JPH0783716B2 - アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子系 - Google Patents

アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子系

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JPH0783716B2
JPH0783716B2 JP62297824A JP29782487A JPH0783716B2 JP H0783716 B2 JPH0783716 B2 JP H0783716B2 JP 62297824 A JP62297824 A JP 62297824A JP 29782487 A JP29782487 A JP 29782487A JP H0783716 B2 JPH0783716 B2 JP H0783716B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、遺伝子組換技術を利用した、バチルス(Baci
llus)属微生物由来のアルカリプロテアーゼの工業的に
有利な製造方法のための遺伝子系を提供するものであ
る。
〔従来の技術〕
アルカリプロテアーゼはバチルス属細菌が分泌する菌体
外蛋白の典型的な例であり、その用途は皮革加工用、食
品工業用、洗剤添加用、医薬品など多岐にわたる。
従来、バチルス属微生物由来のアルカリプロテアーゼは
これらの菌からの醗酵法により製造されている。しか
し、従来の醗酵法では菌体量あたりの収量が低く、また
他の菌体外蛋白などの夾雑物が多く回収構造等の工程が
複雑になる。このため、より生産性が高く、製造工程の
簡略化されたプロテアーゼの製造法の開発が望まれる。
このため、従来からプロテアーゼ生産菌の改良が行われ
ており、このために一般に人工的突然変異法が利用され
てきたが、プロテアーゼ生産性の観点からはいまだ充分
満足するものは得られていない。さらに人工的突然変異
法では、酵素の特性に変化がおこる可能性もあり、改良
法としては最適とはいえない。
また、最近開発された遺伝子組換え技術を利用してアル
カリプロテアーゼの生産性を高める試みもなされている
が工業的に利用可能なものとしては未だ成功の域には達
していない。
〔発明が解決しようとする問題点〕
従って本発明は、遺伝子組換技術によってアルカリプロ
テアーゼ生産能が向上した微生物を作製し、これを用い
て工業的に有利にアルカリプロテアーゼを製造すること
ができる方法を提供することを目的とするものである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者等は、上記の目的を達成するための鋭意研究を
重ねた結果、アルカリプロテアーゼを生産することが知
られているバチルス属微生物から、アルカリプロテアー
ゼの生産に関与する遺伝子をクローン化することに成功
し、さらにこの遺伝子の構成を解明した。さらにこのク
ローン化された遺伝子を適当な宿主に導入することによ
り、該遺伝子が由来する野性株よりはるかに高いアルカ
リプロテアーゼ生産能を有する形質転換体を得、アルカ
リプロテアーゼの工業的生産性を大幅に向上させること
に成功した。
従って、本発明は、バチルス(Bacillus)属微生物由来
のアルカリプロテアーゼをコードする構造遺伝子を含有
するDNA断片であって、 (a)該DNA断片は制限酵素切断点Hpa IとHae IIIとに
より両端を規定される領域を含んで成り; (b)前記制限酵素切断点Hpa IとHae IIIとの間に他の
制限酵素切断点Hind III,Sph I及びSac Iを含有し;そ
して (c)前記制限酵素切断片Hpa IとHae IIIとの間に制限
酵素切断点Cla I,Bgl II,BamH I,EcoR I,Pst I,Sal I,S
ma I,Xba I、及びXho Iを含有しない; ことを特徴とするDNA断片、そのDNA断片及び選択マーカ
ーを含んで成るDNA、並びにこのDNA断片の導入により形
質転換された微生物を提供するものである。
〔具体的な説明〕
遺伝子組換え技術による微生物の改良は一般に先ず遺伝
子を、必要により該遺伝子の発現及び発現生成物の分泌
のための遺伝子と共に、その供与細胞から取り出し、試
験管内でベクターDNAと結合させ、得られた組換え体DNA
を宿主細胞に取り込ませる。そして目的とする組換え体
