JPH0759575A - 発現調節dna - Google Patents

発現調節dna

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JPH0759575A
JPH0759575A JP5206461A JP20646193A JPH0759575A JP H0759575 A JPH0759575 A JP H0759575A JP 5206461 A JP5206461 A JP 5206461A JP 20646193 A JP20646193 A JP 20646193A JP H0759575 A JPH0759575 A JP H0759575A
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waxy
rice
dna
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みどり 中島
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 イネ科植物の種子で強力に発現するwaxy
遺伝子(アミロース合成酵素をコードする遺伝子)の
5’上流域の構造と機能を解析することにより、同遺伝
子の組織特異的、量的発現に必要なエンハンサー領域の
配列を特定した。 【効果】 外来遺伝子を本発明のエンハンサー領域と連
結しイネ科植物に導入すれば、種子の成分を意図的に改
良したり種子において物質生産を行うことが可能にな
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、イネ科植物の種子で構
造遺伝子を強力に発現させる発現調節DNAに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】イネ
に代表されるイネ科植物は、例えば貴重な食料源として
世界中で消費されている。日本におけるイネの品種改良
は、国あるいは県の農業試験機関により行われ、日本の
農業事情や食生活に寄与してきた。それは人工あるいは
自然の突然変異を選抜しかけ合わせる事で築かれてきた
技術である。その代表的な産物は、コシヒカリやササニ
シキであり、現在広く栽培されている品種の大部分はこ
れらの血筋を引いている。昨今では、恵まれた食生活を
反映して消費者の米に対する嗜好の多様化に対応する品
種の作出が望まれており、全く新しい種子形質を持った
育種母本を探している。ところが、従来のこの掛け合わ
せによる品種改良によっては、画期的に新しい品種の作
出は期待できないのが現状である。そこで、イネの種子
形質に着目し、この部分だけを狙って成分を改良し新し
い食味や形質をもつ米を作る事ができれば画期的である
と考えられた。
【0003】一方、今日植物への遺伝子導入が実用化に
向けて行われているが、この点についてはイネにおいて
も技術的にクリアされつつある。ここで必要とされるの
が組織特異的エンハンサーである。これは外来遺伝子を
目的の組織で、適当な時期に、必要十分量発現させるた
めの調節領域である。イネの遺伝子は今日までにいくつ
か単離されてきているが、それらが植物内でどのような
発現パターンを示すのか、あるいはどの領域が重要であ
るかについてはまだほとんど情報が得られていないのが
現状であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、イネ科植
物の種子で強力に発現するwaxy遺伝子(アミロース
合成酵素(WAXY蛋白)をコードする遺伝子)の調節
領域についてその構造と機能を明らかにし、イネ科植物
の種子の改良あるいは種子での物質生産に利用できるよ
うにしようと考えた。そこでイネ科植物の種子で強力に
発現するwaxy遺伝子の5’上流域の構造と機能を解
析した結果、その組織特異的、量的発現の調節に必要な
エンハンサー領域を初めて明らかにし、本発明を完成す
るに至った。
【0005】すなわち本発明の要旨は、イネwaxy
伝子の転写開始点より−637〜−275塩基5’上流
に存在する発現調節DNAに存する。以下、本発明につ
き詳細に説明する。 1.waxy遺伝子調節領域の構造waxy 遺伝子は種子での形質の変化(変異)を容易に
検出できるので、トウモロコシを中心に遺伝学的研究に
用いられてきた。ゲノミックDNAは初めにトウモロコ
シで単離され(Klosgen,Mol.Gen.Ge
n.,203,237−244,1986)、これをプ
ローブにしてほかの植物でもcDNAやゲノミックDN
Aが単離されてきた(小麦:Ainsworth,Pl
antMolecular Biology,16,1
099−1101,1991;大麦:Rohde,Nu
cl.Acids Res.,16,7185,198
8;じゃがいも:Rohde,J.Gen.and B
reed.,44,311−315,1990;イネ:
Wang,Nucl.Acids Res.,18,5
898,1990)。waxy遺伝子の最終的な産物で
あるアミロースの蓄積から、この遺伝子は胚乳、花粉、
胚嚢で発現することが知られている。しかしその組織特
異性や発現量を決める調節領域についての解析はまだ進
んでいない。waxy遺伝子の発現が抑制されるとアミ
ロースの合成はなくなるが、元来waxy遺伝子はそれ
が欠失していても致死的なものではなく、種子での澱粉
の合成は行われる(アミロペクチンのみ)ので、稔性も
維持される。これらのことからこの遺伝子が種子の改良
