JPH0772927A - 形状記憶合金アクチュエータ制御装置 - Google Patents

形状記憶合金アクチュエータ制御装置

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JPH0772927A
JPH0772927A JP21853193A JP21853193A JPH0772927A JP H0772927 A JPH0772927 A JP H0772927A JP 21853193 A JP21853193 A JP 21853193A JP 21853193 A JP21853193 A JP 21853193A JP H0772927 A JPH0772927 A JP H0772927A
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JP
Japan
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temperature
shape memory
memory alloy
strain
stress
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JP21853193A
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English (en)
Inventor
Shinji Aramaki
晋治 荒巻
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Olympus Corp
Original Assignee
Olympus Optical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】ヒステリシスを含む非線形の形状記憶合金アク
チュエータの制御を行うことが可能な形状記憶合金アク
チュエータ制御装置を提供する。 【構成】データベース1は上記形状記憶合金の温度とひ
ずみ、応力の関係を記述している。センサ5は形状記憶
合金の温度とひずみ、応力のうち、少なくとも何れか2
つを計測する。履歴メモリ2は上記センサ5からの信号
を記憶する。制御量演算部3は上記データベース1と上
記履歴メモリ2のデータを用いて上記形状記憶合金をヒ
ータ、SMA4により加熱するエネルギー量を演算す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、形状記憶合金の温度変
化による形状回復動作を利用した形状記憶アクチュエー
タ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、第1の従来技術として、形状記憶
合金の制御については、例えば「システムと制御,Vol.
27,No.9,pp.589-597,1983」に示されているように、
形状記憶合金の温度ひずみ関係を線形で近似し、ヒステ
リシスも無く線形で近似できる範囲のひずみ幅で動作さ
せていた。
【0003】ここで、図10は従来の形状記憶合金アク
チュエータ制御装置の制御ブロック図である。この従来
例では、形状記憶合金の静特性は微小変形量Δx、微小
印加電圧Δuに対する変動力Δfの関係はα,βを定数
として線形の関係 Δf=αΔu+βΔx で示されると仮定し、動特性は1次遅れとしているた
め、形状記憶合金アクチュエータのブロック図は、図1
0の拮抗型形状記憶合金アクチュエータ線形近似部10
1のようになる。ここで、1次遅れ要素が102,10
3の2つに分れているのは、形状記憶合金アクチュエー
タを拮抗して配置し、交互に加熱、放熱することにより
駆動を行なっているからである。さらに、ブロック中の
添字1,2はそれぞれ昇温特性に関する量、降温特性に
関する量を示す。
【0004】一方、第2の従来技術として、位置センサ
と温度センサを形状記憶合金アクチュエータに取り付け
て、それら2つの信号を用いて制御する場合に、温度セ
ンサからの信号を過加熱防止のために用いる技術も提案
されている。
【0005】また、第3の従来技術として、特願平5−
97891号号公報では、温度の履歴を用いて温度−ひ
ずみ関係のヒステリシスにより温度上昇を抑える駆動装
置に関する技術が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、第1の
従来技術は、形状記憶合金を線形で近似しているため、
それを超えるひずみ範囲では使用できないといった問題
がある。一方、第2の従来技術では、線形の範囲を越え
るような領域では、ひずみと温度と応力との関係にヒス
