JPH0751420Y2 - パワーステアリング機構付き作業車における操舵輪のトレツド調整装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、パワーステアリング方式によつて操舵ができ
るようにした農用トラクタ等のパワーステアリング機構
付き作業車における操舵輪のトレツド調整装置に関する
ものである。

［従来技術及び考案が解決しようとする問題点］ 一般に、この種作業車においては、作業の条件や種類等
に応じて左右操舵輪間の間隔（トレツド）を調整するこ
とがある。しかるに従来、このトレツド調整は、ジヤツ
キアツプにより持ち上げて地面から浮かした状態とし、
この状態で、作業者が操舵輪を直接あるいは間接的に押
し引きして行う人的作業によつて行うようになつていた
ため、作業性が著しく劣るうえに著しい労力の負担が強
いられることに成り、しかもジヤツキアツプするための
専用の工具や設備、並びに安全な調整作業をするための
適当な場所を必要とし、これがないとトレツド調整を全
く行うことができないという欠点があつた。

［問題を解決する手段］ 本考案は、上記の如き実情に鑑み、これらの欠点を一掃
することができるパワーステアリング機構付き作業車に
おける操舵輪のトレツド調整装置を提供することを目的
として創案されたものであつて、フロントアクスルケー
スの先端部にトレツド調整が可能となるよう左右方向移
動自在に支持され、かつ操舵輪が取付けられるフアイナ
ルケースを操舵揺動するよう支持したアクスルケース
と、該アクスルケースの左右移動の固定をする固定具
と、パワーステアリング用シリンダのシリンダロツドに
前記トレツド調整に対応して左右方向移動自在に支持さ
れ、かつ先端部がフアイナルケースから延びるナツクル
アーム側に連動連結される調整ロツドと、該調整ロツド
の移動ロツクをするロツク具と、操舵輪が最大操舵角ま
で操舵されたときフアイナルケースが接当してこれ以上
の操舵揺動を規制すべくフロントアクスルケースに設け
たストツパとからなり、かつ該ストツパは、そのストツ
パ位置を操舵輪が最大操舵角に達する以前でフアイナル
ケースの操舵揺動を規制してトレツド調整ができるよう
調節可能に構成されていることを特徴とするものであ
る。

そして本考案は、この構成によつて、パワーステアリン
グの操舵力を有効に利用してジヤツキアツプしないでも
簡単かつ安全にトレツド調整を行うことができる様にし
たものである。

［実施例］ 次に、本考案の一実施例を図面に基づいて説明する。図
面において、１は農用トラクタの走行機体であつて、該
走行機体１のステアリングホイール２から垂下するステ
アリングシヤフト３にはパワーステアリング用の切換え
バルブ４が設けられており、ステアリングホイール２の
操舵作業に連繋して油圧ポンプＰからの圧油を後述する
パワーステアリング用のシリンダ５に送るようになつて
いる。この切換えバルブ４から排出され、油タンクＴ
（トランスミツシヨンケース７に兼用される）に至る戻
し油路には、エンジン停止時等におけるステアリング操
作を容易ならしめるため、油圧ポンプＰからの戻り油を
油路6a,6bより放出しても切換えバルブ（ステアリング
ユニツト）４の作動（エンジン停止時の作動）を可能な
らしめるための油溜り６が設けられており、さらにその
流路下手側では、トランスミツシヨン７の前部潤滑部7a
と後部潤滑部7bとに至るべく油路6a、6bに分岐してあ
る。そして両油路6a、6bの分岐部近傍には、機体の前後
傾斜に基づいて戻り油の油量切換え調整をする油量調整
手段８が設けられている。

つまりこの油量調整手段８は、水平状のシリンダ筒8bに
前後方向移動自在なピストン8aが内装されている。そし
て機体１が前下り状態に傾斜した場合には、ピストン8a
は自重により前方移動して前部潤滑部7aに至る油路6aを
絞つて前側への戻り油供給を少なくし、逆に機体１が後
下り状態に傾斜した場合には、ピストン8aは自重によつ
て後方移動して該側の油量を絞つて戻り油供給を少なく
し、これによつて機体が前後傾斜した場合において、ト
ランスミツシヨンケース７内の油が前側あるいは後側に
溜り、逆側における潤滑油不足を有効に回避できるよう
になつている。

