JPH0740712Y2 - キャンドモータポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、キャンドモータポンプに係り、特に気化し
易いポンプ取扱液の一部を、キャンドモータ部内に導入
した場合に、気化することなくキャンドモータ部内を円
滑に循環するように構成したキャンドモータ部の循環系
統の構成要素の改良に関するものである。

〔従来の技術〕

一般に、気化し易い液や高温の液を取扱うキャンドモー
タポンプにおいては、キャンドモータ部内に導入された
ポンプ取扱液の一部は、ロータ室を通過する際にモータ
部からの熱を吸収しまたは減圧されてキャビテーション
を発生し、ベアリングやロータおよびステータのキャン
表面に損傷（エロージョン）を与え、さらにキャンドモ
ータ部内を出る際には直ちに気化する傾向を有する。こ
のため、例えばキャンドモータの前部ロータ室にポンプ
取扱液の一部を導入する場合、後部ロータ室へ案内され
た液は気化してキャビテーションが発生し易くなるた
め、この液を主ポンプの吐出側に還流しないで、後部ロ
ータ室を液供給タンクのベーパーゾーンに対し配管によ
り連通接続して気化した液を移送する手段が採られる
（これを一般にリバースサーキュレーション方式とい
う）。この場合、ポンプ設置位置から液供給タンクまで
長大な配管設備となり、配管作業が面倒になると共に設
備コストも増大する難点がある。

本出願人は、既にこの種のキャンドモータポンプにおい
て、主ポンプの吐出管の一側部とモータ部の後部ロータ
室とを循環チューブを介して連通し、前部ロータ室と主
ポンプ室との間に補助ポンプ室を設け、前記補助ポンプ
室と主ポンプの吐出管とを別の循環チューブを介して連
通し、ポンプ取扱液の一部を後部ロータ室、後部ベアリ
ング、ロータ・ステータ間、前部ベアリングおよび前部
ロータ室を順次流過して補助ポンプの作用により主ポン
プの吐出管へ還流させるよう構成したポンプを提案し、
特許第782368号（特公昭49-37922号公報）として特許を
得た。

すなわち、前記特許発明のポンプによれば、循環チュー
ブがそれぞれポンプの吐出管に配置され、補助インペラ
の昇圧作用によってポンプ取扱液は循環系統内に還流
し、モータ部の冷却並びに潤滑が行われる。また、モー
タ部の発熱部分を冷却することによって、温度上昇した
循環液は圧力の高い部分（吐出口）に還流するので気化
し難くなり、循環液のガス化防止が有効に達成される。

しかし、前記ポンプにおいて、実際のポンプ運転時に
は、循環チューブ内で若干の圧力降下があるため、補助
ポンプの吸込側となる前部ベアリングが比較的圧力レベ
ルの低い環境下に置かれてドライに曝され易くなる。

そこで、本出願人はさらに研究並びに改良を重ねた結
果、ポンプ部の吐出側からポンプ取扱液の一部を補助ポ
ンプ室へ効率よく取出し、これを補助インペラにより適
正な圧力まで昇圧し、この昇圧した液をキャンドモータ
内部へ特別な流路設計を行うことなく一定方向に流すこ
とにより、ポンプ取扱液の円滑な循環と共に前後部のベ
アリングの適正な潤滑を行い、しかもキャビテーション
等の発生を確実に防止し得るキヤンドモータポンプの開
発に成功し、例えば特公昭62-13516号公報として提案し
た。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、前記の改良されたキヤンドモータポンプ
においては、一般にモータロータの周囲において、ロー
タキャンとステータキャンとの間隙は極めて狭くなって
おり、またモータロータの両側に設けたベアリングとロ
ータ端部との間は離間しているため、例えば後部ロータ
室側から前部ロータ室側へ液が流れる場合、前記離間部
では流路断面積が急激に拡大し、また前記間隙部では流
路断面積が急激に縮小することから、たとえキャンドモ
ータ部内の液が循環する各部の圧力条件を種々改善して
も、各ロータ室内でキャビテーションを発生させる傾向
を有する。この結果、キャンにエロージョンを発生させ
たり、ロータ室の循環液の流量が減少してモータ部を冷
却する能力が低下したり、潤滑不良でベアリングが摩耗
する等の問題が生ずる。

そこで、本考案の目的は、キャンドモータ部の後部ロー
タ室内に外部よりポンプ取扱液と同等の液を導入し、こ
の液を前部ロータ室ポンプ部側とを連通するロータ軸の
軸貫通部間隙を介してポンプ部へ導出することにより、
ベアリングの潤滑とモータ部の冷却とを行うよう構成し
たキャンドモータポンプにおいて、キャンドモータ部内
で流路断面積が急激に拡大したり縮小しないようにモー
タロータ周辺の構成を改良することにより、キャビテー
ションの発生を有効に防止することができるキャンドモ
ータポンプを提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

