JPH078626B2 - ヘッドアップディスプレイ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 A.発明の目的 １） 産業上の利用分野 本発明は、鉄道車両、バス等の乗物の操縦者が前方外界
の景色を見ながら操縦する際に、その操縦者が見ている
前方の外界の情景に種々の情報（たとえば、速度情報、
ブレーキ情報、時刻情報等）を重ねて表示するヘッドア
ップディスプレイに関する。

このようなヘッドアップディスプレイを用いれば、操縦
者は一々外界から視線をそらせて計器類を見る必要がな
くなるので、外界から視線をそらせている間に生じる不
慮の事故を防ぐことができる。

２） 従来の技術 前記従来のヘッドアップディスプレイは、普通、操縦者
の視野前方にハーフミラーまたはホログラム素子等のコ
ンバイナを配置し、そのコンバイナは外界の情景から出
射した光線を操縦者の方向に透過させるとともに操縦室
内側から前記コンバイナに入射した情報表示光を操縦者
の方向に反射または回折させるように構成されている、
そして、前記情報表示光をコンバイナに入射させる情報
投光装置は、CRT、プラズマディスプレイまたは発光ダ
イオードディスプレイ等の光学的情報表示手段とこの光
学的情報表示手段から出射した光を前記コンバイナに入
射させる光学部材とを備えている。そして、前記光学部
材は、普通、レンズ系および反射鏡等から構成されてお
り、前記情報表示光を操縦者が正面の視野の中に視認で
きるように構成されている。

３） 発明が解決しようとする課題 ところで、鉄道車両またはバス、船舶等の乗物に使用さ
れるヘッドアップディスプレイは、航空機用のヘッドア
ップディスプレイに比較して、表示精度は粗くてもよい
が、簡素な構成や装置デザイン（ヘッドアップディスプ
レイの構成要素と、それ以外の各種装置の構成要素との
位置関係の設計）が要求される場合がある。このため、
前記鉄道車両等で使用されるヘッドアップディスプレイ
では航空機で使用されるコンバイナを省略して、フロン
トガラス自体をコンバイナとして利用することが考えら
れる。

そこで、本発明者は前記フロントガラス自体をコンバイ
ナとして利用した鉄道車両用のヘッドアップディスプレ
イを試作してみた。その試作品のヘッドアップディスプ
レイの設計において、フロントガラスを平板と見なし、
表示面で表示された情報がレンズ、ミラー等の光学部材
によりフロントガラスの前方に虚像として表示されるよ
うに前記光学部材を設計した。

ところが、その試作品のヘッドアップディスプレイで
は、非常に眼が疲れることが分かった。その原因は検討
の結果次の理由によるものと分かった。すなわち、鉄道
車両のフロントガラスは車体の一部を構成することか
ら、車体全体の形状に合わせたデザインとすることが行
われる。このデザイン上の関係からフロントガラスは平
面ではなく曲率の小さな曲面に形成されており、多くの
場合、縦方向（上下方向）と横方向（左右方向）とで曲
率が異なる曲面（すなわち、縦方向と横方向とで光学的
なパワーが異なる形状）に形成されている。

特に今回の場合、搭載試験をした車両は、当初設計デー
タを用いた車両と異なり流線形が強調された車体となっ
ていた。

このようにその曲面形状は鉄道車両の種類によって異な
るが、軸が略鉛直または水平な曲率の小さな円筒面やそ
れらに近似する曲面が多い。ヘッドアップディスプレイ
の表示面で表示された情報は、凸レンズ、ミラー等の光
学部材を透過して、前記小さな曲率の略円筒状のフロン
トガラス内面の円筒状凹面で反射してから運転手の目に
至る。このため、運転手により視認される表示情報は歪
んで見えることになる。たとえば、前フロントガラスで
反射して視認される表示情報は、前記フロントガラスの
円筒状凹面の軸が略鉛直な場合（横方向に光学的なパワ
ーを有する場合）、運転手の左右の目には前記表示面の
情報表示光が前記円筒状凹面で反射するときに光軸に近
付く方向に曲げられ、見た目には左右に離れた位置に虚
像が現れる場合が生じる。このようなフロントガラスが
有する小さな曲率による表示情報の歪みが目の疲れる原
因であることが分かった。

