JPH08104797A - 構造材、成形体、成形体の処理方法 - Google Patents

構造材、成形体、成形体の処理方法

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JPH08104797A
JPH08104797A JP7197761A JP19776195A JPH08104797A JP H08104797 A JPH08104797 A JP H08104797A JP 7197761 A JP7197761 A JP 7197761A JP 19776195 A JP19776195 A JP 19776195A JP H08104797 A JPH08104797 A JP H08104797A
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宏 大西
Takahiko Terada
貴彦 寺田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 廃棄時に減容化を促進する熱可塑性の構造
材、この構造材を用いた成形体、例えばモールドモー
タ、およびこれらの分解方法を提供する。 【解決手段】 モールドステータ1、ブラケット2、回
転子3、機器のシャーシ等への取付孔5を複数個有する
フランジ部4、鉄芯6、通電する巻線7、熱可塑性芳香
族ポリエステルと脂肪族ポリエステルからなる混合体を
バインダとして含むと共に、巻線7と鉄芯6をモールド
する構造材であるモールド材8、回転子3の一部を形成
する回転子シャフト9、このシャフト9の一端を軸支す
るベアリング10である。この構成のモータの廃棄時に
は、モールドステータ1を塩基と親水性溶媒を含む分解
溶液に一定期間浸積させてモールドの強度を低下させた
後に、モールド材8を取り除き有価物を取り出す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、民生機器、産業機
器、事務機器等に使用される構造材に関して、特に使用
終了後に減容化と再生処理が容易な構造材、更にこの構
造材を用いたモールドステータ、記録媒体などの成形
体、およびその成形体の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境が問題になっている。そ
の中でも資源枯渇をできるだけ避ける為に廃棄物から有
価物をできるだけ回収して再生利用することが、またゴ
ミの埋め立て場が極端に少なくなっていることに対応す
る為に廃棄物の減容化が望まれている。特に、プラスチ
ックは埋め立て後の減容化が殆ど進まず、従来では焼却
により減容化することが検討されている。
【0003】ところで、金属類の少なくとも一部をプラ
スチックをバインダとして含む構造材で覆った成形体
は、電気絶縁性に優れると共に取り扱いも容易であるの
で一般によく使用されている。例えば、モールドモータ
が知られている。モールドモータは民生機器、産業機
器、および事務機器等への利用が急速に拡大している。
従来、この種の交流モータ、ブラシレス直流モータなど
で使用されるモールドモータのモールドステータは、例
えば特開昭61−214740号公報に示すような構成
が一般的である。その構成について図5及び図6を用い
て以下に説明する。
【0004】図5は従来のモールドステータの外観を示
す斜視図であり、図6はモールドされる前の構成を示す
斜視図である。これらの図に示すように、このモールド
ステータは、スロットを有する鉄芯101の内側に絶縁
体102を介して巻線103を巻装するとともに、その
巻線103の端末部とリード線104とを接続する配線
パターン105をプリント基板106に設け、そのプリ
ント基板106を絶縁体102の上端部に装着した状態
で、モールド材107によりステータの外装を形成した
構成を有する。このようなモールドモータにおいて使用
されるモールド材107は、例えばポリエチレンテレフ
タレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンな
どの熱可塑性樹脂、または不飽和ポリエステル、ビニル
エステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂をバ
インダ材として用い、更に炭酸カルシウム、タルク、カ
ーボンブラックなどの添加材を加えたものである。
【0005】この種のモールドモータは、メンテナンス
性や静音性に優れ、製造時の自動化も容易であることか
ら使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記モール
ドモータにおいては、例えば鉄心や巻線などの金属類は
モータ使用によりほとんど変質しないため再利用可能な
材質として価値が高い。したがって、モールドモータを
廃棄する場合、資源の有効利用を図る観点から、モール
ド材と鉄芯や巻線などの有価物とを分離して再利用する
ことが望ましい。このような場合、一般の廃棄物処理で
は、まず対象物をシュレッダーにより破砕した後、その
破砕片から有価物のみを選別して取り出すことを行って
いた。
【0007】ところが、前述したような従来のモールド
ステータにおいては、破砕時にモールド材が金属類に付
着していることが多く、また金属類を変質させずにモー
ルド材のみを分解するのが困難であったため、その後の
選別時に金属類だけを効率良く十分に分離することがで
きないという問題があった。つまり、従来のモールドス
テータでは、廃棄時において鉄芯や巻線などの金属類を
再生、再利用するのが難しいという問題があった。
【0008】なお、以上の説明はモールドモータについ
てのものであるが、廃棄処理時におけるモールド材と有
価物との分離の困難性やモールド材の難分解性に起因す
る前述したような問題は、モールドモータのみに限ら
ず、モールド材を用いる、例えばプラスチック容器、磁
気テープや光磁気ディスク等の記録媒体などの成形体に
共通するものである。
【0009】本発明は、このような従来のモールド材を
用いる成形体等の課題を考慮し、本来の製品としての使
用後に、減容化が可能な構造材、この構造材を用いた、
例えば鉄芯や巻線などの有価物のリサイクルが容易なモ
ールドモータ、記録媒体などの成形体、ならびにその成
形体に適した処理方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、本
発明は次のように構成した。
【0011】すなわち、本発明の構造材は、熱可塑性芳
香族ポリエステルを脂肪族ポリエステルより多く含む混
合体を20重量部以上混入したことを特徴とする。特
に、この脂肪族ポリエステルが、ポリカプロラクトン、
ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリ
オール、及びポリ乳酸のいずれか、またはこれら複数種
の混合体であることが好ましい。
【0012】また、本発明の成形体は、ポリカプロラク