テリシスが存在するために、例えば位置の制御を行なう
際に温度や応力の目標値が設定できず、ひずみセンサよ
り速く形状記憶合金の状態を伝える温度センサからの信
号を用いても位置制御に役立てることができないといっ
た問題がある。
【0007】また、第3の従来技術では、ヒステリシス
を把握できないために、温度−ひずみ経路を最適に設定
できないといった問題がある。本発明は上記問題に鑑み
てなされたもので、その目的とするところは、ヒステリ
シスを含む非線形の形状記憶合金アクチュエータの制御
を行うことが可能な形状記憶合金アクチュエータ制御装
置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の第1の態様による形状記憶合金アクチュエ
ータ制御装置は、ヒータを用いて形状記憶合金の加熱を
行ない、位置制御を行なう形状記憶合金アクチュエータ
制御装置において、上記形状記憶合金の温度とひずみ、
応力のうち、少なくとも何れか2つを計測するとセンサ
と、上記形状記憶合金の温度とひずみ、応力の関係を記
述したデータベースと、上記センサからの信号を記憶す
る記憶手段と、上記データベースと上記記憶手段のデー
タを用いて上記形状記憶合金を加熱するエネルギー量を
演算する制御量演算手段とを具備することを特徴とす
る。
【0009】
【作用】即ち、本発明の第1の態様による形状記憶合金
アクチュエータ制御装置では、ヒータを用いて形状記憶
合金の加熱を行ない、位置制御を行なう形状記憶合金ア
クチュエータ制御装置において、センサが上記形状記憶
合金の温度とひずみ、応力のうち、少なくとも何れか2
つを計測し、データベースが上記形状記憶合金の温度と
ひずみ、応力の関係を記述しており、記憶手段が上記セ
ンサからの信号を記憶し、制御量演算手段が上記データ
ベースと上記記憶手段のデータを用いて上記形状記憶合
金を加熱するエネルギー量を演算する。
【0010】
【実施例】先ず本発明の実施例について説明するに先立
ち、本発明の概要を説明する。図1は本発明の形状記憶
合金アクチュエータ制御装置の概念図である。この図1
に示すように、形状記憶合金の温度とひずみ、応力の関
係を予め記述しているデータベース1は制御量演算部3
に接続されている。そして、形状記憶合金の温度とひず
み、応力のうち少なくとも2つを計測するセンサ5は、
当該センサ5からの信号を記憶する履歴メモリ2に接続
されており、当該履歴メモリ2は制御量演算部3に接続
されている。そして、この制御量演算部3は上記データ
ベース1と上記履歴メモリ2のデータを用いて上記形状
記憶合金をヒータ,SMA4により加熱するエネルギー
量を演算するためのものであり、その出力はヒータ,S
MA4を介してセンサ5に接続されている。
【0011】このような構成において、制御量演算部3
はセンサ5の測定値をフィードバックし、形状記憶合金
に与える制御量を計算する。そのとき、履歴メモリ2か
らそれまでのひずみ履歴ε(t) やオーステナイト比の履
歴Ra(t)を読み出し、次式(1),(2)により形状記
憶合金の特性を求めて制御量の計算に使用する。 Ra =f(θ,σ,Ra(t)) …(1) σ=g(Ra ,ε,ε(t) ) …(2) いま、Ra(t)、ε(t) とが判っているため、この
(1),(2)式は、ひずみと温度、応力の静特性を示
すことになる。尚、このオーステナイト比の履歴Ra
(t)、ひずみ履歴ε(t) は計算を行なう時にその都度、
記憶しても良いし、応力又はひずみ方向が変化した時の
み記憶しておいてもよい。例えば位置制御をしている場
合は位置の指令値しか与えられていないが、上記
(1),(2)式によりその位置に達したときの温度と
応力との関係が判る。
【0012】ここで、本発明では、この応力を外部に行
なう仕事によって求める。即ち、例えばアクチュエータ
が自身の姿勢変化のみで外部に対して仕事をしない時に
は応力を一定とし、外部に仕事をするときは外部に加え
る力から形状記憶合金にかかる応力を計算する。この応
力から前述の温度、応力の関係を用いて温度の目標値を
計算することができ、位置制御に加えて温度制御を行な
うことができる。これにより、より速い信号を出すセン
サからの信号により制御が行なえるため応答が改善す
る。さらに、上述の静特性に加えて動特性を適当に設定
することにより、指令入力に対して、より良い追従性を
示すように形状記憶合金アクチュエータに与える制御量
を決定でき、この与えられた制御量により形状記憶合金
が駆動される。従って、このようにしてヒステリシスを
有する非線形の形状記憶合金アクチュエータを制御する
ことができる。また、制御量演算部3に予め温度−ひず
