前記第1の基板とし
て(100)面を表面に持つシリコン基板を用い、前記
溝に対応する位置に凹部を形成した後、異方性エッチン
グを行なって前記溝を形成することを特徴とするもので
ある。
【0013】請求項4に記載の発明においては、画像信
号に対応してインクを吐出するインクジェット記録ヘッ
ドにおいて、前記インクの流路となる溝を有する第1の
基板と、第2の基板を有し、前記第1の基板と前記第2
の基板を貼り合わせることにより前記流路を構成し、前
記溝は前記第1の基板の内部に貼り合わせ面より幅の広
い部分を有することを特徴とするものであり、請求項5
に記載の発明においては、請求項4に記載のインクジェ
ット記録ヘッドにおいて、前記流路の断面形状が5角形
であることを特徴とするものである。
【0014】
【作用】請求項1または2に記載の発明によれば、クラ
ックの発生するエッチングマスクの開口の角部を曲線も
しくは複数の鈍角で分割し、パターンの開口の角部の応
力集中を緩和することができ、エッチングによりアンダ
ーカットが行なわれても、クラックの発生を防止でき、
安定した歩留まりを確保できる。また、エッチングが結
晶方位に依存している異方性のために、マスクの角部の
形状は出来上がりの形状に影響を与えることはない。
【0015】請求項3に記載の発明によれば、(10
0)面を表面に持つシリコン基板を用い、溝に対応する
位置に凹部を形成した後、異方性エッチングを行なって
前記溝を形成することにより、前記凹部の側面および底
面からエッチングを行なうことにより、多角形状の溝を
作製することができる。
【0016】請求項4または5に記載の発明によれば、
第1の基板に形成された溝が、該第1の基板の内部に貼
り合わせ面より幅の広い部分を有すること、または流路
の断面形状が5角形であることにより、貼り合わせ部分
の底辺を十分確保でき、しかも、従来の三角形状の溝に
比べて断面積を大きくできるから、流路抵抗を小さくで
きる。
【0017】
【実施例】図1は、本発明のインクジェット記録ヘッド
の作製方法の一実施例におけるインク流路を形成する工
程の説明図であり、図1(A1),(A2),(A3)
は図1(C)のA−A線断面図、図1(B1),(B
2),(B3)は図1(C)のB−B線断面図である。
図中、1はシリコン基板、2はエッチングマスク、3は
溝、4はインクリザーバである。
【0018】シリコン基板1の表面と裏面に、エッチン
グマスク2として、Si3 4 膜を150nm着膜した
後、溝3とインクリザーバ7を開口するようフォトリソ
工程、ドライエッチング工程を経て、図1(A1)に示
すように、溝3の開口と、図1(B1)に示すように、
インクリザーバの開口をパターニングする。このとき、
プロセス中の傷を防止するため、Poly−Si膜を保
護膜としてSi3 4膜の外側全面に着膜した後、Si
3 4 膜と同時にパターニングするようにしてもよい。
【0019】このシリコン基板1を、加熱した水酸化カ
リウム水溶液でエッチングすると、図1(A2),(B
2)に示すように、(111)面で囲まれた形状でエッ
チングが行なわれる。溝3は、図1(A2)に示すよう
に、(111)面で囲まれた状態でエッチングが完了
し、断面はV字形をしている。一方、インクリザーバ4
は、図1(B2)に示すように、シリコン基板を貫通し
て裏面のエッチングマスクに到達している。保護膜とし
てPoly−Si膜を用いた場合は、エッチング開始と
同時に保護膜が溶けてなくなるため、エッチング中はS
3 4 膜がマスクとなる。
【0020】次に、図1(A3),(B3)に示すよう
に、Si3 4 膜を加熱した燐酸で全面除去して、シリ
コンでできた第1の基板1を完成させる。図1(C)
は、その状態の平面図である。
【0021】図2は、インクジェット記録ヘッドの全体
を示す概略図である。図中、図1と同様な部分には同じ
符号を付して説明を省略する。5は基板、6は厚膜樹脂
層、7はインク滴である。図1で説明した基板1と、例
えば、発熱素子等のインクを噴射するための機能を持つ
第2の基板5とを貼り合わせてインク流路を形成し、個
々のチップに分割したものが図2である。溝3の端面に
より、ノズル面が三角形であることが特徴である。
【0022】図3は、従来のエッチングマスクのマスク
パターンの一部の平面図である。図中、2はエッチング
マスク、2aはアンダーカット領域である。上述したよ
うに、インクジェット記録ヘッドを作製するプロセスに
おいて、第1の基板にエッチングで溝を形成する。この
場合、従来のマスクパターンの開口の角部は、図3
(A)にのように直角となっていた。このようなマスク
パターンを用いた場合に、図3(B)に示すアンダーカ
ット領域2aからクラックが生じやすいことは、図1
1,図12で説明したとおりである。
【0023】図4は、本発明のインクジェット記録ヘッ
ドの作製方法の第1の実施例におけるエッチングマスク
のマスクパターンの一部の平面図である。図中、図3と