DNAを有する宿主細胞を増殖せしめ、導入遺伝子を発現
せしめることによって目的の生成物を得る。
本発明においては、形質転換体におけるアルカリプロテ
アーゼの高い生産性を得るため、目的生成物であるアル
カリプロテアーゼの構造遺伝子と共に、該構造遺伝子に
天然に付随している発現・分泌に必要な領域、例えばプ
ロモーター領域、プレ・プロ配列コード領域、ターミネ
ーター領域を用いるのが好ましい。従って、本発明にお
いては、前記構造遺伝子とその関連遺伝子領域を一体と
して切り出す。本発明におけるアルカリプロテアーゼの
構造遺伝子およびその関連遺伝子、すなわち発現・分泌
のための領域を含むDNA断片は、通常アルカリプロテア
ーゼ生産能を有する微生物の染色体DNAより適当な制限
酵素によって切り出されたものが用いられるが、原則と
してその由来については特別な制限はなく、例えば土壌
や他の天然物から分離されるアルカリプロテアーゼ生産
能を有する野性株は勿論のこと、それらを紫色線照射や
化学物質による処理をして得られる人工的突然変異株等
いずれでもよい。この様な微生物としては、アルカリプ
ロテアーゼ生産能を有するバチルス属微生物であれば特
に制限はなく、例えばバチルス・ズブチルス(Bacillus
subtilis)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus li
cheniformis)、バチルス・アミロリクエファシエンス
Bacillus amyloliqaefaciens)、バチルス・アルカロ
フィラス(Bacillus alcalophilus)及びバチルス・ス
テアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilu
s)、並びにその他のバチルス属に属する微生物があげ
られる。特にバチルス・リケニホルミスATCC-14580、バ
チルス・ズブチルスIFO-3013、バチルス・アミロリクェ
ファシエンスATCC-23842、バチルス・ステアロサーモフ
ィラスATCC-8005、バチルスNKS-21(微工研条寄第93
号)等が適している。
上記の染色体供与微生物から、染色体DNA断片を得るに
は、公知の方法、例えばSaito-Miuraの方法(Biochim B
iophys Acta72619(1963))やMarmurの方法(J.Mol.Bi
ol.3208(1961))等を用いることができるが、これら
の方法に限らず他の如何なる方法でもよい。
これらの染色体DNAより該DNAを切出すのに用いられる制
限酵素は、アルカリプロテアーゼの構造遺伝子およびそ
の発現・分泌のための領域に切断部位を有しないほうが
扱いやすいが、切断部位を有する制限酵素でも部分切断
の条件で用いればよく、如何なるものでも使用可能であ
る。
この様にして染色体から切り出されたDNA断片は、それ
を発現宿主細胞に導入するためのベクターに直接組み込
むこともできるが、一旦クローニングベクターに組み込
むことによってクローニングし、しかる後に導入用ベク
ターに組み込むのが便利である。このようなクローニン
グベクターとしては、用いる宿主菌中で複製可能なもの
であれば何でもよく、例えば枯草菌を宿主とする場合は
pUB110,pC194,pE194,pTP4,pTP5,又はpSD3051(特開昭61
−88873)、あるいはそれらの一部又は全部を含む複合
プラスミド等が、また大腸菌を宿主とする場合は、pBR3
22,pUC18,pHSG396,pSC101,pSF2124,pJB8,pAcYC184,pCR
1,RK6,pBR328,又はpSD3165(特開昭61-104790)、ある
いはその一部又は全部を含む複合プスラミド等があげら
れる。また、クローニングベクターとしてはファージも
利用可能であり、枯草菌を宿主とする場合はρ11ファー
ジ、φ105ファージ等を、大腸菌を宿主とする場合はλ
ファージ、M13ファージ等をあげることができる。
クローニング用宿主としては、上記クローニングベクタ
ーを複製することができるものであれば何でもよいが、
形質転換能が高いほうが望ましく、例えば枯草菌、大腸
菌等があげられる。
形質転換の方法は通常用いられる方法で実施可能であ
り、例えば枯草菌の場合にはコンピーテントセル法〔J.
Bacteriol81741(1961)〕、プロトプラスト法〔Mol.Ge
n Genet.168111(1978)〕、またはレスキュー法〔Mol.
