JPH0755149B2 - 菌体内のリパーゼ活性を高める培養方法 - Google Patents

菌体内のリパーゼ活性を高める培養方法

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JPH0755149B2
JPH0755149B2 JP1119482A JP11948289A JPH0755149B2 JP H0755149 B2 JPH0755149 B2 JP H0755149B2 JP 1119482 A JP1119482 A JP 1119482A JP 11948289 A JP11948289 A JP 11948289A JP H0755149 B2 JPH0755149 B2 JP H0755149B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は微生物菌体を用いる酵素反応方法に関する。更
に詳しくは、油脂類のエステル交換反応、加水分解反
応、更には、脂肪酸とグリセロール、脂肪酸とアルコー
ル類、モノグリセリドまたはジグリセリドと脂肪酸の間
などでのエステル合成反応等に微生物菌体内に包蔵され
たリパーゼを利用するに際し、微生物菌体内のリパーゼ
活性を高める培養方法に関する。
〔従来の技術〕
従来、上述の如きリパーゼを利用するエステル交換反
応、エステル合成反応、加水分解反応には精製酵素ある
いは粗酵素、即ち菌体外酵素が利用されている(例えば
A.R.Macrae,J.Am.Oil.Chem.Soc.60,243(1983),:R.A.W
isdom et al.,Biotecnol.Bioeng.29,1081(1987):特
公昭57−28519:特開昭52−104506:特開昭60−251891:特
開昭60−203196など)。更に、これらリパーゼは、酵素
の回収利用、安定化をはかるためにセライト等の支持担
体に固定化して利用されている。しかし乍ら、本発明者
らの検討結果によれば、この様な固定化酵素法では反応
基質と酵素の接触機会が充分に提供されず、工業的には
充分な反応速度が得られない、精製酵素の価格が高いな
ど、経済的に非常に不利である。
本発明者らは上述の如き精製酵素を利用する際の欠点を
解決する方法として、リパーゼ生成能を有する微生物を
培養しリパーゼを菌体内に包蔵させたまま、直接菌体を
リパーゼ酵素として利用する方法をすでに報告してい
る。更に菌体を利用する上記方法においては、微生物保
持材と共に培養し微生物保持材に付着、固定化増殖させ
ることによって、その活性を上昇させ得ることもすでに
報告している(例えば特願昭61−293754)。
〔発明が解決しようとする問題点〕
微生物保持材に固定化増殖させる方法においては、安定
して高いリパーゼ活性が得られることは既に報告してい
る通りだが、これらの方法は単純な回分培養であり、培
養初期に多量の基質(栄養物)を仕込む必要がある。し
かし、この様な回分培養においては菌体収率が非常に低
いことから、これらの基質が全て有効に菌体生産及びリ
パーゼ生産に利用されておらず、従って工業的に不必要
にリパーゼ製造コストを上昇させている。そこで工業
的、経済的には倍地栄養源を有効にリパーゼ生産に寄与
させ、無駄なく利用する方法の開発が要請されている。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは上述の如き課題を解決し、微生物保持材を
含む培養系に適用され得る培地栄養源の有効利用法につ
いて鋭意検討した結果、流加培養において比基質供給速
度(微生物保持材内に固定化された単位菌体量当たり、
単位時間に供給される栄養物の量)と微生物保持材に固
定化された菌体のエステル交換活性の間に一定の相関関
係が存在することを見出した。そして、菌体増殖に合わ
せて基質流加量を変化させ、比基質供給速度を最適範囲
にコントロールすることによって、基質を無駄なく利用
できるばかりでなく、その活性を回分培養に比べて更に
上昇させ得ることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明はリパーゼ生成能を有する微生物を微生物
保持材と共に培養するに際し、有機窒素源を主成分とす
る栄養物の比基質供給速度を0.03〜0.1g栄養物/g−cell
・hrにコントロールすることを特徴とする、菌体内のリ
パーゼ活性を高める流加培養方法を内容とするものであ
る。
本発明における具体的な培養操作は次の如くである。即
ち、予め微生物保持材が加えられた培養槽を公知の方
