JPH0749113A - イオン交換樹脂の燃焼方法および燃焼炉 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 火力発電所の水処理施設等で発生する廃イオ
ン交換樹脂の処理方法の改善。 【構成】 廃イオン交換樹脂を１６０℃以上に加熱して
樹脂中の塩素イオンを塩化水素として放出させた後、流
動層燃焼炉（１）に投入して燃焼させる。放出された塩
化水素を含む空気は、例えば水酸化ナトリウムを含む洗
浄液で洗浄し、塩化水素を食塩に変えて液中に溶解さ
せ、無害化する。そうすると燃焼排ガス中には塩素分が
含まれないので、後流の対流伝熱面（９）やバグフィル
タ（１０）の腐食が抑制される。また、塩化水素を含む
濃度の高い少量のガス（空気）を処理すればすむので、
洗浄塔（１７）等は小さくてよい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、火力発電所の水処理施
設等で発生する廃イオン交換樹脂の処理を目的とする流
動層燃焼方法および燃焼炉に関する。

【０００２】

【従来の技術】図２は従来の流動層燃焼炉の一例を示す
構成図である。この燃焼炉は循環流動層燃焼炉と呼ばれ
る形式のもので、主として燃焼室（１）とサイクロン
（２）と外部熱交換器（３）とから構成されている。

【０００３】燃焼室（１）と外部熱交換器（３）の下部
に設けられた分散板（４ａ），（４ｂ），（４ｃ）を介
して、燃焼用空気がブロア（５ａ），（５ｂ）から供給
される。またブロア（５ｃ）から送給された空気が燃焼
室（１）の壁面から供給されて、燃焼用二次空気として
使用される。燃焼室（１）の中には平均粒子径２００μ
ｍ程度の流動材があり、それが高速流動層と呼ばれる流
動状態を形成している。この流動状態では、流動材が燃
焼室（１）から飛び出し、サイクロン（２）および外部
熱交換器（３）を経て燃焼室（１）に戻る。これが循環
流動層燃焼炉と呼ばれる所以である。

【０００４】この燃焼炉では、燃料（被焼却物）は燃料
ホッパ（６）からフィーダ（７）により燃焼室（１）に
供給されて燃焼する。燃焼により発生した熱は、流動材
によって外部熱交換器（３）に運ばれ、その中に設けら
れた伝熱面（８ａ），（８ｂ）で熱回収される。熱回収
により温度が下がった流動材は、外部熱交換器（３）か
ら燃焼室（１）に戻り燃焼温度を調整する。一方サイク
ロン（２）を出た排ガスは、対流伝熱面（９）、バグフ
ィルタ（１０）を通り、洗浄塔（１１）で中和剤タンク
（１２）から送給される薬品により除害された後、誘引
ファン（１３）を経て煙突から排出される。また炉内に
留った粗大な不燃物は、炉底の抜出しコンベア（１４）
により系外に排出される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】廃イオン交換樹脂の焼
却処理は、従来次のような問題のため容易でなかった。
１）発熱量が高いため燃焼設備をいためる。２）組成中
に硫黄や塩素を多く含むため、燃焼させると腐食性のあ
る二酸化硫黄（ＳＯ₂ ）や塩化水素（ＨＣｌ）が高濃度
で発生し、炉や伝熱面を損傷する。

【０００６】発熱量が高いもの、例えばプラスチック等
を安定に燃焼させることができる装置としては、各種流
動層燃焼炉が知られている。また燃料中の硫黄から発生
するＳＯ₂ を効果的に除去する手段として、流動層内へ
石灰石（ＣａＣＯ₃ ）を投入する方法が知られている。
しかしながら塩素を含む燃料から発生するＨＣｌについ
ては、従来効果的に除去することが困難であった。例え
ば前記図２により説明した流動層燃焼炉で塩素を含む廃
イオン交換樹脂を燃焼させた場合、発生する塩化水素に
より特に対流伝熱面（９）およびバグフィルタ（１０）
の損傷が激しく、また燃焼排ガスの全量を処理する必要
があるため、大きな洗浄塔（１１）が必要になるなどの
問題があった。

【０００７】上記のような理由から、廃イオン交換樹脂
は従来ボイラの灰などと共に埋立てにより処理すること
が多かったが、最近ではその埋立地も不足して来てい
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記従来の課
題を解決するために、塩素を側鎖に含むイオン交換樹脂
を流動層燃焼炉で燃焼させる際、上記イオン交換樹脂を
あらかじめ１６０℃以上に加熱して樹脂中の塩素を除去
することを特徴とするイオン交換樹脂の燃焼方法；なら
びに塩素を側鎖に含むイオン交換樹脂を燃焼させる流動
層燃焼炉において、上記イオン交換樹脂を上記流動層燃
焼炉に供給するフィーダに加熱空気を送給する手段が設
けられたことを特徴とするイオン交換樹脂の燃焼炉を提
案するものである。