を行う目的で利用するのに適した材料であることがわか
る。特にイネ科植物の品種改良を目指す上でイネのwa
xy遺伝子の調節領域を解析し用いることが最も望まし
いと考えた。
【0006】よって本発明者らは、イネアミロース合成
酵素(ADP−glucose:starch glu
cosyl transferase,WAXY蛋白)
遺伝子の5’上流の調節域に着目した。これは、イネ、
例えばOryza sativa L.cv.Labe
lleのゲノムライブラリーからcDNA(特開平5−
153981号公報)を検索子として単離したwaxy
遺伝子をコードする領域の上流に隣接して存在する。こ
の5’側上流域の中でのwaxy遺伝子調節領域の機能
を調べるためには、5’上流域より順に欠失させたレポ
ーターベクター(例えば後述の実施例に示すpWXGU
Sシリーズ)をイネに導入し、レポーター遺伝子の発現
の有無または強弱を測定する。この結果から、発現調節
領域を特定することができる。
【0007】2.ベクターの構築 次にベクターの構築について述べる。waxy遺伝子の
翻訳開始部位を含む5’上流域を、レポーター遺伝子を
含むベクター、例えばプラスミドベクターpBI221
(Jefferson,EMBO J,,3901−
3907,1987)由来のgus遺伝子(β−グルク
ロニダーゼ(GUS)をコードする遺伝子)とnos
伝子(ノパリン合成酵素(NOS)をコードする遺伝
子)のタ−ミネ−タ−に連結し、レポーターベクター
(例えば後述の実施例に示すpWXGUS−1.2)を
得る。waxy遺伝子5’調節域とレポ−タ−gus
伝子とを連結する場合は、例えばWAXY蛋白のN末9
アミノ酸のつぎにBamHI部位を介し、読み枠をあわ
せてGUS蛋白が作られるように設計することが望まし
い。waxy遺伝子5’調節域−gusnosからな
る遺伝子を、pUC19ベクター(Yanisch−P
erron,Gene,33,103−119,198
5)等にクローニングする。このとき5’側の長さの違
いによる質的、量的な違いを調べるために、5’上流側
から段階的に欠失させたベクターを作製する。ベクター
プラスミドは、例えば大腸菌DH5αを大量培養し、ア
ルカリSDS法(Birnboim,Nucl.Aci
ds Res.,,1513,1979)および塩化
セシウム法等による超遠心法で精製される。かくして精
製されたベクタープラスミドは、常法に従ってその塩基
配列を決定することができる。
【0008】3.形質転換イネ科植物の作出 形質転換は、例えばShimamotoらのNatur
e,338,274−276,1989、特開平1−1
81791号公報に記載の方法で行うことができる。す
なわち上記2.で精製したベクターをイネ科植物由来の
プロトプラストに導入、再生することによって、形質転
換植物を作出することができる。
【0009】プロトプラストは次のようにして調製する
ことができる。例えば、日本晴、コシヒカリ、ササニシ
キ等の栽培イネの完熟及び未熟種子、葉しよう、根の組
織に由来するサスペンジョン細胞あるいはカルスを液体
培地で培養した後、常法に従い、例えばセルラーゼやマ
セロザイム等の細胞壁分解酵素を含む酵素液中25〜3
0℃、0〜50spmの条件で3〜16時間程度酵素処
理する。酵素処理終了後、濾過して未消化物を除き、ろ
液に2〜5倍量のKMC液(0.118M 塩化カリウ
ム、0.0817M 塩化マグネシウム、0.085M
塩化カルシウム,pH6.0)(Theor.App
l.Genet.,53,57−63,1978)等を
加え遠心分離して、精製されたプロトプラストを得るこ
とができる。
【0010】上記のようにして調製したベクター、さら
に選抜遺伝子として例えばハイグロマイシンフォスフォ
トランスフェラーゼをコードする遺伝子を有するベクタ
ー(pGL2:Shimamoto et al.,N
ature,338,274−276,1989)をそ
れぞれ1〜100μg/mlと、上記植物由来のプロト
プラスト、例えば(2〜10)×106 個/mlとを、
30〜200mM 塩化カリウム、0〜50mM 塩化
マグネシウム、0.2〜0.6M マニトールを含む緩
衝液等の液体媒体中に懸濁し、これに電気パルスを印加
してプラスミドをプロトプラスト中に導入する。電気パ
ルス処理は,100〜1000μFのコンデンサーを用
いて得られる200〜1000V/cmの初期電圧の直
流パルスで、パルス幅1〜20msec程度の条件で印
加するのが好適である。
【0011】上述のように電気パルス処理したプロトプ
ラストを、例えばR2 培地(Plant Cell P
hysiol.,14,1113,1973)の無機成
分とB5培地(Gamborg et al.,Ex
p.Cell.Res.,50,151,1968)の
ビタミン混合液を含む液体培地(R2/B5)、好まし
くは窒素源として硝酸カリウムを0.2〜0.5%含有
する培地に懸濁し、これを1.0〜3.0%程度のアガ
ロースを含むR2 /B5培地等と等量ずつ混ぜ、速やか
にシャーレ中に広げて薄く固める。この時のプロトプラ
ストの密度は約(5〜50)×105 個/mlとなるよ
うにし、またアガロースの厚さは平均で0.7mm程度
となるようにするのが好ましい。
【0012】続いて固化したアガロースを5〜20mm
大の大きさに切断し、上記液体培地上で培養する。その
際、イネ科植物由来のプロトプラストを使用した場合に
は、好ましくは培地中にイネ培養細胞を100〜300
mgFW/シャーレ程度共存させ、20〜50r.p.