トン、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクト
ントリオール、及びポリ乳酸のいずれか、またはこれら
の複数種と、熱可塑性芳香族ポリエステルとの混合体を
20重量部以上混入した構造材を用いて成形したことを
特徴とする。
【0013】また、成形体が記録媒体であって、この構
造材を用いて基体を構成し、その表面に磁気記録材また
は光記録記録材を配置したことを特徴とする。
【0014】また、成形体がモールドモータであって、
熱可塑性芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルとか
らなる混合体をバインダとして含むモールド材を用いて
鉄芯と巻線をモールドしたことを特徴とする。この場
合、使用時の環境安定性をより高める手段として、更に
そのモールド材の少なくとも一部を熱硬化性モールド材
で覆ってもよい。
【0015】また、本発明の成形体は、モータの鉄芯と
巻線との間に設けられる絶縁体に対して、ポリカプロラ
クトン、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラク
トントリオール、及びポリ乳酸のいずれか、またはこれ
らの複数種と、熱可塑性芳香族ポリエステルとの混合体
を20重量部以上混入した構造材を、形成したことを特
徴とする。
【0016】更に本発明を適用しうる他の成形体の例と
しては、モールドモータ、モールドトランス、プラスチ
ック製の容器や箱、電気部品や自動車における各種成形
体などをあげることができる。
【0017】本発明の成形体の分解方法は、前述の熱可
塑性芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルとを含む
混合体を20重量部以上混入した構造材を用いた成形体
を、少なくとも塩基と親水性溶媒とを含む分解溶液に浸
漬すると共に、その分解溶液の沸点よりも低い温度で加
熱してその構造材の少なくとも一部を分解して成形体を
減容化する。
【0018】次に、本発明の作用効果を説明する。
【0019】本発明の構造材は、前述したように熱可塑
性芳香族ポリエステルを脂肪族ポリエステルより多く含
む混合体を含む。その結果、脂肪族ポリエステルが粒子
状に熱可塑性芳香族ポリエステル内に分散配置されるこ
とが予想されるが、これを分析した結果、脂肪族ポリエ
ステルのみから粒径が100μm程度以上の粒子は殆ど
なく、数10μm程度以下の微粒子で分散されている。
このことから、前記混合体では、脂肪族ポリエステルと
熱可塑性芳香族ポリエステルとの分散が良好であり、部
分的に熱可塑性芳香族ポリエステルのエステル結合部に
隣接して脂肪族ポリエステルが配置されていると考えら
れる。つまり、脂肪族ポリエステルを介して熱可塑性芳
香族ポリエステルの主鎖に含まれるエステル結合部の分
解が容易な構造になっている。
【0020】したがって、構造材に含まれる脂肪族ポリ
エステルを加熱分解または加溶媒分解することで、熱可
塑性芳香族ポリエステルに含まれるエステル結合部も同
時に分解することができる。これにより、モールド材の
機械的強度を大きく低下させることができると共に、そ
の大部分を除去して容易に減容化できる。
【0021】この容易さは、構造材に熱可塑性芳香族ポ
リエステルと脂肪族ポリエステルを含む混合体を20重
量部以上含むことで顕著である。構造材の他の構成材と
しては、例えば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムな
どからなる粒子、またはガラス、ナイロンなどからなる
繊維がある。
【0022】また、一般的に脂肪族ポリエステルの融点
は芳香族ポリエステルよりも低いので、加熱成形後の自
然冷却による収縮を脂肪族ポリエステルが防止する働き
もあり、加熱後の収縮率の低い構造材を得ることもでき
る。
【0023】また、成形体の処理は、加溶媒分解時に、
少なくとも塩基と親水性溶媒とを含む分解溶液を用いる
と、脂肪族ポリエステルが一部加溶媒分解されながら溶
解すると共に、分解溶液に含まれる塩基によって熱可塑
性芳香族ポリエステルに含まれるエステル結合部をも室
温付近で加溶媒分解することとなる。したがって、構造
材の分解時に多大な加熱を必要とせず、その分解を更に
容易に行うことができる。特に、親水性溶媒を水と低級
アルコールの混合液で構成するとこの効果は顕著であ
る。
【0024】また、本発明の成形品は、前述の構造材を
用いて形成されているので、使用終了後は、その構造材
を加熱分解または加溶媒分解することにより、容易に機
械的強度を大きく低下させることができる。これによ
り、廃棄処理が容易な成形品が実現できる。
【0025】特に、前述の構造材を用いた成形体である
モールドモータにおいては、構造材であるモールド材の
加熱分解または加溶媒分解により機械的強度を大きく低
下させると共にその大部分を除去することができるの
で、シュレッダー処理をしなくても容易に構造材を除去
することができる。その結果、内包されていた鉄芯や巻
線などの有価物を簡単に取り出すことができ、これらの
有価物のリサイクルが容易になる。この場合、構造材で
あるモールド材が分解溶液でぬれている状態で剥離利す
ると機械的強度が最も低下しており、更に容易に分離が
できる。
【0026】また、本発明の記録媒体によれば、その基
体に前述した熱可塑性芳香族ポリエステルと脂肪族ポリ
エステルからなる混合体をバインダとして含んでいるの
で、当該磁気記録媒体を前述の分解溶液に浸積すること
により、その磁気記録層のみを回収することができる。
これにより、例えば使用済みまたは生産時に廃棄処理さ
れた磁気テープや磁気ディスク等の記録媒体から磁気記
録材または光記録材のみを容易に再生できてその再利用
が可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1形態例)まず、本発明の構造材であるモールド
材、成形体であるモールドモータ及びそれらの分解処理
方法の好適な第1の形態例を説明する。
【0028】図1は、本発明の成形体の形態例における
交流モータ(またはブラシレス直流モータ)であるモー
ルドモータの断面図を示すものである。図1において、
1はモールドステータ、2はブラケット、3は回転子、
4は機器のシャーシ等への取付孔5を複数個有するフラ
ンジ部、6は鉄芯、7は通電する巻線、8は熱可塑性芳
香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルとからなる混合
体をバインダとして含むと共に巻線7と鉄芯6を覆う構
造材であるモールド材、9は回転子3の一部を形成する
回転子シャフト、10はこのシャフト9の一端を軸支す
るベアリングである。本形態例ではフランジ部4をモー
ルド材8にて形成する例を示しているが、もちろん図5
に示す従来例と同様にフランジ部4のない構成にしても
よい。
【0029】このモールド材8では、脂肪族ポリエステ
