JPH0762272B2 - アルミニウム合金鋳物の表面メツキ層形成方法 - Google Patents

アルミニウム合金鋳物の表面メツキ層形成方法

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JPH0762272B2
JPH0762272B2 JP60112784A JP11278485A JPH0762272B2 JP H0762272 B2 JPH0762272 B2 JP H0762272B2 JP 60112784 A JP60112784 A JP 60112784A JP 11278485 A JP11278485 A JP 11278485A JP H0762272 B2 JPH0762272 B2 JP H0762272B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は自動車部品等に使用されるアルミニウム合金
(以下Al合金と記す)部材、特にAl合金鋳物の表面に、
耐摩耗性や耐食性、耐熱性等の表面特性向上のためにメ
ッキ層を形成する方法に関するものである。
従来の技術 近年に至り、自動車における燃費向上を主目的として、
従来主として鉄系材料が使用されていた自動車部品につ
いて、その材料を軽量なAl合金に転換することが多くな
っている。しかしながらAl合金は鉄系材料と比較して耐
摩耗性や耐熱性が劣り、また耐食性も必ずしも充分では
なく、そのためAl合金部材の耐摩耗性や耐食性、耐熱性
等の表面特性を向上させる方法の開発が強く望まれてい
る。
ところでAl合金部材の耐摩耗性や耐食性、耐熱性等の表
面特性を向上させるための手法としては、従来からその
表面にクロム(Cr)メッキやニッケル(Ni)メッキ等の
電気メッキ処理を施す方法が広く知られている。すなわ
ち、Crメッキ層やNiメッキ層は一般に硬質で耐摩耗性に
富み、かつ耐食性、耐熱性も優れているから、メッキ処
理を施すことによってこれらの表面特性を大幅に向上さ
せることができ、特にAl合金の展伸材においてはこれら
の表面特性を確実かつ充分に向上させることができ、そ
のためAl合金展伸材についてはこの方法が従来から広く
活用されていた。
発明が解決すべき問題点 前述のようにAl合金の展伸材については耐摩耗性、耐食
性、耐熱性等の表面特性向上のためにメッキ処理を施す
ことが従来から広く実施されていたが、鋳造のままのAl
合金部材、すなわちAl合金鋳物材については、次に記す
ようにメッキ不良が生じることが多いため、ほとんど実
施されていないのが実情である。
すなわち、Al合金鋳物においてはその表面層にピンホー
ルやブローホール、巣などの欠陥が存在することが多
く、また窒素ガス等のガス成分が多量に固溶もしくは吸
蔵されていることが多い。このようなAl合金鋳物に対し
て電気メッキを施した場合、ピンホール、ブローホー
ル、巣などの欠陥内のガスや固溶もしくは吸蔵されたガ
ス成分がメッキ処理時に放出されてAl合金鋳物表面にガ
ス気泡として付着した状態となり、その表面のガス気泡
によってメッキ処理のための電解液のAl合金鋳物表面に
対する接触が妨げられて、その部分でメッキ反応が進行
せず、その結果メッキ層の密着不良やふくれ、ピンホー
ル等のメッキ不良が生じ易かったのである。
もちろん、真空鋳造の如き特殊な鋳造手段を適用して、
ピンホールやブローホール、巣などの欠陥が少なくかつ
固溶ガス、吸蔵ガスの少ないAl合金鋳物を作成しておけ
ば、上述のような問題をある程度は解消できる。しかし
ながら真空鋳造を適用した場合そのコストは著しく上昇
するから、実際の操業、特に量産品の製造に適用するこ
とは経済的に無理があり、したがって実用的な解決策と
は言いえないのが実情である。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、Al
合金鋳物に対してメッキ不良を生じることなくメッキ層
を生成して、そのAl合金鋳物の耐摩耗性、耐食性、耐熱
性等の表面特性を確実かつ充分に向上させる方法を提供
することを目的とするものである。
問題点を解決するための手段 前述のような目的を達成するべく本発明者等が研究を重
