JPH0794346B2 - 炭素・金属複合材およびその製造方法 - Google Patents

炭素・金属複合材およびその製造方法

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JPH0794346B2
JPH0794346B2 JP2096050A JP9605090A JPH0794346B2 JP H0794346 B2 JPH0794346 B2 JP H0794346B2 JP 2096050 A JP2096050 A JP 2096050A JP 9605090 A JP9605090 A JP 9605090A JP H0794346 B2 JPH0794346 B2 JP H0794346B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、摺動集電材料、特に鉄道用パンタグラフ摺
板に好適な、強度、耐摩耗性および電気特性に優れた炭
素・金属複合材とその製造方法に関する。
従来の技術 摺動集電材料として、従来は鋳造合金や焼結合金等の金
属系材料と炭素系材料とが用いられてきた。
金属系材料は、強度および電気伝導性の点で優れている
が、アーク発生が多く、また摺動特性が不十分で、トロ
リー線や起電レール等の相手材の摩耗量が大きくなると
いう欠点がある。
炭素系材料は、潤滑性がよく、相手材の損耗を小さくで
きるが、電気比抵抗が大きく、集電中に発熱し易いとい
う欠点がある。
車両の高速化と冷房設備等による消費電力の増大に対応
するため、最近では炭素の優れた摺動特性と金属の電気
伝導性を生かした炭素・金属複合材が摺動集電用材料と
して採用されつつある。
このような炭素・金属複合材としては、従来、以下に示
すものが開示されている。
(1)炭素材の気孔に特定の金属を加圧含浸させたもの
(特公昭56−14732号)。
(2)炭素材原料に良導電性の金属を添加することによ
り得られた、金属粉含有炭素材からなる集電材料(特開
昭60−238402号)。
(3)金属繊維および/または炭素繊維を含有する炭素
骨材とバインダーとを成形、焼成した後、金属含浸を行
う、集電材料の製造方法(特開昭61−245957号)。
(4)炭素材原料に金属繊維を配合し、常温で成形した
後、焼成することからなる、摺動集電用炭素材の製造方
法(特開昭62−72564号)。
(5)炭素材原料に金属繊維を一方向に配向させて配合
した後、成形、焼成することからなる、摺動集電用炭素
材の製造方法(特開昭62−197352号)。
(6)ピッチ、金属繊維および黒鉛の混合物を、温度45
0〜600℃、成形圧力40kg/cm2以上で加熱加圧成形するこ
とからなる、炭素・金属複合材系のブレーキ摩擦材の製
造方法(特開昭62−215731号)。
(7)金属粉末を含有していてもよい炭素質マトリック
ス中に金網を含有させた、摺動集電用炭素材(特開平1
−157464号)。
発明が解決しようとする課題 しかし、従来の炭素・金属複合材の大部分は、現在の主
流である金属焼結系摺板から炭素・金属複合材への移行
期、すなわち金属焼結系と炭素・金属複合材系の摺板の
混合使用時を想定したトロリー線(銅製)の荒れた状態
での摺動時の摺板摩耗が大きいという欠点がある。
また、これら従来の炭素・金属複合材の大部分は、曲げ
強度等の強度特性が従来の金属系摺板に比べて低いもの
であった。そのため、走行中の振動、衝撃や架線に付着
した結氷や異常事態により外れたトロリー線ハンガイヤ
に衝突した場合、摺板に欠損または破損が起り易く、従
来の金属系摺板に比して信頼性、安全性に劣るという問
題もあった。
さらに、炭素・金属複合材は、従来の金属系摺板と比較
し、電気比抵抗が高いという欠点もある。電気比抵抗が
高いと、ジュール熱によりトロリー線温度の上昇を招き
(これは例えば電車が停車した状態で冷暖房装置や車内
照明器具等を使用する条件下で顕著である)、高テンシ
ョンが付与されたトロリー線が断線に至る可能性があ
り、非常に危険である。
炭素・金属複合材の強度特性や電気特性は、金属成分の
含有量を増大させることにより改善することができる。
しかし、金属成分の含有量を増大させると、トロリー線
