【発明の詳細な説明】
アークダウンを防止するための接地されたシールドを有する電子ビームガン
背景技術
1、発明の分野
本発明は、高直流負電圧(HV)を使用して多くの異材料を溶融し、鋳造するた
めのあるいは種々の基板上に薄膜コーティングを生成する高レベル真空蒸発源の
ための高エネルギー電子ビームを形成する新規でかつ改良された電子銃構造に関
する。特に、本発明は、高レベル真空チャンバにおけるe−ガンのフィラメント
リード線及びエミッター構造を含む電極として機能する設置金属製シールドの使
用に関する。
2、関連技術の説明
真空ファーネスは従来金属あるいはその他の材料の溶融あるいは鋳造をする場合
にe−ガンを使用している。この場合、真空ファーネスは、50KVもの高直流
負電圧(HV)とlθトンものインゴットを使用する。真空ファーネスは、光学
産業における4分の1波スタツクの薄膜装置、集積回路、あるいは製造過程の部
分として薄膜技術を使用する他の多くの装置の製造での高エネルギー電子ビーム
加熱蒸発源としても使用することができる。このタイプのプロセスでは、高直流
負電圧(HV)値は4KVと低く通常10KVである。
いずれのタイプのe−ビーム動作においても、この動作が高直流負電圧(HV)
のアーク放電またはグロー放電の発生によって中断されることが判明している。
このことは、電圧が数百Vにまで低下し、電流が、電流値を与えるための外部の
PS回路の能力によってのみ制限されるレベルにまで上昇するという点において
、有害な結果をもたらす。
上記のアークまたはグローは、負の高直流電圧(HV)が真空中で印加される全
ての伝導性表面が、そのような表面から少数の電子がチャンバ壁あるいは内部フ
ァーネス装置のような設置表面に流れ出て失われてしまうことよって引き起こさ
れるものである。このチャンバ内の圧力により、電子は、多くの気体原子を一1
0KVから0までのバスの約20ボルトごとあるいは、約500イオン及び同数
の電子の潜在的クリごとのエネルギーしきい値でイオン化することができる。
さらに、全電流は、イオン化された原子からの全ての電子の流れ及びイオン形成
プロセスのそれらの部分からの同伴電子によってさらに増大する。この効果は、
“ガイガー放電(Geiger Discharge)″として知られており、
外部回路によってのみ制限される電流に比例する。初期放電電流は、負電圧に吸
引される正イオンを浴びせられた高直流負電圧(HV)表面から解放された多量
の二次電子によって増大する。
上記は高電圧産業では問題であり、この問題は、これまでのところ、充分には防
止することができていないものである。
初期アークを減少させる試みは1944年ごろカリフォルニア大学の物理学者に
より、カル−ドロン(Calutron)ウラニウム同位体分離チャンバに関連
して行われた。この試みでは、絶縁体を使用してサイドスカートを有する端カッ
プを備えた装置を保護し、該絶縁体上のコーテイング量を減少せしめている。
負電圧の側端部が端部表面に印加する電圧勾配が減少するキャップによってカバ
ーされている場合には、絶縁体の両端の回りのアークの量が、減少するというこ
とが判明した。しかし、この現象は、負電圧側端部がこれに印加される高直流負
電圧(HV)を有するという点において、本発明と異なる。絶縁体は正電圧側端
部にむかって電子が少量流出する程度の有限の抵抗をもつ。絶縁体の金属−セラ
ミックインターフェース及び周囲の金属における電圧勾配の減少によってその領
域、その領域のみにおいてアークの発生が減少する。したがって、この改良は出
願人か接地構造を有する高直流負電圧(HV)をカバーする本発明の内容と反す
るものである。
e−ビーム加熱蒸発器の開発が1954年ごろであるので、アークダウンを減少
するために受け入れられる解決方法は、電源とe−ガンとの間の高直流負電圧(
HV)リード線に電流を急速に自己冷却するような低い値に限定するための大型
抵抗器を設置することである。したがって、これらの試みは、電力を停止及び復
