JPH08120117A - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

難燃性熱可塑性樹脂組成物

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JPH08120117A
JPH08120117A JP6262502A JP26250294A JPH08120117A JP H08120117 A JPH08120117 A JP H08120117A JP 6262502 A JP6262502 A JP 6262502A JP 26250294 A JP26250294 A JP 26250294A JP H08120117 A JPH08120117 A JP H08120117A
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節夫 西堀
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた難燃性を有し、しかも、耐熱性、耐光
性、ブリード性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物を提
供する。 【構成】 熱可塑性樹脂100重量部に対して、下記一
般式(I)で表わされる少なくとも一以上のトリブロモ
ネオペンチルアルコール誘導体を2〜50重量部で含有
する難燃性熱可塑性樹脂組成物。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、難燃性、耐熱性、耐光
性が良好で、かつブリード性の小さい難燃性熱可塑性樹
脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリス
チレン、ABS樹脂等に代表される熱可塑性樹脂は成形
が容易であることや、比較的安価に得られる等の他に、
絶縁性、光沢、着色性などの諸特性にも優れた特徴を有
しているため、電気部品、機械部品、自動車部品などに
広く使用されている。しかし、これらの熱可塑性樹脂の
多くは炭素や水素等の元素を主体として構成されている
ために、古来より使用されている木材などの天然素材と
比較して燃え易く、発熱量が高く、しかも燃焼速度が速
いものがあり、ひとたび火災が発生すると災害を大きく
することが懸念される。
【0003】従って、今日では電気製品、自動車内装
品、電線・ケーブル、建築材料、繊維製品など、一部の
利用分野では難燃規制が行われている。例えば、米国の
電気製品におけるUL規格、自動車内装材におけるFM
VSS−302、電線・ケーブルにおけるIPCEA
S−61−402、壁袋材における建築基準法−建設省
告示3415号、カーテン・ジュータンにおける消防法
施工令−政令第18号,第363号が知られている。熱
可塑性樹脂に難燃性を付与するためには、樹脂成形品製
造時に難燃剤を添加するのが一般的である。
【0004】難燃剤としては、無機化合物、有機リン化
合物、有機ハロゲン化合物、有機リン−ハロゲン化合物
等がある。特に有機ハロゲン化合物や有機リン−ハロゲ
ン化合物のうちの臭素を含有する化合物が優れた難燃効
果を有しており、従来より種々の化合物が検討され、実
用に至っている。更に、難燃化樹脂に求められるその他
の性能としては、品質面からは、耐熱性(引張り強度、
曲げ強度、熱変形温度等の物性劣化、耐熱色相変化)耐
衝撃性、低ブリード性、耐光性などが求められる。ま
た、成形品製造面からは、生産性を上げるために、高温
で樹脂流動性を向上させ(MIの向上)、成形時間を短
縮することや、成形屑の再利用することなどの要求があ
り、これらの点からも耐熱性の向上が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな難燃剤のうち、ヘキサブロモシクロドデカンで代表
される脂環族臭素化合物や、トリス(2,3−ジブロモ
プロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプ
ロピル)イソシアヌレートなどの脂肪族臭素化合物は、
難燃効果は非常に優れているものの、難燃剤自体の耐熱
性が劣るために樹脂への着色、樹脂物性の低下を起こ
す。例えば200℃以上の成形温度を要するABS樹脂
などに配合して成形を行う場合、難燃剤自体が熱分解し
て樹脂成形体が著しく着色し、耐熱性、耐衝撃性も低下
してしまうのみならず、熱分解により発生する臭化水素
による作業環境の悪化や金型腐食を引き起こす。
【0006】他方、耐熱性の優れた有機臭素化合物とし
て、デカブロモジフェニレンオキサイド、オクタブロモ
ジフェニレンオキサイド、1,2−ビス(ペンタブロモ
フェノキシ)エタン、1,2−ビス(ペンタブロモフェ
ニル)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミ
ド、へキサブロモベンゼンなどの芳香族臭素化合物が知
られている。これらの芳香族臭素化合物は脂環族臭素化
合物や脂肪族臭素化合物に比べて耐熱性が良好である。
従って、比較的高温度で成形する樹脂に配合することが
可能であるが、難燃効果に劣るために十分な難燃性を付
与するためには難燃剤を多量に配合する必要があり、そ
れに伴い樹脂物性、例えば耐衝撃性の低下やブリードア
ウトなどの問題を引き起こす。これらの問題は、先に述
べた芳香族臭素化合物の多くは融点が成形温度よりも高
く、これらの樹脂の成形温度よりも高融点を持つ化合物
を樹脂に配合した場合には、難燃剤の粒径や樹脂中での
分散状態によって難燃性に差が出たり、添加した難燃剤
の全量が難燃化に寄与せず、十分に難燃効果を発揮し得
ないことが主要因である。
【0007】このような難燃効果と耐熱性の相反する特
性のバランスをとる方法として、脂環族臭素化合物、脂
肪族臭素化合物にヒンダードフェノール系、イオウ系、
有機錫系、ホスファイト系の熱安定剤やハイドロタルサ
イト類などと併用する方法が知られているが、未だ問題
の解決には至っていない。また、耐光性の改良について
は、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリア
ゾール系、シアノアクリレート系などの光安定剤を添加
する方法が知られているが、耐熱性を向上する目的で熱
安定剤を併用した場合と同様にその効果は添加剤の種類
や添加量により決定され、添加剤の増加に伴う樹脂の劣
化という問題が生じ、長期的、根本的な解決には至って
