JPH0733507Y2 - インナーイヤー型ヘッドホン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、安定した低音特性が得られるようにしたイ
ンナーイヤー型ヘッドホンに関する。

［従来の技術］ 各種音響機器において使用されているインナーイヤー型
ヘッドホンは一般に第３図に示すような構成となされて
いる。

同図において、２は筒状のケースを示し、その上方開放
端はお椀状をなす径大開口部として構成され、ここにド
ライバーユニット３が収納される。

ドライバーユニット３は周知のように円形の凹部を有し
たヨーク４を有すると共に、その内部に円形状のマグネ
ット５を介してポールピース（ポールプレート）６が装
着される。そして、その対向面にボイスコイル８が装着
された振動板７が取り付けられる。

なお、11は音響抵抗体であり、12は網状をなす保護板、
14はゴムリングである。

ケース２の上端部にこのようなドライバーユニット３を
装着することにより、磁気回路を構成するヨーク４とケ
ース２との間にはハウジング13が形成されたことにな
る。

このように構成されたインナーイヤー型のヘッドホン１
の音響等価回路は第５図に示すようになる。この等価回
路において、 mo:振動板の等価質量 so:振動板の等価スティフネス ml:インナーイヤー型ヘッドホンと耳孔との漏れによる
等価質量 rl:インナーイヤー型ヘッドホンと耳孔との漏れによる
等価音響抵抗 sc:インナーイヤー型ヘッドホンと耳孔によって形成さ
れる容積の等価スティフネス s1:ハウジング容積の等価スティフネス r1:ハウジングと外気とを連結する音響抵抗 F:信号電流によるボイスコイルの駆動力 第６図の実線Laにてこのインナーイヤー型ヘッドホン１
のカップラー音圧周波数特性を示す。

ところで、一般にインナーイヤー型ヘッドホンはこれを
耳孔に挿入して受聴する場合、インナーイヤー型ヘッド
ホン１と耳孔との間には多少の隙間が生ずる。この隙間
からの空気の漏れは低音になるほど大きいために受聴音
は低音の不足を感ずることが多い。

また、この漏れの程度は個人差が大きく、従って、イン
ナーイヤー型ヘッドホンは聞く人によって低音特性が大
きくバラツク欠点をもっている。

これは、第５図に示す音響等価回路において、ml及びrl
で表わされる漏れインピーダンスが耳孔容積scによるイ
ンピーダンスより低音域において低くなり、ml,rl及びs
cによる並列回路のインピーダンスが殆どrlのみによっ
て表わされるようになるためである。

従って、このようなインナーイヤー型ヘッドホンにおい
て、低音限界を下げるためには、振動板７の最低共振周
波数foを下げるか、若しくは空気漏れを少なくしてrlを
大きくする方法が有効である。

空気漏れが全くない場合、すなわち、rl＝∞の場合、理
論的には低音限界周波数は０すなわち低音に減衰は全く
起こらない。

一方、振動板７の最低共振周波数foを下げるには、感度
・高温限界周波数、振動板の大きさ、振動板フィルムの
厚さ等いろいろな制約があり、これらの制約を考慮する
と、一般には図示するように250〜300Hz程度が低音の限
界周波数である。

これに対して、第４図に示すように、ハウジング13の外
周面にイヤーパッド20を装着したインナーイヤー型ヘッ
ドホン１を使用すると、これによって外部への空気漏れ
が改善されるため、耳孔部とインナーイヤー型ヘッドホ
ンとの漏れ抵抗rlが大きくなる。

これによって、第６図の点線Lbに示すように、イヤーパ
ッド20を使用したときの周波数特性は、イヤーパッド20
を使用しないときの周波数特性（実線La）より低音が大
幅に増強されたものとなる。

［考案が解決しようとする問題点］ ところで、このようにイヤーパッド20を使用して低音特
性を改善しようとする場合には、普遍的な低音特性の改
善とはならず、不安定性を否定できない。

すなわち、このイヤーパッド20による方法はイヤーパッ
ド20の厚みを厚くすると耳孔の小さい人は挿入しがたく
なり、厚みが薄い場合は耳孔の大きい人には漏れが大き
い等の欠点がある。

それはインナーイヤー型ヘッドホン１の外周部をイヤー
パッド20が覆うため、イヤーパッド20の厚みが充分とれ
ないためである。

このようなことから、空気漏れが使用者によってバラツ
キ、常に一定の漏れ抵抗rlが得られなくなり、低音特性
が不安定となるものである。

そこで、この考案では、耳孔からの空気漏れを一定にで
きるインナーイヤー型ヘッドホンを提案するものであ
る。

換言すれば、個人差による変化を極力減少させ、安定し
た漏れ抵抗rlを得ることによって安定した低音増強特性
を得ることができるようにしたインナーイヤー型ヘッド
ホンを提案するものである。

［問題点を解決するための手段］ 上述の問題点を解決するため、この考案においては、ド
ライバーユニットを収納したハウジングの外周面に装着
されるリング状サポータと、 このリング状サポータの耳孔装着側に設けられた変形自
在なリング状のイヤーパッドとで構成されたことを特徴
とするものである。

［作用］ イヤーパッド22に弾性に富むサポータ21の耳孔装着側に
突出した湾曲部21bを介して取り付けられている。

イヤーパッド22も弾性に富み、かつ適当な漏れ抵抗を有
するような材質で成型されている。そのためイヤーパッ
ド22はヘッドホン全体の大きさにそれ程影響されずに取
り付けられる。これによって、イヤーパッド22は変形自
在となる。

その結果、どのような大きさ及び形状の耳孔に対して
も、その密着性が一定となり、漏れ抵抗の安定化を図る
ことができる。

漏れ抵抗の安定化によって、低音特性が安定する。

［実施例］ 続いて、この考案に係るインナーイヤー型ヘッドホンの
一例を、第１図以下を参照して詳細に説明する。

この考案においては、第３図に示すゴムリング14の代り
に、第１図に示すようなサポータ21が使用される。

サポータ21は図示するように、従来のインナーイヤー型
ヘッドホン１と同様、軟質のゴムまたは軟質のゴム状プ
ラスチックが使用され、その断面がＳ字のリング状に成
形されたものが使用される。

そして、サポータ21の右端湾曲部21aによって、ドライ
バーユニット３とハウジング13が嵌合される。そのた
め、右端湾曲部21aの内周面には、図示するような内面
フランジ25が形成され、その両サイドには適当な長さと
深さを有する係合部26,27が形成されている。

これに対して、ハウジング13の開口先端部には外方フラ
ンジ28が一体形成され、ここに一方の係合部26が係合さ
れ、他方の係合部27にドライバーユニット３が係合され
る。これによって、ドライバーユニット３とハウジング
13がこのサポータ21によって、両者が嵌合されて機械的
に一体化される。

耳孔に挿入される側の左端湾曲部21bの先端部は、図の
ように薄膜状で、しかも外側に反り返った形状に成型さ
れ、これによって多少の弾性が付与されるようになされ
ている。この突出筒状湾曲部21bの外周面にその断面が
円形のリング状のイヤーパッド22が取着されてインナー
イヤー型ヘッドホン１が構成される。

このようにサポータ21の耳孔装着側に突出した湾曲部21
bの外周面にイヤーパッド22が装着されるため、イヤー
パッド22はヘッドホン全体の大きさに大きく影響され
る。

イヤーパッド22は、発泡プラスチックなどよりなる柔軟
で弾力に富んだ弾性体が使用され、これが両面テープま
たは接着剤を使用して、上述した突出筒状湾曲部21bに
強固に接着される。

リング状イヤーパッド22の外径はサポータ21の外径より
も若干大きくなるように選定されている。

このように、サポータ21の一部に取着されたイヤーパッ
ド22を使用したインナーイヤーヘッドホン１を耳孔に挿
入した場合には、サポータ21及びイヤーパッド22は何れ
も弾性に富む材質と形状に選定されているものであるか
ら、これらの弾力性によってイヤーパッド22が耳孔の形
状になじみ、イヤーパッド22の音響抵抗による適度な漏
れ抵抗rlを得ることができる。

そして、このようにイヤーパッド22及びサポータ21の組
合せによると、イヤーパッド22の収縮範囲が従来のイヤ
ーパッドによるものに比べ大きい。その結果、耳孔の大
小に拘らず安定した挿入抵抗を得ることができ、耳孔形
状による個人差に対しても安定した低音増強効果を得る
ことができる。

従って、第６図曲線Lbに示す周波数特性を個人差によら
ず、安定して得られるものである。

第２図には本発明によるインナーイヤー型ヘッドホン１
の他の例であって、従来のインナーイヤーヘッドホンに
アダプタとしてイヤーパッド22を脱着できるようにした
ものである。

従って、サポータ21の右端湾曲部21aはゴムリング14の
外周面にサポータ21がそのまま装着できるような形状と
なされている。

その他の形状は第１図の場合と同様であるので、その説
明は省略する。

このイヤーパッド22を使用する場合には、イヤーパッド
が汚れたり、破損した場合、これを簡単に交換できるこ
と、イヤーパッドを意識的に装着しないで使用する場合
等有利である。

［考案の効果］ 以上説明したように、この考案においては、インナーイ
ヤー型ヘッドホン本体に対して、サポータを介してイヤ
ーパッドを取り付けるようにしたものである。

サポータも、イヤーパッドも共に、弾性に富み、かつイ
ヤーパッドは適当な漏れ抵抗を有するような材質で成型
されているから、これによって、イヤーパッドは変形自
在となる。

その結果、どのような大きさ及び形状の耳孔に対して
も、イヤーパッドの密着性が一定となり、漏れ抵抗の安
定化を図ることができる。

漏れ抵抗の安定化によって、低音特性が安定する。

従って、個人差によって低音特性が変動するような欠点
を一掃できる実益を有する。

このようなことから、この考案に係るインナーイヤー型
ヘッドホンは上述した各種音響機器に適用して極めて好
適である。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係るインナーイヤー型ヘッドホンの
一例を示す縦断面図、第２図はこの考案の他の例を示す
構成図、第３図は従来のインナーイヤー型ヘッドホンの
縦断面図、第４図はイヤーパッドを装着した状態の一部
断面図、第５図はその音響等価回路図、第６図はその周
波数特性曲線図である。 １……インナーイヤー型ヘッドホン ２……ケース ３……ドライバーユニット ４……ヨーク ５……マグネット ６……ポールピース ７……振動板 ８……ボイスコイル 13……ハウジング 14……ゴムリング 21……サポータ 22……イヤーパッド 25……内面フランジ 26,27……係合部 28……外方フランジ

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ドライバーユニットを収納したハウジング
   の外周面に装着され、且つ耳孔装着側に突出した湾曲部
   を有するリング状サポータと、 このリング状サポータの上記湾曲部の外周面に設けられ
   た変形自在なリング状のイヤーパッドとで構成されたこ
   とを特徴とするインナーイヤー型ヘッドホン。