JPH0751555A - 相分離した膜 - Google Patents

相分離した膜

Info

Publication number
JPH0751555A
JPH0751555A JP5208831A JP20883193A JPH0751555A JP H0751555 A JPH0751555 A JP H0751555A JP 5208831 A JP5208831 A JP 5208831A JP 20883193 A JP20883193 A JP 20883193A JP H0751555 A JPH0751555 A JP H0751555A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phase
membrane
segmented polyurethane
drug
gelatin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP5208831A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3168367B2 (ja
Inventor
Yasuo Shikinami
保夫 敷波
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Takiron Co Ltd
Original Assignee
Takiron Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Takiron Co Ltd filed Critical Takiron Co Ltd
Priority to JP20883193A priority Critical patent/JP3168367B2/ja
Priority to EP94921838A priority patent/EP0663235B1/en
Priority to CA002145646A priority patent/CA2145646C/en
Priority to US08/406,993 priority patent/US5563191A/en
Priority to DE69434113T priority patent/DE69434113T2/de
Priority to PCT/JP1994/001254 priority patent/WO1995003879A1/ja
Publication of JPH0751555A publication Critical patent/JPH0751555A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3168367B2 publication Critical patent/JP3168367B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/70Web, sheet or filament bases ; Films; Fibres of the matrix type containing drug
    • A61K9/7023Transdermal patches and similar drug-containing composite devices, e.g. cataplasms
    • A61K9/703Transdermal patches and similar drug-containing composite devices, e.g. cataplasms characterised by shape or structure; Details concerning release liner or backing; Refillable patches; User-activated patches
    • A61K9/7084Transdermal patches having a drug layer or reservoir, and one or more separate drug-free skin-adhesive layers, e.g. between drug reservoir and skin, or surrounding the drug reservoir; Liquid-filled reservoir patches
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D67/00Processes specially adapted for manufacturing semi-permeable membranes for separation processes or apparatus
    • B01D67/0002Organic membrane manufacture
    • B01D67/0023Organic membrane manufacture by inducing porosity into non porous precursor membranes
    • B01D67/003Organic membrane manufacture by inducing porosity into non porous precursor membranes by selective elimination of components, e.g. by leaching
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/14Dynamic membranes
    • B01D69/141Heterogeneous membranes, e.g. containing dispersed material; Mixed matrix membranes
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D71/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by the material; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D71/06Organic material
    • B01D71/54Polyureas; Polyurethanes
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D71/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by the material; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D71/06Organic material
    • B01D71/74Natural macromolecular material or derivatives thereof
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D2325/00Details relating to properties of membranes
    • B01D2325/34Molecular weight or degree of polymerisation