いない。
【0008】一方、化合物の構造面からの解決策が検討
されており、例えばポリプロピレン等のオレフィン系樹
脂に対してはフランス特許第1541271号、ABS
等のスチレン系樹脂に対してはドイツ特許第20467
95号があり、これらの特許公報には、テトラブロモビ
スフェノールAのビス(2,3−ジブロモプロピル)エ
ーテルの如き芳香族臭素と、脂肪族臭素構造を併せ持つ
化合物との配合が報告されている。しかしながら、これ
らの難燃剤を用いた場合、樹脂の耐光性が低下するとい
う問題が生じる。
【0009】また、その他の難燃性を付与する脂肪族臭
素化合物の例として例えばトリブロモネオペンチル基を
含有する化合物がある。この化合物の例として、特公昭
46−6865号公報に記載されているリン酸エステル
で連結したトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェ
ートが報告され、また、米国特許第3772342号に
記載されている3価までの芳香族カルボン酸で連結した
トリス(トリブロモネオペンチル)トリメリテート及び
ビス(トリブロモネオペンチル)テレフタレートが報告
され、更に、国際公開番号WO91/13858号に記
載されているビス(トリブロモネオペンチル)フタレー
トが報告されている。これらの難燃剤は、難燃効果と耐
熱性を併せ持つという特徴を有しているものの、例えば
ポリプロピレン樹脂の如きオレフィン系樹脂に添加した
場合にはブリードアウトし易く、経時的に成形品表面が
曇ったり、ひどい場合には白化を生じるという欠点を有
している。
【0010】難燃性を付与する脂肪族臭素化合物の例と
しては、特開昭50−19707号公報に記載されてい
る、臭素置換ペンタリット類、及び臭素置換ネオぺンチ
ルエステル類の混合物を挙げることができる。この混合
物は、ペンタリットとHBrを脂肪族ジカルボン酸類の
存在下に反応させることにより得られ、この方法によっ
て得られた混合化合物がウレタンフォームやポリエステ
ル樹脂の防火剤として有効であることが述べられてい
る。しかしながら、この製造方法で得られた化合物は臭
素化されずに残存するヒドロキシ基、エステル化されず
に残存するカルボキシル基などを含有しており、熱安定
性に欠ける。また、ペンタリットのみが臭素置換した、
テトラブロモネオペンタン、トリブロモネオペンチルア
ルコール、ジブロモネオペンチルグリコール、モノブロ
モネオペンチルトリオールなどは耐熱性の悪化のみなら
ず、低分子量で揮発性があることより臭気の発生原因と
なる。また、上記公報では高純度のアジピン酸ジエステ
ルについても述べられているが、熱可塑性樹脂に添加し
た場合には、融点が75℃と低いために熱変形温度の低
下やブリード性が悪くなる等の欠点を有している。
【0011】そこで、本発明が解決を意図する課題は、
難燃性、耐熱性、耐光性が良好で、ブリード性の低い難
燃性熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係る難燃性熱可
塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対し
て、下記一般式(I)で表わされるトリブロモネオペン
チルアルコール誘導体を2〜50重量部含有することを
特徴とする。
【0013】
【化3】
【0014】ここで、n=2又は4であり、Xは下記の
式で表される基であり、
【0015】
【化4】
【0016】また、m=0〜2の整数、YはCl基又は
Br基である。
【0017】一般式(I)で示されるトリブロモネオペ
ンチルアルコール誘導体は、例えば無溶媒又は溶媒中
で、無触媒下又は触媒存在下で酸に対して当量以上のト
リブロモネオペンチルアルコールと、(a)カルボン酸
との脱水反応、(b)カルボン酸無水物によるアシル化
反応及び脱水反応、(c)低級アルコールのカルボン酸
エステルとのエステル交換反応、(d)カルボン酸ハラ
イド又はリン酸ハライドとの非水系での脱ハロゲン化水
素反応、(e)カルボン酸ハライド又はリン酸ハライド
との相間移動反応による脱ハロゲン化水素反応、などの
一般的合成方法によって製造できる。
【0018】溶媒としては、(a)及び(b)の反応で
は、例えば四塩化炭素、エチレンジクロライド、トリク
レン、パークロロエチレン、ベンゼン、トルエン、キシ
レン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベン
ゼン、ニトロベンゼンなどの有機溶媒が挙げられる。ま
た、(d)及び(e)の反応では、例えば二塩化メチレ
ン、四塩化炭素、エチレンジクロライド、トリクレン、
パークロロエチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、
エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、
ニトロベンゼンなどの有機溶媒が挙げられる。但し
(e)の反応においては、脱ハロゲン化水素を相間移動
反応で行うために、苛性アルカリ水溶液を上記有機溶媒
と併用して使用する。
【0019】触媒としては、(a)〜(c)の反応で
は、硫酸,リン酸,ほう酸等の無機酸、ベンゼンスルホ
ン酸,p−トルエンスルホン酸,メタンスルホン酸等の
有機酸、フッ素化ホウ素エーテル錯体,ジブチルチンジ
ラウレート,テトラブチルチタネート等のルイス酸など
が挙げられる。また、(d)の反応では、塩化マグネシ
ウム,塩化カルシウム,塩化アルミニウム,塩化第一
錫,塩化亜鉛等のルイス酸が挙げられる。(e)の反応
では、相間移動触媒としてトリメチルアミン,トリエチ
ルアミン,ピリジン等の3級アミン、テトラブチルアン
モニウムクロライド,テトラブチルアンモニウムブロマ
イド,セチルピリジニウムクロライド,ベンジルセチル
ジメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム
塩、テトラブチルホスホニウムブロマイド、メチルトリ
フェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩な
どが挙げられる。
【0020】次に、一般式(I)で示されるトリブロモ
ネオペンチルアルコール誘導体について、上記化4の(I
I)〜(IV)で表される基と、( V) で表される基と、(VI)
で表される基とを有する化合物について、それぞれ具体
的に説明する。
【0021】化4の(II)〜(IV)で表される基を有する化