ルは熱可塑性芳香族ポリエステルへの分散性が良好なの
で、熱可塑性芳香族ポリエステルのエステル結合部に隣
接して脂肪族ポリエステルが配置されている。つまり、
脂肪族ポリエステルを介して熱可塑性芳香族ポリエステ
ルの主鎖に含まれるエステル結合の分解が容易な構造に
なっている。したがって、このモールド材8において
は、脂肪族ポリエステルを加溶媒分解すると同時に熱可
塑性芳香族ポリエステルに含まれるエステル結合部をも
加溶媒分解できる。
【0030】熱可塑性芳香族ポリエステルは、イソフタ
ル酸、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ジフェ
ニルカルボン酸などの2官能性飽和酸と、エチレングリ
コール、プロピレングリコール、ジエチレングリコー
ル、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、ブタンジオールなどのジ
オール化合物の1種または2種以上との重合生成物であ
る。例えばポリエチレンテレフタレート(化1)、ポリ
ブチレンテレフタレート(化2)、ポリシクロヘキサン
テレフタレート(化3)、ポリブチレンナフタレート
(化4)である。
【0031】
【化1】
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
【化4】
【0035】また、前記脂肪族ポリエステルは、飽和ポ
リエステルであり、熱可塑性樹脂である。例えば(化
5)に示されるポリカプロラクトン、(化6)に示され
るポリ乳酸、(化7)に示されるポリグリコール酸、
(化8)に示されるポリカプロラクトンジオール、(化
9)に示されるポリカプロラクトントリオール、(化1
0)に示されるグリコールと脂肪族ジカルボン酸とから
なる共重合樹脂、ポリエチレンアジペート、更に3−ヒ
ドロキシプロピオナート、3−ヒドロキシブチレート、
3−ヒドロキシバリレート、3−ヒドロキシオクタノエ
ートなどの微生物生産合成共重合ポリエステル類であ
る。
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】特に、ポリカプロラクトン、ポリカプロラ
クトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、及び
ポリ乳酸が混練も容易であり、推奨される。
【0043】構造材であるモールド材8は、前述の熱可
塑性芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルとからな
る混合体のみで構成することもできるが、構造材100
重量部に対してこの混合体を20重量部以上で混入する
ことも出来る。20重量部未満だと、構造材へ分解溶液
の浸透が困難になり、減容化に時間がかかり過ぎるから
である。
【0044】この混合体以外に構造材に混入できるもの
として、例えばステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステ
アリン酸カルシウムなどの離型剤を、ヘキストワック
ス、カルナバワックス、パラフィンなどのワックス、チ
タン白、酸化クロム、カーボンブラックなどの各種着色
材などを、また樹脂特性を改善するために、ポリスチレ
ン、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂を混入することも
できる。
【0045】更にモールド成形時の機械的な強度を上げ
るために、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭
酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウ
ムなどの(亜)硫酸塩、クレー、マイカ、ガラスバルー
ン、モンモリロナイト、ケイ酸、カオリン、タルクなど
のケイ酸塩類、シリカ、珪燥土、酸化鉄、軽石バルー
ン、酸化チタン、アルミナなどの酸化物、水酸化アルミ
ニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、グラファ
イト、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維らの無機
質添加材や、木粉、もみ殻などの殻繊維、木綿、紙細
片、ナイロン繊維、木材セルロースなどの有機質添加材
を混入して構成できる。
【0046】混合体は、熱可塑性芳香族ボリエステルが
脂肪族ポリエステルよりも多く構成される。脂肪族ポリ
エステルがより多くなると機械的強度が大きく低下する
と共に、一般の使用時において加水分解が大きくなり、
使用条件が厳しくなるからである。特に混合体100重
量部のうちで、30重量部以下に脂肪族ポリエステルを
混入することが推奨される。
【0047】モールド材8に含まれる混合体100重量
部に対して、脂肪族ポリエステルは少なくとも3重量部
以上に調整される。なぜなら3重量部未満であると、脂
肪族ポリエステルを混合しているにも関わらず、混合量
が少なすぎるためか十分な速度で熱可塑性芳香族ポリエ
ステル部の主鎖を分解できなかったからである。
【0048】次に本発明のモールド材8の詳細な実施例
(実験例)を示す。この実験例では、以下に示すような
各モールド材8により試作したサンプルを用い、まず2
50℃程度で加熱成形して厚さ1mmの板状に注型し、
更に10mm×20mmの長方形に切削した試料を用い
て分解を確認した。 (サンプル例1)モールド材8を、(化1)で示される
ポリエチレンテレフタレート(三菱レイヨン(株)製、
商品名:ダイヤナイト、以後『PET』と略す)を80
重量部と、(化4)で示されるポリカプロラクトン(分
子量4万、ダイセル化学(株)製、商品名:プラクセ
ル)を20重量部の混合体のみで構成した。まず均一な
混合体を得るために280℃に加熱したニーダにPET
を入れて溶融させた後に、ポリカプロラクトンを混入し
て15分程度混練した。 (サンプル例2)モールド材8を、(化1)で示される
ポリエチレンテレフタレート(三菱レイヨン(株)製、
商品名:ダイヤナイト、以後『PET』と略す)を80
重量部と、(化6)で示されるポリ乳酸(島津製作所
(株)製、商品名:ラクティ)を20重量部の混合体の
みで構成した。この場合も前述のサンプル例1と同様
に、まず均一な混合体を得るために280℃に加熱した
ニーダにPETを入れて溶融させた後に、ポリ乳酸を混
入して15分程度混練して試作した。 (サンプル例3)モールド材8を、樹脂組成物に炭酸カ
ルシウムを添加材として混入して構成した。つまり、サ
ンプル例1で示した混合体100重量部に対して、更に
平均粒子径が20μmの重質炭酸カルシウム(丸尾カル
シウム(株)製)を100重量部加えて構成した。モー
ルド材8は、ニーダでPETとポリカプロラクトンとの
混合体を形成した後に、炭酸カルシウムを混入してニー
ダで更に10分程度混練して試作した。 (サンプル例4)モールド材8を、樹脂組成物に炭酸カ