【０００９】

【作用】本発明においては、焼却される廃イオン交換樹
脂をあらかじめ１６０℃以上に加熱するので、側鎖の中
に含まれる塩素イオンが塩化水素（ＨＣｌ）となって放
出される。その塩化水素を含むガスを中和剤（例えば水
酸化ナトリウムＮａＯＨ等のアルカリ）を含む洗浄液で
洗浄すれば、塩化水素は中性塩となって液中に溶解する
から、塩化水素が除去されたガスは大気に放出すること
ができる。また洗浄排水は、河川や、必要であれば水処
理施設に送られる。こうして塩素が除去された廃イオン
交換樹脂は、燃焼炉へ投入され燃焼する。

【００１０】

【実施例】図１は本発明の一実施例を示す構成図であ
る。この図において、前記図２により説明した従来のも
のと同様の部分については、冗長になるのを避けるた
め、同一の符号を付け詳しい説明を省く。

【００１１】本実施例においては、ブロア（１６）から
送られる空気を１６０℃以上に加熱できる空気ヒータ
（１５）が設けられており、ここで加熱された空気は、
フィーダ（７）に開けられた穴から燃料ホッパ（６）内
へ送られる。この空気によりイオン交換樹脂が加熱さ
れ、樹脂中の塩素は塩化水素として放出されて、洗浄塔
（１７）内で中和剤タンク（１８）から供給される中和
剤により処理される。中和剤として水酸化ナトリウムＮ
ａＯＨを使用すれば、排水中の成分をＮａＣｌ（食塩）
とすることができ排水処理も容易である。こうして塩素
を除去した燃料（被焼却物）を燃焼させれば、従来問題
となっていた対流伝熱面（９）やバグフィルタ（１０）
の腐食を大幅に抑制できる。また、フィーダ（７）内で
放出された塩化水素を含む少量の空気を処理するので、
洗浄塔（１７）は小さくてすむ。

【００１２】次に図３は本発明で対象とする廃イオン交
換樹脂の構造の一例を示す図である。これは陰イオン交
換樹脂であり、火力発電用ボイラの脱塩装置で使用され
ているものである。また図４は、このイオン交換樹脂に
熱を加え、熱分解する際に発生した塩化水素の割合を示
したものである。この図では構造中に含まれる塩素を１
００％とし、そのうちのどれだけが塩化水素（ＨＣｌ）
として放出されるかを示している。また参考のために、
塩素を含む樹脂として硬質ポリ塩化ビニル（ＰＶＣ樹
脂）の熱分解の様子も示している。図４から明らかなよ
うに、イオン交換樹脂は１６０℃程度のかなり低い温度
でほぼ完全に塩素を塩化水素として放出する。したがっ
て、樹脂を燃焼炉（約８５０〜９００℃）に投入する前
に１６０℃程度の温度で処理して塩素を除去しておいて
燃焼させれば、従来の炉で発生していた問題点を回避で
きることが判る。

【００１３】

【発明の効果】本発明によれば、従来燃料として用いる
ことが非常に困難であった塩素を含む廃イオン交換樹脂
を容易に燃焼させることができる。また燃料中の塩素を
高濃度の塩化水素として取り出すから、ガスの処理量が
少なくて済み、また燃焼排ガスを処理する場合と比較し
て材料の腐食も少ないなど、産業上きわめて有益であ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の一実施例を示す構成図である。

【図２】図２は従来の流動層燃焼炉の一例を示す構成図
である。

【図３】図３は本発明で対象とするイオン交換樹脂の構
造の一例を示す図である。

【図４】図４は塩素を含む樹脂の熱分解特性を例示する
図である。

【符号の説明】

（１） 燃焼室 （２） サイクロン （３） 外部熱交換器 （４ａ），（４ｂ），（４ｃ） 分散板 （５ａ），（５ｂ），（５ｃ） ブロア （６） 燃料ホッパ （７） フィーダ （８ａ），（８ｂ） 伝熱面 （９） 対流伝熱面 （１０） バグフィルタ （１１） 洗浄塔 （１２） 中和剤タンク （１３） 誘引ファン （１４） 抜出しコンベア （１５） 空気ヒータ （１６） ブロア （１７） 洗浄塔 （１８） 中和剤タンク

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 塩素を側鎖に含むイオン交換樹脂を流動
   層燃焼炉で燃焼させる際、上記イオン交換樹脂をあらか
   じめ１６０℃以上に加熱して樹脂中の塩素を除去するこ
   とを特徴とするイオン交換樹脂の燃焼方法。
2. 【請求項２】 塩素を側鎖に含むイオン交換樹脂を燃焼
   させる流動層燃焼炉において、上記イオン交換樹脂を上
   記流動層燃焼炉に供給するフィーダに加熱空気を送給す
   る手段が設けられたことを特徴とするイオン交換樹脂の
   燃焼炉。