合物は、例えば脂肪族二塩基性酸又はその酸無水物1モ
ルとトリブロモネオペンチルアルコール2モル以上を硫
酸、リン酸等の無機酸またはパラトルエンスルホン酸、
メタンスルホン酸等の有機酸またはジブチルチンジラウ
レート、テトラブチルチタネート等のルイス酸などを触
媒として、不活性溶媒中または無溶媒で80〜200℃
の温度範囲で脱水反応することにより得られる。また、
脂肪族二塩基性酸ハライド1モルとトリブロモネオペン
チルアルコール2モル以上とを用いて脱ハロゲン化水素
反応によっても容易に得ることができる。
【0022】脂肪族二塩基性酸の例としては、シュウ
酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2−メチルコハ
ク酸、アジピン酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3
−ジメチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチ
ルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,4−
ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、ス
ベリン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シト
ラコン酸、メサコン酸が挙げられるが、二塩基性酸の分
子量が増加すると、その二塩基性酸より誘導されるビス
(トリブロモネオペンチル)エステルの臭素含有率が減
少して難燃効果が低下する。
【0023】難燃剤を融点の面から見れば、保存安定性
や熱可塑性樹脂に難燃剤を配合する際の取り扱い易さを
考慮して室温以上であることが好ましい。更に、熱可塑
性樹脂に添加した場合には、融点が100℃を下回るも
のは極端に熱変形温度が低下したり、ブリード性が悪化
するので、難燃剤の融点として、100℃以上であるこ
とが好ましい。
【0024】更に、難燃剤の製造原料が工業的に入手し
易くて、安価なものが経済性の面から好ましい。
【0025】以上の記載から、臭素含有率、融点の観点
からすれば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、マレイン
酸、フマール酸並びにこれらの酸無水物、低級アルコー
ルエステル及び酸ハライドが好ましく、これらの混合物
も使用することができる。
【0026】なお、例えば、ビス(トリブロモネオペン
チル)マレートは加熱することにより異性化されて、熱
的に安定なビス(トリブロモネオペンチル)フマレート
に一部変換されるが、本発明の効果は変わらないので何
等差し支えなく使用することができる。
【0027】次に、化4の( V) で表される基を有する
化合物、即ち、テトラキス(トリブロモネオペンチル)
ピロメリテートは、例えば無水ピロメリット酸1モルと
トリブロモネオペンチルアルコール4モル以上を硫酸、
リン酸等の無機酸またはp−トルエンスルホン酸、メタ
ンスルホン酸等の有機酸またはジブチルチンジラウレー
ト、テトラブチルチタネート等のルイス酸などを触媒と
して、不活性溶媒中または無溶媒で100〜200℃の
温度範囲で脱水反応することにより得られる。
【0028】更に、化4の(VI)で表される基を有する化
合物、即ち、2,2−ビス(クロロメチル)−1,3−
プロパンジイルビス[ビス(トリブロモネオペンチル)
ホスフェート〕は、例えば2,2−ビス(クロロメチ
ル)1,3−プロパンジイルビス(ジクロロホスフェー
ト)1モルとトリブロモネオペンチルアルコール4モル
以上を、無溶媒中若しくは有機溶媒中で無触媒下若しく
は例えば塩化アルミニウム、塩化マグネシウム等のルイ
ス酸触媒の存在下に脱塩化水素反応を行うか、有機溶媒
中で例えばトリエチルアミン、ピリジン等の三級アミン
を用いた脱塩化水素反応を行うか、又は例えば三級アミ
ン、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩等を相間
移動触媒とした相間移動反応による脱塩化水素反応を行
うことによって製造することができる。
【0029】一般式(I)で示されるトリブロモネオペ
ンチルアルコール誘導体を難燃剤として使用する場合、
難燃化の対象となる高分子材料としては特に限定される
ものではないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロ
ピレン樹脂、エチレン−プロピレンブロック共重合体、
EPM及びEPDMのエチレン−プロピレンゴム、ポリ
スチレン樹脂、HI−PS樹脂(高耐衝撃性ポリスチレ
ン樹脂)、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、塩化
ビニル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリカー
ボネート樹脂、ポリアミド樹脂、飽和又は不飽和ポリエ
ステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール
樹脂などの素材ポリマー及びそれらのブレンドポリマー
などが挙げられる。
【0030】トリブロモネオペンチルアルコール誘導体
の添加量は高分子材料に対して任意であるが、好ましい
範囲は熱可塑性樹脂100重量部に対して2〜50重量
部である。2重量部を下回ると得られた難燃性熱可塑性
樹脂組成物は十分な難燃効果を発揮しない。また、50
重量部を越えて配合しても難燃効果はそれ程向上しない
ばかりか、得られる難燃性熱可塑性樹脂組成物の物性値
が低下するなどの好ましくない影響を与える。その添加
方法としては、そのまま又は溶媒に溶解せしめた形態、
又は水中若しくは油類中に分散せしめたエマルジョンの
形態で、高分子材料の製造時(重合時、成形時、紡糸時
等)やその他、高分子材料と均一混和せしめる時点で添
加する方法が挙げられる。
【0031】また、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物
と共に、必要に応じて他の公知の難燃剤、難燃助剤を併
用することができる。難燃剤、難燃助剤としては、例え
ば、含ハロゲンアルキルホスフェート、含ハロゲンアル
キルホスファイト、金属酸化物、金属水酸化物、アルキ
ル金属化合物等が挙げられる。また、他の例えば熱安定
剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、
滑剤、帯電防止剤、増量剤等の公知の添加剤も併用する
ことが可能である。
【0032】更に、一般式(1)で表される化合物は、
単独若しくは2種類以上の混合物であっても良い。
【0033】
【作用】一般に、臭素含有化合物の難燃効果の発現は、
熱分解により生成する臭素ラジカルにより開始されるこ
とが知られている。熱による臭素ラジカルの発生が容易
か否かは、C−Brの結合エネルギーによるところが大
きい。例えば、芳香族臭素の場合は脂肪族臭素に比べて
結合エネルギーが大きく熱安定性に優れるものの難燃効
果は小さい。
【0034】また、脂肪族臭素の場合C−Brの結合エ
ネルギーは第3級炭素<第2級炭素<第1級炭素の順に
大きくなり、臭素原子が脱離し易くなることより、難燃
効果は高くなるもののそれに反して耐熱性が低下する。
従来より知られているへキサブロモシクロドデカンやジ
ブロモプロピル基を含有する臭素化合物は、第2級炭素
に結合する臭素原子を含有しているため、高い難燃効果
が得られるものの耐熱性に劣っている。
【0035】これに対して、本発明に使用されるトリブ
ロモネオペンチルアルコール誘導体は、分子中に複数の
トリブロモネオペンチル骨格を有している。トリブロモ
ネオペンチル骨格は、全ての臭素原子が第1級炭素に結
合しているので耐熱性に優れ、特に脂肪族二塩基性酸の
ビストリブロモネオペンチルエステル化合物は、脂肪族
臭素化合物でありながら耐熱性に優れているという特徴
を有している。更に、トリブロモネオペンチルアルコー
ル誘導体は臭素原子のβ位に水素原子を有さない特徴的
な構造を有しているため、例えばへキサブロモシクロド
デカンにおいて見られるような、熱分解による脱HBr
反応及びそれによる不飽和基の生成が大幅に減少する。
従って、トリブロモネオペンチルアルコール誘導体は、
着色が少なくまた耐光性に優れた骨格構造を有している
と言うことができる。
【0036】以上の如く、芳香族臭素化合物よりも難燃
効果が高く、且つ耐熱性及び耐光性に優れる特異的なト
リブロモネオペンチル骨格を、二塩基性酸ジエステル、
芳香族のテトラエステル又はジハロネオペンチルジリン
酸のテトラエステルで連結することで、より化学的、熱
的に安定な化合物となり、本発明の難燃性熱可塑性樹脂
組成物に供される。
【0037】
【発明の効果】以上説明したとおり、トリブロモネオペ
ンチルアルコール誘導体を含有する本発明の難燃性熱可
塑性樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、耐光性が良好で、
ブリードアウトが非常に小さいという特徴を有してい
る。従って、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を用い
て射出成形、圧延などの加工を行った場合、これらの加
工温度においても樹脂の劣化や変色を起さず、耐熱性、
耐光性に優れ、しかもブリードアウトも少ないので、樹
脂成形品、フィルム、発泡体等の被覆材、繊維状物、積
層材、その他の樹脂材料などに使用することができる。
従って、長期間使用しても劣化が小さい成形体を得るこ
とが可能となり、熱可塑性樹脂を使用する関連産業の発
展、火災安全性の向上等に貢献しうる。
【0038】
【実施例】以下、実施例及び比較例を掲げ、本発明の実
施態様及び効果について述べるが、以下は単に説明のた
めに記載したのものであって、本発明を限定し又は制限
を加えることを意図したものではない。なお各例中、
「部」及び「%」は特に断らない限り重量基準である。
【0039】(合成例1)攪拌機、還流管、及び温度計
を有するフラスコにトリブロモネオペンチルアルコール
(ブロミン・コンパウンドLTD製;純度98%)32
5g、トルエン300g、トリエチルアミン110gを
仕込み、これにトルエン100gで希釈したシュウ酸ジ
クロライド64gを滴下ロートより滴下した。滴下と同
時に発熱するが、冷却により50℃に保ち、滴下終了後
更に50℃で1時間熟成した。シュウ酸ジクロライドの
滴下とともにトリエチルアミン塩酸塩と有機化合物の結
晶が析出し、系内はスラリー状態となった。熟成終了
後、水300gを添加して十分に攪拌した。これを濾過
して得られた結晶をメタノールで十分に洗浄した後、ト
ルエン500gで再結晶し、濾過、100℃での乾燥を
行うと、融点134.9℃の白色粒状結晶246gが得
られた。この化合物のIR測定では1753.0cm-1
にエステル性カルボニルの伸縮振動に基づく吸収が見ら
れ、酸クロライドやカルボン酸の吸収は見られず、表1
の化合物No.1のトリブロモネオペンチルアルコール
誘導体〔ビス(トリブロモネオペンチル)オキサレー
ト〕であることが確認された。GPC分析(カラム:東
ソー製、G2000HXL(30cm)×1本,G1000H
KL(30Ccm) ×2本,40℃,THF 1ml/分)で
はモノエステル及びトリブロモネオペンチルアルコール
が含まれない単一ピークを示した。更に臭素含有率を以
下に示す酸素フラスコ燃焼法で測定したところ68.3
%であり、分子量より計算した理論値68.2%とほぼ
一致していた。
【0040】<酸素フラスコ燃焼法>精秤した試料を酸
素を充満させたフラスコ中で燃焼させ、発生するハロゲ
ンイオンをKOH/H2 2 溶液に吸収させ、硝酸第2
水銀で滴定を行った。
【0041】
【表1】
【0042】(合成例2)攪拌機、検水管及び還流管、
並びに温度計を有するフラスコに無水コハク酸100
g、合成例1と同じトリブロモネオペンチルアルコール
660g、キシレン730g、パラトルエンスルホン酸
15gを仕込み、攪拌しながら加熱した。内温が80℃
になった時点で系内が均一な溶液となり発熱が観測され
た。更にキシレンの還流温度まで昇温し、還流下で3時
間反応すると検水管に水19gが捕集された。内容物を
90℃に冷却し、500gの熱水を添加して有機相を十
分に洗浄した。攪拌を止めて静置分離後、水相のみを抜
き取り、更に同様の操作で熱水洗浄を合計2回行った。
フラスコ内の有機相を冷却し、析出した結晶を濾過し
た。更に得られた結晶をキシレン500gで再結晶し、
濾過後90℃で乾燥を行うと、融点111.7℃の白色
粒状結晶580gが得られた。この化合物のIR分析を
行うと、1737.5cm-1にエステル性カルボニルの
伸縮振動に基づく吸収が見られ、酸無水物やカルボン酸
の吸収は見られなかった。また、NMR測定では、2.
