JPH0768182A - メタルハニカム体 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 セル形状が均一で、セル密度が均一な排気ガ
ス浄化能に優れたＳ字状タイプ及び巴状タイプのメタル
ハニカム体を提供する。 【構成】 薄肉鋼板製の一組の平板状帯材と波板状帯材
から成る最小構成単位を所望段数に積層して形成したス
タック（Ｓ）を巻回して製作した排気ガス浄化用触媒を
担持するためのＳ字状タイプまたは巴状タイプのメタル
ハニカム体において、前記スタック（Ｓ）を構成する一
組の平板状帯材と波板状帯材が、少なくとも一箇所で固
着されたもので構成されたことを特徴とするメタルハニ
カム体。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、一般に、自動車の排気
ガス浄化手段として排気系統に介装されて使用される排
気ガス浄化用触媒を担持させるための金属製のハニカム
体（以下、メタルハニカム体という。）に関する。

【０００２】更に詳しくは、本発明は、平板状帯材と波
板状帯材の間に形成されるセル形状が均一で、かつ一定
のセル密度を有するＳ字状タイプまたは巴状タイプのメ
タルハニカム体に関するものである。

【０００３】

【従来の技術】従来、この種の自動車の排気ガス浄化手
段として、セラミック製のモノリスタイプの排気ガス浄
化用の触媒を担持するための担体に代って、メタル製の
モノリスタイプのものが注目されて来ている。一般に金
属製モノリスタイプの排気ガス浄化用の触媒を担持させ
るためのメタル担体（ＭＳ、メタルサブストレート）
は、耐熱性の薄肉鋼板の平板状帯材と波板状帯材を相互
に当接するように重積し、これを一括渦巻状に巻回成形
して製作した軸方向に排気ガス通路のための多数の網目
状通気孔路（セル）を有する巻回タイプのメタルハニカ
ム体と、前記ハニカム体を内部に填装し、固着するため
の両端が開口した筒状の金属製ケーシングとから構成さ
れるものである。なお、前記平板状帯材と波板状帯材の
巻回成形により自動的に排気ガスの流通路となる多数の
網目状通気孔路（セル）が形成される。

【０００４】そして、前記した従来の巻回タイプのメタ
ルハニカム体と金属製ケーシングとは、排気ガス自体の
高温度、及び該排気ガスと排気ガス浄化用触媒との発熱
反応による高い温度雰囲気下で生起する熱膨脹や熱的応
力に耐え得るように、また自動車走行時の激しい振動に
耐え得るようにろう接または溶接などにより強固に固着
される。また、前記メタルハニカム体を構成する平板状
帯材と波板状帯材の当接部は種々の方法により固着され
ることはいうまでもないことである。

【０００５】前記した巻回タイプのメタルハニカム体
は、セラミック性のモノリスタイプのものより種々の点
で優れているものの、前記した激しい熱的条件下で生起
する大きな熱応力に対してまだ改善の余地を残すもので
ある。特に、金属ケーシングの内壁面と当接するメタル
ハニカム体の外周部及びその近傍部位に、過大な熱応力
が集積するため、メタルハニカム体を構成する平板状帯
材や波板状帯材が座屈したり、破損や亀裂をおこしたり
して耐久性を低下させる。これは、メタルハニカム体の
金属製ケーシングの内壁面に当接する外周部が、一組の
平板状帯材と波板状帯材で構成され、かつ該一組の帯材
が金属製ケーシングの内壁面に沿うように当接してお
り、即ち面状に接合しており、メタルハニカム体内部で
発生する熱応力を十分に吸収、緩和することができない
ためである。

【０００６】最近、前記した渦巻状巻回タイプのメタル
ハニカム体にかえて、メタルハニカム体を構成する最小
構成単位、即ち当接関係にある一組の平板状帯材と波板
状帯材から成る最小構成単位において、その最小構成単
位の端部が夫々、金属ケーシングの内壁面に当接する構
造のメタルハニカム体が提案されている。例えば、特開
昭６２−２７３０５０号、特開昭６２−２７３０５１
号、特開平１−２１８６３７号、特公表３−５０２６６
０号、特開平４−２２７８５５号などに、放射状タイ
プ、Ｓ字状タイプ、巴状タイプ、Ｘ−ラップ（卍）状タ
イプのハニカム体が提案されている。