との間で発生するスパークが多くなり、トロリー線や摺
板の摩耗が増大するので好ましくない。
この発明は、曲げ強度等の強度特性や耐摩耗性に優れ、
かつ電気比抵抗が低く、安定したスパーク特性が得られ
るパンタグラフ摺板に好適な炭素・金属複合材、金属焼
結系摺板と炭素・金属複合材系摺板との混合使用を想定
した荒れたトロリー線に対して優れた耐摩耗性を示し、
強度、電気比抵抗も改善されたパンタグラフ摺板用の炭
素・金属複合材と、これらの炭素・金属複合材を製造す
る方法を提案しようとするものである。
課題を解決するための手段 この発明者は、従来の方法で得られる炭素・金属繊維複
合摺板の曲げ強度が低い原因について検討した結果、以
下のことを見い出した。
炭素・金属繊維複合摺板の曲げ強度が低い原因は、複合
材の焼成による炭化中に金属繊維がマトリックスのピッ
チや炭素粉により浸炭され、繊維中に金属炭化物が生成
することにある。特に、スチールファイバーでは、鉄の
炭化物であるセメンタイト(Fe3C)を多く含む組成に変
化する。
スチールファイバー等の金属繊維の浸炭反応は、炭化温
度900℃以下では顕著ではないが、炭素の強度が十分に
発現し、そのため通常の炭化工程に利用される1000℃付
近の温度では浸炭反応が急速に進行する。
浸炭で生成するセメンタイトは、硬く、脆い特性を有
し、摺動材として使用した場合の耐摩耗性は良好である
が、靱性が低く、複合材の曲げ強度を低下させるため、
浸炭反応を可及的に抑制する必要がある。
そこで、この発明者は、スチールファイバーの浸炭反応
抑制方法について種々検討した結果、下記の知見を得
た。
成型前にスチールファイバーの表面を、炭化物生成
傾向が鉄より小さい銅で被覆したものを用いると、スチ
ールファイバーの浸炭反応が抑制され、複合材の強度が
大きく改善される。
未被覆のスチールファイバーを使用しても、上記の
ような炭化物生成傾向の小さい銅粉末を添加することに
よって、同様に炭化時のスチールファイバーの浸炭反応
が抑制される。
スチールファイバーの表面を銅と合金化させること
によっても、同様に浸炭反応が抑制される。
すなわち、この発明の要旨は、スチールファイバーの一
部または全部の表層に銅が被覆および/または合金化さ
れたものであること、スチールファイバーに加えで銅粉
末を含有すること、スチールファイバー表層への被覆が
銅めっき処理であることを特徴とする炭素・金属複合材
である。
また、その製造方法として、スチールファイバーに銅め
っき処理を施すか、スチールファイバーを上記の銅粉末
と混合後、融点以下の温度で熱処理により合金化したも
のを複合材に含有されるスチールファイバーの一部また
は全部として炭素材料と混合・成形・焼成すること、ス
チールファイバーの一部または全部に銅をめっき処理し
た後、炭素材原料と混合・成形・焼成することによって
スチールファイバーを合金化すること、マトリックス中
にスチールファイバーに加えて銅粉末を混合し、成形・
焼成することを特徴とするものである。
作 用 この発明の炭素・金属複合材に使用される炭素材原料と
しては、自己焼結性メソフェーズ粉、バインダーピ
ッチと炭素質や黒鉛質の骨材からなる2元系原料、フ
ェノール樹脂のような熱硬化性樹脂等、種々のものが使
用可能である。
ここで二元系原料における炭素質の骨材としては、耐摩
耗性の面から、ピッチや石炭等を1000℃程度で炭化処理
したコークス粉や、フェノール樹脂を炭化して得られる
等方性炭素等の硬度の高いものが好ましい。
バインダーピッチとしては、コールタール中ピッチや、
これをさらに熱処理して得られる高軟化点ピッチ等を使
用できる。なお、ピッチとしては、加熱時流動性を示す
もので、かつ可及的に低揮発分の方が複合材の強度、耐
摩耗性が向上し、好ましい。
パンタグラフ摺板には、上記の高硬度骨材とバインダー
ピッチとを主成分とする二元系炭素材原料が、価格と性
能の両面から好ましい。
次に、スチールファイバーとしては、薄板切削法、ビビ
リ振動切削法、ワイヤー切削法、延伸法等の種々の方法
で製造された繊維状あるいはウール状のものが使用でき
る。繊維の形状は、一本一本が孤立した短繊維であれば