70ppmにコハク酸骨格のメチレン水素の一重線、
3.54ppmにトリブロモネオペンチル基の臭素原子
に隣接するメチレン水素の一重線、及び4.25ppm
にトリブロモネオペンチル基のエステル酸素原子と結合
したメチレン水素の一重線が、面積比でそれぞれ4:1
2:4で観測された。以上のことより、この化合物は表
1のNo.2のトリブロモネオペンチルアルコール誘導
体〔ビス(トリブロモネオペンチル)サクシネート〕で
あることが確認された。合成例1と同様の条件によるG
PC分析では、モノエステル、トリブロモネオペンチル
アルコール及びコハク酸が含まれない単一ピークであっ
た。更に酸素フラスコ燃焼法によりこの化合物の臭素含
有率を測定したところ、計算により求めた理論値65.
6%に対して65.5%であった。
【0043】(合成例3)攪拌機、検水管及び還流管、
並びに温度計を有するフラスコに無水マレイン酸98
g、合成例1と同じトリブロモネオペンチルアルコール
700g、トルエン400g及びパラトルエンスルホン
酸15gを仕込み、攪拌しながら加熱した。
【0044】内温が25℃になった時点で系内は均一な
溶液となり、80℃になった時点で発熱が観測された。
更に昇温して、トルエンの還流下で10時間反応すると
検水管には反応生成水が16g捕集された。内容物を冷
却して80℃になった時点で熱水300gを添加し、十
分に攪拌した後静置して水相を抜き取り、更に熱水30
0gで有機相を洗浄した。内容物を冷却して60℃にな
った時点でメタノール200gを添加し、更に冷却して
結晶を析出させた。この結晶を濾過し、トルエン/メタ
ノール=1/1(容量比)で洗浄して80℃で乾燥する
と、約700gの白色粉末状結晶が得られた。この化合
物をDTA測定を行うと、107.1℃と163.3℃
に吸熱ピークを持ち、2種類の化合物の混合物であるこ
とが判明した。この結晶300gを熱トルエン300g
に溶解後、50℃で静置して、析出した結晶を濾別し
た。この濾液にメタノール100gを加えて25℃まで
冷却して結晶を析出させ、これを濾過後、減圧下80℃
で乾燥すると白色粉末約100gが得られた。この化合
物のDTA測定を行うと107.1℃にのみ吸熱ピーク
を示し、先の化合物にあった163.3℃の吸熱ピーク
は観測されなかった。IR測定では、1751.0cm
-1及び1729.8cm-1にエステル性カルボニルの伸
縮振動に基づく吸収が観測された。また、CDCl3
溶媒としたNMR測定では、3.57ppmにトリブロ
モネオペンチル基の臭素原子に隣接するメチレン水素の
一重線、4.35ppmにトリブロモネオペンチル基の
エステル酸素原子に結合しているメチレン水素の一重
線、及び6.31ppmにマレイン酸骨格の不飽和メチ
ン水素の一重線が、面積比がそれぞれ12:4:2で観
測された。酸素フラスコ燃焼法によりこの化合物の臭素
含有率を測定したところ、理論値の65.8%に対して
65.7%であった。これらのことより、この化合物が
表1のNo.3のトリブロモネオぺンチルアルコール誘
導体〔ビス(トリブロモネオペンチル)マレート〕であ
ると同定された。
【0045】(合成例4)合成例2の無水コハク酸10
0gに代えてフマール酸116gを使用し、その他は合
成例2と同様に脱水反応を行った。キシレンの還流下で
6時間反応した後、内容物を80℃に冷却し、300g
の熱水を加え十分に攪拌した。更に攪拌した状態で内容
物を室温まで冷却して結晶を析出させ、これを濾過し
た。得られた結晶をジメチルホルムアミドで再結晶し、
濾過、乾燥を行うと、白色結晶672gが得られた。こ
の化合物のIR分析では、1737.5cm-1にエステ
ル性カルボニルの伸縮振動に基づく吸収が確認された。
またD6 −DMSOを溶媒としたNMR測定では、3.
