JPH0747691B2 - ポリイミド系摩擦材およびその製造方法 - Google Patents

ポリイミド系摩擦材およびその製造方法

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JPH0747691B2
JPH0747691B2 JP40890A JP40890A JPH0747691B2 JP H0747691 B2 JPH0747691 B2 JP H0747691B2 JP 40890 A JP40890 A JP 40890A JP 40890 A JP40890 A JP 40890A JP H0747691 B2 JPH0747691 B2 JP H0747691B2
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泰蔵 長広
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、耐熱性、耐摩耗性、摩擦特性および機械的性
質に優れたポリイミド系摩擦材およびその製造方法に関
する。本発明のポリイミド系摩擦材は、例えば、自動車
用、事務機器用、電気・電子機器用、その他、あらゆる
分野の摩擦材部品として広く利用することができる。
〔従来の技術〕
従来、フェノール樹脂やメラミン樹脂等の合成樹脂を結
合材とし、これにアスベスト繊維などの鉱物繊維を充填
剤として配合した組成物が、ブレーキやクラッチ用等の
摩擦材の成形材料として用いられている。しかし、この
ような組成物から成る摩擦材は、高速・高負荷下の制
動、特に高温下における制動において、相手面へ移着し
た樹脂の熱劣化成分の影響により摩擦係数が下がり、ブ
レーキ性能が低下するという欠点を有している。例え
ば、フェノール樹脂を配合した上記組成物から成る摩擦
材では150〜200℃の高温下で著しい摩擦係数の低下を示
す。また、充填剤として配合したアスベスト繊維は、摩
擦材の摩耗に伴なって周囲に飛散し、人体に悪影響を及
ぼす可能性があり好ましくない。
上記組成物から成る摩擦材の欠点を解消するために、結
合剤として芳香族ポリイミド樹脂を使用して耐熱性を高
め、これに各種無機充填剤を加えた摩擦材料が知られて
いる(特開昭60−144363号公報等)。また、アスベスト
繊維の人体の影響を考慮して、ポリイミド樹脂に、チタ
ン酸カリウム繊維および/または加工鉱物繊維と鉄粉と
を配合した摩擦材料が知られている(特開昭59−207980
号公報等)。これらの摩擦材料から造ったブレーキ材
は、高速・高負荷下において優れた耐摩耗性能を有して
いるが、摺動時間による摩擦面の温度変化あるいは雰囲
気の温度変化に対する制動の安定性、すなわち摩擦係数
の安定性が必ずしも満足できるものではなかった。
また、曲げ強さ、衝撃強さ等の機械的強度、耐摩耗性お
よび限界PV値(P=摩擦面圧、V=摩擦速度)等を高め
るために、ガラス繊維、アスベスト繊維、チタン酸カリ
ウム繊維、加工鉱物繊維などの無機繊維類や、芳香族ア
ラミド繊維、芳香族ポリエステル繊維等の耐熱性有機繊
維類等を結合材に配合した摩擦材料が知られている。し
かし、ガラス繊維を配合したものは、相手材の損傷が著
しく、アスベスト繊維、チタン酸カリウム繊維、加工鉱
物繊維などを配合したものは、ガラス繊維に比べれば比
較的相手材の損傷は少ないが、配合割合が大きくなると
その損傷が無視できなくなる。また、耐熱性有機繊維類
を配合したものは、相手材を損傷せず、この点において
優れているが、機械的加工性が悪く、その加工面は荒れ
ており、いわゆる表面平滑性が悪い。このことは機械的
部品としての寸法精度ばかりでなく、摩擦係数の経時変
化にも悪影響を及ぼすことになる。
またこのような繊維状充填材を添加しない摩擦材として
非熱可塑性芳香族ポリイミド樹脂に、フッ素樹脂、遷移
金属および/または遷移金属の酸化物を配合したポリイ
ミド系摩擦材が知られている(特開昭62−137436号公報
等)。しかし、この芳香族ポリイミド樹脂は射出成形な
どの溶融成形ができず、加熱圧縮成形でしか成形できな
い。したがって、形状が複雑な成形品を得るには生産性
が著しく悪くコストも高くなってしまう。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、以上述べたような従来の摩擦材の課題を解決
すべくなされたものである。すなわち本発明の目的は、
