JPH0753741A - プリプレグおよびコンポジット - Google Patents

プリプレグおよびコンポジット

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JPH0753741A
JPH0753741A JP22970693A JP22970693A JPH0753741A JP H0753741 A JPH0753741 A JP H0753741A JP 22970693 A JP22970693 A JP 22970693A JP 22970693 A JP22970693 A JP 22970693A JP H0753741 A JPH0753741 A JP H0753741A
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JP
Japan
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resin
prepreg
thermosetting resin
constituent element
phase
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Application number
JP22970693A
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English (en)
Inventor
Hajime Kishi
肇 岸
Atsushi Ozaki
篤 尾崎
Nobuyuki Odagiri
信之 小田切
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 吸水後の高温状態における圧縮強度および耐
溶剤性を維持した上、耐衝撃性、層間靱性に優れ、さら
には交差積層板を引張った際の板端剥離強度が著しく高
い複合材料を与えるためのプリプレグおよびそれから得
られるコンポジットを提供する。 【構成】 次の構成要素[A]、[B]および[C]か
らなり、[C]が[B]より表面側に存在していること
を特徴とするプリプレグ、およびそれから得られたプリ
プレグ。 [A]:強化繊維 [B]:硬化後に相分離しない熱硬化性樹脂組成物 [C]:硬化後に相分離する熱硬化性樹脂組成物

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、先進複合材料として強
度、弾性率、さらにはこれらを比重で除した比強度、比
弾性率の大なることを要求される構造体に用いられるプ
リプレグおよびその成形物であるコンポジットに関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】先進複合材料は、強化繊維と、マトリッ
クス樹脂を必須の構成要素とする不均一材料であり、こ
のため、繊維軸方向の物性とそれ以外の方向の物性に大
きな差が存在する。たとえば、落錘衝撃に対する抵抗性
は、強化繊維の強度を向上させても抜本的な改良には結
びつかないことが知られている。特に、熱硬化性樹脂を
マトリックス樹脂とする複合材料は、マトリックス樹脂
の低靱性を反映し耐衝撃特性が不十分である。また、交
差積層板に引張り荷重を加えた際、板端から層間剥離が
生じることが多く、その為、積層構成の自由度が制限さ
れることが多い。そこで、繊維軸方向以外の物性、特に
耐衝撃性、層間靱性を改良することを目的として種々の
方法が提案されている。
【0003】熱硬化性樹脂そのものの高靱性化手法とし
て、エポキシ樹脂にポリスルフォン樹脂を添加する手法
が特開昭60−243113号公報に、また、エポキシ
樹脂に芳香属オリゴマを添加する手法が特開昭61−2
28016号公報に開示されている。この樹脂高靱性化
によって複合材料の耐衝撃性も改良されるとしている。
【0004】特開昭60−63229号公報では、繊維
強化プリプレグの層間にエラストマーで改質したエポキ
シ樹脂フィルムを配して耐衝撃性の改善がなされること
が開示されている。
【0005】米国特許第4,604,319号明細書で
は、繊維強化プリプレグの層間に熱可塑性樹脂フィルム
を配して耐衝撃性の改善がなされることが開示されてい
る。
【0006】本発明者らは米国特許第5,028,47
8号明細書において、樹脂を素材とする微粒子を含むマ
トリックス樹脂を開示した。特に、樹脂微粒子をプリプ
レグの表面に局在化させることにより、プリプレグのタ
ック性(粘着性)およびドレープ性(以下、タック・ド
レープ性)を有したまま耐衝撃性の改良された複合材料
を与えることを示した。
【0007】米国特許第4,863,787号明細書で
は、エポキシ樹脂、反応性オリゴマおよび粒径10〜7
5ミクロンのエラストマー状粒子からなるマトリックス
樹脂を用いたプリプレグにより、耐衝撃性の改良された
複合材料が得られることが開示されている。ここでエラ
ストマー粒子以外の硬化樹脂部分には相分離構造が形成
されるとしている。
【0008】ヨーロッパ公開特許第0377194 A
2号明細書では、アミノフェニルトリメチルインダン等
の部分的に非芳香族性の骨格を有するエポキシ可溶性ポ
リイミド粒子(粒径2〜35μm)を混合したエポキシ
樹脂をマトリックス樹脂とすれば複合材料の耐衝撃性が
向上することが開示されている。該公報によると可溶性
ポリイミド粒子は複合材料の層間部で成形中に溶解する
としている。
【0009】特開平3−26750号公報ではエポキシ
樹脂、反応性ポリスルホンオリゴマおよび反応性エラス
トマとエポキシ樹脂からなる樹脂微粒子をマトリックス
樹脂とした複合材料は耐衝撃性が優れているとしてい
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの手法
は、その耐衝撃性改良効果がいまだ不十分であったり、
耐衝撃性を改良するために耐熱性、ハンドリング性その
他の特性を犠牲にするなど、それぞれに欠点を有してい
る。
【0011】特開昭60−243113号公報のように
高分子量のポリスルフォン等の熱可塑性樹脂を混合し樹
脂靱性を向上させる場合、その樹脂組成物の粘度が高く
なりすぎて強化繊維への含浸が困難となり、プリプレグ
のタック、ドレープ性も損なわれる。特開昭61−22
8016号公報のように分子量を下げたオリゴマを添加
する場合も、十分な樹脂靱性を得るためには熱可塑性樹
脂の添加量を十分多くする必要があり、それに伴い樹脂
組成物の粘度が高くなりすぎて強化繊維への含浸が困難
となる。また、熱可塑性樹脂の量を増やすに従い、硬化
物の耐溶剤性が低下する。しかも、これら樹脂そのもの
の靱性を向上しても複合材料の耐衝撃性改良にとっては
しだいに頭打ちになる傾向が認められる。
【0012】特開昭60−63229号公報のようにエ
ラストマー改質熱硬化性樹脂を含む独立外層フィルムを
用いた場合には、エラストマーの含量が多くなると耐熱
性が低下し、エラストマーの含量が少ないと耐衝撃性の
改善効果は非常に少ない。
【0013】また、米国特許第4,604,319号明
細書のように熱可塑性樹脂フィルムを用いた場合には耐
熱性の良好な熱可塑性樹脂フィルムを用いることにより
耐熱性と耐衝撃性の改善効果の両立がある程度なされる
が熱硬化性樹脂の利点であるタック性(粘着性)やドレ
ープ性が失われる。また、耐溶剤性が良くないという熱
可塑性樹脂の一般的欠点が複合材料に反映してしまう。
【0014】米国特許第4,863,787号明細書の
ように層間部に存在する粒子がエラストマーである場
合、圧力や昇温速度等の成形条件変化により層間厚さが
変化しやすく、結果的に耐衝撃性が成形条件の影響を受
けやすい。また、エラストマーの存在が複合材料の耐熱
性を低下させ、また層間剪断強度を低下させると考えら
れる。
【0015】ヨーロッパ公開特許0377194 A2
号明細書のように層間部に可溶性ポリイミドを配置する
場合も成形条件変化により層間厚さが変化しやすく、耐
衝撃性が成形条件の影響を受けやすい。
【0016】特開平3−26750号公報には実施例に
衝撃後圧縮強度(CAI)の記載がないので耐衝撃性の
程度を評価することができないが、粒子中のエラストマ
ーが耐熱性を低下させると考えられる。
【0017】一方、本発明者らは米国特許第5,02
8,478号明細書において、樹脂微粒子が層間部分に
局在化する複合材料を開示している。耐熱性を維持しつ
つ耐衝撃性を向上させることを目的とし、非晶質透明ナ
イロンの微粒子を用いた実施例ではCAIが53.3k
siと高いが、一方向コンポジットの引き剥がしモード
の層間靱性Glcを測定したところ、従来のエポキシ樹
脂をマトリックス樹脂とするコンポジットと大差はな
い。同技術の範疇で耐熱性の低い熱可塑性樹脂微粒子を
用いることでCAIをさらに向上させ得るが、複合材料
の耐熱性や層間剪断強度を低下させるおそれがある。
【0018】本発明は高い層間剪断強度や耐熱性、特に
吸水後の高温状態における圧縮強度および耐溶剤性を維
持したまま、上記先行例を上回る耐衝撃性、層間靱性を
有し、さらには交差積層板を引張った際の板端剥離強度
(EDS)が著しく高い複合材料を与えるためのプリプ
レグおよびそれから得られるコンポジットを提供するこ
とをその課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明のプリプレグは上
記目的を達するため次の構成を有する。
【0020】すなわち、次の構成要素[A]、[B]お
よび[C]からなり、[C]が[B]より表面側に存在
していることを特徴とするプリプレグである。 [A]:強化繊維 [B]:硬化後に相分離しない熱硬化性樹脂組成物 [C]:硬化後に相分離する熱硬化性樹脂組成物
【0021】さらには、次の構成要素[A]、[B]、
[C]および[D]からなり、[C]が[B]より表面
側に存在し、[D]が構成要素[C]中に存在すること
を特徴とするプリプレグである。 [A]:強化繊維 [B]:硬化後に相分離しない熱硬化性樹脂組成物 [C]:硬化後に相分離する熱硬化性樹脂組成物 [D]:樹脂を素材とする微粒子
【0022】また、本発明のコンポジットは上記目的を
達するため次の構成を有する。すなわち、次の構成要素
[A]、[B’]および[C’]からなる積層体であ
り、積層体中の層間領域に[C’]が局在化し、
[B’]が[C’]より一層中の内側に存在することを
特徴とするコンポジットである。 [A] :強化繊維 [B’]:相分離していない熱硬化性樹脂硬化物 [C’]:相分離した熱硬化性樹脂硬化物
【0023】さらには、次の構成要素[A]、
[B’]、[C’]および[D’]からなる積層体であ
り、積層体中の層間領域に[C’]および[D’]があ
り、[B’]が[C’]より一層中の内側に存在するこ
とを特徴とするコンポジットである。 [A] :強化繊維 [B’]:相分離していない熱硬化性樹脂硬化物 [C’]:相分離した熱硬化性樹脂硬化物 [C’]:樹脂を素材とする微粒子