67ppmにトリブロモネオペンチル基の臭素に隣接す
るメチレン水素の一重線、4.31ppmにトリブロモ
ネオペンチル基のエステル酸素原子に結合しているメチ
レン水素の一重線、及び6.95ppmにフマール酸骨
格の不飽和メチン水素の一重線が、面積比がほぼ12:
4:2で観測された。酸素フラスコ燃焼法によりこの化
合物の臭素含有率を測定したところ、理論値の65.8
%に一致した。これらのことより、この化合物が表1の
No.4のトリブロモネオペンチルアルコール誘導体
〔ビス(トリブロモネオペンチル)フマレート〕である
と同定された。
【0046】(比較合成例1)合成例2の無水コハク酸
100gに代えてアジピン酸146gを使用し、その他
は合成例2と同様に脱水反応を行った。キシレンの還流
下で3時間反応した後、内容物を80℃に冷却し、30
0gの熱水で2回有機相を洗浄した。これにメタノール
100gを加えて攪拌し、静置後に分離する上相を抜き
取ることで有機相を脱水した。この操作時の温度は60
℃であった。有機相に更にメタノール70gを加えて2
0℃まで冷却して結晶を析出させた。結晶を濾過して、
減圧下60℃で乾燥させると、白色粉末504gが得ら
れた。この化合物のIR分析では、1731.8cm-1
にエステル性カルボニルの伸縮振動に基づく吸収が確認
された。また、合成例1と同様の条件によるGPC分析
では、モノエステル、トリブロモネオペンチルアルコー
ル及びアジピン酸が含まれない単一ピークであった。酸
素フラスコ燃焼法によりこの化合物の臭素含有率を測定
したところ、理論値の63.2%に対して63.3%で
あった。これらのことより、この化合物は〔ビス(トリ
ブロモネオペンチル)アジペート〕であると同定され
た。
【0047】(合成例5)攪拌機、検水管及び還流管、
温度計、並びに窒素導入管を有するフラスコに、合成例
1と同じトリブロモネオペンチルアルコール750g、
無水ピロメリット酸109g、p−トルエンスルホン酸
15g及びo−ジクロロベンゼン700gを仕込み、窒
素を導入しながら加熱した。内温が150℃になった時
点で系内は完全に均一な溶液となり、反応水が検出され
始めた。更に160℃に昇温し、その温度で8時間反応
した。次に、110℃まで冷却し、これにトルエン20
0mlを加えた後更に室温まで冷却した。析出した結晶
を濾過した後、ジメチルホルムアミドで再結晶を2回行
うと、白色粉末状の結晶550gが得られた。IR分析
では、1733.7cm-1にエステル性カルボニルの伸
縮振動に基づく吸収が確認された。NMR分析では、
3.60ppmにトリブロモネオペンチル基の臭素に隣
接するメチレン水素の一重線、4.54ppmにトリブ
ロモネオペンチル基のエステル酸素原子に結合するメチ
レン水素の一重線、及び8.05ppmにはピロメリッ
ト酸の芳香族水素の一重線が検出され、それぞれのピー
クの面積比はほぼ24:8:2であった。また、この化
合物の臭素含有率を酸素フラスコ燃焼法により測定した
ところ、理論値の64.8%に対して64.3%であっ
た。
【0048】これらのことより、この化合物が表1のN
o.5のトリブロモネオペンチルアルコール誘導体〔テ
トラキス(トリブロモネオペンチル)ピロメリテート〕
を主成分としていることが確認された。この化合物のG
PC分析を合成例1と同様の条件で行ったところ、RI
検出器のピーク面積百分率で、主成分のテトラキスエス
テル化合物が97.8%、トリスエステル化合物が0.
3%、ビスエステル化合物が0.3、トリブロモネオペ
ンチルアルコールが0.2%の他、主成分のテトラキス
エステル化合物よりも高分子量の化合物が1.3%検出
された。
【0049】(合成例6)合成例5と同じ反応装置に、
合成例1と同じトリブロモネオペンチルアルコール75
0g、無水ピロメリット酸109g、テトラブチルチタ
ネート20g、o−ジクロロベンゼン700gを仕込
み、窒素を導入しながら加熱した。内温が150℃にな
った時点で系内は完全に均一な溶液となり、反応水が検
出され始めた。更に170℃に昇温し、その温度で10
時間反応した。次に、110℃まで冷却し、これにトル
エン200mlを加えた後、更に室温まで冷却した。析
出した結晶を濾過した後、o−ジクロロベンゼン/トル
エン(容量比2/1)で再結晶を行うと、白色粉末状の
結晶600gが得られた。IR測定では合成例5で得ら
れた化合物と同じ吸収を示したことから、テトラキス
(トリブロモネオペンチル)ピロメリテートを主成分と
することが確認された。この化合物の臭素含有率は6
3.2%であった。また、合成例5と同じ条件でのGP
C分析で、主成分のテトラキスエステル化合物が96.
6%、トリスエステル化合物が、0.6%、ビスエステ
ル化合物が0.3、トリブロモネオペンチルアルコール
が0.1%の他、主成分よりも高分子量の化合物が2.
4%検出された。また、この化合物の示差熱分析を行っ
た。その結果、表1に示す融点と熱減量温度が測定され
た。
【0050】(比較合成例2)攪拌機、検水管及び還流
管、温度計、並びに窒素導入管を有するフラスコに、テ
レフタル酸ジメチル97g、合成例1と同じトリブロモ
ネオペンチルアルコール325g、キシレン730g、
パラトルエンスルホン酸8g、o−ジクロロベンゼン4
00gを仕込み、窒素を導入しながら加熱した。内温を
160℃に保ち5時間反応を行った後、90℃に冷却し
て300gの熱水で2回有機相を洗浄した。これにトル
エン200gを加え、70℃以下でメタノール100g
を加えて室温まで冷却した。析出した結晶を濾過し、減
圧下150℃で乾燥させると白色粉末253gが得られ
た。この化合物のIR分析を行うと、1720.2cm
-1にエステル性カルボニルの伸縮振動に基づく吸収が観
測された。合成例1と同様の条件によるGPC分析で
は、ビス(トリブロモネオペンチル)テレフタレートと
見られる99.0%のメインピークと、高分子量側に
0.7%のピークと、のトリブロモネオペンチルアルコ
ールが1個のみエステル交換した化合物と見られる0.
3%のピークとが観測され、これら以外のピークは観測
されなかった。融点をDTA分析(昇温速度10℃/
分)により測定したところ、186.7〜189.6℃
であった。更に酸素フラスコ燃焼法によりこの化合物の
臭素含有率を測定したところ、計算により求めた理論値
61.5%に対して61.1%であった。この化合物の
融点及び臭素含有率は、米国特許第3,772,342
号に記載の実施例1の化合物の分析値と良く一致してい
た。これらのことより、この化合物は〔ビス(トリブロ
モネオペンチル)テレフタレート〕であると同定され
た。
【0051】(比較合成例3)合成例2の無水コハク酸
100gに代えて無水フタル酸148gを使用し、その
他は合成例2と同様に脱水反応を行った。キシレンの還
流下で12時間反応した後、内容物を80℃に冷却し、
200gの熱水で2回有機相を洗浄した。これにメタノ
ール300gを加えて室温まで冷却し、析出した結晶を
濾過し、減圧下80℃で乾燥させると、白色粉末490
gが得られた。この化合物のIR分析では、1726.