法、例えば蒸気殺菌で殺菌する。次に少量の栄養源(有
機窒素源)、無機塩、例えば、NaNO30.1%、KH2PO40.1
%、MgSO4・7H2O0.05%、及び菌体内のリパーゼ活性を
高めるために加えられる基質関連物質を含んだ水溶液を
別の容器で同様に殺菌した後、無菌的に培養槽に加え
る。リパーゼ生成能を有する微生物は公知の方法で前培
養され、無菌的に植菌される。10〜20時間回分培養され
た後、あらかじめ別の容器で殺菌された有機窒素源を主
成分とする栄養物を比基質供給速度が0.03〜0.1g栄養物
/g−cell・hr、好ましくは0.04〜0.08g栄養物/g−cell
・hrの範囲になるように菌体増殖に合わせて、その流量
を連続的あるいは断続的(1〜5時間毎、好ましくは1
〜3時間毎)に変化させながら供給する。
本発明において、微生物保持材内で固定化増殖している
菌体の濃度をオンラインで測定することは出来ないが、
本発明者らの検討によれば、後記参考例1及び2で示す
如く、予め実験的に求めた微生物保持材内での菌体増殖
モデル式、あるいは実験式を用いて予測可能である。ま
た菌体の呼吸活性を利用して、即ち排ガス中のCO2,O2
度を測定して、微生物保持材内の菌体濃度を予測するこ
とも可能である。更に該保持材内での菌体の増殖は基質
(栄養物)の流加量に依存せず、同一培養操作条件下
(例えば通気量、攪拌速度、pH等)では一定であり、従
って予め一定流量で流加培養を行い菌体の増殖速度を予
測することが可能である。後に実施例で示すように、定
流量流加培養においても回分培養と同程度の比較的高リ
パーゼ活性の菌体が得られるので、工業的なデメリット
は最少限に押さえられる。この様にして測定、予測され
る微生物保持材内での菌体増殖速度を基準にして、計算
機等のプロセッサーを用いて流量を連続的あるいは断続
的に変化させ、比基質供給速度を上述の最適範囲にコン
トロールする。その結果、実施例でも示すように、微生
物保持材に固定化することによって高められた活性は一
層高められ、培養全般を通じ、安定して回分培養時の1.
3〜1.5倍の活性を有する、微生物保持材に固定化された
菌体が得られる。
本発明に用いられる微生物としては、リパーゼ生産能を
有する微生物であればすべて用いることが出来るが、リ
ゾプス(Rhizopus)属としては、例えばリゾプス・キネ
ンシス(Rh.chinensis IFO 4768)、リゾプス・デレマ
ー(Rh.delemar IFO 4697,ATCC 9374,4858)、リゾプス
・ジャポニカス(Rh.japonicus IFO 4578)、リゾプス
・オリゴスポラス(Rh.oligosporus IFO 8631)、リゾ
プス・ニベウス(Rh.niveus IFO 4759)、リゾプス、ジ
ャヴァニカス(Rh.javanicus IFO 5441)など;ムコー
ル(Mucor)層としては、例えばムコール・ジャヴァニ
カス(Mucor javanicus IFO 4569)など;アスペルギル
ス(Aspergillus)属としては、例えばアスペルギルス
・ニガー(Aspergillus niger IFO 4343,6341,6428)な
ど;ジョートリクム(Geotrichum)属としては、ジョー
トリクム・カンディダム(Geotrichum candidum IFO 45
97,4598,4602)など;キャンディダ(Ca−ndida)層と
しては、キャンディダ・シリンドラッセ(Candida cyli
ndoracea ATCC 10571,14830,20116,20263,20306)な
ど;コリネバクテリウム(Corynebacterium)属として
は、コリネバクテリウム・イクイ(Corynebacterium eq
ui IFO 3730)など;スタフィロコッカス(Staphyrococ
cus)属としてはスタロフィロコッカス・アウレウス(S
taphyrococcus aureus IFO 3060)等がその代表的なも
のとして挙げられ、いずれも容易に入手することが出来
る。
本発明において流加される基質(栄養物)としては、ア
ミノ酸またはアミノ酸およびペプチドを主成分とする有
機窒素源ならばいかなるものも利用できるが、代表的な
これらの有機窒素源としてポリプペトン、イーストエキ
ス、マルトエキス、イーストペプトン、プロエキス、肉
エキス、コーンスティープリカー等を挙げることが出来
る。
また倍地中には、菌体内のリパーゼ活性を高めるために
グリセライドまたは脂肪酸などの基質関連物質が誘導物