優れた耐熱性、耐摩耗性、生産性、および安定した摩擦
係数を有する摩擦材およびその製造方法を提供すること
にある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、 (a)下記一般式 で示される繰り返し単位からなる熱可塑性ポリイミド樹
脂30〜96重量部、 (b)フッ素樹脂2〜30重量部、および、 (c)炭酸カルシウム2〜40重量部 (但し、上記成分(a)〜(c)の合計100重量部であ
る) を含有して成るポリイミド系摩擦材、および、上記成分
(a)〜(c)を含有して成る組成物を溶融成形する工
程を有するポリイミド系摩擦材の製造方法である。
〔作用〕
本発明におけるフッ素樹脂および炭酸カルシウムを添加
した熱可塑性ポリイミド樹脂は、それら各成分が互いに
相乗の作用を呈し、その結果、耐摩耗性に著しく優れ、
相手材を損傷することもなく、温度変化に対しても安定
した摩擦係数を有するものとなり、また、射出成形など
の溶融成形によって容易に成形することができ、生産性
にも優れたものである。したがって、それら各成分から
成る本発明の摩擦材は、従来より摩擦材に要望されてい
た前述の各種特性を満たすものであり、総合的見地から
最適のものといえる。
〔実施態様〕
本発明における熱可塑性ポリイミド樹脂については、そ
の製造方法に特に限定は無い。しかし通常は、下記式 で表される4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフ
ェニルと、ピロメリット酸二無水物とを反応させること
によってポリアミド酸を生成させ、そのポリアミド酸を
脱水環化して得ることができる。また、本発明において
使用するポリイミドは熱可塑性を有するものである。
熱可塑性ポリイミド樹脂の溶液粘度は、摩擦材の種類に
よって求められる物性の程度が若干異なるので、最適な
値は一概にはいえないが、0.35〜0.80dl/g程度が望まし
く、0.45〜0.55dl/g程度が好ましい。
また、熱可塑性ポリイミド樹脂の割合は30〜96重量部で
あるが、特に、40〜90重量部が望ましい。
本発明におけるフッ素樹脂としては、例えば、四フッ化
エチレン樹脂(PTFEと略称する)、テトラフルオロエチ
レン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体
(PFAと略称する)、テトラフルオロエチレン−ヘキサ
フルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオ
ロエチレン共重合体等が挙げられる。このフッ素樹脂の
添加量は、2〜30重量部であり、3〜28重量部が好まし
い。フッ素樹脂の添加量が2重量部よりも少ない場合は
摺動特性に劣り、30重量部より多い場合は耐摩耗性や機
械的特性に劣る。
本発明における炭酸カルシウムとしては、一般に市販さ
れている炭酸カルシウムを特に限定なく使用できる。炭
酸カルシウムの添加量は、2〜40重量部であり、3〜35
重量部が好ましい。炭酸カルシウムの添加量が、2重量
部より少ない場合は耐摩耗性が劣ったり、摩擦係数が安
定せず、40重量部より多い場合は機械的特性や耐摩耗性
に劣る。
また、本発明の効果を損なわない限り各種の充填材を添
加することもできる。このような充填材として、芳香族
ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポ
リエーテルサルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、耐
熱性ポリアミド樹脂、フェノール系樹脂、芳香族ポリエ
ステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、シリコ
ーン樹脂などの有機質耐熱性高分子材料を始めとし、グ
ラファイトまたは亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等
の金属もしくはその酸化物などの熱伝導改良用無機粉
末、ガラスビーズ、シリカバルーン、珪藻土、炭酸マグ
ネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、水酸化
カルシウム等の無機質粉末、二流化モリブデン、カーボ
ン、三酸化モリブデン等の潤滑性向上用無機質粉末、お
よび酸化鉄、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、カ