同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。この
実施例では、図4(A)に示すように、エッチングマス
ク2のマスクパターンの角部は、曲線でパターニングさ
れている。具体例では、半径1μmの円弧とした。曲率
半径が1μm以上の曲線でクラックの発生が防止でき
る。また、隣接する角部までの距離の1/2の曲率半径
まで可能である。
【0024】この実施例のように、エッチングマスクの
開口部の角部を曲線形状にしても、シリコンの結晶方位
に依存した異方性エッチングの技術を用いているため、
マスクの形状差の影響を受けず、図3(B)の場合と同
様に、図4(B)においても、アンダーカット領域2a
に示すように、マスクパターンの形状に従わず、エッチ
ング後の出来上がり寸法は、従来のマスクパターンを用
いても、角部を曲線形状にしても、シリコンの(11
1)面で囲まれる形状になる。
【0025】図3に示す従来パターンを用いた場合に
は、約10%のクラックによる欠陥が発生していたのに
対して、図4に示す改善後は、欠陥の発生は、認められ
なくなった。
【0026】図5は、本発明のインクジェット記録ヘッ
ドの作製方法の第2の実施例におけるエッチングマスク
のマスクパターンの一部の平面図である。図中、図3と
同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。この
実施例は、図3(A)の直角部分を、複数の鈍角で分割
するもので、図5(A)は、2つの鈍角で分割したもの
である。また、図5(B)は3つの鈍角で分割したもの
である。寸法については曲線とした図4の場合と同様
で、図3(A)の直角の頂点からの距離1μm以上で効
果が確認されており、隣接する角までの距離の1/2ま
で可能である。
【0027】したがって、鈍角で分割したものも、曲線
とした図4(B)と同様に良好な結果であり、同じ効果
が確認されているため、設計のやり易さという観点で角
部の形状、寸法を自由に選択することができる。
【0028】上述した実施例では、エッチングマスクと
してSi3 4 膜を用いた例で説明したが、これに限定
されるものではなく、例えば、酸化シリコン膜(SiO
2 膜)等の材質でもよい。さらに、エッチング工程を複
数回行なって複雑な3次元構造を作る場合はエッチング
マスクとして用いる複数の膜に本発明をそれぞれ適用す
ることで効果を上げることができる。
【0029】図6は、本発明のインクジェット記録ヘッ
ドの作製方法の第3の実施例の説明図であり、図6
(A),(C)は平面図、図6(B)は図6(A)のB
−B線断面図、図6(D)は図6(C)のD−D線断面
図である。図中、1はシリコン基板、2はエッチングマ
スク、3は溝、3aは凹部である。この実施例では、図
6(A),(B)に示すように、異方性エッチングを行
なう前に、エッチングマスク2の形状に合わせて、あら
かじめシリコン面に凹部3aを形成する。凹部3aの形
成方法としては、例えば、ドライエッチング法やエキシ
マレーザー加工法を用いる。
【0030】図6(C),(D)はエッチングを終了し
た状態である。異方性エッチングのエッチング液として
は、例えば、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液
や、エチレンジアミンピロカテコール等がよく知られて
おり、エッチングマスク2としては、窒化シリコン膜
(Si3 4 膜)、または、酸化シリコン膜(SiO2
膜)が一般的に用いられている。Si3 4 膜は、水酸
化カリウム水溶液を用いる場合は、ほとんどエッチング
されないため、シリコン基板を貫通させるなど長時間の
エッチングに用いることが可能である。異方性エッチン
グは、エッチング速度が結晶方向に依存していることを
利用したもので、シリコンの場合、(100)方向のエ
ッチング速度が(111)方向のエッチング速度に比べ
て非常に早いことを利用しているため、図6(D)に示
すように、(111)面で囲まれたところでエッチング
が停止し、精度のよい断面五角形の溝3が形成され、シ
リコン基板1の内部では、クロスハッチングを施した3
bの領域まで、溝3が広がっている。すなわち、従来の
異方性エッチングにより形成される溝は、V字溝に限ら
れていたが、本発明を適用すると、シリコン基板内部に
最も広い部分を持つ断面五角形の溝を形成することが可
能である。
【0031】図9に出来上がり形状の詳細を示す。図
中、図6と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略
する。図9(A)に示すように、エッチングマスク2の
開口幅を同じ(W0=W1=W2)して、凹部を形成し
ないものと、異なる深さ(D1,D2)の凹部3aを形
成したものについて、異方性エッチングを行なう。
【0032】図9(B)は、異方性エッチングにより形
成される溝の形状である。左側の溝は、従来のV字溝が
