JPH0770646A - 歯車の製造方法 - Google Patents

歯車の製造方法

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JPH0770646A
JPH0770646A JP23903793A JP23903793A JPH0770646A JP H0770646 A JPH0770646 A JP H0770646A JP 23903793 A JP23903793 A JP 23903793A JP 23903793 A JP23903793 A JP 23903793A JP H0770646 A JPH0770646 A JP H0770646A
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gear
less
steel
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graphitization
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JP23903793A
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Noriyoshi Oowada
能由 大和田
Toyoaki Eguchi
豊明 江口
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Toa Steel Co Ltd
Original Assignee
Toa Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 冷間加工性に優れた高疲労強度および低騒音
型歯車を得ることができる。 【構成】 C:0.40〜1.00%、Si:0.5〜
3.0%、Mn:0.10〜1.00%、Al:0.0
10〜0.100%、Nb:0.005〜0.050
%、B:0.0005〜0.0100%を含有し、Si
/Mnが2.0以上であり、残部:鉄および不可避的不
純物からなる棒鋼を熱間圧延によって調製し、650℃
〜AC1変態点の温度範囲内において1時間以上加熱し
て、炭化物の50%以上を黒鉛化し、次いで、冷間鍛造
または切削加工して、歯車の中間製品を調製し、次い
で、この中間製品を高周波加熱して、歯車表層部におい
ては、オーステナイト層中に含有炭素の90%以上を溶
かし込み、歯元の芯部においては、オーステナイト層中
の炭素量が0.30wt%以下となるように、前記黒鉛
の一部を地鉄に溶かし込み、そして、前記中間製品に1
00〜300℃の温度範囲内において焼戻しを施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高炭素鋼を黒鉛化焼
鈍して、黒鉛+フェライト組織とすることによって、自
動車用歯車、あるいは汎用歯車の冷間加工性を大幅に向
上させることができ、且つ、浸炭焼入を高周波焼入に代
えた、高疲労強度、低騒音型歯車の製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車用ミッションギヤ等の歯車
は、SCr420、SCM420等の肌焼鋼からなり、
これを軟化焼鈍、冷間鍛造および浸炭焼入することによ
って製造される。
【0003】しかし、浸炭焼入は、通常、鋼を900〜
950℃の高温度域に長時間保持することから、オース
テナイト粒の異常成長を招き、しかも、オーステナイト
粒界酸化、表層部の焼入異常組織等の生成によって、歯
車の面圧疲労および歯元疲労を著しく劣化させることが
あった。更に、騒音の原因となる焼入歪が発生しやすい
という問題を有していた。
【0004】浸炭焼入に代わる表面硬化法として、浸炭
焼入に比べ熱処理費用が比較的安価な高周波焼入が挙げ
られるが、高周波焼入においては、表面硬度を確保する
ために、炭素を0.4wt%以上含有させる必要があ
る。しかし、炭素含有量が0.4wt%以上になると、
球状化焼鈍においても、十分な軟質化が図れないことか
ら、冷間鍛造性および切削加工性に関して大きな問題を
有していた。
【0005】高炭素鋼の軟質化を図る別の手段として、
熱間圧延鋼材をAC1変態点以下の温度域において焼鈍す
ることによって、鋼中のセメンタイトを黒鉛化し、フェ
ライト+黒鉛組織にすることによって、優れた軟質性を