【0024】(構成要素[A]の説明)本発明に構成要
素[A]として用いられる要素は長繊維からなる強化繊
維である。
【0025】本発明に用いる強化繊維は、一般に先進複
合材料として用いられる耐熱性および引張強度の良好な
繊維である。たとえば、その強化繊維には、炭素繊維、
黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊
維、ボロン繊維、タングステンカーバイド繊維、ガラス
繊維があげられる。このうち比強度、比弾性率が良好で
軽量化に大きな寄与が認められる炭素繊維や黒鉛繊維が
本発明には最も良好である。炭素繊維や黒鉛繊維は用途
に応じてあらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いるこ
とが可能であるが、引張伸度1.5%以上の高強度炭素
繊維が複合材料の強度発現のため適している。引張強度
450kgf/mm以上、引張伸度1.7%以上の高
強度高伸度炭素繊維はさらに好ましく、引張伸度1.9
%以上の高強度高伸度炭素繊維が最も適している。ま
た、本発明には長繊維状の強化繊維を用いるが、その長
さは5cm以上であることが好ましい。それより短い場
合、強化繊維の強度を複合材料として十分に発現させる
ことが困難となる。また、炭素繊維や黒鉛繊維は他の強
化繊維を混合して用いてもよい。また、強化繊維はその
形状や配列は特に限定されず、たとえば、単一方向、ラ
ンダム方向、シート状、マット状、織物状、組み紐状で
あっても使用可能である。また、特に、比強度、非弾性
率が高いことを要求される用途には強化繊維が単一方向
に引き揃えられた配列が最も適しているが、取扱いの容
易なクロス(織物)状の配列も本発明には適している。
【0026】(構成要素[B]、[B’]および
[C]、[C’]の説明)本発明に構成要素[B]とし
て用いられる要素は硬化後に相分離しない熱硬化性樹脂
組成物であり、[B’]は[B]を硬化することにより
得られる相分離していない熱硬化性樹脂硬化物である。
【0027】本発明に構成要素[C]として用いられる
要素は硬化後に相分離する熱硬化性樹脂組成物であり、
[C’]は[C]を硬化することにより得られる相分離
した熱硬化性樹脂硬化物である。
【0028】ここで言う相分離とは、次の2種のいずれ
かの形態を指す。すなわち、海/島構造と海/海
(両相連続)構造である。海/島構造とは連続した一
つの相の中に、それとは区別できる他の相が分散する構
造である。この場合、分散相の大きさは、10μm以下
が靱性向上のため好ましく、より好ましくは5μm以下
である。海/海構造とは2つの区別しうる相が両方と
も連続した相を形成するものである。この海/海構造
は、スピノーダル分解型相分離によって形成されるもの
であり、一定の相分離構造周期を有する。この構造周期
が20μm以下であることが靱性向上のため好ましく、
より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは
10μm以下の場合である。スピノーダル分解型相分離
については高分子新素材One Point−12 ポ
リマアロイ(井上 隆/市原祥次著、高分子学会編)第
3章に詳しい説明がある。こうした相分離構造の有無は
光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡にて1000〜1000
0倍に拡大観察して判定することができる。この際、必
要に応じて染色することも行う。とを混合した相分
離構造も本発明に適している。
【0029】構成要素[B]は熱硬化性樹脂組成物であ
り、熱硬化性樹脂以外の他の成分を改質剤として含有し
た場合でも、それを硬化させ構成要素[B’]となった
際に相分離構造を有しないものは構成要素[B]に包含
される。相分離構造を有する場合、圧縮強度が低下する
ため好ましくない。
【0030】逆に構成要素[C]は硬化後に相分離する
熱硬化性樹脂組成物であり、それを硬化した構成要素
[C’]は相分離構造を有し、それによってコンポジッ
トの耐衝撃性、層間靱性、板端剥離抵抗が大きく向上す
る。
【0031】本発明のプリプレグにおいて構成要素
[C]は構成要素[B]より表面側に存在していること
を要し、従って本発明のコンポジットにおいては構成要
素[C’]は構成要素[B]より一層中の外側に存在す
ることを要する。本発明のプリプレグを層構造としてモ
デル的に説明すると、構成要素[A]と[B]とからな
る層とその外側に存在する構成要素[C]からなる層を
有する多層構造体と表現しうる。
【0032】マトリックス樹脂として構成要素[B’]
のみを用い、構成要素[C’]を有しない場合はコンポ
ジットの耐衝撃性、層間靱性は低く、逆にマトリックス
樹脂として構成要素[C’]のみを用い、構成要素
[B’]を有しない場合はコンポジットの圧縮強度や耐
溶剤性が低下する。
【0033】これに対し、構成要素[B’]および構成
要素[C’]をコンポジット中に適切に配置することに
より、これまで二律背反する特性であった高い耐衝撃
性、層間靱性と高い圧縮強度や層間剪断強度、耐溶剤性
を両立させうることを見い出したのである。
【0034】構成要素[C’]は、複合材料の積層層間
部に局在化することが高い耐衝撃性、層間靱性、さらに
は優れた板端剥離強度を有する複合材料を与えるために
重要である。特に、構成要素[A]と構成要素
[B’]、[C’]からなる層が複数枚積層されたコン
ポジット中で、層と層の間に挟まれた「層間領域」に構
成要素[C’]の全量の90%以上が局在化する場合に
顕著な効果が得られる。
【0035】本発明において「層間領域」とは図1に示
すように、構成要素[A]および構成要素[B’]、
[C’]からなる層とその上下の層の接する部分に形成
されている領域であり、各層の平均厚みをtとすると、
層と層とが接する面から厚さ方向へ上下へ0.25tず
つ入った0.5tの厚みをもつ領域をいう。構成要素
[C’]の90%以上が層と層とが接する面から厚さ方
向へ上下へ0.2tずつ入った0.4tの厚みをもつ領
域に局在化する場合は、より顕著に本発明の効果が現れ
るのでさらに好ましいといえる。
【0036】前記の条件をはずれ、「層間領域」を越え
て、層の内部深くに構成要素[C’]が多量に存在する
場合、コンポジットの耐衝撃性、層間靱性、EDSの向
上効果は小さく、また、圧縮強度や耐熱性を損なうおそ
れがある。
【0037】複合材料中の構成要素[C’]の分布状態
の評価は、次のようにして行うことができる。
【0038】まず、複合材料を積層面に垂直に切断し、
その断面を70倍以上に拡大して200mm×200m
m以上の写真を作成する。なお写真は、層の面方向と写
真の一辺とが平行になるように撮る。
【0039】この断面写真を用い、まず平均的な層の厚
みを求める。層の平均厚みは写真上で、少なくとも5層
以上の積層部分の厚みを、任意に選んだ5箇所で測定
し、その値を該積層数で除して求める。
【0040】次に、コンポジットを四酸化オスミウム等
にて相分離構造を染色して観察する。顕微鏡は光学顕微
鏡でも観察可能であるが、染色方法によっては走査型電
子顕微鏡のほうが観察に適している場合もある。この複
合材料の断面を400倍以上に拡大して200mm×2
00mm以上の写真を作製する。層の長て方向が左右に
なるように写真を置き、一つの層間に着目し、その層間
部分のほぼ中心に線を引く。
【0041】ついで、この中心線から先に求めた層の平
均厚みの25%の間隔で上下に2本の線をその中心線に
対して対称に引く。写真中の層の平均厚みの25%+2
5%=50%を間隔とする2本の平行線に囲まれた部分
が「層間領域」である。
【0042】層間樹脂に層分離構造が認められたなら、
その相分離樹脂が「層間領域」に局在化しているかどう
かを観察する。すなわち、層間樹脂から層間を挟む上下
の層に向かい、層内樹脂が相分離しているかどうか辿っ
て行く。層間から層内へ続く樹脂が、ある場所より内層
側では相分離していない場合、その境界を見出し、境界
を代表するように層の長て方向に上下2本の平行線を引
く。その平行線の間隔で構成要素[C’]の領域を表す
こととする。
【0043】この[C’]の領域を表す平行線の間隔の
90%以上が上記定義における「層間領域」に入ってい
れば[C’]は「層間領域」に局在化しているとする。
【0044】構成要素[C’]が複合材料の積層層間部
に局在化して存在することは、成形前のプリプレグの形
態に置き換えると構成要素[C]の大部分がプリプレグ
表面付近に局在化しているということである。特に構成
要素[C]の90%以上が、プリプレグ表面からプリプ
レグの厚さの25%の深さの範囲内に存在する場合、こ
の条件をはずれてプリプレグ内部深くに構成要素[C]
が入った場合より、複合材料の耐衝撃性、層間靱性、板
端剥離強度は格段に優れたものとなる。[C]の90%
以上が、プリプレグ表面からプリプレグの厚さの20%
の深さの範囲内に局在化する場合は、より顕著な効果が
現れるのでさらに好ましい。このような局在化手段とし
ては、構成要素[B]をマトリックス樹脂とし、強化繊
維に含浸させた一次プリプレグをまず作製し、次に構成
要素[C]、からなる残りのマトリックス樹脂フィルム
を一次プリプレグの表面に貼りつける方法などを採用す
ることができる。
【0045】プリプレグ中の構成要素[C]の分布状態
の評価は次のようにして行うことができる。
【0046】まず、プリプレグを二枚の平滑な支持板の
間にはさんで密着させ、長時間かけて除々に温度を上げ
て硬化させる。この時に重要なことは可能なかぎり低温
でゲル化させることである。ゲル化しないうちに急に温
度を上げるとプリプレグ中の樹脂が流動し、プリプレグ
中における正確な分布状態の評価ができない。
【0047】ゲル化した後、さらに時間をかけて除々に
昇温しプリプレグを硬化させる。硬化したプリプレグを
上記コンポジットと同様の方法にて染色し、その断面を
200倍以上に拡大して、200mm×200mm以上
の写真を撮る。
【0048】この断面写真を用い、まず平均的なプリプ
レグの厚みを求める。プリプレグの平均厚みは写真上
で、任意に選んだ少なくとも5箇所で測り、その平均を
とる。次に、両方の支持板に接していた表面からプリプ
レグの厚みの25%の位置にプリプレグの面方向と平行
に線を引く。支持板に接していた表面と25%の平行線
の間に構成要素[C]の90%以上があれば、[C]は
プリプレグ表面に局在化しているとする。まず、上記硬
化させたプリプレグ表面付近に相分離構造を有する樹脂
があるかどうか観察する。
【0049】表面付近の樹脂に相分離構造が認められた
なら、その相分離樹脂か表面からプリプレグ厚さ25%
までの深さに局在化しているかどうかを観察する。すな
わち、表面樹脂から内層に向かい、樹脂が相分離してい
るかどうか辿って行く。表面から層内へ続く樹脂が、あ