本発明は、前述の事情に鑑みてなされたもので、縦方向
および横方向の曲率が異なるフロントガラスをコンバイ
ナとして利用した乗物用のヘッドアップディスプレイに
おいて、構成を複雑化することなく、表示された情報を
楽に視認できるようにすることを課題とする、 B.発明の構成 １） 課題を解決するための手段 前記課題を解決するために、本発明の乗物用のヘッドア
ップディスプレイは、情報が表示される表示面を有する
光学的情報表示手段と前記表示面から出射した情報表示
光を所定の方向に投光する光学部材とを備えた情報投光
装置と、 操縦者の前方に傾斜して設けられ、前方の外界の情景を
操縦者が視認できるように前記外界からの光線を前方か
ら後方に透過させるとともに前記情報投光装置から投光
された情報表示光を操縦者が視認できる方向に反射する
コンバイナの機能を有するフロントガラスとを備えた乗
物用のヘッドアップディスプレイにおいて、 前記情報表示光を反射するフロントガラスの反射面は縦
方向および横方向で光学的なパワーが異なるように構成
され、前記光学部材は、前記フロントガラス反射面の縦
方向および横方向の光学的なパワーの差を補償するシリ
ンドリカル光学部材を有することを特徴とする。

前記シリンドリカル光学部材としては、シリンドリカル
ミラー、またはシリンドリカルレンズ等を用いることが
できる ２） 作用 前述の特徴を備えた本発明のヘッドアップディスプレイ
では、縦方向（上下方向）および横方向（左右方向）の
屈折率が異なるように構成されたフロントガラスによっ
て生じる表示情報の歪みは、前記フロントガラスの上下
方向および左右方向の屈折率の差を補償するシリンドリ
カル光学部材によって補償されているので、運転手は、
歪みの少ない表示情報を楽に視認することができる。

３） 実施例 以下、図面により本発明の第１実施例を説明する。

第１図において、鉄道車両１の前端部には運転第２が設
置されている。この運転室２には、操縦者Ｍ用の座席３
の前方に計器盤４が配設されている。また、前記運転室
２の前方には鉄道車両１の車体下部５と天井６との間に
コンバイナとして利用されるフロントガラスＣが配設さ
れている。このフロントガラスＣは前方に行くに従って
下方に傾斜するように配置されており、その内面は曲率
が小さく軸が水平な円筒状凹面に形成されている。

前記運転室２の計器盤４には光学部材Ａおよび光学的情
報表示手段としてのCRT（Cathode Ray Tube、陰極線
管）表示管Ｄが配設されている。このCRT表示管Ｄの表
示面は例えば512×512ドットのピクセルに分割されてお
り、各々のピクセルの輝度をコントロールすることによ
り必要な情報（速度情報、時刻情報等）が表示される。
前記光学部材Ａは、レンズ系A1、反射面が凸のシリンド
リカルミラーA2および凸レンズA3等から構成されてお
り、前記CRT表示管Ｄから出射した情報表示光Ｌを前記
フロントガラスＣに入射させるように配置されている。

なお、前記CRT表示管Ｄの代わりに、液晶ディスプレ
イ、プラズマディスプレイまたは発光ダイオードディス
プレイ等のフラットな光学的情報表示手段を採用するこ
とも可能である。

次に、前記シリンドリカルミラーA2の製造方法を第2A〜
2D図により説明する。

第2A図に示すように、耐火レンガ等の耐熱材料で構成さ
れたシリンドリカルな表面を有するブロック10の上にガ
ラス11を載せる。これを炉の中に入れてガラス11の融点
近くの適当な温度に保持する。そうすると、第2C図に示
すように、ガラス11は自重によりブロック10の表面に沿
うように曲がる。この第2C図に示すガラスを炉から取り
出して、端部10a,10bを切り落とすと、第2D図に示すシ
リンドリカルガラス11が得られる。この第2D図に示すシ
リンドリカルガラス11の反射面となる側（今の場合、凸
側）にアルミ等の金属反射膜を形成すると、前記反射凸
面を有するシリンドリカルミラーA2が得られる。