m.の回転でゆっくり振とうしながら、暗条件下23〜
33℃で培養する。イネ培養細胞と共存させる方法は上
記の方法のほかに、プロトプラストを含む液体培地を、
底にメンブレンフィルターを設けた容器内に入れ、その
容器をイネ培養細胞と共に液体培地を入れたシャーレに
浸して共存させる方法がある。ここに示すイネ培養細胞
は、旺盛に分裂している細かい細胞塊から成る物が好ま
しい。このような培養細胞は、例えばイネ植物の種子、
茎、根あるいは葯より得られたカルスを液体培地中に継
代して分裂速度の早い細胞を選抜していく等の公知の方
法に準じて容易に得られる。
【0013】培養後3〜4週間で、0.5〜1mmφ程
度のコロニーが形成される。その際、例えば選択標識遺
伝子でもあるハイグロマイシンホスホトランスフェラー
ゼ遺伝子(hph)を導入しておいた場合、培養開始後
7〜20日にハイグロマイシンを10〜100μg/m
l程度培養液中に添加し、さらに培養を続けると目的と
する形質転換細胞の選択を効率よく行うことができる。
【0014】次いでこのコロニーを増殖培地、例えばR
2基本培地(Sci.Sin.,16,659−68
8,1975)に植物ホルモン、例えば2,4−ジクロ
ロフェノキシ酢酸(2,4−D)を2mg/l程度、ア
ガロースを0.1〜1.0%加えた寒天培地上で2〜4
週間、照明下(1000〜4000lux)、27〜3
3℃で培養し3〜6mmφのカルスを得る。このカルス
に、レポーター遺伝子の産物が発現されているか否かを
確認することにより、形質転換カルスとして二次選抜す
ることができる(Jefferson,EMBO J,
,3901−3907,1987)。
【0015】こうして選抜されたカルスを、例えば0.
5〜1.5%アガロースを含む再生培地(R2 培地にお
いて、ホルモンフリーあるいはサイトカイニンを1〜1
0mg/l添加したもの)で27〜33℃、2000〜
4000luxの条件下で培養すれば、2〜10週間で
不定胚または不定芽の形成が認められる。さらに2〜3
週間ホルモンを含まない上記再生培地等で培養すること
により、移植可能な幼植物体が得られる。こうして得ら
れた幼植物体は、バーミュキュライト等に移植して成長
させると、形質転換されたイネ科植物の植物体を得るこ
とができる。
【0016】また形質転換体にwaxy遺伝子の5’上
流域が導入されたことの確認は、常法に従い再生植物体
から調製したゲノミックDNAのサザン解析、PCR解
析等により行うことができる。 4.形質転換体の解析から得られたwaxy遺伝子の
5’機能領域waxy −レポーターの融合遺伝子が導入された再生体
の胚乳における活性、例えばGUS活性(Jeffer
son,EMBO J,,3901−3907,19
87)を測定する。すなわち、胚乳から常法に従ってレ
ポーター遺伝子の産物を抽出し、その活性を測定する。
そして特に種子での発現に変化のみられるベクターを検
出する。すなわち種子で強力に機能する発現調節領域を
特定することができる。 5.本発明の発現調節DNAを用いた形質転換植物の作
製 本発明の発現調節DNAおよび構造遺伝子を導入した発
現ベクターを構築する。発現ベクターは、その5’側か
ら本発明の発現調節DNA(エンハンサーDNA)、狭
義の意味での最小プロモーターDNA、構造遺伝子の順
で構成される。
【0017】本発明の発現調節DNAはイネ科植物の種
子での強力な発現を可能にするエンハンサー的機能を有
する。従って本発明の発現調節DNAは、その下流に位
置する遺伝子をイネ科植物の種子で強力に発現させるこ
とができる。一般にベクターを構築する際には組織特異
的プロモーターを用いることが重要となる。本発明にお
いては、現在イネ胚乳での発現が確認されているイネW
xプロモーター(Hirano,Plant Cell
