JPH08105572A - サーモスタット式湯水混合水栓 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 サーモスタットエレメントを用いた湯水混合
水栓において設定温度変更時等における混合水の温度を
安定させ、突然熱湯が吐出して火傷等を起こすことなど
がないようにする。 【構成】 第１コイルスプリング５２の付勢力に抗する
位置で混合弁４１を湯弁口５５側へ付勢する第２コイル
スプリング５３を有するとともに、第１コイルスプリン
グ５２と第２コイルスプリング５３のうちサーモスタッ
トエレメント３０の感温部側のコイルスプリングが水温
と湯温の中間の温度に変態点を持った形状記憶合金から
なる感温スプリングであり、混合水温度が変態点の温度
以上になったとき第１コイルスプリングと第２コイルス
プリングの付勢力のバランスの変化で混合弁４１を移動
させて水弁口５６を開かしめる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、サーモスタットエレメ
ントを用いた湯水混合水栓において設定温度変更時等に
おける混合水の温度を安定させる構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】台所，浴室等に設けられているサーモス
タット式湯水混合水栓は、周知のように、内部の湯水混
合流路にワックスの熱膨脹・収縮により伸縮するサーモ
スタットエレメントが設けられ、該サーモスタットエレ
メントの伸縮により混合弁を移動させて湯弁口と水弁口
の開度が調節され常に所望温度の混合水が吐出できるよ
うにしている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところがこのようなワ
ックスタイプのサーモスタットエレメントは、温度変化
に対する伸縮が比較的緩慢であるため、給水給湯圧力変
化や、給湯温度の変化、設定温度の変更時等に対する追
従が遅く、一時的に冷水又は熱湯が吐水される所謂るア
ンダーシュート，オーバーシュートが大きいことが問題
視されていた。特に、オーバーシュートは最高温度が高
いためこのように追従が遅いと熱湯がいきなり吐出し火
傷の危険があった。

【０００４】そこで温度追従性を上げるために実開昭５
７−３５５６７のものでは形状記憶合金製のコイルスプ
リングを用いている。しかし、これでは温度に対する追
従性が過敏であるために冷水と熱湯を交互に吐水し続け
る所謂るハンチングが発生し易いという問題がある。さ
らに、給水圧と給湯圧の差が大きいとスプリングの弾発
力に水勢が打ち勝ってしまい、混合弁を正確な位置に安
定させることができないという問題があった。

【０００５】そこで本発明は、給水・給湯圧力の差の影
響を受け難く、オーバーシュートによる危険温度の熱湯
の吐出を防止し得るサーモスタット式湯水混合水栓を提
供しようとするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】そのために本発明は、温
度調節ハンドルを回すことにより水弁口と湯弁口の間を
移動する混合弁と、感温部が混合流路内に位置し混合湯
の温度により伸縮するワックスタイプのサーモスタット
エレメントと、混合弁を水弁口側へ付勢する第１コイル
スプリングより構成されるサーモスタット式湯水混合水
栓において、第１コイルスプリングの付勢力に抗する位
置で混合弁を湯弁口側へ付勢する第２コイルスプリング
を有するとともに、第１コイルスプリングと第２コイル
スプリングのうち前記サーモスタットエレメントの感温
部側のコイルスプリングが水温と湯温の中間の温度に変
態点を持った形状記憶合金からなる感温スプリングであ
り、混合水温度が変態点の温度以上になったとき第１コ
イルスプリングと第２コイルスプリングの付勢力のバラ
ンスの変化で混合弁を移動させて水弁口を開かしめるよ
うにしたことを特徴とする。

【０００７】また本発明は上記サーモスタット式湯水混
合水栓において、感温スプリングが水弁口と湯弁口より
下流側の混合流路内に配置されているとともに、該混合
流路の感温スプリングの上流に湯水の混合を補助する障
流片を設けてなることを特徴とする。

【０００８】さらに本発明は上記サーモスタット式湯水
混合水栓において、円筒状の混合弁の中心に感温スプリ
ングの荷重を受部材を介してピポット状に軸支してなる
ことを特徴とする。