得る技術が、特開昭63−317629号公報および特
開平4−202744号公報に開示されている。しか
し、これらの技術は、主に鋼板の深絞り性の向上を目的
としたものである。
【0006】特開平3−146618号公報には、棒鋼
に上述した技術を適用して、冷間鍛造性の改善を図った
技術が開示されているが、黒鉛化による加工性の向上技
術のみであり、加工後の熱処理技術については、何ら開
示されていない。
【0007】特開平2−107742号公報には、加工
性の他に焼入性の向上方法が開示されているが黒鉛を迅
速にオーステナイト化する技術であり、残留黒鉛の効果
については、何ら開示されていない。
【0008】特開昭49−67816号公報、特開昭4
9−103817号公報、特開昭50−1913号公報
には、黒鉛のチップブレーカー作用を利用して切削性の
向上を図る技術が開示されているが、これらの技術は、
切削性の改善を目的としたものであって、その後の熱処
理方法については、何ら開示されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、これ
らの従来技術は、何れも、黒鉛化による鋼材の一部の特
性向上について言及したものであって、黒鉛化の効果を
総合的に発揮させ、特定部品の加工性の向上から部品性
能の向上を狙ったものではない。
【0010】従って、この発明の目的は、高炭素鋼を黒
鉛化焼鈍して、黒鉛+フェライト組織とすることによっ
て、自動車用歯車、あるいは汎用歯車の冷間加工性を大
幅に向上させることができ、且つ、浸炭焼入を高周波焼
入に代えた、高疲労強度、低騒音型歯車の製造方法を提
供することにある。
【0011】本願発明者等は、上述した従来技術に鑑み
鋭意研究を重ねた結果、次の知見を得た。即ち、C:
0.40〜1.00wt%を含有する熱間圧延棒鋼を6
50℃〜AC1変態点の温度範囲内において1時間以上加
熱して、セメンタイトの50%以上を黒鉛化し、かくし
て、黒鉛+フェライトあるいは黒鉛+フェライト+粒状
セメンタイト組織とすることによって、軟鋼レベルの強
度を得るとともに、切削性の向上を図り、この状態にお
いて、冷間鍛造または切削加工によって歯車の中間製品
を調製し、次いで、適切な高周波加熱条件下において、
適性量の黒鉛を残留させたオーステナイト状態から焼入
を行えば、浸炭焼入を実施しなくても、優れた面圧疲
労、歯元疲労特性を有し、しかも、黒鉛とマトリックス
界面での固体摩擦によるエネルギー損失を利用した制振
性を有する低騒音型歯車を製造することができるといっ
た知見を得た。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は、上述した知
見に基づいてなされたものであって、C:0.40〜
1.00wt%、Si:0.5〜3.0wt%、Mn:
0.10〜1.00wt%、Al:0.010〜0.1
00wt%、Nb:0.005〜0.05wt%、B:
0.0005〜0.010wt%を含有し、Si/Mn
が2.0以上であり、残部:鉄および不可避的不純物か
らなる鋼を熱間圧延して棒鋼を調製し、このようにして
調製した前記棒鋼を、650℃〜AC1変態点の温度範囲
内において1時間以上加熱して、炭化物の50%以上を
黒鉛化し、次いで、このようにして焼鈍した前記棒鋼を
冷間鍛造または切削加工して、歯車の中間製品を調製
し、次いで、このように調製した前記中間製品を高周波
焼入して、歯車表層部においては、オーステナイト層中
に含有炭素の90%以上を溶かし込み、そして、歯元の
芯部においては、オーステナイト層中の炭素量が0.3
0wt%以下となるように、前記黒鉛の一部を地鉄に溶
かし込み、そして、このようにして高周波焼入を施した
前記中間製品に、100〜300℃の温度範囲内におい
て、焼戻しを施すことに特徴を有するものである。
【0013】次に、この発明における数値の限定理由に
ついて説明する。
【0014】先ず、この発明における必須成分の限定理
由について説明する。
【0015】C(カーボン) 適量を黒鉛を分散させ、切削性、制振性の向上を図り、
且つ、歯車成形後に高周波焼入を施して、強度、耐摩耗
性、疲労強度を向上させるには、0.40wt%以上の
Cを添加する必要がある。一方、C含有量が1.00w
t%を超えると、高周波焼入後の硬さの上昇は緩和し、
靱性が劣化する傾向にある。従って、C含有量は、0.
