JP3345951B2 - プリプレグおよび複合材料 - Google Patents

プリプレグおよび複合材料

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JP3345951B2 JP9726093A JP9726093A JP3345951B2 JP 3345951 B2 JP3345951 B2 JP 3345951B2 JP 9726093 A JP9726093 A JP 9726093A JP 9726093 A JP9726093 A JP 9726093A JP 3345951 B2 JP3345951 B2 JP 3345951B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリプレグおよび複合
材料に関するものである。さらに詳細には、先進複合材
料として強度、弾性率さらにはこれらを比重で除した比
強度、比弾性率の大なることを要求される構造体に用い
られるプリプレグおよび複合材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】先進複合材料は、強化繊維とマトリック
ス樹脂を必須の構成要素とする不均一材料であり、この
ため、繊維軸方向の物性とそれ以外の方向の物性に大き
な差が存在する。たとえば、落錘衝撃に対する抵抗性は
層間剥離強度によって支配され、強化繊維の強度を向上
させても抜本的な改良には結びつかないことが知られて
いる。特に、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複
合材料は、マトリックス樹脂の低靭性を反映し耐衝撃特
性が不十分である。そこで繊維軸方向以外の物性、特に
耐衝撃性を改良することを目的として種々の方法が提案
されている。
【0003】熱硬化性樹脂そのものの高靭性化手法とし
て、エポキシ樹脂にポリスルフォン樹脂を添加する手法
が特開昭60-243113 号公報に、また、エポキシ樹脂に芳
香族オリゴマを添加する手法が特開昭61-228016 号公報
に開示されている。この樹脂高靭性化によって複合材料
の耐衝撃性も改良されるとしている。
【0004】特開昭60-63229号公報では、繊維強化プリ
プレグの層間にエラストマーで改質したエポキシ樹脂フ
ィルムを配して耐衝撃性の改善がなされることが開示さ
れている。
【0005】米国特許第 4,604,319号明細書では、繊維
強化プリプレグの層間に熱可塑性樹脂フィルムを配して
耐衝撃性の改善がなされることが開示されている。
【0006】本発明者らは米国特許第 5,028,478号明細
書において、樹脂を素材とする微粒子を含むマトリック
ス樹脂を開示した。特に、樹脂微粒子をプリプレグの表
面に局在化させることにより、プリプレグのタック性
(粘着性)およびドレープ性(以下、タック・ドレープ
性)を有したまま耐衝撃性の改良された複合材料を与え
ることを示した。
【0007】米国特許第 4,863,787号明細書では、エポ
キシ樹脂、反応性オリゴマおよび粒径10〜75ミクロ
ンのエラストマー状粒子からなるマトリックス樹脂を用
いたプリプレグにより、耐衝撃性の改良された複合材料
が得られることを開示している。ここでエラストマー粒
子以外の硬化樹脂部分には相分離構造が形成されるとし
ている。
【0008】ヨーロッパ公開特許第0377194 A2号明細書
では、アミノフェニルトリメチルインダン等の部分的に
非芳香族性の骨格を有するエポキシ可溶性ポリイミド粒
子(粒径2〜35μm)を混合したエポキシ樹脂をマト
リックス樹脂とすれば複合材料の耐衝撃性が向上するこ
とが開示されている。該公報によると可溶性ポリイミド
粒子は複合材料の層間部で成形中に溶解するとしてい
る。
【0009】特開平3-26750 号公報ではエポキシ樹脂、
反応性ポリスルホンオリゴマおよび反応性エラストマと
エポキシ樹脂からなる樹脂微粒子をマトリックス樹脂と
した複合材料は耐衝撃性が優れているとしている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの手法
は、その耐衝撃性改良効果がいまだ不十分であったり、
耐衝撃性を改良するために耐熱性、ハンドリング性その
他の特性を犠牲にするなど、それぞれに欠点を有してい
る。
【0011】特開昭60-243113 号公報のように高分子量
のポリスルフォン等の熱可塑性樹脂を混合し樹脂靭性を
向上させる場合、その樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ
て強化繊維への含浸が困難となり、プリプレグのタック
・ドレープ性も損われる。特開昭61-228016 号公報のよ
うに分子量を下げたオリゴマを添加する場合も、十分な
樹脂靭性を得るためには熱可塑性樹脂の添加量を十分多
くする必要があり、それに伴い樹脂組成物の粘度が高く
なりすぎて強化繊維への含浸が困難となる。また、熱可
塑性樹脂の量を増やすに従い、硬化物の耐溶剤性が低下
する。しかも、これら樹脂そのものの靭性を向上しても
複合材料の耐衝撃性改良にとってはしだいに頭打ちにな
る傾向が認められる。衝撃を与えた後の疑似等方板の圧
縮強度(以下、CAI)は実施例の最高値が46.1k
siどまりである。
【0012】特開昭60-63229号公報のようにエラストマ
ー改質熱硬化性樹脂を含む独立外層フィルムを用いた場
合には、エラストマーの含量が多くなると耐熱性が低下
し、エラストマーの含量が少ないと耐衝撃性の改善効果
は非常に少ない。耐衝撃性を示すCAIは実施例の最高
値が48.3ksiどまりである。
【0013】また、米国特許第 4,604,319号明細書のよ
うに熱可塑性樹脂フィルムを用いた場合には耐熱性の良
好な熱可塑性樹脂フィルムを用いることにより耐熱性と
耐衝撃性の改善効果の両立がある程度なされるが熱硬化
性樹脂の利点であるタック性・ドレープ性が失われる。
また、耐溶剤性が良くないという熱可塑性樹脂の一般的
欠点が複合材料に反映してしまう。CAIは実施例の最
高値が51ksiどまりである。
【0014】米国特許第 4,863,787号明細書のように層
間部に存在する粒子がエラストマーである場合、圧力や
昇温速度等の成形条件変化により層間厚さが変化しやす
く、結果的に耐衝撃性が成形条件の影響を受けやすい。
また、エラストマーの存在が複合材料の耐熱性を低下さ
せる。CAIは実施例の最高値が54.4ksiどまり
である。
【0015】ヨーロッパ公開特許第0377194 A2号明細書
のように層間部に可溶性ポリイミドを配置する場合も成
形条件変化により層間厚さが変化しやすく、耐衝撃性が
成形条件の影響を受けやすい。CAIは実施例の最高値
が49.9ksiどまりである。
【0016】特開平3-26750 号公報には実施例にCAI
の記載がないので耐衝撃性の程度を比較することができ
ない。また、粒子中のエラストマーが耐熱性を低下させ
ると考えられる。
【0017】一方、本発明者らが開示した米国特許第
5,028,478号明細書は、樹脂微粒子が複合材料の層間部
分に局在化するといった点で、本発明と最も類似した先
行例である。
【0018】しかし、樹脂そのものの靭性値が不十分な
点で完全なものとはいえない。耐熱性を維持しつつ耐衝
撃性を向上させた系としては、実施例に示したCAIの
最高値が53.3ksiである。同技術の範疇で、やや
耐熱性の低い熱可塑性樹脂微粒子を用いることで、CA
Iを60ksi程度に向上させ得るが、この場合には、
複合材料の耐熱性を低下させるおそれがある。
【0019】本発明は、高い耐熱性を維持しつつ、上記
先行例を上回る耐衝撃性および層間靭性を有し、しかも
その高い耐衝撃性が成形条件変化にもかかわらず安定し
て発現し、かつ高い引張強度を有する優れた複合材料を
与えるためのプリプレグおよびそれから得られる複合材
料を提供することをその課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本願発明のプリプレグは
上記目的を達するため次の構成を有する。すなわち、次
の構成要素[A]、[B]および[C]からなり、構成
要素[C]が表面に局在化したプリプレグである。
【0021】[A]:長繊維からなる強化繊維 [B]:熱硬化性樹脂可溶の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹
脂とからなりミクロ相分離形成能を有する樹脂組成物 [C]:[B]に不溶かつエラストマー成分を含有しな
い微粒子 また、本願発明の複合材料は上記目的を達するため次の
構成を有する。すなわち、次の構成要素[A]、
[B′]および[C]からなり、構成要素[C]が積層
層間部に局在化していることを特徴とする複合材料であ
る。
【0022】[A]:強化繊維 [B′]:熱硬化性樹脂を主成分とする相と熱可塑性樹
脂を主成分とする相にミクロ相分離した構造を有する樹
脂硬化物 [C]:[B]に不溶かつエラストマー成分を含有しな
い微粒子 本発明の構成要素[A]は長繊維からなる強化繊維であ
る。◎本発明に用いうる強化繊維は、一般に先進複合材
料として用いられる耐熱性および引張強度の良好な繊維
である。たとえば、その強化繊維には、炭素繊維、黒鉛
繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、
ボロン繊維、タングステンカーバイド繊維、ガラス繊維
があげらる。このうち比強度、比弾性率が良好で軽量化
に大きな寄与が認められる炭素繊維や黒鉛繊維が本発明
には最も良好である。炭素繊維や黒鉛繊維は用途に応じ
てあらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可
能であるが、引張強度 450kgf/mm2 、引張伸度1.7%以上
の高強度高伸度炭素繊維が最も適している。また、本発
明に用いる強化繊維の長さは、強化繊維の強度を複合材
料としたときに十分に発現させる観点から5cm以上で
あることが好ましい。また、炭素繊維や黒鉛繊維は他の
強化繊維を混合して用いてもかまわない。また、強化繊
維はその形状や配列を限定されず、たとえば、単一方
向、ランダム方向、シート状、マット状、織物状、組み
紐状であっても使用可能である。また、特に、比強度、
非弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が
