JPH079549U - 連続鋳造機のガイドロール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】連続鋳造機の二次冷却スプレー帯における不均
一冷却の解消。 【構成】二次冷却スプレー帯のガイドロールを、鋳片対
向面に開口する溝１２を有する水冷構造の固定軸１１と
中空の筒体に多数の気体噴射孔１４を有する回転スリー
ブ１３とで構成する。この二重構造のガイドロールは、
回転スリーブ１３が鋳片との接触により固定軸１１の回
りを回転するに伴い、固定軸の溝１２と連通する気体噴
射孔１４から、固定軸の溝１２に導入した気体が鋳片の
ロール対向面に噴出する構造となす。 【効果】鋳片のロール対向面に噴出する気体により冷却
水パドルを完全に除去できるので、スプレー帯のロール
接触点付近の不均一冷却が解消され、ロール間における
鋳片表面温度を均一化できる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、連続鋳造機の鋳型下部の二次冷却スプレー帯におけるガイドロー ルの改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】

連続鋳造機の鋳型下部には周知の通り、多数のガイドロール群と、このロール 群の間に鋳片冷却用の各種スプレーノズルが配置され、鋳型内で形成された凝固 シェルが下部のロール帯すなわち二次冷却帯の前記スプレーにて鋳片表面が一定 パターンで冷却されるようになっている。しかし、鋳片二次冷却帯の鋳片案内ロ ールとスプレーノズル列は、鋳造方向に交互に配置されているため、ロール間の 鋳片冷却に必然的に冷却ムラが生じる。

【０００３】 図６はスプレー帯の一部を示す概略図で、１は鋳片、２は鋳片ガイドロール、 ３はスプレーノズル、４は冷却水であり、鋳片１はスプレーノズル３より噴射さ れる冷却水４により冷却されるが、鋳片１とガイドロール２の外周面との間に冷 却水パドル（水溜り）５が発生し、この過剰な冷却水により鋳片の不均一冷却を きたすという不可避的な問題がある。鋳片の不均一冷却は、凝固途上の鋳片シェ ルに熱歪みを生じさせ、ロール間バルジング歪み等と加算されて鋳造中に凝固シ ェルの固液界面において内部割れの原因となるため、特に過剰な冷却水による鋳 片の不均一冷却は改善しなければならない。

【０００４】 鋳片の表面温度を均一にする方法として、例えば特開昭５６−１７１７１号公 報には、ガイドロール間に気体噴射ノズルを設け、該ノズルより鋳片の隅角部に 気体を噴射することによって、鋳片の隅角部の温度を平面中央部と同等にする方 法が記載されている。すなわち、この方法は鋳片の隅角部の溜り水の流動による 誘い水の効果で鋳片表面温度の不均一冷却を解消しようとするものである。

【０００５】 しかし、この方法では冷却水パドルを完全に除去することができないため残留 水により鋳片幅方向で冷却ムラが生じ易く、また気体噴出によって飛散した汚水 によりノズル詰りが発生し易い等の欠点があり、鋳片表面温度の不均一冷却を解 消する方法としては有効性に欠ける。

【０００６】 また、特開昭５６−４１０５８号公報には、ガイドロールに多数の吸引孔を設 け、この吸引孔をロール中央に設けた軸方向の穴に連通させ、この穴を負圧源に 接続することにより、冷却水パドルの過剰水を吸引除去する方式のガイドロール が記載されている。

【０００７】 しかし、負圧により冷却使用後の汚水を吸引除去する方法では、スケール等の 介在物がロールや配管内に詰り、負圧効果を安定して得ることができない。さら に、ガイドロール自体の熱伝導を著しく低下させるとともに、ロールや配管の寿 命を短くする原因となる等の欠点があり、実用性に難点がある。

【０００８】

【考案が解決しようとする課題】

この考案は、上記の気体噴射ノズルによる冷却水パドルの除去方式の欠点であ るノズル詰りの問題がなく、また負圧源による吸引除去方式のガイドロールの欠 点であるスケール等の介在物によるロールや配管の詰り、ガイドロール自体の熱 伝導の低下等の問題がなく、冷却水パドルを効果的に除去できるガイドロールを 提供しようとするものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】

この考案は、従来の吸引方式に替えて、気体噴射方式により冷却水パドルを除 去する方式のガイドロールを提案するもので、その要旨は、鋳片対向面に開口す る溝を軸方向に設けた水冷構造の固定軸と、中空の筒体に多数の気体噴射孔を有 し前記固定軸に回転自在に外嵌した回転スリーブとからなり、前記固定軸の溝に 連通する気体導入孔より該溝内に導入された気体が前記回転スリーブに設けた気 体噴射孔より鋳片の該ロール対向面に噴出する構造となしたことを特徴とし、ま た、ロール胴部を小径となした水冷構造の固定軸と、中空の筒体に多数の気体噴 射孔を有し前記固定軸に回転自在に外嵌した回転スリーブ、および該回転スリー ブの外周に鋳片対向面を除いて嵌合した固定カバーとからなり、前記固定軸のロ ール胴部と回転スリーブとの間に形成された環状の空間に連通する気体導入孔よ り該空間に導入された気体が前記回転スリーブに設けた気体噴射孔より鋳片の該 ロール対向面に噴出する構造となしたことを特徴とするものである。