旧する手段としてアークを生じさせる電流を制限することを目的としていた。
シュタインメッツ(Stenmetzs)は、1915年ごろ、一連の街路灯ア
ークランプ最大電流値を制御した。そして、これは後に、増大した電流要求に合
致した電流値を維持して高直流負電圧(HV)を低下することとなる単一サイク
ル共鳴ネットワークにおいて採用された。
より迅速な同様な電子電流制御装置がほぼ50KV近(のレベルを維持するだめ
の数100KW容量及び電圧の容量を有する電力用電子3極管及び4極管の開発
とともに入手可能になってきている。この場合の制御機能は電力供給を通じて流
れる電流とチューブグリッド回路への電圧供給の増加を単に監視し、いかに急激
であろうとも、電流を停止してアークを静めるものである。可変のインピーダン
スを有する湾曲バスに沿って電子ビームを放出する装置を開示した米国特許第3
.204.096号を参照する。この改良においては、高直流負電圧(HV)は
電流が変化するときには、変化する。
他の制御方法が高直流負電圧(HV)変換装置の一次側に用いられている。
上記の全ての方法は、単にアークダウン効果が生じた後においてアークダウン効
果をを制御し、最/j%(ヒすることを目的としたものである。
発明の概要
本発明は、アークすなわちグロー現象の開始を抑制して、電子発生が増大するこ
とによって微小な初期電子が1アンペアあるいはそれ以上となって陰極から地面
への大量の導電電流を生じることを防止するものである。
本発明によれば、通常のグロー放電においては、陰極下降スペースが陰極がら張
出する距離は電子の平均自由経路の大きさである。その電子の平均自由経路の長
さの範囲内において、可能性として、陰極の一般の表面を出る電子当たりの半分
のイオン化衝突を越えることはない。したがって、本発明によれば、e−ビーム
の動作と干渉しないように構成され、かつ高直流負電圧(HV)表面がらI電子
平均経路あるいはこれより短い距離に配置されたすべての高直流負電圧(HV)
表面を覆う“接地した”金属シールドあるいは、電極はアークダウンあるいはグ
ロー放電の生成のための十分な電子流を形成することが許されないようになって
いる。
陰極高直流負電圧(HV)表面をでて接地表面に向がって移動する通常のきわめ
て少数の電子以外では、電子平均自由経路の大きさの値は、上記経路においては
アーク及びグロー現象に必要な量の付近まで電流の増大を与えるような十分な気
体原子は存在しないということを示している。このような効果は以下のような理
由で発生する。すなわち、イオン化した電子がほとんど存在しないため、陰極表
面の正イオンの印加による光電子が、本質的には、な(、がっ、イオンの再結合
に必要の電子が極めて少量であるために、高直流負電圧(HV)から地面への電
流は殆ど存在しない。
上記を証明するために実験を行った。正確なマイクロメータを真空チャンバへの
高直流負電圧(HV)の導入部に直列に配置し、表面の高直流負電圧(HV)の
存在によって引き起こされる電流を監視した。以下は、予め選択された異なる圧
力におけるマイクロメータの読み取り値を示す表である。
理論上の操作圧力よりも5oから150倍も大きく、高直流負電圧(HV)表面
からシールドが隔置する距離はその高い圧力において計算される。さらに、“予
め選択された真空値”塗装あるいは溶融操作に使用するチャンバ圧力として参照
している。この圧力は、電子平均自由経路が計算され、接地シールドの間隔がよ
り高い圧力値で動作するように構成された場合には、アークダウンの生じないモ
ードが、首尾良(動作することができる圧力の約100ないし150分のlであ
る。0.5から5.0パスカルの圧力にょって、一般的な範囲は、10. 11
から1.26anの大きさを含む範囲に限定される。
圧力は真空チャンバ内において変化が生じ、この変化は100分の1あるいはそ
れ以上に達する。表面、プレートの連結部、盲状のタップ切りされたボルト孔か
ら吹き出るトラップされたガスなどが局部的に加熱されるといったこと力用常的
に発生する。アークあるいはグローが開始するとさらに加熱してさらにガス発生