40〜1.00wt%の範囲内に限定すべきである。
【0016】Si(シリコン) Siは、セメンタイトの黒鉛化を促進する元素である。
この作用を利用して焼鈍時間を短縮するには、少なくと
も、0.5wt%以上のSiが必要である。一方、Si
含有量が3.0wt%を超えると、加工性が著しく劣化
する。従って、Si含有量は、0.5〜3.0wt%の
範囲内に限定すべきである。
【0017】Mn(マンガン) Mnは、セメンタイトを安定化することから黒鉛化を阻
害する元素である。しかし、0.10wt%以上のMn
は、焼入性を高め、且つ、鋼中のSと結合してMnSを
形成して、Sの害を除くと共に、切削性にも有効であ
る。一方、Si/Mnが2.0以上の条件下で、1.0
0wt%まで添加しても、黒鉛化が阻害されない。従っ
て、Mn含有量は、0.10〜1.00wt%の範囲内
に限定すべきである。
【0018】Al(アルミニウム) Alは、脱酸剤として必要な元素であり、0.010w
t%以上は必要である。また、Al自体、黒鉛化を促進
する元素であるが、0.100wt%を超えて添加して
も、その効果は飽和する。従って、Al含有量は、0.
010〜0.100wt%の範囲内に限定すべきであ
る。
【0019】Nb(ニオブ) Nbは、オーステナイト結晶粒を微細化して、靱性を向
上させるのに有効な元素である。しかし、0.005w
t%未満では、その効果が十分に現れない。一方、0.
050wt%を超えて添加してもその効果は飽和する。
従って、Nb含有量は、0.005〜0.050wt%
の範囲内に限定すべきである。
【0020】B(ボロン) Bは、BNとして析出することによって、黒鉛化の核生
成サイトとして有効に作用し、且つ、黒鉛の微細分散作
用を有している。しかし、0.0005wt%未満で
は、その効果は十分に認められない。一方、0.010
0wt%を超えて添加してもその効果は飽和する。従っ
て、B含有量は、0.0005〜0.0100wt%の
範囲内に限定すべきである。
【0021】この発明においては、上述した必須成分の
他に、Ni、Mo、Coのうちの少なくとも1つの元素
を更に付加的に含有させてもよいが、次に、これら付加
的成分元素の限定理由について、以下に説明する。
【0022】Ni(ニッケル) Niは、Siと同様、黒鉛化を促進する作用を有してい
る。しかし、3.00wt%を超えて添加しても、フェ
ライトの固溶硬化と材料コストの上昇を招く。従って、
Ni含有量は、3.00wt%以下とすべきである。
【0023】Mo(モリブデン) Moは、炭化物形成元素であるが、単独で炭化物を形成
するために、黒鉛化をあまり阻害しない。従って、更に
強靱化を図る場合に添加するが、1.00wt%以上添
加しても、その効果が飽和する。従って、Mo含有量
は、1.00wt%以下に限定すべきである。
【0024】Co(コバルト) Coは、黒鉛化を促進する作用を有している。しかし、
1.00wt%を超えて添加すると焼入性が低下する。
従って、Co含有量は、1.00wt%以下に限定すべ
きである。
【0025】次に、この発明における不可避的不純物と
しての、P、S、Cr、N元素の限定理由について説明
する。 P(リン) Pは、黒鉛化を阻害する元素であることから、可能な限
り低減することが望ましく、許容上限値は、0.020
wt%である。従って、P含有量は、0.020wt%
以下に限定すべきである。
【0026】Sは、黒鉛化を阻害する元素であるが、切
削性を向上させる効果を有しており、許容上限値は、
0.030wt%である。従って、S含有量は、0.0
30wt%以下に限定すべきである。
【0027】Crは、セメンタイトを安定化すること
で、黒鉛化を著しく阻害する元素であるので、可能な限
り低減することが望ましく、許容上限値は、0.10w