前記フロントガラスＣは前記光学部材Ａから入射した情
報表示光Ｌの一部を透過させるとともにその円筒状凹面
は前記情報表示光Ｌの残部を前記操縦者に向けて反射さ
せるように配置されており、また外部の情景等から入射
した外部光Ｊの一部反射するとともに残部を前記操縦者
Ｍに向けて透過させるように配置されている。そして、
この実施例のフロントガラスＣの前記円筒状凹面は縦方
向に正のパワーを有しており、前記シリンドリカルミラ
ーA2の反射凸面は前記正のパワーを打ち消す負の縦方向
のパワーを有するように構成されている。これは本実施
例のレンズ系A1、凸レンズA3の合成パワーが、フロント
ガラスＣが平板状である場合に対して適切な値となるよ
うに設定されているからである。このように設定した場
合、フロントガラスＣの縦方向に正のパワーを有する円
筒状凹面によって前記設定が変更されるので、前記縦方
向に負のパワーを有するシリンドリカルミラーA2を用い
て補償しているのである。

前記光学部材ＡおよびCRT表示管Ｄから情報投光装置Ｋ
が構成されており、また、前記コンバイナとして機能す
るフロントガラスＣ、前記情報投光装置Ｋ等からヘッド
アップディスプレイＨ（第１図参照）が構成されてい
る。

次に、前述の構成を備えた本発明の実施例の作用につい
て説明する。

第１図中左側に在る外界からフロントガラスＣに向って
進んで来た外部光線Ｊは、一部はフロントガラスＣで外
界に反射し、残部はそのままフロントガラスＣを透過し
て直進し、操縦者Ｍの眼に至る。これにより操縦者Ｍは
外界の情景をそのまま視認することができる。一方、前
記情報投光装置ＫのCRT表示管Ｄから出射した情報表示
光Ｌは光学部材Ａを通過してフロントガラスＣに入射す
る。そして、フロントガラスＣに入射した情報表示光Ｌ
は、一部はフロントガラスＣを透過して外界に出射され
るが、残部は反射して操縦者Ｍの眼に至る。これにより
操縦者Ｍは情報表示光Ｌを視認することができる。そし
て、前記情報表示光Ｌは、光学部材Ａのシリンドリカル
レンズA2の反射凸面で縦方向に拡散されるが、フロント
ガラスＣの円筒状凹面で縦方向に収束される。すなわ
ち、情報表示光Ｌは、フロントガラスＣにより縦方向に
収束される分だけ、予めシリンドリカルレンズA2の反射
凸面で補償されている。したがって、前記操縦者Ｍが視
認する情報表示光Ｌは歪みが少ない。したがって、操縦
者Ｍは情報を楽に視認することができる。

前記実施例によれば、装置デザインの制約から光路を変
更するために使用されている平板状の反射ミラーを、シ
リンドリカルミラーとすることにより、装置を複雑化す
ることなく、フロントガラスＣによる表示情報の歪みを
簡単に補正することができる。

次に、第３図により本発明の第２実施例を説明する。

ヘッドアップディスプレイＨは、フロントガラスＣと、
その下方に配置された情報投光装置Ｋとを備えている。
この第２実施例のフロントガラスＣの内側反射面は横方
向（左右方向）に正の光学的パワーを有するように形成
されている。また、前記情報投光装置Ｋのケーシング20
内には図示されていないが、前記第１実施例と同様のCR
T表示管（光学的情報表示手段）Ｄ、および、光学部材
Ａが収納されている。但し、この第２実施例の光学部材
Ａは、前記第１実施例のシリンドリカルミラーA2の代わ
りに平板ミラーを用いている点で第１実施例と相違して
いるが、多の構成要素であるレンズ系A1および凸レンズ
A3（図示せず）は同様の性質のものを使用している。そ
して、前記光学部材Ａの構成要素である凸レンズA3は、
ケーシング20の上部に配設されたダストカバー支持壁21
の内側下部に配設されている。

そして、この第２実施例においても、前記第１実施例と
同様に、レンズ系A1および凸レンズA3の合成パワーが、
フロントガラスＣが平板状である場合に対して適切な値
となるように設定されている。

ところが前述のように、この第２実施例のフロントガラ
スＣの内側反射面は横方向に正のパワーを有しているの
で、そのフロントガラスＣ内面のパワーを打ち消す光学
部材を配設する必要がある。このため、前記ダストカバ
ー支持壁21の上面には裏面がシリンドリカルに、表面が
平坦に形成された透明プラスチック製のダストカバー22
が配設されている（第３図に示すダストカバー22の拡大
図では、裏面が上にして示されている。したがって、拡
大図で示したダストカバー22はこれを裏返した状態で前
記ダストカバー支持壁21上面に配設される）。このダス
トカバー22は、小径のシリンドリカルレンズ部22aと大
径のフランジ部22bとから構成されており、プラスチッ
ク原料を型に流し込んで成形した後、周辺部を切削して
フランジを残すことにより製作される。前記シリンドリ
カルレンズ部22aは、前記フロントガラスＣ反射面の前
記横方向の正のパワーを打ち消すように、負のパワーを
有するシリンドリカル凹レンズとして形成されている。