Abstract

(57)【要約】 【目的】 微小量の薬物やその他の化学物質の透過速度
制御や透過量の調節を容易に行える相分離した膜を提供
する。 【構成】 架橋されたゼラチン相1と未架橋のセグメン
ト化ポリウレタン相2が混在して相分離した構成とす
る。セグメント化ポリウレタン相は常温では固体状であ
り、ヒトの皮膚温度(30〜37℃)以上では液状とな
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薬物や他の化学物質の
透過膜等として使用される相分離した膜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、経皮投与用貼付薬剤に用いる
薬物放出制御膜(薬物透過膜)として、エチレン−酢酸
ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリエチレン、エチ
ルセルローズなどの高分子膜やその多孔膜、或は、ゼラ
チン膜などが知られている。ゼラチン膜には、ゼラチン
水溶液とデキストラン水溶液に架橋剤を加えて成膜し、
乾燥後、水に浸漬してデキストランを除去した多孔質の
膜や、ゼラチン水溶液にグリセリンと架橋剤を加えて成
膜、乾燥したもの等があり、これらのゼラチン膜は皮膚
に対する刺激がなく、カブレも生じないので、この点か
らすれば上記の高分子膜よりも有利と考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ゼラチン膜は、微量の薬物が膜内を移動するときの速度
制御や透過量を調節することが困難であり、同様に上記
の高分子膜はそれにも増して調節が困難であった。
【0004】経皮投与用の薬物には、極く微量をかなり
の時間をかけて徐々に皮膚に吸収させ膜る必要のあるも
のがあり、この場合は皮膚への吸収量をかなり厳しくコ
ントロールする必要がある。従って、従来のゼラチン膜
や高分子膜のように微量薬物の速度制御や透過量の調節
を厳しくコントロールできない膜は、そのような制御を
必要とする薬物の放出制御膜(透過膜)として使用でき
ないという問題があった。
【0005】本発明は上記の問題に鑑みてなされたもの
で、その目的とするところは、微小量の薬物その他の化
学物質の透過速度制御や透過量の調節を容易に行える相
分離した膜を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】相分離した膜(以下、単
に相分離膜という)とは、膜内に二つ或はそれ以上の異
なった相が混在した状態の膜である。相の境界面は物理
的に弱く、ここから透過がおこると考えられている。
【0007】化学的に異なるポリマーを組合わせた多成
分系(multi-component polymersystems )であるポリ
マーアロイ(polymer alloys)は、異種のポリマーが共
有結合でつながったブロックやグラフトポリマーのミク
ロな相分離構造をとるグループと、異種ポリマーがマク
ロに混在して相分離した構造をとるポリマーブレンドの
グループに分けられる。この相転移は幅広い温度域にわ
たってゆっくりと進行し、結晶化温度(Tc)の高いも
のから相分離を起こし易い。
【0008】本発明の相分離膜は、後者のポリマーブレ
ンドに属するものである。その膜はゼラチンとセグメン
ト化ポリウレタンの共通の溶媒である水の溶液からキャ
ストする溶液キャストブレンド(solution-coat blend
s) の方法によって得ることができる。
【0009】一般に、無定形のポリマーブレンド系で
は、LCST型(Lower Critical Solution Temperatur
e; 下限臨界相溶温度)とUCST型(Upper Critical
Solution Temperature; 上限臨界相溶温度)の相図を
示す相分離が生ずる。これら二成分系の液/液相分離型
の相図は、雲点(cloud point) をつないだバイノーダ
ル(binodal) 曲線と、混合の自由エネルギー曲線の変
化をつないだスピノーダル(spinodal)曲線によって分
けられる。ここで、スピノーダル曲線の内側は不安定領
域で、わずかな濃度のゆらぎが存在しても自由エネルギ
ーの減少を招き、相分離が進行する。この相分離をスピ
ノーダル分解(spinodal decomposition;SD)とい
う。
【0010】上記の溶液キャストブレンドのような物理
的ブレンド(physical blends) の場合は、成分が均一
に混合することは少なく、両者の接着も悪いので、両成
分をなるべく均一にブレンドしないと良質の材料(膜)
が得られない。従って、両成分はある程度混和性のある
ポリマー同士が選ばれる。本発明におけるゼラチンと両
親媒性(親水性)のセグメント化ポリウレタンの水溶液
は、準安定なバイノーダル曲線とスピノーダル曲線の間
の準安定な相溶領域を形成しており、それが水の蒸発過
程での濃度の上昇により、安定なある程度の大きさの核
生成と成長(nucleation and growth;NG) をうなが
す。かかる過程におけるNG機構やSD分解によって出
現する準安定な相分離構造は、水の蒸発速度や冷却の速
さ、および系の粘度変化に依存し、系の熱力学的性質だ
けでは決まらない。要するに、本発明の相分離膜の生成
過程は、原則的に溶液キャストブレンド法によるスピノ
ーダル分解によってつくることができるものである。
【0011】具体的に説明すると、本発明の相分離膜
は、図1に模式的に示すように、架橋されたゼラチン相
1と未架橋のセグメント化ポリウレタン相2が混在した
形態をとっている。ゼラチン相1は膜の骨格を形成する
もので、膜全体の少なくとも4割以上、好ましくは6〜
8割を占め、三次元的に連続した相をつくっている。こ
れに対し、セグメント化ポリウレタン相2は薬物や他の
化学物質を優先的に透過させる通路の役目を果たすもの
で、膜全体の6割以下、好ましくは2〜4割を占め、少
なくとも膜の厚み方向に連続した相をつくっている。そ
して、ゼラチン相1やセグメント化ポリウレタン相2
は、後述するように成膜乾燥時に形成された所謂透過孔
となる無数の微細孔を有している。
【0012】上記のゼラチン相1は、架橋されて水不溶
性になっていることが必要である。未架橋であれば、こ
の相分離膜を例えば経皮投与用貼付製剤の薬物放出制御
膜(薬物透過膜)を目的として皮膚に貼付けた場合、皮
膚から出る水分によってゼラチン相1が溶解し、膜の形
状を維持できないからである。しかし、セグメント化ポ
リウレタン相2は未架橋であり、流動性を残していなけ
ればならない。架橋すると、セグメント化ポリウレタン
相2がゲル状ないし固体状となり、自らの溶融と移動が
できず、また薬物等の浸透と移動が妨げられるからであ
る。
【0013】セグメント化ポリウレタン相2は常温で固
体状であることが望ましい。常温で液状であれば、相分
離した膜からセグメント化ポリウレタンがブリードアウ
トするからである。しかし、この相分離膜の使用時にセ
グメント化ポリウレタン相2が固体状であっては、自ら
が液体となって移動せず、薬剤等の浸透・透過が困難で
あり、透過膜としての機能を殆ど果たさない。従って、
この相分離膜を上記のような経皮投与用貼付製剤の薬物
放出制御膜(薬物透過膜)等として使用する場合は、セ
グメント化ポリウレタン相2がヒトの皮膚の温度である
30〜37℃で液状になることが望ましい。このように
常温で固体状、30〜37℃以上で液状のセグメント化
ポリウレタン相2は、後述するように、用いるセグメン
ト化ポリウレタンの分子量、セグメントの種類や分子量
を調節することによって調製可能である。
【0014】相分離膜の適当な厚みは5〜50μm程度
であり、好ましくは10〜30μm程度である。5μm
より薄くなると、膜強度が極めて弱くなり、成膜も困難
になる。また、50μmより厚くなると、薬物等の透過
性が低下する。
【0015】このような相分離膜は、例えば次の方法で
製造される。即ち、加熱溶融させたセグメント化ポリウ
レタンと、ゼラチンの水溶液及び架橋剤を所定の割合で
混合・攪拌し、脱泡後、これを剥離性の良い基材フィル
ム上で一定厚みの膜状に展開し、常温で2日程度乾燥さ
せると、本発明の相分離膜が得られる。
【0016】上記の製造方法において、ゼラチンとセグ
メント化ポリウレタンの配合比は4〜8:6〜2、好ま
しくは6〜8:4〜2であり、架橋剤の配合量は、ゼラ
チン100部に対して2〜5部、好ましくは3部程度で
ある。
【0017】尚、場合によっては、ゼラチンの水溶液に
グリセリンやポリグリセリン(ジ、トリ、テトラ、ヘキ
サグリセリンなど)を溶解してもよい。これらを配合す
ると、絶乾時には比較的ドライな感触を有するが、水分
により吸湿剤として作用して保湿性のある粘着性をもっ
た相分離膜が得られる。グリセリンやポリグリセリンの
配合量は、ゼラチン100部に対して20〜60部が適
当であり、好ましくは30〜50部である。
【0018】原料のゼラチンとしては、アルカリ処理し
た脱塩アルカリゼラチンが好適に使用される。ゼラチン
には酸処理したものもあるが、酸処理したゼラチンは強
度が弱く脆いので不適当である。
【0019】また、ゼラチンの架橋剤にはホルマリン、
グルタルアルデヒドなどが従来より知られているが、よ
り低毒性であり、ゼラチンの架橋網目鎖を大きくでき
て、可撓性のある膜を形成しやすい、スペーサーの長い
ジ及び/又はポリエポキシ系の架橋剤が好適に用いられ
る。例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエー
テル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテ
ル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリ
セロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロ
パンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリ
シジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエー
テルなどが挙げられる。
【0020】一方、セグメント化ポリウレタンとして
は、本出願人が先に出願した特願昭62−86565号
に開示されている両親媒性のセグメント化ポリウレタン
が好適に使用される。このセグメント化ポリウレタン
は、下記の「化1」に記載の一般式で表される三元以上
のマルチブロックコポリマーである。
【0021】
【化1】
【0022】また、これ以外に、下記の「化2」に記載
の一般式で表される新規なセグメント化ポリウレタンも
好適に使用される。このセグメント化ポリウレタンは上
記ポリマーと同様の作用効果を有する二元のブロックコ
ポリマーである。
【0023】
【化2】
【0024】「化1」の一般式で表されるセグメント化
ポリウレタンから説明すると、一般式において(S)が
(1)の場合のポリアルキレンオキシドセグメントは、
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレング
リコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール
(PTMG)、ポリブチレングリコール(PBG)、ポ
リペンタメチレングリコール(PPMG)、ポリヘキサ
メチレングリコール(PHEMG)、ポリヘプタメチレ
ングリコール(PHPMG)である。また(2)はポリ
エステル一単位当たりの炭素数が5以上の二塩基酸と二
価アルコールの反応物からなるポリエステルであり、
(3)はポリε−カプロラクトン又はβ−メチル−δ−
バレロラクトンとアルキレングリコールとの反応物から
なるポリエステルであって、(2)又は(3)の場合の
ポリアルキレンオキシドセグメントは、ポリエチレング
リコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチ
レングリコール、ポリブチレングリコールである。そし
て、このセグメント化ポリウレタンの一端のポリエステ
ルセグメント又はポリアルキレンオキシドセグメントは
親油性又は疎水性であり、他端に近いポリアルキレンオ
キシドセグメントほど親水性度が大きくなるように調節
されている。また、アルキレンオキシドセグメントをつ
なぐイソシアネート化合物(A)(B)(C)は、p−
フェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイ
ソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタン
ジイソシアネート(MDI)、ナフタリン1,5−ジイ
ソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HM
DI)、テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイ
ソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添加T
DI、水素化MDI、ジシクロヘキシルジメチルメタン
p,p′−ジイソシアネート、ジエチルフマレートジイ
ソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPD
I)などである。
【0025】このような両親媒性のセグメント化ポリウ
レタンは、その分子量や、アルキレンオキシドセグメン
トの種類、分子量を調節することによって、融点を調節
することができる。また、各アルキレンオキシドセグメ
ントの種類や分子量を変えて各セグメントの親水性度、
疎水性度、その勾配を調節し、各セグメントと薬剤等と
の相互作用や親和性の大小を調整して薬剤等の移動速度
をコントロールすることができる。
【0026】融点を30〜37℃の範囲に調節して常温
では固体状、30〜37℃以上では液状のセグメント化
ポリウレタン相2を形成するには、セグメント化ポリウ
レタンの分子量を約1000〜13000の範囲とし、
セグメントの分子量を約300〜3000の範囲とする
必要がある。下記の表1に、30〜37℃の融点を持つ
セグメント化ポリウレタンの具体例を列挙するが、これ
らはほんの一部を例示したにすぎないものである。
【0027】
【表1】
【0028】次に、前記「化2」の一般式で表される新
規なセグメント化ポリウレタンについて説明すると、こ
のものは、一般式においてA,Bの少なくともどちらか
一方が親水性であり、同時に少なくともどちらか一方が
ヒトの皮膚温度で溶融する性質を有する熱感応性の両親
媒性セグメント化ポリウレタンである。その具体的な構
造例として、以下の表2に示すものが挙げられる。
【0029】
【表2】
【0030】前記「化2」の一般式で表されるセグメン
ト化ポリウレタンにおいて、A,Bの少なくともどちら
か一方が親水性であるのは、親水性の薬物等を薬効を発
現する程度の低濃度ではあるが、比較的多く溶解させ、
拡散・透過させるためである。また、このセグメントは
吸湿(水)性を付与し、体表の水分によって容易にポリ
マーが溶解するという水感応性の要因にもなる。親水性
の根源となるのは分子鎖中のエーテル酸素(−O−)と
分子鎖末端の−OHである。メチレン鎖(−CH2 −)
についている−CH3 ,−C25は、エーテル酸素に水
が接近するのに妨げとなるので、これらの側鎖をもた
ず、二つのメチレンに対して一つのエーテル酸素の割合
で結合しているエチレンオキシド(EO)がこれらのう
ちで最も親水性である。側鎖のあるものはより疎水性で
あり、また、アルキル側鎖の大きいもの程より疎水性と
なる。また、末端は−OHであれば親水性であるが、−
OCH3 ,−OC25,−OC37,−OC49により
アルコキシ末端を形成すれば、ここに示したアルキル基
の大きさの順に疎水性となる。従って、ウレタン結合の
両側のセグメントがEOであるときなどは、アルコキシ
末端とすることで疎水化することにより、親水性の度合
を微妙に調整できる。
【0031】アルコキシ末端のアルキル鎖長が長すぎる
と、分子全体の親水性に影響を及ぼし、また溶融温度も
変わるので、セグメントの本来の性質を生かすためには
好ましくない。末端は従来から使用されている非イオン
界面活性剤のように長鎖アルキル又は芳香族のカルボン
酸とのエステル結合にすることも一つの方法であるが、
エステル結合の凝集力のためにセグメントの中のエーテ
ル結合と薬物等との相互作用以外にエステル結合との相
互作用が入り込むから、薬物等の透過速度や透過量のコ
ントロールがより難解となる。また、長鎖アルキルのア
ルコキシ末端にした場合と同様に凝固点と両親媒性への
影響が総じて大きいと考えられるので、上記のような短
鎖のアルキル鎖によるアルコキシ末端がよいわけであ
る。
【0032】また、EOを含む共重合体をセグメントに
することでEOの比率に応じて親水性(疎水性)の度合
を調節することもできる。かかる観点から、ジイソシア
ネート化合物の両側のセグメントの組み合わせが表2の
如く列挙できる。
【0033】ところで、生身のヒトの皮膚の表面温度で
常温下の固体から融解して粘稠な液体に変態するという
熱感応性は、EO又はテトラメチレンオキシド(TM
O)の分子量によって調整できる。ただし、溶融時の粘
度を考慮すると、特にEOにより調整するのが好まし
い。他のアルキレンオキシドは常温で液体であり、熱感
応性の要因にならない。むしろ、両親媒性の疎水性付与
のセグメントとしての作用を期待するものであり、疎水
性薬物との親和性の要因として働く。EOを含む共重合
体の場合は、EOの比率とその分子量、共重合体の形式
(ブロックであるかランダムであるか)とその中のEO
の分子量によって、熱により変態することへの要求を満
たすものも存在するが、凝固・融解温度がEO単一重合
体ほどに明瞭でないものが多い。また、結晶性の硬い固
体でないので、安定な固体相として用いるにはやや危惧
がある。さらに、このような共重合体は分子量がかなり
大きいので、溶融したときの粘度がかなり大きく、薬物
等の拡散の点からして好ましくないが、薬物(例えばよ
り疎水性の薬物)によっては使用可能である。
【0034】ここで、少なくとも一方のセグメントにE
O単一重合体をもつ例について記述する。EO単一重合
体であるポリエチレングリコールのうちで皮膚表面の温
度付近30〜37℃で固体・液体の変態をする平均分子
量はおよそ800〜1200であり、1000の凝固点
は37.1℃(日本薬局法、規格値35〜39℃)であ
るので、この分子量のものが好適に選ばれる。
【0035】表2中のの場合、どちらかにEOセグメ
ントの平均分子量1000を用いると、他方のそれは2
00〜1000のものを用いればよい。末端は少なくと
もどちらか一方をアルキルエーテルとし、少なくともど
ちらか一方は−OHのままでよい。両端が−OHの場合
も使用可能であるが、薬物等が親水性である場合にあま
り親和性が高くて、放出率と放出パターンに問題が生ず
ることもあり得る。ここで注目すべきは、例えば両セグ
メントに凝固点が37.1℃である1000のセグメン
トを用いたときの凝固点である。単に平均分子量100
0のポリエチレングリコールをつなぎ合わせた場合の平
均分子量2000のものの凝固点は約45℃であるが、
上記の場合の凝固点は平均分子量1000のそれとほと
んど変わらない。また、末端のアルキル基によって約1
〜2℃低下する程度である。これは両セグメントを連結
して、その間に入っているウレタン結合がポリエチレン
グリコールのEO連鎖の運動、分子の長さ、および末端
基により生ずる分子間、分子内凝集力によって生ずる凝
固点への影響を打ち消し、セグメントの固有の分子間、
分子内運動を独立させているためであり、それゆえに平
均分子量1000の凝固点が殆どそのまま発現するので
ある。この事実こそが、本発明の目的をもったポリマー
分子を設計することの裏付けとなっている。つまり、総
分子量が大きくなっても凝固点は構成セグメントのそれ
に近い温度であるので、一方のセグメントに他の機能を
持たせることが可能である。
【0036】表2のの構成は一方のセグメントにプロ
ピレンオキシド(PO)鎖を導入した例であり、PO鎖
は側鎖にある−CH3 のためにかなり疎水性である。但
し、分子量が数100以下で末端が−OHのままであれ
ば、この水酸基の影響によって親水性の性質もかなり残
っている。従って、一方がEOセグメントであるの場
合は、POセグメントの分子量が約1000ぐらいまで
用いられる。これは溶融粘度を考慮した長さの限定でも
ある。
【0037】表2の,は更に順次疎水性セグメント
を一方に持つ場合であるが、この場合は疎水性の薬物に
対して有用であり、それらのセグメントの分子量もまた
と同様の要因を考慮して、平均分子量1500程度の
大きさまでが妥当である。
【0038】表2のは一方にEO/PO共重合体を用
いた場合である。EOの比率とその分子量、共重合体の
形式によって、親水、疎水の程度は異なるが、両セグメ
ントがEO重合体のときよりもより疎水性に調整でき、
の場合よりも親水性に調節できる。また、溶融粘度は
との間にある。共重合体は共通して単一重合体より
も結晶性が劣るので、一方にEO重合体の結晶性セグメ
ントを用いたときに、その熱感応性がより敏感に変わ
る。また、ランダム共重合体のときは、特にその分子運
動の小さなユニットで活発に働く性質が薬物等の拡散・
透過・放出に望ましい結果を与える。
【0039】これらの事実は表2の以下の組み合わせ
についても同様であり、薬物等の特性と要求される透過
・放出のパターンを考慮して、これらの組合わせを選択
すればよい。また、末端基の種類も同様に選択すればよ
い。
【0040】これらの構造式で表される分子の総分子量
は各々のセグメントの組合わせにより異なるが、およそ
1000〜数1000である。好ましくは1200〜2
500程度である。
【0041】また、「化2」の一般式の中間に入るCの
骨格を有するジイソシアネートは、前記「化1」で用い
たものと同様である。但し、両セグメントが直線上で広
がっている構造をとる方が熱感応性を敏感に発現し、溶
融粘度も低い傾向があるので、直線的な構造のジイソシ
アネートの方が望ましく、また芳香族や脂環族のものよ
りも脂肪族の方が分子運動の容易さからすると望まし
い。トリイソシアネートなどのより多官能であるもので
もよいが、溶融粘度が一般に高くなるので好ましくな
い。
【0042】このようなジイソシアネートとアルキレン
グリコールとの反応で生ずるウレタン結合(−NHOC
O−)の凝集力は8.74(kcal/mol)であ
り、アルキレングリコールの構成単位分子の−CH
2 −;0.68、−CH(CH3 )−;1.36、−C
3 ;1.77、−O−;1.00などと比べると大き
いので、溶融粘度の増大の方向に作用するから、相分離
膜のポリマー相として良好な粘度を調整するのに都合が
良い。また、両側のセグメントの間のスペーサーとして
適度の分子長を有しており、各セグメントが独立した分
子運動をするのに都合のよい作用をしている。
【0043】なお、本発明の相分離膜は、必要に応じて
繊維ネット等で補強してもよい。繊維ネット等で補強す
る場合は、セグメント化ポリウレタンとゼラチンと架橋
剤を含む前記の調製液に繊維ネットを浸漬して軽くしぼ
った後、剥離性の良い基材フィルム上にひろげて乾燥さ
せればよい。
【0044】
【作用】本発明の相分離膜は、生体の皮膚温度になると
セグメント化ポリウレタン相が液状になり、また、水に
より容易に溶解する。そして、ゼラチン相は水により膨
潤する。この状態で薬物や他の化学物質が相分離膜に接
触すると、薬物等がセグメント化ポリウレタン相に拡散
浸透し、セグメント化ポリウレタンの各セグメントと薬
物等の相互作用や親和性の大小(勾配)によって速度制
御されながら、セグメント化ポリウレタン相の分子間を
拡散し、ゼラチン相との間を溶融したセグメント化ポリ
ウレタンと共に移動、透過する。従って、セグメント化
ポリウレタンの各セグメントの種類や分子量を調節して
各セグメントと薬物等との相互作用や親和性の大小を調
節すれば、移動速度を広い範囲でコントロールすること
が可能である。また、薬物等の透過量は、セグメント化
ポリウレタン相の溶融粘度と占める割合、および薬物の
拡散や移動速度に依存して変化するので、これらを勘案
して調節すればよい。
【0045】このように、本発明の相分離膜は、薬物等
の拡散・移動速度制御や透過量の調節を自在に行えるの
で、例えば、極く微量の薬物を、ある決められた時間内
に徐々に透過させる必要がある場合、或は透過量をシビ
アに制御する必要がある場合に好適に使用することがで
きる。さらに、放出制御膜を薬剤が入っている基剤と密
着させた場合を例にとり、より詳しく述べる。すなわ
ち、基剤と膜が密着した状態では、基剤中の薬物と膜の
濃度は同じでなく、基剤と膜の間の分配によって吸着的
に相関している。もし、基剤中の薬物が固体であり、基
剤もまた固体である系の中で薬物が分散していれば、膜
への薬物の分配は生じていない。薬物か基剤のどちらか