単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取
り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明には適
している。
【0023】構成要素[B]または構成要素[B′]
は、熱硬化性樹脂可溶の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂と
の2成分からなるものである。熱硬化性樹脂単独では脆
く、一方、熱可塑性樹脂単独では成形性や耐環境性・耐
久性に劣る問題がある。
【0024】構成要素[B]および構成要素[B′]の
成分である熱硬化性樹脂は、熱または光や電子線などの
外部からのエネルギーにより硬化して、部分的に三次元
硬化物を形成する樹脂が好ましく用いられる。
【0025】本発明に適した熱硬化性樹脂の具体例とし
ては、特に、エポキシ樹脂があげられ、一般に硬化剤や
硬化触媒と組合せて用いられる。特に、アミン類、フェ
ノール類、炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆体と
するエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、アミン類を
前駆体とするエポキシ樹脂として、テトラグリシジルジ
アミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノ
フェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、
トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体、フェノ
ール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビスフェノ
ールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹
脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボ
ラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキ
シ樹脂、炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆体とす
るエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂等があげ
られるが、これに限定されない。また、これらのエポキ
シ樹脂をブロム化したブロム化エポキシ樹脂も好ましく
用いられる。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタ
ンに代表される芳香族アミンを前駆体とするエポキシ樹
脂は、耐熱性が良好で強化繊維との接着性が良好なため
本発明に最も適している。
【0026】エポキシ樹脂はエポキシ硬化剤と組合せて
好ましく用いられる。エポキシ硬化剤はエポキシ基と反
応しうる活性基を有する化合物であれば用いることがで
きる。好ましくは、アミノ基、酸無水物基、アジド基を
有する化合物が適している。具体的には、ジシアンジア
ミド、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体、アミ
ノ安息香酸エステル類が適している。ジシアンジアミド
はプリプレグの保存性に優れるため好んで用いられる。
また、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐
熱性の良好な硬化物を与えるため本発明には最も適して
いる。アミノ安息香酸エステル類としては、トリメチレ
ングリコールジ−p−アミノベンゾエートやネオペンチ
ルグリコールジ−p−アミノベンゾエートが好んで用い
られ、ジアミノジフェニルスルホンに比較して、耐熱性
に劣るものの、引張伸度に優れるため用途に応じて選択
して用いられる。
【0027】また、エポキシ樹脂に微粉末状シリカなど
の無機質微粒子やエラストマーなどを少量混合すること
も可能である。
【0028】構成要素[B]および構成要素[B′]中
の熱硬化性樹脂として、マレイミド樹脂、アセチレン末
端を有する樹脂、ナジック酸末端を有する樹脂、シアン
酸エステル末端を有する樹脂、ビニル末端を有する樹
脂、アリル末端を有する樹脂も好ましく用いられる。こ
れらは適宜、エポキシ樹脂や他の樹脂と混合しても良
い。また、反応性希釈剤を用いたり、熱可塑性樹脂やエ
ラストマーなどの改質剤を耐熱性を大きく低下させない
程度に混合して用いてもかまわない。
【0029】マレイミド樹脂は、1分子あたりマレイミ
ド基を平均2個以上含む化合物である。ジアミノジフェ
ニルメタンを原料とするビスマレイミドが特に好適に用
いられる。この種のマレイミド化合物としては、例え
ば、N,N'- フェニレンビスマレイミド、N,N'- ヘキサメ
チレンビスマレイミド、N,N'- メチレン- ジ- p- フェ
ニレンビスマレイミド、N,N'- オキシ- ジ- p- フェニ
レンビスマレイミド、N,N'-4,4'-ベンゾフェノンビスマ
レイミド、N,N'- ジフェニルスルホンビスマレイミド、
N,N'-(3,3'- ジメチル)-メチレン- ジ- p- フェニレン
ビスマレイミド、N,N'-4,4'-ジシクロヘキシルメタンビ
スマレイミド、N,N'- m( 又はp)-キシリレン- ビスマ
レイミド、N,N'-(3,3'- ジエチル)-メチレン- ジ- p-
フェニレンビスマレイミド、N,N'- メタトリレン- ジ-
マレイミドやビス(アミノフェノキシ)ベンゼンのビス
マレイミドをはじめ、アニリンとホルマリンの反応生成
物である混合ポリアミンと無水マレイン酸との反応生成
物などがあげられる。また、これらマレイミド化合物
は、2種以上の混合系で用いてもよく、また、N-アリル
マレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ヘキシルマレイ
ミド、N-フェニルマレイミドなどのモノマレイミド化合
物を含有してもよい。
【0030】マレイミド樹脂は硬化剤(反応性希釈剤)
と組合せて好ましく用いられる。硬化剤はマレイミド基
と反応し得る活性基を有する化合物であれば用いること
ができる。好ましくは、アミノ基、アリル基に代表され
るアルケニル基、ベンゾシクロブテン基、アリルナジッ
クイミド基、イソシアネート基、シアネート基、エポキ
シ基を有する化合物が適している。例えば、アミノ基を
有する硬化剤としてはジアミノジフェニルメタンが代表
的であり、アルケニル基を有する硬化剤としてはO,O'-
ジアリルビスフェノールAやビス(プロペニルフェノキ
シ)スルホンなどがあげられる。
【0031】上記のビスマレイミドとシアン酸エステル
で構成されるビスマレイミド・トリアジン樹脂(以下、
BT樹脂)も本発明の熱硬化性樹脂として好適である。
シアン酸エステル末端を有する樹脂としては、ビスフェ
ノールAに代表される多価フェノールのシアン酸エステ
ル化合物が好適である。シアン酸エステル樹脂とビスマ
レイミド樹脂と組合わせた樹脂は、三菱瓦斯化学(株)
製BTレジンとして市販されており、本発明に適してい
る。これらは、一般にエポキシ樹脂より耐熱性と耐水性
が良好である半面、靭性や耐衝撃性が劣るため、用途に
応じて選択して用いられる。ビスマレイミドとシアン酸
エステルの重量比で0/100〜70/30の範囲で好
ましく用いられる。0/100の場合は単独のトリアジ
ン樹脂となるが、これも本発明に適している。
【0032】さらに、末端反応性基を持つ熱硬化性ポリ
イミド樹脂も構成要素[B]および構成要素[B′]中
の熱硬化性樹脂として好適である。末端反応性基として
はナジイミド基、アセチレン基、ベンゾシクロブテン基
などが好適である。
【0033】構成要素[B]および構成要素[B′]中
の熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、レゾルシノー
ル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート
樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂といった公知の熱硬化性
樹脂も用いることができる。
【0034】構成要素[B]および構成要素[B′]は
熱可塑性樹脂成分を含むものであるが、この熱可塑性樹
脂を熱硬化性樹脂に対して可溶とするものである。熱可
塑性樹脂が熱硬化性樹脂に対して可溶でなければ、後述
するようなミクロ相分離とすることができない。すなわ
ち、一旦均一な相溶状態を経て熱硬化性樹脂が硬化反応
することで誘発されるいわゆるスピノーダル分解型の相
分離が起こるようにするため熱可塑性樹脂を熱硬化性樹
脂に対して可溶とするものである。
【0035】構成要素[B]および構成要素[B′]中
の熱可塑性樹脂成分としては、熱硬化性樹脂本来の高耐
熱性、高弾性率を損わないようにする観点から、芳香族
系のいわゆるエンジニアリングプラスチックに属するも
のが好ましい。すなわち、芳香族ポリイミド骨格、芳香
族ポリアミド骨格、芳香族ポリエーテル骨格、芳香族ポ
リスルホン骨格、芳香族ポリケトン骨格を有する熱硬化
性樹脂可溶の高耐熱性の熱可塑性樹脂が代表例としてあ
げられる。芳香族ポリイミド骨格を有するものは耐熱
性、耐溶剤性、靭性のいずれにも優れるため、特に好ま
しい。
【0036】ポリイミドの合成法は、公知のいずれの方
法を用いることもでき、たとえば、テトラカルボン酸二
無水物とジアミノ化合物とを反応させることよって合成
することができる。◎テトラカルボン酸二無水物の好ま
しい例は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,
4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,
3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水
物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカ
ルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水
物、より好ましくは、3,3’,4,4’−ビフェニル
テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフ
ェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物などの芳香族
テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。◎ジ
アミノ化合物の好ましい例は、ジアミノジフェニルメタ
ン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミ
ン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニル
スルフォン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノ
ジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジア
ミノジフェニルケトン、ジアミノジフェニルヘキサフル
オロプロパン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビ
ス(アミノフェノキシ)ジフェニルスルフォン、ビス
(アミノフェノキシ)ジフェニルプロパン、ビス(アミ
ノフェノキシ)ジフェニルヘキサフルオロプロパン、フ
ルオレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンのジメチ
ル置換体、ジアミノジフェニルメタンのテトラメチル置
換体、ジアミノジフェニルメタンのジエチル置換体、ジ
アミノジフェニルメタンのテトラエチル置換体、ジアミ
ノジフェニルメタンのジメチルジエチル置換体などの芳
香族ジアミノ化合物、より好ましくは、ビス(アミノフ
ェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ジフェ
ニルスルフォン、ビス(アミノフェノキシ)ジフェニル
プロパン、ビス(アミノフェノキシ)ジフェニルヘキサ
フルオロプロパン、フルオレンジアミン、ジアミノジフ
ェニルメタンのジメチル置換体、ジアミノジフェニルメ
タンのテトラメチル置換体、ジアミノジフェニルメタン
のジエチル置換体、ジアミノジフェニルメタンのテトラ
エチル置換体、ジアミノジフェニルメタンのジメチルジ
エチル置換体などの芳香族ジアミノ化合物をあげること
ができる。
【0037】ポリイミド骨格、ポリアミド骨格、ポリエ
ーテル骨格、ポリスルホン骨格あるいはポリケトン骨格
からなる熱可塑性樹脂分子中にヘキサフルオロプロパン
骨格を有することは、未硬化状態の熱硬化性樹脂への溶
解性を向上させ、硬化後に適切なミクロ相分離構造を形
成させうるため好ましい。また、このようなヘキサフル
オロプロパン骨格を有することによって硬化樹脂の吸水
性を著しく低下させるため、硬化樹脂の耐環境性を向上
せしめる効果もある。
【0038】ポリイミド骨格、ポリアミド骨格、ポリエ
ーテル骨格、ポリスルホン骨格あるいはポリケトン骨格
を有する熱可塑性樹脂分子中に嵩高い構造を有すること
も未硬化状態の熱硬化性樹脂への溶解性を向上させるた
め好ましい。その嵩高い構造の具体例の一つは式(I) に
示す構造である。
【0039】
【化1】 (但し、式中R1 はH,Cm 2m+1から選ばれる。ここ
で、m は好ましくは1〜3の整数である。)また、構成
要素[B]および構成要素[B′]中の熱可塑性樹脂と
して、熱硬化性樹脂と相溶性の連鎖と非相溶性の連鎖か
らなるブロック共重合体またはグラフト共重合体を用い
ることは相溶性制御、すなわち、ミクロ相分離構造を容
易に得る観点から特に好ましい。
【0040】好ましい具体例の1つは、構成要素[B]
および構成要素[B′]中の熱硬化性樹脂とは本来非相
溶性で、高靭性かつ低吸水率であるシロキサン骨格から
なる連鎖を有するブロック共重合体またはグラフト共重
合体である。特に好ましくは、そのシロキサン骨格から
なる連鎖以外の部分が構成要素[B′]中の熱硬化性樹
脂と相溶するポリイミド骨格、ポリアミド骨格、ポリエ
ーテル骨格、ポリスルホン骨格あるいはポリケトン骨格
からなるブロック共重合体またはグラフト共重合体であ
る。
【0041】構成要素[B]および構成要素[B′]中
の熱可塑性樹脂が共重合連鎖成分としてシロキサン連鎖
を有する場合、用いる代表的なシロキサン骨格は式(II)
で表される。
【0042】
【化2】 (但し、式中R2 は2価の有機基であって、C1 〜C20
のアルキレン基またはフェニレン基、特にC1 〜C6
好ましい。R3 は1価の有機基であって、C1 〜C10
アルキル基またはフェニル基、特にC1 〜C6 が好まし
い。なお、R2 、R3 はそれぞれ同種でもよく、異種で
もよい。n は1以上の正数であり、3〜60が好まし
い。)特に好ましくは、ジメチルシロキサンであるが、
フェニルシロキサンやもしくはその共重合体も好適に用
いることができる。
【0043】構成要素[B]または[B′]としての熱
可塑性樹脂が、構成要素[A]に相溶性の連鎖と非相溶
性の連鎖からなるブロックあるいはグラフト共重合体で
ある場合、相溶性の連鎖と非相溶性の連鎖の重量比は5
5:45〜97:3、さらには65:35〜95:5の
範囲が好ましい。
【0044】構成要素[B]中の熱可塑性樹脂として、
構成要素[B]中の熱硬化性樹脂と相溶性の連鎖と非相
溶性の連鎖が1分子中に存在するブロック共重合体また
はグラフト共重合体を用いると、本来熱硬化性樹脂に均
一混合不可能な骨格からなる連鎖、例えば、シリコン樹
脂の連鎖をも相溶性連鎖の働きで均一混合させることが
できる。また、相溶性の連鎖部は硬化後の熱硬化性樹脂
成分との充分な接着性を確保し、その効果のもとで非相
溶性連鎖部が存在することによって、靭性向上に効果的
な形態かつ大きさの上記ミクロ相分離構造が形成され、
その結果、高い靭性レベルのマトリックス樹脂となるも
のと推定される。結果物としての樹脂硬化物中の熱可塑
性樹脂を主成分とする相には、シロキサン連鎖由来のケ
イ素元素が高濃度に存在することとなり、X線マイクロ
アナライザーにより同定できる。シロキサン連鎖を有す
る熱可塑性樹脂を用いることによって硬化樹脂の耐水性
も著しく向上する。
【0045】構成要素[B]中の熱可塑性樹脂は、1分
子中に本来非相溶性である連鎖部を有するため、同じ分
子量を持つ完全溶解連鎖のみからなる熱可塑性樹脂と比
較した場合、意外にもその添加による樹脂粘度増加が小
さい。したがって作業性の低下が少なく、この樹脂をマ
トリックス樹脂とするプリプレグはタック・ドレープ性
が優れているという効果がある。別の見方をすると、構
成要素[B]中の熱可塑性樹脂添加量の制約が緩く、タ
ック性を損わずに樹脂系に多量に導入でき樹脂靭性向上
に有利である。
【0046】構成要素[B]および構成要素[B′]中
の熱可塑性樹脂としてブロック共重合体またはグラフト
共重合体を用いる場合、ポリイミド連鎖部を有するもの
が最も好ましい。
【0047】構成要素[B]および構成要素[B′]中
の熱可塑性樹脂が、その末端に構成要素[B′]中の熱
硬化性樹脂と反応しうる官能基を有することは、相界面
の接着性をより高めるため耐溶剤性および耐疲労性の観
点からさらに好ましい。このような好ましい反応性官能
基として、アミノ基、エポキシ基、マレイミド基、アリ
ル基、カルボキシル基、水酸基、シアネート基、イソシ
アネート基があげられる。
【0048】構成要素[B]および構成要素[B′]中
の熱可塑性樹脂量は、靭性向上効果が小さくなるのを防
ぎ、一方、作業性の低下を防ぐ観点から、構成要素
[B]および構成要素[B]中の全成分中の5〜40重
量%、さらには8〜30重量%とするのが好ましい。
【0049】ここで、構成要素[B]中の熱可塑性樹脂
成分は、未硬化状態の熱硬化性樹脂成分に予め溶解して
おいてもよいし、分散させているだけでもよい。また、
部分的に溶解させ、部分的に分散させてもよい。この溶
解と分散の比率を変化させることによって樹脂の粘度を
調節でき、プリプレグとしたときのタック・ドレープ性
を好みの程度に調節することができる。分散させた熱可
塑性樹脂もその大部分が成形過程において熱硬化性樹脂
成分に溶解し、硬化終了時までに再び相分離し、前記の
適切なミクロ相分離構造の形成に寄与する。
【0050】構成要素[B]および構成要素[B′]中
の熱可塑性樹脂の分子量は、熱可塑性樹脂成分を未硬化
状態の熱硬化性樹脂成分に予め溶解させておく場合に
は、靭性向上効果が小さくなるのを防ぎ、一方、樹脂粘
度の増加による作業性の低下を防ぐ観点から、数平均分
子量2000〜20000、さらには2500〜100
00の範囲が好ましい。また、構成要素[B]中の熱可
塑性樹脂成分を未硬化状態の熱硬化性樹脂成分に溶解さ
せず分散させておく場合には、高分子量であっても樹脂
粘度およびプリプレグのタック性に悪影響を与えないの
で、熱可塑性樹脂の分子量はさらに高分子領域である数
平均分子量200000までの範囲を用いることができ
る。
【0051】本発明の構成要素[B′]は熱硬化性樹脂
を主成分とする相と熱可塑性樹脂を主成分とする相にミ
クロ相分離した構造を有する樹脂硬化物である。またこ
の構成要素[B′]は構成要素[B]を硬化することに
よって得られるものであり、構成要素[B]を硬化する
過程において次に述べる特徴的なミクロ相分離構造を有
するようになる。すなわち、構成要素[B]は熱硬化性
樹脂可溶の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とからなりミク
ロ相分離形成能を有する樹脂組成物である。換言すれ
ば、構成要素[B]は硬化した後に、熱可塑性樹脂を主
成分とする相が、熱硬化性樹脂を主成分とする相と分離
して存在し、好ましくは少なくとも熱可塑性樹脂を主成
分とする相、より好ましくは両方の相が3次元に連続し
ているミクロ相分離構造を有する樹脂硬化物である構成
要素[B′]となる。また場合によっては、連続相中に
他相の分散相を含有する形態を有する。
【0052】このような特徴的ミクロ相分離構造を形成
するがゆえ、この樹脂硬化物は、少なくとも300J/
2 以上の破壊歪エネルギー解放率GICを有しつつ、2
50kg/mm2 以上の曲げ弾性率を有する熱硬化性樹脂硬
化物となるのである。
【0053】本発明に用いる組成物から得られる硬化樹
脂の破壊歪エネルギー解放率GICはダブルトーション法
(以下、DT法)で測定される。DT法について詳しく