形成されるが、中央と右側の溝は五角形となり、その深
さおよび幅は、マスクパターンの開口幅が大きいほど大
きくなる。
【0033】具体的な寸法を説明する。図9(B)の中
央の溝では、図9(A)に示すマスクパターンの開口幅
をW1、凹部3aの深さをD1とすると、出来上がり寸
法は、図9(B)に示すように、頂点までの深さD1’
は、 D1’=D1+(W1/2)×tan54.7゜ となり、最も幅の広い部分W1’は、 W1’=W1+(D1)×tan54.7゜ となる。また、W1’の位置は、深さD1/2のところ
である。
【0034】このように、エッチングにより形成される
ノズルの断面積は、エッチングマスクの寸法だけでな
く、あらかじめシリコン基板に作った凹部の深さによ
り、立体的に変化させることができるという特徴があ
る。ただし、溝の側壁が(111)面で囲まれているた
め、角度は固定されており、頂角は70.6゜、開口部
の底辺となす角は54.7゜となる。D2’,W2’に
ついても同様の関係式が適用できる。
【0035】図7は、この作製原理をインクジェット記
録ヘッドに適用した説明図であり、図7(A1),(B
1),(C1)はエッチングマスクの形成工程、図7
(A2),(B2),(C2)は凹部の形成工程、図7
(A3),(B3),(C3)はエッチング工程を説明
するためのもので、図7(A1),(A2),(A3)
および図7(B1),(B2),(B3)は、それぞれ
図7(C1),(C2),(C3)のA−A線断面図お
よびB−B線断面図である。図中、1はシリコン基板、
2はエッチングマスク、3は溝、3a,4aは凹部、4
はインクリザーバである。
【0036】シリコン基板1の表面と裏面に、エッチン
グマスク2としてSi3 4 膜を150nm着膜した
後、溝3とインクリザーバ7を開口するようフォトリソ
工程、ドライエッチング工程を経て、図7(A1)に示
すように、溝の開口と、図1(B1)に示すように、イ
ンクリザーバの開口をパターニングする。パターン幅
は、例えば85μmピッチの場合50μm程度が底辺の
幅として適当である。このとき、プロセス中の傷を防止
するため、保護膜としてPoly−Si膜をSi34
膜の外側全面に着膜した後、Si3 4 膜と同時にパタ
ーニングするようにしてもよい。
【0037】次に、シリコン基板1をエッチングし、図
7(A2),(B2)に示すように、深さ10μmの凹
部3a,4aを形成する。
【0038】このシリコン基板1を、加熱した水酸化カ
リウム水溶液で異方性エッチングすると、図7(A
3),(B3),(C3)に示すように、(111)面
で囲まれた断面形状ができる。保護膜としてPoly−
Si膜を用いた場合は、エッチング開始と同時に、保護
膜が水酸化カリウム水溶液にすぐに溶けるため、エッチ
ング中は、Si3 4 膜がマスクとなる。図7(A3)
の溝3は、ノズルに相当する細溝であり、インクリザー
バ4は、ノズルにインクを供給するため一時インクを蓄
えるものであり、シリコン基板1を貫通するようエッチ
ングされ、貫通してできた開口部からインクを供給する
構造になっている。最後に、図7(A3),(B3)に
示すように、Si3 4 膜を加熱した燐酸で全面除去し
て、シリコン基板でできた第1の基板1を完成させる。
図7(C3)は、その状態の平面図である。
【0039】図8は、インクジェット記録ヘッドの全体
を示す概略図である。図中、図7と同様な部分には同じ
符号を付して説明を省略する。5は基板、6は厚膜樹脂
層、7はインク滴である。図7で説明した基板1と、例
えば、発熱素子等のインクを噴射するための機能を持つ
第2の基板5とを貼り合わせてインク流路を形成し、個
々のチップに分割したものが図8である。溝3の端面に
よって、ノズル面が五角形であることが特徴である。
【0040】上記の実施例で示した、幅50μm、深さ
10μmの寸法でできたノズル断面積を従来の三角形で
実現しようとすると、幅が約69μm必要となる。この
ため、接着部が16μmと狭くなってしまい接着不良を
起こすことがあるが、この実施例では、接着部は35μ
mであり、十分な接着領域が確保できる。
【0041】なお、この実施例でも、エッチングマスク
としてSi3 4 膜を用いたが、例えば、酸化シリコン
膜(SiO2 膜)等エッチング液に耐性のあるものであ
ればこれに限定されるものではなく、エッチング液も水
酸化カリウム水溶液と同様に異方性エッチングできれば
他のものでも構わない。また、エッチングマスクのアン
ダーカットによるクラックを防止するために、図4,図
5で説明した角部のパターンを用いることができること
は明らかなところである。
【0042】また、この実施例では、ドライエッチング
法によってシリコン基板に凹部を形成したが、精度よく
同様のパターンが形成できればこれに限定されるもので
はなく、例えば、エキシマレーザーを使った加工や、等
方性のウェットエッチングにより凹部を形成してもよ
い。
【0043】さらに、この実施例では、1回の異方性エ