本考案に係るキャンドモータポンプは、キャンドモータ
部の後部ロータ室内に外部よりポンプ取扱液と同等の液
を導入し、この液を前部ロータ室とポンプ部側とを連通
するロータ軸の軸貫通部間隙を介してポンプ部へ導出す
ることにより、ベアリングの潤滑とモータ部の冷却とを
行うよう構成したキャンドモータポンプにおいて、 モータロータの両側に設けたベアリングと前記モータロ
ータの各端部との離間部にそれぞれコニカルアダプタを
緊密に配置してこれらを前記ロータ軸に固定し、これら
コニカルアダプタの外周部には、その大径端を前記モー
タロータの外径とほぼ一致させると共にその小径端をベ
アリングの外径とほぼ一致するようにテーパを形成する
ことを特徴とする。

前記のキャンドモータポンプにおいて、モータロータの
両側に設けたベアリングに対し、前記モータロータの各
端部との離間部にそれぞれスラストワッシャを対向配置
してこれらをロータ軸に固定し、これらスラストワッシ
ャと前記モータロータの各端部との間にコニカルアダプ
タを緊密に配置してこれらを前記ロータ軸に固定し、こ
れらコニカルアダプタの外周部には、その大径端を前記
モータロータの外径とほぼ一致させると共にその小径端
をスラストワッシャの外径とほぼ一致するようにテーパ
を形成するように構成すれば好適である。

〔作用〕

本考案に係るキャンドモータポンプによれば、キャンド
モータ部の後部ロータ室内に外部よりポンプ取扱液と同
等の液を導入し、この液を前部ロータ室とポンプ部側と
を連通するロータ軸の軸貫通部間隙を介してポンプ部へ
導出することにより、ベアリングの潤滑とモータ部の冷
却とを行うよう構成したキャンドモータポンプにおい
て、ポンプ取扱液として気化し易い液を取扱う場合、モ
ータロータの両側に設けたベアリングと前記モータロー
タの各端部との離間部にそれぞれコニカルアダプタを緊
密に配置してこれらを前記ロータ軸に固定し、これらコ
ニカルアダプタの外周部には、その大径端を前記モータ
ロータの外径とほぼ一致させると共にその小径端をベア
リングの外径とほぼ一致するようにテーパを形成するこ
とにより、特にモータロータの周辺部における流路断面
積の急激な拡大や縮小を除去することができ、これによ
りキャンドモータ部内でのキャビテーションの発生を有
効に防止することができる。

〔実施例〕

次に、本考案に係るキャンドモータポンプの実施例につ
き添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。

第１図は、本考案に係るキャンドモータポンプの一実施
例を示すものである。すなわち、第１図において、参照
符号10はポンプ部、12はキャンドモータ部を示し、ポン
プ部10とキャンドモータ部12とはアダプタ14を介して結
合されている。キャンドモータ部12の前部ロータ室16お
よび後部ロータ室18には、それぞれベアリングハウジン
グ20,22で支持した前部ベアリング24および後部ベアリ
ング26を設けて、それぞれモータロータ28の両端部に延
在するロータ軸30を支承する。また、前記モータロータ
28の両側に設けた前部ベアリング24および後部ベアリン
グ26に対し、モータロータ28側にスラストワッシャ32,3
4をそれぞれ対向配置し、これらスラストワッシャ32,34
をロータ軸30に固定してスラストベアリングを構成す
る。

さらに、本実施例のキャンドモータポンプは、アダプタ
14のロータ軸30が貫通する軸貫通部間隙36を介して前部
ロータ室16とポンプ部10とを連通すると共に、キャンド
モータ部12の後部に後部ロータ室18と連通する循環液供
給系38を持続配置する。

このように構成した本実施例のキャンドモータポンプ
は、前記循環液供給系38より後部ロータ室18内へ所要の
圧力でポンプ取扱液と同一もしくはポンプ取扱液と混合
しても支障のない液を導入し、このようにしてもキャン
ドモータ部12内へ導入された循環液はポンプ運転に際し
アダプタ14に設けられた軸貫通部間隙36を通ってポンプ
部10側に還流すると共に、キャンドモータ部12内におい
て各ベアリング24,26の潤滑を行うと共にモータ部の冷
却を行う。

しかるに、本考案においては、前記キャンドモータ部12
内におけるモータロータ28の周辺部に形成される流路断
面積が急激に拡大されかつ縮小される部分に新たな改良
を加えたものである。