【０００９】

【作用】低温域で吐水後、温度調節ハンドルを操作し高
温側へ設定を変更すると混合弁が移動して水弁口を閉じ
湯弁口を全開させ、熱湯のみを混合流路に流出させる。
そのときサーモスタットエレメントは反応が緩慢なので
徐々にしか伸長しないのに対し形状記憶合金からなる感
温スプリングは即時反応し混合弁を移動させて湯弁口を
絞り水弁口を開かしめるので熱湯の流出が抑えられる。
そしてサーモスタットエレメントがその後を追うように
伸長し本来の所望温度の混合弁を吐水できるようにな
り、給水・給湯圧力の差が変化しても混合水の温度に殆
んど影響を与えない。また、障流片を設けることにより
混合流路内の湯水の混合が促進されるので感温スプリン
グの全体を混合水が均一に加熱または冷却できるように
なり該感温スプリングの温度の偏重による作動不良のお
それをなくす。さらに感温スプリングの荷重がピポット
状の軸支により常に混合弁の中心に負荷するので混合水
の温度ムラにより感温スプリングに偏荷重が発生したと
しても該混合弁は常に安定した状態で作動する。

【００１０】

【実施例】次に図と共に本発明の一実施例を説明する。
図１にこのサーモスタット式湯水混合水栓の要部を縦断
面にて示し、図中１は浴室壁面等より突設された給湯
管、２は給水管である。水栓本体３は該給湯管１と給水
管２に支持されている。水栓本体３内は、給湯管１に連
通する湯室４と、給水管２に連通する水室５と、混合室
６が区画形成されている。７は該混合室６と連通し該混
合室６中の混合水を吐水管８に吐出させる際に開閉操作
するため該水栓本体３の前面中央部に設けられた吐水ハ
ンドル、９は該吐水管８より吐出する混合水の温度を所
望に調節し得るように該水栓本体３の一端に設けられた
温度調節ハンドルで、該温度調節ハンドル９の外周面に
は温度表示用の目盛１０が設けられているほか該温度調
節ハンドル９の熱湯方向への回転を規制するプッシュボ
タン１１が設けられている。１２は水栓本体３の一端部
外周に設けられた温度指標用のマークポイントである。

【００１１】温度調節ハンドル９のハンドル軸１３は水
栓本体３の一端部内に設けられた筒状のボンネット１４
中に位置し、該ハンドル軸１３の外周にはスプライン溝
１５が形成されていると共に、該ハンドル軸１３中にコ
イル状の押バネ１６の一端が嵌挿されている。１７はボ
ンネット１４中に螺合された中空筒状の螺進筒で、該螺
退筒１７の一端部内周１８に前記スプライン溝１５と噛
合するスプライン溝が形成され、該ハンドル軸１３が回
転するにつれて該螺退筒１７は回転しボンネット１４中
を左右に螺進し得る。螺進筒１７の他端部内周には止輪
１９が止着され該止輪１９部内に押圧体２０が進退自在
に設けられ、該押圧体２０は前記押バネ１６および押バ
ネ２１により付勢されている。

【００１２】３０は水栓本体３内中心にサーモスタット
カートリッジケース３１および環状シール材３２により
進退動自在に支持されたサーモスタットエレメントで、
該サーモスタットエレメント３０内には温度により膨脹
・伸縮するワックスが充填されその膨脹・収縮に従い伸
縮軸３３が出没動する。そして該伸縮軸３３は前記押圧
体２０の中心に形成された凹孔２２中に遊嵌している。

【００１３】サーモスタットカートリッジケース３１の
水室５と混合室６の中間に位置する筒部分３５には混合
流路３６が形成されていると共に該混合流路３６中にサ
ーモスタットエレメント３０の感熱部３４が位置してい
る。また、湯室４と水室５の中間部にＯリング４０を設
け該Ｏリング４０中に混合弁４１を進退自在に設けてい
る。該混合弁４１は図５にも示したように輪切にした蓮
根状の形態を呈していて中心孔４２の周囲に複数の通水
孔４３が透設されている。そして該中心孔４２の開口縁
４４は漏斗状に面取りがなされている。４５はテーパ状
部４６が該開口縁４４に当るように端部軸４９を該中心
孔４２に遊嵌し他端の帽状部４７をサーモスタットエレ
メント３０の基端部３８に嵌着してなる受部材で、該受
部材４５の端部外周に混合流路３６内に延びる障流片４
８が放射状に多数形成されている。

【００１４】湯室４内にはバネ座５０が設けられ該バネ
座５０の中心孔５１に第１コイルスプリング５２の一端
を嵌挿し受止している。そして該第１コイルスプリング
５２の他端を混合弁４１の中心孔４２に遊嵌された端部
軸４９に係止して該混合弁４１をサーモスタットエレメ
ント３０方向に付勢している。また、５３は混合流路３
６中に位置するように感熱部３４の外周に設けられた第
２コイルスプリングで、該第２コイルスプリング５３の
弾性により受部材４５を押圧している。

