JPH08120426A - フランジ加工性に優れた2ピースアルミニウムdi缶胴体の製造方法 - Google Patents

フランジ加工性に優れた2ピースアルミニウムdi缶胴体の製造方法

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JPH08120426A
JPH08120426A JP27613494A JP27613494A JPH08120426A JP H08120426 A JPH08120426 A JP H08120426A JP 27613494 A JP27613494 A JP 27613494A JP 27613494 A JP27613494 A JP 27613494A JP H08120426 A JPH08120426 A JP H08120426A
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ironing
rate
rolling
aluminum
less
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JP27613494A
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Akira Tajiri
彰 田尻
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Sky Aluminium Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 フランジ加工性に優れた2ピースアルミニウ
ムDI缶胴体の製造方法を提供する。 【構成】 Mg:0.5-2.0%、Mn:0.5-1.8%、Fe:0.1-0.7%、Si:
0.05-0.5%、Cu:0.05-0.5%とTi:0.005-0.20%、B:0.0001-0.
05%と、Cr:0.05-0.3%、Zn:0.1-0.5%の1種以上を含有する
アルミニウム合金を鋳造、均熱・加熱、熱間圧延、一次
冷間圧延を行い、次いで到達温度400-600℃、400℃超の
時間が10分以内の保持後1℃/s以上で冷却する中間焼鈍
を行い、圧延率40-70%の最終冷間圧延を施して、
5μm以上の晶出物が500個/mm2 以上存在し、表面粗
度が0.1-0.5μm、(TS+YS)/2が305N/mm2 以下の圧延板
とし、この圧延板に50-500mg/m2 の油性皮膜を設け、し
ごきダイス2枚を用い、かつ後段のダイスによるしごき
率を40%以上、全体で60%以上のしごき加工を行うDI加
工を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ビールやジュース、
炭酸飲料などの2ピースアルミニウム缶の缶胴体の製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にDI缶胴材のようにしごき加工が
加わる場合、3000系の合金が多用される。特に比較
的強度が高く成形性にも優れていること、しごき加工時
の加工硬化が比較的小さくその際にゴーリングが起きに
くいことなどから3004合金が主に使用されている。
またDI加工前の段階でリオイルのように潤滑油を塗布
して潤滑性を良くしたり、DI成形加工時の油を種々か
えて缶切れ性(破胴性)や外観品質の改善を図ってい
る。さらに缶切れ性等を向上させるためのその他の方法
として、材料表面の粗度を変更して保油性を向上させる
ことも提案されている。ゴーリング性に寄与する素材特
性は、アルミニウム中に比較的粗大な晶出物が存在する
ことにより、固体潤滑性能、晶出物近傍の空隙での保油
性の向上さらにはシゴキダイスのセルフクリーニング等
の効果が得られる。従って、このAl−Mn−Fe系の
晶出物の多い3000系合金が多用されるのであり、適
当な分散量と大きさが得られれば、しごき加工用途にお
いてゴーリングの発生を少なくし、あるいは皆無とする
ことができる。
【0003】次にDI加工法の基本的な構成について図
1に基づいて説明する。一般のDI加工装置は軽金属V
ol.40,No.3(1990)p251等に記載さ
れているように、通常4枚のダイスがタンデムに配列さ
れているのが一般的である。円形の貫通孔1aを有する
1枚の再絞りダイス1と、この再絞りダイスと同軸で配
列され、円形の貫通孔2a、3a、4aを有する3枚の
しごきダイス2、3、4と、前記各貫通孔1a〜4aの
内部に嵌合し、かつ、軸方向に移動自在とされた円筒状
のパンチスリーブ5と、このパンチスリーブ5の外側に