る場所より内層側では相分離していない場合、その境界
を見出し、境界を代表するように層の長て方向に平行に
直線を引く。その直線とプリプレグ表面の間隔で構成要
素[C]の領域を表すこととする。この間隔をdとする
と、dの90%以上がプリプレグ表面からプリプレグ厚
さの25%以内に入っていれば[C]はプリプレグ表面
に局在化しているとする。
【0050】構成要素[B]と[C]の比率、あるいは
構成要素[B’]と[C’]の比率は、[B]/[C]
([B’]/[C’])=0.5〜5の範囲が好まし
い。これより小さい場合は吸水高温下での圧縮強度の低
下が著しく、これより大きい場合は層間靱性向上効果が
小さい。より好ましくは0.7〜4の範囲である。
【0051】構成要素[B]、[B’]および構成要素
[C]、[C’]の主成分である熱硬化性樹脂は、熱ま
たは光や電子線などの外部からのエネルギーにより硬化
して、少なくとも部分的に三次元硬化物を形成する樹脂
が好ましく用いられる。ある熱硬化性樹脂組成物が構成
要素[B]、[B’]または[C]、[C’]のいずれ
かに属するかはそれぞれの組成物が硬化後に相分離する
かしないかによって容易に確認しうる。これら組成物の
主成分である熱硬化性樹脂が同一であってもそれと組合
せる他の成分によって硬化後に相分離するものと相分離
しないものが存在する。従って以下の具体例の説明は原
則として両構成要素を対称として行う。
【0052】本発明に適した熱硬化性樹脂の具体例とし
ては、特に、エポキシ樹脂があげられ、一般に硬化剤や
硬化触媒と組み合わせて用いられる。特に、アミン類、
フェノール類、炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆
体とするエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、アミン
類を前駆体とするエポキシ樹脂としては、テトラグリシ
ジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−
アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノ
ール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体、
フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビス
フェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポ
キシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノー
ルノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型
エポキシ樹脂、炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆
体とするエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂等
があげられるが、勿論これらに限定されない。また、こ
れらのエポキシ樹脂をブロム化したブロム化エポキシ樹
脂も用いられる。テトラグリシジルジアミノジフェニル
メタンに代表される芳香族アミンを前駆体とするエポキ
シ樹脂は耐熱性が良好で強化繊維との接着性が良好なた
め本発明に最も適している。
【0053】エポキシ樹脂はエポキシ硬化剤と組み合わ
せて好ましく用いられる。エポキシ硬化剤はエポキシ基
と反応しうる活性基を有する化合物であれば本質的には
いずれの化合物も用いることができる。公知のエポキシ
硬化剤を適宜用いることができるが、特に、アミノ基、
酸無水物基、アジド基を有する化合物が適している。具
体的には、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルスル
ホンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類が適して
いる。より具体的に説明すると、ジシアンジアミドはプ
リプレグの保存性に優れるため好んで用いられる。また
ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の
良好な硬化物を与えるため本発明には最も適している。
アミノ安息香酸エステル類としては、トリメチレングリ
コールジ−p−アミノベンゾエートやネオペンチルグリ
コールジ−p−アミノベンゾエートが好んで用いられ、
ジアミノジフェニルスルホンに比較して、耐熱性に劣る
ものの、引張伸度に優れるため用途に応じて選択して用
いられる。
【0054】また、エポキシ樹脂に微粉末状シリカなど
の無機質微粒子やエラストマーなどを少量混合すること
も可能である。
【0055】構成要素[B]、[B’]および構成要素
[C]、[C’]中の熱硬化性樹脂として、エポキシ樹
脂以外に、マレイミド樹脂、アセチレン末端を有する樹
脂、ナジック酸末端を有する樹脂、シアン酸エステル末
端を有する樹脂、ビニル末端を有する樹脂、アリル末端
を有する樹脂も好ましく用いられる。これらは適宜、エ
ポキシ樹脂や他の樹脂と混合して用いてもよい。また、
反応性希釈剤を用いたり熱可塑性樹脂やエラストマーな
どの改質剤を耐熱性を大きく低下させない程度に混合し
て用いてもよい。
【0056】マレイミド樹脂は、1分子あたりマレイミ
ド基を平均2個以上含む化合物である。ジアミノジフェ
ニルメタンを原料とするビスマレイミドが特に好適に用
いられる。この種のマレイミド化合物としては例えば
N,N’−フェニレンビスマレイミド、N,N’−ヘキ
サメチレンビスマレイミド、N,N’−メチレン−ジ−
p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−オキシ−ジ
−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4’
−ベンゾフェノンビスマレイミド、N,N’−ジフェニ
ルスルホンビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジ
メチル)−メチレン−ジ−p−フェニレンビスマレイミ
ド、N,N’−4,4’−ジシクロヘキシルメタンビス
マレイミド、N,N’−m(又はp)−キシリレン−ビ
スマレイミド、N,N’−(3,3’−ジエチル)−メ
チレン−ジ−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’
−メタトリレン−ジ−マレイミドやビス(アミノフェノ
キシ)ベンゼンのビスマレイミドを始め、アニリンとホ
ルマリンの反応生成物である混合ポリアミンと無水マレ
イン酸との反応生成物があげられるが、勿論本発明はこ
れらに限定されない。また、これらマレイミド化合物は
2種以上の混合系で用いてもよく、またN−アリルマレ
イミド、N−プロピルマレイミド、N−ヘキシルマレイ
ミド、N−フェニルマレイミドなどのモノマレイミド化
合物を含有してもよい。
【0057】マレイミド樹脂は硬化剤(反応性希釈剤)
と組み合わせて好ましく用いられる。硬化剤はマレイミ
ド基と反応し得る活性基を有する化合物であればこれを
用いることができる。好ましくは、アミノ基、アリル基
に代表されるアルケニル基、ベンゾシクロブテン基、ア
リルナジックイミド基、イソシアネート基、シアネート
基、エポキシ基を有する化合物が適している。例えば、
アミノ基を有する硬化剤としてはジアミノジフェニルメ
タンが代表的であり、アルケニル基を有する硬化剤とし
ては0,0’−ジアリルビスフェノールAやビス(プロ
ペニルフェノキシ)スルホンなどがあげられる。
【0058】上記のビスマレイミドとシアン酸エステル
で構成されるビスマレイミド・トリアジン樹脂(BT樹
脂)も本発明の熱硬化性樹脂として好適である。シアン
酸エステル末端を有する樹脂としては、ビスフェノール
Aに代表される多価フェノールのシアン酸エステル化合
物が好適である。シアン酸エステル樹脂とビスマレイミ
ド樹脂と組合せた樹脂は、三菱ガス化学(株)からBT
レジンとして市販されており本発明に適している。これ
らは一般にエポキシ樹脂より、耐熱性と耐水性が良好で
ある半面、靱性や耐衝撃性が劣るため用途に応じて選択
して用いることが好ましい。ビスマレイミドとシアン酸
エステルは通常重量比で0/100〜70/30の範囲
で用いられる。0/100の場合はシアネート(トリア
ジン)樹脂であるが、本発明にはこれも適している。
【0059】さらに、末端反応性基を持つ熱硬化性ポリ
イミド樹脂も構成要素[B]、[B’]および構成要素
[C]、[C’]中の熱硬化性樹脂として好適である。
末端反応性基としてはナジイミド基、アセチレン基、ベ
ンゾシクロブテン基などが好適である。
【0060】構成要素[B]、[B’]および構成要素
[C]、[C’]中の熱硬化性樹脂として、フェノール
樹脂、レゾルシノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、
ジアリルフタレート樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂とい
った工業界で広く認知された熱硬化性樹脂を用いること
ができる。
【0061】構成要素[B]、[B’]および構成要素
[C]、[C’]が改質剤として熱可塑性樹脂成分を含
有する熱硬化性樹脂であることは、熱硬化性樹脂単独の
場合より樹脂靱性を向上させるため好ましい。熱可塑性
樹脂成分としては、用いた熱硬化性樹脂のモノマーに溶
解し得るものが好ましい。ここで熱可塑性樹脂成分とは
工業界で広く認知された熱可塑性樹脂を指すが、熱硬化
性樹脂本来の高耐熱性、高弾性率を損なわない為に、芳
香族系のいわゆるエンジニアリングプラスチックに属す
るものが、この熱可塑性樹脂として好ましい。すなわ
ち、芳香族ポリイミド骨格、芳香族ポリアミド骨格、芳
香族ポリエーテル骨格、芳香族ポリスルホン骨格、芳香
族ポリケトン骨格、芳香族ポリエステル骨格、芳香族ポ
リカーボネート骨格を有する熱硬化性樹脂可溶の高耐熱
性の熱可塑性樹脂が代表例としてあげられる。特に芳香
族ポリイミド骨格、芳香族ポリスルホン骨格を有するも
のは耐熱性、耐溶剤性、靱性のいずれにも優れるため好
ましい。これらの熱可塑性樹脂は市販のポリマーを用い
てもよく、また、適宜目的に応じて合成したものでもよ
い。また、市販のポリマーより分子量の低いいわゆるオ
リゴマーを用いることは、プリプレグのハンドリング法
を損なわずに複合材料を高靱性化できるため好ましい。
これら熱可塑性樹脂成分が熱硬化性樹脂と反応しうる官
能基を末端あるいは分子鎖中に有することは、熱硬化性
樹脂本来の耐溶剤性を維持しつつ靱性向上に大きく寄与
するためより好ましい。尚熱可塑性樹脂を共存させた場
合硬化後に相分離しない組合せも勿論少なからず存在す