t%である。従って、Cr含有量は、0.10wt%以
下に限定すべきである。
【0028】Nは、鋼中に不可避的に含有される元素で
あるが、BNを生成させる作用を有している。しかし、
N自体は、黒鉛化を阻害する元素であり、BNとして析
出させ、余剰のNを出さないことが必要であり、許容上
限値は、0.0150wt%である。従って、N含有量
は、0.0150wt%以下に限定すべきである。
【0029】次に、この発明における製造プロセスにつ
いて説明する。 熱間圧延した棒鋼の焼鈍条件 棒鋼の焼鈍温度が650℃未満であると、鋼中セメンタ
イトの黒鉛化の促進が図れない。一方、焼鈍温度がAC1
変態点を超えると、パーライトが分解して、オーステナ
イトに変化し、これによって、黒鉛化が阻害される。従
って、棒鋼の焼鈍温度は、650℃〜AC1変態点の範囲
内に限定すべきである。
【0030】黒鉛化率は、焼鈍温度および保持時間によ
って変えることができるが、保持時間が1時間未満で
は、ほとんど黒鉛化が進行しない。従って、保持時間
は、1時間以上に限定すべきである。
【0031】炭化物の黒鉛化率が50%未満では、製品
に所定の軟質性および切削性を付与することができな
い。従って、炭化物の黒鉛化率は、50%以上に限定す
べきである。
【0032】以上のようにして調製された棒鋼は、フェ
ライト地に黒鉛が析出した組織を有し、低強度で且つ延
性、切削加工性に富む性質を有するものであり、この棒
鋼は、冷間鍛造または切削によって歯車の中間製品に加
工され、次いで、高周波焼入が施される。
【0033】 歯車の中間製品の高周波焼入条件 優れた面圧疲労特性および歯元疲労特性を歯車に付与す
るには、歯車表層部において十分な硬度が得られなけれ
ばならない。しかし、オーステナイト層中に溶け込む炭
素量が含有炭素量の90%未満では、歯車表層部に十分
な硬度を付与することができない。従って、歯車表層部
においては、高周波加熱によって、オーステナイト層中
に含有炭素量の90%以上を溶かし込む必要がある。
【0034】歯元の芯部においては、黒鉛による制振性
を付与するために、適量の黒鉛を残す必要がある。即
ち、黒鉛とマトリックスとの界面における固定摩擦によ
るエネルギー損失を利用して、制振性の向上を図るが、
オーステナイト層中に0.30wt%以上の炭素が溶け
込むと、残留黒鉛量の減少に起因して、十分な制振性が
得られない。従って、歯元の芯部においては、高周波加
熱によるオーステナイト層中への炭素溶け込み量を0.
30wt%以下に限定すべきである。
【0035】以上のようにして、高周波焼入された歯車
の中間製品は、歪取りのために100〜300℃の温度
範囲内において、焼戻しが施され、歯車が製造される。
【0036】
【実施例】次に、この発明を実施例によって更に詳細に
説明する。表1に示す化学成分を有する各鋼から熱間圧
延によって、直径20〜90mmの丸棒を調製した。表
1において、A〜Eは本発明鋼、F、Gは比較鋼、そし
て、H〜Jは従来のJIS鋼種であり、H:SCM42
0、I:S45C、J:S53Cである。次いで、各棒
鋼を、650℃〜AC1変態点の範囲内の温度で、5〜2
0hr加熱して、黒鉛化焼鈍を行った。次いで、このよ
うにして焼鈍した各棒鋼からJIS4号試験片を切り出
し、引張試験に供して、TS(引張強さ)、RA(絞
り)、EL(延び)を求めた。また、同一材料から直径
14mm×高さ21mmの切欠き付円柱型試験片を切り
出し、端面完全拘束の条件下で冷間据込み試験に供し
て、限界圧縮率を求めた。この試験に際して、限界圧縮
率は、試験片に割れが発生し始める圧縮率とした。黒鉛
化焼鈍の黒鉛化の状況は、ミクロ組織観察によって黒鉛
粒数および炭化物数を求め、黒鉛粒数/(黒鉛粒数+炭
化物数)×100(%)を黒鉛化率として定量化した。
【0037】
【表1】