一方、あるいは両方が液体であるときは、密着状態で薬
物が分配された状態にある。保存中の経皮吸収製剤の薬
物の安定性と表面への移行を防止するような系である両
者が固体である系では、貼付時の皮膚温度で基剤が低粘
度液体となり、そのときに薬物が膜に移行する。この系
では基剤から膜へ分配係数が膜透過のための大きな要因
となる。すなわち、膜への分配係数Km、膜表面と裏面
の濃度差をΔC、基剤中の濃度をCv、拡散係数Dm、
膜厚hmとすると、透過量Jmは
【数1】 となる。つまり、透過量は基剤中の薬物濃度と分配係数
で決まる。相分離膜は膜中に基剤と同一なポリマーをミ
クロな相として埋入したものであり、これらが液体とな
って流動化して膜を抜け出して皮膚に移動する。この事
実は分配係数、すなわち透過係数を大いに高めることで
ある。そして、この事実は基剤中に低濃度の薬物、ある
いは数μg〜数100μg/dose量の微小量の薬物
が含有されている場合、これを高い放出率で移動させる
のに都合がよく、本発明のような熱感応性、水感応性の
相分離膜を使うことが有効であることを示唆するもので
ある。
【0046】また、本発明の相分離膜は、液体を一方向
にのみ透過させる微細孔を形成することもできるので、
方向性のある液体透過膜として利用することもできる。
【0047】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。
【0048】[実施例1] (準備)ガラス板の表面にポリエチレンテレフタレート
(PET)フィルムを載置し、該フィルムの四辺に所定
厚みのテープを二重に貼付けて枠を造った。
【0049】(試料の調製)4gの脱塩アルカリゼラチ
ンに76gの水を入れて60℃で攪拌しながらゼラチン
を溶解した。そして、ホモジナイザーの器に1.97g
のセグメント化ポリウレタン[C49−(u)−PCL(53
0)−(u)−(CH2)6−(u)−PPG(400)−(u)−(CH2)6
−(u)−PEG(1000)、mp:34.5〜35.5℃]
を量り取って加熱溶融し、これに上記のゼラチン水溶液
と1.6gのグリセリンと0.12gの架橋剤(デナコ
ールEX−313)を加えて、5000rpmで5分間
攪拌した。次いで超音波洗浄で温度をかけながら脱泡
し、その途中で38gの水を追加して試料を調製した。
【0050】(成膜)上記の試料を先に準備したガラス
板のPETフィルムの上にスポイトで垂らし、ガラス棒
で厚さ600μmの膜状に展開した。そして、これを温
度23℃、湿度65%のクリーンルーム内で2日間乾燥
し、厚さ30μmの相分離膜を作製した。得られた相分
離膜の電子顕微鏡写真のコピーを参考写真コピーとして
添付する。この写真コピーより明らかなように、本実施
例の膜は図1と同様のスピノーダル分解による相分離の
パターンを示していることが分かる。
【0051】次に、この膜を適当な大きさに打ち抜き、
水面上に浮かべて、水が膜を透過する様子を光学顕微鏡
によって追跡し、経時的に写真をとった。これを参考写
真1(〜)として添付する。それによれば、ゼラチ
ン相とセグメント化ポリウレタン相の界面に最初に劈開
が生じ(このことは両者の結合があまり強い化学結合を
していないことを示し、単なる物理的混合に近いことの
あらわれと考えられる)、次いで、徐々に、あたかもヒ
トの皮膚より汗がにじみ出るように水がセグメント化ポ
リウレタンを溶解しながら膜の表面に浸出する様子が明
らかであり、透過膜としての有用性を裏付けるものであ
る。
【0052】[実施例2]実施例1と同様にゼラチン対
セグメント化ポリウレタンの比率が7:3になるように
次式のセグメント化ポリウレタンを配合して40μmの
厚さの相分離膜をつくった。 PPG(400)−(U)−(CH2)6−(u)−PEG(1000) この膜を実施例1と同様に水に浮かべて水の浸出状況を
光学顕微鏡で追跡し、経時的に写真をとった。これを参
考写真2(〜)として添付する。その結果、水の浸
出速度は実施例1よりもかなり速く、30秒後には水は
膜面をほとんど覆ってしまった。これは、上記のセグメ
ント化ポリウレタンがより親水性であるためであり、親
水性の薬物等をより速く透過させるのにより都合のよい
膜であることを裏付けるものである。
【0053】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の相分離膜は、セグメント化ポリウレタン相内を移動す
る薬物その他の化学物質の速度制御や透過量の調節を自
在に行うことができるといった顕著な効果を奏し、ま
た、方向性のある液体透過膜として使用することもでき
るといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の相分離膜を模式的に示す拡大部分平面
図である。
【符号の説明】
1 ゼラチン相 2 セグメント化ポリウレタン相
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年10月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 相分離した膜
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薬物や他の化学物質の
透過膜等として使用される相分離した膜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、経皮投与用貼付薬剤に用いる
薬物放出制御膜(薬物透過膜)として、エチレン−酢酸
ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリエチレン、エチ
ルセルローズなどの高分子膜やその多孔膜、或は、天然
物であるゼラチンの膜などが知られている。ゼラチン膜
には、ゼラチン水溶液とデキストラン水溶液に架橋剤を
加えて成膜し、乾燥後、水に浸漬してデキストランを除
去した多孔質の膜や、ゼラチン水溶液にグリセリンと架
橋剤を加えて成膜、乾燥したもの等があり、これらのゼ
ラチン膜は皮膚に対する刺激がなく、カブレも生じない
ので、この点からすれば上記の高分子膜よりも優れてい
ると考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ゼラチン膜は、ある種の微量の薬物が膜内を移動すると
きの速度制御や透過量を調節することが困難であり、同
様に上記の高分子膜はそれにも増して調節が困難であっ
た。
【0004】経皮投与用の薬物には、極く微量をかなり
の時間をかけて徐々に皮膚に吸収させる必要のあるもの
があり、この場合は皮膚への吸収量をかなり厳しくコン
トロールする必要がある。従って、従来のゼラチン膜や
高分子膜のように微量薬物の速度制御や透過量の調節を
厳しくコントロールできない膜は、そのような制御を必
要とする薬物の放出制御膜(透過膜)として使用できな
いという問題があった。
【0005】本発明は上記の問題に鑑みてなされたもの
で、その目的とするところは、微小量の薬物その他の化
学物質の透過速度制御や透過量の調節を容易に行える相
分離した膜を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】相分離した膜(以下、単
に相分離膜という)とは、膜内に二つ或はそれ以上の異
なった相が混在した状態の膜である。相の境界面は物理
的に弱く、ここから透過がおこると考えられている。
【0007】化学的に異なるポリマーを組合わせた多成
分系(multi-component polymersystems )であるポリ
マーアロイ(polymer alloys)は、異種のポリマーが共
有結合でつながったブロックやグラフトコポリマーのミ
クロな相分離構造をとるグループと、異種ポリマーがマ
クロに混在して相分離した構造をとるポリマーブレンド
のグループに分けられる。その相転移は幅広い温度域に
わたってゆっくりと進行し、結晶化温度(Tc)の高い
ものから相分離を起こし易い。
【0008】本発明の相分離膜は、後者のポリマーブレ
ンドに属するものである。その膜はゼラチンとセグメン
ト化ポリウレタンの共通の溶媒である水の溶液からキャ
ストする溶液キャストブレンド(solution-cast blend
s) の方法によって得ることができる。
【0009】一般に、無定形のポリマーブレンド系で
は、LCST型(Lower Critical Solution Temperatur
e; 下限臨界相溶温度)とUCST型(Upper Critical
Solution Temperature; 上限臨界相溶温度)の相図を
示す相分離が生ずる。この場合、二成分系の液/液相分
離型の相図は、雲点(cloud point) をつないだバイノ
ーダル(binodal) 曲線と、混合の自由エネルギー曲線
の変化をつないだスピノーダル(spinodal)曲線によっ
て分けられる。ここで、スピノーダル曲線の内側は不安
定領域で、わずかな濃度のゆらぎが存在しても自由エネ
ルギーの減少を招き、相分離が進行する。この相分離を
スピノーダル分解(spinodal decomposition;SD)と
いう。
【0010】上記の溶液キャストブレンドのような物理
的ブレンド(physical blends) の場合は、成分が均一
に混合することは少なく、両者の接着も悪いので、両成
分をなるべく均一にブレンドしないと良質の材料(膜)
が得られない。従って、両成分はある程度混和性のある
ポリマー同士が選ばれる。本発明におけるゼラチンと両
親媒性(親水性)のセグメント化ポリウレタンの水溶液
は、準安定なバイノーダル曲線とスピノーダル曲線の間
の準安定な相溶領域を形成しており、それが水の蒸発過
程での濃度の上昇により、安定なある程度の大きさの核
生成と成長(nucleation and growth;NG) をうなが
す。かかる過程におけるNG機構やSD分解によって出
現する準安定な相分離構造は、水の蒸発速度や冷却の速
さ、および系の粘度変化に依存し、系の熱力学的性質だ
けでは決まらない。要するに、本発明の相分離膜の生成
過程は、原則的に溶液キャストブレンド法によるスピノ
ーダル分解によってつくることができるものである。
【0011】具体的に説明すると、本発明の相分離膜
は、図1に模式的に示すように、架橋されたゼラチン相
1と未架橋のセグメント化ポリウレタン相2が混在した
形態をとっている。ゼラチン相1は膜の骨格を形成する
もので、膜全体の少なくとも4割以上、好ましくは6〜
8割を占め、三次元的に連続した相をつくっている。こ
れに対し、セグメント化ポリウレタン相2は薬物や他の
化学物質を優先的に透過させる通路の役目を果たすもの
で、膜全体の6割以下、好ましくは2〜4割を占め、少
なくとも膜の厚み方向に連続した相をつくっている。
【0012】上記のゼラチン相1は、架橋されて水不溶
性になっていることが必要である。未架橋であれば、こ
の相分離膜を例えば経皮投与用貼付製剤の薬物放出制御
膜(薬物透過膜)を目的として皮膚に貼付けた場合、皮
膚から出る水分によってゼラチン相1が溶解し、膜の形
状を維持できないからである。しかし、セグメント化ポ
リウレタン相2は未架橋であり、流動性を残していなけ
ればならない。架橋すると、セグメント化ポリウレタン
相2がゲル状ないし固体状となり、自らの溶融と流動に
よる移動ができず、また薬物等の浸透と透過・移動が妨
げられるからである。ここで「架橋された」とは、水に
不溶性となる程度に分子鎖が三次元化した状態を示し、
「未架橋」とは、分子鎖がリニアーで三次元化していな
い状態を示す。
【0013】セグメント化ポリウレタン相2は常温で固
体状でなければならない。常温で液状であれば、相分離
した膜からセグメント化ポリウレタンがブリードアウト
するからである。しかし、この相分離膜の使用時にセグ
メント化ポリウレタン相2が固体状であっては、相分離
膜中に固定されてブリードアウトすることがないため、
薬剤等の浸透・透過が困難であり、微量薬剤の透過膜と
しての機能を殆ど果たさない。従って、この相分離膜を
上記のような経皮投与用貼付製剤の薬物放出制御膜(薬
物透過膜)等として使用する場合は、セグメント化ポリ
ウレタン相2がヒトの皮膚の温度である30〜37℃で
液状になることが必要である。このように常温で固体状
であり、30〜37℃以上、好ましくは40℃以下で液
状のセグメント化ポリウレタン相2は、後述するよう
に、用いるセグメント化ポリウレタンの分子量、セグメ
ントの種類や分子量を調節することによって調製可能で
ある。ここで、常温とは30℃未満の温度域を示す。