はジャーナル・オブ・マテリアルズ・サイエンス(Jour
nal of Material Sciense )第20巻第77-84 頁(1985)な
どに記載されている。GICは亀裂発生荷重P、コンプラ
イアンスCの亀裂進展距離ai に対する傾きΔC/Δa
i および亀裂進展部のサンプル厚みtから次式によって
計算される。
【0054】GIC=P2 (ΔC/Δai )/2t ここで、コンプライアンスCは、亀裂発生時のクロスヘ
ッド変位量δおよび亀裂発生荷重PによってC=δ/P
で定義される。
【0055】熱可塑性樹脂を主成分とする連続相におい
て、連続相の幅は、破断面の凹凸深さが浅く破壊経路が
短くなり高靭性を発現しにくくなるのを防止し、一方、
破壊経路が単純化し高靭性化効果が薄れるのを防止する
観点から、0.01〜20ミクロン、さらには、0.1
〜10ミクロンが好ましい。これに伴い、連続構造中の
分散相の直径は、0.01〜10ミクロン、さらには、
0.1〜3ミクロンが好ましい。
【0056】構成要素[C]は[B]に不溶かつエラス
トマー成分を含有しない微粒子である。◎構成要素
[C]が微粒子であることは次の利点を持つ。すなわ
ち、微粒子であれば、構成要素[B]であるマトリック
ス樹脂と混合したときにマトリックス樹脂中に分散した
状態で存在するため、マトリックス樹脂のもつタック・
ドレープ性がプリプレグ特性として反映され、取り扱い
性に優れたプリプレグとなる。
【0057】構成要素[C]は[B]に不溶とするもの
である。[C]が[B]に溶解するならば、プリプレグ
積層層間部に適当な厚みの樹脂層を形成しにくくなる。
仮に形成するとしても熱・圧力などの成形条件によって
層間厚みがばらつき、材料特性のばらつきが大きくな
る。
【0058】構成要素[C]は、エラストマー成分を含
有しないものである。エラストマー成分を含有すると、
複合材料の耐熱性が低下するという問題がある。
【0059】構成要素[C]の分布については、複合材
料の積層層間部に局在化して存在することが耐衝撃性の
優れた複合材料を与えるために重要である。構成要素
[C]の90%以上が積層層間部に局在化する場合が好
ましい。構成要素[C]は積層層間部に10〜70μm
の樹脂層を安定して形成させる役割をはたす。特に、構
成要素[C]を含む積層層間部の平均厚みが10〜70
μmの間にあり、かつ層間厚みのばらつきがCV値にし
て50以下、好ましくは40以下であることが物性値を
安定して発現させるため好ましい。このような構造とす
るには、平均粒径が3〜70μmの構成要素[C]を、
後述するような手段で局在化して積層、成形すればよ
い。
【0060】層間厚みの平均値およびばらつきは、図1
に示すごとく以下のようにして求めるものである。プリ
プレグを疑似等方に積み重ねて硬化成形した複合材料の
断面写真をまず撮影する。拡大倍率は200倍程度とす
る。繊維軸が写真を左右に横切る一つの0゜層に着目す
る。その0゜層の上下の層間中央に0゜繊維軸と平行に
直線を引き、この二本の平行線の間隔(距離)を一層の
厚みとする。次に、着目した0゜層について0゜繊維軸
方向へ一層の厚みの4倍長さの範囲を任意に設定し、こ
の範囲における0゜層の上下にある層間の厚みを次のよ
うに求める。
【0061】すなわち、着目した0゜層の上下にある層
間部について、設定範囲を0゜繊維軸と垂直に20等分
割する直線を19本引く。この19本の直線のそれぞれ
と着目した0゜層の最も上側の強化繊維との交点および
0゜層の上にある別層の最下端の強化繊維との交点の間
の距離を層間部の厚みとして測定する。つまり、着目し
た0゜層の上部の層間につき測定値が19個得られるこ
とになる。同様にして、着目した0゜層の下部の層間に
ついても測定値19個を得る。この合計38個の層間厚
み測定値を用い、層間厚み平均値χ、標準偏差σn-1
よびCV値を求める。CV値は次の式で求められる。
【0062】CV(%)=(σn-1 /χ)×100 上記の層間厚み測定は基本的に一方向強化プリプレグを
積層した場合を想定しているが、クロスプリプレグの場
合も同様に計算できる。もっとも、クロスプリプレグの
場合は、例えば、平織クロスの場合、経糸と緯糸の交点
の目抜け部分は断面でみれば樹脂溜まりとなっており、
層間厚みを測定する場所としては適当でないので外して
計算する。
【0063】構成要素[C]が複合材料の積層層間部に
局在化して存在することは、成形前のプリプレグの形態
に置き換えると、構成要素[C]の大部分がプリプレグ
表面付近に局在化しているということになる。特に、構
成要素[C]の90%以上が、プリプレグ表面からプリ
プレグの厚さの15%の深さの範囲内に存在する場合に
は、この条件をはずれてプリプレグ内部深くに構成要素
[C]が入った場合より、複合材料の耐衝撃性は格段に
優れたものとなる。このような局在化手段としては、後
述する特開平1−26651号公報などに開示された公
知の手段を採用することができる。
【0064】前記従来の技術の項で述べたように、既に
本発明者らが開示した米国特許第 5,028,478号明細書で
は、樹脂微粒子が複合材料の層間部分に局在化する技術
を示している。しかし、マトリックス樹脂そのものの靭
性値が不十分な点で完全なものとはいえない。耐熱性を
維持しつつ耐衝撃性を向上させた系としては実施例に示
したCAIの最高値が53.3ksiである。同技術の
範疇でやや耐熱性の低い熱可塑性樹脂微粒子を用いるこ
とで、CAIを60ksi程度に向上させ得るが、その
場合複合材料の耐熱性を低下させることになる。また、
樹脂そのものの靭性値が不十分なことを反映し、引き剥
がしモードでの層間靭性値は必ずしも高くない。
【0065】一方、前記したように、マトリックス樹脂
そのものの靭性値を向上させる試みも多く行われてい
る。しかし、特開昭60-243113 号公報のように高分子量
のポリスルフォン等の熱可塑性樹脂を混合し樹脂靭性を
向上させる場合、その樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ
て強化繊維への含浸が困難となり、プリプレグのタック
・ドレープ性も損われる。特開昭61-228016 号公報のよ
うに分子量を下げたオリゴマを添加する場合も、十分な
樹脂靭性を得るためには熱可塑性樹脂の添加量を十分多
くする必要があり、それに伴い、樹脂組成物の粘度が高
くなりすぎて強化繊維への含浸が困難となる。また、熱
可塑性樹脂の量を増やすに従い、硬化物の耐溶剤性が低
下する。しかも、CAIは実施例の最高値が46.1k
siどまりである。
【0066】さらに、マトリックス樹脂そのものの靭性
を向上していっても、複合材料の耐衝撃性向上効果は次
第に頭打ちになる傾向が認められる。◎しかし、本発明
のごとく、特定の熱可塑性樹脂を所定の比率で熱硬化性
樹脂に配合し、硬化させた特徴的なミクロ相分離構造を
有する高靭性マトリックス樹脂である構成要素[B]を
ベース樹脂とし、[B]に不溶かつエラストマー成分を
含有しない微粒子である構成要素[C]を積層層間部に
局在化させた複合材料は、高靭性な層間樹脂部を安定し
て形成することで衝撃付与時の損傷を抑制し卓越した耐
衝撃性を示すものである。特に、微粒子[C]として高
靭性な熱可塑性樹脂を用いた最も好ましい態様において
は、高い耐熱性を維持しつつ、CAIにおいて58ks
i程度といった驚くべき耐衝撃性を発現するものであ
る。また、引き剥がしモードのコンポジット層間靭性も
大きく向上するものである。
【0067】さらに交差積層板を引張ったときに生じが
ちな積層層間の剥離現象が著しく抑制されることもわか
った。
【0068】しかも、意外なことに、この卓越した耐衝
撃特性や層間靭性が、成形条件の変化によらず安定して
発現する効果を奏するものである。また、[B]が高靭
性であることを反映し、繊維軸に対して90゜方向に引
張った際のクラック発生や冷却加熱の繰返しによるクラ
ック発生が著しく抑えられる効果をも奏するものであ
る。
【0069】さらに、本発明の樹脂組成物をマトリック
ス樹脂とした炭素繊維強化複合材料は引張強度が著しく
高いという効果も有する。一般に繊維強化複合材料の繊
維方向の引張強度は、強化繊維そのものの引張強度によ
るところが大きいが、複合材料の引張強度は、概して繊
維そのものの引張強度から推定される計算値よりも低い
値にとどまる。しかし、本発明の樹脂をマトリックス樹
脂とすることにより、繊維強度を十分引出し、従来の樹
脂を用いた場合と比較し、複合材料強度を向上させうる
ことを見出した。
【0070】構成要素[C]の素材としての弾性率およ
び降伏強度は、構成要素[B]の樹脂硬化物の弾性率お
よび降伏強度より低いほうが、複合材料の耐衝撃性を高
めるために好ましい。しかし、一方で、構成要素[C]
の弾性率がエラストマーのように低い場合、複合材料成
形中の圧力、温度あるいは昇温速度等の条件変化によっ
て変形しやすく、積層板層間の厚みがばらついたり、成
形条件変化に伴なって変化しやすくなり、結果として複
合材料の物性が不安定となる。したがって、構成要素
[C]の微粒子素材の弾性率の範囲は、構成要素
[A]、[B]の種類やプリプレグの積層構成によって
も異なるため一概に言えないが、80〜400kg/m
2 の範囲にあることが成形条件変化に鈍感な安定した
高靭性を得るために好ましい。
【0071】構成要素[C]の形状は球状に限られるも
のではない。もちろん球状であってもよいが、樹脂塊を
粉砕した微粉体や、スプレードライ法、再沈殿法で得ら
れる微粒子のごとく形状さまざまの状態で一向に差し支
えない。その他、繊維を短く切断したミルドファイバー
状でも、また針状、ウイスカー状でも差し支えない。
【0072】微粒子の大きさは粒径で表現されるが、こ
の場合の粒径とは遠心沈降速度法などで求められる体積
平均粒径を意味する。構成要素[C]の粒径は、複合材
料となった時、強化繊維の配列を著しく乱すほど大きく
なければよい。強化繊維の配列を乱したり、積層して得
られる複合材料の層間を必要以上に厚くするため複合材
料としたときの物性を低下させることのないようにする
観点から、粒径は100μm以下が好ましく、より適切
な層間厚みを形成する観点から、3〜70μmの範囲が
さらに好ましい。
【0073】構成要素[C]の量としては、その添加に
よって高靭性化効果を奏する一方、ベース樹脂との混合
を容易とし、また、プリプレグのタック性、ドレープ性
が低下するのを防ぐ観点から、構成要素[B]と構成要
