【発明の詳細な説明】
沃化ナトリウムIII lカプセル
本発明は甲状腺疾患の治療に使用される放射性医薬品に関する。特に、本発明は
増大された安定性とより低い揮発性を有する沃化ナトリウム+311カプセルに
関する。
甲状腺疾患の治療のための13II−沃化物の使用は従来技術において知られて
いる。特に、甲状腺組織を破壊するためのミリキューリー量の1311−沃化物
β線同位体の投与は一般に好ましい外科的処置とし受け入れられている。これは
悪性である場合、または転移症状が見られる場合に特にそうである。放射性沃化
物は経口投与に適した液状およびカプセル形態で有効に供給されており、また三
者の選択は明らかに治療を施す人の採択に基づく。
沃素の高い毒性と揮発性のため、放射性沃化物製剤は常に比較的高度のリスクを
その製剤を取り扱う人達に与えていた。このリスクを減らすため、+3II−沃
化物のパッケージは一般に沃素の偶発的な吸入を回避するべくヒユームフードで
開封される。さらに、吸着性沃素トラップを有する特定の貯蔵容器が製造された
放射性沃化物を輸送および貯蔵するため使用される。
沃化物イオンそれ自体は非揮発性であるため、空気によって運ばれる放射能の広
がりは他の化学種によりひき起こされるものと考えられる。
沃化水素酸(HT)、次亜沃素酸(HOI)、沃素(I!Lおよび沃化メチルの
ような有機誘導体のような幾つかの化学種が放射能のキャリヤーではないかと思
われる。揮発性成分が輸送容器に使用されるスチロフォームと反応し、それと比
較的永続する結合を生成するという事実は、キャリヤーが沃素(I2)であるこ
とを示している。
沃化物溶液の放射能揮発度を測定するのが困難なのは、カプセル中に存在する第
2の放射能源によるものである。キセノン−131mは放射性沃化物の壊変によ
り生成され、一般に1%未満の量で存在する。これは全揮発度が0.08%未満
の場合、揮発度の測定を幾分誤りに導く。
特に、全量が0.08%未満の時、放射性沃化物の量は364Kevのエネルギ
ーの1311を読み取ることのできる検出器で定量しなければならない、これは
キセノン−131mがL64Kevのエネルギーを有し、標準イオン室の読み取
りを妨害するためである。全揮発度が0.08%を越える場合、揮発性は全く沃
素によるものとみなされる。
I!llカプセルの揮発性は製剤中に安定剤を含有させることによりコントロー
ルし、減少することができる。特に、非揮発性沃化物イオンの上記のような揮発
性種への還元を減少するため抗酸化剤物質を含有させることができる。抗酸化剤
の添加は下記に示すような公知の自動カブ、セル製剤化工程に容易に包含させる
ことができる。
放射性沃化物のカプセルは自動装置を使用して、製造後約1週間較正された時に
100mC4以下である治療用量で製造されうる。初めに、空のゼラチンカプセ
ルはシェルとキャップに分離される。次に、シェルはマトリックス材料として役
に立つ篩分けされた粉末で充填される。次に、放射性沃化物水溶液が直接、篩分
けされた粉末上に計量分配される、次に、キャンプがシェル上に置かれ、そして
完成したカプセルは受入試験のためイオン室へ気送される。計量分配装置が非常
に正確であるため、合格率は一般に高い。合格したカプセルは吸着性木炭バケッ
トを存する小さな容器に個別に詰め込まれる。次に、容器はねじ込みキャップで
キャップされ、鉛シールドの中に置かれる。鉛シールドはさらに外側の輸送用紙
器にスチロフォームを充填して支えられる。
小さな容器はプラスチック製であるが、ガラスびんの使用は漏れ出る放射性沃化
物の量を減少することがわかった。さらに、ねじ込みキャップと吸着性木炭パケ
ットの設計変更もまた、漏れ出る放射性沃化物の量を減少する手助けをすること