み経路などの経路条件を入力しておき、それに基づいて
その条件にあった温度−ひずみなどの経路で目標値に到
達するような制御出力値を制御量演算部3で計算し、そ
の経路に沿って形状記憶合金アクチュエータを駆動させ
ることもできる。
【0013】以下、図面を参照して本発明の実施例につ
いて詳細に説明する。図2は本発明の第1の実施例に係
る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の制御ブロック
図である。この図2に示すように、第1の実施例は、履
歴メモリ11と制御演算部12を含んだコンピュータ1
3と、該コンピュータ13から出力されたデジタル信号
をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ(A/
D)変換器14、そのアナログ信号を増幅する増幅器1
5、ヒータ16、温度センサ(熱電対)17、ひずみセ
ンサ(ひずみゲージ)18、2方向性の形状記憶合金1
9により構成されている。そして、2方向性の形状記憶
合金19とヒータ16、ひずみセンサ17、温度センサ
18の配置は詳細には図3に示す通りである。
【0014】このような構成の第1の実施例は、外部か
らのひずみ指令によって形状記憶合金アクチュエータを
位置制御するものである。このひずみ指令は図示しない
コンピュータの外部入力装置から入力される。さらに、
制御演算部12から出力された制御信号はA/D変換器
14でアナログ信号に変換され、増幅器15を介してヒ
ータ16に電流として供給される。そして、ヒータから
発生した熱は図3に示すような熱の流れになっているこ
とから、形状記憶合金19と比べて十分小さな熱容量の
温度センサ17を加熱した後、形状記憶合金19を加熱
する。
【0015】従って、温度センサ17が測定する温度は
形状記憶合金19の温度より形状記憶合金19の熱伝導
の時定数分だけ前の温度ということになる。さらに、温
度センサ17からの信号は履歴メモリ11に蓄えられる
と共に制御演算部12に読み込まれ制御出力演算に使わ
れる。また、ヒータ16から供給される熱によって形状
記憶合金19はある温度を持ち、その温度に応じた変形
を行なう。そして、その変形は形状記憶合金19に取り
付けたひずみセンサ18により測定される。さらに、ひ
ずみセンサ18からの信号は履歴メモリ11に蓄えられ
ると共に制御演算部12に読み込まれ制御出力演算に使
われる。
【0016】この制御演算部12内の動作について更に
詳細に説明すると、特性演算部20は、ひずみ、温度セ
ンサ17からの信号と履歴メモリ11に格納されている
履歴データ、即ちひずみ履歴ε(t) 及びオーステナイト
比の履歴Ra(t)とから次式(3)乃至(8)式を用いて
温度目標値を計算し、更にひずみと温度のPID補償器
21,22の制御ゲインを計算する。
【0017】この計算方法について更に詳細に説明する
と、先ず形状記憶合金19の温度はヒータ16から形状
記憶合金19への熱の伝達が1次遅れと考えられるため
形状記憶合金19の温度θは次式で示される。 θ=θ′/(1+Ts ) …(3) ここで、Tは時定数、θ′は温度センサ17の測定値、
sはラプラス演算子である。また、応力σ、ひずみε、
オーステナイト比Ra の関係を「DSC-Vol.40,Micromec
hanical Systems ,ASME,1992,pp. 171-181 」に紹介
してあるような一般的な次式で示す。 σ=Ra ・Ea ・ε+(1−Ra )(Em ・ε+σM0 * −Em ・ε(t)) …(4) ここで、Ea ,Em はそれぞれオーステナイト、マルテ
ンサイトのヤング率、σM0 * はσM0又は−σM0、ε(t)
は最後にσM0又は−σM0であったときのεである。σM0
はマルテンサイトが双晶変形を開始する応力である。さ
らに、σM0の符号は、引張り方向がプラス(+)、圧縮
方向がマイナス(−)である。
【0018】また、オーステナイト比Ra 、温度θ、応
力σの関係を次式で示す。冷却時は、 Ra =Kra(θ−Mf −c|σ|) …(5) Kra=Ra(t)/(Ms −Mf ) …(6) 但し、 θ−c|σ|>Ms のとき Ra =Ra(t) また、上記(5),(6)式で計算したRa が、 Ra <0 のとき Ra =0 Ra >1 のとき Ra =1 とする。
【0019】加熱時は、 Ra =Kra(θ−As −c|σ|)+Ra(t) …(7) Kra=(1−Ra(t))/(Af −As ) …(8) 但し、 θ−c|σ|<As のとき Ra =Ra(t) また、上記(7),(8)式で計算したRa が、 Ra <0 のとき Ra =0 Ra >1 のとき Ra =1 とする。尚、cはdθ/dσ=cで表される定数であ