【0014】相分離膜の適当な厚みは5〜50μm程度
であり、好ましくは10〜30μm程度である。5μm
より薄くなると、膜強度が極めて弱くなり、成膜も困難
になる。また、50μmより厚くなると、薬物等の透過
性が低下する。
【0015】このような相分離膜は、例えば次の方法で
製造される。即ち、加熱溶融させたセグメント化ポリウ
レタンと、ゼラチンの水溶液及び架橋剤を所定の割合で
混合・攪拌し、脱泡後、これを剥離性の良い基材フィル
ム上で一定厚みに展開し、常温で2日程度乾燥させる
と、本発明の相分離膜が得られる。加熱溶融の温度とし
ては、使用するセグメント化ポリウレタン、ゼラチン、
架橋剤によって異なるが通常50〜80℃で行われ、好
ましくは55〜70℃である。脱泡の方法については特
に限定されず、通常、超音波照射、減圧脱泡等の方法に
て行われる。剥離性の良い基材フィルムとしては特に限
定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PE
T)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の合成
樹脂フィルムが用いられる。乾燥の方法については特に
限定されず、常圧で行っても、減圧下で行ってもよい
が、製造される相分離膜の品質を保障するためには、2
3℃、65%湿度の定温、定湿度のクリーンルーム内で
行うことが好ましい。
【0016】上記の製造方法において、ゼラチンとセグ
メント化ポリウレタンの配合比は4〜8:6〜2、好ま
しくは6〜8:4〜2であり、架橋剤の配合量は、ゼラ
チン100部に対して2〜5部、好ましくは3部程度で
ある。
【0017】また、場合によっては、ゼラチンの水溶液
にグリセリンやポリグリセリン(ジ、トリ、テトラ、ヘ
キサグリセリンなど)を溶解してもよい。これらを配合
すると、絶乾時には比較的ドライな感触を有するが、水
分により吸湿剤として作用して保湿性のある粘着性をも
った相分離膜が得られる。グリセリンやポリグリセリン
の配合量は、ゼラチン100部に対して20〜60部が
適当であり、好ましくは30〜50部である。このグリ
セリンやポリグリセリンは、ゼラチンとセグメント化ポ
リウレタンとの混合、撹拌時に両者に溶解し、相分離後
はセグメント相5aとセグメント化ポリウレタン相5b
の両者に含まれる。
【0018】原料のゼラチンとしては、アルカリ処理し
た脱塩アルカリゼラチンが好適に使用される。ゼラチン
は動物の皮や骨由来のコラーゲンを分解・精製したポリ
ペプチドであり、アルカリ処理とは、石灰などのアルカ
リに浸漬してコラーゲンを分解することである。ゼラチ
ンには酸処理したものもあるが、酸処理したゼラチンは
強度が弱く脆いので不適当である。
【0019】また、ゼラチンの架橋剤にはホルマリン、
グルタルアルデヒドなどが従来より知られているが、よ
り低毒性であり、ゼラチンの架橋網目鎖を大きくでき
て、可撓性のある膜を形成しやすい、スペーサーの長い
ジ及び/又はポリエポキシ系の架橋剤が好適に用いられ
る。例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエー
テル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテ
ル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリ
セロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロ
パンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリ
シジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエー
テルなどが挙げられる。ゼラチンの架橋は、これらの架
橋剤のエポキシ基とゼラチンの構成分子、例えばアミノ
基とが反応することにより行われる。
【0020】一方、セグメント化ポリウレタンとして
は、本出願人が先に出願した特願昭62−86565号
に開示されている両親媒性のセグメント化ポリウレタン
が好適に使用される。このセグメント化ポリウレタン
は、下記の「化1」に記載の一般式で表される三元以上
のマルチブロックコポリマーである。
【0021】
【化1】
【0022】また、これ以外に、下記の「化2」に記載
の一般式で表される新規なセグメント化ポリウレタンも
好適に使用される。このセグメント化ポリウレタンは上
記ポリマーと同様の作用効果を有する二元のブロックコ
ポリマーである。
【0023】
【化2】
【0024】「化1」の一般式で表されるセグメント化
ポリウレタンから説明すると、一般式において(S)が
(1)の場合のポリアルキレンオキシドセグメントは、
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレング
リコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール
(PTMG)、ポリブチレングリコール(PBG)、ポ
リペンタメチレングリコール(PPMG)、ポリヘキサ
メチレングリコール(PHEMG)、ポリヘプタメチレ
ングリコール(PHPMG)である。また(2)はポリ
エステル一単位当たりの炭素数が5以上の二塩基酸と二
価アルコールの反応物からなるポリエステルであり、
(3)はポリε−カプロラクトン又はβ−メチル−δ−
バレロラクトンとアルキレングリコールとの反応物から
なるポリエステルであって、(2)又は(3)の場合の
ポリアルキレンオキシドセグメントは、ポリエチレング
リコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチ
レングリコール、ポリブチレングリコールである。そし
て、このセグメント化ポリウレタンの一端のポリエステ
ルセグメント又はポリアルキレンオキシドセグメントは
親油性又は疎水性であり、他端に近いポリアルキレンオ
キシドセグメントほど親水性度が大きくなるように調節
されている。また、アルキレンオキシドセグメントをつ
なぐイソシアネート化合物(A)(B)(C)は、p−
フェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイ
ソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタン
ジイソシアネート(MDI)、ナフタリン1,5−ジイ
ソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HM
DI)、テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイ
ソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添加T
DI、水素化MDI、ジシクロヘキシルジメチルメタン
p,p′−ジイソシアネート、ジエチルフマレートジイ
ソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPD
I)などである。
【0025】このような両親媒性のセグメント化ポリウ
レタンは、その分子量や、アルキレンオキシドセグメン
トの種類、分子量を調節することによって、融点を調節
することができる。また、各アルキレンオキシドセグメ
ントの種類や分子量を変えて各セグメントの親水性度、
疎水性度、その勾配を調節し、各セグメントと薬剤等と
の相互作用や親和性の大小を調整して薬剤等の移動速度
をコントロールすることができる。
【0026】融点を30〜37℃の範囲に調節して常温
では固体状、30〜37℃以上では液状のセグメント化
ポリウレタン相2を形成するには、セグメント化ポリウ
レタンの分子量を約1000〜13000の範囲とし、
セグメントの分子量を約300〜3000の範囲とする
必要がある。下記の表1に、30〜37℃の融点を持つ
セグメント化ポリウレタンの具体例を列挙するが、これ
らはほんの一部を例示したにすぎないものである。
【0027】
【表1】
【0028】次に、前記「化2」の一般式で表される新
規なセグメント化ポリウレタンについて説明すると、こ
のものは、一般式においてA,Bの少なくともどちらか
一方が親水性であり、同時に少なくともどちらか一方が
ヒトの皮膚温度で溶融する性質を有する熱感応性の両親
媒性セグメント化ポリウレタンである。その具体的な構
造例として、以下の表2に示すものが挙げられる。
【0029】
【表2】
【0030】前記「化2」の一般式で表されるセグメン
ト化ポリウレタンにおいて、A,Bの少なくともどちら
か一方が親水性である必要性は、親水性の薬物等を薬効
を発現する程度の低濃度レベルではあるが、比較的多く
溶解させ、拡散・透過させるためである。また、このセ
グメントは吸湿(水)性を付与し、体表の微量の水によ
って容易にポリマーが溶解するという水感応性の要因に
もなる。ここで、水感応性とは、自らが吸湿性を持ち、
少量の水(湿気)を吸収して溶解し、更に自ら水を吸収
することによって、固体から水を含んだ液体へと変態
し、このとき溶融温度もまた低下するという、水に対す
る感応性が敏感である性質をいう。親水性の根源となる
のは分子鎖中のエーテル酸素(−O−)と分子鎖末端の
−OHである。メチレン鎖(−CH2 −)についている
−CH3 ,−C25は、エーテル酸素に水が接近するの
に妨げとなるので、これらの側鎖をもたず、二つのメチ
レンに対して一つのエーテル酸素の割合で結合している
エチレンオキシド(EO)がこれらのうちで最も親水性
である。側鎖のあるものはより疎水性であり、また、ア
ルキル側鎖の大きいもの程より疎水性となる。また、末
端は−OHであれば親水性であるが、−OCH3 ,−O
25,−OC37,−OC49によりアルコキシ末端
を形成すれば、ここに示したアルキル基の大きさの順に
疎水性となる。従って、ウレタン結合の両側のセグメン
トがEOであるときなどは、アルコキシ末端とすること
で疎水化することにより、親水性の度合を微妙に調整で
きる。
【0031】アルコキシ末端のアルキル鎖長が長すぎる
と、分子全体の親水性に影響を及ぼし、また溶融温度も
セグメント自体のそれとは変わるので、セグメントの本
来の性質を生かすためには好ましくない。末端は従来か
ら使用されている非イオン界面活性剤のように長鎖アル
キル又は芳香族のカルボン酸とのエステル結合にするこ
とも一つの方法であるが、エステル結合の凝集力のため
にセグメントの中のエーテル結合と薬物等との相互作用
以外にエステル結合との相互作用が入り込むから、薬物
等の透過速度や透過量のコントロールがより難解とな
る。また、長鎖アルキルのアルコキシ末端にした場合と
同様に凝固点と両親媒性への影響が大きいと考えられる
ので、上記のような短鎖のアルキル鎖によるアルコキシ
末端がよいわけである。
【0032】また、EOを含む上記の共重合体をセグメ
ントにすることでEOの比率に応じて親水性(疎水性)
の度合を調節することもできる。かかる観点から、ジイ
ソシアネート化合物の両側のセグメントの組み合わせが
表2の如く列挙できる。
【0033】一方、生身のヒトの皮膚の表面温度付近の
30〜40℃で常温下の固体から融解して粘稠な液体に
変態するという熱感応性は、EO又はテトラメチレンオ
キシド(TMO)の分子量によって調整できる。ただ
し、溶融時の粘度を考慮すると、特にEOにより調整す
るのが好ましい。他のアルキレンオキシドは常温で液体
であり、熱感応性の要因にならない。むしろ、両親媒性
の疎水性付与のセグメントとしての作用を期待するもの
であり、疎水性薬物との親和性の要因として働く。EO
を含む共重合体の場合は、EOの比率とその分子量、共
重合体の形式(ブロックであるかランダムであるか)と
その中のEOの分子量によって、熱により変態すること
への要求を満たすものも存在するが、凝固・融解温度が
EO単一重合体ほどに明瞭でないものが多い。また、結
晶性の硬い固体でないので、安定な固体相として用いる
にはやや危惧がある。さらに、このような共重合体は化
学構造上の必然性から比較的大きくならざるを得ないた
め、分子量がかなり大きいので、溶融したときの粘度が
かなり大きく、薬物等の拡散の点からして好ましくない
が、薬物(例えばより疎水性の薬物)によっては使用可
能である。
【0034】ここで、少なくとも一方のセグメントにE
O単一重合体をもつ例について記述する。EO単一重合
体であるポリエチレングリコールのうちで皮膚表面の温
度付近30〜40℃で固体・液体の変態をする平均分子