ができる。
カプセルの製造に使用されるマトリックス材料、例えばリン酸二ナトリウム(7
水和物)は一般に化学的不活性および生理的適合性に関して選択される。リン酸
二ナトリウム(7水和物)をマトリックス材料として使用する場合、上記のカプ
セル製造後、添加水溶液は徐々にゼラチンカプセルの壁体に運ばれる。これはカ
プセルのキャンピング後に7水和物塩がさらに水を吸収することができないため
部分的に生じる。沃化物イオンは水溶液中に含まれるため、これもまたゼラチン
カプセル中に運ばれる。運ばれた沃化物の生物学的利用可能性はカプセル中に残
留する沃化物のものとは異なると思われる。
漏れ出る沃化物は周囲の空気と接触して酸化し、上記のような揮発性種、特に沃
素を与える。放射性沃化物水溶液中での抗酸化剤の使用は酸化率を減少し、した
がって揮発性を減少する。知られている抗酸化剤の1つは重硫酸ナトリウムであ
り、それはIII lカプセルの揮発性を減少するのに有効であることが証明さ
れている。しかしながら、このようなカプセルはまだ700 n Ci / m
Ci /日程度の望ましくない高レベルの揮発性を示す。他の知られているカ
プセル製剤はリン酸二ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムの抗酸化剤混合物を使用
する。この混合物を使用し、50mC1までの放射能を有するカプセルは17n
Ci/mci/日または1.7X10−ff%/日のほぼ一定の揮発性を示す。
しかしながら、カプセルおよびそれと関連する包装を取り扱わなければならない
人々における放射線上のリスクを減らすため、1ffl lカプセルの揮発性を
より低レベルに減少し、カプセルの安定性を増加することが望ましい。
本発明の目的は、改善された低い揮発性および増大された安定性を有し、放射性
医薬品を用いる治療に使用される+31 lカプセルを提供することである。
本発明の目的は、マトリックス材料と抗酸化剤の組合せを有し、増大された安定
性および減少された揮発性のカプセルを与えるIII lカプセルを提供するこ
とにより達成される。
マトリックス材料と抗酸化剤の適当な組合せの使用により、+s+ 1カプセル
の安定性および揮発性を最適にできることがわかった。特に、マトリックス材料
と抗酸化剤の3つの異なる組合せが安定性を最大にし、揮発性を最小にすること
がわかった。
第1の成功した組合せは、10%ゲンチシン酸を含むフルクトースのブレンドか
らなるマトリックスを使用する。抗酸化剤としてのチオ硫酸ナトリウムおよびア
スコルビン酸ナトリウム中0.25Mにされた放射性沃化物添加溶液がこのマト
リックス上に付着される。付着後にゴムが生成し、これは酸素の沃化物への輸送
を防止すると考えられる。この組合せを使用して製造されたカプセルは10−“
%/日程度の揮発性を有することがわかった。
第2の成功した組合せは、無水ピロリン酸ナトリウム中におけるアスコルビン酸
の10%ブレンドからなるマトリックスを使用する。放射性沃化物添加溶液は上
記のものと同一であり、すなわち抗酸化剤としてのチオ硫酸ナトリウムおよびア
スコルビン酸ナトリウム中0.25Mにされたものである。添加溶液のこのマト
リックスへの付着後、添加溶液中の水が無水ピロリン酸ナトリウムを迅速に水和
して非常に安定な水和物質を与える。この組合せを使用して製造されたカプセル
もまた10−4%/日程度の揮発性を示す。
第3の成功した組合せはさらに揮発性を減少する。この組合せは上記のような無
水ピロリン酸ナトリウム中におけるアスコルビン酸の10%ブレンドからなるマ
トリックスを使用する。上記したように、添加溶液はチオ硫酸ナトリウムおよび
アスコルビン酸ナトリウム中(1,25Mになるよう処理され、さらにフルクト