り、Ms ,Mf ,As ,Af は、それぞれマルテンサイ
ト変態開始温度、終了温度、オーステナイト変態開始温
度、終了温度、Ra(t)はRa の初期値又は最後に駆動方
向が変わったときのRa の値である。
【0020】次に上記(4)乃至(8)式について詳細
に説明すると、上記(4)式の応力−ひずみ関係は、形
状記憶合金がオーステナイトとマルテンサイトで構成さ
れ、形状記憶合金の応力−ひずみ関係はオーステナイト
とマルテンサイトの応力−ひずみ関係をオーステナイト
の比Ra に基づいてそれぞれを加えたものである。
【0021】ここで、図4(a)に示すように、オース
テナイトの応力−ひずみ関係は線形であり、図4(b)
に示すように、マルテンサイトの応力−ひずみ関係はあ
る応力σM0で双晶変形を起こし応力一定でひずみだけが
増加する領域を有するものであり、図4(c)に示すよ
うに、マルテンサイトが双晶変形を行なった後、逆方向
の応力が加わると、その時点から線形に変形し、−σM0
のときに逆方向の双晶変形を起こす。その為、形状記憶
合金が双晶変形を伴う変形をしたときは、応力−ひずみ
関係はヒステリシスを有することになる。
【0022】次に上記(5)乃至(8)式のオーステナ
イト比、温度、応力の関係の応力一定の場合について説
明すると、冷却時はMs 点以上の温度のときオーステナ
イト比は変化せず、Ms 点からMf 点まではMf 点でオ
ーステナイト比が“0”になるように線形に減少する。
これに対して、加熱時はAs 点以下でオーステナイト比
は変化せずAs 点からAf 点まではAf 点でオーステナ
イト比が“1”になるように線形に増加する。そして、
上記(3)乃至(8)式により、センサから得られた温
度とひずみとによって応力を求め、その応力下で目標の
ひずみになったときの温度を計算し、それを温度の目標
値とする。また、制御補償器であるPID補償器21,
22のゲインを上記(5),(6)式から得られる温度
−ひずみ関係の傾きから決定する。即ち、傾きが急の時
はゲインを小さく、傾きが緩やかな時はゲインを大きく
設定する。
【0023】このように特性演算部20で計算した目標
温度と現在の温度との差分から特性演算部20で計算し
たゲインを設定したPID補償器22により計算して制
御量を求め、予め与えられているひずみの目標値と現在
の値との差分から特性演算部20で計算したゲインを設
定したPID補償器21により計算して求めた制御量と
加えることにより形状記憶合金へ与える制御量を求め
る。
【0024】以上説明したように、第1の実施例に係る
形状記憶合金アクチュエータ制御装置では、温度センサ
17が形状記憶合金19内部の温度ではなく、ヒータ1
6と形状記憶合金19との間の温度を測定しており、ヒ
ータ16から形状記憶合金19への熱伝導前の温度を測
定していることになり、形状記憶合金19の温度をより
速く知ることができるため、それを用いて制御すること
により応答を向上させることができる。またモデルの式
が1次で計算が簡単なため高速に演算をすることができ
る。
【0025】尚、第1の実施例の各構成について種々の
改良、変更が可能であることは勿論である。例えばモデ
ルの式を2次や3次で表現してもよい。また、求められ
た温度−ひずみ関係によって計算されるのはPIDのゲ
インではなく別の非線形制御則を用いてもよい。また、
形状記憶合金19は2方向性のものではなく通常のもの
でバイアスばねを用いた構成や、形状記憶合金を拮抗さ
せて配置し、交互に加熱する構成でもよい。また、ひず
み、温度センサを用いた構成でも応力は計算によって推
定することができるが、正確な力制御を行なうときは力
センサを用いることができ、そのときは力センサにひず
み又は温度センサを組み合せることにより同様に制御す
ることができる。
【0026】次に本発明の第2の実施例について詳細に
説明する。図5は第2の実施例に係る形状記憶合金アク
チュエータ制御装置の構成を示す図である。この図5に
示すように、第2の実施例は、第1の実施例の特性演算
部20が経路演算部30と特性演算部31とに分かれ、
コンピュータの図示しない外部入力装置であるキーボー
ドによって経路条件が外部から入力される以外は第1の
実施例と同様に構成されている。ここで、経路条件とは
ヒステリシスを持つひずみ−温度関係において、位置制
御で、あるひずみを目標点としたときに、そのひずみに
到達するためのヒステリシスループの中の様々な経路の
中でどの経路を通るかを規定する条件である。
【0027】このような構成において、人体内部のよう