特に限定されず、針状、くさび状、波状、あるいはそれ
らの混合物のいずれでもよい。
スチールファイバーの材質は特に限定されるものではな
く、普通鋼、高張力鋼、ステンレス鋼等から製造された
スチールファイバーが使用できる。低炭素鋼製のスチー
ルファイバーが最も良好な性能を示す。スチールファイ
バーにおいて、マンガンやクロムは浸炭反応を促進し、
得られた複合材の強度を低下させるため、これらの元素
の含有量ができるだけ低いことが望まれる。
スチールファイバーのサイズは特に限定されないが、高
い強度の成形体を得るという観点からは、通常は太さ
(繊維径、より厳密には相当直径、すなわち繊維の断面
を同じ断面積を持つ円と考えることにより求められる繊
維直径)0.5mm以下、特に0.3mm以下で、長さ1mm以上、
好ましくは3mm以上のものがよい。ただし、形状の異な
る2種以上の金属繊維を用いる時は、繊維径約1mmまで
のがより太い繊維を一部使用することもできる。
スチールファイバーのアスペクト比は、一般には10以上
が好ましい。アスペクト比が100を超える繊維も使用で
きるが、炭素材原料との混合時に繊維がからみやすく繊
維の均一分散が困難であるので、多量には配合しない方
が好ましい。
スチールファイバーの配合量は特に限定されないが、耐
摩耗性、機械的強度および電気比抵抗の面から、少なく
とも10体積%以上のスチールファイバーの配合が好まし
い。50〜60体積%の高い配合量も可能であるが、スチー
ルファイバーの配合量が50%を超えると、スパークが多
くなり、複合材の耐摩耗量が多くなる傾向がある。この
ため、スチールファイバーの配合量は、好ましくは10〜
40体積%、より好ましくは15〜35体積%である。
スチールファイバーの表面被覆は、めっき、蒸着等の任
意の方法で実施できるが、めっきが一般的である。表面
被覆層の厚みは、0.1μm程度と薄くても、浸炭反応抑
制に十分な効果がある。また、被覆層の厚みの上限は特
にないが、経済性の観点からは層厚は10μm以下が適当
である。好ましい層厚は0.1〜5μm、特に0.2〜1μm
である。
スチールファイバーの表面被覆に用いる材料としては、
炭化物生成傾向がスチールファイバー以下の任意の材料
を使用できるが、パンタグラフ摺板の場合には、耐浸炭
性に優れていることの他に、さらに電気比抵抗が低いと
が必要であるため、銅でなければならない。被覆層とし
て電気比抵抗が高いものを用いると、金属繊維の導電性
が有効に発現せず、複合材の電気比抵抗が著しく高くな
り、パンタグラフ摺板には不適当となるからである。
表面を炭化物生成傾向の小さい銅で被覆したスチールフ
ァイバーを使用すると、成形体を炭化する最のスチール
ファイバーの浸炭反応が実質的に抑制され、得られた複
合材の強度、特に曲げ強度が大きく改善される。
このためには、全部のスチールファイバーの表面を銅で
被覆してもよい。しかし、スチールファイバーの表面被
覆処理は、曲げ強度の改善には非常に有効であるが、硬
くて耐摩耗性に優れたセメンタイトが少なくなるため、
得られた炭素・金属複合材の耐摩耗性が多少劣化する傾
向がある。
この複合材の耐摩耗性の劣化を防止するために、スチー
ルファイバーの一部に、表面被覆が施されていないもの
を使用することもできる。この表面被覆のないスチール
ファイバーは、炭化時にマトリックスの炭素と反応し
て、耐摩耗性に優れたセメンタイトを生成するので、得
られた複合材の耐摩耗性が向上する。このように、表面
被覆されたスチールファイバーと、未被覆のスチールフ
ァイバーとを混合使用することにより、曲げ強度と耐摩
耗性のバランスのとれた炭素・金属複合材が得られる。
表面被覆されたスチールファイバーと未被覆のスチール
ファイバーとを混合使用する場合、両者の配合比率は特
に限定されないが、セメンタイトは少量でも耐摩耗性の
改善効果が大きいので、良好な曲げ強度を確保するよう
に、表面被覆されたスチールファイバーの比率は、好ま
しくは全スチールファイバーの50重量%以上、より好ま
しくは65重量%以上とする。
スチールファイバーの炭化時の浸炭反応は、炭化物生成
傾向がスチールファイバー以下である銅粉を、スチール
ファイバーと共に炭素材原料中に添加することによって