嵌合された円筒状のカップホルダースリーブ6とを備え
ている。各ダイスの間にはスぺーサーが配置され、各ダ
イスの間の距離を一定に保持するようになっている。ま
た再絞りダイス1およびしごきダイス2〜4には、潤滑
と冷却のためのDIクーラントが供給されるようになっ
ている。こうした装置によって、図2に示すように順次
加工が施され、製品が製造される。より詳しく説明する
と、図1に示すようにDI加工の前工程であるカッピン
グプレスによってアルミニウムコイルから円板状の素片
(図2a)を打ち抜き、得られた有底円筒状のカップ7
(図2b)をパンチスリーブ5と再絞りダイス1との間
に配置し、カップホルダースリーブ6およびパンチスリ
ーブ5を前進させる。カップホルダースリーブ6が再絞
りダイス1の端面にカップ7の底面を押し付ける。次に
カップホルダースリーブ6によりカップ7を押し付けつ
つ、パンチスリーブ5がカップ7を再絞りダイス1の貫
通孔1a内に押し込む。これによりカップ7を細長い平
底缶(図2c)に成形する。再絞りダイス1を通過した
平底缶はは、さらにしごきダイス2〜4の貫通孔2a〜
4aを順次通過して行き、徐々にしごき加工が施され
て、3回のしごき加工により所定の肉厚を有する平底缶
(図2d)に成形される。パンチスリーブ5はしごき加
工を終了した平底缶8をさらに前方に押し出し、平底缶
8の底部8aをドーム部成形用の金型11に押圧してド
ーム部9aを成形し、缶胴9を製造する(図2e)。得
られた缶胴9は、この後通常の工程である、トリミング
工程→洗浄/表面処理/乾燥工程→外面塗装/焼付け乾
燥工程→内面塗装/焼き付乾燥工程→ネッキング/フラ
ンジング工程→検査工程を経て最終の製品缶10(図2
f)となる。
【0004】なお前記した3回のしごき加工において
は、アルミニウム技術便覧(軽金属協会編)p1472
等に記載されているように、1回当たりのしごき率は4
0%未満の低いしごき率に設定して、過酷なしごき加工
が1工程に集中しないようにすることが一般に行われて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】製缶の最終加工工程で
あるネッキング/フランジング工程のネッキングは缶胴
フランジ部の口絞り加工であり、フランジングはその後
のつばだし加工である。近年軽量化の為缶胴側壁部が薄
肉化される傾向にあり、フランジ部9bも薄肉化されて
いる。その結果ネッキングでのしわやフランジングでの
割れがしばしば問題となることがある。ネッキングしわ
はフランジングでの割れや蓋との巻き締め時の不良の原
因となり、またフランジ割れは巻き締め不良の原因とな
るため、飲料缶内容物の漏洩問題を引き起こす危険性が
ある。これらのことからDI加工における外観不良や缶
切れ等の発生率を増加させることなく、ネッキングおよ
びフランジング加工性を向上させる必要がある。この発
明は以上の事情を背景としてなされたもので、鋭意検討
した結果、前述のような要求を満たし得るアルミニウム
DI缶胴体を供給するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の課題を解決する
ための手段について詳細に説明する。
【0007】DI加工ではしごき加工による断面減少率
が大きくなるに従い、側壁部に非常に大きな加工硬化を
受け、内部応力も残存することになり、このままではネ
ッキングしわやフランジ割れが生じ易い。ただし通常の
生産ラインでは洗浄や塗装工程の各乾燥炉による加熱に
よって、残留応力はかなり除去されネッキングやフラン
ジング加工性はかなり改善される。本発明者は鋭意研究
の結果、この残留応力の改善効果をさらに発揮させるこ
とにより、ネッキングやフランジング加工性を向上させ
る方法を見いだし本発明に至った。
【0008】すなわち、DI加工におけるしごきを2回
とすることにより1回当たりのしごき率を高くし、なお
かつ2回のうち後段はしごき率40%以上の高加工率と
し、全体で60%以上のしごき率とする。これにより、
その後の洗浄や塗装工程での加熱による残留応力の除去
効果が向上し、ネッキング及びフランジング加工性のさ
らなる向上が図られる。しかし1回のしごき率40%以
上、全体で60%以上のしごき加工に耐えるためには、
特定のアルミニウム素材を用いなければならず、そのた
めに合金成分、アルミニウム素板の組織・表面性状、塗
油量等の最適値を検討しこの発明に至った。
【0009】すなわち本発明は、Mg:0.5〜2.0
%、Mn:0.5〜1.8%、Fe:0.1〜0.7
%、Si:0.05〜0.5%、Cu:0.05〜0.