Physiol.,accepted)、トウモロコ
シAdh1プロモーター(Kyozuka,Mol.G
en.Gen.,228,40−48,1991)、カ
リフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(Te
rada,Mol.Gen.Gen.,220,389
−392,1990)等が好適に使用される。
【0018】構造遺伝子としては特に制限はされない
が、イネ科植物中で翻訳効率のよい核酸配列を持つもの
が望ましい。すなわち、イネ科植物由来の構造遺伝子が
最も望ましい。具体的には、waxy遺伝子等のでんぷ
ん合成系の酵素遺伝子群が挙げられる。また、遺伝子の
発現効率を上げるため、あるいはRNAの安定性を上げ
るために、発現調節DNAおよびプロモーターと構造遺
伝子の間にイネ科植物で機能するイントロンを連結させ
ることも効果的である。例えばイネの場合、トウモロコ
シAdh1(アルコールデヒドロゲナーゼ)の第一イン
トロン(Kyozuka,Maydica,35,35
3−357,1990)やヒマ カタラーゼのイントロ
ン(Tanaka,Nucl.Acids Res.,
18,6767−6770,1990)が効果的であ
る。
【0019】さらに、効率良く遺伝子の転写を集結さ
せ、またRNAを安定させるために、ターミネーターが
用いられる。具体的には、例えばカリフラワーモザイク
ウイルス35S(19S)RNAターミネーター(pG
L2:Shimamoto et al.,Natur
e,338,274−276,1989)や、前述した
NOSのターミネーター等があげられる。
【0020】ベクターとしては、pUC系列のプラスミ
ド(Yanisch−Perron,Gene,33,
103−119,1985)等が好適に使用される。本
発明においては更に、ハイグロマイシンフォスフォトラ
ンスフェラーゼ遺伝子、ネオマイシンフォスフォトラン
スフェラーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルト
ランスフェラーゼ遺伝子等、目的とするコロニーを選択
する際に有効な、いわゆる選択マーカー遺伝子を使用す
るのが好ましい。かかる選択マーカー遺伝子としては、
ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子
が最も好ましい。
【0021】本発明においては、選択マーカー遺伝子と
構造遺伝子とを同一のベクター中に有するものを使用し
てもよいし、選択マーカー遺伝子を有するベクターと構
造遺伝子を有するベクターとを併用してもよい。かかる
ベクターを前述した方法に従いイネ科植物由来のプロト
プラストに導入、再生することによって、形質転換され
た植物体を作出することができる。この形質転換体では
種子で構造遺伝子を大量に発現することから、種子の形
質の改変あるいは種子での物質生産を行うことができ
る。
【0022】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はその要旨を越えない限り本例に制約されるもの
ではない。 1.waxy遺伝子5’調節領域の構造解析(図1)waxy 遺伝子5’調節領域はゲノミックDNA上で
は、ORFの5’側に隣接して存在する。従ってcDN
Aをプローブにして単離できるゲノミッククローンから
翻訳開始を目印にこれの5’上流側に隣接するDNAを
取得した。
【0023】まずイネ(Oryza sativa
L.cv.Labelle)の葉からWalbotの方
法(Mol.Gen.Gen.,211,27−34,
1988)により調製したゲノミックDNAをHin
IIIで切断し、Lambda2001(Strata
gene社製)と連結してライブラリーとした。これを
撒いて得られるファージに対してイネのwaxy cD