Gen Genet.177459(1980)〕等を用いることができ、大
腸菌の場合にはカルシウム法〔J.Mol.53159(1970)〕
またはルビジウム法〔Method in Enzymology68p253 Aca
demic Press(1979)〕等を用いることができるが、こ
れらの方法に限らない。
形質転換株は、枯草菌を宿主とする場合には選択培地と
して、スキムミルクまたはカゼインを含む寒天培地を用
いることでコロニーの回りに生ずるクリヤーゾーンで容
易に選択できる。大腸菌を宿主とする場合にはリゾチー
ム、クロロホルム等で溶菌させた後生じるクリヤーゾー
ンによる方法等で選択可能であるがこれらの方法に限ら
ない。
上記により得られた形質転換株により、常法により組換
体DNAを調製し、目的のアルカリプロテアーゼの構造遺
伝子並びにその発現・分泌に必要な領域を有するDNA断
片を含む組換体DNAを得ることができる。
上記のDNA断片は必ずしもその天然の形態である必要は
なく、そのDNA断片の一部または全部を含む誘導体とし
ても用いることができる。誘導体DNAとしては、例えば
該DNA断片を適当な制限酵素や、Bal31,エキソヌクレア
ーゼIII,S1ヌクレアーゼなどの酵素等を用いて短小化し
たDNA断片や末端にリンカー等の合成DNAを結合したDNA
断片、またアルカリプロテアーゼの構造遺伝子部分に他
の遺伝子のプロモーター領域、シグナル配列、ターミネ
ーター等を結合したDNA、等があげられるが、これらに
限らず他のものでもかまわない。また、アルカリプロテ
アーゼのアミノ酸配列を変えることなく、1個又は複数
個の塩基を置換したDNAや、酵素活性を破壊しない範囲
でアミノ酸の欠失、付加又は置換が行われている蛋白質
をコードするDNAを使用することもできる。
本発明はまた、前記のごとき、アルカリプロテアーゼの
構造遺伝子とその関連遺伝子を含むDNA断片に加えて、
これらが宿主細胞に導入された場合にその宿主細胞の選
択を容易にする選択マーカー遺伝子を含有するDNAにも
関する。このDNAは典型的にはベクターと結合した形を
とることができるが、ベクターDNAと結合しない形でも
用いることができる。これには線状DNA、環化されたDNA
が含まれる。選択可能な遺伝子マーカーとは宿主菌内で
発現するものであれば特に制限はなく、例えば薬剤耐性
遺伝子、アミノ酸生合成遺伝子、核酸生合成遺伝子,ビ
タミン生合成遺伝子,その他生体内物質の生合成遺伝子
などがあげられる。薬剤耐性遺伝子としては、例えばテ
トラサイクリン耐性遺伝子,クロラムフェニコール耐性
遺伝子,エリスロマイシン耐性遺伝子,カナマイシン耐
性遺伝子等が挙げられる。
以上の様にしてクローニングされたDNA断片は、前記ク
ローニングベクターに組込まれたままで発現宿主微生物
に導入される(すなわち、クローニング・ベクターがそ
のまま、発現宿主へDNA断片の導入のためのベクターと
して使用される)か、又は他の導入用ベクターに移され
た後、あるいはベクターを用いないDNA断片のみで発現
用宿主に導入される。
導入用ベクターの種類は発現用宿主の種類に依存して選
択される。本発明の方法において使用する発現用宿主と
しては、例えば大腸菌やバチルス属に属する細菌が挙げ
られる。導入用ベクターの選択はまた、導入された遺伝
子の発現宿主中での存在形態をいかにするか、すなわ
ち、導入された遺伝子を宿主の染色体に組み込むか、ベ
クター中に維持するかによっても異る。発現用宿主とし
て腸菌を使用する場合には、そのための導入及び発現用
ベクターとしてColE1,pSC101,pSC105,pSF2124,pJB8,pAc
YC184,pCR1,R6K,pBR322,pBR325,pBR328,pUC18,pHSG396,
pSD3165等のプラスミドが使用される。他方、バチルス
属細菌を発現用宿主として用い、導入した遺伝子をプラ
スミド上に維持しようとする場合には、導入・発現用ベ
クターとして、例えば、pUB110,pC194,pE194,pTP5,pSD3
051(特開昭61−162187)等のプラスミドを使用するの
が好ましい。また、発現用宿主としてバチルス属細菌を
使用し、導入された遺伝子を宿主の染色体に組み込もう
とする場合には、導入用ベクターは宿主細胞中で複製し
ないことが好ましく、この場合にはバチス属発現用宿主