5%を含有し、かつTi:0.005〜0.20%を単
独でもしくはB:0.0001〜0.05%と組合せて
含有し、さらに必要に応じてCr:0.05〜0.3
%、Zn:0.1〜0.5%のうちの1種以上を含有
し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニ
ウム合金を常法により鋳造、均熱・加熱、熱間圧延、一
次冷間圧延を行い、次いで到達温度400〜600℃ま
で加熱して材料が400℃を越える温度にある時間を1
0分以内とする保持を行った後1℃/s以上の速度で冷
却する中間焼鈍を行い、さらに圧延率40〜70%の最
終冷間圧延を施し、板表面及び板表面に平行な任意の断
面において5μm以上の晶出物が500個/mm2 以上
存在し、表面粗度(Ra)が0.1〜0.5μm、平均
変形抵抗(TS+YS)/2が305N/mm2 以下の
圧延板とし、次いで、この圧延板に塗油量が50〜50
0mg/m2 の油性皮膜を設けて缶胴体素板とし、これ
にDI加工を施して缶胴体とするに際して、しごきダイ
ス2枚を用い、かつ後段のダイスによるしごき率を40
%以上、全体で60%以上のしごき加工を行うことを特
徴とするフランジ加工性に優れた2ピースアルミニウム
DI缶胴体の製造方法である。
【0010】
【作用】必須となるのは、合金成分とアルミニウム合金
素板の組織等およびDI加工法であるのでこれを規定し
た。以下それについて説明する。
【0011】そこで先ずこの発明の合金成分組成の限定
理由を説明する。
【0012】Mg:MgはSi・Cuとの共存によりM
2 SiあるいはAl-Cu-Mgの時効析出による硬化
が望める。更にMgは単独でも固溶体強化の効果がある
元素である。このように強度向上には不可欠な元素であ
るが、Mg量が0.5%未満では必要強度が得られず、
2%を超えて添加した場合には、しごき成形時に硬くな
りやすくDI時に缶切れが生じやすくなる。
【0013】Mn:Mnは強度向上に寄与するとともに
成形性向上に有効な元素である。特にこの発明で目的と
している用途である缶胴材では、DI成形時にしごき加
工されるため、とりわけMnは重要となる。Mn系晶出
物が少ない場合には、しごき加工時に通常使用されてい
るエマルジョンタイプの潤滑剤だけでは潤滑能が不足
し、ゴーリングと呼ばれる擦り疵や焼付きなどの外観不
良が発生しやすくなる。この現象は、晶出物の大きさ、
量、種類に影響されることが知られており、その適正量
は合金板表面において、5μm以上の晶出物が500個
/mm2 以上必要となる。その晶出物を形成するために
Mnは不可欠な元素である。さらに、本発明材のように
N値の小さい材料においては、積層欠陥エネルギーが高
い状態で粗大な晶出物近傍において加工時に転位が集中
しやすく、加工が進めば転位が整理される現象のいわゆ
る加工軟化現象を引き起こす。この意味からもMn添加
は重要である。Mn量が1.8%を超えれば、MnAl
6 の初晶巨大金属間化合物が発生し、著しく成形性を損
う。さらに、また、Mn量が0.5%未満では、Mn化
合物による前述の効果が得られない。そこでMnの範囲
は0.5〜1.8%とした。
【0014】Fe:FeはMnの晶出や析出を促進し、
アルミニウム基地中のMnの固溶量やMn系不溶性化合
物の分散状態を制御するために必要な元素である。適正
な化合物分散状態を得るためには、Mn添加量に応じて
Feを添加することが必要である。この発明のMn量で
は、Fe量が0.1%未満では適正な化合物分散状態を
得ることが困難であり、一方Fe量が0.7%以上で
は、Mn添加に伴なって初晶巨大化合物が発生しやすく
なり、成形性を著しく損う。そこでFeの範囲は0.1
〜0.7%とした。
【0015】Si:Siの添加はFeと同様にMnの晶
出や析出を促進し、アルミニウム基地中のMn固溶量や
Mn−Fe系不溶性化合物の分散状態を制御するために
必要な元素である。適正な化合物分散状態を得るために
は、Mn、Fe添加量に応じてSiを添加することが必
要である。また、本発明材のようにMgと共にSiが存
在する場合は、溶体化効果がはかれる中間焼鈍によって
Mg2 Si系化合物の析出による時効硬化作用もある。
ただしSi量が0.05%未満ではその効果が得られ
ず、0.5%を越えれば不溶性化合物の分散状態を制御
する効果も飽和して、さらにMgとSiが共存する本発