な温度がある値以上にできない環境で用いる場合や、消
費できるエネルギーが限られる場合にはヒステリシスの
幅、即ち、同一ひずみでの温度幅を用いて低い温度で高
いひずみを実現する必要がある。そのために、経路条件
として目標のひずみにするためにあるしきい温度を越え
ないという条件と、位置の目標値に到達したときの温度
の目標値とを設定した実施例ついて説明する。
【0028】先ず経路条件に合う経路を求めるための考
え方について説明すると、第1の実施例中の温度、ひず
み、応力、オーステナイト比の関係式(4)乃至(8)
から、現在のオーステナイト比を求め、その温度とオー
ステナイト比によって図6中の1点Aが定まる。ここ
で、最も大きなオーステナイト比−温度関係のヒステリ
シスループは図6中の矢印で示される。位置制御を行な
っているとき目標値はひずみで与えられるが、ヒステリ
シスのため同一ひずみでもそれまでの駆動の履歴によっ
て最大のヒステリシスループ内の様々な値をとる。従っ
て、その駆動履歴を制御することによりヒステリシスル
ープ内の任意の点(ひずみ、温度)にすることが可能に
なる。ここで、アクチュエータが自身の姿勢変化のみで
外部に対して仕事を行なわないときのような応力が一定
の場合について考えると、ひずみは上記(5)乃至
(8)式によりオーステナイト比のみによって決定され
る。
【0029】即ち目標のひずみ及び温度の点を、ひずみ
をオーステナイト比に換算して図6中に設定し、この点
をB点とする。次に経路条件であるしきい温度を図6中
に設定する。形状記憶合金の温度を指定のしきい温度を
越えずに目標の温度及びひずみにすることは、図6中で
指定のしきい温度を越えずにA点からB点への経路を求
めることと同じである。ここで、A点からB点へ行く経
路は上記(4)乃至(8)式により図7(a)に示すよ
うに無限に存在するが、最小の温度の切り返し数で目標
地点に到達する経路を求めると、図7(b)に示すよう
にしきい温度とAs 点とを往復する形が最小の温度の切
り返し数になることが判る。
【0030】以下、図8,9のフローチャートを参照し
て、前述した温度−ひずみ経路を通るようにするための
具体的な第2の実施例の動作を説明する。先ずキーボー
ドから入力されたしきい温度と最終目標点での温度とを
外部入力装置から取り込む(ステップS1)。次いで、
図6中のA点のRa ,εを上記(5)式に代入しσを求
め、該σをσa とする(ステップS2)。そして、図6
中のB点のεとσa とを上記(5)式に代入しB点のR
a を求め、該Ra をRabとする(ステップS3)。さら
に、図6中のB点のθとRabとσa を上記(6)式に代
入してKraを求め、該Kraを上記(7)式に代入しRa
(t)を求め、該Ra(t)をRacとする(ステップS4)。
その後、目標温度をしきい温度とAs 点とに交互に設定
し(ステップS5)、制御ブロックで温度制御を行ない
(ステップS)、その中でRa を求めてそれがC点での
Ra の値Racになったとき、ステップS7でループを抜
けて、目標温度及びひずみ設定で最終目標点Bでの温
度、ひずみを設定し(ステップS8)、制御ブロックで
温度、ひずみ制御を行なう(ステップS9)。上記ステ
ップS6の制御ブロックでは温度制御のみを行なう為、
ひずみ制御のPIDゲインは“0”であり、上記ステッ
プS9の制御ブロックではひずみ制御がメインである
為、ひずみ制御のPIDゲインを大きく設定する。
【0031】ここで、上記ステップS6,S9の制御ブ
ロックの内容は詳細には図9に示す通りである。即ち、
温度センサからの信号を読み込み(ステップS11)、
目標値と温度センサからの信号との差を求め(ステップ
S12)、差が“0”で目標値に達していたときは、こ
の処理を抜ける(ステップS19)。そして、差が
“0”でないときは、加熱時か冷却時か、また、そのと
きの温度範囲によりで分岐して(ステップS13〜1
5)、PIDのゲインを求める(ステップS16,1
7)。そして、そのゲインを基にして、PIDの計算を
行ない温度の制御出力を求め、ひずみの制御出力を加え
てヒータに出力し上記ステップS11に戻る(ステップ
S18)。尚、この図9と同様であるためフローチャー
トで示さないが、温度と同様にひずみで計算した制御出
力と温度の制御出力との和をヒータに出力する。
【0032】以上説明したように、第2の実施例に係る
形状記憶合金アクチュエータ制御装置では、形状記憶合
金アクチュエータの温度がしきい温度以下で動作するよ
うにし、予め与えられた温度と予め与えられたひずみの
最終目標点に到達するという経路条件を基に、温度−ひ
ずみ経路上の中間目標温度点を経路演算部30によって