ースが添加される。この組合せは1″1■カプセルに使用されると、104%/
日程度の揮発性を有するカプセルを与える。
したがって、本発明は従来技術で知られている。ものより大きな安定性と低い揮
発性を有するIII lカプセルを提供する。すなわち、本発明のカプセルは取
り扱いがより安全であり、望ましくない放射線被曝のリスクがより低い。
次の実施例は上記のマトリックスと抗酸化剤の組合せを使用する改善された揮発
性のIll lカプセルを示し、さらに本発明のカプセルを製造するための好ま
しい配合および方法を記載する。
【実施例]
実施例1゜
カプセルマトリックスの製造
ピロリン酸ナトリウムを105〜110℃で乾燥して恒量とすることにより無水
にする。無水ピロリン酸ナトリウムに10%アスコルビン酸を加える。次に、ブ
レンドを粉砕機で製造して粒径を縮小する。粉砕機に受け入れられるメツシュの
大きさは50〜200であり、それは75〜300μmの粒径を与える。次に、
縮小した粒径のブレンドを550〜600mg/カプセルの量でカプセルに入れ
る。
実施例2゜
放射性沃化物添加溶液の製造
放射性沃化物原料、を0.IN水酸化ナトリウム中に入れる。原料にアスコルビ
ン酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムを、溶液が各抗酸化剤中0.2Mとなるよ
うに加える。計量分配する前に、フルクトースを加えて10%濃度とする。カプ
セルに計量分配される容量は一般に170μP未満に制限される。好ましくは、
カプセルに計量分配される容量は50〜170μ2の量である。乾燥は必要でな
い。
実施例3゜
揮発度および安定度の測定
12個のカプセルに実施例1で製造した550〜500mgのマトリックスブレ
ンドを充填した。最初に6個のカプセル(No、L〜6)にアスコルビン酸ナト
リウムおよびチオ硫酸ナトリウム中0.28Mにされた放射性沃化物溶液を添加
した。次に、カプセル1〜6にキャップし、木炭パケットと共に試験管に入れた
。添加溶液を40%フルクトース溶液で稀釈して濃度を10%フルクトースとし
、これはチオ硫酸塩およびアスコルビン酸塩のモル濃度を0.21まで稀釈した
。この稀釈溶液を使用して別の6個のカプセル(No、7〜12)に、カプセル
1〜6と同じ量の放射能となるように計量分配した。次に、カプセル7〜12に
キャップし、木炭パケットと共に試験管に入れた。すべてのカプセル1〜12の
揮発度を3日後、そしてその後1週間毎に測定した。木炭パケットは1遇間毎に
交換した。
表1にカプセル1〜12の揮発度の測定結果を示す。表を見てわかるように、添
加溶液中にフルクトースを含むカプセル、すなわちカプセル7〜12はフルクト
ースを加えていないカプセル、すなわちカプセル1〜6よりも揮発性が相当低い
。より低い揮発性のカプセル7〜12は計量分配から24日でもカプセル1〜6
より終始変わらず低いままである第1表
1 1.5X10” 4.2X10−’ 3.5X10−’ 1.8X10−’
2 L、6X10−’ 4.0XLO−’ 2.4XLQ−’ L、3X10−
’3 1.0X10−’ 3.7X10−’ 3.4X10−’ 1.6X10
−’4 1.3xlQ−’ 4.1xlO−’ 3.4xlO−’ 1.9xl
Q−’5 1.5xlO−’ 2.2xlO−’ 1.7xlO−’ 1.7x
lO−’6 9.8XIQ−S3.3XlO” 1.7XLO−’ 2.2X1
0−’7 3、txlO−’ 5.1xlO−’ 2.7xlO−’ 1.2x
lO−’8 3、lX1O−S3.8X10−’ 2.5xlO−’9 −5x
lO−’ 2.1xlO−’ 5.8xlO−’ 4.4xlO−’10 2.