ルシウム及びガラス繊維を添加材として混入して構成し
た。つまり、サンプル例1で示した混合体100重量部
に対して、更に平均粒子径が20μmの重質炭酸カルシ
ウム(丸尾カルシウム(株)製)を100重量部と、長
さ20mmのガラス繊維を30重量部加えて構成した。
モールド材8は、ニーダでPETとポリカプロラクトン
との混合体を形成した後に、炭酸カルシウムとガラス繊
維とを順次混入してニーダで更に15分程度混練して試
作した。 (比較例)モールド材を、(化1)で示されるPETの
みで構成した。
【0049】これらの分解実験は、ステンレス製の密閉
容器内に30ccのNaOH水溶液(水1kgにNaO
Hを160g溶解)と共に各試料(10mm×20m
m、厚さ1mmの長方体)を入れ、室温(約25°C)
で110時間攪はんし、各試料の重量変化を測定するこ
とにより行った。実験結果を(表1)に示す。
【0050】
【表1】
【0051】同表に示すように、沸騰しない温度までの
加熱で十分減容化できることが判った。比較例でも若干
の重量減少が確認されたが、サンプル例1〜4では比較
例での重量減少と添加した脂肪族ポリエステルの重量を
加算したもの以上にバインダ成分での重量減少が確認さ
れ、サンプル1と2では部分的に割れていた。このこと
から、脂肪族ポリエステルの混入によりPETの分解が
大きく促進されていることが判明した。このとき、Na
OH水溶液をHClで中和したときに生じた沈澱物を赤
外分光法により調べた結果、イソフタル酸およびエチレ
ングリコールが検出され、熱可塑性芳香族ポリエステル
の主鎖の一部が加溶媒分解されていることが確認でき
た。つまり、減容化のみならず、イソフタル酸とエチレ
ングリコールの回収と再生もできる。
【0052】本実験結果から、熱可塑性芳香族ポリエス
テルに脂肪族ポリエステルを均一に混合することによ
り、炭酸カルシウムなどの他の添加材が添加されていて
も、熱可塑性芳香族ポリエステルのエステル結合部が加
溶媒分解し易いモールド材8を試作できることが確認で
きた。
【0053】なお、サンプル例3と4の分解結果(表
1)では、サンプル例1と同程度のバインダの重量減少
分しか確認できなかったが、これは炭酸カルシウムやガ
ラス繊維が大きく崩れ落ちなかったからである。但し、
このときの分解では、炭酸カルシウムやガラス繊維が多
く残っているにも関わらず、素手で削れるほどに強度が
低下していることが判った。この結果、前述したような
補強材、離型材などを添加してモールド材の機械的強度
を改善した場合においても、分解操作により機械的な強
度を大きく低下させてモールド材の剥離除去を容易に行
えることが確認できた。
【0054】更にサンプル例3の構成について、混入粒
子を更に増やした場合を検討した。つまり、サンプル例
1で示した混合体100重量部に対して、重質炭酸カル
シウムを100、200、400、500重量部の場合
について混練試作した。なお、加熱成形は、20mm×
40mm×7mm(厚さ)の板を成形し、(表1)で示
したNaOH水溶液を用いて分解を試みた。水溶液が浸
透した部位は、軟らかくなっているので時間毎に軟らか
くなる度合いを厚み方向で確認した。各板の100時間
の浸積後の軟らかい構造材の表面からの厚さは、3m
m,3mm,2mm,1mmと炭酸カルシウムが増える
ほど、浸透し難くなる傾向にあった。更に500時間浸
積すると、殆どの板で全て軟らかくなったが、炭酸カル
シウムが500重量部の板だけは1mm程度以上軟らか
くなることはなかった。このことから、熱可塑性芳香族
ポリエステルと脂肪族ポリエステルからなる混合体は、
分解溶液の浸透性を良好にするために構造材の20重量
部以上含むことが好ましい。
【0055】次に、本発明の成形体の分解方法について
説明する。
【0056】前述の加溶媒分解時において、少なくとも
塩基と親水性溶媒を含む分解溶液を用いると、構造材で
あるモールド材8に含まれる脂肪族ポリエステルが一部
加溶媒分解されながら溶解すると共に、分解溶液に含ま
れる塩基によって熱可塑性芳香族ポリエステルのエステ
ル結合も加溶媒分解される。したがって、脂肪族ポリエ
ステルの溶出とエステル結合部の加溶媒分解を両立で
き、モールド材8の分解を更に効率良く行うことができ
る。
【0057】ここで、塩基は、水との接触により解離し
て水酸基を生じるもので、例えば水酸化ナトリウム、水
酸化カリウムなどの金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸
化カルシウムなどの金属酸化物、ナトリウムエトキシ
ド、カリウムt−ブトキシドなどの金属アルコキシドか
ら単数または複数を選ぶことができる。
【0058】また、親水性溶媒とは、水との親和性の良
好な有機溶剤であり、例えばエタノール、メタノール、
イソプロピルアルコールなどの低級アルコール類、エチ
レングリコール、プロピレングリコール、ジエチレング
リコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロ
フラン、アセトンなどから単数または複数を選ぶことが
できる。特に低級アルコール類は室温での加溶媒分解性
に優れ、水と低級アルコールの混合液は特に推奨され
る。勿論、表面張力を低下させたり、揮発性を抑えた
り、防腐性を付与するために、この溶液に数wt%程度
の界面活性剤、エチレングリコール、防腐剤などの調整
剤を添加することができる。
【0059】塩基による加溶媒分解を効率よく実現する
ためには水酸基が発生する必要があり、また分解には水
が消費されるので若干の水が分解溶液に常に含まれるこ
とが望ましい。但し、水が増えるほど脂肪族ポリエステ
ルに対する浸透力が弱まるので、分解と塩基の分離に必
要な水だけに調整されることが好ましく、分解時間が長
くなったり、分解溶液を再使用したりする場合には、水
を追加しながら分解を続けることが好ましい。この水が
分解溶液の1wt%未満では塩基が電離しても分解に十
分な効果を得られなかったので、1wt%以上に調整さ
れることが望ましい。
【0060】以下に前記分解溶液を用いた場合の詳細な
実施例(実験例)について説明する。前述したサンプル
例1のモールド材8を下記の(表2)に示す組成の溶液
中に室温で15時間浸漬し、その重量変化を調べた。そ
の結果を下記の(表3)に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】この(表3)に示すように、少なくとも塩
基である水酸化ナトリウムと親水性溶媒であるエタノー
ルとの存在によって、分解溶液は効力を発揮し、分解溶
液1および2に浸漬した試料は加溶媒分解を受けて大き
く重量が減少すると共に、体積も大きく減少していた。
【0064】また、分解溶液2の結果にみられるよう
に、親水性溶媒であるエタノールに水を加えることによ
って重量では2倍弱の減少を示した。このことから、水
と親水性溶媒エタノールとの混合液は、より大きい効果
を発揮することがわかる。前述の(表1)の結果と比較