【００１０】

【作用】

水冷構造の固定軸に鋳片対向面に向けて開口する溝は、断面形状的には軸中心 側より外側に広がる扇形を呈し、その広がり角度としては、特に限定するもので はないが、冷却水パドルの範囲に対応し得る角度とする。この固定軸に外嵌する 回転スリーブに穿設する気体噴射孔は、該スリーブ全体にわたって設けられ、固 定軸の溝内に充満した気体がこの気体噴射孔より噴出する。

【００１１】 回転スリーブが鋳片との接触により固定軸の回りを回転するに伴い、固定軸の 溝と連通する気体噴射孔のみから鋳片に向けて気体が噴出し、この噴射気体によ り冷却水パドルが吹き飛ばされる。

【００１２】 また、ロール胴部を小径となした水冷構造の固定軸と、中空の筒体に多数の気 体噴射孔を有し前記固定軸に回転自在に外嵌した回転スリーブ、および該回転ス リーブの外周に鋳片対向面を除いて嵌合した固定カバーとからなるガイドロール の回転スリーブに穿設する気体噴射孔は、前記のガイドロールと同様、スリーブ 全体にわたって設けられ、固定軸のロール胴部（小径部）と回転スリーブとの間 に形成された環状の空間に連通されている。

【００１３】 回転スリーブが鋳片との接触により固定軸の回りを回転するに伴い、固定軸の ロール胴部と回転スリーブとの間に形成された環状の空間に充満した気体が、固 定カバーにて遮蔽されていない気体噴射孔より鋳片に向けて気体が噴出し、この 噴射気体により冷却水パドルが吹き飛ばされる。この時、回転スリーブの他の気 体噴射孔は固定カバーにて遮蔽されているため、環状の空間内の気体は鋳片に対 向する側、すなわち固定カバーにて遮蔽されていない鋳片に対向する気体噴射孔 のみから噴出し、他の気体噴射孔からは噴出しない。

【００１４】

【実施例１】 図１、図２はこの考案の請求項１に対応するガイドロールの一例を示す図で、 図１はガイドロールの全体構造を示す横断平面図、図２は図１のＡーＡ線上の縦 断側面図、図３は同上ガイドロールの使用状態を示す概略縦断側面図であり、１ ０はガイドロール、１１は固定軸、１２は溝、１３は回転スリーブ、１４は気体 噴射孔、１５は冷却水配管、１６は気体導入孔、１７は気体供給配管、１８はベ アリングである。

【００１５】 すなわち、ガイドロール１０は、ロール中心部に内嵌した冷却水配管１５と、 ロール胴体部に相当する範囲にわたって設けた鋳片対向面に開口する断面扇形状 の溝１２および該溝に連通する気体導入孔１６を有する固定軸１１と、全周にわ たって多数の気体噴射孔１４が放射状に穿設された回転スリーブ１３とから構成 され、固定軸１１と回転スリーブ１３は、ロール軸端部においてベアリング１８ を介して一体化されている。

【００１６】 鋳片対向面に開口する断面扇形状の溝１２の開口角度θ_１は特に限定するもの ではないが、冷却水パドル５を完全に除去するというこの考案の目的からすると ９０度前後とするのが好ましい。

【００１７】 上記構造のガイドロール１０の場合は、固定軸端部に接続した気体供給配管１ ７より供給された気体（エアー等）が気体導入孔１６を通流して断面扇形状の溝 １２内に入り、回転スリーブ１３の気体噴射孔１４より外部に噴出する。この時 、気体は溝１２と連通する気体噴射孔１４から噴射される。一方、冷却水は固定 軸１の端部より導入され、二重管構造の冷却水配管１５内を流れて外部に排出さ れる。

【００１８】 上記ガイドロールをスプレー帯に用いた場合には、図３に示すごとく、固定軸 １１の溝１２から回転スリーブ１３に設けた多数の気体噴射孔１４より放射状に 気体が噴射されることにより冷却水パドル５が完全に除去されるとともに、気体 を噴射し続けることにより冷却水パドルが形成されることもない。また、鋳片冷 却後の汚水や噴射気体にて吹き飛ばされた汚水等が気体噴射孔１４に侵入しても 気体の噴出により該気体と共に吹き飛ばされるので、該気体噴射孔１４が詰まる ことがない。

【００１９】

【実施例２】 図４、図５はこの考案の請求項２に対応するガイドロールの一例を示す図で、 図４はガイドロールの全体構造を示す横断平面図、図５は同上ガイドロールの使 用状態を示す概略縦断側面図であり、２０はガイドロール、２１は固定軸、２２ は環状空間、２３は回転スリーブ、２４は気体噴射孔、２５は固定カバー、２６ は冷却水配管、２７は気体導入孔、２８は気体供給配管、２９はベアリングであ る。