NA(特開平5−153981号公報)をプローブにし
てプラークハイブリダイゼーション(Molecula
r Cloning 2.82章)を行い、15kbの
インサートを持つゲノミッククローンを得た。Eco
IとPstIの制限酵素地図を作成し、6kbのEco
RI断片にcDNAプローブがハイブリッドを形成する
ことからここにORFが存在することがわかった。従っ
て、これより5’上流域の中でのwaxy遺伝子調節領
域の機能を調べることとした。この断片の5’側に隣接
する3kb EcoRI断片をpUC19にサブクロー
ニングし、制限酵素地図を作成した。この断片をMlu
Iで切断して得られる3’側の1.5kbについて、そ
の塩基配列を上述の方法あるいは蛍光シークエンサー
(ABI 373A DNAシークエンサー)を用いて
解析した。
【0024】2.5’上流域欠失ベクタ−の構築(pW
XGUSシリ−ズ)waxy 遺伝子の発現に必要な上流域を調べるためにさ
まざまな長さのwaxy遺伝子の5’上流域をgus
伝子に連結したベクターを作製した。図2に該ベクター
の構築の過程を表す。図2中、E、P、H、V、Bはそ
れぞれEcoRI、PstI、HindIII、Eco
RV、BamHIの制限酵素部位を示し、mcsはマル
チクローニングサイト、orfはオープンリーディング
フレーム、oはプライマー、tspは転写開始点を示
す。
【0025】蛋白の翻訳開始効率を考慮してWAXY蛋
白のN末を持つ融合型のGUS蛋白を作らせる形を設定
した。そこで以下のようにwaxy遺伝子とgus遺伝
子を連結した。まず翻訳開始部位を含むゲノミックDN
Aクローン(図1のPstI2.3kbをもつpPST
2.3。特開平5−153981号公報)を鋳型にして
3塩基を挿入するためのプライマー GAGGTGGA
TCCGAGCTG(配列表の配列番号2、図2中、
で示す)を合成した。このプライマーはWAXY蛋白の
N末より第12番目のアミノ酸に対応するコドンから第
8番目のコドンへと上流へ向かうプライマーで、中央付
近の第10コドンに3塩基を挿入しBamHI部位を作
り出す。これとリバーサルプライマー CAGGAAA
CAGCTATGAC(配列表の配列番号3、図2中、
で示す)を用い、pPST2.3を鋳型にしてPCR
を行いWAXY蛋白の第10アミノ酸に対応する地点に
BamHI部位を作った。このPCR断片をHindI
IIとBamHIで消化してpBI201EのHin
III,BamHI部位に挿入しプラスミドpWXGU
S−PCRを得た。ここでpBI201Eは、pBI2
21(Jefferson、EMBO J,,390
1−3907,1987)のgus遺伝子とnos遺伝
子のターミネーターを含むBamHI−EcoRI断片
をpUC19に導入した後に、EcoRI部位をKle
now酵素で埋めたものである。pWXGUS−PCR
waxy遺伝子とgus遺伝子の連結部位付近の配列
をGUS蛋白本来のN末直下の上流へ向かうプライマー
CACGGGTTGGGGTTTCT(配列表の配列
番号4、図2中、で示す)を用いて塩基配列を確認し
た。つぎにpWXGUS−PCRをEcoRI消化し、
0.8kbの断片を除去した(pWXGUSECO)。
このプラスミドのEcoRI部位から下流の塩基配列を
リバーサルプライマー(配列表の配列番号3)を用いて
確認した。PCRで置換されたのはBamHI部位の挿
入だけであり、その他の領域は本来のゲノミックDNA
と同じであった。ついでpWXGUSECOのEco
I部位にゲノミッククローンからEcoRI 3kbを
順方向に挿入した(pWXGUS−2.2)。このプラ
スミドはwaxy遺伝子の転写開始より上流2.2kb
を持つ。このプラスミドを基に以下3種のプラスミドを
作製した。pWXGUS−1.2はpWXGUS−2.