に遺伝子を導入するためのベクターとして、大腸菌用ベ
クター、例えばColE1,pSC101,pSF2124,pJB8,pAcYC184,p
CR1,R6K,pBR322,pBR325,pBR328,pUC18,pHSG396,pSD3165
(特開昭61-104790)等のプラスミドを用いるか、ある
いはベクターを用いないでDNA断片のみを用いるのが好
ましい。
前記のごとく、本発明においては、大腸菌やバチルス属
に属する微生物のごとき細菌を用いることができるが、
大腸菌は培養管理が容易であるが、菌体内で生産された
目的生成物を菌体内に分泌せしめることが困難であると
いう問題点を有し、これに対して、バチルス属細菌は生
産された蛋白を菌体外に分泌するので工業的見地から有
利である。そこでバチルス属細菌を発現用宿主として用
いる場合について詳細に説明する。
バチルス属の発現用宿主としては、最初に遺伝子が切り
出された細菌株と同じ株を用いる(すなわち、遺伝子供
与株と発現宿主株を同一にする)こともでき、又は異る
こともできる。
遺伝子供与株と発現宿主株とが同一である場合、宿主株
が本来その染色体上に有するアルカリプロテアーゼ遺伝
子に加えてさらにアルカリプロテアーゼ遺伝子が人為的
に導入されるため遺伝子のコピー数が増加し、アルカリ
プロテアーゼの生産性の向上が保証されること、宿主株
が本来生産するプロテアーゼと導入された遺伝子により
生産される目的プロテアーゼとが同一であるから、種類
の異るプロテアーゼやその他の蛋白質が夾雑することが
なく、目的プロテアーゼの精製が容易であること、等の
利点を有する。他方、アルカリプロテアーゼ生産株は通
常アルカリ性条件下で培養しなければならないため、培
養・醗酵管理が幾分厄介である。
これに対して、バチルス・ズブチリス等、通常の条件下
で培養することができる株を発現用宿主として用いれ
ば、その培養・醗酵管理が極めて容易になり、工業的見
地から有利であるが、他方宿主が本来生産するプロテア
ーゼと導入された遺伝子が生産するプロテアーゼとが異
るため、目的プロテアーゼの精製に困難が伴う等、別途
解決しなければならない問題点が存在する。
本発明に用いられる宿主菌として代表的なものを列挙す
れば、バチルス・ズブチルス、バチルス・リケニホルミ
ス、バチルス・アミロリクェファシェンス、バチルス・
アルカロフィラス、バチルス・ステアロサーモフィラ
ス、バチルス・セレウス、バチルス・ブレビス、バチル
ス・チューリンゲンシス、バチルスNKS-21等がある。
宿主が本来生産するプロテアーゼが目的プロテアーゼに
夾雑するという前記の問題点を解決するための1つの方
法として、発現宿主としてプロテアーゼ非生産性株を用
いる方法がある。この様な菌株は前記のバチルス属の株
を人為的に変異処理して得ることができる。
尚、本発明においてDNAを染色体に挿入する場合には、
導入されるDNAと宿主菌の染色体DNAの一部とが相同であ
ることが必要であるが、導入されるDNAの他の部分に宿
主菌の染色体DNAとの相同性があれば、アルカリプロテ
アーゼの構造遺伝子およびその発現・分泌のための領域
を含むDNA断片が宿主菌の染色体DNAと相同性を有するこ
とは必ずしも必要ではない。
該DNAの上記宿主菌への形質転換は、公知の方法、例え
ばコンピーテントセル法〔J.Bacteriol.81741(196
1)〕或いはプロトプラスト法〔Molec.Gen Genet168,11
1(1979)〕等で実施可能であるが、これらの方法に限
らず、如何なる方法でも可能である。尚、形質転換にあ
たり、導入DNAが環状でない場合は、形質転換頻度の向
上のため、T4ファージDNAリガーゼ等の酵素を用いて環
状にしておくことが望ましい。
形質転換の選択は、スキムミルクあるいはカゼインを加
えた寒天培地上でのクリアーゾーン形成や導入DNAに結
合した遺伝子マーカーの発現により行なうことができる
が、他の方法でも可能である。
上記のようにして得た形質転換株を培養する培地として
は特に制限はなく、該形質転換株が生育すれば用いるこ
とが可能である。
以下に本発明のプロテアーゼの製造法について代表的な
例を示し、更に具体的に説明する。但しこれらは単なる
例示であり、本発明はこれらのみに限られない。
実施例1. プラスミドpHSG396(宝酒造株式会社)DNAを制限酵素Ec