ーボンブラック等の無機質顔料、シリコーンオイル、エ
ステルオイル、フッ素オイル、ポリフェニレンエーテル
オイル、ワックス、ステアリン酸亜鉛等の内部潤滑剤的
添加剤など数多くのものを例示することができる。
以上述べた熱可塑性ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、炭酸
カルシウムおよびその他添加剤などの混合方法は、特に
限定されるものではなく、原料を個別に溶融混合機に供
給してもよいし、あらかじめヘンシェルミキサー、ボー
ルミル、タンブラーミキサー等の混合機を用いて乾式混
合した後に、熱ロール、ニーダ、バンバリーミキサー、
スクリュー押出機などで溶融混合して成形材料としてペ
レット状にしてもよい。成形方法も、圧縮成形、焼結成
形等を適用し得ることはもちろんであるが、本発明にお
いては特に、均一溶融ブレンド体を形成し、生産性の高
い射出成形もしくは押出し成形を行なうことができる。
また、成形品の耐熱性、機械的特性、摺動特性などを向
上させる目的で、成形後、更に280〜340℃の温度で2〜
10時間の熱処理を施してもよい。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ま
ず、実施例および比較例に用いた諸原材料を一括して示
すと次のとおりである。
芳香族ポリイミド樹脂 撹拌機、還流冷却および窒素導入管を備えた反応容器
に、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル
3.68kg(10モル)と、N,N−ジメチルアセトアミド32.9k
gを装入し、室温で窒素雰囲気下にピロメリット酸二無
水物2.125kg(9.75モル)を溶液温度の上昇に注意しな
がら加え、室温で約20時間かきまぜ、ポリアミド酸溶液
を得た。
このポリアミド酸溶液に、室温で窒素雰囲気下に2.02kg
(20モル)のトリエチルアミンおよび2.55kg(25モル)
の無水酢酸を滴下した。これを室温で約20時間撹拌し、
淡黄色スラリーを得た。このスラリーを濾別し、メタノ
ールで洗浄し、その後濾別し、180℃で8時間減圧乾燥
して5.28kg(収率約97%)のポリイミド粉を得た。この
ポリイミド粉の溶液粘度は0.60dl/gであった。なお、こ
の溶液粘度は、ポリイミド粉末0.5gを100mlの溶媒(p
−クロロフェノール:フェノール=90:10重量比)に加
熱溶解し、溶解後35℃に冷却して測定した値である。
PTFE(喜多村社製:KTL−610) PFA(三井・デュポンフロロケミカル社製:PFA MP−1
0) 炭酸カルシウム(日窒工業社製:NA−600) マイカ(カナダ・マイカ社製:マイカS−325) タルク(松村産業社製:ハイフィラー#12) カオリン(白石カルシウム社製:STフィラーST−100) グラファイト(ロンザ社製:KS06) カーボンファイバー(東邦レーヨン社製:ベスファイ
トHTA) ガラス繊維(旭ファイバーグラス社製:ミルドファイ
バーMF−KAC) チタン酸カルシウム繊維(大塚化学社製:ティスモ
N) 以上の原材料〜を、第1表に示した割合(重量比)
でヘンシェルミキサーにて乾式混合して、二軸溶融押出
機に供給し、シリンダー温度290〜400℃、スクリュー回
転数80〜250rpmの条件にて溶融混合および造粒をした。
その後シリンダー温度340〜405℃、金型温度160〜185
℃、射出圧力500〜1000kg/cm2の条件にて所望の形状に
射出成形し、次に示す諸物性を測定し、その結果を第1
表に併記した。
(1)摩擦係数 相手材を加熱できるスラスト型摩擦・摩耗試験機を用
い、荷重1.1kg/cm2、滑り速度毎分150m、相手材SUJ2
(焼き入れ)、無潤滑、連続運転の条件下で、摺動時間
(試験時間)120分の時は相手材無加熱(室温)の時の
摩擦係数を、また摺動時間15分の時は相手材無加熱(室
温)の時および加熱(150℃)した時の摩擦係数を求め
た。
(2)摩耗係数 摩擦係数の測定と同じ試験機を使用して、荷重1.5kg/cm
2、滑り速度毎分128m、相手材SUJ2(焼き入れ)、無潤
滑、試験時間100時間(連続運転)の条件下で、相手材
無加熱(室温)の時の摩耗試験の結果から求めた。ま
た、摩耗試験後の相手材の損傷度合いを調べ、下記の判
定を行なった。
○……相手材を全く損傷しない △……相手材を少し損傷する ×……相手材をかなり損傷する 第1表からみて明らかなように、実施例1〜8に示した