るが、硬化後に相分離する組合せの方が多い。
【0062】構成要素[C]および構成要素[C’]に
添加する熱可塑性樹脂として特に好ましい芳香族ポリイ
ミドの合成法としては、公知のいずれの方法を用いるこ
ともできる。代表的にはテトラカルボン酸二無水物とジ
アミノ化合物とを反応させることによって合成する。テ
トラカルボン酸二無水物の好ましい例は、ピロメリット
酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテト
ラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニ
ルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジ
フェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,
3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸
二無水物、などの芳香族テトラカルボン酸二無水物、よ
り好ましくは、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカ
ルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエ
ーテルテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカ
ルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0063】ジアミノ化合物の好ましい例は、ジアミノ
ジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、パラフェ
ニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミ
ノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルスルフィ
ド、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプ
ロパン、ジアミノジフェニルケトン、ジアミノジフェニ
ルヘキサフルオロプロパン、ジアミノジフェニルフルオ
レン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミ
ノフェノキシ)ジフェニルスルフォン、ビス(アミノフ
ェノキシ)ジフェニルプロパン、ビス(アミノフェノキ
シ)ジフェニルヘキサフルオロプロパン、フルオレンジ
アミン、ジアミノジフェニルメタンのジメチル置換体、
ジアミノジフェニルメタンのテトラメチル置換体、ジア
ミノジフェニルメタンのジエチル置換体、ジアミノジフ
ェニルメタンのテトラエチル置換体、ジアミノジフェニ
ルメタンのジメチルジエチル置換体などの芳香族ジアミ
ノ化合物、より好ましくは、ビス(アミノフェノキシ)
ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ジフェニルスルフ
ォン、ビス(アミノフェノキシ)ジフェニルプロパン、
ビス(アミノフェノキシ)ジフェニルヘキサフルオロプ
ロパン、ジアミノジフェニルフルオレン、フルオレンジ
アミン、ジアミノジフェニルメタンのジメチル置換体、
ジアミノジフェニルメタンのテトラメチル置換体、ジア
ミノジフェニルメタンのジエチル置換体、ジアミノジフ
ェニルメタンのテトラエチル置換体、ジアミノジフェニ
ルメタンのジメチルジエチル置換体などの芳香族ジアミ
ノ化合物を挙げることができる。
【0064】また、構成要素[C]および構成要素
[C’]が含有する熱可塑性樹脂として、熱硬化性樹脂
と相溶性の連鎖と非相溶性の連鎖からなるブロック共重
合体またはグラフト共重合体を用いることは相溶性制御
の観点から特に好ましい。
【0065】好ましい具体例の1つは、構成要素[C]
の熱硬化性樹脂とは本来非相溶性であるシロキサン骨格
からなる連鎖を有するブロック共重合体またはグラフト
共重合体である。代表的なシロキサン連鎖としてジメチ
ルシロキサン骨格があげられるが、フェニルシロキサン
を含有していてもよい。シロキサン連鎖を有することで
樹脂吸水率を低下させ耐水性を高めることができる。
【0066】構成要素[C]が含有する熱可塑性樹脂の
分子が本来構成要素[C]中の熱硬化性樹脂成分と非相
溶性である連鎖をブロック鎖として有する場合、同じ分
子量の完全相溶連鎖のみからなる熱可塑性樹脂の場合と
比較し、その添加による樹脂粘度増加が小さい。したが
って作業性の低下が少なく、この樹脂をマトリックス樹
脂とするプリプレグはタック性、ドレープ性が優れてい
るという効果がある。別の見方をすると、構成要素
[C]中の熱可塑性樹脂添加量の制約が緩く、タック性
を損なわずに樹脂系に多量に導入でき樹脂靱性向上に有
利である。
【0067】また、その非相溶性連鎖以外の部分が構成
要素[C]としての熱硬化性樹脂組成物と相溶するポリ
イミド骨格を有するブロック共重合体であることは樹脂
耐熱性を向上させるため好ましい。
【0068】構成要素[C]あるいは構成要素[C’]
中に熱可塑性樹脂を共存させる場合その量は構成要素
[C]あるいは構成要素[C’]の全成分中の5〜35
重量%が好ましい。これより少なければ靱性向上効果が
小さく、またこれより多ければ作業性の低下が顕著とな
る。より好ましくは8〜25重量%である。
【0069】ここで構成要素[B]または[C]中の熱
可塑性樹脂成分は未硬化状態の熱硬化性樹脂成分に予め
溶解しておいてもよいし、分散混合させているだけでも
よい。また、部分的に溶解させ、部分的に分散させても
よい。この溶解と分散の比率を変化させることによって
樹脂の粘度を調節でき、プリプレグとしたときのタック
性、ドレープ性を好みの程度に調節することができる。
分散させた熱可塑性樹脂もその大部分が成形過程におい
て熱硬化性樹脂成分に溶解する。
【0070】構成要素[C]中の熱可塑性樹脂の分子量
は、熱可塑性樹脂成分を未硬化状態の熱硬化性樹脂成分
に予め溶解させておく場合は、数平均分子量にして約2
000〜20000の範囲が好ましい。これより分子量
が小さい場合、靱性向上効果が小さく、また、これより
分子量が大きければ樹脂粘度の増加が著しく作業性の低
下が顕著となる。より好ましくは約2500〜1000
0の範囲である。一方、構成要素[B]中の熱可塑性樹
脂成分を未硬化状態の熱硬化性樹脂成分に溶解させず分
散させておく場合は、熱可塑性樹脂の分子量はさらに高
分子領域である100000程度まで好ましい。
【0071】構成要素[C]中に熱硬化性樹脂可溶の熱
可塑性樹脂が混合もしくは溶解されており、樹脂硬化中
に熱硬化性樹脂を主成分とする相と熱可塑性樹脂を主成
分とする相にミクロ相分離することは複合材料の靱性向
上をもたらすため好ましい。特に硬化した後の相分離構
造が、熱可塑性樹脂を主成分とする相と、熱硬化性樹脂
を主成分とする相と分離したものであり、少なくとも熱
可塑性樹脂を主成分とする相、好ましくは両方の相が3
次元に連続しているミクロ相分離構造を有する樹脂硬化
物となる場合が、高い靱性をもたらすため好ましい。連
続相中に他相の分散相を含有するさらに複雑な相分離形
態を有することもさらに好ましい。
【0072】熱可塑性樹脂を主成分とする相が少なくと
も部分的に連続相を形成したミクロ相分離構造を有する
場合、その樹脂硬化物は、250kg/mm以上の曲
げ弾性率を維持しつつ、少なくとも250J/m以上
の破壊歪エネルギー解放率Glcを有する熱硬化性樹脂
硬化物となり好ましい。
【0073】本発明に用いる組成物から得られる硬化樹
脂の破壊歪エネルギー解放率Glcは、ダブルトーショ
ン法(以下DT法)で測定される。DT法について詳し
くはジャーナル・オブ・マテリアルズ・サイエンス(J
ournal of Materials Scien
ce)第20巻第77−84頁(1985)などに記載
されている。Glcは亀裂発生荷重P、コンプライアン
スCの亀裂進展距離aに対する傾きΔC/Δaおよ
び亀裂進展部のサンプル厚みtから次式によって計算さ
れる。
【0074】Glc=P(ΔC/Δa)/2t
【0075】ここで、コンプライアンスCは、亀裂発生
時のクロスヘッド変位量δおよび亀裂発生荷重Pによっ
てC=δ/Pで定義される。
【0076】(構成要素[D]および[D’]の説明)
構成要素[D]および[D’]は樹脂を素材とする微粒
子である。構成要素[D]は構成要素[C]中に含有さ
れ存在し、構成要素[D’]は構成要素[C’]中に含
有され存在する。
【0077】構成要素[D]あるいは[D’]が微粒子
であることは次の利点を持つ。すなわち、微粒子であれ
ば、構成要素[C]であるマトリックス樹脂と混合した
ときにマトリックス樹脂中に分散した状態で存在するた
め、マトリックス樹脂のもつタック性、ドレープ性がプ
リプレグ特性として反映され、取扱い性に優れたプリプ
レグとなる。
【0078】構成要素[D’]が、上記の構成要素
[C’]中に含有されて存在する場合、耐衝撃性がさら
に高くなり、しかも意外なほど層間靱性Glcおよび交
差積層板の板端剥離強度(EDS)向上効果が顕著であ
る。高い耐熱性も維持され、層間剪断強度も損なわれな
い。
【0079】構成要素[D]および[D’]の素材とし
て特に適しているのは熱可塑性樹脂の微粒子である。微
粒子として用いる熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素
炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エ
ーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結
合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結
合、カルボニル結合から選ばれる結合を有する熱可塑性
樹脂が代表的である。特に、ポリアミド、ポリカーボナ
ート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリ
フェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステ
ル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミ
ド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテ
ルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミ
ド、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾールは
耐衝撃性に優れるので本発明に使用する微粒子の素材と
して適している。この中でも、ポリアミド、ポリアミド
イミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、
ポリスルホンは、高靱性かつ耐熱性良好であるため本発
明に好適である。ポリアミドの靱性は特に優れており好
ましい。非晶質透明ナイロンに属するものは特に耐熱性
をも兼ね備えている。
【0080】構成要素[D]および[D’]として熱可
塑性樹脂と熱硬化性樹脂との組合せによりセミIPN化
したもしくはセミIPN化しうる樹脂微粒子も微粒子そ
のものが耐溶剤性に優れ、複合材料全体の耐溶剤性を維
持するため好ましい。ここでIPNとはインターペネト
レーティングポリマーネットワーク(Interpen
etrating Polymer Network)
の略で、架橋高分子同士の相互侵入網目構造をいい、一
方、セミIPNとは、架橋高分子と直鎖状高分子との相
互侵入網目構造をいう。
【0081】このようなセミIPN化するための手段と
しては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を加熱溶融させ
均一に混合した後、冷却してブロック状にする方法、
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を共通溶媒に溶解させ均一
に混合した後、溶媒を揮発させて除去しブロック状にす
る方法、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を共通溶媒に溶
解させ均一に混合した後、霧状に飛散させ乾燥させる、
いわゆるスプレードライ法、熱可塑性樹脂と熱硬化性
樹脂を共通溶媒に溶解させ均一に混合した後、両樹脂を
溶解しない溶媒中に霧状に投入し沈殿させる、いわゆる
スプレー再沈法、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を共通
溶媒に溶解させ、溶液を攪拌しながら該溶液に相溶しに
くい分散媒を除々に加えることにより、該溶液を分散媒
中に粒子分散させ、溶媒を除去した後に微粒子として補
収する方法などがある。
【0082】熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とをセミIP
N化したものを微粒子とすれば、その組成を選ぶことに
より、粒子自体の靱性を保ちつつ耐溶剤性やマトリック
ス樹脂との接着性の良好な微粒子を得ることができる。
但し、このセミIPN化は複合材料成形中に達成される
ものであってもさしつかえない。これを構成要素[D]
としたプリプレグを成形して得た複合材料は耐衝撃性、
耐溶剤性および耐疲労性に優れるので好ましい。
【0083】セミIPN化樹脂微粒子における熱可塑性
樹脂と熱硬化性樹脂との比率は、微粒子の耐溶剤性を優
れたものとする一方、微粒子の靱性不足により複合材料
の耐衝撃特性が劣るのを防止する観点から、熱可塑性樹
脂の重量分率が30〜99%、さらには50〜98%が
好ましい。
【0084】セミIPN化樹脂微粒子においては熱硬化
性樹脂の重量分率が意外にも2%程度の少量でも耐溶剤
性の向上効果は大きく、また疲労特性も急激に向上す
る。
【0085】一方、用いる熱可塑性樹脂微粒子は熱硬化
性樹脂とのセミIPN化によって靱性が低下すると考え
られるため、複合材料の耐衝撃性は熱可塑性樹脂微粒子
そのものを用いた場合と比べて低下することが通常予想
されるが、熱硬化性樹脂の重量分率の小さい範囲におい
ては意外にも耐衝撃性は向上傾向にある。これは、セミ
IPN化によって微粒子とマトリックス樹脂である構成
要素[C’]との接着性が向上するためと考えられる。
【0086】構成要素[D]および[D’]が、ポリア
ミドとエポキシ樹脂によりセミIPNを形成した、もし
くはセミIPNを形成しうる微粒子である場合、最終目
的物である複合材料の種々の特性すなわち耐衝撃特性、
耐溶剤性、疲労特性、耐熱性等のバランスに優れたもの
が得られる。
【0087】構成要素[D]および[D’]として、熱
硬化性樹脂微粒子を用いることもできる。この場合、微
粒子そのものの靱性は熱可塑性樹脂に比べて低下する
が、構成要素[C’]として靱性が十分高い樹脂を組み
合わせて用いる場合、構成要素[D’]の微粒子の靱性
が大きくなくても、[D’]の存在によって積層層間部
に高靱性な樹脂層が安定して形成されるため、複合材料
の耐衝撃性、層間靱性、板端剥離強度が大きく向上す
る。また、熱可塑性樹脂微粒子に比べて一般的に耐熱性
が高く、複合材料の耐熱性維持に寄与するといった利点
も有する。かかる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹
脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、不飽和ポリエステ
ル樹脂などが好ましく用いられる。
【0088】構成要素[D]および[D’]の量として
は構成要素[B]([B’])、[C]([C’])、
[D]([D’])の総和の樹脂に対して1重量%〜3
0重量%の範囲が適している。1重量%未満では微粒子
の効果がほとんど現れず、また30重量%をこえるとベ
ース樹脂との混合が困難になるうえ、プリプレグのタッ
ク性、ドレープ性が大幅に低下してしまう。特に構成要
素[B’]の剛性を複合材料の圧縮強度の発現に活かし
たまま、破断伸度が大きく高靱性を有する構成要素
[D’]の微粒子で複合材料の層間を高靱化するような
場合は、むしろ3重量%〜15重量%の少ない範囲のほ
うが好適である。
【0089】ミクロ相分離構造を有する構成要素
[C’]が十分高靱性な樹脂である場合、例えば5%と
いった意外なほど少量の構成要素[D’]の添加で高い
耐衝撃性、層間靱性、板端剥離強度を得ることができ
る。構成要素[D’]の使用量が少なければ、耐熱性や
層間剪断強度の維持にとってより好ましい。弾性率の高
い構成要素[D’]を積層層間部に局在化させた複合材
料は、硬化条件の変化によらず、卓越した耐衝撃性、層
間靱性、板端剥離強度を与えることに寄与する。例え
ば、構成要素[D’]として適切な弾性率を有するポリ
アミド樹脂を用いた特に好ましい態様においては、高い
耐熱性、層間剪断強度を維持しつつ、層間靱性Glc
500J/m以上およびEDSが65ksi以上とい
った驚くべき非繊維方向の特性を発現する。しかも、意
外なことにこの卓越した耐衝撃特性や層間靱性が、成形
条件の変化によらず安定して発現する。ここで構成要素
[D’]は積層層間部に10〜70μmの樹脂層を安定
して形成させる役割をはたす。
【0090】構成要素[D]および[D’]は2種以上
の素材が混合されていてもよい。曲げ弾性率150kg
/cm以下の樹脂を素材とする微粒子と曲げ弾性率1
70kg/cm以上の樹脂を素材とする微粒子を組合
せた場合本発明の効果は特に顕著である。特に好ましく
は曲げ弾性率130kg/cm以下の樹脂を素材とす
る微粒子と曲げ弾性率180kg/cm以上の樹脂を
素材とする微粒子の組合せである。Tg40℃以上の樹
脂を構成要素[D]および[D’]の素材として用いる
ことは耐熱性の維持にとって好ましい。より好ましくは
Tg140℃以上の樹脂を構成要素[D]および
[D’]の素材とするときである。ここで、構成要素
[D]および[D’]の素材となる樹脂の曲げ弾性率は
ASTM D790によって測定したものをいい、Tg
は示差走査熱量計(DSC)を用い、昇温速度40℃/
min.にて測定したものをいう。
【0091】複合材料中の構成要素[D’]の分布状態
は、染色後撮影した複合材料の断面写真を撮影し、
[D’]に該当する面積を切り取り重量を測定する方法
もしくはイメージアナライザーにより面積を定量するこ
とにより評価する。
【0092】構成要素[D’]の分布は、複合材料の積
層層間部に局在化して存在することが高い耐衝撃性、層
間靱性、さらには優れた板端剥離強度を与えるために重
要であり、すでに述べた構成要素[C’]に含有されて
存在するものである。好ましくは、[C’]からなる層
のなかに構成要素[D’]の全量の90%以上が局在化
する場合である。
【0093】「層間領域」は上記の定義どおりであり、
構成要素[D’]の存在によって構成要素[A]は相対
的に層内部に高密度に存在し、「層間領域」は樹脂リッ
チな領域となる。構成要素[D’]の90%以上が層と
層とが接する面から厚さ方向へ上下へ0.15tずつ入
った0.3tの厚みをもつ領域に局在化する場合は、よ
り顕著に本発明の効果が現れるのでさらに好ましいとい
える。
【0094】前記の条件をはずれ、「層間領域」を越え
て、層の内部深くに構成要素[D’]が多量に存在する
場合、コンポジットの耐衝撃性、層間靱性、EDSの向
上効果は小さく、また、圧縮強度や耐熱性を損なうおそ
れがある。
【0095】構成要素[D]および[D’]の形状は球
状に限られるものではない。もちろん球状であってもよ
いが、樹脂塊を粉砕した微粉体や、スプレードライ法、
再沈殿法で得られる微粒子のごとく形状さまさまの不定
形状態で一向に差し支えない。その他、繊維を短く切断
したミルドファイバー状でも、また針状、ウイスカー状
でも差し支えない。特に、成形後のコンポジット中にお
いては、成形前の形態から変化し粒子同士が幾分融着し
て連続化したものでも差し支えない。
【0096】微粒子の大きさは粒径で表現されるが、こ
の場合の粒径とは遠心沈降速度法などで求められる体積
平均粒径を意味する。構成要素[D]および[D’]の
大きさは、複合材料となった時、強化繊維の配列を著し
く乱すほど大きくなければよい。粒径が100μmをこ
える場合は強化繊維の配列を乱したり、積層して得られ
る複合材料の層間を必要以上に厚くするため複合材料と
したときの物性を低下させる欠点がある。より適切な層
間厚みを形成するためには[D]および[D’]の粒径
は3〜70μmの範囲がよい。
【0097】このような構成要素[C]および[D]を
表面に局在化させたプリプレグの製造方法としては、特
開昭63−170428号公報などに示されているごと
く、構成要素[B]をマトリックス樹脂とし、強化繊維
に含浸させた一次プリプレグをまず作製し、次に構成要
素[C]、[D]からなる残りのマトリックス樹脂フィ
ルムを一次プリプレグの表面に貼りつける方法などを採
用することができる。
【0098】以下、実施例により本発明をより詳細に説
明する。
【0099】〔実施例1〕以下の構成よりなる一方向プ
リプレグを製造した。プリプレグの製造は、まずあらか
じめ下記のAとBからなる樹脂の重量分率21%のプリ
プレグを作製し、この両面にC樹脂を離型紙上に薄く塗
布した樹脂フィルムを貼りつけることにより、樹脂の重
量分率は35%のプリプレグとした。