質として予め加えられる。このような基質関連物質とし
ては、オリーブオイル、茶油、魚油などのトリグリセラ
イド類;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの脂
肪酸類;オレイルアルコール、リノールアルコール等の
高級アルコール類;オレイン酸メチル、カプリン酸エチ
ル等のエステル類をその代表的なものとして挙げること
が出来る。
更に培地中には予め微生物保持材、例えば1〜2000μm
の多孔質粒子が仕込まれ、微生物は該粒子内あるいは粒
子表層近くで増殖し、菌体内のリパーゼ活性が飛躍的に
上昇する。
このうな微生物保持体としての、微生物の持つ粘着力、
吸着力により微生物の吸着増殖を可能ならしめる任意の
材料が使用できる。例えば高分子多孔質材料としては、
ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィ
ン系;ブタジエンまたはイソプレンなどのジエン系;ポ
リ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、アクリルアミド
またはポリスチレンなどのビニル重合体、ポリエーテ
ル、ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリアミド
などの縮合系、ポリウレタン、シリコン及びフッ素系樹
脂などの材料;無機材料としてはセラミックス、ガラ
ス、活性炭、及び多孔質金属や金属繊維加工材料;また
有機材料としてはセルロース、或いはセルロースに化学
処理を施したエチルセルロース、メチルエチルセルロー
ス、ハイドロプロピルセルロースなどが使用できる。い
ずれの材料においても微生物を良好に該保持材に固定化
させるためには、空隙率が10〜99%、孔径が1〜2000μ
mの範囲にある多孔質材料から、空隙率が10〜99%であ
る金属加工材料等を使用するのが好ましい。
このような微生物保持材は、微生物の種類及び培養条件
等によって適宜選択でき、形状については例えば球状、
ブロック状あいはシート状等に加工して使用することが
できる。寸法については、微生物の種類、培養条件、反
応器の種類等によって異なるが、球状であれば概ね直径
1〜100mm、ブロック状のものであれば一辺が概ね1〜1
00mmのものが使用される。
微生物保持材の添加量としては、5〜40容量%が微生物
の増殖及び固定化の条件とし好ましい。
本発明において、培養槽への通気は空気、酸素あるいは
両者の混合ガスが用いられ、培養槽としては、撹拌機型
または無撹拌機型、気泡塔型のあらゆる形式のものが適
用できるが、通常、微生物保持材に固定化増殖させるに
は、無攪拌機型の培養槽が操作面及びコスト面から一層
好ましい。
更に本発明においては微生物保持材とともに培養するの
で、前述の様に菌体内のリパーゼ活性を高めるために加
えられ基質関連物質、即ちグリセライド類や脂肪酸類
は、例えば微生物保持材として親油性の高分子材料、例
えばポリウレタン等を用いる場合、これらの基質関連物
質は微生物保持材内に吸収される。従って、基質関連物
質が多量に微生物保持材内に吸収されると、微生物保持
材内への酵素、基質の移動抵抗が大きくなり、微生物保
持材内での増殖に対してマイナス要因となるばかりでな
く、ひいては微生物保持材内での増殖が不可能となるた
めリパーゼ生成は促進されなくなる。従って、微生物保
持材を用いる場合に加えられる基質関連物質の量は好ま
しくは0.2〜8%、より好ましくは0.2〜2%が良い。
更に微生物保持材内での安定した増殖を保ち、微生物の
微生物保持材からの剥離を抑制するためには、培養液中
の乱流強度及び培養液中の微生物保持材の濃度が重要な
因子となる。従って、微生物保持材内でのリパーゼを生
成する微生物の安定した増殖を維持するための乱流強度
としては、攪拌機型の培養槽では攪拌レイノルズ数で好
ましくは102〜107、より好ましくは103〜105となる攪拌
条件で操作される。
無攪拌機型の気泡塔では、特に微生物保持材からの微生
物の剥離の問題は、通気ガスの吹き抜けが発生する通気
線速度までの範囲においては認められない。従って、使
用される気泡塔の形式、添加される微生物保持材の形
状、量により異なるが、気泡塔内で円滑に微生物保持材
を流動させうる最低通気量、即ち、微生物保持材の最少
流動化通気量で充分であり、具体的には、通常0.5cm/se
c、好ましくは0.8cm/sec以上の通気線速度で操作され
る。菌体内のリパーゼの漏洩を防ぐという観点からは0.
