JPH0740954B2 - Dnaの精製方法 - Google Patents

Dnaの精製方法

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JPH0740954B2
JPH0740954B2 JP62099446A JP9944687A JPH0740954B2 JP H0740954 B2 JPH0740954 B2 JP H0740954B2 JP 62099446 A JP62099446 A JP 62099446A JP 9944687 A JP9944687 A JP 9944687A JP H0740954 B2 JPH0740954 B2 JP H0740954B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は,DNAの精製方法に関し,さらに詳しくは,DNA,R
NA,蛋白質,多糖類などの各種菌体成分を含む菌体溶菌
液から,吸着剤を用いてDNAを高純度で単離する方法に
関する。
(従来の技術) バイオテクノロジーの発展に伴い,遺伝子の分離,精製
および遺伝子の塩基配列決定を行う頻度は非常に高い。
しかし,各種技術の進歩にもかかわらず,その操作は繁
雑な手作業を必要とし,長時間と多大の労力とを要す
る。そのため,このような作業は基礎および応用開発に
おいて,研究者にとって大きな負担となっている。バイ
オテクノロジーの特に応用技術の展開のためには,これ
らの作業を短時間で完了できるような技術が望まれる。
特に,DNAの配列分析,遺伝子の構築,構築されたDNA配
列に所望の遺伝子が正しく入っているかのチェックなど
を行う目的のためには,これに使用するための所望のDN
Aを短時間で単離し,精製することが必要である。各種
研究のためには,特に菌体からDNAを迅速に分離して精
製することが望まれる。菌体からDNAを比較的迅速に分
離する方法としては,ボイリング法,アルカリ法などが
採用されているが,いずれも複雑な工程を必要とする手
作業であり自動化されにくい。手作業であるためDNAの
回収率や純度などにバラツキが生じ,技術差による個人
間の格差も大きい。さらに,このような方法で得られた
DNAには,RNA,各種蛋白質,多糖類などが混入しており,
そのままでは上記DNAの配列分析などの各種実験が正し
くなされ得ない。特にRNAによる妨害が大きいため,通
常,このRNAは,リボヌクレアーゼ処理により低分子化
され,ポリエチレングリコール沈澱により除去される。
しかし,リボヌクレアーゼは安定性が高いため,使用後
に完全に除去することが難しい。リボヌクレアーゼは高
活性であるため,場合によってはその後の反応に使用さ
れる必要なRNAが分解されるという欠点がある。
リボヌクレアーゼを用いず,菌体からDNAを1段階で単
離・精製する方法として,ヒドロキシアパタイトカラム
を使用する方法が提案されている。〔F.A.Belandら,J.C
hromatography,174,177−186(1979)〕。この方法によ
れば,まず,菌体をあらかじめ溶菌し,これに,尿素8M
(8モル/)燐酸緩衝液(燐酸0.24M),ラウリル硫
酸ナトリウム(SDS;0.1%)およびエチレンジアミン四
酢酸(EDTA;10mM)を含む緩衝液を加える。これを,上
記と同様の緩衝液であらかじめ処理したヒドロキシアパ
タイトカラムに通液すると,溶菌液中のDNAのみが選択
的にヒドロキシアパタイト(吸着剤)に吸着される。上
記吸着条件下においては,2重らせんのDNA〔ダブルスト
ランドDNA(ds DNA)という〕のみが吸着され,1本鎖DNA
〔シングルストランドDNA(ss DNA)という〕,RNA(1
本鎖である)などは吸着されない(燐酸濃度が0.15M以
下であれば,ある程度は吸着される)。尿素濃度が8Mと
高いため,非特異的な蛋白質の吸着もほとんど起こらな