【００１５】そしてバネ座５０の端面と混合弁４１との
端縁の間に湯室４内の湯を通水孔４３中に流し得る湯弁
口５５が形成され、該混合弁４１の他端縁とサーモスタ
ットカートリッジケース３５の水室５に臨む部分には該
水室５内の水を混合流路３６に流し得る水弁口５６が形
成され、前記第１コイルスプリング５２はその弾性によ
り湯弁口５５を拡げ水弁口５６を狭めるように作用し、
反対に第２コイルスプリング５３はその弾性により湯弁
口５５を狭め水弁口５６を拡げるように作用し、両コイ
ルスプリングのバランスにより混合弁４１が移動する。

【００１６】しかして、第２コイルスプリング５３は変
態温度を水温と湯温の中間の温度である５０℃に設定し
た形状記憶合金からなる感温スプリングとする。形状記
憶合金はすでに知られているように所定の変態温度（こ
れはその合金の混合比率を変えることで自由に設定でき
る。）より低い温度にては図６の応力・ひずみ線図に
（ａ）に示したように塑性変形し、変態温度より高い温
度にては（ｂ）に示したように弾性変形する特異な性質
を持った合金で、ニッケル・チタン合金がその代表的な
ものであるが、その他、銅・亜鉛，金・カドミニウムな
どマルテンサイト変態を起こし形状記憶作用を持った合
金は十数種類知られている。本発明ではこれらの形状記
憶合金を素材として感温スプリングを作りこれを混合流
路３６の障流片４８の下流に配置する。

【００１７】このように構成した湯水混合水栓では、図
１に示したように温度調節ハンドル９を３０℃以下の低
温域に設定して吐出させていた後に、該温度調節ハンド
ル９を回転操作して例えば４０℃程度に温度設定する
と、図２に示したように押圧体２０，サーモスタットエ
レメント３０，混合弁４１が後退動し、湯弁口５５が大
きく開いて湯室４内の５０℃以上の湯が混合流路３６に
流入する。このため熱容量の小さい第２コイルスプリン
グ５３は変態点以上の熱湯にさらされることにより短時
間で弾性を復元し伸長することにより、図３に示したよ
うに受部材４５を押圧し混合弁４１を押し戻して湯弁口
５５の開度を絞り熱湯の流出を抑える。この間にサーモ
スタットエレメント３０はその温度変化を感知して内部
のワックスが膨脹し伸縮軸３３の突出量を増大させるこ
とで、図４に示したように伸長し混合弁４１を適当な位
置に正して湯弁口５５，水弁口５６の開度が本来の状態
に調整され混合水の温度が温度調節ハンドル９の設定温
度に調節されるようになる。このようにサーモスタット
エレメント３０は内部のワックスの膨張，収縮により伸
縮軸３３を出没させるものであるので、コイルスプリン
グのように外力により伸縮することがない。このため給
水，給湯圧力の変化により混合弁４１が移動し吐水温度
に影響を及ぼすようなことがない。

【００１８】また第２コイルスプリング５３は受部材４
５のテーパ状部４６により混合弁４１を真直に進退動さ
せスムースな温度調節ができるようにしている。また、
障流片４８は混合流路３６内における湯水の混合を促進
するのでコイルスプリング５３を均一加熱できるように
なる。

【００１９】なお第２コイルスプリング５３は形状記憶
合金の変態点以下の温度では塑性変形するので、サーモ
スタットエレメント３０による自動温度調節機能に悪影
響を及ぼすこともない。

【００２０】

【発明の効果】このように本発明の湯水混合水栓は、形
状記憶合金からなる感温スプリングをサーモスタットエ
レメントとともに並列的に設けたことにより該サーモス
タットエレメントが作動する以前に該感温スプリングが
熱湯を感知して湯弁口を絞り熱湯の流出を抑えられるよ
うにしたので、所謂るオーバーシュートにより危険温度
の熱湯が吐出することなく安全に使用できる有益な効果
がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るサーモスタット式湯水混合水栓の
要部の縦断面図。

【図２】図１の作動状態図。

【図３】図１の作動状態図。

【図４】図１の作動状態図。

【図５】サーモスタット式湯水混合水栓の要部の分解斜
視図。

【図６】形状記憶合金の応力ひずみ線図。

【符号の説明】

１ 給湯管 ２ 給水管 ３ 水栓本体 ４ 湯室 ５ 水室 ６ 混合室 ７ 吐水ハンドル ８ 吐水管 ９ 温度調節ハンドル １７ 螺進筒 ２０ 押圧体 ３０ サーモスタットエレメント ３３ 伸縮軸 ３４ 感熱部 ３６ 混合流路 ４１ 混合弁 ４２ 中心孔 ４３ 通水孔 ４４ 開口縁 ４５ 受部材 ４８ 障流片 ５０ バネ座 ５２ 第１コイルスプリング ５３ 第２コイルスプリング ５５ 湯弁口 ５６ 水弁口