5〜2.8cm/secの範囲が好ましい。
上述の様に培養して得られた微生物、即ち固定化微生物
は、生菌体のまま反応に使用することもできるが、菌体
から水分を除去し乾燥菌体とすればリパーゼは非常に安
定であり、長期間保存することができる。
微生物から水分を除去する方法としては、原則的には酵
素が失活しない温度(80℃以下)で乾燥すればよいが、
単に水分を蒸発させると細胞組織の収縮が起こり非常に
堅くなり、組織内のリパーゼと外界との接触が断たれて
活性を発揮することが困難となる。従って、菌体を乾燥
させるには細胞組織の収縮を伴わない方法を採用するの
が好ましい。このため、極性溶媒に菌体を浸して組織内
の水分を極性溶媒に置換した後、極性溶倍を蒸発させる
方法により、細胞組織の収縮を抑えて乾燥菌体を得るこ
とができる。この場合、乾燥方法としては真空あるいは
凍結乾燥、低温乾燥、温風乾燥等の公知の乾燥法が使用
できる。本発明に用いられる極性溶媒としては、水と混
合した場合に水と均一相となるものならいかなるものも
利用できるが、その代表的なものとしてアセトン、メチ
ルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;メタノ
ール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール
等の低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレ
ングリコール等のジオール類;グリセロール等のトリオ
ール類などが挙げられる。就中、アセトンやグリセロー
ルが酵素活性をほとんど低下させないので好ましい。
この様にして栄養物の比基質供給速度をコントロールし
て培養された微生物保持材に固定化された高リパーゼ活
性を有する菌体は、エスエル交換、エステル合成、加水
分解反応等の各種のリパーゼ反応に供される。特に油系
でのエステル交換反応、エステル合成反応に供される場
合は、既に報告されているように、市販の水分センサー
(例えば、パナメトリックス(株)、水分センサー、商
品名:システム1番)を用いて、反応基質中の水分濃度
をコントロールして、副反応である加水分解反応が抑制
される。
〔実施例〕
次に、本発明を参考例及び実施例を用いて説明するが、
もとより本発明はこれらにより何ら限定されるものでは
ない。
尚、以下の実施例において、微生物保持材に固定化され
た菌体は、培養液より分離後、水道水で2回洗浄し、次
いでアセトンで2回洗浄した後、常温で48時間真空乾燥
した。
菌体に含有されるリパーゼ活性については未だ一般的な
測定法が確立されていないので、本発明においては反応
基質としてオリーブオイル:ステアリン酸メチル:ヘキ
サン=1:4:2.5からなる混合物を用い、微生物保持材に
固定化された菌体を適量加えて40℃で一定時間反応せし
め、生成したオレイン酸メチルの量より、1分間当たり
1μmolのオレイン酸メチルを生成する酵素量を1ユニ
ット(1U)とした。尚、微生物保持材に結合した乾燥菌
体量は、全体の重量から10%(V/V)ジ亜塩素酸ソーダ
に浸漬し、菌体を剥離して得た微生物保持材の重量を差
し引くことによって求めた。
参考例1:微生物保持材内の菌体濃度を予測する方法 微生物保持材内の菌体濃度を予測する実験式の作成例を
示す。
例えば、実施例2で用いた気泡塔において予め通気線速
度を1.5〜4.0cm/sec、基質流加量を0.5〜3.0g−肉エキ
ス/hr、微生物保持材の添加量を1000〜1800個/の範
囲で変化させて培養し、微生物保持材内での菌体増殖へ
の影響を調べた結果、上記の条件内では、微生物保持材
内の菌体増殖は殆ど影響を受けず、下記(1)式で表現
できる; Xbsp:微生物保持材1個当たりの菌体濃度(mg/保持材) Xmbsp:微生物保持材1個当たりの菌体濃度の最大値:定