oR IおよびBamH Iで切断し、同様にEcoR IおよびBamH I
で切断し、大腸菌アルカリフォスファターゼにより末端
リン酸エステル結合を加水分解したプラスミドpUB110
〔Pro.Natl.Acad.Sci.USA75,1428(1978)〕DNAとそれ
ら生じたDNA末端の数が同じになるように混合し、T4フ
ァージDNAリガーゼを用いて結合反応を行った。このDNA
を用い、バチルス・ズブチルスBD224(trpC2 thr5 recE
4)をプロトプラスト法により形質転換し、カナマイシ
ン耐性の形質転換株を選択した。これらの形質転換株よ
り、常法によりプラスミドDNAを抽出・精製し、分析し
た結果pUB110のEcoR I,BamH I切断点の間に、pHSG396の
ポリリンカーのEcoR I−BamH I間の部分が挿入された約
3.8kbpの組換体プラスミドpsDT800(第1図)を得た。
他方、Saito-Miuraの方法により得たバチルスNKS-21の
染色体DNAを制限酵素でCla Iで切断し、同じくCla Iで
切断し、大腸菌アルカリフォスターゼにより末端リン酸
エステル結合を加水分解したpSDT800と混合し、T4ファ
ージDNAリガーゼを用いて結合反応を行う。このDNAを用
いバチルス・ズブチルスBD224をプロトプラスト法で形
質転換し、カナマイシン耐性の形質転換株を選択する。
得られたカナマイシン耐性の形質転換株をカナマイシン
70ppm、スキムミルク2%を含むL寒天培地(1%トリ
プトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、1.5
%寒天)に植え継ぎ37℃で18時間保温し、クリアーゾー
ン形成を調べた。約20000株のカナマイシン耐性形質転
換株について調べた結果3株が、コロニーのまわりに大
きなクリアーゾーンを形成することを見出した。これら
3株より、常法に従いプラスミドDNAを抽出精製し、分
析したところいずれもpSDT800のCla I切断部位に約3.2k
bpのDNAを挿入した組換体DNAが得られた。このDNAをpSD
T282と命名した(第2図)。
pSDT282を用いてバチルス・ズブチルスBD224をコンピー
テントセル法により形質転換し、カナマイシン耐性の形
質転換株を選択した。得られたカナマイシン耐性形質転
換株はスキムミルク2%を加えたL寒天培地で100%大
きなクリアーゾーンを形成した。この形質転換株をL液
体培地で21時間培養し、その培養上清のプロテアーゼ活
性を測定したところこの形質転換株はアルカリプロテア
ーゼを大量に分泌生産していることが示された。
プロテアーゼの活性は次の様にして測定した。
培養上清を0.1M炭酸ソーダ0.1Mホウ酸一塩化カリウム緩
衝液(pH10.0)で適当に希釈した液0.5mlにpH10.0の2
%ミルクカゼイン溶液0.5mlを加えて、30℃で10〜30分
酵素反応をさせた。酵素反応の終了は0.2M酢酸−0.2M酢
酸ソーダ緩衝液を含む0.1Mトリクロル酢酸2mlを加えて
反応を停止させた。30℃、10分以上放置後濾紙を用いて
濾過した。濾液1mlに0.4M炭酸ソーダ5ml、6倍希釈のフ
エノール試薬1mlを添加し、30℃、20分間放置して発色
させたのち660nmにおける吸光度を測定する。なお、酵
素単位は国際酵素委員会の「エンザイムノーメンクレイ
チャー」に従がい、30℃でpH10.0の1%カゼインを基質
とし1秒間チロシン1モル相当量の660nmの発色を示す
トリクロル酢酸可溶性物質を遊離するアルカリプロテア
ーゼ量を1カタール(katal)とする。
また、この培養上清を抗原とし、枯草菌およびバチルス
NKS-21のアルカリプロテアーゼに対する抗血清を用いた
免疫二重拡散法の結果該形質転換株の分泌するアルカリ
プロテアーゼはバチルスNKS-21型のものであることも判
明した。
pSDT282中の挿入DNA断片の制限酵素切断点(下方)、
と、塩基配列の決定に基いて推定される遺伝子中の各機
能領域(下方)の関連を第3図に示す。約3.2kbpから成
るCla I断片は、制限酵素切断点BamH I,EcoR I,Pst I,S
al I,Sma I,Xba I及びXho Iを含有していなかった。ア
ルカリプロテアーゼ関連遺伝子、すなわち、約200〜300
bpのプロモーター領域、約90bpのPre体コード領域、約2