【0038】次に、黒鉛化焼鈍を行った一部の棒鋼を歯
車に加工した後に、加熱条件を変えて高周波焼入を行
い、歯車疲労特性および歯車の制振性を評価するため
に、鋼球衝突による音の減衰状態を調査した。
【0039】以下に、上述した試験の結果について説明
する。 (A)黒鉛化焼鈍特性 表2に、本発明鋼A〜Eおよび比較鋼F、Gによる試験
片の黒鉛化焼鈍特性を示す。JIS鋼種H〜Jについて
は、従来の熱処理である球状化焼鈍後の特性を示す。表
2から明らかなように、本発明鋼A〜Eによる試験片に
おいては、5〜20hrの焼鈍によって黒鉛化が迅速に
進行し、JIS鋼種の球状化焼鈍試験片に対し、優れた
軟質性および延性向上が図られている。これに対して、
比較鋼F、Gによる試験片においては、黒鉛化は、全く
進行していない。しかも、黒鉛化した本発明鋼A〜Eに
よる試験片は、限界圧縮率も優れた値を示しており、従
来、歯車用鋼として広く使用されてきたHの球状化焼鈍
鋼試験片と比較しても、冷間加工性の大幅な改善が図ら
れていることがわかる。
【0040】
【表2】
【0041】(B)歯車特性 本発明鋼Bによって直径90mmの丸棒を調製し、これ
に表2の試料番号5におけると同様の条件下で黒鉛化焼
鈍を施した。そして、この丸棒から切削加工によって外
径75mm、モジュール2.5、歯数28枚の歯車の中
間製品を調製し、加熱条件を変えて歯元芯部におけるオ
ーステナイト層中の固溶炭素量を変化させ、高周波焼入
を行った。なお、比較のために、表2の試料番号22に
おけると同様の条件下で調製した比較歯車の中間製品に
ついて浸炭焼入を行った。このようにして製造した歯車
の諸特性を表3に示す。
【0042】(C)高周波焼入特性 高周波焼入条件は、電流値を変化させ、表3に示すa〜
eの5つの条件で行った。焼入後に歯元芯部におけるマ
ルテンサイト中のC量をX線回折によって測定し、加熱
時のオーステナイト中の固溶C量とした。歯元芯部にお
けるオーステナイト中への固溶C量は、0.08〜0.
56wt%の範囲内であるが、固溶C量が0.30wt
%以下の加熱条件a〜cが本発明例、固溶C量が0.3
0wt%を超える加熱条件d、eが比較例である。図2
に、高周波焼入条件をa〜eに変えたときのオーステナ
イト(γ)中固溶C量と歯車位置との関係を示す。な
お、図2の歯車位置1〜3は、図1に示すように、1が
歯先部、2が歯元部、そして、3が孔径部である。
【0043】
【表3】
【0044】表3から明らかなように、高周波焼入後の
歯先表層部の硬さは、何れの加熱条件下においてもHの
浸炭焼入鋼製歯車以上であり、十分な硬さレベルが得ら
れていることがわかる。一方、ミクロ観察の結果、Hの
浸炭焼入鋼製歯車には、深さ15μmの粒界酸化層と、
深さ23μmの焼入異常層が認められたが、高周波焼入
では、これが短時間加熱処理であるので、加熱条件a〜
eの何れにおいても粒界酸化層および焼入異常層は共に
認められなかった。
【0045】(D)歯車疲労特性 上記歯車について、動力循環式歯車疲労試験機を使用し
て、回転数3000rpmで歯車疲労試験を行った。そ
して、繰返し数107 以上で破損しなかったトルク値を
歯元強度として求めた。表3に示すように、高周波焼入
行った加熱条件a〜eでは、粒界酸化層および焼入異常
層が発生していないことから、Hの浸炭焼入鋼製歯車と
比較して高い耐久トルク得られていることがわかる。
【0046】(E)歯車の制振性 歯車の制振性の調査は、次のようにして行った。即ち、
それぞれの歯車単体をひもで吊るし、鋼球を衝突させた
ときの音の減衰をマイクによって受け、騒音計からシン
クロスコープによって波形を記録し、このようにして得
られた波形から振動の原点からn番目の振幅をAn 、最
初の振幅をA0 とし、−1/n・ln (An /A0 )に
よって計算される対数減衰率(δ)を求めることによっ