ねた結果、Al合金鋳物表面にメッキ処理を施すに先立
ち、メッキ層を形成すべき部位の表面にTIGアーク、レ
ーザ、電子ビームなどの高密度加熱エネルギを照射し
て、その部位の表面層を急速溶融・急速凝固させておけ
ば、前述のようなピンホール、ブローホール、巣などの
欠陥や固溶もしくは吸蔵されているガス成分を鋳物表面
層から除去することができ、その結果、その後のメッキ
処理時にメッキ不良が生じることなくメッキ層を生成し
て、充分な耐摩耗性や耐食性、耐熱性等の表面特性を与
えることができることを見出し、この発明をなすに至っ
たのである。
したがってこの発明は、アルミニウム合金鋳物表面にメ
ッキ層を形成するにあたり、メッキ層を形成すべき部位
の表面に予め高密度加熱エネルギを照射してその表面層
を急速溶融・急速再凝固させ、しかる後にその再凝固し
た部分の表面にメッキ処理を施すことを特徴とするもの
である。
発明の具体的説明 以下にこの発明の方法を第1図〜第4図を用いてさらに
具体的に説明する。
先ず第1図に示すようにメッキ処理の対象となるAl合金
鋳物1の表面のうち、メッキ層を生成すべき部分の表面
層2Aに、TIGアーク、電子ビーム、レーザなどの高密度
加熱エネルギ3を照射して、その表面層2Aを溶融させ
る。この際の溶融は、加熱源として上述のような高密度
加熱エネルギ源を用いているため、Al合金鋳物1の全体
が昇温する前に、その表面層2Aのみが局部的に急速温度
上昇して、表面層2Aのみが急速溶融される。続いてその
高密度加熱エネルギ源の移動あるいはエネルギ源の駆動
停止などによって照射を停止すれば、未だ低温の母材側
への熱放散によって直ちに溶融部分が再凝固される。こ
の状態を第2図に示す。この再凝固は、主として母材側
への熱移動によってなされるため、母材側から表面側へ
向けて指向性をもって凝固することになり、そのため溶
融前に存在していたピンホールやブローホール、巣など
の欠陥は凝固時に外部へ押出される状態となり、また吸
蔵もしくは固溶していたガス成分に起因して溶融時に生
じた気泡も凝固時に外部へ押出される状態となり、その
結果溶融・再凝固した部分2Bにはピンホールやブローホ
ール、巣などの欠陥が殆んど存在せずかつ固溶もしくは
吸蔵ガス成分が極めて少ない状態となる。また上述のよ
うに一方向性凝固により急速凝固することによって、そ
の部分2Bの組織も微細化される。
このようにして高密度加熱エネルギの照射によって溶融
・再凝固された部分2Bの表面は通常は凹凸が比較的多い
状態となっているから、その表面を機械加工や研磨によ
って平滑化する。このように平滑化した状態を第3図に
示す。
次いで前述のように急速溶融・再凝固された部分2Bの表
面に対し、電気メッキ等のメッキ処理を施す。このメッ
キ処理は常法に従って行なえば良く、またそのメッキす
る金属の種類も、Cr、Ni、あるいはそれらの合金など、
向上させるべき表面特性に応じて任意に選択すれば良
い。このようにしてメッキ層4を生成させた状態を第4
図に示す。
ここで、メッキ処理前の鋳物表面層(溶融・再凝固部分
2B)にはピンホールやブローホール、巣などの欠陥が殆
んどなくしかも固溶もしくは吸蔵されているガス成分も
少ないため、メッキ処理時の鋳物表面のガス気泡発生に
よる局部的なメッキ反応の阻害も少なく、したがって密
着不良やふくれ、ピンホール等のメッキ不良が生じるこ
となく、均質でかつ緻密なメッキ層が生成される。ま
た、前述のようにメッキ処理前の表面層の組織が微細化
されていることは、最終的にメッキ層を形成した部分の
耐摩耗性を向上させるに寄与する。
なおこの発明の方法が適用されるAl合金の組成は特に限
定されるものではなく、要は鋳物用として知られている
Al合金には全て適用可能である。
またこの発明の方法の実施にあたって、高密度加熱エネ
ルギの照射による溶融・再凝固層の深さは、エネルギの
強度やエネルギ源の移動速度の調整によって制御可能で
あるが、この溶融・再凝固層の深さは、要は研磨後にお
いて溶融・再凝固されていない母材の部分が表面に露出
しなような厚みに設定すれば良い。
実施例 JIS AC2C合金(Cu 3.1%、Si 6.32%、Mg 0.34%、Zn