また、前記パワーステアリング用のシリンダ５は複動式
のものであつて、そのシリンダ筒5aは機体シヤーシ９お
よびフロントアクスルケース10にブラケツト9a、10aを
介して一体的に取付けられるものであるが、シリンダ筒
5aの両端部から左右方向にそれぞれ突出するシリンダロ
ツド5bは筒状になつていて、ここに調整ロツド11が左右
方向移動自在に嵌入して支持されている。そしてこの調
整ロツド11の先端部にピン軸12aを介して基端部が枢支
された連結ロツド12の先端部には、操舵輪である前輪13
を取付けるフアイナルケース18から延設のナツクルアー
ム14の先端部が揺動自在に枢結されている。前記フアイ
ナルケース18はアクスルケース20に図示しないキングピ
ンによつて操舵揺動できるように設けられているが、ア
クスルケース20から内方に向けて突出する嵌入部20aは
フロントアクスルケース10の端部に対して左右方向移動
自在に嵌入支持されており、そしてアクスルケース20
は、固定ボルト19の緊締（ボルト嵌入に基づいたキー嵌
合方式が本実施例では採用されている）によつてフロン
トアクスルケース10に対して複数段の位置決め固定がで
きるようになつている。

前記シリンダロツド5bの先端部にはボルト−ナツトから
成るロツク具15が設けられており、一方、調整ロツド11
には所定間隔（この間隔は、前記アクスルケース20の移
動ピツチに対応してセツトされ、かつ後述するようにト
レツド調整時において例えば右側アクスルケース20の移
動ピツチと左側調整ロツド11の移動ピッチとに対応して
両者が一致する間隔に設定されていることが好ましい）
を存して調整孔11が穿設されている。そしてこのロツク
具15による調整ロツド11のロツク固定を解除をすること
によりシリンダロツド5bに対して調整ロツド11を自由に
左右移動できるようになつている。

またフロントアクスルケース10の左右両端部（実施例で
はフランジ状部）にはボルト−ナツトによつて構成され
るストツパ16a、16bがフアイナルケース18の前後内側面
にそれぞれ対応するように設けられているが、ストツパ
16a、16bは、頭部をフロントアクスルケース10に所定位
置まで没入させた設定位置にセツトすることにより、前
輪13を最大操舵角に操舵した場合にフアイナルケース18
の接当部18a、18bの何れかが対応するストツパ16aまた
は16bに接当してこれ以上の前輪操舵を規制することに
なる。また、例えば、ストツパ16bを前記貫清一を越え
て突出調整することで、該ストツパ16bに、前輪13が最
大操舵角に達する以前の早い段階でフアイナルケース18
の対応する接当部18bに接当してこれ以上の操舵揺動を
規制するように構成されている。

叙述の如く構成された本考案の実施例において、調整ロ
ツド11のロツク具15によるロツク固定、アクスルケース
20の固定ボルト19による移動固定、並びにストツパ16
a、16bを所定位置にセツトした状態でステアリングホイ
ール２の操舵操作をし、これに連繋したシリンダ５への
圧油供給によつてシリンダロツド5bが左右方向に移動
し、これに伴うナツクルアーム14の操舵作動によつて、
フアイナルケース接当部18aまたは18bがストツパ16aま
たは16bに接当するまでアクスルケース20に対して操舵
揺動させて前輪13の操舵を行うことになる。

この様にフアイナルケース当接部18aまたは18bがストツ
パ16aまたは16bに接当して操舵規制されるまでの操舵揺
動範囲を最大操舵角として前輪13による操舵を行うこと
ができるものであるが、トレツド調整を行うに際し、い
ま両前輪13のトレツドを広くする方向に調整をしようと
した場合について説明する。

第４図、第５図において、左側ロツク具15のロツク解除
をして該側の調整ロツド11をシリンダロツド5bに対して
移動自由とする一方、右側の固定ボルト19を緩めて該側
のアクスルケース20をフロントアクスルケース10に対し
て自由とし、かつ一方（後側）のストツパ16bをフロン
トアクスルケース10から突出させて早期に接当する状態
にセツトし、この状態で左向きの操舵作業を行うと、左
前輪側においては、右方向に移動するシリンダロツド5b
に対して調整ロツド11はそのまま残された状態となつて
調整ロツド11はシリンダロツド5bから抜け出る方向に移
動することに成り、また右前輪側においては、フアイナ
ルケース18は最大操舵角に達する以前の段階でストツパ
16bに接当してこれ以上の揺動が規制されることにな
り、それ以降のシリンダ５の作動による操舵力によつて
アクスルケース20はフロントアクスルケース10から外側
に移動して押し出される。そして所望状態まで押し出さ
れた時点でロツク具15によるロツクと固定ボルト19によ
る緊締を行うと共に、ストツパ16bを元位置に戻し、今
度は逆側について同じように調整操作をすることでトレ
ツドが広くなる方向に調整することができる。またトレ
ツドを狭くする方向の調整も同様にして行うことができ
る。