0cm-1にエステル性カルボニルの伸縮振動に基づく吸
収が確認された。また、合成例1と同様の条件によるG
PC分析では、単一ピークであった。比較合成例2と同
様の条件によるDTA分析により融点を測定したとこ
ろ、117.1〜119.9℃であった。酸素フラスコ
燃焼法によりこの化合物の臭素含有率を測定したとこ
ろ、理論値の61.5%に対して61.3%であった。
【0052】これらのことより、この化合物は〔ビス
(トリブロモネオペンチル)フタレート〕であると同定
された。
【0053】(比較合成例4)攪拌機、検水管及び還流
管、温度計、並びに窒素導入管を有するフラスコに、合
成例1と同じトリブロモネオペンチルアルコール390
g、無水トリメリット酸77g、p−トルエンスルホン
酸9g及びキシレン200gを仕込み、窒素を導入しな
がら加熱した。内温が130℃になった時点では無水ト
リメリット酸は完全溶解せず系内は不均一であったが、
検水管には反応により生成した水が留出し始めた。キシ
レンの還流下1時間で系内は均一になり、更に6時間反
応すると検水管に14gの水が捕捉された。内容物を8
0℃まで冷却した後、200gの熱水で2回洗浄した。
これにイソプロピルアルコール100gを加え、攪拌し
ながら徐冷した。析出した結晶を濾過し、減圧下80℃
で乾燥させると、白色粉末状の結晶150gが得られ
た。この化合物の融点は114〜118℃であり、酸素
フラスコ燃焼法による臭素含有率は63.1%であっ
た。これらの分析値は米国特許第3,772,342号
に記載の実施例4の化合物の分析値と良く一致してい
た。これらのことより、〔トリス(トリブロモネオペン
チル)トリメリテート〕であることが確認された。
【0054】(合成例7)攪拌機、温度計、検水管及び
還流管、窒素導入管を備えたフラスコに、合成例1と同
じトリブロモネオペンチルアルコール325g及びトル
エン200gを仕込み、窒素を導入しながらトルエン還
流下で脱水を行った。内容物を90℃に冷却した後、無
水塩化アルミニウム1.5gを投入して完全に溶解させ
た。検水管を取り去り、還流管をフラスコに直接取りつ
けた後、2,2−ビス(クロロメチル)−1,3−プロ
パンジイルビス(ジクロロホスフェート)100gをト
ルエン100gで希釈したものを30分で滴下した。滴
下と同時に塩化水素ガスを発生し、気化熱で内温が低下
したため僅かに加熱しながら温度を90〜95℃に保っ
た。滴下終了後、トルエンの還流下で5時間反応すると
塩化水素ガスの発生は殆どなくなった。60〜80℃の
温度で内容物を水300gで3回洗浄した後、80℃に
保ちながらイソプロピルアルコール500gを添加し
た。攪拌を行いながら放冷し、析出した粉末を濾過して
乾燥すると、白色粉末300gが得られた。この化合物
のIR分析では、リン酸エステル基に由来する128
8.2cm-1にP=Oの伸縮振動、並びに1047.2
cm-1及び1022.1cm-1にP−Oの伸縮振動に基
づく吸収が確認された。また、NMR測定では、3.5
3ppmにトリブロモネオペンチル基の臭素原子に隣接
するメチレン水素の一重線、3.68ppmにジクロロ
ネオペンチル基の塩素原子に隣接するメチレン水素の一
重線、及び4.22ppmにトリブロモネオペンチル基
とジクロロネオペンチル基のリン酸エステルの酸素原子
と結合したメチレン水素の一重線が、面積比でほぼ2
8:4:12で観測された。以上のことよりこの化合物
は、表1のNo.6のトリブロモネオペンチルアルコー
ル誘導体(2,2−ビス(クロロメチル)1,3−プロ
パンジイルビス〔ビス(トリブロモネオペンチル)ホス
フェート)〕と同定された。
【0055】(実施例1〜6、比較例1〜5)PP樹脂
(ユニオンポリマー(株)製,UPポリプロME−23
0)100部に、表2及び表3に示すように、合成例1
〜7の難燃剤または難燃剤と三酸化アンチモンを加え、
190℃の温度で6分間混練りして実施例1〜11の難
燃性熱可塑性樹脂を得た。また、合成例1〜7の難燃剤
に代えて、ヘキサブロモシクロドデカン(以下「HBC
D」と略称することがある。以下の略称も同じ。グレイ
ト・レイクス・ケミカル社製:CD−75P)、ビス
(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールAエ
ーテル(DBP−TBA,帝人化成(株)製:FG−3
100)、デカブロモジフェニレンオキサイド(DBD
POグレイト・レイクス・ケミカル社製:DE−8
3)、ビス(トリブロモネオペンチル)アジペート(B
TBNPA,比較合成例1)、トリス(トリブロモネオ
ペンチル)ホスフェート(TTBNPP,大八化学工業
(株)製:CR−900)、ビス(トリブロモネオペン
チル)フタレート(BTBNPP,比較合成例3)、エ
チレンビステトラブロモフタルイミド(EBTBPI,
アルベマール社製:BT−93)、ビス(トリブロモネ
オペンチル)テレフタレート(BTBNPTP,比較合
成例2)、トリス(トリブロモネオペンチル)トリメリ
テート(TTBNPTM,比較合成例4)を用い、比較
例1〜12の熱可塑性樹脂を得た。これらの樹脂を用い
てテストピースを作成し、後述する試験方法に従って難
燃性、耐熱性、耐光性試験及びブリードアウトの測定を
行った。その結果を表2及び表3に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】表2及び表3から明らかなように、実施例
1〜11の難燃性熱可塑性樹脂は比較例1〜12の樹脂
と同等又はそれ以上の難燃性を示した。また、耐熱性、
耐光性、ブリード性の点に於いては、実施例1〜11の
難燃性熱可塑性樹脂は何れも比較例1〜12の樹脂より