も効果的に抑制でき、得られる複合材の強度の改善をも
たらす。
この銅粉末を添加して製造した炭素・金属複合材の元素
分布をEPMA(electron probe micro analyzer)によ
り調べたところ、スチールファイバーの内部に添加金属
元素の存在が認められた。また、X線回折による分析で
セメンタイトがほとんど認められなかった。
これらの分析結果から、炭化のための焼成時に、添加し
た銅粉が接触するスチールファイバー中に拡散して合金
化し、これがスチールファイバーの浸炭反応を抑制する
ことが判明した。
マンガンやクロムのように、炭化物生成係合が大きな金
属粉を配合すると、得られた炭素・金属複合材の強度
は、金属粉を配合しない場合よりもさらに低下する。そ
の原因は、浸炭反応が促進されてスチールファイバーの
強度が低下するとともに、スチールファイバーと炭素マ
トリックスとの界面に空隙(ボイド)が生成し、スチー
ルファイバーとマトリックスとの接合性が悪化するため
であることが判明した。
また、添加する銅粉の純度は、マンガンやクロム等の望
ましくない元素の量が多くならない範囲であれば、あま
り問題とはならない。
添加する銅粉の平均粒径は約100μm以下、特に約0.5〜
50μmが好ましい。銅粉の平均粒径が100μmを超える
と、銅粒子の周囲にクラックが発生し易くなり、また銅
粒子とスチールファイバーとの接触点の数が減少するた
め、合金化による浸炭反応抑制の効果が低下する。
銅粉を配合する場合には、スチールファイバーは未被覆
のものでもよい。上記した添加する銅粉の効果により、
未被覆のスチールファイバーを使用しても、得られた炭
素・金属複合材の強度は満足できる程度に改善される。
また、スチールファイバーの一部または全部として、上
記のように表面被覆したスチールファイバーを使用する
こともでき、それにより曲げ強度のいっそう大きな改善
が得られる。
銅粉の配合方法としては、単に銅粉をスチールファイバ
ーと共に炭素材原料に添加し、常法により混合しただけ
でも、目的の効果は達成される。しかし、炭素材原料に
加える前に、スチールファイバー(未被覆または一部も
しくは全部が表面被覆のいずれでもよい)と銅粉のみを
予め混合して、スチールファイバーに銅粉を付着させた
後、炭素材原料と混合すると、より高い複合材の強度が
得られる。
この場合、銅粉が付着したスチールファイバーに、樹脂
系や油脂等の結合剤や界面活性剤を少量添加して付着性
を高めると、より効果的である。
スチールファイバーに加えて、上記の銅粉を添加する場
合、その添加量は特に制限されないが、スチールファイ
バーが全く未被覆のものである場合で、銅粉の好ましい
配合量は原料全体を0.5〜20体積%、より好ましくは1
〜10体積%である。スチールファイバーが上記のように
表面被覆されている場合には、銅粉の配合量は少なくす
ることができる。
上記したように、炭化工程中のスチールファイバーの浸
炭反応は、スチールファイバーに炭化物生成傾向が小さ
い銅が合金化されることで抑制される。したがって、ス
チールファイバーをこの銅とあらかじめ合金化させてお
くことにより、スチールファイバーの浸炭反応とそれに
よる強度低下を防止することができる。
このような事前合金化は、例えばスチールファイバー
を、銅で被覆するか、または銅粉と混合した後、炭素材
原料と混合する前に、高温で熱処理して銅をスチールフ
ァイバーの内部に拡散させ、合金化することにより実施
できる。表面被覆や銅粉の添加は、前記と同様でよい。
熱処理温度は、スチールファイバーの融点以下で、スチ
ールファイバーの内部に実質量の銅を拡散させるのに十
分な温度および時間で行う。熱処理条件は、スチールフ
ァイバーの合金元素によっても異なるが、約600〜1100
℃の温度で約30分〜3時間程度であろう。
炭素材原料に混合する前に事前合金化のための熱処理を
実施しなくても、炭素材原料の炭化のために成形体を焼
成する工程で、スチールファイバーは上記の熱処理と同
様の温度に相当の時間さらされる。
したがって、この発明により、スチールファイバーの一
部もしくは全部として銅で表面被覆されたスチールファ
イバーを炭素材原料に配合するか、またはスチールファ