【０００７】前記した放射状タイプ、Ｓ字状タイプなど
のメタルハニカム体は、従来の渦巻状巻回タイプのハニ
カム体より優れたものである。これは、従来の巻回タイ
プのハニカム体においては、前記したように一組の平板
状帯材と波板状帯材で構成される一つの最小構成単位の
端部が金属ケーシングの内壁面に沿って当接しているの
に対し、所定の数の複数の最小構成単位の各端部が金属
ケーシングの内壁面に当接するため、各端部において熱
応力を吸収、緩和することができ、ハニカム体の耐久性
を向上させることができるためである。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
た巻回タイプ以外の各種のメタルハニカム体において、
特にＳ字状タイプ及び巴状タイプのメタルハニカム体に
おいては、製造プロセスの関係上、平板状帯材と波板状
帯材の間に形成される排気ガス通路となる多数の網目状
孔路（セル）の形状が不均一化し、製作当初に設計した
所望のセル密度のもの、従って設計した通りの排気ガス
浄化能をもつメタルハニカム体が得られないという欠点
を有する。

【０００９】前記したＳ字状タイプ及び巴状タイプのメ
タルハニカム体の欠点の解消策について、本発明者らは
鋭意検討を加えた。その結果、一組の平板状帯材と波板
状帯材で構成される最小構成単位を所望段数に積層して
形成したスタック (stack)（Ｓ）を使用するとともに、
前記スタック（Ｓ）の外周面に配設した二以上の巻回成
形用治具を同一方向に巻回して製作したＳ字状タイプ及
び巴状タイプのメタルハニカム体において、前記一組の
平板状帯材と波板状帯材が少なくとも一箇所で固着され
たもので構成されるとき、前記欠点が解消されるととも
に性能に優れたメタルハニカム体が得られるということ
を見い出し、本発明を完成するに至った。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明は、薄肉鋼板製の一組の平板状帯材と波板状帯材か
ら成る最小構成単位を所望段数に積層して形成したスタ
ック（Ｓ）を巻回して製作した排気ガス浄化用触媒を担
持するためのＳ字状タイプまたは巴状タイプのメタルハ
ニカム体において、前記スタック（Ｓ）を構成する一組
の平板状帯材と波板状帯材が、少なくとも一箇所で固着
されたもので構成されたことを特徴とするメタルハニカ
ム体に関するものである。

【００１１】以下、本発明の技術的構成及び実施態様を
図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明は、図示
のものに限定されないことはいうまでもないことであ
る。

【００１２】前記したように、本発明は、各種構造のメ
タルハニカム体のうちＳ字状タイプ及び巴状タイプのメ
タルハニカム体を改良しようとする点に特徴を有する。

【００１３】前記Ｓ字タイプのメタルハニカム体は、図
６〜図７に示されるものである。前記Ｓ字状タイプのメ
タルハニカム体（Ｈ）は、薄肉鋼板製の一組の平板状帯
材（１）と波板状帯材（２）を最小構成単位として製作
される。即ち、図６に示されるように一組の平板状帯材
（１）と波板状帯材（２）を所望段階に積層して一つの
スタック（Ｓ₁ ）を形成する。次いで一つのスタック
（Ｓ₁ ）の外表面（上面及び下面）に二つの巻回成形用
冶具（ｗ₁ ，ｗ₂ ）を配設し、該治具を同一方向（例え
ば反時計回り方向）に巻回することにより、図７に示さ
れるＳ字状タイプのメタルハニカム体（Ｈ₁ ）が製作さ
れる。なお、図７において「Ｓ字状」の形状が見られな
いものの、スタック（Ｓ₁ ）の厚味が十分にあるとき、
スタックを構成する平板状帯材と波板状帯材はＳ字状に
わん曲した形状となるため、当業界においてはこの種の
メタルハニカム体をＳ字状タイプと俗称している。

【００１４】前記巴状タイプのメタルハニカム体は、図
８〜図９に示されるものである。即ち、図８に示される
ように、三つのスタック（Ｓ₁ ，Ｓ₂ ，Ｓ₃ ）を形成
し、各スタックの中心角が１２０°になるように当接さ
せて組合わせる。次いで、各スタックの外表面に一つづ
つ、合計三つの巻回成形用治具（ｗ₁ ，ｗ₂ ，ｗ₃）を
図８に示されるように配設し、該治具を同一方向（例え
ば反時計回り方向）に巻回することにより、図９に示さ
れる巴状タイプのメタルハニカム体（Ｈ₂ ）が製作され
る。なお、図７と図９において、図を明確化するために
１組の平板状帯材と波板状帯材の当接関係を図示してあ
るだけであり、そのほかは省略してある。