明材では時効硬化は容易に得られるものの材料が硬くな
りすぎて成形性を阻害する。そこでSiの範囲は0.0
5〜0.5%とした。
【0016】Ti,B:通常のアルミニウム合金におい
ては、鋳塊結晶粒微細化のためにTiあるいはTiおよ
びBを微量添加することが行なわれており、この発明に
おいても微量のTiもしくはTiおよびBを添加する。
但し、Ti量が0.005%未満ではその効果が得られ
ず、0.20%を越えれば初晶TiAl3 が晶出して成
形性を阻害する。そこでTi量は0.005〜0.20
%の範囲とした。またTiとともにBを添加すれば、鋳
塊結晶粒微細化の効果が向上する。但しTiと併せてB
を添加する場合、B量が0.0001%未満ではその効
果がなく、0.05%を越えればTiB2 の粗大粒子が
混入して成形性を害することから、Bは0.0001〜
0.05%の範囲とした。
【0017】Cu:Cuは、塗装焼付処理時のAl−C
u−Mg系析出物の析出過程で起る時効硬化を利用した
強度向上に寄与する。Cu量が0.05%未満ではその
効果が得られず、一方Cuを0.5%を越えて添加した
場合には、時効硬化は容易に得られるものの、硬くなり
すぎて成形性を阻害する。そこでCuの範囲は0.05
〜0.5%とした。
【0018】Cr,Znはいずれも強度向上に寄与する
元素であり、必要に応じてこれらのうちから選ばれた1
種または2種を添加する。これらの各元素についてさら
に説明する。
【0019】Cr:Crも強度向上に効果的な元素であ
るが、0.05%未満ではその効果が少なく、0.3%
を越えれば巨大晶出物生成によって成形性の低下を招く
ため、好ましくない。そこでCrの範囲は0.05〜
0.3%とした。
【0020】Zn:Znの添加はMgの添加と共にMg
2Zn3Al2 の時効析出による強度向上に寄与する。ま
た、単独でも若干の固溶強化も期待できる。添加する場
合には、0.1%未満ではその効果が得られず、0.5
%を越えれば強度への寄与については問題ないが、耐食
性を劣化させる。そこでZnの範囲は0.1〜0.5%
とした。
【0021】以上の各成分の残部はAlおよび不可避的
不純物とすれば良い。
【0022】晶出物:缶切れはゴーリングや潤滑不良さ
らに変形抵抗の大きな材料の場合おきやすいが、この発
明の素材ではアルミニウム中に比較的粗大な晶出物が存
在することにより、固体潤滑性能、晶出物近傍の空隙で
の保油性の向上、さらにはシゴキダイスのセルフクリー
ニング等の効果が得られる。特にこれらの特性のうち晶
出物によるシゴキダイスのセルフクリーニング効果が大
きい。この効果が最も大きい晶出物の粒子サイズは5μ
m以上で、その分散は500個/mm2 以上が必要であ
る。従って、この発明では5μm以上の晶出物が500
個/mm2 以上存在することとする。これより小さいサ
イズの晶出物については悪影響を及ぼさないので特に規
定はしない。
【0023】塗油量:缶胴材のように冷間圧延により仕
上げられる材料では、DI用の潤滑油をあらかじめ塗油
してなじませておくこと(リオイル)により、DI時の
潤滑性が向上する。油性皮膜の量が50mg/m2 以下
ではその効果が少なく、一方500mg/m2 以上では
油がたれ流れてしまい、板表面に均一に保油させておく
のは難しくなる。従って油性皮膜の量は50〜500m
g/m2 とする。
【0024】表面粗度:表面粗度については、油性皮膜
を板上に保持しておくために必要であり、Raが0.1
μm未満ではその効果がなく、一方0.5μmを越える
とDI成形時のしごき加工において保油性は向上する
が、粗度が深くなりすぎて加工後にも消去できなくなる
可能性も有り、成形後に圧延目に添った外観不良を起こ
す場合がある。従って表面粗度はRaが0.1〜0.5
μmの範囲とする。
【0025】平均変形抵抗:元板強度については、図3
に0.3mm板厚の缶胴材について平均変形抵抗すなわ
ち(TS+YS)/2と、深絞り(カッピング)・再絞
り・25%しごき成形後54.4%のしごき成形という
限界しごき率近傍での成形時の成功率との関係を示し
た。この結果、ばらつきはあるものの変形抵抗が305
N/mm2 より大きくなると成形の成功率が下がってい
る。従って、(TS+YS)/2の値は305N/mm
2 以下とする。
【0026】次にこの発明におけるアルミニウム合金素