70bpのPro体コード領域、約820bpのアルカリプロテアー
ゼ構造遺伝子及び約100bpのターミネーター領域がHpa I
−Hae III間の約2300bpの範囲に含まれる。
実施例2. pSDT282を用いバチルスNKS-21をプロトプラスト法によ
り形質転換し、カナマイシン耐性の形質転換株を取得し
た。該形質転換株をカゼイン1%、ミートエキス1%,
ポリペプトン1%,及び炭酸水素ナトリウム1%を含有
し、水酸化ナトリウムでpHを9.5に調整した培地300ml中
で66時間振とう培養し、培養上清の酵素活性を測定した
ところ23.1マイクロカタール/lの酵素活性を示した。こ
れは平行して培養したバチルスNKS-21の約5.1倍であっ
た。
実施例3. プラスミドpHSG396のDNAを制限酵素Cla Iで切断し、大
腸菌アルカリフォスファターゼにより末端リン酸エステ
ル結合を加水分解し、同様にCla Iで切断したpSDT282と
混合し、T4ファージDNAリガーゼで結合させる。このDNA
を用い大腸菌JM105(thi rpsL endA sbcB15 hspR4,Δ
(lac-proAB),〔F′,traD36,proAB,lac8ZΔM15〕)
をカルシウム法により形質転換し、クロラムフェニコー
ル耐性でかつ、イソプロピル−β−D−チオ−ガラクト
ピラノシド(IPTG)および5−ブロモ−4−クロロ−3
−インドール−β−ガラクトシド(X-Gal)添加により
白色コロニーを形成する形質転換株を取得した。該形質
転換株より組換体DNAを抽出精製し、分析した結果、pHS
G396のCla I切断部位に約3.2kbpのpSDT282のCla I切断
断片が挿入された組換体DNA pSDT812が得られた(第4
図)。
実施例4. プラスミドpSD3165(特開昭61−104790)のDNAを制限酵
素Cla Iで切断し、大腸菌アルカリフォスファターゼに
より末端リン酸エステル結合を加水分解し、同様にCla
Iで切断したpSDT282と混合し、T4ファージDNAリガーゼ
で結合させる。このDNAを用い大腸菌JM105をカルシウム
法により形質転換し、アンピシリン,テトラサイクリ
ン,クロラムフェニコールにいずれも耐性を有する形質
転換株を取得する。該形質転換株より組換体DNAを抽出
精製し、分析した結果pSDY3165のCla I切断部位に、約
3.2kbpのpSDT282のCla I切断断片が挿入された組換体DN
A pSDT831が得られた(第5図)。
実施例5. 実施例4において作製したプラスミドpSDT831を用い、
バチルスNKS-21をプロトプラスト法で形質転換し、クロ
ラムフェニコール耐性の形質転換体を得た。この形質転
換株をカゼイン1%、ミートエキス1%、ポリペプトン
1%、炭酸水素ナトリウム1%を含有し、水酸化ナトリ
ウムでpHを9.5に調整した培地300ml中で66時間振とう培
養し、培養上清の酵素活性を測定したところ8.6マイク
ロカタール/lの酵素活性を示した。これは平行して培養
したバチルスNKS-21の約1.9倍であった。
実施例6. 実施例1において作製したプラスミドpSDT282をHae III
で切断し、アガロースゲル電気泳動法により各断片を分
離する。アルカリプロテアーゼの構造遺伝子およびその
発現分泌のための領域を含む約2.6kbのDNA断片を含むア
ガロースゲル部分を切りとり、常法によりDNAを分離、
精製した。このDNA断片にT4−ファージDNAリガーゼを作
用させ環状のDNAにした。このDNAを用い、バチルスNKS-
21にプロトプラスト法で形質転換する。得られた形質転
換体を2%スキムミルクを含んだL寒天培地に移し、大
きなクリーンゾーンを形成する株を選択した。該形質転
換株をカゼイン1%、ミートエキス1%、ポリペプトン
1%、及び炭酸水素ナトリウム1%を含有し、水酸化ナ
トリウムでpHを9.5に調整した培地300mlで66時間振とう
培養し、培養上清の酵素活性を測定したところ、7.7マ
イクロカタール/lの酵素活性を示した。これは平行して
培養したバチルスNKS-21の約1.7倍であった。
実施例7. バチルス・ズブチルスUOTO531(TrpC2,Leu A8)(東京
大学応用微生物研究所)をL寒天培地で30℃一晩生育さ
せ、その一白金耳量を0.5%酵母エキスを含むスピザイ