【００１５】前記したＳ字状タイプ及び巴状タイプのメ
タルハニカム体の製造例から判るように、スタック
（Ｓ）の最小構成単位である一組の平板状帯材と波板状
帯材において、単に平板状帯材と波板状帯材を当接さ
せ、これを所望段階に積層してスタック（Ｓ）としたも
のにおいては、Ｓ字状または巴状の構造のものに巻回成
形するとき、各最小構成単位に大きな加工応力が印加
し、相互に大きくズレを起こし平板状帯材と波板状帯材
の間に波板状帯材が存在しない領域を形成したり、ま
た、ズレと連動して波板状帯材の波形を変形させたりす
る。これが、均一なセル形状と所定のセル密度をもった
ハニカム体を製造する上で、大きなマイナス要因とな
る。

【００１６】本発明は、前記欠点を解消するために、ス
タック（Ｓ）の最小構成単位である一組の平板状帯材と
波板状帯材を、相互に少なくとも一箇所において固着さ
れたもので構成するという技術的構成を採用する。以
下、その具体的な態様を説明する。

【００１７】図１は、一組の平板状帯材と波板状帯材に
適用される固着手段の第一実施態様を説明する図であ
る。即ち、平板状帯材（１）の一端部において、平板状
帯材（１）平板状帯材（１）と波板状帯材（２）は相互
にスポット溶接（ＳＰ）される。なお、図示しないが、
スポット溶接（ＳＰ）の部位は、平波板状帯材の他方の
端部であってもよいし、あるいは中央部位であってもよ
い。

【００１８】図２は、一組の平板状帯材と波板状帯材に
適用される固着手段の第二実施態様を説明する図であ
る。即ち、平板状帯材（１）の一端部にカール部（折返
し部）（Ｃ）を設けるとともに、該カール部（Ｃ）に波
板状帯材（２）の一端部を挿入、狭持させる。なお、図
示しないが、平板状帯材（１）のカール部に波板状帯材
（２）の端部が挿入、狭持されたあと、図１に示される
ようにスポット溶接を行なってもよい。

【００１９】図３は、一組の平板状帯材と波板状帯材に
適用される固着手段の第三実施態様を説明する図であ
る。第三実施態様は、前記第二実施態様の変形例で、平
板状帯材（１）の両端部にカール部（Ｃ₁ ，Ｃ₂ ）を設
けたことを特徴とするものである。

【００２０】図４〜図５は、前記固着手段としての第三
実施態様、即ち平板状帯材（１）の両端部にカール部
（Ｃ₁ ，Ｃ₂ ）を設ける態様において、該平板状帯材
（１）と組合わされる波板状帯材（２）の構成について
説明するものである。図４に示される波板状帯材（２）
は、平板状帯材（１）と略同等の幅を有するもので構成
される。図５に示される波板状帯材（２）は、平板状帯
材（１）より狭幅で、二以上（図示のものは四本）のス
トリップ材で構成される。なお、この場合、各スリップ
材の間の空間部において、排気ガス流が混攪、乱流化さ
れるため、高価な帯材の使用量を減らしながら排気ガス
浄化能の向上というメリットを享受することが出来る。

【００２１】本発明において、前記Ｓ字状タイプ及び巴
状タイプのメタルハニカム体を製作するために使用され
る平板状帯材（１）としては、通常のメタルノモリスタ
イプのハニカム体を製作するときに使用されている帯
材、例えばクロム鋼（クロム１３％〜２５％）、Ｆｅ−
Ｃｒ２０％−Ａｌ５％などの耐熱性のステンレス鋼、あ
るいはこれに耐高温酸化性を改善するために希土類金属
（ＲＥＭ）を加えた耐熱性のステンレス鋼など、厚さが
０．０４mm〜０．１mmの帯材が使用される。また、波板
状帯材（２）としては、前記平板状帯材（１）から所定
の略正弦波、略三角波もしくは略台形波を有するように
波付加工したものが使用される。なお、平板状帯材
（１）と波板状帯材（２）にＡｌを含有させたものやあ
るいはその表面にＡｌ層を設けたものを熱処理して、そ
の表面にウィスカー状もしくはマッシュルーム状のアル
ミナ（Ａｌ₂ Ｏ₃ ）を析出させたものが好ましい。前記
ウィスカー状などのアルミナは、Ｐｔ，Ｐｄ，Ｒｈなど
の排気ガス浄化用触媒を担持するためのウォッシュコー
ト層を強固に保持することができるので好ましいもので
ある。

【００２２】本発明において、前記Ｓ字状タイプ及び巴
状タイプのメタルハニカム体は、金属製ケーシング内に
填入、固着されて使用されてもよい。前記した金属製ケ
ーシングの素材としては、前記メタルハニカム体を構成
する帯材（１、２）と同種の耐熱鋼を用いてもよいし、
更に耐熱耐食性に富むものを用いてもよい。また、外側
部分の金属材料を内側部分より耐熱耐蝕性に富むものと
した二重構造のもの、具体的には内側部分にフェライト
系ステンレス鋼を、外側部分にオーステナイト系ステン
レス鋼を使用したものを用いてもよい。