数(4.2mg/保持材) Kt:定数(27.8hr,tin=24hrの時) tin:培養時間(hr) tin:基質の流加開始時間:定数(24hr) (1)式を用いて微生物保持材内の菌体濃度を予測し、
比基質供給速度をコントロールして培養すればよい。
同様にして、使用する微生物の種類、培養槽の形式、微
生物保持材の種類、形状等に応じて(1)式のような実
験式を作成し、微生物保持材内の菌体濃度の予測式とし
て利用できる。
参考例2 微生物保持材内の菌体濃度予測式と利用できる増殖モデ
ル式の1例を示す。
微生物は微生物保持材の表層近くに密に生物膜を形成す
るので、バイオフィルム増殖モデルが適用可能である。
即ち、バイオフィルム内での基質濃度の変化は下記
(2)式で表される; また、バイオフィルムの厚さの変化は、下記(3)式で
表される; Sf:バイオフィルム内の基質濃度(mg−基質/) Df:バイオフィルム内の基質の拡散係数(cm2/sec) νm:基質の最大比消費速度(mg−基質/g−cell・hr) Ks:Monodの飽和定数(mg−基質/) m0:維持定数(mg−基質/g−cell・hr) y0:菌体収率(mg−cell/mg−基質) Z,Lf:バイオフィルムの厚さ(cm) 従って、上記のパラメーター(Df,νm,Ks,m0,Y0)を適
用される培養系について求め、(2)、(3)式を連立
させて計算機等を用いて解くことにより、微生物保持材
内の菌体増殖カーブを得ることができ、そのカーブを比
基質供給速度をコントロールする際の微生物保持材内の
菌体濃度の予測式として利用することができる。
実施例2に示した培養系の場合(2)、(3)式の近似
解は(1)の実験式とよく一致した。
実施例1 微生物としてアスペルギルス・ニガーIFO 4343を用い、
グルコース1%、ポリペプトン7%、NaNO30.1%、KH2P
O40.1%、MgSO4・7H2O0.05%からなる培地で30℃で24時
間前培養を行い種母を調製した。
5攪拌槽ジャーファーメンター(いわしや生物化学
(株)製、MBC−5、攪拌翼径8cm)を用いて、次の条件
で底流量流加培養を行った。
仕込培地組成:NaNO30.1%、KH2PO40.1%、MgSO4・7H2O
0.05%、オリーブオイル6.5% 流加培地組成及び流加流量:酵母エキス70g/ 0.65g/
hr pH:5.6、撹拌数:200rpm、通気量:0.5vvm、温度30℃ 微生物保持材として1辺6mmのブロック状のナイロン
(空隙率95〜98%、孔数40ケ/25mm)を1000個/−培
地の濃度(17.7V/V%)で加えた。120時間の培養期間
中、適宜サンプリングして微生物保持材に固定化された
菌体の濃度及びリパーゼ活性を測定した。
次に上述の定流量流加培養の菌体増殖カーブを基準にし
て、比基質供給速度が0.04g−酵母エキス/g−cell・hr
になるように2時間毎に流加流量をマイクロコンピュー
タを用いて変化させ120時間培養した。
更に、比基質供給速度を一定にした場合に供給された酵
母エキス量を計算し、同量を初期に仕込んで回分培養を
実施した。
第1表に定流量流加培養、比基質供給速度を一定にした
培養、回分培養の菌体内リパーゼ活性を比較した。第1
表より比基質供給速度を一定にした場合、回分培養に比
べて培養全般を通じ安定して活性1.3〜1.5倍高いことが
分かる。定流量流加培養においては培養初期には高い活
性が得られたが、次第に低下し、培養後半には回分培養
と同程度にまで低下した。これら3種類の培養方法にお
いて、菌体増殖には差がなかった。
実施例2 微生物としてリゾープス・キネンシスIFO 4768用いて、
実施例1と同様にして種母を調製した。
第1図は、実施例2で培養槽として用いた気泡塔(Circ
ulating Bed Fermentor)の概略断面図である。第1図
に示した如く、この気泡塔(1)は高さ(H)が400m
m、内径(D1)が150mmである。また、第2図は第1図に
示されている気泡塔内に設けられている気泡分散板