すると、室温で浸漬するだけでも短時間で加溶媒分解で
き、モールド材8の分解に適した分解溶液が実現されて
いることが確認できる。この分解溶液におけるエタノー
ルの替わりにメタノールを用いても、塩基のみならず水
を加えた方が重量減少は大きかった。
【0065】また、表には示さなかったが、炭酸カルシ
ウムを混入したサンプル例3の場合でも、分解溶液2を
用いると15時間で30wt%程度の重量減少を示し
た。もちろん前述の比較例(PETのみでモールド材を
構成したもの)による試料を分解溶液1、2および比較
液1、2に室温で15時間浸積しても重量変化は全く認
められなかった。
【0066】また、各分解溶液による分解は加熱するこ
とにより加速され、例えば60°Cに加熱した分解溶液
では、室温で15時間かかった分解の程度を2時間程度
で達成できる。但し、この加熱により親水性溶媒が多量
に揮発することを避けるために、加熱は親水性溶媒の沸
点以下に抑えることが望ましい。
【0067】これらのモールド材8でモールドしたモー
ルドステータ1は、モールド材8により機械的強度を十
分保有し、同時に特定環境下において加溶媒分解され易
くなっている。したがって使用後は前述したNaOH水
溶液などを用いた密閉加熱や、前述の分解溶液を用いた
低温での加溶媒分解操作によりモールド材8の機械的強
度を十分低下させ、多くのモールド材8を除去し、巻線
7や鉄芯6のリサイクルを容易にできる。
【0068】構造材であるモールド材8は、分解溶液に
浸積した後は、その湿ったままで剥離することが好まし
い。なぜならば、乾燥すると機械的強度が上がるので、
剥離が困難になるからである。また、強アルカリが含ま
れているので取り扱いを容易にするために、分解溶液か
ら取り出した後に他の溶液、例えば水、低級アルコール
のみ、又はこれらの混合液に十分な時間浸積してから剥
離する事も推奨される。
【0069】次に、この点に関する実験例について述べ
る。前述のモールド材8のサンプル例1〜4を用いて、
図1に示すように巻線7と鉄芯6をモールド(モールド
材の最大厚み5mm)してモールドステータ1を試作し
た。このモールドステータ1を、(表2)に示した分解
溶液2に60°Cで10時間浸積したところ、サンプル
例1〜2を用いたものは、殆どのモールド材8が分解除
去され、巻線と鉄芯のみを得た。サンプル例3、4に関
しては、モールド材8が巻線と鉄芯にこびり着いて残留
しているものも多かったが、金槌で表面を叩くだけで残
留していた樹脂成分と共に炭酸カルシウム(およびガラ
ス繊維)が剥離し、容易に巻線7と鉄芯6とを分離でき
た。
【0070】この例により、巻線7と鉄芯6のみなら
ず、炭酸カルシウム、ガラス繊維などが容易に再利用で
きることも判った。特にガラス繊維は、加熱されていな
いので物性変化も殆どなく、また切断処理もされていな
いので必要以上に細かくなく、そのままガラス繊維とし
て再利用できるものであった。
【0071】もちろん、比較例のモールド材を用いた場
合は、分解も大きく進まず、金槌で叩いても表面が若干
削れるだけで、モールド材を剥離することはできなかっ
た。 (第2形態例)次に、本発明の成形体であるモールドモ
ータのステータ及びその分解方法の好適な第2の形態例
を図2を用いて説明する。
【0072】同図に本発明のモールドステータの部分断
面図を示す。図中の11は、鉄芯6と巻線7との間を絶
縁するための絶縁体であり、モールド材8は、巻線7の
周囲をモールドする熱可塑性芳香族ポリエステルと脂肪
族ポリエステルとからなる混合体をバインダとした内部
モールド材8aと、更にその周囲をモールドする熱硬化
性モールド材である外部モールド材8bとで構成されて
いる。
【0073】本形態例では、図1で示した単一のモール
ド材8を使用したものよりも外部モールド材8bにより
モールドステータ1の使用時の環境安定性を保証でき
る。例えば、脂肪族ポリエステルが分解または劣化しや
すい高温多湿の状態でも使用できるモールドステータ1
を試作できる。
【0074】内部モールド材8aは、前述した熱可塑性
芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルとからなる混
合体をバインダとして混入したものである。外部モール
ド材8bは、熱硬化性樹脂を含んだモールド材であり、
例えば不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂やフェ
ノール樹脂をバインダとして含む熱(または光)硬化性
のモールド材である。もちろんこの外部モールド材8b
も、前述したように無機質添加材、有機質添加材、離型
材、着色材、ワックス類のみならず、酸化ベリリウム、
酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウ
ム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、安息香酸、無水フタ
ル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸など
の増粘剤を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチ
レン、酢酸ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート、エ
チレンビニルアルコール樹脂、アクリル共重合樹脂、飽
和ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂からなる収縮防
止剤を、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン
酸カルシウムなどの離型剤を、過酸化ベンゾイル、tブ
チルパーベンゾエート、tブチルパーオキシベンゾエー
ト、tブチルパーオクトエートなどの硬化剤などを適宜
混入して構成することができる。
【0075】不飽和ポリエステルは、不飽和多塩基酸、
飽和多塩基酸とグリコール類を反応させたものである。
不飽和多塩基酸は、例えば無水マレイン酸、フマル酸、
イタコン酸、シトラコン酸などである。飽和多塩基酸
は、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル
酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル
酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレン
テトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無
水フタル酸などである。グリコール類は、例えばエチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリ
コール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコ
ール、1−3ブタンジオール、1−6ヘキサンジオー
ル、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピ
レンオキシド化合物、ジブロムネオペンチルグリコール
などである。
【0076】ビニル化合物は、例えばスチレン、ビニル
トルエン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、
酢酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレ
ート、ジアリルテトラブロムフタレート、フェノキシエ
チルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレー
ト、1−6ヘキサンジオールジアクリレートなどであ
る。
【0077】不飽和ポリエステルは、例えば(化11)
で示されるようにネオペンチルグリコール、イソフタル
酸、フマル酸から合成されるもの、(化12)で示され
るようにプロピレングリコール、無水フタル酸、無水フ
マル酸から合成されるもの、(化13)で示されるよう
にプロピレングリコール、イソフタル酸、無水マレイン
酸から合成されるものなどがある。
【0078】
【化11】
【0079】
【化12】
【0080】
【化13】
【0081】本形態例のモールドステータ1の分解処理
は、外部から溶媒を浸透させることが困難なので加溶媒
分解の効率が悪い。そこで、少なくとも内部モールド材
8aが分解溶液に接触するように表出された後に、分解
処理されなければならない。このときには、表出された
部位から分解が進んで、巻線回りに空洞を形成し、十分
な分解終了後には外部からの打撃により容易に、鉄芯6
と共に巻線7を取り出すことができる。この表出は、例
えばドリルで穴を開けたり、鋸で表出するように傷を付
けることにより実現できる。
【0082】絶縁体11は、電気絶縁性が要求され、例
えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどの
熱可塑性樹脂を用いることができる。絶縁体11は、モ
ールド時の巻線7の形状を保つ効果も要求されるので、
モールド時に大きく軟化しないように、軟化点または融
点がモールド時の温度、例えば100°C程度以上のも
のを選ぶことが好ましい。
【0083】この絶縁体11に熱可塑性芳香族ポリエス
テルと脂肪族ポリエステルとからなる混合体または脂肪
族ポリエステルのみを用いると、モールドステータ1の
分解時に、巻線7と鉄芯6の分離をも同時に行うことが
できる。熱可塑性芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエス
テルとからなる混合体は、軟化点が100°Cを超える
のでモールド時に変形することもない。脂肪族ポリエス
テルのみを使用する場合は、融点が100°Cを越える
ものが多い脂肪族ポリエステルである(化10)に示す
共重合樹脂を使用することが好ましい。また、内部モー
ルド材8aのモールド時の温度により加熱変形しないよ
うに、内部モールド材8aのモールド温度は絶縁体11
の変形温度以下に選ぶことが好ましい。
【0084】なお、本形態例では、モールドモータに使
用されている絶縁体11について説明したが、モールド
材8で覆われていない一般のモータに使用する絶縁体に
も勿論使用することができる。この場合、モータを分解
溶液に漬けることで、唯一の樹脂成分でる絶縁体をモー
タを分解することなしに除去でき、モータを構成してい
る金属類の再生が容易になる。また、一般的に絶縁体1
1は、薄く形成されるので前述した様に分解溶液の浸透
性を大きく考慮する必要がなく、前述した脂肪族ポリエ
ステルと芳香族ポリエステルの混合体を含めばよい。勿
論、この混合体が20重量部以上含む構造材では、その
分解も早いので推奨されることは勿論である。
【0085】また本形態例では、外部モールド材8bに
熱硬化性モールド材を用いた例を示したが、脂肪族ポリ
エステルを全く含まない熱可塑性芳香族ポリエステルな
どの熱可塑性樹脂をバインダとしたモールド材を使用す
ることももちろんできる。
【0086】図6に示すような従来のモールドステータ
に、熱可塑性芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステル
とからなる混合体を用いた絶縁体11を用いることも有
用である。この場合、従来例で示したように廃棄処理は
粉砕処理となるが、粉砕・選別後の金属片に対して、少
なくとも塩基と親水性溶媒とを含む例えば(表2)に記
載の分解溶液を用いると、モールド材8に含まれる脂肪
族ポリエステルを一部加溶媒分解しながら溶解すると共
に、分解溶液に含まれる塩基によって熱可塑性芳香族ポ
リエステルのエステル結合をも加溶媒分解できる。した
がって、金属片にこびり着いている樹脂分の殆どを取り
除くことができ、良質な金属片を取り出すことができ
る。
【0087】更にまた、実際にはモールドモータの製造
時の導通確認テストにおいて数%以下の不良品がでるの
で、モールドされる前の状態で産業廃棄物として処理さ
れている。これは絶縁体11の分離に手間がかかり過ぎ
るからである。ところが熱可塑性芳香族ポリエステルと
脂肪族ポリエステルからなる混合体を用いた絶縁体11
を用いると、前述する分解溶液により容易に金属類のみ
を分離回収でき、これらの不良品を廃棄処理せずに金属
類を有効に再利用することもできる。
【0088】次に、本形態における実施例(実験例)に
ついて述べる。
【0089】以下の実験では、絶縁体11に前述したサ
ンプル例1を用いた。つまり絶縁体11を、前記(化
1)で示されるPETを80重量部と、(化4)で示さ
れるポリカプロラクトン(分子量4万、ダイセル化学
(株)製、商品名:プラクセル)を20重量部の混合体
のみで構成して、その内部に鉄芯6を挿入し、外周をエ
ナメル線で巻いて巻線7を形成した。更に、絶縁体11
を大きく変形しないように同一の混合体を用いて250
°C程度に加熱しながら加圧モールドして内部モールド
材8aをほぼ厚さ2mm形成した。外部モールド材8b
は、(化13)で示される不飽和ポリエステルを含んだ
不飽和ポリエステル樹脂(日本触媒(株)製、商品名:
エポラック)を70重量部、スチレンを30重量部、硬
化剤t−ブチルパーオキシベンゾエイト(日本油脂
(株)製、商品名:パーブチルZ)を1重量部、更に平
均粒子径20μmの重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウ
ム(株)製)を200重量部、長さ20mmのガラス繊
維を30重量部加えて構成した。この外部モールド材8
bを用いて最も厚いところで内部モールド材8aの外周
に6mm程度モールドしてモールドステータ1を試作し
た。
【0090】このモールドステータ1を金槌で叩いて一
部内部モールド材8aを表出させ、(表2)の分解溶液
2に浸積して48時間放置したところ、内部モールド材