機構に悪影響をもたらす。したがって、平均自由経路にしたがってシールドと高
直流負電圧(HV)表面との間隔を計算するに際し、100倍から150倍の圧
力増加の制御を予期する、より短い間隔を用いることが必要となる。電子平均自
由経路が極めて長い低圧力のもとでは、アーク及びグローが開始時に発生するこ
とはない。そして、日常の使用においてこのアーク及びグローが発生しないこと
の事実は、局部的なガスの発生、高直流負電圧(HV)の勾配の大きな局部領域
及び他の要因に起因する。本発明にしたがえば、初期のアークダウンは発生しな
かった。
“予め選択した真空値”の語を使用することに関連して、蒸発のためにe−ガン
を使用する場合には、高品質塗装を行なうために適合しなければならない平均自
由経路の基準がある。ファーネスの周辺の平均自由経路は真空蒸発源と基板との
間の距離に等しいかあるいはこれよりも大きくするべきである。そうでなければ
、通過蒸気原子のエネルギーは衝突によって減少し、ファーネスの周辺の原子の
エネルギーを失うこととなる。塗装の厚さの均一性を増加させるためには、距離
を大きくすることが望ましい。大抵のe−ビームの塗装装置は、“しもつき現象
(frosting)”塗装の形成を防止するのに望ましい平均自由経路を得る
ために25cmの大きさを用いる。このことは、0.03パスカルすなわち2.
7X10−’トールで達成される。本発明によれば、高直流負電圧(HV)表面
から接地シールドの距離は約2桁だけ大きい圧力の値において電子平均自由経路
の距離すなわち約2cmとすべきであり、これによって、局部的な圧力バースト
において100分の1あるいはそれ以上にアークダウンを抑制することができる
。
図面の簡単な説明
図1は、本発明を用いた真空チャンバの部分を示す概略図、図2は、図1のほぼ
線2−2に沿う断面図、図3は、図1の部分の拡大図、
及び、
図4は、変形例の図2と同様の図である。
好ましい実施例の説明
本発明の好ましい実施例ついて、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。本発
明は、好ましい実施例に関連して説明されるが、これらの説明は、本発明をこれ
らの実施例に限定することを意図したものではない。これど反対に、本発明は添
付の請求の範囲において規定される本発明の精神及び範囲内に包含される変形、
修正及び均等物をカバーすることを意図するものである。
本発明は、アークあるいはグローの形成の初期段階の開始を抑制するものである
。本発明は、高直流負電圧(HV)表面からゼロ電圧すなわち地表電圧への電子
流に対して空間を有効に利用するとともに、この空間を予想される最も高いチャ
ンバ圧力における電子平均自由経路の距離よりも僅かに小さい値に制限すること
によって達成することができる。通過する電子は、陰極表面から極めて迅速にほ
ぼl0KVの地面対して加速されるけれども、その全体の通過距離にわたってイ
オン衝突の確立は最小である。電子は、単に、その点においてl0KV電子エネ
ルギー量で接地される。
添付の図1ないし図3の変形例を参照すると、真空チャンバが真空チャンバ壁1
1の一部によりて図示されている。チャンバ内には、くぼみ13を形成したルツ
ボ12が設けられている。くぼみ13の内部には、金属あるいはその他の材料1
4が配置されて溶融あるいは蒸発させられるようになっている。高電圧供給部1
6及び17が真空壁11、真空を保持するするために蒸気供給部の回りにもつら
れた慣用的な高レベル真空供給部18を貫通しており、これらは当業界ではすべ
て周知である。供給部16及び17は、フィラメントリード21及び22にそれ
ぞれ付属のネジ23あるいは他の慣用手段によって接続されている。各リード線
21及び22には、また、エミッター構造26.27が付属のネジ28あるいは
その他の慣用手段によって取りつけられている。このような構造の通常の機能は
、上記の電子ガン(e−ガン)からの電子でルツボ12内の金属、その他の材料