い。ds DNAを吸着したヒドロキシアパタイトカラムに,
次に,10mM燐酸緩衝液を流して上記吸着に用いた緩衝液
中の尿素,SDSなどを除去する。さらに0.3M燐酸緩衝液を
通液することにより吸着したDNAを溶離させ,これを回
収する。
しかし,回収されたDNAは,上記0.3M燐酸緩衝液の溶液
として得られるため,そのまま使用することができな
い。なぜなら,燐酸はエタノールなどのアルコールに対
する溶解度が低いため,次工程においてエタノール沈澱
によりDNAを回収しようとするとDNAと同時に燐酸が多量
に析出し,この析出した燐酸を除去することが困難であ
るからである。そのため,透析などの方法により燐酸を
除去する必要がある。このように,1段階の工程により菌
体溶出液からDNAを吸着により単離することができても
透析という煩雑な操作を必要とし,そのためDNAの回収
率が悪いという欠点がある。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は上記従来の問題点を解決するものであり,その
目的とするところは,菌体溶菌液からDNAを短時間のう
ちに,高純度でかつ煩雑な操作を必要とすることなく単
離する方法を提供することにある。本発明の他の目的
は,適当な吸着剤を用いて上記溶菌液中のDNAを選択的
に吸着させ,さらに適当な溶離液を用いて,煩雑な後処
理操作を必要とすることなく該DNAを容易に回収しうる,
DNAの単離方法(精製方法)を提供することにある。
(問題点を解決するための手段) 発明者らは,まず,従来技術の項に挙げられたヒドロキ
シアパタイトについてその吸着・脱着機構の検討を行っ
た。ヒドロキシアパタイト(その主成分は燐酸カルシウ
ムである)を吸着剤として使用すると,溶媒との接触に
より若干解離して生成する燐酸とカルシウムとが関与し
て,単離目的物質をイオン交換反応により吸・脱着する
ものと考えられていた。しかし,このような単純なイオ
ン交換反応では説明できない現象も多く認められる。例
えば,イオン交換体として一般に知られているDEAEセル
ロース(ジエチルアミノエチルセルロース)に単離目的
物質を吸着させ,高食塩濃度の溶離液を流すと該吸着さ
れた単離目的物質とDEAEとの親和力が下がり,この吸着
物質が溶離する。しかし,上記ヒドロキシアパタイトに
吸着したDNA(単離目的物質)は,たとえ高濃度であっ
ても食塩水溶媒では溶離しない。そのため,DNAのヒドロ
キシアパタイトへの吸着は単純なイオン交換反応のみで
はないと考えられる。
以上の事項を考慮し、発明者らは,ds DNAを選択的に吸
着する吸着剤を使用し,かつ吸着剤を構成する成分(例
えば,上記ヒドロキシアパタイトでは燐酸カルシウム)
と強い相互作用を有し,吸着されたDNAを容易に溶離し
うる溶離液の検討を行った。例えば,上記ヒドロキシア
パタイトにおいては,その主成分である燐酸カルシウム
の燐酸成分とカルシウム成分とに注目し,これらの少な
くとも一方と強い相互作用を有するイオン,ことに難溶
性の塩を形成するイオンを含む塩類(アニオンとカチオ
ンとの組合せ)溶液を用いて,ヒドロキシアパタイトに
吸着したDNAを脱着・回収することを試みた。ヒドロキ
シアパタイトのカチオン成分であるカルシウムと相互作
用の大きい塩を形成しうるアニオン成分としては,難溶
性の塩を形成しうる燐酸(ヒドロキシアパタイトのアニ
オン成分でもある),硫酸(難溶性塩である硫酸カルシ
ウム(石膏)を形成),炭酸(難溶性塩である炭酸カル
シウム(消石灰,漆喰)を形成)などの無機酸;および
蟻酸,酢酸,プロピオン酸などの有機酸があり,いずれ
もDNAの脱着・溶離が可能であった。これに対して,易
溶性の塩を形成しうる塩酸塩,硝酸塩などの場合は高濃
度溶液(1M以上)を用いてもDNAは溶離されなかった。
ヒドロキシアパタイトのアニオン成分である燐酸と強い