2をHindIIIとStuIで消化後セルフライゲー
ションで得られたものであり、同様にpWXGUS−
0.64はHindIIIとMluIで消化、pWXG
US−0.28はHindIIIとSphIで消化して
得られたものである。それぞれ転写開始点より−1.2
kb,−0.64kb,−0.28kb上流域を持ちW
AXY蛋白のN末9アミノ酸までゲノミックDNAを反
映する配列を持っており、BamHI部位を含むリンカ
ーを介してgus遺伝子に連結されている。これらのプ
ラスミドの大量培養は大腸菌DH5αを用い、アルカリ
SDS法と塩化セシウム超遠心法でDNAを精製した。
DNAは分光光度計を用いOD260を測定して濃度を
求めた。以下の植物への形質転換においてはプラスミド
をpUC19に由来する制限酵素PvuIIあるいは
caIで線状化しエタノールで精製してから用いた。
【0026】3.イネへのpWXGUSベクターの導入 粳米(日本晴)の完熟種子に由来するカルスを通常使用
され得る液体培地で培養した後、常法に従い、例えばセ
ルラーゼやマセロザイム等の細胞壁分解酵素を含む酵素
液中25〜30℃、3〜16時間程度酵素処理した。酵
素処理終了後ろ過して未消化物を除き、ろ液に2〜5倍
量のKMC液(塩化カリウム 0.118M、塩化マグ
ネシウム 0.0817M、塩化カルシウム 0.08
5M,pH6.0)(Theor.Appl.Gene
t.,53,57−63,1978)等を加え遠心分離
し、精製されたプロトプラストを得た。
【0027】粳米(日本晴)由来プロトプラスト、例え
ば(2〜10)×106 個/mlに対して、上記の様に
して調製した、pWXGUSシリ−ズあるいはpBI2
211〜100μg/ml、さらに各々の組合せに対
し、選抜遺伝子としてハイグロマイシンホスホトランス
フェラーゼをコードするベクター(pGL2:Shim
amoto et al,Nature,338,27
4−276,1989)、例えば1〜100μg/ml
を30〜200mM 塩化カリウム、0〜50mM 塩
化マグネシウム、0.2〜0.6M マニトールを含む
緩衝液等の液体媒体中に懸濁し、これに電気パルスを印
加してプラスミドをプロトプラスト中に導入した。電気
パルス処理は、100〜1000μFのコンデンサーを
用いて得られる200〜1000V/cmの初期電圧の
直流パルスで、パルス幅1〜30msec程度の条件で
印加した(特開平1−181791号公報)。
【0028】上述のようにして電気パルス処理したプロ
トプラストを、上記R2 培地の無機成分と上記B5培地
のビタミン混合液を含む液体培地(R2 /B5)に窒素
源として硝酸カリウムを0.2〜0.5%含有する培地
に懸濁し、これを1.0〜3.0%程度のアガロースを
含むR2 /B5培地と等量ずつ混ぜ、速やかにシャーレ
中に広げてうすく固めた。この時のプロトプラストの密
度は約(5〜50)×105 個/mlとなるようにし、
またアガロースの厚さは平均0.7mm程度となるよう
にした。
【0029】固化したアガロースゲルを5〜20mm程
度の大きさに切り、上記液体培地中で培養する。その
際、培地中にイネ培養細胞を100〜300mgFW/
シャーレ程度共存させ、20〜50r.p.mの回転で
ゆっくり振とうしながら、暗条件下27〜33℃で培養
した。培養開始して3〜4週間後、0.5〜1mmφ程
度のコロニーが形成された。このとき、培養開始後7〜
20日にハイグロマイシンを10〜50μg/ml程度
培養液中に添加し、更に培養を続けることにより、形質
転換細胞の一次選択を効率よく行うことができた。
【0030】次いで、このコロニーを上記R2基本培地
に2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)を2
mg/l程度、アガロースを0.1〜1.0%加えた寒
天培地上で2〜4週間、照明下(1000〜4000l
ux)、27〜33℃で培養し、3〜6mmφのカルス
を得た。このカルスの一部をX−glucronide
で染色し、陽性のものをDNAのとり込まれた形質転換
カルスとして二次選択した。
【0031】目的の遺伝子を取り込んだカルスを再生培
地R2R(上記R2基本培地+0.5μg/l ゼアチ
ン+ 1μg/l IAA)で2週間ごとに植え継ぎ、
照明下(1000〜4000lux)、27〜33℃で
培養すると幼植物が得られた。これをカルスから分離し
てさらに再生培地R2Rをいれたマジェンダボックスで
照明下(1000〜4000lux)、27〜33℃で
培養することにより、順化可能な根と葉を持った苗が得
られた。これを滅菌した土(バーミキュライトと培土)
を入れたマジェンタボックスに移しビニール袋で覆い、
徐々に通気させて順化させた。順化を終えた苗を、ポッ
トに植え再生体を得た。
【0032】 4.形質転換された個体における遺伝子導入の確認 形質転換体にgus遺伝子が導入されたことはその活性
から明らかであるが、waxy遺伝子の5’上流域が導
入されたか否かを確認するために、サザン解析およびP
CR解析を行い、核酸レベルでの3次選抜を行った。
【0033】材料となるゲノミックDNAは、形質転換
された再生体の若葉より上記Walbotの方法により
調製した。その4μgをRsaIで消化、エタノール沈
殿後、1%アガロースゲル(Molecular Cl
oning 6章)で電気泳動し、0.5μg/ml
臭化エチジウムで染色した後、0.25N HClで3
0分間DNAを酸で部分分解し、0.5N NaOH−
1.5N NaClで15分間アルカリ処理して、0.