イバーに加えて銅粉を炭素材原料に配合すると、成形体
の焼成工程でこれらの銅がスチールファイバーとある程
度合金化され、それによりセメンタイト生成が抑制され
て強度改善が得られる。
成形方法としては、押出し成型法、CIP(cold isostat
ic press)法等の冷間型込め法、加圧加熱成型法等を
含む各種の方法が採用できる。
成型で得られた成型体は、常法で炭化して、炭素・金属
複合材とすることができる。このうち、バインダーとし
てピッチを使用した二元系の材料原料を使用し、加圧加
熱成形する方法が、最も強度および耐摩耗性の良好な炭
素・金属複合材が得られる。
加圧加熱成形条件としては、バインダーピッチが固化す
る温度域、すなわち480℃以上の温度域で加圧下に加熱
することが、強度および耐摩耗性の発現のために好まし
い。したがって、加圧加熱成形の加圧加熱最高温度が48
0℃以上、より好ましくは500℃以上となるようにする。
加圧加熱温度の上限は約600℃であり、これを超えると
成形時に成形体中に割れが発生し易くなる。
加圧加熱成形の圧力は、少なくとも常温〜加圧加熱最高
温度の一部において、好ましくは40kg/cm2以上、より好
ましくは80kg/cm2以上とする。成形圧力が40kg/cm2より
低いと、バインダーとスチールファイバー間の結合力が
低下し、耐摩耗性が劣化する傾向がある。
成形体の焼成は、非酸化性雰囲気中においてスチールフ
ァイバーの融点より低温で行う。これにより、炭素材原
料が炭化して炭素質マトリックス中にスチールファイバ
ーが分布する炭素・金属複合材が得られる。
焼成温度は、炭素の強度を十分に発現させるという点か
ら900℃以上が好ましい。一方、焼成温度が1100℃を超
えると、被覆層である銅の溶融が起ったり、スチールフ
ァイバー自体の変質による複合材の強度低下から起るの
で好ましくない。したがって、好ましい焼成温度は900
〜1050℃である。
こうして得られた炭素・金属複合材は、特に鉄道用パン
タグラフ摺板に好適な強度、耐摩耗性および電気特性を
有するが、その他の摺電摺動部材(例えば集電ブラ
シ)、あるいは単なる摺動部材(例えばブレーキ軸受、
シール材)にも利用可能である。
実 施 例 次に、この発明の実施例を示す。なお、本実施例はこの
発明を制限するものではない。
実施例1 本実施例は、銅めっきしたスチールファイバーの使用例
を示す。
レギュラーグレード石油コークスを1000℃で炭化した
後、直径10mmのステンレス球を詰めた振動ミルに入れ、
4時間粉砕して平均粒径11.5μmのコークス粉を得、こ
れを成形用骨材として用いた。
バインダーピッチとしては、コールタールを60mmHgの減
圧下440℃で1時間熱処理して得た軟化点250℃のコール
タールピッチを60メッシュ以下に粉砕して用いた。
スチールファイバーとしては、0.1mm×0.1mm×長さ3mm
の低炭素鋼繊維(材質:SPCC−1B)を用いた。このスチ
ールファイバーを重量比で80倍量のめっき液(組成を第
1表に示す)中に、第2表に示す所定の時間、室温で浸
漬して銅めっきを施した。その後繊維をめっき液から取
出し、十分に水洗し、アセトンで洗浄後、窒素中100℃
で乾燥して、銅めっきされたスチールファイバーを得
た。このめっき層の平均めっき層厚を第2表に併せて示
す。
なお、スチールファイバーにめっきを施した場合の繊維
上に形成された平均めっき層厚みは、繊維の公称形状。
めっき金属の付着重量、およびスチールファイバーの金
属とめっき金属の真比重に基づいて算出した。
これらの原料を、コークス粉22部重量部、バインダーピ
ッチ10重量部、ファイバー68重量部の比率で混合し、成
形原料として用いた。スチールファイバーの量は、成形
体中で体瀬換算での比倫が約30体積%となる量であっ
た。
この成形原料を加圧加熱成形装置を用いて整形した。そ
の際、成形原料350gを内径100mmの鋼製金型に入れ、昇
温速度10℃/minで350℃まで無加圧で加熱し、350℃から
220kg/cm2で加圧しながら5℃/minの昇温速度で540℃ま
で昇温し、220kg/cm2、540℃に1.5時間保持した後、冷
却して成形体を得た。