素[C]との総和の樹脂に対して1〜50重量%の範囲
が適している。
【0074】特に、構成要素[B]の剛性を複合材料の
圧縮強度の発現に活かしたまま、破断伸度が高く高靭性
を有する構成要素[C]の微粒子で複合材料の層間を高
靭化するような目的で使用する場合には、2〜20重量
%の範囲が好適である。
【0075】構成要素[C]の素材は[B]に不溶かつ
エラストマー成分を含有しないものであれば、熱可塑性
樹脂、熱硬化性樹脂から無機微粒子にいたるまで広く用
いることができるが、特に適しているのは、熱可塑性樹
脂の微粒子である。微粒子として用いる熱可塑性樹脂と
しては、主鎖に、炭素炭素結合、アミド結合、イミド結
合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、
ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン
結合、イミダゾール結合、カルボニル結合から選ばれる
結合を有する熱可塑性樹脂が代表的である。具体的に
は、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリスチロー
ルに代表されるビニル系樹脂、ポリアミド、ポリアラミ
ド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボナー
ト、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィ
ド、ポリアリレート、ポリベンズイミダゾール、ポリイ
ミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリス
ルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテル
ケトンのようなエンジニアリングプラスチックに属する
熱可塑性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表さ
れる炭化水素系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース
に代表されるセルロース誘導体が挙げられる。特に、ポ
リアミド、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリフ
ェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリア
リレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミ
ド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテル
スルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミ
ド、ポリベンズイミダゾールは耐衝撃性に優れるので、
本発明に使用する微粒子の素材として適している。
【0076】この中でも、ポリアミド、ポリアミドイミ
ド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリ
スルホンは、高靭性かつ耐熱性良好であるため本発明に
好適である。ポリアミドの靭性は特に優れており、非晶
質透明ナイロンに属するものを使用することにより、耐
熱性をも兼ね備えることができる。
【0077】構成要素[C]として熱可塑性樹脂と熱硬
化性樹脂との組合せによりセミIPN化した樹脂微粒子
もしくはセミIPN化しうる樹脂微粒子も微粒子そのも
のが耐溶剤性に優れ、複合材料全体の耐溶剤性を維持す
るため好ましい。ここで、IPNとはインターペネトレ
ーティングポリマーネットワーク(InterpenetratingPo
lymer Network)の略で、架橋高分子同士の相互侵入網
目構造をいい、一方、セミIPNとは、架橋高分子と直
鎖状高分子との相互侵入網目構造をいう。
【0078】このようなセミIPN化するための手段と
しては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を加熱溶融さ
せ、均一に混合したのち冷却してブロック状にする方
法、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を共通溶媒に溶解さ
せ、均一に混合したのち溶媒を揮発させて除去しブロッ
ク状にする方法、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を共通
溶媒に溶解させ、均一に混合したのち霧状に飛散させ乾
燥させる、いわゆるスプレードライ法、熱可塑性樹脂
と熱硬化性樹脂を共通溶媒に溶解させ、均一に混合した
のち両樹脂を溶解しない溶媒中に霧状に投入し沈殿させ
る、いわゆるスプレー再沈法、熱可塑性樹脂と熱硬化
性樹脂を共通溶媒に溶解させ、溶液を攪拌しながら、該
溶液に相溶しにくい分散媒を徐々に加えることにより該
溶液を分散媒中に粒子分散させ、溶媒を除去したのちに
微粒子として捕収する方法などがある。
【0079】熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とをセミIP
N化したものを微粒子とすれば、その組成を選ぶことに
より、粒子自体の靭性を保ちつつ耐溶剤性やマトリック
ス樹脂との接着性の良好な微粒子を得ることができる。
但し、このセミIPN化は複合材料成形中に達成される
ものであってもさしつかえない。これを構成要素[C]
としたプリプレグを成形して得た複合材料は耐衝撃性、
耐溶剤性および耐疲労性に優れるので好ましい。
【0080】セミIPN化樹脂微粒子における熱可塑性
樹脂と熱硬化性樹脂との比率は、微粒子の耐溶剤性を優
れたものとする一方、微粒子の靭性不足により複合材料
の耐衝撃特性が劣るのを防止する観点から、熱可塑性樹
脂の重量分率は30〜99%、さらには50〜98%が
好ましい。
【0081】セミIPN化樹脂微粒子においては、熱硬
化性樹脂の重量分率が2%程度の少量でも耐溶剤性の向
上効果は意外にも大きく、また疲労特性も急激に向上す
る。
【0082】一方、用いる熱可塑性樹脂微粒子は、熱硬
化性樹脂とのセミIPN化によって靭性が低下するもの
と一般に考えられ、複合材料の耐衝撃性は熱可塑性樹脂
微粒子そのものを用いた場合と比べて低下するものと通
常予想されるけれども、熱硬化性樹脂の重量分率の小さ
い範囲においては、意外にも耐衝撃性は向上する傾向に
ある。これは、セミIPN化によって微粒子とマトリッ
クス樹脂である構成要素[B]との接着性が向上するた
めと考えられる。
【0083】構成要素[C]が、ポリアミドとエポキシ
樹脂によりセミIPNを形成した、もしくはセミIPN
を形成しうる微粒子である場合、すなわち、耐衝撃特
性、耐溶剤性、疲労特性、耐熱性等のバランスがとれた
最適の複合材料が得られる。
【0084】構成要素[C]として、熱硬化性樹脂微粒
子を用いることもできる。この場合、微粒子そのものの
靭性は、熱可塑性樹脂に比べて低下するが、構成要素
[B]からなるマトリックス樹脂の靭性が十分高いもの
と組合わせる場合には、微粒子そのものの靭性が大きく
なくても、微粒子の存在によって形成される層間の樹脂
に富む部分全体の靭性が高いため、複合材料としての耐
衝撃性が大きく向上する。また、熱可塑性樹脂に比べて
耐熱性が高いという利点も有する。かかる熱硬化性樹脂
としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが好まし
く用いられる。
【0085】このような構成要素[C]を表面に局在化
させたプリプレグの製造方法としては、特開平1−26
651号公報、特開昭63−170427号公報、特開
昭63−170428号公報に示されているごとく、構
成要素[C]を予め作製した強化繊維とマトリックス樹
脂からなるプリプレグの表面に付着させる方法、構成要
素[C]をマトリックス樹脂のなかに均一混合してお
き、強化繊維に含浸させる過程において繊維間隙による
ろ過現象によりプリプレグ表面に局在化させる方法、マ
トリックス樹脂の一部を強化繊維に含浸させた一次プリ
プレグをまず作製し、次に構成要素[C]を高濃度に含
有する残りのマトリックス樹脂のフィルムを一次プリプ
レグの表面に貼りつける方法などを採用することができ
る。
【0086】以下、実施例により本発明をより詳細に説
明する。◎
【0087】
【実施例】
[実施例1] <A部:反応性ポリイミドオリゴマの合成>窒素導入口
および温度計、撹拌器および脱水トラップを装着した30
00ml容のセパラブルフラスコに窒素置換のもとで218g
(0.75mol) の1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
(以下、APB)、33g(0.094mol) の9,9'- ビス(4- ア
ミノフェニル) フルオレン(以下、FDA)、122g(0.0
94mol)のNH2 当量650 のアミノ末端ジメチルシロキサ
ン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製BY-16-
853 )を2000mlのN-メチル-2- ピロリドン(以下、NM
P)に撹拌溶解した。そこへ固体状のビフェニルテトラ
カルボン酸二無水物を250g(0.85mol) を少しずつ加え、
室温で3時間撹拌した後、120 ℃に昇温し2時間撹拌し
た。フラスコを室温に戻しトリエチルアミン50mlとトル
エン50mlを加えた後、再び昇温し160 ℃で共沸脱水する
と約30mlの水が得られた。この反応混合物を冷却した
後、倍量のNMPで希釈し、ゆっくりと20l のアセトン
中に注ぎアミン末端シロキサンポリイミドオリゴマーを
固体生成物として沈殿させた。そして、その沈殿物を20
0 ℃で真空乾燥した。このオリゴマーの数平均分子量(M
n)をジメチルホルムアミド(以下、DMF)溶媒を用い
てゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、G
PC)で測定すると、ポリエチレングリコール(以下、
PEG)換算で4900であった。またガラス転移点は示差
熱分析計(以下、DSC)によると189 ℃であった。ま
た、シロキサン骨格の導入およびアミン末端であること
はNMRスペクトルおよびIRスペクトルから確認でき
た。
【0088】<B部:構成要素Bの樹脂調製および樹脂