量はおよそ800〜1200であり、1000の凝固点
は37.1℃(日本薬局方、規格値35〜39℃)であ
るので、この分子量のものが好適に選ばれる。
【0035】表2中のの場合、どちらかにEOセグメ
ントの平均分子量1000を用いると、他方のそれは2
00〜1000のものを用いればよい。末端は少なくと
もどちらか一方をアルキルエーテルとし、少なくともど
ちらかもう一方は−OHのままでよい。両端が−OHあ
るいはアルキルエーテルであってもよい。これらは薬物
の性質に応じて選択すればよい。ここで注目すべきは、
例えば両セグメントに凝固点が37.1℃である100
0のセグメントを用いたときの凝固点である。単に平均
分子量1000のポリエチレングリコールをつなぎ合わ
せた場合の平均分子量2000のものの凝固点は約45
℃であるが、上記の場合の凝固点は平均分子量1000
のそれとほとんど変わらない。また、末端のアルキル基
によって約1〜2℃低下する程度である。これは両セグ
メントを連結して、その間に入っているウレタン結合が
ポリエチレングリコールのEO連鎖の運動、分子の長
さ、および末端基により生ずる分子間、分子内凝集力に
よって生ずる凝固点への影響を打ち消し、セグメントの
固有の分子間、分子内運動を独立させているためであ
り、それゆえに平均分子量1000の凝固点が殆どその
まま発現するのである。この事実こそが、本発明の目的
をもったポリマー分子を設計することの裏付けとなって
いる。つまり、総分子量が大きくなっても凝固点は構成
セグメントのそれに近い温度であるので、一方のセグメ
ントに他の機能を持たせることが可能である。
【0036】表2のの構成は一方のセグメントにプロ
ピレンオキシド(PO)鎖を導入した例であり、PO鎖
は側鎖にある−CH3 のためにかなり疎水性である。但
し、分子量が数100以下で末端が−OHのままであれ
ば、この水酸基の影響によって親水性の性質もかなり残
っている。従って、一方がEOセグメントであるの場
合は、POセグメントの分子量が約1000ぐらいまで
用いられる。これは溶融粘度を考慮した長さの限定でも
ある。
【0037】表2の,は更に順次、より疎水性のセ
グメントを一方に持つ場合であるが、この場合は疎水性
の薬物に対して有用であり、それらのセグメントの分子
量もまたと同様の要因を考慮して、平均分子量150
0程度の大きさまで、好ましくは約300〜約1500
が妥当である。
【0038】表2のは一方にEO/PO共重合体を用
いた場合である。EOの比率とその分子量、共重合体の
形式によって、親水、疎水の程度は異なるが、両セグメ
ントがEO重合体のときよりもより疎水性に調整でき、
の場合よりも親水性に調節できる。また、溶融粘度は
との間にある。共重合体は共通して単一重合体より
も結晶性が劣るので、一方にEO重合体の結晶性セグメ
ントを用いたときに、その熱感応性がより敏感に変わ
る。また、ランダム共重合体のときは、特にその分子運
動の小さなユニットで活発に動く性質が薬物等の拡散・
透過・放出に望ましい結果を与える。
【0039】また、以降のEOと他のアルキレンオキ
シドとの共重合体の比率は、モル比でEOが10〜90
%、好ましくは30〜70%で適宜選択される。
【0040】これらの事実は表2の以下の組み合わせ
についても同様であり、薬物等の特性と要求される透過
・放出のパターンを考慮して、これらの組合わせを選択
すればよい。また、末端基の種類も同様に選択すればよ
い。
【0041】これらの構造式で表わされる分子の総分子
量は各々のセグメントの組合わせにより異なるが、およ
そ1000〜6000であり、好ましくは1200〜2
500程度である。
【0042】また、「化2」の一般式の中間に入るFの
骨格を有するジイソシアネートは、前記「化1」で用い
たものと同様である。但し、両セグメントが直線上で広
がっている構造をとる方が熱感応性を敏感に発現し、溶
融粘度も低い傾向があるので、直線的な構造のジイソシ
アネートの方が望ましく、また芳香族や脂環族のものよ
りも脂肪族の方が分子運動の容易さからすると望まし
い。トリイソシアネートなどのより多官能であるもので
もよいが、溶融粘度が一般に高くなるので好ましくな
い。
【0043】このようなジイソシアネートとアルキレン
グリコールとの反応で生ずるウレタン結合(−NHOC
O−)の凝集力は8.74(kcal/mol)であ
り、アルキレングリコールの構成単位分子の−CH2
−;0.68、−CH(CH3 )−;1.36、−CH
3 ;1.77、−O−;1.00などと比べると大きい
ので、溶融粘度の増大の方向に作用するから、相分離膜
のポリマー相として良好な粘度を調整するのに都合が良
い。事実、これらウレタン結合を介在した本発明のポリ
マーは、同分子量のアルキレングリコールよりも溶融粘
度がやや高く、薬物の放出を微妙にコントロールするの
に有効である。因みに、溶融粘度があまり低いと、ポリ
マーは皮膚から流れ落ちるので好ましくない。また、両
側のセグメントの間のスペーサーとして適度の分子長を
有しており、各セグメントが独立した分子運動をするの
に都合のよい作用をしている。
【0044】なお、上記の相分離膜は、必要に応じて繊
維ネット等で補強してもよい。繊維ネットとしては、ポ
リアミド繊維、ポリエステル繊維等の合成樹脂繊維が例
示される。繊維ネット等で補強する場合は、セグメント
化ポリウレタンとゼラチンと架橋剤を含む調製液に繊維
ネットを浸漬して、ネットの網目間を乾燥してもネット
の間を満たせる程度に軽くしぼった後、剥離性のよい基
材フィルム上にひろげて乾燥させればよい。乾燥の方法
は既述した通りである。この補強された膜の厚さとして
は、繊維ネット部分が100〜250μmであり、相分
離膜部分が5〜50μmである。
【0045】
【作用】本発明の相分離膜のセグメント化ポリウレタン
相は、生体の皮膚温度になると液状になる。そして、こ
れにより水に容易に溶解する。そして、ゼラチン相は水
により膨潤する。この状態で薬物や他の化学物質が相分
離膜に接触すると、薬物等がセグメント化ポリウレタン
相に拡散浸透し、セグメント化ポリウレタンの各セグメ
ントと薬物等の相互作用や親和性の大小(勾配)によっ
て速度制御されながら、セグメント化ポリウレタン相の
分子間を拡散し、ゼラチン相との間を溶融したセグメン
ト化ポリウレタンと共に移動、透過する。従って、セグ
メント化ポリウレタンの各セグメントの種類や分子量を
調節して各セグメントと薬物等との相互作用や親和性の
大小を調節すれば、移動速度を広い範囲でコントロール
することが可能である。また、薬物等の透過量は、セグ
メント化ポリウレタン相の溶融粘度と占める割合、およ
び薬物の拡散や移動速度に依存して変化するので、これ
らを勘案して調節すればよい。
【0046】このように、本発明の相分離膜は、薬物等
の拡散・移動速度制御や透過量の調節を自在に行えるの
で、例えば、極く微量の薬物を、ある決められた時間内
に徐々に透過させる必要がある場合、或は透過量をシビ
アに制御する必要がある場合に好適に使用することがで
きる。
【0047】さらに、放出制御膜を薬剤が入っている基
剤と密着させた場合を例にとり、より詳しく述べる。す
なわち、基剤と膜が密着した状態では、基剤中の薬物と
膜の濃度は同じでなく、基剤と膜の間の分配によって吸
着的に相関している。もし、基剤中の薬物が固体であ
り、基剤もまた固体である系の中で薬物が分散していれ
ば、膜への薬物の分配は生じていない。薬物か基剤のど
ちらか一方、あるいは両方が液体であるときは、密着状
態で薬物が分配された状態にある。しかるに、保存中の
経皮吸収製剤の薬物の安定性と表面への移行を防止する
ような相分離膜中のポリマーと基剤ポリマーの組み合わ
せであって、貼付時の皮膚温度で基剤ポリマーが低粘度
液体に変わり、そのときに薬物が膜に移行する系にあっ
ては、基剤から膜への分配係数が膜透過のための大きな
要因となる。すなわち、膜への分配係数Km、膜表面と
裏面の濃度差をΔC、基剤中の濃度をCv、拡散係数D
m、膜厚hmとすると、透過量Jmは
【数1】 となる。つまり、透過量は基剤中の薬物濃度と分配係数
で決まる。相分離膜は膜中に基剤と同一なポリマーをミ
クロな相として埋入したものであれば、これらは容易に
一体化して液体となって流動化して膜を抜け出して皮膚
に移動する。この事実は分配係数、すなわち透過係数を
大いに高めることである。そして、この事実は基剤中に
低濃度の薬物、あるいは数μg〜数100μg/dos
e量の微小量の薬物が含有されている場合、これを高い
放出率で移動させるのに都合がよく、本発明のような熱
感応性、水感応性の相分離膜を使うことが有効であるこ
とを示唆するものである。
【0048】また、本発明の相分離膜は、液体を一方向
にのみ透過させる微細孔を形成することもできるので、
方向性のある液体透過膜として利用することもできる。
【0049】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。
【0050】[実施例1] (準備)ガラス板の表面にポリエチレンテレフタレート
(PET)フィルムを載置し、該フィルムの四辺に所定
厚みのテープを二重に貼付けて枠を造った。
【0051】(試料の調製)4gの脱塩アルカリゼラチ
ンに76gの水を入れて60℃で攪拌しながらゼラチン
を溶解した。そして、ホモジナイザーの器に1.97g
のセグメント化ポリウレタン[C49−(U)−PCL(5
30)−(U)−(CH2)6−(U)−PPG(400)−(U)−(C
2)6−(U)−PEG(1000)、mp:34.5〜35.
5℃]を量り取って加熱溶融し、これに上記のゼラチン
水溶液と1.6gのグリセリンと0.12gの架橋剤
(デナコールEX−313)を加えて、5000rpm
で5分間攪拌した。次いで超音波洗浄器で温度をかけな
がら脱泡し、その途中で38gの水を追加して試料を調
製した。
【0052】(成膜)上記の試料を先に準備したガラス
板のPETフィルムの上にスポイトで垂らし、ガラス棒
で厚さ600μmの膜状に展開した。そして、これを温
度23℃、湿度65%のクリーンルーム内で2日間乾燥
し、厚さ30μmの相分離膜を作製した。得られた相分
離膜の電子顕微鏡写真のコピーを参考写真コピーとして
添付する。この写真コピーより明らかなように、本実施
例の膜は図1と同様のスピノーダル分解による相分離の
パターンを示していることが分かる。
【0053】次に、この膜を適当な大きさに打ち抜き、
水面上に浮かべて、水が膜を透過する様子を光学顕微鏡
によって追跡し、経時的に写真をとった。これを参考写
真1(〜)として添付する。それによれば、ゼラチ
ン相とセグメント化ポリウレタン相の界面に最初に劈開
が生じ(このことは両者の結合があまり強い化学結合を
していないことを示し、単なる物理的混合に近いことの
あらわれと考えられる)、次いで、徐々に、あたかもヒ
トの皮膚より汗がにじみ出るように水がセグメント化ポ
リウレタンを溶解しながら膜の表面に浸出する様子が明
らかであり、透過膜としての有用性を裏付けるものであ
る。
【0054】[実施例2]実施例1と同様にゼラチン対
セグメント化ポリウレタンの比率が7:3になるように
次式のセグメント化ポリウレタンを配合して40μmの
厚さの相分離膜をつくった。 PPG(400)−(U)−(CH2)6−(U)−PEG(1000) この膜を実施例1と同様に水に浮かべて水の浸出状況を
光学顕微鏡で追跡し、経時的に写真をとった。これを参
考写真2(〜)として添付する。その結果、水の浸
出速度は実施例1よりもかなり速く、30秒後には水は
膜面をほとんど覆ってしまった。これは、上記のセグメ
ント化ポリウレタンがより親水性であるためであり、親
水性の薬物等をより速く透過させるのにより都合のよい
膜であることを裏付けるものである。
【0054】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の相分離膜は、セグメント化ポリウレタン相内を移動す
る薬物その他の化学物質の速度制御や透過量の調節を自
在に行うことができるといった顕著な効果を奏し、ま
た、方向性のある液体透過膜として使用することもでき
るといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の相分離膜を模式的に示す拡大部分平面
図である。
【符号の説明】 1 ゼラチン相 2 セグメント化ポリウレタン相
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // A61K 9/00 V