【0100】 A 強化繊維−炭素繊維T800H(東レ(株)製) B 熱硬化性樹脂組成物−以下の組成からなる樹脂 1 テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン (住友化学工業(株)製、ELM434) ・・・・・60重量部 2 ビスフェノールA型エポキシ樹脂 (油化シェルエポキシ(株)製、エピコート828) ・・・・・2 0重量部 3 ビスフェノールF型エポキシ樹脂 (大日本インキ工業(株)製、エピクロン830)・・・・・20重量 部 4 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン (住友化学工業(株)製、スミキュアS) ・・・・・45重量部 C 熱硬化性樹脂組成物−以下の組成からなる樹脂 1 テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン (住友化学工業(株)製、ELM434) ・・・・・35重量部 2 ビスフェノールA型エポキシ樹脂 (油化シェルエポキシ(株)製、エピコート828) ・・・・・2 5重量部 3 ビスフェノールF型エポキシ樹脂 (大日本インキ工業(株)製、エピクロン830)・・・・・40重量 部 4 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン (住友化学工業(株)製、スミキュアS) ・・・・・37重量部 5 ポリエーテルイミド (ジーイープラスチックジャパン(株)製、ウルテム1000)・・・ ・・24重量部
【0101】プリプレグ中の単位面積あたりの樹脂量は
102g/m、単位面積あたりの炭素繊維量は190
g/mであった。
【0102】このプリプレグを2枚の平滑なテフロン板
の間にはさみ、2週間かけて除々に150℃まで昇温し
て硬化させ、その断面を研磨したのち四酸化オスミウム
にて染色し、走査型電子顕微鏡にて写真を撮影した。相
分離構造が認められるのはプリプレグ表面からプリプレ
グ厚みの約20%深さまでの範囲であり、相分離構造を
有する樹脂はプリプレグ表面に局在化していた。この相
分離構造は、連続構造中に直径2〜5μm程度の分散相
が存在するものであり、X線マイクロアナライザーで分
析した結果、分散相にイオウ元素が高濃度にあることか
ら、分散相はエポキシ樹脂を主成分とする相であり、逆
に連続相部分はポリエーテルイミドが主成分と判明し
た。この相分離構造を有する領域より内部の相分離して
いない領域は、エポキシ樹脂を主成分とすることもわか
った。
【0103】次に、このプリプレグを24枚疑似等方構
成((+45°/0゜/−45°/90°)s)で積
層し、オートクレーブによる硬化成形を180℃で2時
間、6kgf/cmの圧力下で行った。
【0104】成形品の断面を研磨したのち四酸化オスミ
ウムにて染色し、走査型電子顕微鏡で断面観察を行っ
た。
【0105】50倍に拡大した写真を撮影し、層の平均
厚みについて5箇所の平均をとったところ189μmで
あった。次に400倍に拡大した任意の箇所の断面写真
5枚を用いて、層分離構造を有する樹脂の何%が「層間
領域」内に存在するかを評価したところ、層分離構造を
有する樹脂は層間樹脂の中心部から上下に約25μmの
範囲にあり、すべて層間領域に存在していることがわか
った。
【0106】この疑似等方硬化板を縦150mm、横1
00mmに切削して、中心に1500インチ・ポンド/
インチの落錘衝撃を与えた後、キャノン/ホロニックス
社製超音波探傷映像装置M400Bにて損傷面積を測定
したところ1.8inchであった。ついでASTM
D−695に従い圧縮試験を行った結果、42ksi
の残存圧縮強度を示した。
【0107】また、プリプレグを一方向に20層積層し
たものについてコンポジットの層間靱性を測定したとこ
ろ引き剥がしモードの靱性Glcが430J/m(ダ
ブルカンチレバービーム法)であった。
【0108】(±25/±25/90)の構成で10
層に積層し、成形した硬化板を用いて引張り試験を行
い、最初に板端剥離が生じる強度すなわちEDSを求め
たところ50.7ksiであった。
【0109】プリプレグを一方向に24層積層し硬化板
を成形した。縦(繊維方向)80mm、幅(繊維直角方
向)12.7mmに切出し、表から中央および裏から中
央へ厚み方向に2箇所切込みを入れた(図2)。2つの
切込みの間隔は6.3mm、切込み深さは試験片厚みを
hとするとh/2+0.25mmである。この試験片か
ら圧縮層間剪断強度(CILS)を求めたところ、1
2.8ksiであった。
【0110】プリプレグを一方向に6層積層し成形した
硬化板を用い、2週間温水(72℃)中で吸水後の82
℃での圧縮強度をSACMA SRSl−88に従い求
めたところ、195ksiであった。
【0111】上記圧縮試験に用いたと同様の6層の硬化
板を幅10mm、長さ30mmに切り取り70℃にて作
動油(モンサントインダストリアルケミカル社、ローデ
ンシティアビエーションハイドローリックテストフルイ
ド)に2週間浸せきしたところ、重量増加率は0.5%
にとどまった。
【0112】〔実施例2〕以下の構成よりなる一方向プ
リプレグを製造した。プリプレグの製造は、まずあらか
じめ下記のAとBからなる樹脂の重量分率21%のプリ
プレグを作製し、この両面にCとDのブレンド樹脂を離
型紙上に薄く塗布した樹脂フィルムを貼りつけることに
より、樹脂の重量分率は35%のプリプレグとした。
【0113】 A 強化繊維−炭素繊維T800H(東レ(株)製) B 熱硬化性樹脂組成物−以下の組成からなる樹脂 1 テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン (住友化学工業(株)製、ELM434) ・・・・・60重量部 2 ビスフェノールA型エポキシ樹脂 (油シェルエポキシ(株)製、エピコート828) ・・・・・20 重量部 3 ビスフェノールF型エポキシ樹脂 (大日本インキ工業(株)製、エピクロン830)・・・・・20重量 部 4 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン (住友化学工業(株)製、スミキュアS) ・・・・・45重量部 C 熱硬化性樹脂組成物−以下の組成からなる樹脂 1 テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン (住友化学工業(株)製、ELM434) ・・・・・40重量部 2 ビスフェノールA型エポキシ樹脂 (油化シェルエポキシ(株)製、エピコート828) ・・・・・3 0重量部 3 ビスフェノールF型エポキシ樹脂 (大日本インキ工業(株)製、エピクロン830)・・・・・30重量 部 4 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン (住友化学工業(株)製、スミキュアS) ・・・・・43重量部 5 ポリエーテルイミド (ジーイープラスチックジャパン(株)製、ウルテム1000)・・・ ・・13重量部 D 樹脂微粒子 1 ナイロン12微粒子 (東レ(株)製、SP−500) ・・・・・15重量部 2 非晶質透明ナイロン(三菱化成(株)製グリルアミドTR−55) を凍結粉砕して得た平均粒径23μmの微粒子 ・・・・・15重量部
【0114】プリプレグ中の単位面積あたりの樹脂量は
102g/m、単位面積あたりの炭素繊維量は190
g/mであった。
【0115】このプリプレグを2枚の平滑なテフロン板
の間にはさみ、2週間かけて除々に150℃まで昇温し
て硬化させ、その断面を観察し顕微鏡写真を撮影した。
全微粒子のうち、プリプレグ表面からプリプレグ厚みの
25%深さまでの範囲に存在する微粒子の量を評価した
ところその値は100%であり、微粒子は十分にプリプ
レグ表面に局在化していた。
【0116】次に、このプリプレグを24枚疑似等方構
成((+45°/0゜/−45°/90°)s)で積
層し、オートクレーブによる成形を180℃で2時間、
6kgf/cmの圧力下で行った。
【0117】成形品の断面を研磨し、光学顕微鏡で断面
観察を行った。2種の微粒子は、層間領域でマトリック
ス樹脂と分離して存在していた。
【0118】層の平均厚みの評価を、50倍に拡大した
写真を撮影し、5箇所の平均をとったところ191μm
であった。次に400倍に拡大した任意の箇所の断面写
真5枚を用いて層間領域内に存在する微粒子の割合を評
価したところ全微粒子中100%であり、層間に局在化
していた。
【0119】また、マトリックス樹脂に相分離構造が認
められるのは、層と層の接触部から上下へ一層厚みの約
20%深さまでの範囲であり、相分離構造を有する樹脂
は層間領域に局在化していた。この相分離構造は、連続
構造中に直径2〜5μm程度の分散相が存在するもので
あり、X線マイクロアナライザーで分析した結果、分散
相にイオウ元素が高濃度にあることから、分散相はエポ
キシ樹脂を主成分とする相であり、逆に連続相部分はポ
リエーテルイミドが主成分と判明した。この相分離構造
を有する領域より内部の相分離していない領域は、エポ
キシ樹脂を主成分とすることもわかった。
【0120】この疑似等方硬化板を縦150mm、横1
00mmに切削して、中心に1500インチ・ポンド/
インチの落錘衝撃を与えた後、キャノン/ホロニックス
社製超音波探傷映像装置M400Bにて損傷面積を測定
したところ0.7inchであった。ついでASTM
D−695に従い圧縮試験を行った結果、53ksi
の残存圧縮強度を示した。
【0121】また、プリプレグを一方向に20層積層し
たものについてコンポジットの層間靱性を測定したとこ
ろ引き剥がしモードの靱性Glcが620J/m(ダ
ブルカンチレバービーム法)であった。
【0122】(±25/±25/90)の構成で10
層に積層し、成形した硬化板を用いて引張り試験を行
い、最初に板端剥離が生じる強度すなわちEDSを求め
たところ68.1ksiであった。
【0123】プリプレグを一方向に24層積層し成形し
た硬化板を用い、実施例1同様の試験片から圧縮層間剪
断強度(CILS)を求めたところ、11.8ksiで
あった。
【0124】プリプレグを一方向に6層積層し成形した
硬化板を用い、2週間温水(72℃)中で吸水後の82
℃での圧縮強度をSACMA SRSl−88に従い求
めたところ、191ksiであった。
【0125】上記圧縮試験に用いたと同様の6層の硬化
板を幅10mm、長さ30mmに切り取り70℃にて作
動油(モンサントインダストリアルケミカル社、ローデ
ンシティアビエーションハイドローリックテストフルイ
ド)に2週間浸せきしたところ、重量増加率は0.7%
にとどまった。
【0126】〔実施例3〕 A部 反応性ポリイミドオリゴマの合成:窒素導入口お
よび温度計、攪拌器および脱水トラップを装着した30
00ml容のセパラブルフラスコに窒素置換のもとで3
92g(0.91mol)のビス〔4−(3−アミノフ
ェノキシ)フェニル〕スルホン(BAPS−M)、39
g(0.11mol)の9,9’−ビス(4−アミノフ
ェニル)フルオレン(FDA)、147g(0.11m