(2)の平面図である。気泡分散板(2)は直径(D2
が150mmであり、第2図に示されているように直径3mmの
孔(3)が設けられ、空気は第1図に矢印で示す方向に
通気される。
第1図の気泡塔を用いて、通気量24/min、温度30℃、
pH5.0の条件で培養した。なお供給培地は実施例1の酵
母エキスを肉エキスに換えたものを用いた。またオリー
ブオイルの代わりにオレイン酸を2%初期仕込液に加え
た。
微生物保持材として1辺6mmのブロック状のポリウレタ
ンフォーム(ブリジストン(株)、商品名:HR−40)を
仕込液中に1500個/(24.5V/V%)となるように加え
た。
実施例1と同じ要領で流加量2.5g−肉エキス/hrの定流
量流加培養、比基質供給速度を0.01,0.05,0.13g−肉エ
キス/g−cell・hrにコントロールした培養、及び回分培
養を行い、第2表にそれらの活性を比較した。
実施例1と同様に、比基質供給速度を0.05g−肉エキス/
g−cell・hrにコントロールすることによってリパーゼ
活性は1.3〜1.5倍増幅された。また定流量流加培養では
培養後期に最大活性が認められた。比基質供給速度が大
きすぎる(0.13)或いは小さすぎる(0.01)場合は、回
分培養と同程度の活性しか得られなかった。
実施例3 微生物としてムコール・ジャバニカスIFO 4569を用いて
実施例1と同様に前培養及び3種類の本培養を実施し
た。なお供給倍地は実施例1の酵母エキスをイースト・
ペプトンに換えたものを用いた。
微生物保持材として球状のステンレス加工材料(直径5m
m、空隙率80〜85%)を仕込液中に1500個/(15.8V/V
%)となるように加えた。定流量流加培養の流加量は0.
1g−イースト・ペプトン/hrとし、比基質供給速度は0.0
65g−イースト・ペプトン/g−cell・hrにコントロール
した。
第3表に3種類の本培養の本培養の結果を示した。実施
例1,2と同様に、比基質供給速度をコントロールするこ
とによってリパーゼ活性は増幅された。また定流量流加
培養では培養中期に最大活性が認められた。
実施例4 微生物としてジョートリクム・カンディダムIFO 4597を
用いて、実施例1と同様に前培養及び3種類の本培養を
実施した。なお供給倍地は実施例1の酵母エキスをプロ
エキスに換えたものを用いた。
微生物保持材として1辺6mmのブロック状のポリカーボ
ネート(空隙率90〜95%、孔数50ケ/25mm)を1000個/
−培地の濃度(17.7V/V%)で加えた。定流量流加培
養の流加量は1.6g−プロエキス/hrとし、比基質供給速
度は0.03g−プロエキス/g−cell・hrにコントロールし
た。
第4表に3種類の本培養の結果を示した。比基質供給速
度をコントロールすることによってリパーゼ活性はやは
り安定して増幅された。また定流量流加培養では培養後
期に最大活性が認められた。
実施例5 微生物としてキャンディダ・シリンドラッセATCC 10571
を用いて、実施例2と同様に前培養及び3種類の本培養
を実施した。おな供給培地は実施例2の肉エキスをポリ
ペプトンに換えたものを用いた。
微生物保持材として1辺6mmのブロック状ポリウレタン
フォーム(ブリジストン(株)、商品名:HR−50)を仕
込液中に1500個/(24.5V/V%)となるように加え
た。
定流量流加培養の流加量は1.6g−ポリペプトン/hrと
し、比基質供給速度は0.06g−ポリペプトン/g−cell・h
rにコントロールした。
第5表に3種類の本培養の結果を示した。同様に比基質
供給速度をコントロールすることによってリパーゼ活性
は1.3〜1.5倍増幅された。また定流量流加培養では培養
中期に最大活性が認められた。
実施例6 微生物としてコリネバクテウム・イクイIFO3730を用い
て実施例5と同様に前培養及び3種類の本培養を実施し
た。
結果を第6表に示した。実施例5と同様の結果が得られ
た。