14に衝撃を与えることである。このように衝撃を与えることによって、金属、
その他の材料14の溶融あるいは蒸発が生じる。このことは当業界では周知のこ
とである。
図3を参照してエミッタ構造40の詳細を説明すると、フィラメント36と陽極
37は、HV絶縁体39によって絶縁されたビーム形成電極38によって案内さ
れる放出を生じる。ビーム通過開口42が電子ビームの開始によってシールド3
2内に形成される。下記は、さまざまな圧力のもとての電子平均自由経路の部公
的な表である。
真空チャンバは、電子銃が配置される使用状態に応じて異なる圧力になっている
。
本発明によれば、金属シールド31は、全ての高直流負電圧(HV)のエレメン
ト、特に導入部21.22、フィードスルー18及びエミッタ構造26.27の
まわりに設けられる。シールド31と上記のエレメント(以下HVエレメントと
いう)は真空塗装設備の場合、4パスカルあるいはそれ以上の圧力で上記平均自
由経路より短(なっている。チャンバを介しての高直流負電圧(HV)表面と地
面との間はほぼ4分の1インチだけ離れている。実際上は、丸棒フィラメントリ
ード線21.22は金属管の内部に同軸状に配置される。エミッタ構造26.2
7は金属シートに収容されており、これから4分の1インチだけ隔置している。
真空引きは端部にスリット状の開口45及びベンドを設けることによって行われ
る。開口45は、十分に小さいので、問題の電子平均自由経路を維持できるよう
になっている。ビームはこれ自身によって小孔32を形成し、この小孔をとおっ
てビームがその経路のシールド31から出てルツボ12に入る。
これまで説明してきたe−ガンシステムについての観察結果によれば、4パスカ
ル(30ミリトール)よりチャンバ圧力が低い場合に、電圧がかかった場合には
、アークダウンあるいはグロー放電は発生しない。このような実験は、高品質の
両方の作動モードを一度にテストすることができるので、有効である。ポンプダ
ウンの直後が吸収された大気の主たる真空化の時間であり、結果的に、多くのア
ークが発生しやすい時間であることが判明した。e−ガンのフィラメントを加熱
するとエミッタからビームが発生して、上昇し、そして、ルツボ12に湾曲して
下降し、そこで、そこに配置された金属14を溶融する。
図1ないし図3の実施例は、電子ビームがエミッタ構造40からルツボ12内に
ある材料14への経路において180°の円弧を描いて方向転換することを示し
ている。この配置は、材料が開口32を介してエミッタ構造36の中に落ち込ん
でしまう可能性があるという点で不利である。図4の実施例は、磁石43を使用
して電子経路を270°だけ曲げるようにしている。電子ビームの経路を反転さ
せる手段については、これについて説明した米国特許第4.835.789号を
参照されたい。図4において、磁石43は、スチール製磁石ベース44に支持さ
れ、ルツボI2の周辺に設けられている他の磁石の例示である。開口32aを通
過する電子は270°湾曲してルツボ12aに到達する。
多くの点において、図4のエレメントは先行の実施例に類似しており、対応する
部品を表示するのにその参照番号に添字aを付したものを用いることとする。
本発明の特定の実施例にかかる上記の説明は、例示及び説明の目的で表されてい
るものである。それらは消尽的であることを意図してものでも、本発明を開示し
た正確な形態に限定することを意図したものでもな(、上記の教示に照らして多
くの変形及び、修正が可能であることは明らかである。実施例は、本発明の原理
及びその実際上の適用について最も良く説明するために選択され、そして説明さ
れているものであり、これによって、当業者が意図する特定の使用に適合するも
のとしてさまざまな変形を伴って最もよ(本発明及びさまざまな実施例を活用す
ることができるものである。本発明の範囲は、添付の請求の範囲及びその均等物
によって規定されるべきものであることを意図している。
「
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