相互作用を有する塩を形成しうるカチオン成分としては
難溶性塩を形成しうるカルシウム(ヒドロキシアパタイ
トのカチオン成分でもある)や,アンモニア,アミン類
などが有効であることがわかった。
このように,DNAを選択的に吸着させ得る特定の吸着剤,
および該接着剤と何らかの強い相互作用を有し吸着した
DNAを脱着・溶離させ得る溶離剤を選択すれば,DNAの精
製が効果的に行われることが判明した。本発明のDNAの
精製方法は,菌体を溶菌処理して得られる溶菌液をヒド
ロキシアパタイトからなる吸着剤と接触させて,該溶菌
液中のDNAを該吸着剤に吸着させる工程,および該DNAを
吸着・担持する吸着剤に該吸着剤と強力な相互作用を有
し,カチオン成分がアンモニアおよび/またはアミン類
であり,アニオン成分が揮発性酸類である塩の溶液から
なる溶離液を接触させて該DNAを溶出させる工程を包含
し,そのことにより上記目的が達成される。
本発明に用いられる吸着剤としては,従来の技術の項に
挙げたように,ds DNAのみを選択的に吸着しうるヒドロ
キシアパタイトが用いられる。溶離液としては,ヒドロ
キシアパタイトを構成する成分(アニオンおよびカチオ
ン)の両方と強い相互作用を有する溶媒,ことに,難溶
性の塩を形成しうる塩溶液が使用され得る。そのような
塩溶液のなかでは,解離定数が小さいアニオンとカチオ
ンとの組合せである塩の溶液があり,かつDNAなどの核
酸との親和性が高いものが好適である。さらに水やアル
コール系溶媒に可溶であり,エタノール沈澱により析出
することのない塩が選択される。使用される塩のアニオ
ン成分としては揮発性酸類が使用され,例えば,炭酸;
および蟻酸,酢酸,プロピオン酸などの有機酸が好適で
ある。カチオン成分としては,アンモニアおよび/また
はアミン類が使用され,例えば,アンモニア;ジエチル
アミン,トリエチルアミンなどのアルキルアミン類;エ
タノールアミン,プロパノールアミンなどのアルカノー
ルアミン類;およびピリジン,アニリンなどの芳香族ア
ミン類が好適である。このような成分でなる塩を含む溶
離液としては,特にトリエチルアミン炭酸緩衝液が好適
である。トリエチルアミン炭酸緩衝液は揮発性であるた
め,DNAを含む溶出液の溶媒を留出したり凍結乾燥するこ
とによりDNAのみを高純度で回収することが可能とな
る。
溶離液の濃度は,使用する溶離液の種類により異なる
が,例えばトリエチルアミン炭酸緩衝液を使用する場合
には,10mM以上,好ましくは50mM〜2M,さらに好ましくは
100mM〜1Mの範囲である。このように,50mM以下の低濃度
であってもDNAを溶離することが可能である。
本発明方法によりDNAの精製を行うには,まず常法によ
り調製した溶菌液を吸着剤であるヒドロキシアパタイト
と接触させる。ヒドロキシアパタイトを充填したカラム
などが好適に利用され,例えば0.05〜0.25Mの燐酸緩衝
液を溶媒として通液することにより,溶菌液中のds DNA
が選択的に吸着される。溶菌液中のRNA,蛋白質,多糖類
などは吸着されない。次に,DNAを吸着・担持する吸着剤
に,上記溶離液を接触させる。例えば,DNAを吸着・担持
するヒドロキシアパタイトにトリエチルアミン炭酸緩衝
液を接触させると,炭酸イオンがヒドロキシアパタイト
のカルシウムと結合して難溶性の炭酸カルシウムを生成
し,DNAはヒドロキシアパタイトから脱着する。例えば,
ヒドロキシアパタイトカラムのベッド容量の2倍量のト
リエチルアミン炭酸緩衝液を通液することにより,吸着
されているDNAのほぼ全量を回収することができる。こ
のようにして回収される溶出液(抽出液)を通常のエタ
ノール沈澱処理に付することにより精製DNAが得られ
る。溶出液中のトリエチルアミン炭酸塩はエタノールに
相溶するため,DNAに混入してその純度を低下させること
がない。エタノール沈澱処理の代わりに溶媒の減圧留去
や凍結乾燥を行うことによってもトリエチルアミン炭酸