実施例7 微生物としてスタフィロコッカス・アウレウスIFO 3060
を用いて、実施例5と同様に前培養及び3種類の本培養
を実施した。
結果を第7表に示した。実施例5と同様の結果が得られ
た。
実施例8 実施例2と同様の微生物、培養装置を用い、微生物保持
材として1辺6mmのブロック状のセルロース発泡体(酒
伊エンジニアリング(株)、商品名CS−II)を用いて、
実施例2と同じ要領で回分培養、定流量流加培養、比基
質供給速度を0.05g−肉エキス/g−cell・hrにコントロ
ールした培養を実施した。
第8表にそれらの活性を比較したが、比基質供給速度を
適切な範囲内にコントロールすることによって菌体内リ
パーゼ活性は安定して高められた。
〔作用・効果〕 本発明における比基質供給速度はリパーゼ生成能を有す
る微生物と微生物保持材を含む培養系で培養する際に適
用し得る効果的な培養制御指標であり、比基質供給速度
を一定の範囲にコントロールすることによってリパーゼ
生産に必要な栄養物を無駄なく供給することが可能にな
るばかりでなく、微生物保持材による菌体内リパーゼ生
成促進作用をなお一層高め得る。従って、エステル交換
反応、エステル合成反応、加水分解反応などの種々のリ
パーゼ反応に使用されるリパーゼ固定化酵素触媒の生産
を極めて低コストで実現するものであり、工業的なリパ
ーゼの応用を可能ならしめるものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例2,5,6,7で用いた気泡塔の断面図であ
り、第2図は第1図に示される気泡塔中に設けられてい
る気泡分散液の平面図である。 1……気泡塔、2……気泡分散板 3……孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:845) (C12N 9/20 C12R 1:785) (C12N 9/20 C12R 1:645) (C12N 9/20 C12R 1:72) (C12N 9/20 C12R 1:15) (C12N 9/20 C12R 1:445)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リパーゼ生成能を有する微生物を微生物保
    持材と共に培養するに際し、有機窒素源を主成分する栄
    養物の比基質供給速度を0.03〜0.1g栄養物/g−cell・hr
    の範囲にコントロールすることを特徴とする、菌体内の
    リパーゼ活性を高める流加培養方法。
  2. 【請求項2】有機窒素源がアミノ酸またはアミノ酸およ
    びペプチドを主成分とする請求項1記載の流加培養方
    法。
JP1119482A 1988-05-20 1989-05-12 菌体内のリパーゼ活性を高める培養方法 Expired - Fee Related JPH0755149B2 (ja)

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Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS52125686A (en) * 1976-04-12 1977-10-21 Marubishi Baioneji:Kk Process for growing yeast in high yield
JPS6049792A (ja) * 1983-08-29 1985-03-19 Kikkoman Corp 微生物の流加培養法
JPS6091979A (ja) * 1983-10-26 1985-05-23 Hitachi Ltd 基質の流加制御方法及び装置
JPS60141283A (ja) * 1983-12-28 1985-07-26 Toyo Soda Mfg Co Ltd 酵母の培養方法

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