25N NaOH−1.5N NaCl下でナイロン膜
ハイボンドN+(Amersham社製)へ核酸を移し
とった(Vacuo Gene 真空ブロッター,60
cm・H2Oで1時間)。膜を2×SSC(NaCl
17.5g/l、クエン酸ナトリウム 8.82g/
l)で中和・洗浄した後乾燥させ、紫外線を2分間照射
して核酸を固定した。サザン解析のプローブは、pBI
201E 10μgをBamHIおよびEcoRVで消
化して得られるGUS蛋白のN末部分を含む600bp
の断片25ngを、32P−dCTPで標識(Multi
prime labelling kit,Amer
sham社製)して調製した。
【0034】上述の膜を、10mlのプレハイブリダイ
ゼーション液(4×SSCP、50% ホルムアミド、
1% SDS、250μg/ml サケ精巣DNA)中
で42℃、1時間処理した後、プローブを混和したハイ
ブリダイゼーション液(0.1g/ml デキストラン
硫酸を含むプレハイブリダイゼーション液)10mlと
置換し、42℃で一晩ハイブリッドを形成させた。反応
後、100mlの洗浄液I(2×SSC、0.1% S
DS)で室温、15分間の振とうを2回、洗浄液II
(0.1×SSC、0.1% SDS)で室温、15分
間振とう、さらに65℃で15分間振とうして非特異的
なプローブを膜から除去し、本来のシグナルをX線フィ
ルムに感光させた。これにより、waxyDNAとgu
のDNA上にあるRsaIで切り取られる1.8kb
waxyから1.4kb、gusから0.4kb)が
GUS蛋白のN末DNAでプローブされてシグナルとな
る。そこでこの1.8kbのバンドとして検出されたも
のを選抜した。RsaIは転写開始点より上流−0.1
6kbにあり、pWXGUSのすべてのベクターでこの
シグナルが得られる。
【0035】同様にして、これより上流域のwaxy
NAを持つものは、別の制限酵素A(pWXGUSベク
ター上で1ヶ所切断するもの。例えば図2に示したSt
I、MluI、SphI)を用い、gus遺伝子内の
EcoRVとともに切断することにより、[制限酵素A
から開始コドンATGまでの距離+gus内の0.6k
b]で得られるDNAを上述のプローブで検出すれば、
目的とする遺伝子の導入を確認することができる。
【0036】またRsaIでの選抜を終えたものは、P
CR法(Saiki,Science,230,135
0,1988)を使って上流域遺伝子の導入を確認し
た。すなわち、pWXGUSベクターはそのwaxy
NAの5’側にpUC19由来のリバーサルプライマー
対応領域を持つ。そこで配列表の配列番号3に記載のリ
バーサルプライマーおよびRsaI部位より下流の逆向
きプライマー GGTGTCGACGATGACAT
(配列表の配列番号5)を用いて、PCR反応を94℃
で1分間(変性ステップ)、52℃で2分間(アニーリ
ングステップ)、72℃で3分間(伸長ステップ)の操
作を30サイクル行った。完全長のものが導入されたも
のについて、pWXGUS−1.2なら1.1kb、p
WXGUS−0.64で0.47kb、pWXGUS−
0.28で0.11kbの増幅断片が得られた。このよ
うにして、目的とするベクターの導入された個体を選抜
した。
【0037】5.形質転換体を用いたwaxy−gus
遺伝子の発現解析 再生体を用いて胚乳でのwaxy−gusレポーター遺
伝子の発現をグルクロニダーゼ活性(Jefferso
n,EMBO J.,,3901−3907,198
7)で調べた。酵素サンプルは開花後20日の胚乳から
2mm径の切片をとり400μlの緩衝液に抽出し遠心
上清を得、その2μlを用いて酵素活性を測定した。2
00μlの酵素活性試験系には20%メタノールを含む
(Kosugi,Plant Cell Techno
logy,,209−212,1992)。測定結果
を図3に示す。
【0038】pWXGUS−0.28を導入した再生体
で104 pmol/min/mg蛋白の発現があり、さ
らに長い上流域を持つpWXGUS−0.64やpWX
GUS−1.2ではその10倍の105 pmol/mi
n/mg蛋白が認められた。これらの値を対照として用
いた通常の遺伝子導入に汎用される35Sプロモーター
のみを有するpBI221のGUS活性値100〜50
0pmol/min/mg蛋白と比較して、waxy
伝子の発現の強さが明らかになった。これは今までの報
告にないきわめて高いレベルの発現である。
【0039】以上の結果から、−0.64kbと−0.