も優れていた。
【0059】(実施例12〜16、比較例13〜17)
HI−PS(新日鉄化学(株)製:エスチレンH−6
5)樹脂100部に、表4に示すように、合成例1〜4
の難燃剤または難燃剤と三酸化アンチモンを加え、20
0℃で6分間混練りし、実施例12〜16の難燃性熱可
塑性樹脂を得た。
【0060】また、合成例1〜4の難燃剤に代えて、D
BP−TBA、DBDPO、BTBNPAを用い、比較
例13〜17の熱可塑性樹脂を得た。これらの樹脂を用
いてテストピースを作成し、難燃性、耐熱性及び耐光性
テストを行った。結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】表4から明らかなように、実施例12〜1
6の難燃性熱可塑性樹脂は比較例13〜17の樹脂と同
等又はそれ以上の難燃性、熱変形温度を示した。また、
耐熱性、耐光性、ブリード性の点に於いては、実施例1
2〜16の難燃性熱可塑性樹脂は何れも比較例13〜1
7の樹脂よりも優れていた。
【0063】(実施例17〜19、比較例18〜20)
ABS(宇部サイコン(株)製;サイコラックT−11
001)樹脂100部に、表5に示すように、合成例2
〜4の難燃剤と三酸化アンチモンを加え、200℃で6
分間混練りし、実施例17〜19の難燃性熱可塑性樹脂
を得た。また、合成例2〜4の難燃剤に代えて、トリブ
ロモネオペンチルアルコール及びBTBNPAを用い、
比較例18〜20の熱可塑性樹脂を得た。これらの樹脂
を用いてテストピースを作成し、後、テストピースを作
成し、酸素指数(LOI値)の測定と耐熱性、耐光性試
験を行った。結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】表5から明らかなように、実施例17〜1
9の難燃性熱可塑性樹脂は比較例20の樹脂と同等又は
それ以上のLOI値を示した。また、耐熱性、耐光性の
点に於いては、実施例17〜19の難燃性熱可塑性樹脂
は何れも比較例19〜20の樹脂よりも優れていた。
【0066】(実施例20〜25、比較例21〜25)
HI−PS樹脂(新日鉄化学(株)製、エスチレンH−
65)とABS樹脂(宇部サイコン(株)製、サイコラ
ックT−11001)からなるスチレン系樹脂100
に、合成例5及び7の難燃剤及び難燃剤と三酸化アンチ
モンを加え、200℃の温度で6分間混練りして実施例
20〜25の難燃性熱可塑性樹脂を得た。
【0067】また合成例5及び7の難燃剤に代えて、H
BCD、DBP−TBA、DBDPOを用い、比較例2
1〜25の熱可塑性樹脂を得た。これらの樹脂を用いて
テストピースを作成し、難燃性、耐熱性、耐光性試験及
びブリードアウトの測定を行った結果を表6に示す。
【0068】
【表6】
【0069】表6から明らかなように、実施例20〜2
5の難燃性熱可塑性樹脂は比較例21〜25の樹脂と同
等又はそれ以上の難燃性を示した。また、耐熱性、耐光
性、ブリード性の点に於いては、実施例20〜25の難
燃性熱可塑性樹脂は何れも比較例21〜23,及び比較
例25の樹脂よりも優れていた。
【0070】なお、試験方法は以下のとおりである。 〈難燃性試験〉1/8インチの厚みのテストピースを作
成して、UL−94垂直燃焼法に従って行った。
【0071】〈LOI値測定〉1/8インチの厚みのテ
ストピースを作成して、JIS K−7201に従って
行った。
【0072】〈耐熱試験〉1/16インチ厚の成形板に
樹脂をはさみ、試験温度の熱プレスで圧力150kg/
cm2 で20分間加熱後の色の変化を目視により判定し
た。
【0073】〈耐光性試験〉キセノン・ウェザオ・メー
ター(アトラス社製、アトラスCi35A)を用いて、
0.39W/m2 の照度で300時間照射後、色調変化
を色差計で測定した(△E値)。温度はブラックパネル
により測定して所定の温度に調整し、湿度は調整を行わ
ず雰囲気とした。
【0074】〈熱変形温度〉JIS K−6871に従
って行った。
【0075】〈ブリード性試験〉成形した試験片を秤量
してから、100℃のオーブンに7日間置いた後、ジオ
キサンを湿したガーゼで表面を良く拭いて、更に1時間
100℃のオーブンに入れて恒量とした後秤量した。試
験片の試験前後の重量変化と、ベース樹脂に三酸化アン
チモンのみを配合した同寸法の成形品を同様に処理した
ものをブランクの重量変化として次式によりブリード率
(R)%を計算した。 R=100×(( 試験片重量変化)-( ブランク重量変化) )
/(樹脂中の難燃剤含有量) 。
【0076】<ブリード試験:外観> ブリード試験
後肉眼判定した。
【0077】○:光沢あり △:くもりあり ×:白化あり

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂100重量部に対して、下
    記一般式(I)で表わされる少なくとも一以上のトリブ
    ロモネオペンチルアルコール誘導体を2〜50重量部で
    含有することを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。 【化1】 ここで、n=2又は4であり、Xは下記の式で表される
    基であり、 【化2】 また、m=0〜2の整数、YはCl基又はBr基であ
    る。
  2. 【請求項2】 前記トリブロモネオペンチルアルコール
    誘導体が、前記化2に於ける前記(II)〜(IV)の基を有す
    る化合物であり、該化合物の融点が100℃以上である
    ことを特徴とする請求項1記載の難燃性熱可塑性樹脂組
    成物。
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