【００２０】 すなわち、ガイドロール２０は、ロール胴部を小径となし、該小径部に連通す る気体導入孔２７を有し、ロール中心部に冷却水配管２６を内嵌した固定軸２１ と、全周にわたって多数の気体噴射孔２４が放射状に穿設された回転スリーブ２ ３、および回転スリーブ２３に外嵌された断面Ｃ字形の固定カバー２５とから構 成され、固定軸２１と回転スリーブ２３は、ロール軸端部においてベアリング２ ９を介して一体化され、固定カバーは２５は両端部をロール軸端部にボルト等に 取付けられている。固定カバー２５の開口角度θ_２も前記θ_１と同様、９０度前 後とするのが好ましい。

【００２１】 上記構造のガイドロール２０の場合は、固定軸端部に接続した気体供給配管２ ８より供給された気体（エアー等）が気体導入孔２７を通流して環状空間２２内 に入り、固定カバー２５の開口範囲に位置する回転スリーブ２３の気体噴射孔２ ４のみから外部に噴出する。

【００２２】 上記ガイドロール２０をスプレー帯に用いた場合には、図５に示すごとく、固 定軸２１の環状空間２２から回転スリーブ２３に設けた多数の気体噴射孔１４よ り放射状に気体が噴射されることにより冷却水パドル５が完全に除去されるとと もに、気体を噴射し続けることにより冷却水パドルが形成されることもない。ま た、このガイドロール２０の場合は、固定カバーの作用により、鋳片冷却後の汚 水や噴射気体にて吹き飛ばされた汚水等が気体噴射孔２４に侵入することがない ため、該気体噴射孔１４が詰まるようなことは全くない。

【００２３】

【考案の効果】

以上説明したごとく、この考案によれば、ガイドロール内部から噴射する気体 にて冷却水パドルを除去することができるので、スプレー帯のロール接触点付近 の不均一冷却を改善でき、ロール間における鋳片表面温度の均一化がはかられる ことにより、凝固シェルの固液界面における内部割れが大幅に軽減される。

【００２４】 また、この考案に係るガイドロールは鋳片との接触により回転スリーブが回転 して気体を噴射する構造となっているので、駆動力を必要とせず、また二重構造 となっているので強度的にも問題はなく、既設および新設設備に容易に適用でき る。また、冷却水パドルを除去する気体の噴射範囲は鋳片と対向する部分のみで あるから、二次冷却帯のスプレーに影響を与えることがなく、さらに汚水やスケ ール等の介在物の影響を受けることもないため常に安定した動作を期待できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の請求項１に対応するガイドロールの
全体構造例を示す横断平面図である。

【図２】図１のＡーＡ線上の縦断側面図である。

【図３】同上ガイドロールの使用状態を示す概略縦断側
面図である。

【図４】この考案の請求項２に対応するガイドロールの
全体構造例を示す横断平面図である。

【図５】同上ガイドロールの使用状態を示す概略縦断側
面図である。

【図６】連続鋳造機のスプレー帯の一部を示す概略図で
ある。

【符号の説明】

１ 鋳片 ４ 冷却水 ５ 冷却水パドル １０ ガイドロール １１ 固定軸 １２ 溝、 １３ 回転スリーブ １４ 気体噴射孔 １５ 冷却水配管 １６ 気体導入孔 １７ 気体供給配管 １８ ベアリング ２０ ガイドロール ２１ 固定軸 ２２ 環状空間 ２３ 回転スリーブ ２４ 気体噴射孔 ２５ 固定カバー ２６ 冷却水配管 ２７ 気体導入孔 ２８ 気体供給配管 ２９ ベアリング

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 鋳片対向面に開口する溝を軸方向に設け
   た水冷構造の固定軸と、中空の筒体に多数の気体噴射孔
   を有し前記固定軸に回転自在に外嵌した回転スリーブと
   からなり、前記固定軸の溝に連通する気体導入孔より該
   溝内に導入された気体が前記回転スリーブに設けた気体
   噴射孔より鋳片の該ロール対向面に噴出する構造となし
   たことを特徴とする連続鋳造機のガイドロール。
2. 【請求項２】 ロール胴部を小径となした水冷構造の固
   定軸と、中空の筒体に多数の気体噴射孔を有し前記固定
   軸に回転自在に外嵌した回転スリーブ、および該回転ス
   リーブの外周に鋳片対向面を除いて嵌合した固定カバー
   とからなり、前記固定軸のロール胴部と回転スリーブと
   の間に形成された環状の空間に連通する気体導入孔より
   該空間に導入された気体が前記回転スリーブに設けた気
   体噴射孔より鋳片の該ロール対向面に噴出する構造とな
   したことを特徴とする連続鋳造機のガイドロール。