板の製造方法について説明する。
【0027】鋳造:鋳造厚20mm以上でかつ凝固速度
50℃/s以下の条件で、本発明合金成分であれば、所
望の晶出物分布が得られる。その方法としてはこの条件
を満たす限りDC鋳造でも、連続鋳造でも良い。
【0028】均熱・加熱:500〜620℃の到達温度
で保持すれば、次工程の圧延性に支障はなく、さらに、
Mn等の遷移元素のアルミニウム基地中へのMn固溶量
やMnーFe系不溶性化合物の分散状態を制御できる。
【0029】熱間圧延:圧延性、コイルアップ性その他
を考慮して温度は200〜600℃で行われるのが望ま
しく、上り板厚は6mm以下が望ましい。
【0030】1次冷間圧延:目的の厚さまで行なう。
【0031】中間焼鈍:中間焼鈍条件は、到達温度40
0〜600℃まで加熱して、材料が400℃を越える温
度にある時間を10分以内とする保持を行った後、1℃
/s以上の速度で冷却する。到達温度が400℃以上で
ないとCu、Mg、Si等の金属元素の固溶が充分進ま
ず、したがってその後の塗装焼き付け処理時の時効硬化
が望めなくなり、強度向上をはかれなくなる。また高温
である方がより溶体化効果による強度向上が望めるが、
600℃より高温になると共晶融解が生じて製造上の不
都合を来すと共に製品の外観品質を損なう恐れがある。
従って到達温度は400〜600とする。昇温時の平均
昇温速度は1℃/s以上が好ましく、これより遅いと昇
温過程で合金元素の析出が進み析出物が粗大化してしま
い、高温での加熱保持によっても析出物を固溶させるの
に時間がかかる。保持時間は所定の温度に到達した直後
に冷却するか、もしくは10分以内の保持となるように
する。いずれの場合も400℃を越える温度に曝される
時間は10分以内とする。これより長い時間曝される
と、表面の酸化皮膜の形成により焼鈍終了後の冷間圧延
性を損ない、また製品の外観品質を損なう。さらに到達
温度からの冷却は1℃/s以上の冷却速度とする。これ
より遅いと一旦固溶した元素が析出してしまい、その後
の塗装焼き付け処理時の溶体化効果による強度向上の程
度が少なくなる。
【0032】最終冷間圧延:40〜70%の範囲とす
る。40%未満では充分な強度が得られない。また70
%を越えると強度向上には効果があるが、加工硬化しす
ぎるためDI加工において缶切れが発生しやすくなる。
【0033】最終焼鈍:必要により行なうことにより、
ボトムシワ等の成形性が向上する。その場合到達温度は
100〜250℃が好ましい。100℃未満ではその効
果が無く、250℃を越えると著しく強度が低下し好ま
しくない。
【0034】最後にDI加工法について説明する。本発
明はDI加工におけるしごきを2回とすることにより1
回当たりのしごき率を高くし、なおかつ2回のうち後段
はしごき率40%以上の高加工率とし全体で60%以上
のしごき率とする。しごきを2回とするのは、1回当た
りのしごき率を高くするためである。DI加工による残
留応力は、通常その後の洗浄や塗装工程での加熱により
除去され、ネッキングやフランジング加工性が改善され
る。この残留応力が除去されるときの主な駆動力は、残
留応力の大きさと加熱温度である。実際の操業条件を考
慮して洗浄や塗装工程での加熱条件を一定とすると、駆
動力は残留応力の大きさにより決まる。残留応力の除去
はいわゆる回復現象であり、残留応力が大きいほど駆動
力が大きくなり除去効果も大きい。本発明のポイント
は、この残留応力を大きくするためにしごき回数を2回
とし、1回あったりのしごき率を高くしたことにある。
2回のしごきのうち後段のしごき率は40%以上とす
る。40%未満では改善効果が不十分である。また全体
のしごき率を60%以上としたのは十分な缶高さを得る
為に必要だからである。また、しごきを1回とすること
も考えられるが、その場合には十分な缶高さを得るため
にはしごき率が60%以上となり、材料の1回でのしご
き限界を越えるため不可能である。
【0035】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。表1
に示す化学成分を有するアルミニウム合金を用いて表2
に示す製造方法により圧延、熱処理を行い試料を作成し
た。表1に示す合金Aは本願発明の合金成分組成を満た
す発明合金である。一方合金Bは本願発明の合金成分組
成からはずれるものであり、従来より用いられている5