得られた成形体を粉コークス中に詰め、窒素雰囲気中で
室温から100℃/hrの昇温速度で480℃まで昇温させ、こ
の温度に2時間保持した後、15℃/hrで1000℃まで昇温
させ、この温度に3時間保持した後冷却して炭素・金属
複合材を得た。
得られた炭素・金属複合材の曲げ強度を測定した。測定
方法は、この複合材から10mm×60mm×10mm厚(成形体厚
みが約10mmのときは焼上りのまま)の試験片の60mmを辺
の方向が複合材の長辺と一致するように切出し、曲げス
パン40mmで3点曲げ試験法により測定した。曲げ試験時
の荷重負荷方向は、成形時のプレス方向と同方向とし
た。
曲げ強度の測定結果を第2表に示す。なお、第2表には
比較のために、銅めっきなしのスチールファイバーのみ
を用いた炭素・金属複合材の曲げ強度を併せて示す。
第2表の結果より、銅めっきによる表面被覆を施したス
チールファイバーから得られた複合材は、銅めっきなし
の繊維を用いたものに比べて、曲げ強度が著しく改善さ
れていることがわかる。
実施例2 本実施例は、めっき繊維と非めっき繊維との両者を配合
した例を示す。
実施例1で使用したものと同じスチールファイバーを、
重量比で10倍量の実施例1の第1表に示す組成のめっき
液中に20℃の室温で2時間浸漬した後、十分水洗し、そ
の後窒素中100℃で乾燥して、銅めっきされたスチール
ファイバーを得た。このスチールファイバーの平均めっ
き層厚みを実施例1に記載のように算出したところ、約
0.5μmであった。
次に、実施例1で用いたものと同じコークス粉およびバ
インダーピッチに、前記の銅めっきスチールファイバー
および/またはめっきしていない未被覆のスチールファ
イバーを、第3表に示す配合割合(金属繊維の比率は約
30体積%)で混合し、得られた成形原料450gを、内寸10
0mm×100mmの鋼製金型に入れ、加圧加熱成形した。
加圧加熱成形は、昇温速度3℃/minで昇温を行い、室温
から300℃までは1kg/cm2の加圧、300〜550℃までは200k
g/cm2で加圧し、550℃、200kg/cm2に1時間保持した
後、冷却することにより行った。
この成形体を、実施例1と同様の方法で炭化・焼成処理
して、炭素・金属複合材を得た。この複合材の曲げ強度
を測定した。
さらに、複合材の摩耗試験を、ピン・オン・ディスク型
の摩耗試験機により行った。その際、摺動面のサイズが
8mm×8mmで、摺動面がプレス面と平行な摩耗試験片を作
成した。相手材としては、直径300mmの鋼板(摺動部半
径132mm、摺動面粗さ90μm)を用い、摺動面と銅版の
間に50A、50Hzの交流を通電しながら押付け荷重3kg、摺
動速度100km/hrの条件下、1時間回転摺動させた。この
摺動時間の経過後、試験片の摺動面の摩耗厚みを測定
し、耐摩耗性を評価した。
また、電気比抵抗は、上記と同様の試験片(10mm×10mm
×10mm厚)を用いて、電流の流れる方向が長さ60mmの方
向となるようにして4端子法により測定した。
これらの試験結果を第4表に示す。
第4表から明らかなごとく、めっき繊維と非めっき繊維
とを配合したもの、およびめっき繊維のみを用いたもの
は、めっき繊維を用いずに非めっき繊維のみを用いたも
のに比べて、曲げ強度および電気比抵抗共に優れてい
る。
実施例3 平均粒径5μmの銅粉を使用し、成形体中のスチールフ
ァイバーの体積比率が25体積%、銅粉とコークス粉とを
合せた体積比率が53体積%となるように、銅粉の添加率
を0.5〜10体積%の範囲内で変化させた成形原料を使用
し、実施例1と同様に成形および焼成・炭化して炭素・
金属複合材を得た。この複合材の曲げ試験結果を、各成
分の配合量と併せて第5表に示す。
第5表から明らかなごとく、得られた炭素・金属複合材
は、いずれも高い曲げ強度を示し、0.5体積%という少
量の銅粉の添加でも曲げ強度が実質的に改善された。
実施例4 実施例1で使用したものと同じスチールファイバーに、
実施例1で用いた銅めっき液により同様に銅めっきを施
した。めっき液の使用量は、重量比で繊維の40倍量、め
っき液浸漬時間は室温(20℃)で2時間であった。得ら
れた銅めっき繊維の平均めっき層厚みは0.6μmであっ