ゼン培地〔(NH4)2SO40.2%、K2HPO41.4%、KH2PO40.6
%、クエン酸ナトリウム2H2O0.1%、MgSO47H2O0.02%、
グルコース0.5%〕で対数増殖期中期まで培養した。培
養液を10000G10分間遠心分離して菌体を集め、TMN緩衝
液(0.15%NaCl,10mM MgCl2,10mM Tris-HCl,pH7.0)で
2回洗浄した。次に菌体を5mlTM緩衝液(10mM MgCl2,10
mM Tris-HCl,pH7.0)に懸濁し、0.5mgのN−メチル−
N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジンを添加し、37℃
で15分間振とうした。10000G10分間遠心分離して菌体を
集めTMN緩衝液で2回洗浄後、2%スキムミルクを含む
L寒天培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%
NaCl、1.5%寒天)に広げた。約10000個のコロニーの中
から1株クリアーゾーンを形成しない株を取得した。該
菌株をL液体培地で37℃21時間培養し、培養上清のプロ
テアーゼ活性をアンソン・ヘモグロビン法(J.Gen.Phys
iol.2279(1938))によりpH7.0,pH10.0で測定したとこ
ろ、0.1ナノカタール/ml以下であった。本菌株をバチル
スSD-800と命名した。
実施例8. pSDT282を用いバチルスSD800をプロトプラスト法により
形質転換し、カナマイシン耐性の形質転換体を選択し
た。該形質転換株を、カゼイン1%、ミートエキス1%
及びポリペプトン1%を含有し、炭酸ナトリウムでpH7.
5に調整した培地300ml中で66時間振とう培養し、培養上
清の酵素活性を測定したところ18.6マイクロカタール/l
の酵素活性を示した。
実施例9. pSDT282をHae IIIで切断し、アガロースゲル電気泳動法
により各断片を分離する。アルカリプロテアーゼの構造
遺伝子およびその発現分泌のための領域を含む約2.6kbp
のDNA断片を含むアガロースゲル部分を切りとり、常法
によりDNAを分離、精製した。このDNA断片にT4ファージ
DNAリガーゼを作用させ環状のDNAにした。このDNAを用
い、バチルスSD800をプロトプラスト法により形質転換
した。得られた形質転換株を2%スキムミルクを含んだ
L寒天培地に移し大きなクリアーゾーンを形成する株を
選択した。該形質転換株(バチルスSD-2001)(微工研
条寄第9706号)をカゼイン1%、ミートエキス1%及び
ポリペプトン1%を含有し、炭酸ナトリウムでpH7.5に
調整した培地300ml中で66時間振とう培養し、培養上清
の酵素活性を測定したところ7.9マイクロカタール/lの
酵素活性を示した。
【図面の簡単な説明】
第1図は、クローニング用ベクターpSDT800の制限酵素
切断点地図を示す。 第2図は、第1図に示すpSDT800のCla I部位に、染色体
由来のアルカリプロテアーゼ遺伝子を含む約3.2kbpのCl
a I−DNA断片が挿入されたバチルス用プラスミドpSDT28
2の制限酵素切断点地図を示す。 第3図は、染色体由来の前記約3.2kbpのCla I−DNA断片
の制限酵素切断片地図(B)、並びにアルカリプロテア
ーゼ構造遺伝子及びそれに関する領域の推定される位置
(A)を示す。(B)における数値は各制限酵素切断点
間のおよその塩基対の数を示す。(A)において、pは
推定されるプロモーター領域、Preは推定されるプレ体
コード領域、Proは推定されるプロ体コード領域、Mは
成熟アルカリプロテアーゼのコード領域(構造遺伝
子)、そしてTは推定されるターミネーター領域を示
し、数字は各領域のおよその塩基対数を示す。 第4図は、プラスミドpSDT282由来のアルカリプロテア
ーゼ遺伝子を含有する約3.2kbのCla I−DNA断片を含有
する大腸菌プラスミドpSDT812の制限酵素切断点地図を
示す。 第5図は、プラスミドpSDT282由来のアルカリプロテア
ーゼ遺伝子を含有する約3.2kbのCla I−DNA断片を含有
する大腸菌プラスミドpSDT831の制限酵素切断片地図を