000系合金に相当するものである。
【0036】
【表1】
【0037】表2の鋳造の欄のDCは半連続鋳造法を、
またCCは連続鋳造圧延法である。また熱延、冷延の欄
の板厚の単位はmm、焼鈍の欄は方法及び温度×保持時
間を示し、BAFはバッチ炉、CALは連続焼鈍炉、ま
た保持時間が0sとなっているのは温度到達後直ちに
(保持無しで)冷却に移ったことを示す。なおCALの
加熱・冷却速度は約20℃/s、バッチ炉の加熱・冷却
速度は約35℃/hであった。
【0038】ここでNO.1は特許請求の範囲にはいる
発明例であり、NO.2は粗度が請求の範囲からはずれ
て小さすぎる比較例であり、NO.3は粗度が請求の範
囲からはずれて大きすぎる比較例であり、NO.4は事
前のリオイルをせず油性皮膜の量がはずれる比較例であ
り、NO.5は鋳造を上がり板厚6mm、凝固速度15
0℃/sの条件のCC(連続鋳造圧延)で行い中間焼鈍
をCALで行ったものであり、NO.6は中間焼鈍をB
AFにて行い、冷間圧延率が請求の範囲から外れる比較
例であり、またNO.7は従来合金を用いた比較例であ
る。
【0039】
【表2】
【0040】得られた試料について引張試験により引張
強さ(TS:N/mm2 )、耐力(YS:N/mm2
を調べ、組織観察で5μm以上の晶出物の個数(個/m
2)を測定した。またしごき成形性を調べるために実
際に深絞り、再絞りした後、25%しごき成形さらに5
3.5%のしごき成形という通常の製造条件よりも厳し
い成形限界に近いしごき率で成形してその時の成功率を
調べた。その結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】表に示すように、NO.1の発明例では上
記したような極めて厳しい成形条件においても、100
%のDI加工成功率を示している。また成形性と共に引
張り強さ、耐力においても充分な値を示している。一
方、NO.2は粗度が請求の範囲から外れて小さすぎる
比較例であるが、表面粗度が小さく平滑であるため油性
皮膜を板表面に充分保持することが出来ず、その結果成
功率は80%となり、また弱いながらゴーリングが発生
している。またNO.3は粗度が請求の範囲から外れて
大きすぎる比較例であるが、保油性があり、100%成
形できるもの表面の凹凸が大きすぎるため、成形後に圧
延方向に沿った外観不良を生じた。NO.4は事前のリ
オイルを施していない比較例であり、粗大なMn系晶出
物やMg酸化皮膜が固体潤滑油として作用するものの潤
滑性が不足し、その結果DI加工の成功率は低くなって
おり、また外観不良となっている。NO.5は鋳造を上
がり板厚6mm、凝固速度150℃/sの条件のCC
(連続鋳造圧延)で行い中間焼鈍をCALで行ったもの
であり、作用において述べたように、凝固速度が速すぎ
るために固体潤滑剤として作用すべき晶出物が極めて少
なく、また望ましい分布が得られず、そのため上記のよ
うな厳しい成形条件では全くDI加工できない結果とな
った。また外観不良も発生している。NO.6は中間焼
鈍をバッチ炉にて行い、中間焼鈍後の冷間圧延率が請求
の範囲から外れて大きすぎる比較例であり、冷間圧延率
が大きすぎるために中間焼鈍で得られた酸化皮膜が分断
されすぎてしまい充分な固体潤滑効果が得られず、また
加工効果が大きく成りすぎてしまい引張り強さと耐力の
平均値が請求の範囲を越えて大きくなっているため、し
ごき成形性が低下し、その結果缶切れが発生し易くDI
加工成功率はやや低いものとなっている。NO.7は従
来の合金を用いた比較例であるが、合金成分が外れてい
るために固体潤滑剤として作用する晶出物の数が少ない
ので成功率は極めて低い。また強いゴーリングも発生し
ている。以上の実施例からわかるように、特許請求の範
囲で示した特定のアルミニウム合金素板を用いないとD
I加工において缶切れや外観不良等の問題を生ずること
がある。
【0043】次に本発明例のアルミニウム合金素板(表
2 NO.1)の板厚0.30mmのものを用いて従来
の加工方法および本発明の加工方法により350ml用
缶胴を製作した。缶胴側壁部8の板厚を0.110m
m、フランジ部8bの板厚を0.168mmとした。フ
ランジ加工性の評価を行うためフランジ部板厚は一定と
した。したがってトータルしごき量は63%一定とな
る。次にこの缶胴をトリミング、洗浄、塗装、200℃