28kbの間に胚乳で機能するエンハンサー配列のある
ことが明らかになった。配列表の配列番号1に、Mlu
I部位:−0.64kbからSphI部位:−0.28
kbまでの塩基配列を示した。これはタンパク質をコー
ドする構造遺伝子を種子で強力に発現させるためにwa
xy遺伝子の−0.64kbから−0.28kbの領域
が必要であることを示している。
【0040】
【発明の効果】本発明はイネ科植物の種子で強力な発現
をするwaxy遺伝子の調節領域に関するものである。
外来遺伝子をこの調節領域と連結しイネ科植物に導入す
れば、種子の成分を意図的に改良したり種子において物
質生産を行うことが可能になる。
【0041】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:363 配列の型:核酸 鎖の数:2本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ゲノミックDNA 起源 生物名:イネ(Oryza sativa L.) 株名:Labelle 配列の特徴 特徴を表わす記号:enhancer 存在位置:1−363 特徴を決定した方法:E 配列 CGCGTACCCG ACGGCTCACA CATCCCCCGG TGCCCAACAG AAACCACACA CCACCCGCAC 60 GAAAAAAACC GAACCGAACC GCACGTGCGC GCGCGCTCCA CGCACACCCC AAACAGACGG 120 CACGGCGGGA GCGCGCGCGC GCGCACGCGA GCCGAGGAGA AAACAAACGG GGGAAACAAG 180 CTGGAAAAGC AAAAGGGGAA AAGAACGGAG CGGAGGCTTC ACCCACGGCC ACCGCGACGC 240 GCCACCAGCG TGCGGTGCAA TGCAACGTAC GCCAAGCCGA AACGGCAGGC AGCGTCGCGC 300 ACGCACGCAC ACACAGGCCA CAGCACACGC GAGCGACGTA CGCGAGTGCA TGCAGATGCA 360 TGC 363
【0042】配列番号:2 配列の長さ:17 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GAGGTGGATC CGAGCTG 17
【0043】配列番号:3 配列の長さ:17 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 CAGGAAACAG CTATGAC 17
【0044】配列番号:4 配列の長さ:17 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 CACGGGTTGG GGTTTCT 17
【0045】配列番号:5 配列の長さ:17 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GGTGTCGACG ATGACAT 17
【図面の簡単な説明】
【図1】イネの葉より調製したゲノミッククローンの
indIII断片(15kb)およびその制限酵素地図
を表す図面である。3kb、6kbおよび2.3kbと
記した直線は、本願で取得したサブクローンを表す。3
kbのEcoRI断片には転写開始点を含むwaxy
伝子の5’調節上流域が、6kbのEcoRI断片には
WAXY蛋白のコード領域が、2.3kbのPstI断
片にはWAXY蛋白の翻訳開始点が含まれる。
【図2】種々の長さのwaxy遺伝子5’調節上流域と
gus遺伝子との連結ベクターの構築を表す図面であ
る。
【図3】ベクターpWXGUS−1.2、pWXGUS
−0.64、pWXGUS−0.28およびpBI22
1それぞれが独立して導入された複数の形質転換再生体
を得、そこから得られる複数の種子(胚乳)におけるG
US活性を表した図面である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イネwaxy遺伝子の転写開始点より−
    637〜−275塩基5’上流に存在する発現調節DN
    A。
  2. 【請求項2】 配列表の配列番号1に記載の塩基配列で
    表されることを特徴とする請求項1記載のDNA。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のDNAの下流に胚乳で発
    現するプロモーターおよびタンパク質をコードする遺伝
    子を導入してなるベクター。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載のベクターをイネ科植物
    由来のプロトプラストに導入し、コロニーを形成させた
    後該コロニーから植物体を再生させて得られたイネ科植
    物。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載のベクターおよびイネ科
    植物由来のプロトプラストを液体媒体に懸濁し、電気パ
    ルスを印加して該ベクターを該プロトプラストに導入し
    た後、イネ培養細胞を含有する培地で培養してコロニー
    を形成させ、該コロニーから植物体を再生させることを
    特徴とするイネ科植物の製造方法。
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