て行った。図3に、シンクロスコープによって記録され
た波形の一例を示し、図4に、対数減衰率(δ)と歯元
芯部におけるオーステナイト中のC固溶量との関係を示
す。表3および図4から明らかなように、本発明の高周
波加熱条件に合致する加熱条件a〜cにおいては、優れ
た減衰能を有している。これに対して、加熱条件d、e
においては、十分な減衰能が得られていない。これは、
高周波加熱時に黒鉛を十分に残せなかったことによる。
一方、Hの浸炭焼入鋼製歯車の減衰能は、加熱条件eに
おけると同様に小さい。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、高炭素鋼を黒鉛化焼鈍して、黒鉛+フェライト組織
とすることによって、自動車用歯車、あるいは汎用歯車
の冷間加工性を大幅に向上させることができ、且つ、浸
炭焼入を高周波焼入に代えた、高疲労強度、低騒音型歯
車を製造することができるといった有用な効果がもたら
される。
【図面の簡単な説明】
【図1】歯車の正面図である。
【図2】高周波焼入条件を変えたときのオーステナイト
中固溶C量と歯車位置との関係を示すグラフである。
【図3】シンクロスコープによって記録された波形の一
例を示すグラフである。
【図4】対数減衰率(δ)と歯元芯部におけるオーステ
ナイト中のC固溶量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:歯先部、 2:歯元部、 3:穴径部。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.40〜1.00wt%、 Si:0.5〜3.0wt%、 Mn:0.10〜1.00wt%、 Al:0.010〜0.100wt%、 Nb:0.005〜0.050wt%、 B:0.0005〜0.0100wt% を含有し、Si/Mnが2.0以上であり、 残部:鉄および不可避的不純物 からなる鋼を熱間圧延して棒鋼を調製し、このようにし
    て調製した前記棒鋼を、650℃〜AC1変態点の温度範
    囲内において1時間以上加熱して、炭化物の50%以上
    を黒鉛化し、次いで、このようにして焼鈍した前記棒鋼
    を冷間鍛造または切削加工して、歯車の中間製品を調製
    し、次いで、このように調製した前記中間製品を高周波
    焼入して、歯車表層部においては、オーステナイト層中
    に含有炭素の90%以上を溶かし込み、そして、歯元の
    芯部においては、オーステナイト層中の炭素量が0.3
    0wt%以下となるように、前記黒鉛の一部を地鉄に溶
    かし込み、そして、このようにして高周波焼入を施した
    前記中間製品に、100〜300℃の温度範囲内におい
    て、焼戻しを施すことを特徴とする、歯車の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記棒鋼は、 Ni:3.00wt%以下、 Mo:1.00wt%以下、 Co:1.00wt%以下 のうちの少なくとも1つの元素を更に付加的に含有して
    いることを特徴とする、請求項1記載の、歯車の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記不可避的不純物としてのP、S、C
    r、N含有量は、 P:0.020wt%以下、 S:0.030wt%以下、 Cr:0.10wt%以下、 N:0.0150wt%以下 であることを特徴とする、請求項1または2記載の、歯
    車の製造方法。
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Cited By (7)

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