×20分のベーング処理後、4段のダイネッキングを施
しフランジ加工性評価の為の試験サンプルとした。試験
方法としては、ネッキングされた缶胴の開口端に頂角7
5°の円錐台形の工具を押し込み、開口端部が破断した
ときの半径方向の拡がり量を測定した。その結果を表4
に示す。
【0044】
【表4】
【0045】No.8とNo.9は従来の方法によるD
I加工法であり、3回のしごき加工を行いしごき率はい
ずれも40%未満の値である。NO.10,11,12が
本発明によるDI加工法であり、しごき加工を2回とし
2回目のしごき加工のしごき率を40%以上とした。表
に示すように、本発明の方法によれば開口端部の半径方
向広がり量が従来法よりも優れており、またネッキング
しわの発生もなかった。No.13はしごきダイスの1
段目のしごき率を40%以上、2段目を40%未満とし
た比較例であるが、この場合は性能の改善が見られず従
来法と比べて同等程度であった。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法によ
れば、強度およびDI加工性を損なうことなくフランジ
加工性に優れた2ピースアルミニウムDI缶胴体を得る
ことができ、その結果内容物充填・蓋巻き締め後のフラ
ンジ割れが皆無となり、フランジ割れや巻き締め不良に
よる内容物の漏洩という問題がなくなる。また本実施例
では従来の加工装置を用いて、しごきダイスを2枚とす
ることにより缶胴を製作したが、始めからしごきダイス
2枚の加工装置とすることもできる。こうすることによ
り加工装置のストローク長さを短くすることが出来、精
度良く加工装置の回転数を上げることが出来るので生産
性も向上する。またいずれの装置にしても、しごきダイ
スの数が1枚少なくて良いので経済的であるなどさまざ
まな効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の一般的なDI加工装置の要部の断面図で
ある。
【図2】ワークのDI加工にともなう変形状態を示す断
面図である。
【図3】元板の(TS+YS)/2とDI成功率の関係
を示すグラフである。
【符号の説明】 1‥‥‥再絞りダイス 1a‥‥‥貫通孔 2、3、4‥‥‥しごきダイス 2a、3a、4a‥‥‥貫通孔 5‥‥‥パンチスリーブ 6‥‥‥カップホルダースリーブ 7‥‥‥カップ 8A‥‥‥再絞り後の平底缶 8‥‥‥しごき後の平底缶8 8a‥‥‥平底缶8の底部 11‥‥‥ドーム部成形用の金型 9a‥‥‥ドーム部 9‥‥‥缶胴9 10‥‥‥最終の製品缶10

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で(以下同じ)、Mg:0.5〜
    2.0%、 Mn:0.5〜1.8%、 Fe:0.1〜0.7%、 Si:0.05〜0.5%、 Cu:0.05〜0.5%を含有し、 かつTi:0.005〜0.20%を単独でもしくは
    B:0.0001〜0.05%と組合せて含有し、 さらに必要に応じてCr:0.05〜0.3%、 Zn:0.1〜0.5%のうちの1種以上を含有し、残
    部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合
    金を常法により鋳造、 均熱・加熱、 熱間圧延、 一次冷間圧延を行い、 次いで到達温度400〜600℃まで加熱して材料が4
    00℃を越える温度にある時間を10分以内とする保持
    を行った後1℃/s以上の速度で冷却する中間焼鈍を行
    い、 さらに圧延率40〜70%の最終冷間圧延を施し、 板表面及び板表面に平行な任意の断面において5μm以
    上の晶出物が500個/mm2 以上存在し、 表面粗度(Ra)が0.1〜0.5μm、 平均変形抵抗(TS+YS)/2が305N/mm2
    下の圧延板とし、 次いで、この圧延板に塗油量が50〜500mg/m2
    の油性皮膜を設けて缶胴体素板とし、 これにDI加工を施して缶胴体とするに際して、 しごきダイス2枚を用い、 かつ後段のダイスによるしごき率を40%以上、 全体で60%以上のしごき加工を行うことを特徴とする
    フランジ加工性に優れた2ピースアルミニウムDI缶胴
    体の製造方法。
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