示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 15/09 C12R 1:07) (C12N 1/21 C12R 1:07) C12R 1:07) (72)発明者 藤原 嘉夫 東京都大田区多摩川2―24―25 昭和電工 株式会社生化学研究所内 (72)発明者 福山 志朗 東京都大田区多摩川2―24―25 昭和電工 株式会社生化学研究所内 (56)参考文献 J.Bacteriol.第159巻第3 号(1984)P.811−819

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】バチルス(Bacillus)属微生物由来のアル
    カリプロテアーゼをコードする構造遺伝子を含有するDN
    A断片であって、 (a)該DNA断片は制限酵素切断点Hpa IとHae III
    (2)とにより両端を規定されるアルカリプロテアーゼ
    構造遺伝子含有領域を含んで成り; (b)前記制限酵素切断点Hpa IとHae III(2)との間
    に他の制限酵素切断点Hind III,Sph I及びSac Iを含有
    し;且つ前記の制限酵素切断点の位置関係が下記制限酵
    素地図: の通りであり;そして (c)前記制限酵素切断片Hpa IとHae III(2)との間
    に制限酵素切断点Cla I,Bgl II,BamH I,EcoR I,Pst I,S
    al I,Sma I,Xba I、及びXho Iを含有しない; ことを特徴とするDNA断片。
  2. 【請求項2】前記制限酵素切断片Hpa IとHae III(2)
    とにより両端を規定される領域に加えて、さらにHae II
    I(1)と前記Hpa Iとにより両端を規定される追加の領
    域を含んで成る、特許請求の範囲第1項に記載のDNA断
    片。
  3. 【請求項3】バチルス(Bacillus)属微生物由来のアル
    カリプロテアーゼをコードする構造遺伝子を含有するDN
    A断片であって、 (a)該DNA断片は制限酵素切断点Hpa IとHae III
    (2)とにより両端を規定されるアルカリプロテアーゼ
    構造遺伝子含有領域を含んで成り; (b)前記制限酵素切断点Hpa IとHae III(2)との間
    に他の制限酵素切断点Hind III,Sph I及びSac Iを含有
    し;且つ前記制限酵素切断点の位置関係が下記制限酵素
    地図: の通りであり;そして (c)前記制限酵素切断片Hpa IとHae III(2)との間
    に制限酵素切断点Cla I,Bgl II,BamH I,EcoR I,Pst I,S
    al I,Sma I,Xba I、及びXho Iを含有しない; ことを特徴とするDNA断片、並びに選択マーカー遺伝子
    を含んでなるプラスミド。
  4. 【請求項4】バチルス(Bacillus)属微生物由来のアル
    カリプロテアーゼをコードする構造遺伝子を含有するDN
    A断片であって、 (a)該DNA断片は制限酵素切断点Hpa IとHae III
    (2)とにより両端を規定されるアルカリプロテアーゼ
    構造遺伝子含有領域を含んで成り; (b)前記制限酵素切断点Hpa IとHae III(2)との間
    に他の制限酵素切断点Hind III,Sph I及びSac Iを含有
    し;且つ前記の制限酵素切断点の位置関係が下記制限酵
    素地図: の通りであり;そして (c)前記制限酵素切断片Hpa IとHae III(2)との間
    に制限酵素切断点Cla I,Bgl II,BamH I,EcoR I,Pst I,S
    al I,Sma I,Xba I、及びXho Iを含有しない; ことを特徴とするDNA断片を含むプラスミドの導入によ
    り形質転換された細菌。
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DE3527913A1 (de) * 1985-08-03 1987-02-12 Henkel Kgaa Alkalische protease, verfahren zur herstellung von hybridvektoren und genetisch transformierte mikroorganismen

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