【００２３】

【発明の効果】本発明のＳ字状タイプ及び巴状タイプの
メタルハニカム体は、その最小構成単位である一組の平
板状帯材と波板状帯材の夫々の端部がメタルハニカム体
の外周部を形成する構造のものであり、該外周部に集積
する内部応力を各端部で吸収、緩和できることから、従
来の巻回タイプ（前記構造のものと比較して、一組の平
板状帯材と波板状帯材が外周部を形成する。）のメタル
ハニカム体より耐久性に優れたものである。また、本発
明は、この種の従来のＳ字状タイプ及び巴状タイプのメ
タルハニカム体に見られる欠点、即ち、その製造プロセ
スとの関連で誘発されるセル（排気ガス通路のための網
目状通気孔路）の形状の不均一、セル密度の不均一を解
消することができ、従って当初設計した通りの均一なセ
ル密度の排気ガス浄化能に優れたＳ字状タイプ及び巴状
タイプのメタルハニカム体を提供することが出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 一組の平板状帯材と波板状帯材に適用される
固着手段の第一実施態様を説明する図である。

【図２】 一組の平板状帯材と波板状帯材に適用される
固着手段の第二実施態様を説明する図である。

【図３】 一組の平板状帯材と波板状帯材に適用される
固着手段の第三実施態様を説明する図である。

【図４】 平板状帯材と組合わされる第一実施態様の波
板状帯材の構造を説明する平面図である。

【図５】 平板状帯材と組合わされる第二実施態様の波
板状帯材の構造を説明する平面図である。

【図６】 Ｓ字状タイプのメタルハニカム体を製造する
ために使用されるスタック（Ｓ₁ ）の正面図である。

【図７】 Ｓ字状タイプのメタルハニカム体の一部を省
略した正面図である。

【図８】 巴状タイプのメタルハニカム体を製造するた
めに使用されるスタック（Ｓ₁ 〜Ｓ₃ ）の正面図であ
る。

【図９】 巴状タイプのメタルハニカム体の一部を省略
した正面図である。

【符号の説明】

１ ……………平板状帯材 ２ ……………波板状帯材 ３ ……………セル（網目状通気孔路） Ｃ，Ｃ₁ ，Ｃ₂ ……………カール（折り曲げ）部 Ｓ₁ ，Ｓ₂ ，Ｓ₃ …………スタック Ｈ₁ ，Ｈ₂ ……メタルハニカム体 ｗ₁ ，ｗ₂ ，ｗ₃ ………巻回成形用治具

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 薄肉鋼板製の一組の平板状帯材と波板状
   帯材から成る最小構成単位を所望段数に積層して形成し
   たスタック（Ｓ）を巻回して製作した排気ガス浄化用触
   媒を担持するためのＳ字状タイプまたは巴状タイプのメ
   タルハニカム体において、前記スタック（Ｓ）を構成す
   る一組の平板状帯材と波板状帯材が、少なくとも一箇所
   で固着されたもので構成されたことを特徴とするメタル
   ハニカム体。
2. 【請求項２】 固着が、スポット溶接による固着である
   請求項１に記載のメタルハニカム体。
3. 【請求項３】 固着が、平板状帯材の少なくとも一端部
   にカール部を設け、該カール部で波板状帯材の端部を挟
   持した固着である請求項１に記載のメタルハニカム体。
4. 【請求項４】 固着が、カール部においてスポット溶接
   した固着である請求項３に記載のメタルハニカム体。
5. 【請求項５】 波板状帯材が、平板状帯材の幅より狭幅
   の二以上のストリップ材で構成されたものである請求項
   １に記載のメタルハニカム体。
6. 【請求項６】 Ｓ字状タイプのメタルハニカム体が、一
   つのスタック（Ｓ）を使用するとともに、前記スタック
   の外周面に配設された二つの巻回成形用治具を同一方向
   に巻回した製作されたものである請求項１に記載のメタ
   ルハニカム体。
7. 【請求項７】 巴状タイプのメタルハニカム体が、ｎ個
   （ｎ：２以上の整数）スタック（Ｓ）を使用するととも
   に、前記スタックの中心角が３６０°／ｎになるように
   当接させて組合わせ、かつ組合わせ体の外周面に配設し
   た三つの巻回成形用治具を同一方向に巻回して製作され
   たものである請求項１に記載のメタルハニカム体。
8. 【請求項８】 ｎ＝３である請求項７に記載のメタルハ
   ニカム体。