5xlO−’ 4.1xIO−’ 2.7xlO−’ 3.1xlO−’H2,
4X10−’ 3.2X10−59.7X10−’ 3.0X10−’12 2
.2xlO−’ 6.2X10−’ 4.6xlO−S4.4xlO−’実施例
4゜
ピロリン酸塩効果の測定
本実験は14個のカプセル(No、13〜26)について行った。カプセル13
および14に粉末状リン酸二ナトリウム(7水和物)のマトリックス材料を充填
した。カプセル15および16に10%アスコルビン酸を含む粉末状リン酸塩の
ブレンドからなるマトリックス材料を充填した。次に、カプセル13〜16にチ
オ硫酸ナトリウムおよびアスコルビン酸ナトリウム中0.28Mにされた50μ
j!(16mCi)の放射ットと共に試験管に入れた。
カプセル17および18に粉末状リン酸塩を充填し、そしてカプセル19および
20に10%アスコルビン酸を含む粉末状リン酸塩を充填した。上記の沃化物溶
液を40%フルクトースで稀釈して10%フルクトース溶液を与え、それにより
チオ硫酸塩およびアスコルビン酸塩のモル濃度を0.21まで稀釈した。次に、
カプセル17〜20のそれぞれに63μj1!(16〜l 8mCi )の稀釈
沃化物溶液を計量分配した。カプセル17〜20にキャップし、木炭パケットと
共に試験管に入れた。
カプセル21〜26に実施例1で製造したマトリックスブレンドを充填し、上記
のカプセル17〜20で使用されたものと同じ63μm(126にキャップし、
木炭パケットと共に試験管に入れた。
カプセル13〜26の揮発度を3日後、そしてその後1週間毎に測定した。この
実験において、木炭パケットを各検定後そのままにし、新しい木炭パケットと組
合せ、それにより揮発度の測定を累積する。表2にカプセル13〜26の揮発度
の測定結果を示す。マトリックス材料にアスコルビン酸が加えられたそれぞれの
場合において、揮発性は減少されることがわかった。しかしながら、実施例1で
製造した本発明のマトリックス材料、すなわち10%アスコルビン酸を含むピロ
リン酸ナトリウムを使用する場合、最も大きな揮発性の減少が観察された(カプ
セル21〜26)。
第2表
13 1、lX10−” 1.6X10−” 1.7X10−” 1.3X10
−”14 1.5XIO−!1.8X10−” 2.0XlO−” 1.5X1
0−”15 4.7X10−’ 6.0X10−’ 6.5X10−316 1
、lX10−” 2.5X10−22.8X10−t2.3X10−”17 9
.3X10−″ 1.9X10−” 2.0X10−” 1.7X10−”18
7.6XlO−’ 2.5X10−” 1.7X10−” 2.3X10−”
19 2.9X10−’ 5.7X10−’ 6.3X10−35.lX10−
’20 3.0X10−34.2X10−” 5.0XlO−’ 4.8X10
−221 1.4X10−52.8X10−53.7X10−’ 1.lX10
−’22 3.5xio−’ 8.lX10−’ 1.0X10−’ 1.3X
10−’23 2.7X10−’ 4.4X10−’ 7.lX10−’ 3.
0X10−’24 1.9X10−’ 5.lX10−’ 9.4X10−’
7.4X10”25 3.2X]O−’ 1.9X10−56.8X10−’
7.7X10−’26 4.5X10−’ 6.5X10−’ 9.lX10−
’ 1.lX10−’実施例5゜
添加容量の測定
実施例1で製造したマトリックスブレンドを充填した数個のカプセルに50μ2
〜170μlの放射性沃化物溶液を添加した。これらのカプセルを揮発度および
放射線化学純度について処理した。有意な違いは見られなかった。このことはピ
ロリン酸塩マトリックス材料の液体添加容量が高いことを証明している。
上記の実施例は本発明のマトリックス材料と抗酸化剤の組合せを使用して製造さ
れたカプセルの優れた安定性および揮発性を証明している。
特に、マトリックスブレンドにおけるビロリン酸塩の使用は従来技術で知られて
いる通常のリン酸塩マトリックスと比べて大幅に改善された結果を与える。さら
に、本発明に従って製造されたある番号のカプセルの安定度は24日を越えてい
た。このようなカプセルの放射線化学純度は95%より大きかった。
上記実施例のそれぞれにおいて、放射性沃化′4yJ溶液は抗酸化剤を含まない
、または不活性ガスで覆わない0.IN水酸化ナトリウム溶液として供給者から
入手した。入手後、各放射性沃化物溶液をUSPペーパークロマトグラフィーを
使用して放射線化学純度について試験した。過沃素酸塩の痕跡は観察されなかっ
た。実施例2記載の製造法に従う放射性沃化物溶液の製造は化学純度を維持する
のに供給者に依存する必要性を排除する。
これまで本発明の特定の好ましい態様について記載したが、これらは本発明を限
定するものではない。むしろ、詳細にわたる多くの変更、変形および変化は本発
明の範囲内である。