ポリイミド系摩擦材は、いずれも耐摩耗性に優れ、適度
に大きな摩擦係数を示すとともに、摺動時間および相手
材加熱による温度変化に対しても安定した摩擦係数を示
し、更には、長時間摺動させても相手材を損傷させるこ
とはない。
これに対し、比較例1,2,3は摩擦係数は適度に高く比較
的安定しているのだが、耐摩耗性が著しく劣り、比較例
3,8,9は相手材を少し損傷してしまう。また、比較例4,
7,8,9は摩擦係数の安定性が無く、比較例5に関しては
何れの特性を劣っている。更に比較例6は、摩擦係数が
低すぎて、摩擦材としては適さない。
〔発明の効果〕 本発明のポリイミド系摩擦材は、耐熱性、耐摩耗性、生
産性および機械的性質に優れ、且つ適度に高くて、しか
も温度変化に対して安定した摩擦係数を示し、更には、
相手材を損傷させることもない。本発明の摩擦材は、例
えば、自動車用、事務機器用、電気・電子機器用、航空
・宇宙機器用、一般産業機用など、あらゆる分野の部品
に広く利用することができ、特に精密機器用の摩擦材、
例えば超音波モーター用のステーター材として好適に利
用される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F16D 69/02 C

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)下記一般式 で示される繰り返し単位からなる熱可塑性ポリイミド樹
    脂30〜96重量部、 (b)フッ素樹脂2〜30重量部、および、 (c)炭酸カルシウム2〜40重量部 (但し、上記成分(a)〜(c)の合計100重量部であ
    る) を含有して成るポリイミド系摩擦材。
  2. 【請求項2】熱可塑性ポリイミド樹脂の溶液粘度が0.35
    〜0.80dl/gである請求項1記載のポリイミド系摩擦材。
  3. 【請求項3】熱可塑性ポリイミド樹脂の含有量が40〜90
    重量部である請求項1記載のポリイミド系摩擦材。
  4. 【請求項4】フッ素樹脂が、四フッ化エチレン樹脂、テ
    トラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエ
    ーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフル
    オロプロピレン共重合体およびエチレン−テトラフルオ
    ロエチレン共重合体から成る群より選ばれる請求項1記
    載のポリイミド系摩擦材。
  5. 【請求項5】フッ素樹脂の含有量が3〜28重量部である
    請求項1記載のポリイミド系摩擦材。
  6. 【請求項6】炭酸カルシウムの含有量が3〜35重量部で
    ある請求項1記載のポリイミド系摩擦材。
  7. 【請求項7】(a)下記一般式 で示される繰り返し単位からなる熱可塑性ポリイミド樹
    脂30〜96重量部、 (b)フッ素樹脂2〜30重量部、および、 (c)炭酸カルシウム2〜40重量部 (但し、上記成分(a)〜(c)の合計100重量部であ
    る) を含有して成る組成物を溶融成形する工程を有するポリ
    イミド系摩擦材の製造方法。
  8. 【請求項8】熱可塑性ポリイミド樹脂の溶液粘度が0.35
    〜0.80dl/gである請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】熱可塑性ポリイミド樹脂の含有量が40〜90
    重量部である請求項7記載の方法。
  10. 【請求項10】フッ素樹脂が、四フッ化エチレン樹脂、
    テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニル
    エーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフ
    ルオロプロピレン共重合体およびエチレン−テトラフル
    オロエチレン共重合体から成る群より選ばれる請求項7
    記載の方法。
  11. 【請求項11】フッ素樹脂の含有量が3〜28重量部であ
    る請求項7記載の方法。
  12. 【請求項12】炭酸カルシウムの含有量が3〜35重量部
    である請求項7記載の方法。
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