物性測定>ビーカーに上記A部のシロキサンポリイミド
オリゴマを25部およびテトラグリシジルジアミノジフェ
ニルメタン(住友化学工業(株)製ELM434)40
部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポ
キシ(株)製エピコート825)30部、ビスフェノール
F型エポキシ樹脂(大日本インキ工業(株)製エピクロ
ン830)30部をはかりとった。それを120 ℃で2時間
加熱することによりオリゴマーをエポキシ樹脂に溶解し
た。次いで、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン
(住友化学工業(株)製スミキュアS)を42部加え、14
0 ℃で10分間混合し溶解させた。
【0089】その容器に真空ポンプを接続し真空脱泡し
た後、内容物をあらかじめ120 ℃に予熱しておいた離型
処理を施したモールド(空所の寸法は120 ×120 ×3mm
)に注ぎ込んだ。オーブン中で130 ℃,2時間+180
℃,2時間硬化反応させて3mm厚の樹脂硬化板を調製し
た。
【0090】得られた硬化樹脂のTgは205 ℃であっ
た。ここから前記のサンプルを切り出し、破壊歪エネル
ギー解放率GICを測定したところ600J/m2 であり、曲げ
弾性率は370kg/mm2 であった。また、60×10×2mm の樹
脂板を20時間煮沸したところその吸水率は3.1 %であ
った。
【0091】硬化樹脂の研磨面をオスミウム酸染色し走
査型電子顕微鏡で反射電子像を観察すると、基本的には
2つの相がともに連続相を形成し、さらにその内部にそ
れぞれ他相の分散相が存在する複雑なミクロ相分離構造
がみられた。さらに同じ視野をX線マイクロアナライザ
ーによって元素分析したところ、写真で黒くみえるハイ
コントラスト相にシリコン元素が濃く分布していること
がわかった。
【0092】<C部:プリプレグおよび複合材料の調製
と物性測定>まず、ニーダで次の樹脂を調製した。A部
のシロキサンポリイミドオリゴマー25部、テトラグリシ
ジルジアミノジフェニルメタン(住友化学工業(株)製
ELM434)40部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(油化シェルエポキシ(株)製エピコート825)30部
およびビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ
工業(株)製エピクロン830)30部をはかりとった。
それを120 ℃で2時間加熱することによりオリゴマーを
エポキシ樹脂に溶解した。次いで、70℃まで冷却し、
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(住友化学工業
(株)製スミキュアS)を42部加え混合した。
【0093】この樹脂組成物をシリコーン離型剤をあら
かじめ薄く塗付した離型紙に一定の厚さでコーティング
し、32 g/m2 の目付の樹脂フィルムを得た。炭素繊維
“トレカ”T800H (東レ(株)製)をもちいて、先に調
製した樹脂コーティング紙2枚のあいだに炭素繊維を1
方向に引き揃えてから圧着させて樹脂を繊維に含浸し一
次プリプレグとした。このとき炭素繊維の目付は190g/m
2 とした。
【0094】次に、上記樹脂と同様の樹脂組成物を再度
68部調製し、60℃のニーダー中で非晶性透明ナイロン
(三菱化成(株)製グリルアミドTR−55)の平均粒
径13μmの微粒子32部と混合した。この混合物を離型
紙上にコーティングして20 g/m2 の目付の樹脂フィルム
を得た。
【0095】前記一次プリプレグの両面にこの微粒子混
合樹脂フィルムを重ねあわせ、ロールで押えて貼りつ
け、プリプレグを得た。このプリプレグはタック性もド
レープ性も良好であった。
【0096】このプリプレグを疑似等方構成(+45°/0°
/-45°/90 °) 3 s で24層に積層し、通常の真空バッ
グオートクレーブ成形法を用い、6 kg/cm2 の加圧下で
1.5℃/min の昇温速度で180℃まで昇温し、180
℃,2時間の加熱成型により硬化板を得た。その繊維容
積は56vol%であり、樹脂重量分率は35.1wt%で
あった。成形後、断面を光学顕微鏡で観察すると、グリ
ルアミド微粒子は積層板の層間部分に集中的に存在して
いることが確認できた。拡大倍率200倍の断面写真を
図2に示した。この断面写真から層間厚みの平均値を計
算したところ27.9μmであり、層間厚みのばらつき
を示すCV値を計算したところ27%であった。
【0097】成型板から、4インチ×6インチの試験片
を切り出した。パネルに5/8インチ直径のインデンタ
ーを用いて、1500in・lb/in の落錘衝撃エネルギーを与
えた。キャノン/ホロニックス社製超音波探傷映像装置
M400Bにて損傷面積を測定したところ0.35inch
2 であった。ついでASTM D−695に従い、圧縮
試験を行った結果、58ksi の残存圧縮強度を示した。
硬化板の研磨面をオスミウム酸染色し、走査形電子顕微
鏡で反射電子像を観察すると、樹脂部分にミクロ相分離
構造が認められた。
【0098】同一のプリプレグを用いて成型条件(硬化
温度、昇温速度)を変化させた場合のCAI、および損
傷面積を表1に示す。優れた耐衝撃性が成型条件変化に
対し安定して発現することがわかる。
【0099】
【表1】 また、プリプレグを一方向に20層積層したものについ
てコンポジットの層間靭性を測定したところ引き剥がし
モードの靭性GICが530J/m2 (ダブルカンチレバ
ービーム法)、すべりモードの靭性GIIC が3330J
/m2 (エンドノッチトフレクシャ法)であった。
【0100】さらに、(0) 2 /(90) 8 /(0)2 の積層構成
の硬化板を作製し長さ9インチ×幅1インチの寸法に切
出した後、タブを付け、引張り試験を行った。スパン
5.7インチの間の90゜層に入るクラック数を測定し
たところ歪1.3%の時点におけるクラック数は4個で
あった。
【0101】上記のCAI試験同様の積層構成の硬化板
を30mm×40mmの寸法に切出し、冷却加熱繰返し
のサーマルサイクル試験を行った。−196℃(液体窒
素浸漬)と100℃の環境に3分ずつさらすことを30
回繰返したが、クラック発生は認められなかった。
【0102】プリプレグを単一方向に6枚積層し、成形
した硬化板を用いて0゜引張強度を測定したところ45
2ksi であった。また、(±25/±25/90)s の構成で
10層に積層し、成形した硬化板を用いて引張試験を行
い、最初に板端剥離が生じる強度を測定したところ、7
0.2ksi であった。 [実施例2] <A部:反応性ポリイミドオリゴマの合成>窒素導入口
および温度計、撹拌器および脱水トラップを装着した30
00ml容のセパラブルフラスコに窒素置換のもとで140g
(0.34mol) の2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ) フェニ
ル] プロパン(以下、BAPP)、176g(0.34mol) の2,
2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ) フェニル] ヘキサフル
オロプロパン(以下、HFBAPP)[和歌山精化工業
(株)製]を1200mlのNMPに撹拌溶解した。そこへビ
フェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、S−BPD
A)[三菱化成(株)製]180g(0.61mol) を少しずつ加
え、室温で3時間撹拌した後、120 ℃に昇温し1時間撹
拌した。フラスコを室温に戻しトリエチルアミン50mlと
トルエン50mlを加えた後、再び昇温し160 ℃で共沸脱水
すると約22mlの水が得られた。この反応混合物を冷却し
た後、倍量のNMPで希釈し、ゆっくりと20l のアセト
ン中に注ぎアミン末端ポリイミドオリゴマーを固体生成
物として沈殿させた。そして、その沈殿物を180 ℃で真
空乾燥した。このオリゴマーの数平均分子量(Mn)をDM
F溶媒を用いてGPCで測定すると、PEG換算で4900
であった。またガラス転移点は示差熱分析計(以下、D
SC)によると239 ℃であった。また、イミド化率が約
95%であること、およびアミン末端率が約95%であ
ることがNMRスペクトルから判った。
【0103】<B部:構成要素Bの樹脂調製および樹脂
物性測定>ビーカーに上記A部のポリイミドオリゴマー
を27部およびトリグリシジルアミノフェノール(油化シ
ェルエポキシ(株)製、エピコートYX−4)50部、ビ
スフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ工業
(株)製エピクロン830)50部をはかりとった。それ
を120 ℃で2時間加熱することによりオリゴマーをエポ
キシ樹脂に溶解した。次いで、4,4’−ジアミノジフ
ェニルスルホン(住友化学工業(株)製スミキュアS)
を48部加え、140 ℃で10分間混合し溶解した。
【0104】その容器に真空ポンプを接続し真空脱泡し
た後、内容物をあらかじめ120 ℃に予熱しておいた離型
処理を施したモールド(空所の寸法は120 ×120 ×3mm
)に注ぎ込んだ。オーブン中で130 ℃,2時間、さら
に、180 ℃2時間硬化反応させて3mm 厚の樹脂硬化板を
調製した。
【0105】得られた硬化樹脂のTgは204 ℃であっ
た。ここから前記のサンプルを切り出し、破壊歪エネル
ギー解放率GICを測定したところ640J/m2 であり、曲げ
弾性率は360kg/mm2 であった。また、60×10×2mm の樹
脂板を20時間煮沸したところその吸水率は3.2 %であ
った。
【0106】硬化樹脂の研磨面をオスミウム酸染色し走
査型電子顕微鏡で反射電子像を観察すると、オリゴマー
に富む相が連続相をエポキシ樹脂に富む相が分散相を形
成するミクロ相分離構造がみられた。さらに同じ視野を
X線マイクロアナライザーによって元素分析したとこ
ろ、写真で黒くみえるハイコントラスト相にフッ素元素
が濃く分布していることがわかった。
【0107】<C部:プリプレグおよび複合材料の調製
と物性測定>まず、ニーダーで次の樹脂を調製した。A
部のポリイミドオリゴマーを27部およびトリグリシジル
アミノフェノール(油化シェルエポキシ(株)製、エピ
コートYX−4)50部、ビスフェノールF型エポキシ樹