8aと絶縁体11が殆ど分解され、外部モールド材8b
から形成された空洞内に巻線7と鉄芯6のみが残ってい
た。したがって、これを金槌で叩いて外部モールド材8
bを割ることにより、金属類を分離回収できた。
【0091】また、このモールドステータ1をシュレッ
ダーにより粉砕して選別したところ、金属片に樹脂類が
付着しているものが多く、低品位の金属類として回収さ
れた。この金属片を(表2)の分解溶液2に浸積して1
時間ほどローリングミキサーにかけると金属類のみが残
り、高品質な金属片が回収できた。つまり、粉砕処理し
ても前述の分解溶液を用いることで良好な金属類を回収
できるモールドステータを得ることができた。
【0092】もちろん、絶縁体11に鉄芯6を挿入し、
外周をエナメル線で巻いて巻線7を形成したものを前述
の分解溶液で24時間放置処理すると、絶縁体11が殆
ど除去され、金属類だけを容易に分離できた。 (第3形態例)次に、本発明のモールドモータのステー
タ及びその分解方法の好適な第3の形態例を図3を用い
て説明する。
【0093】同図に、本発明のモールドステータの部分
断面図を示す。本形態例では図2で説明したモールドス
テータ1において、絶縁体11が、熱可塑性芳香族ポリ
エステルと脂肪族ポリエステルとからなる混合体をバイ
ンダとしたモールド材から構成され、その一部がモール
ド材8の厚み方向に抜け、モールドステータ1の表面1
aに大きく表出している。
【0094】本形態例では、分解処理時に内部モールド
材8aを表出させなくても、この状態で絶縁体11を分
解することで、順次、内部まで分解が進み、容易に巻線
7と鉄芯6を分離することができる。なお、本形態例で
は内部モールド材8aを用いた場合を示したが、モール
ド材を内外部に分けずに、従来の熱硬化性樹脂からなる
モールド材8でモールドするだけの構成でも同じ効果を
得ることができる。
【0095】この場合の分解処理は次のようにして行わ
れる。まず塩基と親水性溶媒を含む分解溶液により絶縁
体11が加溶媒分解される。その結果、鉄芯6と巻線7
とが分離すると共に、絶縁体11の存在していた空間が
空洞となる。したがって、この状態で、外部から殻を割
るようにして打撃を加えることにより、巻線7と鉄芯6
とを取り出すことができる。
【0096】なお、図1〜図3に示した各形態例では、
ブラシレス直流モータや交流モータなどで使用されるモ
ールドステータ1のモールド成形について説明している
が、直流モータなどで使用する巻線型回転子などで回転
子3についてモールド成形したものや、リニアモータな
どの全く異なる構成のモールドステータに関しても、本
発明の形態例で述べた構造材であるモールド材8を使用
することにより分解性を考慮したモールドモータを作成
できることは勿論である。 (第4形態例)この形態例は記録媒体に関するもので、
図4に本発明の構造材を用いた磁気記録媒体である磁気
テープの部分断面図を拡大して示す。同図において、2
0は磁気テープ、21は熱可塑性芳香族ポリエステルと
脂肪族ポリエステルとからなる混合体をバインダとした
基体、22は磁気記録材からなる磁気記録層である。
【0097】ところで従来の磁気テープでは、基体に熱
可塑性樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、セル
ロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、
ポリイミドなどを使用していた。これらの基体は、低温
で分解できないので、磁気テープが使用後に廃棄される
時は、焼却または埋立処理されていた。焼却では一部の
磁気材料の再利用が考えられるが、実際には磁気記録材
に炭素が大量に混入されたり、酸化されるなどして磁気
記録材としての再利用は困難であった。
【0098】これに対して、本形態例では、磁気テープ
20の基体21が、前述した熱可塑性芳香族ポリエステ
ルと脂肪族ポリエステルとからなる混合体をバインダと
して含んでいるので、磁気テープ20を前述の分解溶液
に浸漬することで磁気記録層のみ回収することができ
る。したがって、使用済みまたは生産時の廃棄処理テー
プからの磁気材料の再生が可能となる。
【0099】但し、基体21の引っ張り強度を大きく低
下させないために、混合体100重量部に含まれる脂肪
族ポリエステルを30重量部以下とすることが好まし
い。
【0100】磁気記録層22には、従来のものを使用で
き、磁気記録材の粉と結着剤を少なくとも含んだ溶液を
塗布乾燥して形成したものや、蒸着やスパッタなどで基
体21上に直接磁気記録材の膜を形成したものを使用で
きる。磁気記録材には、例えば酸化鉄、酸化クロム、コ
バルト変性酸化鉄、Baフェライトを使用できる。
【0101】結着剤には、例えば塩化ビニル・酢酸ビニ
ル、塩化ビニル・アクリロニトリル、ニトロセルロー
ス、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドなどを使
用できる。但し、分解処理したときに、磁性材料のみを
回収し易くするために、前述した熱可塑性芳香族ポリエ
ステルと脂肪族ポリエステルとの混合体または脂肪族ポ
リエステルを含んで構成することが推奨される。
【0102】磁気記録層22を溶液塗布により形成する
場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸
ブチル、トルエンなどの単体または混合液を溶剤に使用
する。また、塗布して形成する磁気記録層22には、各
種界面活性剤やシランカップリング剤からなる分散剤、
脂肪酸アミドや流動パラフィンなどの潤滑剤、カーボン
ブラックなどの帯電防止剤、アルミや炭化珪素などの研
磨剤などを適宜混入できる。
【0103】本形態例では、磁気テープ20を基体21
と磁気記録層22のみで構成したが、基体21と磁気記
録層22との間にアンダーコート層を、磁気記録層と反
対の基体表面にバックコート層を、磁気記録層の表面に
トップコート層などを適宜構成することももちろんでき
る。
【0104】また、音楽テープやビデオテープなどに使
用される磁気テープを保護するカートリッジなどの箱体
を成形する場合に、熱可塑性芳香族ポリエステルと脂肪
族ポリエステルとからなる混合体をバインダとしたモー
ルド材を成形樹脂として使用すると、磁気テープ20を
箱体から分離する手間が省けるので処理が容易になり、
特に推奨される。
【0105】更に、本形態例では磁気記録媒体として磁
気テープについて述べたが、ディスク状の磁気記録媒体
の基体についても熱可塑性芳香族ポリエステルと脂肪族
ポリエステルとからなる混合体をバインダとした基体を
使用することにより同様の効果を得ることがもちろんで
きる。このとき、磁気記録材からなる層を形成したもの
だけでなく、アモルファスと結晶状態の相変化を利用し
た光記録材からなる層を形成したものにも使用できる。
【0106】なお、本発明で示す構造材は、各形態例で
述べたモールドステータもしくは磁気テープのみなら