た。
このめっき処理スチールファイバーを、磁製るつぼに入
れ、さらにその周辺に粉コークスを充填し、窒素雰囲気
中300℃/hrの昇温速度で1000℃まで昇温し、1000℃に2
時間保持した後、冷却して銅が合金化したスチールファ
イバーを得た。これを成形原料の調整に用いた。
成形原料は、実施例1に記載のコークス粉25重量部、実
施例1記載と同様のバインダーピッチ(熱処理温度450
℃)10重量部、上記の銅合金化スチールファイバー65重
量部の比率で配合することにより得た。繊維の比率は、
体積換算で30体積%となる量であった。
また、比較のために、上記スチールファイバーをそのま
ま配合した成形原料を調整し、この成形原料450gを使用
し、加圧加熱成形時の加圧を200kg/cm2とした以外は、
実施例1と同じ条件で成形および炭化・焼成した。
得られた炭素・金属複合材料の曲げ強度を調べた結果、
合金化処理繊維を配合した場合が1850kg/cm2、未被覆繊
維を配合した場合が1250kg/cm2であった。
発明の効果 上記の実施例からも明らかなごとく、この発明の炭素・
金属複合材は、優れた強度特性、特に曲げ強度と耐摩耗
性とを備え、かつ電気比抵抗が低く、安定したスパーク
特性が得られる、パンタグラフ摺板に極めて好適であ
る。
また、その製造方法としても、金属繊維のめっき処理
等、被覆処理工程が増えるだけであるため、製造コスト
が大幅に高くつくことはなく、比較的安価に高品質の炭
素・金属複合材を提供できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉本 行廣 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−157464(JP,A) 特公 昭47−28600(JP,B1)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素質マトリックス中に金属繊維を含む炭
    素・金属複合材において、前記金属繊維がスチールファ
    イバーであり、該スチールファイバーの一部または全部
    の表層に銅が被覆および/または合金化されたものであ
    ることを特徴とする炭素・金属複合材。
  2. 【請求項2】請求項1記載のスチールファイバー表層へ
    の被覆が銅めっき処理であることを特徴とする炭素・金
    属複合材。
  3. 【請求項3】炭素質マトリックス中に金属繊維を含む炭
    素・金属複合材において、前記金属繊維がスチールファ
    イバーであり、前記マトリックス中に該スチールファイ
    バーに加えて銅粉末を含有することを特徴とする炭素・
    金属複合材。
  4. 【請求項4】炭素質マトリックス中に金属繊維を含む炭
    素・金属複合材の製造方法において、前記金属繊維がス
    チールファイバーであり、該スチールファイバーに銅を
    めっき処理するか、銅粉末と混合後、スチールファイバ
    ーの融点以下の温度で熱処理により合金化しものを複合
    材と含有されるスチールファイバーの一部または全部と
    して炭素材料と混合・成形・焼成することを特徴とする
    炭素・金属複合材の製造方法。
  5. 【請求項5】炭素質マトリックス中に金属繊維を含む炭
    素・金属複合材の製造方法において、前記金属繊維がス
    チールファイバーであり、該スチールファイバーの一部
    または全部に銅をめっき処理した後、炭素材原料と混合
    ・成形・焼成することによりスチールファイバーを合金
    化することを特徴とする炭素・金属複合材の製造方法。
  6. 【請求項6】炭素質マトリックス中に金属繊維を含む炭
    素・金属複合材において、前記金属繊維がスチールファ
    イバーであり、前記マトリックス中に該スチールファイ
    バーに加えて銅粉末を混合し、成形・焼成することによ
    りスチールファイバーを合金化することを特徴とする炭
    素・金属複合材の製造方法。
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