この様に、本考案が実施されたものにおいては、操舵輪
である前輪13のトレツド調整を行う場合に、従来の如く
前輪13をジヤツキアツプして地上から浮かせる必要はな
く、接地状態のままで、しかもパワーステアリング用の
操舵力をそのまま有効に利用して容易に行うことができ
る。従つてトレツド調整の作業性が著しく向上し、例え
ばジヤツキアツプ設備のない圃場のようなところであつ
てもロツク具の緊緩作業等ができる簡便な工具さえあれ
ば必要において適時安全にしかも容易に行うことができ
る。

そのうえ、前記トレツド調整作業において、フアイナル
ケース18のアクスルケース20に対する回動規制が、フア
イナルケースの最大操舵角を設定するためのストツパ16
a、16bの突出量を調整することで簡単にできる結果、専
用の規制部材が不要になつて構造の簡略化、部品の兼用
化が計れると共に、フアイナルケース18のアクスルケー
ス20への揺動規制を、フアイナルケース18をアクスルケ
ース20に対して位置決めした状態で行わなければならな
いもののように位置合わせ作業が不要で作業性も改善す
る。

尚、本考案においては、トレツド調整に際し、その手順
は前記実施例に限定されるものではないことは勿論であ
り、作業者が適当とする手順で自由に行うことができる
ことは言うまでもなく、また必要において左右何れか一
方の操舵輪のみのトレツド調整もできるものである。

［作用効果］ 以上要するに、本考案は叙述の如く構成されたものであ
るから、操舵輪のトレツド調整をする場合に、該調整す
るに必要な対応する側において、アクスルケースを、固
定具の解除でフロントアクスルケースに対して移動自在
とし、調整ロツドを、ロツク具のロツク解除でシリンダ
ロツドに対して移動自在とし、かつストツパを最大操舵
角に達する以前の早い段階でフアイナルケースに接当す
るように調整した状態にした後、前記調整したい側に操
舵作業を行うと、これに伴いパワーステアリングが操舵
作動することになるが、この操舵力に基づきフアイナル
ケースが前記調整されたストツパに早い段階で当接し、
これ以降のステアリング操舵力でトレツド調整がなされ
ることになる。

この結果、パワーステアリングの操舵力を有効に利用し
てアクスルケースと調整ロツドの左右移動を行つて必要
なトレツド調整を行うことができることになつて、従来
の如く操舵輪のトレツド調整を、いちいち人的作業で行
うような必要がなく、しかもパワーステアリングによる
操舵力を利用した簡単かつ安全なトレツド調整を行い得
て、著しい作業性の向上が計れる。

そのうえ、前記トレツド調整作業において、フアイナル
ケースのアクスルケースに対する早期の回動規制が、フ
アイナルケースの最大操舵角を設定するためのストツパ
の突出調整をすることで簡単にできる結果、専用の規制
部材が不要になつて構造の簡略化、部品の兼用化が計れ
ると共に、フアイナルケースのアクスルケースへの揺動
規制を、フアイナルケースをアクスルケースに対して位
置決めした状態で行わなければならないもののように位
置合わせ作業が不要で作業性も改善する。

【図面の簡単な説明】

図面は、本考案に係るパワーステアリング機構付き作業
車における操舵輪のトレツド調整装置の実施例を示した
ものであつて、第１図は農用トラクタの概略側面図、第
２図はステアリング部の側面図、第３図は同上正面図、
第４図はフロントアクスル部の正面図、第５図は同上平
面図、第６図はパワーステアリングの油圧の配線ブロツ
ク図、第７図は油圧配線図、第８図A,Bは戻り油調整機
構の作用説明図である。 図中、１は走行機体、５はハワーステアリング用シリン
ダ、5bはシリンダロツド、10はフロントアクスルケー
ス、11は調整ロツド、13は前輪、14はナツクルアーム、
15はロツク具、16a、16bはストツパ、18はフアイナルケ
ース、19は固定ボルト、20はアクスルケースである。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】フロントアクスルケースの先端部にトレツ
   ド調整が可能となるよう左右方向移動自在に支持され、
   かつ操舵輪が取付けられるフアイナルケースを操舵揺動
   するよう支持したアクスルケースと、該アクスルケース
   の左右移動の固定をする固定具と、パワーステアリング
   用シリンダのシリンダロツドに前記トレツド調整に対応
   して左右方向移動自在に支持され、かつ先端部がフアイ
   ナルケースから延びるナツクルアーム側に連動連結され
   る調整ロツドと、該調整ロツドの移動ロツクをするロツ
   ク具と、操舵輪が最大操舵角まで操舵されたときフアイ
   ナルケースが接当してこれ以上の操舵揺動を規制すべく
   フロントアクスルケースに設けたストツパとからなり、
   かつ該ストツパは、そのストツパ位置を操舵輪が最大操
   舵角に達する以前でフアイナルケースの操舵揺動を規制
   してトレツド調整ができるよう調節可能に構成されてい
   ることを特徴とするパワーステアリング機構付き作業車
   における操舵輪のトレツド調整装置。