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【手続補正書】

【提出日】平成７年５月１８日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】特許請求の範囲

【補正方法】変更

【補正内容】

【特許請求の範囲】

【手続補正２】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】０００８

【補正方法】変更

【補正内容】

【０００８】さらに本発明は上記サーモスタット式湯水
混合水栓において、円筒状の混合弁の中心に感温スプリ
ングの荷重を受部材を介してピボット状に軸支してなる
ことを特徴とする。

【手続補正３】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】０００９

【補正方法】変更

【補正内容】

【０００９】

【作用】低温域で吐水後、温度調節ハンドルを操作し高
温側へ設定を変更すると混合弁が移動して水弁口を閉じ
湯弁口を全開させ、熱湯のみを混合流路に流出させる。
そのときサーモスタットエレメントは反応が緩慢なので
徐々にしか伸長しないのに対し形状記憶合金からなる感
温スプリングは即時反応し混合弁を移動させて湯弁口を
絞り水弁口を開かしめるので熱湯の流出が抑えられる。
そしてサーモスタットエレメントがその後を追うように
伸長し本来の所望温度の混合弁を吐水できるようにな
り、給水・給湯圧力の差が変化しても混合水の温度に殆
んど影響を与えない。また、障流片を設けることにより
混合流路内の湯水の混合が促進されるので感温スプリン
グの全体を混合水が均一に加熱または冷却できるように
なり該感温スプリングの温度の偏重による作動不良のお
それをなくす。さらに感温スプリングの荷重がピボット
状の軸支により常に混合弁の中心に負荷するので混合水
の温度ムラにより感温スプリングに偏荷重が発生したと
しても該混合弁は常に安定した状態で作動する。

【手続補正４】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１１

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１１】温度調節ハンドル９のハンドル軸１３は水
栓本体３の一端部内に設けられた筒状のボンネット１４
中に位置し、該ハンドル軸１３の外周にはスプライン溝
１５が形成されていると共に、該ハンドル軸１３中にコ
イル状の押バネ１６の一端が嵌挿されている。１７はボ
ンネット１４中に螺合された中空筒状の螺進筒で、該螺
進筒１７の一端部内周１８に前記スプライン溝１５と噛
合するスプライン溝が形成され、該ハンドル軸１３が回
転するにつれて該螺進筒１７は回転しボンネット１４中
を左右に螺進し得る。螺進筒１７の他端部内周には止輪
１９が止着され該止輪１９部内に押圧体２０が進退自在
に設けられ、該押圧体２０は前記押バネ１６および押バ
ネ２１により付勢されている。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 温度調節ハンドルを回すことにより水弁
   口と湯弁口の間を移動する混合弁と、感温部が混合流路
   内に位置し混合湯の温度により伸縮するワックスタイプ
   のサーモスタットエレメントと、混合弁を水弁口側へ付
   勢する第１コイルスプリングより構成されるサーモスタ
   ット式湯水混合水栓において、第１コイルスプリングの
   付勢力に抗する位置で混合弁を湯弁口側へ付勢する第２
   コイルスプリングを有するとともに、第１コイルスプリ
   ングと第２コイルスプリングのうち前記サーモスタット
   エレメントの感温部側のコイルスプリングが水温と湯温
   の中間の温度に変態点を持った形状記憶合金からなる感
   温スプリングであり、混合水温度が変態点の温度以上に
   なったとき第１コイルスプリングと第２コイルスプリン
   グの付勢力のバランスの変化で混合弁を移動させて水弁
   口を開かしめるようにしたことを特徴とするサーモスタ
   ット式湯水混合水栓。
2. 【請求項２】 感温スプリングが水弁口と湯弁口より下
   流側の混合流路内に配置されているとともに、該混合流
   路の感温スプリングの上流に湯水の混合を補助する障流
   片を設けてなることを特徴とする請求項１に記載のサー
   モスタット式湯水混合水栓。
3. 【請求項３】 円筒状の混合弁の中心に感温スプリング
   の荷重を受部材を介してピポット状に軸支してなること
   を特徴とした請求項１または２に記載のサーモスタット
   式湯水混合水栓。