設定し、その設定された中間目標温度点を順に通るよう
に特性演算部31によりPIDゲインを設定することに
より所定の経路条件の下でヒステリシスの範囲内で任意
の温度、ひずみの点に制御することができる。
【0033】以上詳述したように本発明によれば、制御
演算部は履歴メモリからそれまでのひずみや温度等のデ
ータを読み出し、上記(1),(2)式から現在の形状
記憶合金の特性を求め制御量の計算に使用する。これら
の式が形状記憶合金のヒステリシスを含んだ非線形の静
特性を表わすため、それに基づいた制御則を用いてヒス
テリシスを含んだ領域での形状記憶合金の制御を行なう
ことができる。
【0034】さらに、例えば位置制御をしている場合
は、位置の指令値とセンサからの信号との違いを基にフ
ィードバック制御されるだけでなく、それに加えて上記
式から温度または応力の目標値が計算でき、温度または
応力制御を位置制御に加えて行なうことができる。これ
により、より速い信号を出すセンサからの信号により制
御が行なえるため応答が改善する。
【0035】また、制御演算部に予め温度−ひずみ経路
などの経路条件を入力しておき、それに基づいてその条
件にあった温度−ひずみなどの経路で目標値に到達する
ような制御出力値を制御演算部で計算し、その経路に沿
って形状記憶合金アクチュエータを駆動させることもで
きる。それにより、人体内部のような温度がある値以上
にできない環境で用いる場合や、消費できるエネルギー
が限られる場合などに最適な経路で目標地点(位置な
ど)に到達させることができる。
【0036】尚、本発明は前述した実施例に限定される
ことはなく、種々の改良・変更が可能であることは勿論
である。例えば、低温側にしきい値を持つ場合や、ひず
みに制限がある場合、また温度を下げる方向の応答性を
良くし、消費エネルギーを最小にするヒステリシスルー
プの左端カーブに沿って温度−ひずみ関係を制御すると
きなど広く適用が可能である。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、ヒステリシスを含む形
状記憶合金アクチュエータの制御を行うことが可能な形
状記憶合金アクチュエータ制御装置を提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の形状記憶合金アクチュエータ制御装置
の概念図である。
【図2】第1の実施例に係る形状記憶合金アクチュエー
タ制御装置の制御ブロック図である。
【図3】2方向性の形状記憶合金とヒータとひずみセン
サと温度センサの配置及びヒータからの熱の流れを示す
図である。
【図4】(a)はオーステナイト相の応力−ひずみ関係
を示す図、(b)はマルテンサイト相の応力−ひずみ関
係を示す図、(c)はマルテンサイト相の応力−ひずみ
関係のヒステリシスを示す図である。
【図5】第2の実施例に係る形状記憶合金アクチュエー
タ制御装置の制御ブロック図である。
【図6】第2の実施例において、オーステナイト比−温
度関係を示す図である。
【図7】第2の実施例において、オーステナイト比−温
度関係中の経路を詳細に示す図である。
【図8】第2の実施例の動作を示すフローチャートであ
る。
【図9】サブルーチン“制御ブロック”のシーケンスを
示すフローチャートである。
【図10】従来例に係る形状記憶合金アクチュエータ制
御装置の制御ブロック図である。
【符号の説明】
1…データベース、2…履歴メモリ、3…制御量演算
部、4…ヒータ,SMA、5…センサ、11…履歴メモ
リ、12…制御演算部、13…コンピュータ、14…D
/A変換器、15…増幅器、16…ヒータ、17…温度
センサ、18…ひずみセンサ、19…SMA、20…特
性演算部、21,22…PID補償器、30…経路演算
部、31…特性演算部。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒータを用いて形状記憶合金の加熱を行
    ない、位置制御を行なう形状記憶合金アクチュエータ制
    御装置において、 上記形状記憶合金の温度とひずみ、応力のうち、少なく
    とも何れか2つを計測するとセンサと、 上記形状記憶合金の温度とひずみ、応力の関係を記述し
    たデータベースと、 上記センサからの信号を記憶する記憶手段と、 上記データベースと上記記憶手段のデータを用いて上記
    形状記憶合金を加熱するエネルギー量を演算する制御量
    演算手段と、を具備することを特徴とする形状記憶合金
    アクチュエータ制御装置。
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