すなわち、前記キャンドモータポンプにおいて、モータ
ロータ28の外周部には、ロータキャン40とステータキャ
ン42との間に極めて小さい流路断面積からなる間隙部44
が形成され、またモータロータ28の両端には、ベアリン
グ24,26ないしはスラストワッシャ32,34との間に極めて
大きい流路断面積からなる離間部46,48が形成される。
そこで、本考案においては、前記離間部46,48に対し円
錘台状のコニカルアダプタ50,52をそれぞれ緊密に配置
したことを特徴とするものである。この場合、前記コニ
カルアダプタ52（50）は、第２図に拡大して示すよう
に、大径端は前記モータロータ28の外径とほぼ一致させ
ると共に、その小径端はスラストワッシャ34（32）の外
径とほぼ一致するようにして、前記コニカルアダプタ52
（50）の外周部にテーパを形成し、これらを前記ロータ
軸30に固定する。また、コニカルアダプタ52（50）の各
端面とモータロータ28およびスラストワッシャ34（32）
の端面との間隙も極力小さく設定する。このように構成
することにより、前述したモータロータ28の周辺部にお
いて流路断面積が急激に拡大したり縮小したりすること
が防止され、循環液の円滑な流れを生じさせて、キャン
ドモータ部12内でのキャビテーションの発生を防止する
ことができる。

以上、本考案の好適な実施例につき説明したが、本考案
は前述した実施例に限定されることなく、本考案の精神
を逸脱しない範囲内において種々の改良変更をなし得る
ことは勿論である。

〔考案の効果〕

前述した実施例から明らかなように、本考案によれば、
キャンドモータ部の後部ロータ室内に外部よりポンプ取
扱液と同等の液を導入し、この液を前部ロータ室とポン
プ部側とを連通するロータ軸の軸貫通部間隙を介してポ
ンプ部へ導出することにより、ベアリングの潤滑とモー
タ部の冷却とを行うよう構成したキャンドモータポンプ
において、モータロータの両側に設けたベアリングと前
記モータロータの各端部との離間部にそれぞれコニカル
アダプタを緊密に配置してこれらを前記ロータ軸に固定
し、これらコニカルアダプタの外周部には、その大径端
を前記モータロータの外径とほぼ一致させると共にその
小径端をベアリングの外径とほぼ一致するようにテーパ
を形成することにより、ポンプ取扱液として気化し易い
液を取扱う場合に際し、モータロータの周辺部における
流路断面積の急激な拡大や縮小を除去することができ、
これによりキャンドモータ部内でのキャビテーションの
発生を有効に防止することができる。

また、本考案によれば、簡単な構成で、しかも既設のキ
ャンドモータポンプに対しても特別な設計変更を行うこ
となく直ちに実施可能であり、従って低コストで製造す
ることができ、この種キャンドモータポンプの性能の向
上に寄与する効果は極めて大きい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るキャンドモータポンプの一実施例
を示す要部断面側面図、第２図は第１図に示すコニカル
アダプタの要部拡大断面図である。 10……ポンプ部、12……キャンドモータ部 14……アダプタ、16……前部ロータ室 18……後部ロータ室 20,22……ベアリングハウジング 24……前部ベアリング、26……後部ベアリング 28……モータロータ、30……ロータ軸 32,34……スラストワッシャ 36……軸貫通部間隙、38……循環液供給系 40……ロータキャン、42……ステータキャン 44……間隙部、46,48……離間部 50,52……コニカルアダプタ

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】キャンドモータ部の後部ロータ室内に外部
   よりポンプ取扱液と同等の液を導入し、この液を前部ロ
   ータ室とポンプ部側とを連通するロータ軸の軸貫通部間
   隙を介してポンプ部へ導出することにより、ベアリング
   の潤滑とモータ部の冷却とを行うように構成したキャン
   ドモータポンプにおいて、 モータロータの両側に設けたベアリングと前記モータロ
   ータの各端部との離間部にそれぞれコニカルアダプタを
   緊密に配置してこれらを前記ロータ軸に固定し、これら
   コニカルアダプタの外周部には、その大径端を前記モー
   タロータの外径とほぼ一致させると共にその小径端をベ
   アリングの外径とほぼ一致するようにテーパを形成する
   ことを特徴とするキャンドモータポンプ。
2. 【請求項２】モータロータの両側に設けたベアリングに
   対し、前記モータロータの各端部との離間部にそれぞれ
   スラストワッシャを対向配置してこれらをロータ軸に固
   定し、これらスラストワッシャと前記モータロータの各
   端部との間にコニカルアダプタを緊密に配置してこれら
   を前記ロータ軸に固定し、これらコニカルアダプタの外
   周部には、その大径端を前記モータロータの外径とほぼ
   一致させると共にその小径端をスラストワッシャの外径
   とほぼ一致するようにテーパを形成してなる請求項１記
   載のキャンドモータポンプ。