塩が揮発・除去され(脱塩が達成され)て高純度のDNA
が得られる。
(実施例) 以下に本発明を実施例につき説明する。
実施例1 (A)菌体の培養および溶菌:プラスミドpBR322を含有
する大腸菌HB101株を5mlのLB媒値中で一夜培養した。こ
の培養液1.5mlを5,000rpmにて5分間遠心分離し,菌体
を沈澱させた。
得られた菌体に20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)−10mM
エチレンジアミン四酢酸(2×TE)250μを加えて懸
濁させ,さらに50mMのトリス塩酸緩衝液に溶解させた10
mg/mlリゾチームを10μ加え,0℃にて10分間溶菌し
た。次いで,0.5M EDTAを20μ加え,0℃にて10分間,さ
らに2%トリトンX100を10μ加えて,0℃にて45分間放
置した。これに回収率の算出を目的として,3Hでインビ
トロ(in vitro)標識されたプラスミドDNA(3H−pBR32
2 DNA)を約0.1μCi添加した。
(B)DNAの精製: (B)−1カラム操作(吸着) (A)項で得られた溶菌菌体を含む水溶液(溶菌液)に
対し,9M尿素−0.27M燐酸緩衝液(pH7.0)−1% SDSを
含む緩衝液を8倍容量加えた。この混合液を0.5mlのヒ
ドロキシアパタイト(吸着剤)を充填したカラムに流速
5ml/時間でチャージし,菌体成分を吸着させた。
(B)−2カラム操作(洗浄1) 上記カラムに約20mlの8M尿素−0.24M燐酸緩衝液(pH7.
0)を流速20ml/時間で約1時間,溶出液の260nmにおけ
る吸光度(OD260)が0になるまで通液した。
(B)−3カラム操作(洗浄2) 次に10mMトリス・塩酸−1mMエチレンジアミン四酢酸(p
H7.5)(TE)緩衝液約10mlを流速20ml/時間の割合で30
分間通液し,(B)−2項の洗浄液の成分である尿素お
よび燐酸緩衝液を洗い流した。
(B)−4カラム操作(溶離) このカラムに0.1Mトリエチルアミン炭酸緩衝液(pH8.
0)を流速5ml/時間で流した。カラムの出口に紫外線吸
収モニター(UVモニター)を接続して260nmの吸光度を
モニターしたところ,第1図に曲線で示す結果が得られ
た。第1図から,溶離液通液開始後0.2〜1.2mlの範囲で
大部分のプラスミドDNAが溶出されているのがわかる。
カラムからの溶出液の各フラクションの放射活性を液体
シンチレーションカウンターで測定し,各フランクショ
ンに含まれる3H標識化プラスミドの回収率を調べた。そ
の結果を第1図に棒グラフで示す。第1図から,ほぼ95
%以上のプラスミドpBR322−DNAが回収されていること
がわかる。
(B)−5DNAの単離および純度の評価:得られた溶出液
約1mlに3M硫酸ナトリウムを0.1ml加えてエタノール沈澱
を行った。プラスミドDNA(pBR322)が4μg回収され
た。このプラスミドDNAの1/5量をアガロースゲル電気泳
動にかけたところ,第2図2に示す泳動パターンが得ら
れた(第2図1は,プラスミドDNA(pBR322)のマーカ
ーである)。RNAは全く検出されず,かつ,宿主DNAもリ
ボヌクレアーゼを用いる従来法(比較例2,泳動パターン
6)に比べて同程度以下(5%以下)であった。第2図
において,oc DNAは,ニック(切り目)の入ったpBR322
プラスミドDNAを,そしてcc DNAは,ニックの入らないp
BR322プラスミドDNAを示す。
さらに,回収された溶液の蛋白質の定量を行ったとこ
ろ,蛋白質の含有量は検出限界の2ng以下であり,DNAは
充分に純粋であることが推定された、このDNAは制限酵
素Hinf Iにより完全に切断され,純度的にも十分満足で
きることがわかった。
実施例2 菌体の溶菌方法としてアルカリ法を用いた。
(A)菌体の培養および溶菌:実施例1(A)項と同様