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】架橋されたゼラチン相と未架橋のセグメン
    ト化ポリウレタン相が混在する相分離した膜。
  2. 【請求項2】セグメント化ポリウレタン相が常温では固
    体状であり、30〜37℃以上では液状となる請求項1
    に記載の相分離した膜。
  3. 【請求項3】セグメント化ポリウレタンが両親媒性であ
    る請求項2に記載の相分離した膜。
  4. 【請求項4】セグメント化ポリウレタンの分子量が約1
    000〜13000であり、各セグメントの分子量が約
    200〜3000である請求項2に記載の相分離した
    膜。
JP20883193A 1993-07-30 1993-07-30 相分離した膜 Expired - Fee Related JP3168367B2 (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20883193A JP3168367B2 (ja) 1993-07-30 1993-07-30 相分離した膜
EP94921838A EP0663235B1 (en) 1993-07-30 1994-07-29 Phase separated membrane
CA002145646A CA2145646C (en) 1993-07-30 1994-07-29 Phase-separated membrane
US08/406,993 US5563191A (en) 1993-07-30 1994-07-29 Phase-separated membrane
DE69434113T DE69434113T2 (de) 1993-07-30 1994-07-29 Membrane mit getrennten phasen
PCT/JP1994/001254 WO1995003879A1 (fr) 1993-07-30 1994-07-29 Membrane a separation de phases