ッチングで作製する例を示したが、複数の異なるエッチ
ングマスクを用いて、複数回の異方性エッチングを行な
うことによって、より複雑な断面形状の溝やインクリザ
ーバを形成することができ、この場合でも本実施例の延
長として考えることができる。
【0044】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、エッチングマスクのパターンの角を曲線と
し、または、複数の鈍角で分割することにより、エッチ
ング中のマスクのクラック発生を防止し、不良発生率を
大きく改善できる。また、断面積の大きい溝を形成する
ことができ、十分な接着部を残しているため、不良のな
い高精度なノズルを作製できるという効果がある。
【0045】さらに、底辺が同じでもノズル断面積を大
きくできるため、インク滴量を大きくできるなど設計時
の許容量が大きく、高密度化に適したインクジェット記
録ヘッドを提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のインクジェット記録ヘッドの作製方
法の一実施例の説明図である。
【図2】 インクジェット記録ヘッドの全体を示す概略
図である。
【図3】 従来のエッチングマスクのマスクパターンの
一部の平面図である。
【図4】 本発明のインクジェット記録ヘッドの作製方
法の第1の実施例におけるエッチングマスクのマスクパ
ターンの一部の平面図である。
【図5】 本発明のインクジェット記録ヘッドの作製方
法の第2の実施例におけるエッチングマスクのマスクパ
ターンの一部の平面図である。
【図6】 本発明のインクジェット記録ヘッドの作製方
法の第3の実施例の説明図である。
【図7】 本発明のインクジェット記録ヘッドの作成方
法の実施例の説明図である。
【図8】 インクジェット記録ヘッドの全体を示す概略
図である。
【図9】 本発明の実施例による溝形状の説明図であ
る。
【図10】 従来の異方性エッチングによる溝の形成方
法の説明図である。
【図11】 異方性エッチングにおけるアンダーカット
の説明図である。
【図12】 従来の異方性エッチングによるクラックの
発生の説明図である。
【図13】 従来のインクジェット記録ヘッドの接着状
況の説明図である。
【符号の説明】
1…シリコン基板、2…エッチングマスク、2a…アン
ダーカット領域、3…溝、3a,4a…凹部、4…イン
クリザーバ、5…基板、6…厚膜樹脂層、7…インク
滴、8…クラック、9…接着剤。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 片岡 雅樹 神奈川県海老名市本郷2274番地 富士ゼロ ックス株式会社内 (72)発明者 鈴木 雅 神奈川県海老名市本郷2274番地 富士ゼロ ックス株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の基板にノズルとなる溝を形成し、
    第2の基板と貼り合わせてインクジェット記録ヘッドを
    作製するインクジェット記録ヘッドの作製方法におい
    て、前記第1の基板をエッチングして前記溝を形成する
    際に、角部を曲線もしくは複数の鈍角で分割した形状と
    したエッチングマスクを用いてエッチングを行なうこと
    を特徴とするインクジェット記録ヘッドの作製方法。
  2. 【請求項2】 前記第1の基板として表面が(100)
    方位のシリコン基板を用い、結晶方位の違いによるエッ
    チング速度の差を利用した異方性エッチングにより前記
    溝を形成することを特徴とする請求項1に記載のインク
    ジェット記録ヘッドの作製方法。
  3. 【請求項3】 第1の基板にノズルとなる溝を形成し、
    第2の基板と貼り合わせてインクジェット記録ヘッドを
    作製するインクジェット記録ヘッドの作製方法におい
    て、前記第1の基板として(100)面を表面に持つシ
    リコン基板を用い、前記溝に対応する位置に凹部を形成
    した後、異方性エッチングを行なって前記溝を形成する
    ことを特徴とするインクジェット記録ヘッドの作製方
    法。
  4. 【請求項4】 画像信号に対応してインクを吐出するイ
    ンクジェット記録ヘッドにおいて、前記インクの流路と
    なる溝を有する第1の基板と、第2の基板を有し、前記
    第1の基板と前記第2の基板を貼り合わせることにより
    前記流路を構成し、前記溝は前記第1の基板の内部に貼
    り合わせ面より幅の広い部分を有することを特徴とする
    インクジェット記録ヘッド。
  5. 【請求項5】 前記流路の断面形状が5角形であること
    を特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録ヘッ
    ド。
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