この第２実施例は、光学部材Ａの構成要素である前記凸
レンズA3の上側（フロントガラスＣのある側）にダスト
カバーを兼ねるシリンドリカルレンズ（すなわち、シリ
ンドリカル光学部材）を配置した構成とすることによ
り、前記第１実施例と同様にフロントガラスＣのパワー
を補償している。

前記第２実施例は、情報投光装置Ｋのケーシング20に設
けるダストカバーにシリンドリカルレンズの機能を持た
せることにより、装置を複雑化することなく、フロント
ガラスによって生じる表示情報の歪みを補正することが
できる。

以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実
施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載
された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行う
ことが可能である。

たとえば、前記第１実施例のレンズ系A1、凸レンズA3の
縦方向の合成パワーが縦方向に正のパワーを有する円筒
状凹面のフロントガラスＣに対して適切な値となるよう
に設定された場合には、全体として横方向のパワーが不
足するようになるので、シリンドリカルミラーA2を横方
向に正のパワーを有する構成として、前記横方向のパワ
ー不足を補償するようにすることも可能である。また、
前記第１実施例において、フロントガラスＣの前記円筒
状凹面が縦方向ではなく横方向に正のパワーを有してい
る場合には、前記シリンドリカルミラーA2の反射凸面は
前記正のパワーを打ち消す負の横方向のパワーを有する
ように構成することも可能である。さらに、本発明は鉄
道車両だけでなくバスや船舶等の乗物にも適用すること
が可能である。

C.発明の効果 前述の本発明のヘッドアップディスプレイは、縦方向お
よび横方向の曲率が異なるフロントガラスをコンバイナ
として利用した乗物用のヘッドアップディスクプレイに
おいて、フロントガラスの上下方向および左右方向の屈
折率の差を補償するシリンドリカル光学部材を設けたの
で、歪みの少ない表示情報を視認することができるよう
になる。

シリンドリカルミラーやシリンドリカルレンズ等のシリ
ンドリカル光学部材は容易に製作することができ、前記
シリンドリカルミラーは平板状ミラーの代わりに配置す
ればよく、また、シリンドリカルレンズは情報表示光が
フロントガラスに入射する前の位置に挿入すればよいの
で、構成が複雑化することもない。

さらに車体デザインに応じて、フロントガラスの曲率が
変化してもこのシリンドリカル光学部材のみを変換する
だけで容易に異なる車両に適合したHUDとすることがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のヘッドアップディスプレイの第１実施
例の全体説明図で鉄道車両に適用した図、第2A〜2D図は
同実施例のシリンドリカルミラーの製造方法の説明図、
第３図は同第２実施例の説明図、である。 Ａ……光学部材、Ｃ……フロントガラス（コンバイ
ナ）、Ｄ……光学的情報表示手段（CRT）、Ｈ……ヘッ
ドアップディスプレイ、Ｋ……情報投光装置、Ｌ……情
報表示光、Ｍ……操縦者、

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】情報が表示される表示面を有する光学的情
   報表示手段と前記表示面から出射した情報表示光を所定
   の方向に投光する光学部材とを備えた情報投光装置と、 操縦者の前方に傾斜して設けられ、前方の外界の情景を
   操縦者が視認できるように前記外界からの光線を前方か
   ら後方に透過させるとともに前記情報投光装置から投光
   された情報表示光を操縦者が視認できる方向に反射する
   コンバイナの機能を有するフロントガラスとを備えた乗
   物用のヘッドアップディスプレイにおいて、 前記情報表示光を反射するフロントガラスの反射面は縦
   方向および横方向で光学的なパワーが異なるように構成
   され、前記光学部材は、前記フロントガラス反射面の縦
   方向および横方向の光学的なパワーの差を補償するシリ
   ンドリカル光学部材を有することを特徴とする乗物用の
   ヘッドアップディスプレイ。