脂(大日本インキ工業(株)製、エピクロン830)50
部をはかりとった。それを120 ℃で2時間加熱すること
によりオリゴマをエポキシ樹脂に溶解した。次いで、7
0℃まで冷却し、4,4’−ジアミノジフェニルスルホ
ン(住友化学工業(株)製スミキュアS)を48部加え混
合した。
【0108】この樹脂組成物をシリコーン離型剤をあら
かじめ薄く塗付した離型紙に一定の厚さでコーティング
し、32 g/m2 の目付の樹脂フィルムを得た。炭素繊維
“トレカ”T800H (東レ(株)製)をもちいて、先に調
製した樹脂コーティング紙2枚のあいだに炭素繊維を1
方向に引き揃えてから圧着させて樹脂を繊維に含浸し一
次プリプレグとした。このとき炭素繊維の目付は190g/m
2 とした。
【0109】次に、上記樹脂と同様の樹脂組成物を再度
68部調製し、60℃のニーダー中で、非晶質透明ナイロ
ン(三菱化成(株)製グリルアミドTR−55)、ビス
フェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ
(株)製エピコート828)、及びポリアミド系硬化剤
(富士化成(株)製トーマイド#296)の重量分率が
96/3/1の割合からなる平均粒径16μmのセミI
PN微粒子32部と混合した。この混合物を離型紙上にコ
ーティングして20 g/m2 の目付の樹脂フィルムを得た。
【0110】前記一次プリプレグの両面にこの微粒子混
合樹脂フィルムを重ねあわせ、ロールで押えて貼りつ
け、プリプレグを得た。このプリプレグはタック性もド
レープ性も良好であった。
【0111】このプリプレグを疑似等方構成(+45°/0°
/-45°/90 °) 3 s で24層に積層し、通常の真空バッ
グオートクレーブ成形法を用い、6 kg/cm2 の加圧下で
1.5℃/min の昇温速度で180℃まで昇温し、180
℃,2時間の加熱成型により硬化板を得た。その繊維容
積は55.8vol%であり、樹脂重量分率は35.2wt%で
あった。成形後、断面を光学顕微鏡で観察すると、グリ
ルアミド微粒子は積層板の層間部分に集中的に存在して
いることが確認できた。拡大倍率200倍の断面写真か
ら層間厚みの平均値を計算したところ20.3μmであ
り、層間厚みのばらつきを示すCV値を計算したところ
38.5%であった。
【0112】成型板から、4″×6″の試験片を切り出
し、実施例1におけるのと同様の条件で、1500in・lb/i
n の落錘衝撃エネルギーを与えた。キャノン/ホロニッ
クス社製超音波探傷映像装置M400Bにて損傷面積を
測定したところ0.33inch2 であった。ついで圧縮試
験を行った結果、58ksi の残存圧縮強度を示した。硬
化板の研磨面をオスミウム酸染色し、走査形電子顕微鏡
で反射電子像を観察すると、樹脂部分にミクロ相分離構
造が認められた。
【0113】プリプレグを単一方向に6枚積層し、成形
した硬化板を用いて0゜引張強度を測定したところ44
0ksi であった。また、(±25/±25/90)s の構成で
10層に積層し、成形した硬化板を用いて引張試験を行
い、最初に板端剥離が生じる強度を測定したところ、6
8.7ksi であった。 [実施例3] <A部:反応性ポリイミドオリゴマの合成>392g(0.91m
ol) のビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル] スルホ
ン(BAPS−M)、39g(0.11mol)のFDA、147g(0.1
1mol) のNH2 当量650 のアミノ末端ジメチルシロキサ
ン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製BY-16-
853)及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物を300g
(1.02mol) を原料モノマーとして用いた他は実施例1と
同様の手順でシロキサンポリイミドオリゴマーを合成し
た。
【0114】このオリゴマーの数平均分子量(Mn ) は、
PEG換算で5500であった。またガラス転移点はDSC
によると223 ℃であった。また、シロキサン骨格の導入
およびアミン末端であることはNMRスペクトルおよび
IRスペクトルから確認できた。
【0115】<B部:構成要素Bの樹脂調製および樹脂
物性測定>A部のシロキサンポリイミドオリゴマー30部
をO,O'- ジアリルビスフェノールA31部に加え、140 ℃
で2時間加熱した。そこへジフェニルメタンビスマレイ
ミド39部を均一混合し溶解させた。その容器に真空ポン
プを接続し真空脱泡した後、内容物をあらかじめ120 ℃
に予熱しておいた離型処理を施したモールドに注ぎ込ん
だ。オーブン中で180 ℃で2時間硬化反応させて3mm 厚
の樹脂硬化板を調製した。さらにこの硬化板に200 ℃で
2時間、250 ℃で6時間のポストキュアを施した。得ら
れた硬化樹脂のTgは295 ℃であった。また、破壊歪エ
ネルギー解放率GICは800J/m2 であり、曲げ弾性率は38
0kg/mm2 であった。また、60×10×2mm の樹脂板を20
時間煮沸したところその吸水率は2.0 %であった。
【0116】硬化樹脂の研磨面をオスミウム酸染色し走
査型電子顕微鏡で反射電子像を観察すると、オリゴマリ
ッチ相が連続相となるミクロ相分離構造を形成してい
た。
【0117】<C部:プリプレグおよび複合材料の調製
と物性測定>まず、A部のポリイミドオリゴマ30部とO,
O'- ジアリルビスフェノールA31部、ジフェニルメタン
ビスマレイミド39部をニーダー中で均一混合した。
【0118】この樹脂組成物をシリコン離型剤をあらか
じめ薄く塗付した離型紙に一定の厚さでコーティング
し、32 g/m2 の目付の樹脂フィルムを得た。炭素繊維
“トレカ”T800H (東レ(株)製)をもちいて、先に調
製した樹脂コーティング紙2枚のあいだに炭素繊維を1
方向に引き揃えてから圧着させて樹脂を繊維に含浸し一
次プリプレグとした。このとき炭素繊維の目付は190g/m
2 とした。
【0119】次に、上記樹脂と同様の樹脂組成物を再度
68部調製し、60℃のニーダー中でポリアミドイミド
(三菱化成(株)製トーロン)の平均粒径27μmの微粒
子32部と混合した。この混合物を離型紙上にコーティン
グして20 g/m2 の目付の樹脂フィルムを得た。
【0120】前記一次プリプレグの両面にこの微粒子混
合樹脂フィルムを重ねあわせ、ロールで押えて貼りつ
け、プリプレグを得た。このプリプレグはタック性もド
レープ性も良好であった。
【0121】このプリプレグを疑似等方構成(+45°/0°
/-45°/90 °) 3 s で24層に積層し、通常の真空バッ
グオートクレーブ成形法を用い、6 kg/cm 2 の加圧下
で1.5 ℃/min の昇温速度で180℃まで昇温し、18
0℃,2時間の加熱成型により硬化板を得、さらに23
0℃、16時間の後効果を行った。その繊維容積は55.4
vol%であり、樹脂重量分率は35.8wt%であった。
成形後、断面を光学顕微鏡で観察すると、ポリアミドイ
ミド微粒子は積層板の層間部分に集中的に存在している
ことが確認できた。拡大倍率200倍の断面写真から層
間厚みの平均値を計算したところ24.4μmであり、
層間厚みのばらつきを示すCV値を計算したところ4
7.1%であった。
【0122】成型板から、4″×6″の試験片を切り出
し、実施例1におけるのと同様の条件で、1500in・lb/i
n の落錘衝撃エネルギーを与えた。キャノン/ホロニッ
クス社製超音波探傷映像装置M400Bにて損傷面積を
測定したところ0.83inch2 であった。ついで圧縮試
験を行った結果、53ksi の残存圧縮強度を示した。硬
化板の研磨面をオスミウム酸染色し、走査形電子顕微鏡
で反射電子像を観察すると、樹脂部分にミクロ相分離構
造が認められた。
【0123】プリプレグを単一方向に6枚積層し、成形
した硬化板を用いて0゜引張強度を測定したところ45
3ksi であった。また、(±25/±25/90)s の構成で
10層に積層し、成形した硬化板を用いて引張試験を行
い、最初に板端剥離が生じる強度を測定したところ、5
8.5ksi であった。 [実施例4]実施例1において、構成要素[B]の樹脂
調製に際し、シロキサンポリイミドオリゴマーを25部
から48部に変更した以外は、実施例1と全く同様にし
て樹脂硬化板を調製した。
【0124】得られた硬化樹脂のTgは 200℃であっ
た。ここから前記のサンプルを切り出し、破壊歪エネル
ギー解放率GICを測定したところ970J/m2 であり、曲げ
弾性率は360kg/mm2 であった。また、60×10×2mm の樹
脂板を20時間煮沸したところその吸水率は2.6 %であ
った。
【0125】また、構成要素[C]のプリプレグおよび
複合材料の調製に際し、シロキサンポリイミドオリゴマ
ーを25部から48部に変更した以外は、実施例1と全
く同様にして調整した樹脂組成物を、シリコーン離型剤
をあらかじめ薄く塗付した離型紙に一定の厚さでコーテ
ィングし、32 g/m2 の目付の樹脂フィルムを得た。炭素
繊維“トレカ”T800H (東レ(株)製)を用いて、先に
調製した樹脂コーティング紙2枚のあいだに炭素繊維を
1方向に引き揃えてから圧着させて樹脂を繊維に含浸し
一次プリプレグとした。このとき炭素繊維の目付は190g
/m2 とした。
【0126】次に、上記樹脂と同様の樹脂組成物を再度
68部調製し、60℃のニーダー中でフェノール樹脂微粒
子(鐘紡(株)製ベルパールR−800,粒径1〜30
μm)15部と混合した。この混合物を離型紙上にコーテ
ィングして20 g/m2 の目付の樹脂フィルムを得た。
【0127】前記一次プリプレグの両面にこの微粒子混
合樹脂フィルムを重ねあわせ、ロールで押えて貼りつ
け、プリプレグを得た。このプリプレグはタック性もド
レープ性も良好であった。
【0128】このプリプレグを疑似等方構成(+45°/0°
/-45°/90 °) 3 s で24層に積層し、通常の真空バッ
グオートクレーブ成形法を用い、6 kg/cm2 の加圧下で
1.5℃/min の昇温速度で180℃まで昇温し、180
℃,2時間の加熱成型により硬化板を得た。その繊維容
積は56vol%であり、樹脂重量分率は35.1wt%で
あった。成形後、断面を光学顕微鏡で観察すると、フェ
ノール樹脂微粒子は積層板の層間部分に集中的に存在し
ていることが確認できた。拡大倍率200倍の断面写真