ol)のNH当量650のアミノ末端ジメチルシロキ
サン(東レシリコーン社市販 BY−16−853)を
2000mlのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)
に攪拌溶解した。そこへ固体状のビフェニルテトラカル
ボン酸二無水物を300g(1.02mol)を少しず
つ加え、室温で3時間攪拌した後、120℃に昇温し2
時間攪拌した。フラスコを室温に戻しトリエチルアミン
50mlとトルエン50mlを加えた後、再び昇温し1
60℃で共沸脱水すると約30mlの水が得られた。こ
の反応混合物を冷却した後、倍量のNMPで希釈し、ゆ
っくりと201のアセトン中に注ぎアミン末端シロキサ
ンポリイミドオリゴマを固体生成物として沈殿させた。
そして、その沈殿物を200℃で真空乾燥した。
【0127】このオリゴマの数平均分子量(Mn)をジ
メチルホルムアミド(DMF)溶媒を用いてゲルバーミ
エーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する
と、ポリエチレングリコール(PEG)換算で5500
であった。またガラス転移点は示差熱分析計(DSC)
によると223℃であった。また、シロキサン骨格の導
入およびアミン末端であることはNMRスペクトルおよ
びIRスペクトルから確認できた。
【0128】B部 構成要素Bの樹脂調製および樹脂物
性測定:ビーカーに上記A部のシロキサンポリイミドオ
リゴマを25部およびフェノールノボラック型エポキシ
樹脂(油化シェルエポキシ(株)製、エピコート15
4)40部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シ
ェルエポキシ(株)製、エピコート825)30部、ビ
スフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ工業
(株)製、エピクロン830)30部をはかりとった。
それを120℃で2時間加熱することによりオリゴマを
エポキシ樹脂に溶解した。次いで、4,4’ジアミノジ
フェニルスルホン(住友化学工業(株)製、スミキュア
S)を34部加え、140℃で10分間混合し溶解させ
た。
【0129】その容器に真空ポンプを接続し真空脱泡し
た後、内容物をあらかじめ120℃に予熱しておいた離
型処理を施したモールド(空所の寸法は120×120
×3mm)に注ぎ込んだ。オーブン中で130℃2時間
+180℃2時間硬化反応させて3mm厚の樹脂硬化板
を調製した。
【0130】得られた硬化樹脂のTgは201℃であっ
た。ここから前記のサンプルを切り出し、破壊歪エネル
ギー解放率Glcを測定したところ420J/mであ
り、曲げ弾性率は340kg/mmであった。
【0131】硬化樹脂の研磨面をオスミウム酸染色し走
査型電子顕微鏡で反射電子像を観察すると、基本的には
2つの相がともに連続相を形成するミクロ相分離構造が
みられた。さらに同じ視野をX線マイクロアナライザー
によって元素分析したところ、写真で黒くみえるハイコ
ントラスト相にシリコン元素が濃く分布していることが
わかった。
【0132】C部 プリプレグおよび複合材料の調製と
物性測定:以下の構成よりなる一方向プリプレグを製造
した。プリプレグの製造は、まずあらかじめ下記のAと
Bからなる樹脂の重量分率21%のプリプレグを作製
し、この両面にC、DとBのブレンド樹脂を離型紙上に
薄く塗布した樹脂フィルムを貼りつけることにより樹脂
の重量分率36%ねらいのプリプレグとした。
【0133】 A 強化繊維−炭素繊維T800H(東レ(株)製) B 熱硬化性樹脂組成物−以下の組成からなる樹脂 1 トリグリシジルパラアミノフェノール (油化シェルエポキシ(株)製、エピコートYX−4) ・・・・・4 0重量部 2 ビスフェノールA型エポキシ樹脂 (油化シェルエポキシ(株)製、エピコート828) ・・・・・2 0重量部 3 ビスフェノールF型エポキシ樹脂 (大日本インキ工業(株)製、エピクロン830)・・・・・40重量 部 4 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン (住友化学工業(株)製、スミキュアS) ・・・・・42重量部 5 ポリエーテルスルホン (三井東圧(株)製、5003P) ・・・・・10重量部 C 熱硬化性樹脂組成物−以下の組成からなる樹脂 1 フェノールノボラック型エポキシ樹脂 (油化シェルエポキシ(株)製、エピコート154) ・・・・・4 0重量部 2 ビスフェノールA型エポキシ樹脂 (油化シェルエポキシ(株)製、エピコート825) ・・・・・3 0重量部 3 ビスフェノールF型エポキシ樹脂 (大日本インキ工業(株)製、エピクロン830)・・・・・30重量 部 4 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン (住友化学工業(株)製、スミキュアS) ・・・・・34重量部 5 A部記載のシロキサンポリイミドオリゴマ ・・・・・20重量部 D ナイロン6微粒子 (東レ(株)製、SP−1000) ・・・・・16重量部 ポリアミドイミド (アモコ社製トーロン4000T) を凍結粉砕して得た平均粒径23μmの微粒子 ・・・・・10重量部
【0134】プリプレグ中の樹脂の重量分率は36.4
%であった。単位面積あたりの樹脂量は110g/
、単位面積あたりの炭素繊維量は192g/m
あった。
【0135】このプリプレグを2枚の平滑なテフロン板
の間にはさみ、2週間かけて除々に150℃まで昇温し
て硬化させ、その断面を観察し顕微鏡写真を撮影した。
プリプレグ表面からプリプレグ厚みの25%深さまでの
範囲に存在する微粒子の量を評価したところその値は9
9%であり、微粒子は十分にプリプレグ表而に局在化し
ていた。
【0136】つぎに、このプリプレグを24枚疑似等方
構成((+45°/0°/−45°/90°)s)で
積層し、通常のオートクレーブによる成形を180℃で
2時間、6kgf/cmの圧力下で行った。
【0137】成形品の断面を研磨し、光学顕微鏡で断面
観察を行った。2種の微粒子は、層間領域でマトリック
ス樹脂と分離して存在していた。
【0138】層の平均厚みの評価を、50倍に拡大した
写真を撮影し、5箇所の平均をとったところ189μm
であった。次に400倍に拡大した任意の箇所の断面写
真5枚を用いて層間領域内に存在する微粒子の割合を評
価したところ100%であり、層間に局在化していた。
【0139】この疑似等方硬化板を縦150mm、横1
00mmに切削して、中心に1500インチ・ポンド/
インチの落錘衝撃を与えた後、キャノン/ホロニックス
社製超音波探傷映像装置M400Bにて損傷面積を測定
したところ0.9inchであった。ついでASTM
D−695に従い圧縮試験を行った結果、52ksi
の残存圧縮強度(CAI)を示した。硬化条件を変化さ
せた場合のCAIを表1に示した。硬化条件依存性が小
さかった。
【0140】また、プリプレグを一方向に20層積層し
たものについてコンポジットの層間靱性を測定したとこ
ろ引き剥がしモードの靱性Glcが640J/m(ダ
ブルカンチレバービーム法)であった。
【0141】(±25/±25/90)の構成で10
層に積層し、成形した硬化板を用いて引張り試験を行
い、最初に板端剥離が生じる強度すなわちEDSを求め
たところ71.7ksiであった。
【0142】プリプレグを一方向に24層積層し成形し
た硬化板を用い、実施例1同様の試験片から圧縮層間剪
断強度(CILS)を求めたところ、11.9ksiで
あった。
【0143】プリプレグを一方向に6層積層し成形した
硬化板を用い、2週間温水(72℃)中で吸水後の82
℃での圧縮強度をSACMA SRSl−88に従い求
めたところ、190ksiであった。
【0144】上記圧縮試験に用いたと同様の6層の硬化
板を幅10mm、長さ30mmに切り取り70℃にて作
動油(モンサントインダストリアルケミカル社、ローデ
ンシティアビエーションハイドローリックテストフルイ
ド)に2週間浸せきしたところ、重量増加率は0.6%
にとどまった。
【0145】
【表1】
【0146】〔比較例1〕構成要素Cを除き、構成要素
Bのみをマトリックス樹脂として樹脂の重量分率35%
のプリプレグ部を作製した他は実施例1と同様の手順を
繰り返した。
【0147】つぎに、このプリプレグを24枚疑似等方
構成((+45°/0゜/−45°/90°)s)で
積層した成形品の断面を研磨し、走査型電子顕微鏡で断
面観察を行ったところ、マトリックス樹脂には相分離構
造が認められなかった。
【0148】この疑似等方硬化板の中心に1500イン
チ・ポンド/インチの落錘衝撃を与えた後、損傷面積を
測定したところ3.7inchであった。ついで圧縮
試験を行った結果、25ksiという実施例より大幅に
低い残存圧縮強度を示した。
【0149】プリプレグを一方向に20層積層したもの
の引き剥がしモードの靱性Glcが210J/m(ダ
ブルカンチレバービーム法)であり、実施例と比較して
大幅に劣っていた。
【0150】(±25/±25/90)の構成で10
層に積層し、成形した硬化板を用いて引張り試験を行
い、EDSを求めたところ30.2ksiであり、実施
例と比較して大幅に劣っていた。
【0151】プリプレグを一方向に24層積層し成形し
た硬化板を用い、CILSを求めたところ、11.5k
siであった。
【0152】また、プリプレグを一方向に6層積層し成
形した硬化板を用い、2週間温水(72℃)中で吸水後
の82℃での圧縮強度を求めたところ、191ksiで
あった。
【0153】〔比較例2〕構成要素Bを除き、構成要素
Cのみをマトリックス樹脂として樹脂の重量分率35%
のプリプレグ部を作製した他は実施例1と同様の手順を
繰り返した。
【0154】このプリプレグのドレープ性は実施例1の
プリプレグと比較し、大幅に劣っていた。つぎに、この
プリプレグを24枚疑似等方構成((+45°/0゜/
−45°/90°)s)で積層した成形品の断面を研
磨し、走査型電子顕微鏡で断面観察を行ったところ、ど
の場所においてもマトリックス樹脂にはエポキシ樹脂を
主成分とする相が分散相である相分離構造が認められ
た。
【0155】この疑似等方硬化板の中心に1500イン
チ・ポンド/インチの落錘衝撃を与えた後、損傷面積を
測定したところ2.0inchであった。ついで圧縮
試験を行った結果、41ksiという残存圧縮強度であ
った。
【0156】プリプレグを一方向に20層積層したもの
の引き剥がしモードの靱性Glcが410J/m(ダ
ブルカンチレバービーム法)であった。
【0157】また(±25/±25/90)の構成で
10層に積層し、成形した硬化板を用いて引張り試験を
行い、EDSを求めたところ46.8ksiであった。
【0158】プリプレグを一方向に24層積層し成形し
た硬化板を用い、CILSを求めたところ、10.2k
siであり実施例と比較して劣っていた。