の操作で得られる遠心分離された菌体1.5mlをGTEL緩衝
液100μに懸濁し,これに0.2M水酸化ナトリウム−0.1
%ドデシル硫酸ナトリウムを200μ加え,0℃で10分間
放置し,菌体を完全に溶菌させた。次いで,この強アル
カリ性溶液に3Mの酢酸カリウムを150μ加えて中和し
た。この溶菌液を15,000rpmで10分間遠心した。この沈
澱分画には細胞の殻(セルデプリス)や宿主DNA,宿主の
蛋白質などが含まれるため,これを除去する。得られた
上澄み分画には,目的とするDNAの他,若干の宿主DNA,
蛋白質,大部分のRNAが不純物として含まれる。この上
澄み液に3Hでインビトロ(in vitro)標識されたプラス
ミドDNA(3H−pBR322 DNA)約0.1μCi相当分を添加し
た。これは回収率を算出するためである。
(B)DNAの精製:本実施例(A)項で得られた3H−pBR
322 DNAを含む上澄み液を用い実施例1と同様にカラム
操作を行った。溶離液通液開始後0.2〜1.2mlの範囲で大
部分のプラスミドDNAが溶出された。DNAの回収率は3H標
識化プラスミドの放射能から,ほぼ95%以上であること
が判明した。
回収された溶出液約1mlに3M酢酸ナトリウムを0.1ml加え
てエタノール沈澱を行い,プラスミドDNA(pBR322)を
3μg回収した。このプラスミドDNAをアガロース電気
泳動にかけたところ第2図3に示す泳動パターンが得ら
れた。RNAは全く認められず,かつ,宿主DNAも従来法
(比較例2;泳動パターン6)に比べてかなり低く,エチ
ジウムブロマイド染色によっては検出することが不可能
であった。
さらに,回収された溶液の蛋白質の定量を行ったとこ
ろ,蛋白質の含有量は検出限界の2ng以下であり,DNAは
十分に純粋であることが推定された。このDNAは制限酵
素Hinf Iにより完全に切断され,純度的にも十分満足で
きることがわかった。この方法は溶菌の段階で大部分の
不純物を遠心により除去しているので,カラム操作が実
施例1の場合と比較して非常に容易であり,かつ回数率
も高かった。
実施例3 (A)菌体の容量および溶菌:実施例2と同様のアルカ
リ法で溶菌後,溶菌液を遠心分離せずにそのまま次工程
に進んだ。
(B)DNAの精製:本実施例(A)項で得られる溶菌液
をそのまま実施例1(B)項と同様の方法でカラムにか
けた。実施例2の場合と比べて若干カラムが目詰まりし
て,液の通りが悪かったが,プラスミドDNAが約3μg
回収された。
このプラスミドDNAをアガロース電気泳動にかけたとこ
ろ、RNAは全く検出されず,かつ,宿主DNAも従来法(比
較例2;泳動パターン6)に比べて同程度以下(5%以
下)であった。回収溶液の蛋白質の定量を行ったとこ
ろ,蛋白質の含有量は検出限界の2ng以下であり,充分
に純粋であることが推定された。さらに,このDNAは制
御酵素Hinf Iにより完全に切断され,純度的にも十分満
足できることがわかった。
このように,溶菌液そのものをカラムにチャージするこ
とにより,遠心操作やその後の上澄み液を回収する操作
などが省略できる。省力化のためには望ましい方法であ
ると考えられる。
比較例1 溶離液としてトリエチルアミン炭酸緩衝液(pH8.0)の
代わりに,0.3Mの燐酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を用い
たこと以外は実施例1と同様に操作した。カラム溶出液
はそのままではエタノール沈澱により大量の燐酸塩が析
出する。そのため透析を実施した。透析後に,エタノー
ル沈澱によりプラスミドDNAを回収したところ,その量
は2μg以下であった。この量は実施例1の場合に比べ
極めて低く,かつ,透析のために約1日を要し,効果的
な方法ではないことが判明した。得られたDNAの電気泳
動パターンを第2図4に示す。
比較例2 実施例1〜3および比較例1は全て液体クロマトグラフ
ィーの原理に基づくミニカラム法を用いた自動化装置に
よるDNA精製の例である。これに対して,従来の手動に
よるDNAの精製例をアルカリ法を用いて次に示す。
(A)菌体の培養および溶菌:実施例2(A)項と同様
に操作して,上澄み液を得,これに3H−pBR322DNAを加
えた。これに等量のイソプロパノールを加え,アルコー
ル沈澱を行った。得られた沈澱を15,000rpmで10分間遠
心し,沈澱を70%エタノールで洗浄後真空乾燥し,DNA分
画を回収した。このDNA分画を50μのTE緩衝液に溶解
させた。次いでこの溶液に1mg/mlのリボヌクレアーゼを
2μ加え,37℃で1時間放置し,RNAを低分子化した。
これに,0.2倍量の5M NaCl水溶液および0.33倍量の30%
ポリエチレングリコール6000水溶液を加え,−10℃にて
1時間冷却した。生じた沈澱(プラスミドDNA)を,15,0
00rpmにて10分間遠心分離し,回収した。低分子化され
たRNAは沈澱しないため,除去される。得られたDNAを50
μのTEに溶解し,これに5μの3M NaCl水溶液を加
えた。これに99%エタノール100μを加え,−78℃で1
0分間冷却した。これを15,000rpmで10分間遠心分離し,D
NAを回収した。この操作によりポリエチレングリコール
が除去された。得られたDNAを再び70%エタノールにて
洗浄後,真空乾燥した。DNAの収量は3μgであった。D
NAの電気泳動パターンを第2図6に示す。上記リボヌク
レアーゼ処理を行わないときの粗DNAの電気泳動パター
ンを,あわせて第2図5に示す。この比較例において
は,RNA除去のための処理に約3時間を余分に要した。
(発明の効果) 本発明方法によれば,このように,菌体溶菌液からDNA
を短時間のうちに,高純度・高収率で、かつ煩雑な操作
を必要とすることなく単離・精製することができる。こ
のような方法は,DNAの配列決定,遺伝子の構築など遺伝
子工学の各分野で広く利用され得る。
【図面の簡単な説明】
第1図は,本発明方法によりヒドロキシアパタイトカラ
ムを用いてDNAの精製を行ったときの溶出液の紫外線吸
収をモニターした結果,およびDNAの指標として加えら
れた3H放射能活性をモニターした結果を示すグラフ;そ
して第2図は本発明方法および他の方法により得られる
精製DNAの電気泳動パターンである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】菌体を溶菌処理して得られる溶菌液をヒド
    ロキシアパタイトからなる吸着剤と接触させて,該溶菌
    液中のDNAを該吸着剤に吸着させる工程,および 該DNAを吸着・担持する吸着剤に該吸着剤と強い相互作
    用を有し,カチオン成分がアンモニアおよび/またはア
    ミン類であり,アニオン成分が揮発性酸類である塩の溶
    液からなる溶離液を接触させて,該DNAを溶出させる工
    程, を包含するDNAの精製方法。
  2. 【請求項2】前記アミン類がアルキルアミン,アルカノ
    ールアミンおよび芳香族アミンでなる群から選択される
    特許請求の範囲第1項に記載の精製方法。 処理方法。
  3. 【請求項3】前記揮発性酸類が炭酸および/または有機
    酸である特許請求の範囲第1項に記載の精製方法。
  4. 【請求項4】前記溶離液が揮発性緩衝液である特許請求
    の範囲第1項,第2項または第3項に記載の精製方法。
  5. 【請求項5】前記溶離液がトリエチルアミン炭酸緩衝液
    である特許請求の範囲第4項に記載の精製方法。
  6. 【請求項6】前記トリエチルアミン炭酸緩衝液の濃度が
    10mM〜2Mである特許請求の範囲第5項に記載の精製方
    法。
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