ず、例えば、プラスチックボトル、スイッチ類の箱体な
ど一般の電気部品や自動車の成形体として用いたり、内
部に金属類を含んだモールドトランスなどの他のモール
ド製品に関してもこの構造材を用いてモールドするとリ
サイクルが容易になる。また、構造材自体が分解性を有
しているので、減容化を目的として本発明のモールド材
(ガラス繊維を多量に含む)を使用したFRP(繊維強
化プラスチック)やSMC(シートモールディンクコン
パウンド)製品を作成することもできる。更に、前記形
態例で説明した分解溶液も本発明のモールド材を用いた
FRPやSMC製品に対しても低温での分解除去性を発
揮し、廃棄処理を容易にする。
【0107】
【発明の効果】以上のように、本発明の構造材によれ
ば、成分として含まれた混合体中の脂肪族ポリエステル
を加熱分解または加溶媒分解することで、同じく混合体
中の熱可塑性芳香族ポリエステルに含まれるエステル結
合部も同時に分解することができるので、当該構造材の
機械的強度を大きく低下させうると共に、その大部分を
除去して減容化が容易に行えることとなる。
【0108】したがって、このような構造材を用いて成
形した本発明の成形体においては、その使用終了後に構
造材を加熱分解または加溶媒分解することにより、容易
に機械的強度を大きく低下させることができる。これに
より、廃棄処理が容易な成形品が実現されることとな
る。
【0109】また、特に本発明のモールドモータにおい
ては、モールド材に前述の構造材を用いると加熱分解ま
たは加溶媒分解により機械的強度を大きく低下させると
共にその大部分を除去することができるから、シュレッ
ダー処理をしなくても容易にモールド材を除去すること
ができる。これにより、モールド材に包まれていた鉄芯
や巻線などの有価物を簡単に取り出すことができ、その
リサイクルが容易になる。
【0110】更に、本発明の記録媒体によれば、その基
体に前述の構造材で形成しているので、同基体の分解に
より各記録材を回収することができる。したがって、使
用済みまたは生産時に廃棄処理された磁気テープ、磁気
ディスク、光ディスク等の記録媒体から記録材を容易に
再生できてその再利用が可能となる。
【0111】また、以上の場合において、特に本発明の
成形体の分解方法を用いれば、塩基と親水性溶媒を含ん
だ分解溶液により混合体中の脂肪族ポリエステルを一部
加溶媒分解しながら溶解させると共に、分解溶液に含ま
れる塩基によって熱可塑性芳香族ポリエステルに含まれ
るエステル結合部も室温付近で加溶媒分解することとが
できる。したがって、構造材の分解時において、多大な
加熱を必要とせず、その分解を更に容易に行うことがで
きると共に、構造材に付着ないし結合していた有価物の
変質を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1形態例に係るモールドモータを示
す断面図
【図2】本発明の第2形態例に係るモールドモータのス
テータを示す部分断面図
【図3】本発明の第3形態例に係るモールドモータのス
テータを示す部分断面図
【図4】本発明の第4形態例に係る記録媒体を拡大して
示す部分断面図
【図5】従来のモールドモータを示す外観斜視図
【図6】従来のモールドステータのモールド以前の外観
を示す斜視図
【符号の説明】
1 モールドステータ 6 鉄芯 7 巻線 8 モールド材 8a 内部モールド材 8b 外部モールド材 11 絶縁体 20 磁気記録媒体(磁気テープ) 21 基体 22 磁気記録層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G11B 7/24 526 J 7215−5D H02K 3/34 B

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性芳香族ポリエステルを脂肪族ポ
    リエステルより多く含むそれらの混合体が20重量部以
    上混入されていることを特徴とする構造材。
  2. 【請求項2】 脂肪族ポリエステルが、ポリカプロラク
    トン、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクト
    ントリオール、及びポリ乳酸のいずれか、またはこれら
    の混合体であることを特徴とする請求項1記載の構造
    材。
  3. 【請求項3】 熱可塑性芳香族ポリエステルを脂肪族ポ
    リエステルより多く含むそれらの混合体が20重量部以
    上混入されている構造材を用いて成形したことを特徴と
    する成形体。
  4. 【請求項4】 ポリカプロラクトン、ポリカプロラクト
    ンジオール、ポリカプロラクトントリオール、及びポリ
    乳酸のいずれか、またはこれらの複数種と、熱可塑性芳
    香族ポリエステルとの混合体が20重量部以上混入され
    ている構造材を用いて成形したことを特徴とする成形
    体。
  5. 【請求項5】 成形体は記録媒体であって、その基体と
    して前記構造材が用いられ、またその基体の表面に磁気
    記録材または光記録材が形成されていることを特徴とす
    る請求項3記載の成形体。
  6. 【請求項6】 金属部材の少なくとも一部が、前記構造
    材で覆われていることを特徴とする請求項3記載の成形
    体。
  7. 【請求項7】 成形体がモールドモータであって、前記
    金属部材が少なくとも銅を含み、前記構造材が無機粒子
    を少なくとも含むことを特徴とする請求項6記載の成形
    体。
  8. 【請求項8】 少なくとも一部の表面が、少なくとも熱
    硬化性樹脂を含んだ前記構造体で覆われていることを特
    徴とする請求項3、または請求項7記載の成形体。
  9. 【請求項9】 モータの鉄芯と銅線の間に配置された絶
    縁体を、脂肪族ポリエステルと熱可塑性芳香族ポリエス
    テルとの混合体を含む前記構造材で成形したことを特徴
    とする請求項3記載の成形体。
  10. 【請求項10】 熱可塑性芳香族ポリエステルと脂肪族
    ポリエステルとを含む混合体が20重量部以上混入され
    た構造材を用いて金属部材の少なくとも一部を覆った成
    形体を、少なくとも塩基と親水性溶媒とを含む分解溶液
    に浸漬すると共に、その分解溶液の沸点よりも低い温度
    で加熱し、その構造材の少なくとも一部を分解して前記
    構造材と金属部材を分離することを特徴とする成形体の
    処理方法。
  11. 【請求項11】 親水性溶媒が、水と低級アルコールの
    混合液からなることを特徴とする請求項10記載の成形
    体の処理方法。
  12. 【請求項12】 分解溶液に浸積した後、前記成形体の
    構造材が湿ったままの状態で分離することを特徴とする
    請求項10記載の成形体の処理方法。
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