【0159】また、プリプレグを一方向に6層積層し成
形した硬化板を用い、2週間温水(72℃)中で吸水後
の82℃での圧縮強度を求めたところ、171ksiで
あり、実施例と比較して劣っていた。
【0160】上記圧縮試験に用いたと同様の6層の硬化
板を幅10mm、長さ30mmに切り取り70℃にて作
動油(モンサンインダストリアルケミカル社、ローデン
シティアビエーションハイドローリックテストフルイ
ド)に2週間浸せきしたところ、重量増加率は1.8%
であり実施例と比較して大幅に劣っていた。
【0161】〔発明の効果〕本発明によるプリプレグ
は、プリプレグとしてのタック性、ドレープ性を確保し
つつ、加熱成型し複合材料としたときに高い耐熱性、層
間剪断強度、耐溶剤性を有し、かつ卓越した高い耐衝撃
性、層間靱性を有する。また、積層板を引張った際の板
端剥離発生が著しく抑えられ、耐疲労特性に優れる。し
かもその高い物性が昇温速度や硬化温度、圧力などの成
形条件変化にもかかわらず安定して発現する優れた繊維
強化複合材料を与える。
【図面の簡単な説明】
【図1】層間領域を模式的に示す図。
【図2】圧縮層間剪断強度測定用の試験片を示す図。

Claims (29)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の構成要素[A]、[B]および
    [C]からなり、[C]が[B]より表面側に存在して
    いることを特徴とするプリプレグ。 [A]:強化繊維 [B]:硬化後に相分離しない熱硬化性樹脂組成物 [C]:硬化後に相分離する熱硬化性樹脂組成物
  2. 【請求項2】 構成要素[C]の90%以上が、プリプ
    レグ表面からプリプレグの厚さの25%の深さの範囲内
    に局在化していることを特徴とする請求項1記載のプリ
    プレグ。
  3. 【請求項3】 構成要素[B]および[C]中の熱硬化
    性樹脂がエポキシ樹脂、シアネート樹脂およびビスマレ
    イミド樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱
    硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1または2
    記載のプリプレグ。
  4. 【請求項4】 構成要素[B]および/または[C]が
    熱硬化性樹脂可溶の熱可塑性樹脂が混合もしくは溶解さ
    れた熱硬化性樹脂組成物であることを特徴とする請求項
    1〜3のいずれか1項記載のプリプレグ。
  5. 【請求項5】 構成要素[B]および/または[C]中
    に混合あるいは溶解された熱可塑性樹脂の数平均分子量
    が2000〜20000の範囲であることを特徴とする
    請求項4記載のプリプレグ。
  6. 【請求項6】 構成要素[B]および/または[C]中
    に混合あるいは溶解された熱可塑性樹脂がそれぞれの構
    成要素中の熱硬化性樹脂と反応しうる官能基を有するこ
    とを特徴とする請求項4記載のプリプレグ。
  7. 【請求項7】 構成要素[C]中に混合あるいは溶解さ
    れた熱可塑性樹脂がアミノ基末端を有するポリイミドで
    あることを特徴とする請求項4記載のプリプレグ。
  8. 【請求項8】 構成要素[C]中に混合あるいは溶解さ
    れた熱可塑性樹脂がシロキサン骨格を含有したポリイミ
    ドであることを特徴とする請求項4記載のプリプレグ。
  9. 【請求項9】 構成要素[B]中に混合あるいは溶解さ
    れた熱可塑性樹脂が水酸基末端を有するポリエーテルス
    ルホンであることを特徴とする請求項4記載のプリプレ
    グ。
  10. 【請求項10】 次の構成要素[A]、[B]、[C]
    および[D]からなり、[C]が[B]より表面側に存
    在し、[D]が構成要素[C]中に存在することを特徴
    とするプリプレグ。 [A]:強化繊維 [B]:硬化後に相分離しない熱硬化性樹脂組成物 [C]:硬化後に相分離する熱硬化性樹脂組成物 [D]:樹脂を素材とする微粒子
  11. 【請求項11】 構成要素[C]および[D]の90%
    以上が、プリプレグ表面からプリプレグの厚さの25%
    の深さの範囲内に局在化していることを特徴とする請求
    項10記載のプリプレグ。
  12. 【請求項12】 構成要素[D]がポリアミド、ポリカ
    ーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシ
    ド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリ
    エステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテ
    ルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ
    エーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリア
    ラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダ
    ゾールからなる群から選ばれた1種以上の樹脂を素材と
    することを特徴とする請求項10または11記載のプリ
    プレグ。
  13. 【請求項13】 構成要素[D]が曲げ弾性率170k
    g/mm以上のポリアミドと曲げ弾性率150kg/
    mm以下のポリアミドの2種のポリアミドを素材とす
    ることを特徴とする請求項10または11記載のプリプ
    レグ。
  14. 【請求項14】 構成要素[D]が熱硬化性樹脂とセミ
    IPN化した熱可塑性樹脂を素材とすることを特徴とす
    る請求項10または11記載のプリプレグ。
  15. 【請求項15】 構成要素[D]がフェノール樹脂、エ
    ポキシ樹脂およびマレイミド樹脂からなる群から選ばれ
    た少なくとも1種の熱硬化性樹脂を素材とすることを特
    徴とする請求項10または11記載のプリプレグ。
  16. 【請求項16】 構成要素[A]が炭素(黒鉛)繊維で
    あることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項記
    載のプリプレグ。
  17. 【請求項17】 次の構成要素[A]、[B’]および
    [C’]からなる積層体であり、積層体中の層間領域に
    [C’]が局在化し、[B’]が[C’]より一層中の
    内側に存在することを特徴とするコンポジット。 [A] :強化繊維 [B’]:相分離していない熱硬化性樹脂硬化物 [C’]:相分離した熱硬化性樹脂硬化物
  18. 【請求項18】 構成要素[C’]の90%以上が積層
    層間領域に局在化していることを特徴とする請求項17
    記載のコンポジット。
  19. 【請求項19】 構成要素[B’]および[C’]中の
    熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、シアネート樹脂およびビ
    スマレイミド樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1
    種の熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項17
    または18記載のコンポジット。
  20. 【請求項20】 構成要素[C’]が熱硬化性樹脂を主
    成分とする相と熱可塑性樹脂を主成分とする相にミクロ
    相分離した構造を有する樹脂硬化物であることを特徴と
    する請求項17〜19のいずれか1項記載のコンポジッ
    ト。
  21. 【請求項21】 構成要素[C’]中の熱可塑性樹脂を
    主成分とする相がポリイミドであることを特徴とする請
    求項20記載のコンポジット。
  22. 【請求項22】 構成要素[C’]中の熱可塑性樹脂を
    主成分とする相がケイ素元素を含有することを特徴とす
    る請求項20記載のコンポジット。
  23. 【請求項23】 次の構成要素[A]、[B’]、
    [C’]および[D]からなる積層体であり、積層体中
    の層間領域に[C’]および[D’]があり、[B’]
    が[C’]より一層中の内側に存在することを特徴とす
    るコンポジット。 [A] :強化繊維 [B’]:相分離していない熱硬化性樹脂硬化物 [C’]:相分離した熱硬化性樹脂硬化物 [D’]:樹脂を素材とする微粒子
  24. 【請求項24】 構成要素[C’]および[D]の90
    %以上が積層層間領域に局在化していることを特徴とす
    る請求項23記載のコンポジット。
  25. 【請求項25】 構成要素[D’]がポリアミド、ポリ
    カーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシ
    ド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリ
    エステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテ
    ルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ
    エーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリア
    ラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダ
    ゾールからなる群から選ばれた1種以上の樹脂を素材と
    することを特徴とする請求項24記載のコンポジット。
  26. 【請求項26】 構成要素[D’]が曲げ弾性率170
    kg/mm以上のポリアミドと曲げ弾性率150kg
    /mm未満のポリアミドの2種のポリアミドを素材と
    することを特徴とする請求項24記載のコンポジット。
  27. 【請求項27】 構成要素[D’]が熱硬化性樹脂とセ
    ミIPN化した熱可塑性樹脂を素材とすることを特徴と
    する請求項24記載のコンポジット。
  28. 【請求項28】 構成要素[D’]がフェノール樹脂、
    エポキシ樹脂およびマレイミド樹脂からなる群から選ば
    れた少なくとも1種の熱硬化性樹脂を素材とすることを
    特徴とする請求項24記載のコンポジット。
  29. 【請求項29】 構成要素[A]が炭素(黒鉛)繊維で
    あることを特徴とする請求項17〜28のいずれか1項
    記載のコンポジット。
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