から層間厚みの平均値を計算したところ22.0μmで
あり、層間厚みのばらつきを示すCV値を計算したとこ
ろ32.0%であった。
【0129】成型板から、4インチ×6インチの試験片
を切り出した。パネルに5/8インチ直径のインデンタ
ーを用いて、1500in・lb/in の落錘衝撃エネルギーを与
えた。キャノン/ホロニックス社製超音波探傷映像装置
M400Bにて損傷面積を測定したところ0.80inch
2 であった。ついでASTM D−695に従い、圧縮
試験を行った結果、50ksi の残存圧縮強度を示した。
硬化板の研磨面をオスミウム酸染色し、走査形電子顕微
鏡で反射電子像を観察すると、樹脂部分にミクロ相分離
構造が認められた。
【0130】また、プリプレグを一方向に20層積層し
たものについてコンポジットの層間靭性を測定したとこ
ろ引き剥がしモードの靭性GICが820J/m2 (ダブ
ルカンチレバービーム法)であった。
【0131】さらに、(0) 2 /(90) 8 /(0)2 の積層構成
の硬化板を作製し長さ9インチ×幅1インチの寸法に切
出した後、タブを付け、引張り試験を行った。スパン
5.7インチの間の90゜層に入るクラック数を測定し
たところ歪1.3%の時点におけるクラック数は2個で
あった。
【0132】上記のCAI試験同様の積層構成の硬化板
を30mm×40mmの寸法に切出し、冷却加熱繰返し
のサーマルサイクル試験を行った。−196℃(液体窒
素浸漬)と100℃の環境に3分ずつさらすことを30
回繰返したが、クラック発生は認められなかった。
【0133】プリプレグを単一方向に6枚積層し、成形
した硬化板を用いて0゜引張強度を測定したところ44
9ksi であった。また、(±25/±25/90)s の構成で
10層に積層し、成形した硬化板を用いて引張試験を行
い、最初に板端剥離が生じる強度を測定したところ、5
8.3ksi であった。 [比較例1]ベース樹脂としてポリイミドオリゴマを除
いた組成物、すなわち、テトラグリシジルジアミノジフ
ェニルメタン(住友化学工業(株)製ELM434)40
部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポ
キシ(株)製エピコート825)30部、ビスフェノール
F型エポキシ樹脂(大日本インキ工業(株)製エピクロ
ン830)30部および4,4’−ジアミノジフェニルス
ルホン(住友化学工業(株)製スミキュアS)を42部か
らなる樹脂組成物を用いた。その他は実施例1と同様の
手順を繰り返した。1500インチ・ポンド/インチの
落錘衝撃を与えたのち、超音波探傷機により損傷面積を
測定したところ0.78inch2 であった。ついで、AS
TM D−695に従い衝撃後の圧縮強度を測定したと
ころ50ksi であった。硬化板の研磨面をオスミウム酸
染色し、走査形電子顕微鏡で反射電子像を観察すると、
エポキシ樹脂硬化物には、ミクロ相分離構造は認められ
なかった。
【0134】また、プリプレグを一方向に20層積層し
たものについてコンポジットの層間靭性を測定したとこ
ろ引き剥がしモードの靭性GICが260J/m2 (ダブ
ルカンチレバービーム法)、すべりモードの靭性GIIC
が2170J/m2 (エンドノッチトフレクシャ法)で
あった。
【0135】さらに、(0) 2 /(90) 8 /(0)2 の積層構成
の硬化板を作製し長さ9インチ×幅1インチの寸法に切
出した後、タブを付け、引張り試験を行った。スパン
5.7インチの間の90゜層に入るクラック数を測定し
たところ歪1.3%の時点におけるクラック数は14個
と多かった。
【0136】上記のCAI試験同様の積層構成の硬化板
を30mm×40mmの寸法に切出し、冷却加熱繰返し
のサーマルサイクル試験を行った。−196℃(液体窒
素浸漬)と100℃の環境に3分ずつさらすことを30
回繰返したところ、多数のクラックが硬化板表面に発生
した。
【0137】プリプレグを単一方向に6枚積層し、成形
した硬化板を用いて0゜引張強度を測定したところ40
5ksi であった。また、(±25/±25/90)s の構成で
10層に積層し、成形した硬化板を用いて引張試験を行
い、最初に板端剥離が生じる強度を測定したところ、4
9.9ksi であった。
【0138】
【発明の効果】本発明によるプリプレグは、プリプレグ
としてのタック性、ドレープ性を確保しつつ、加熱成型
し複合材料としたときに高い耐熱性を有し、かつ卓越し
た高い耐衝撃性、層間靭性を有する。そのため、衝撃付
与時に生じる損傷が小さく、残存圧縮強度が高い。しか
も、その高い耐衝撃性が昇温速度や硬化温度、圧力など
の成形条件変化にもかかわらず安定して発現する優れた
繊維強化複合材料を提供しうる。また、この繊維強化複
合材料は繊維軸に対して90゜方向に引張った際のクラ
ック発生や冷却加熱の繰返しによるクラック発生が著し
く抑えられ、耐疲労特性に優れ、さらに、交差積層板を
引張った際の板端剥離が著しく抑制され、しかも繊維方
向の引張強度も著しく高いという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】層間厚みの平均値およびばらつきの測定法を説
明する概念図である。
【図2】実施例1で得たプリプレグの拡大断面図であ
る。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/24

Claims (19)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の構成要素[A]、[B]および[C]
    からなり、[C]が表面に局在化していることを特徴と
    するプリプレグ。 [A]:強化繊維 [B]:熱硬化性樹脂可溶の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹
    脂とからなりミクロ相分離形成能を有する樹脂組成物 [C]:[B]に不溶かつエラストマー成分を含有しな
    い微粒子
  2. 【請求項2】構成要素[C]の90%以上がプリプレグ
    表面からプリプレグの厚さの15%の深さの範囲内に局
    在化していることを特徴とする請求項1記載のプリプレ
    グ。
  3. 【請求項3】構成要素[C]が熱可塑性樹脂からなる微
    粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2記
    載のプリプレグ。
  4. 【請求項4】構成要素[C]がポリアミド、ポリアミド
    イミド及びポリエーテルイミドからなる群の少なくとも
    1種の熱可塑性樹脂からなる微粒子であることを特徴と
    する請求項1または請求項2記載のプリプレグ。
  5. 【請求項5】構成要素[C]が熱硬化性樹脂からなる微
    粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2記
    載のプリプレグ。
  6. 【請求項6】構成要素[C]がフェノール樹脂からなる
    微粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2
    記載のプリプレグ。
  7. 【請求項7】構成要素[C]がエポキシ樹脂からなる微
    粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2記
    載のプリプレグ。
  8. 【請求項8】構成要素[B]中の熱硬化性樹脂に可溶の
    熱可塑性樹脂が反応性ポリイミドであることを特徴とす
    る請求項1〜請求項のいずれかに記載のプリプレグ。
  9. 【請求項9】構成要素[B]中の熱硬化性樹脂がエポキ
    シ樹脂またはビスマレイミド樹脂であることを特徴とす
    る請求項1〜請求項のいずれかに記載のプリプレグ。
  10. 【請求項10】次の構成要素[A]、[B’]および
    [C]からなり、構成要素[C]が積層層間部に局在化
    していることを特徴とする複合材料。 [A]:強化繊維 [B’]:熱硬化性樹脂を主成分とする相と熱可塑性樹
    脂を主成分とする相にミクロ相分離した構造を有する樹
    脂硬化物 [C]:[B]に不溶かつエラストマー成分を含有しな
    い微粒子
  11. 【請求項11】構成要素[C]を含む積層層間部の平均
    厚みが10〜70μmであり、層間部厚みのばらつきが
    CV値50以下であることを特徴とする請求項1記載
    の複合材料。
  12. 【請求項12】構成要素[C]の90%以上が積層層間
    部に局在化していることを特徴とする請求項1または
    請求項1記載の複合材料。
  13. 【請求項13】構成要素[C]が熱可塑性樹脂からなる
    微粒子であることを特徴とする請求項1または請求項
    記載の複合材料。
  14. 【請求項14】構成要素[C]がポリアミド、ポリアミ
    ドイミド及びポリエーテルイミドからなる群の少なくと
    も1種の熱可塑性樹脂からなる微粒子であることを特徴
    とする請求項1〜請求項1のいずれかに記載の複合
    材料。
  15. 【請求項15】構成要素[C]が熱硬化性樹脂からなる
    微粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項1
    のいずれかに記載の複合材料。
  16. 【請求項16】構成要素[C]がフェノール樹脂からな
    る微粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項1
    のいずれかに記載の複合材料。
  17. 【請求項17】構成要素[C]がエポキシ樹脂からなる
    微粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項1
    のいずれかに記載の複合材料。
  18. 【請求項18】構成要素[B’]中の熱可塑性樹脂相が
    主としてポリイミドからなることを特徴とする請求項1
    〜請求項17のいずれかに記載の複合材料。
  19. 【請求項19】構成要素[B’]中の熱硬化性樹脂がエ
    ポキシ樹脂またはビスマレイミド樹脂であることを特徴
    とする請求項1〜請求項18のいずれかに記載の複合
    材料。
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