0.01%、Fe 0.43%、Mn 0.30%、残部Al)の鋳物材に電
気クロムメッキ処理を施すにあたって、次のような処理
を行なった。すなわち前記の合金鋳物からなる外径30m
m、厚さ10mmの円盤状テストピースの外周面表面部のク
ロムメッキ層を必要とする部分にTIGアークを照射して
溶融・再凝固させた。そのTIGアーク照射条件は次の通
りである。
ピーク電流/ベース電流:120A/90A 電 圧 :15V トーチ移動速度:3〜15mm/sec (但しトーチ移動速度は均一溶融幅となるように調整) ビード数 :2本 アルゴン流量 :25l/min その後、溶融・再凝固部分の表面を研磨して平滑した。
次いで次のような条件で塩化ニッケル法によるクロムメ
ッキ処理を行なった。
10%水酸化ナトリウム(60℃)浸漬→水洗→10%硝酸
(常温)浸漬→水洗→50%塩化ニッケル+2%ホウ酸溶
液(26〜33℃)浸漬→水洗→70%硝酸常温浸漬によりニ
ッケルを溶解→電気クロムメッキ(30%クロム酸+0.23
%硝酸;55〜60℃;約120A/dm2) 得られたクロムメッキ層について調査したところ、メッ
キ層のフクレ、ハガレやピンホールは皆無であり、また
母材との密着性も良好であることが判明した。なおここ
でフクレ、ハガレ、ピンホールについては目視によって
調べ、密着性についてはテープ剥離試験によって調べ
た。
一方、比較のため、前記と同じテストピースについて、
TIGアークによる溶融・再凝固処理を施すことなく、前
記と同じ条件で塩化ニッケル法によるクロムメッキ処理
を行なった。その結果得られたクロムメッキ層について
調べたところ、目視で確認できる程度のフクレ、ピンホ
ールが多数存在し、またテープ剥離試験でも剥離が生じ
た。
なおここで、テストピースの母材(溶融・再凝固処理を
行なっていないもの)の表面はピンホール面積率が1.1
%であったのに対し、溶融・再凝固後の再凝固部分表面
のピンホールは皆無であり、このことから、溶融・再凝
固処理を施した場合には、その処理によって表面層のピ
ンホール等の欠陥が除去されて、メッキ処理後のメッキ
層のフクレやピンホールの発生が防止されたことが明ら
かである。
発明の効果 前述の実施例からも明らかなように、この発明の方法に
よれば、ピンホール、ブローホール、巣などの欠陥や固
溶もしくは吸蔵されているガス成分が多いAl合金鋳物に
対しても、メッキ層のフクレやピンホール等のメッキ不
良が生じることなく、密着性の良好なメッキ層を形成す
ることができ、したがってこの発明の方法を適用するこ
とによって、Al合金鋳物材の耐摩耗性や耐熱性、耐食性
などの表面特性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図から第4図はこの発明の方法を段階的に示すため
の断面図で、第1図は高密度加熱エネルギ照射時(急速
溶融時)の状況を示す断面図、第2図は溶融・再凝固後
の状況を示す断面図、第3図は平滑化後の状況を示す断
面図、第4図はメッキ処理後の状況を示す断面図であ
る。 1……Al合金鋳物、2A……表面層、2B……溶融・再凝固
した部分、3……高密度加熱エネルギ、4……メッキ
層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−176093(JP,A) 特開 昭60−5819(JP,A) 特公 昭49−34570(JP,B1)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウム合金鋳物表面にメッキ層を形
    成するにあたり、メッキ層を形成すべき部位の表面に予
    め高密度加熱エネルギを照射してその表面層を急速溶融
    ・急速再凝固させ、しかる後にその再凝固した部分の表
    面にメッキ処理を施すことを特徴とするアルミニウム合
    金鋳物の表面メッキ層形成方法。
JP60112784A 1985-05-25 1985-05-25 アルミニウム合金鋳物の表面メツキ層形成方法 Expired - Fee Related JPH0762272B2 (ja)

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