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20883193A JP3168367B2 (ja) 1993-07-30 1993-07-30 相分離した膜

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0751555A true JPH0751555A (ja) 1995-02-28
JP3168367B2 JP3168367B2 (ja) 2001-05-21

Family

ID=16562835

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP20883193A Expired - Fee Related JP3168367B2 (ja) 1993-07-30 1993-07-30 相分離した膜

Country Status (6)

Country Link
US (1) US5563191A (ja)
EP (1) EP0663235B1 (ja)
JP (1) JP3168367B2 (ja)
CA (1) CA2145646C (ja)
DE (1) DE69434113T2 (ja)
WO (1) WO1995003879A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010024225A (ja) * 2008-06-19 2010-02-04 Alcare Co Ltd 組成物、及び該組成物を用いた貼付材、並びにこれらの製造方法

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2744646B1 (fr) * 1996-02-13 1998-04-24 Centre Nat Rech Scient Procede de fabrication d'une membrane de filtration deposee sur un support ceramique poreux
WO2004112759A2 (en) * 2003-06-17 2004-12-29 Peter William Richards Skin patches
JP5090706B2 (ja) * 2006-10-16 2012-12-05 並木精密宝石株式会社 アクチュエータ

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB1088992A (en) * 1963-09-19 1967-10-25 Squibb & Sons Inc Protective dressings
US4638043A (en) * 1984-11-13 1987-01-20 Thermedics, Inc. Drug release system
JPH0725666B2 (ja) * 1986-05-14 1995-03-22 タキロン株式会社 経皮投与用貼付剤
JPH0739457B2 (ja) * 1986-05-14 1995-05-01 タキロン株式会社 両親媒性セグメントポリウレタン
ES2043619T3 (es) * 1986-05-14 1994-01-01 Takiron Co Adhesivo para administracion percutanea.
GB2216527B (en) * 1988-03-03 1992-07-29 Sadao Nishibori Method for pulverising gelatin and its use in paint, coating layers, films and finished cloth
US5225536A (en) * 1989-08-16 1993-07-06 Sadao Nishibori Particles of gelatin and amino acid to be blended in resins

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010024225A (ja) * 2008-06-19 2010-02-04 Alcare Co Ltd 組成物、及び該組成物を用いた貼付材、並びにこれらの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
CA2145646A1 (en) 1995-02-09
EP0663235B1 (en) 2004-11-03
CA2145646C (en) 2002-09-03
US5563191A (en) 1996-10-08
DE69434113D1 (de) 2004-12-09
EP0663235A1 (en) 1995-07-19
DE69434113T2 (de) 2005-10-27
JP3168367B2 (ja) 2001-05-21
EP0663235A4 (en) 1996-11-20
WO1995003879A1 (fr) 1995-02-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gutowska et al. Heparin release from thermosensitive polymer coatings: in vivo studies
US5762944A (en) Antithrombotic resin, antithrombotic tube, antithrombotic film and antithrombotic coat
US8257624B2 (en) Porous nanosheath networks, method of making and uses thereof
JP2003529639A (ja) 発泡複合体
DE69817856T2 (de) Antithrombotisches medizinisches material enthaltend fluorinierte polysulfone
EA000300B1 (ru) Искусственная разделительная мембрана
DE3149976A1 (de) Makroporoese asymmetrische hydrophile membran aus synthetischem polymerisat
DE3485618D1 (de) Zusammensetzung zur kontrollierten abgabe eines wirkstoffes und ihre herstellung.
EP0109269B1 (en) Shaped semi-solid articles
WO1997017129A1 (en) Immunoprotective membrane
CA1107467A (en) Polycarbonate membranes for use in hemodialysis
JP3168367B2 (ja) 相分離した膜
JP7023717B2 (ja) 半透膜及びその製造方法
EP1099468B1 (de) Mikroporöse hydrophile Membran
JPH07505786A (ja) 生存可能な細胞の培養法および体液中の化合物濃度の調整法
CN110831637A (zh) 移植用室及移植用器件
US4308145A (en) Relatively thick polycarbonate membranes for use in hemodialysis
DE2011842B2 (de) Verfahren zum herstellen eines mikroporoesen, flexiblen folienmaterials
JP3240496B2 (ja) 経皮吸収製剤
DE1720073A1 (de) Verfahren zur Herstellung von Ersatzmitteln fuer Organe und Gewebe
EP1177829B1 (de) Mit Blut und Gewebe verträgliche Membranen aus P(AN/NVP)-Misch-polymeren und deren Anwendung im medizinischen Bereich
JP6870087B2 (ja) 移植用チャンバー、移植用チャンバーの製造方法、移植用デバイス、および多孔質膜の融着方法
JP6790268B2 (ja) 移植用チャンバーおよび移植用デバイス
JP3130082B2 (ja) 生体適合性に優れた透過膜
CN1115964A (zh) 经皮吸收制剂

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20010123

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees