JPH073279B2 - 水流中の脈流・乱流を減少・消去させるフィルター - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は、管路を通る水流中に含まれている脈流や乱
流を減少・消去させるフィルターに関するものである。

（従来の技術） ポンプで水を送るとき、その水流には脈流や乱流が含ま
れるものであり、また、落差による水流であっても水路
の状況等によって脈流や乱流が含まれるものである。

水流中の脈流は、水流に大きな圧力変化をもたらした
り、２次乱流を派生させたりするものであり、この脈流
や乱流は種々の試験や実験、例えば本出願人の１人の発
明に係わる特公昭61−26068号公報（特許第1371156号）
「水中音により水玉を含む水流をつくる方法」（内容後
述）において使用する水の場合の如く、用途によっては
大きな障害となるものである。

この脈流や乱流を除くために従来は第５図に示す如く管
路の途中に数個のチャンバー（Ｃ）を設けて、空気の体
積弾性を利用して脈流や乱流を減少させていたものであ
る。

（発明が解決しようとする課題） 例えば、物理教育において放物線の説明に利用できる、
前記した「水中音により水玉を含む水流をつくる方法」
の実施の場合の如く、水流中に微小な脈流や乱流があっ
ても不規則な水玉の発生や水流の分散の原因となること
から、できるだけ脈流・乱流のない水流が要求される
が、このような場合前記した従来のチャンバーによる方
法では脈流・乱流が若干残るものであり、これを完全に
近いまでに減少させる手段が課題とされていた。

（課題を解決するための手段） 上記課題を解決するためのこの発明は、脈流・乱流を含
む水流が通る管路に、ゴムまたはプラスチックの如き動
しにくい材料からなる膨大部を形成し、該膨大部内に、
弾性と通水性をもつ多孔質のスポンジを上記水流が通過
すべく装填するとともに、通水時に空気溜が形成され、
該空気溜に上記スポンジの一部が露出している構成とし
た、水流中の脈流・乱流の減少・消去させるフィルター
である。

（作用） 脈流や乱流を含む水流が管路を通り膨大部に達してスポ
ンジを通過するとき、スポンジ自体の弾性と、空気溜内
の空気及びこの空気溜に露出している部分のスポンジに
含まれている空気の体積弾性との相乗効果により脈流・
乱流を減少・消滅させる作用をなすものである。

（実施例） 以下この発明を、図面に示す実施例に基づいて詳細説明
する。

第１実施例 第１図は、水平状態で使用する本発明フィルターの第１
実施例を示す中央縦断面図であり、図において（１）は
膨大部で、大径円筒の両端に外方に向かって漸次小径と
なる円錐部（２）（2a）を形成し、さらに膨大部（１）
の軸心方向の中央部内周に小径部（３）が形成されてい
る。

そして、一方の円錐部（２）の小径端に円筒状の流入管
（４）を、他方の円錐部（2a）の小径端に流入管（４）
より大径の円筒状の流出管（５）が接続されている。

この膨大部（１）、円錐部（２）（2a）、小径部
（３）、流入管（４）、流出管（５）、は、ゴムまたは
プラスチックの如き振動しにくい材質のものが使用され
る。

（６）はスポンジで、ゴムまたはプラスチックからなる
弾性と通水性を有する多孔質の厚円板状物であって、小
径部（３）の軸心方向の両側に１個づつ装填されてい
る。

かくして、脈流・乱流を含む水流（W1）が流入管（４）
から流入して膨大部（１）に達し、スポンジ（６）
（６）を通過して流出管（５）に流出する際に、このフ
ィルターが水平に配置されているため大径部（１）内の
空気の一部が上部に残り圧縮されて空気溜（７）が形成
され、この空気溜（７）内にスポンジ（６）（６）の上
部が露出していて、空気溜（７）は中央の小径部（３）
に形成される部分と、円錐部（２）及び（2a）に形成さ
れる部分との３区画に分けられるが、スポンジ（６）
（６）の露出部（６′）（６′）には空気溜（７）内の
空気が含まれていて、この露出部（６′）（６′）を介
して空気溜（７）の３区画が連している。

そして、脈流・乱流を含む水流（W1）が膨大部（１）内
を通過するとき、スポンジ（６）（６）の弾性と、空気
溜（７）及びスポンジの露出部（６′）（６′）に含ま
れている空気の体積弾性とが相乗作用して脈流・乱流が
減少・消失し、流出管（５）から脈流・乱流のない水流
（W2）が吐出される。

このことは、スポンジ（６）（６）を除去して空気溜
（７）のみとしたものや、このフィルターを鉛直にし空
気を追い出して空気溜（７）を無くした場合に、脈流・
乱流が僅かしか減少しないことから発明の構成が効果的
であることがわかる。

なお、流出管（５）を流入管（４）より大径としたのは
流出側の抵抗を小さくして脈流・乱流のない水流（W2）
を安定せるためであり、このことは以後の第２・第３実
例も同様である。

第２実施例 第２図は、水平状態で使用する本発明フィルターの第２
実施例を示す中央縦断面図であり、上記第１図に示す第
１実施例と同様に膨大部（1a）が形成されているが、こ
の膨大部（1a）は両端を平行面（８）（8a）とした点が
第１実施例と異なる点であり、従って２個のスポンジ
（6a）（6a）は小径部（3a）の両側で平行面（８）及び
（8a）の内面に片面を接して装填されており、空気溜
（7a）の空間は小径部（３）部分のみとなっている。

作用としては空気溜（7a）が第１図に比べて若干狭いた
め空気の体積弾性がやや小となるが、フィルター効果に
関しては上記第１実例と大差が無く製作はやや簡単とな
るものである。

第３実施例 第３図は、鉛直状態で使用する本発明フィルターの第３
実施例を示す中央縦断面図であり、円筒状の膨大部（1
b）の下端面中央に流入管（4b）が接続され、上端面中
央には流入管（4b）より大径の流出管（5b）が、下端を
膨大部（1b）の内部に突出して接続してあり、この膨大
部（1b）の内部の下端付近に仕切板（９）が外周近くの
円周上に数個の通水孔（10）を持って設けてあり、この
仕切板（９）の上側の膨大部（1b）内に、上端に空間を
残して弾性と通水性を有する多孔質のゴムまたはプラス
チックからなるスポンジ（6b）が装填され、このスポン
ジ（6b）の上面の中心に形成した凹入部に、流出管（5
b）の下端部がはまりこんでいる。

かくして、脈流・乱流を含む水流（W1）が流入管（4b）
から膨大部（1b）に入ると、矢印の方向に流れて仕切板
（９）の通水孔（10）からスポンジ（6b）を通って流出
管（5b）に下端から入って上方に流出する。

このとき膨大部（1b）内の水面（W3）は流水管（5b）の
下端よりやや上方位置まで空気を圧縮して上昇したスポ
ンジ（6b）内にあり、この水面（W3）の上方が空気溜
（7b）となり、スポンジ（6b）の上端部が空気溜（7b）
への露出部（6b′）となっている。

この第３実例の作用・効果も上記第１・第２実施例とほ
ぼ同様である。

第４図は本発明のフィルターを利用した、特開昭61−26
068号公報「水中音により水玉をつくる方法」の発明に
基づく、放物線運動を説明する物理教材としての噴水装
置であって、まず、上記発明の概要を説明する。

一定水圧をもって水を導く管路の途中で、水流に周期的
（例えば60Hz）な振動を与えて、その振動数に等しい水
中音が流水中に発生して、音の密なる部分が１秒間に60
回発生する。

この音の密なる部分が、ノズルより噴出した噴水中に水
玉を形成してゆく。

このようにして得られた水玉を含む噴水にマルチストロ
ボ光を照射すると、噴水中の水玉が点々と輝いて噴水が
放物線を形成していることが目視により確認できる。

続いてこの噴水装置を詳細説明する。

図において（Ａ）はボックスで、底の一部に水溜池
（Ｂ）を形成し、この水溜池（Ｂ）に連なる通水管
（Ｈ）に、歯車ポンプ（Ｐ）と、第１図に示す本考案の
フィルター（Ｆ）と、流水に接するゴム板に60Hzの振動
を与えて、水流中に水中音を発生させる水中音発生装置
（Ｓ）を順に設置し、この水中音発生装置（Ｓ）を過ぎ
た通水管（Ｈ）の先端に斜め上向きのノズル（Ｎ）を設
けてある。

この噴水装置の歯車ポンプ（Ｐ）による水流には多くの
脈流・乱流が含まれているが、これを本考案フィルター
（Ｆ）を通すことにより減少・消失させて、水中音発生
装置（Ｓ）により１分間に60回の水中音を発生させる
と、ノズル（Ｎ）から噴射される噴水（Ｔ）に点々と水
玉（Ｄ）が生じ、この噴水（Ｔ）にマルチストロボ光を
照射すると水玉（Ｄ）が点々と輝いて、目視により美し
い放物線を確認することができるものである。

上記噴水装置に本発明フィルター（Ｆ）に代えて第５図
に示す従来の硝子製のチャンバーを使用して実験したみ
た結果、水中音で生じる水玉以外に残存する脈流・乱流
によって多数の水玉が生じるばかりか、水流が分散して
放物線がきれいに現れず、物理教材としては使用できな
かった。

（発明の効果） 以上説明した、この発明に係わるフィルターによれば、
脈流・乱流を含む水流が管路に形成した膨大部を通ると
き、スポンジの弾性と空気の体積弾性とが相乗作用する
構成としたことにより、水流中の脈流・乱流を極めて高
精度に減少・消去させることができ、しかも構造が簡単
なことから安価に製作できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明フィルターの水平状態で使用する第１
実施例の中央縦断側面図、 第２図は、同じく水平状態で使用する第２実施例の中央
縦断側面図、 第３図は、本発明フィルターの鉛直状態で使用する第３
実施例の中央縦断側面図、 第４図は、本発明フィルターを使用した放物線を説明す
るための物理教材を示す図、 第５図は、水流中の脈流・乱流を除くための、従来のチ
ャンバーを示す図である。 １、1a、1b……膨大部 ２、2a……円錐部 ３、3a……小径部 ４、4a、4b……流入管 ５、5a、5b……流出管 ６、6a、6b……スポンジ ６′、6a′、6b′……露出部 ７、7a、7b……空気溜 ８、8a……平行面 ９……仕切板 10……通水孔 W1……脈流・乱流を含む水流 W2……脈流・乱流のない水流 W3……水面

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 隈部 岌生 広島県広島市佐伯区美鈴が丘西５丁目17番 １号 (72)発明者 小坪 均 広島県広島市中区国泰寺１丁目５―１ (56)参考文献 特許159834（ＪＰ，Ｃ１)

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】脈流・乱流を含む水流が通る管路に膨大部
   を形成し、該膨大部内に、弾性と通水性をもつ多孔質の
   スポンジを上記水流が通過すべく装填するとともに、通
   水時に空気溜が形成され、該空気溜に上記スポンジの一
   部が露出している構成としたことを特徴とする、水流中
   の脈流・乱流を減少・消去させるフィルター。