JPH07324291A - クラフトパルプの蒸解方法および蒸解装置 - Google Patents

クラフトパルプの蒸解方法および蒸解装置

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JPH07324291A
JPH07324291A JP13484394A JP13484394A JPH07324291A JP H07324291 A JPH07324291 A JP H07324291A JP 13484394 A JP13484394 A JP 13484394A JP 13484394 A JP13484394 A JP 13484394A JP H07324291 A JPH07324291 A JP H07324291A
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Japan
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cooking
chips
liquid ratio
infiltration
stage
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JP13484394A
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English (en)
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Keigo Watabe
啓吾 渡部
Yasuhiro Okamoto
康弘 岡本
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Nippon Paper Industries Co Ltd
Jujo Paper Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paper Industries Co Ltd
Jujo Paper Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 木材チップのクラフトパルプ蒸解において、
蒸解に要する消費エネルギーを減少し、良好なパルプの
収率と品質を得る蒸解方法を提供する。 【構成】 チップ当たりの薬品添加量を増加することな
く、従来にない低い液比により高濃度の蒸解を行う。対
チップアルカリ添加率10.0から14.0%において、回転型
蒸解釜を用いるバッチ式蒸解、または回転胴部を有する
蒸解液浸透専用釜を用いる連続式蒸解では、液比0.7 の
蒸解が可能である。また、浸透と蒸解とを同一釜内で行
う連続式蒸解では、液比2.5 が可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、木材チップ(以下、
「チップ」という。)のクラフトパルプ蒸解(以下、
「KP蒸解」という。)において、チップ当たりの薬品
添加量を特に変えることなく、従来にない低い液比によ
る蒸解を可能にして、蒸解に要する消費エネルギーを減
少し、しかも未漂白パルプの収率と品質においても好ま
しい結果を得る蒸解方法および蒸解装置に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来、木材のKP蒸解の蒸解液の組成
は、チップに対する有効アルカリ量と硫化度とによって
表され、またチップに対して添加する蒸解液の量は液比
によって表されている。
【0003】KP蒸解における脱リグニン反応は、薬品
のチップへの浸透、不均一系での反応および反応生成物
の溶出からなる物理化学の系ではあるが、1次反応とし
て近似できる化学反応である。化学反応である以上、反
応基質の濃度が反応速度に深く関与していると考えられ
る。蒸解反応は、反応基質をチップ中のリグニンおよび
蒸解薬品として両者を水媒中で反応させるものであり、
反応生成物として蒸解廃液(いわゆる黒液)中の有機物
が得られる。この反応は一般に1次反応として近似され
ており、この時の反応速度定数は、Vroomらが提唱
した方法によりアレニウスの式に基づいて求められるの
一般的である。
【0004】この反応速度定数を時間積分したものがH
ファクターである。Hファクターは、チップを100 ℃、
1時間蒸解したときに溶出したリグニン量をHファクタ
ー1として、積分時間までの溶出リグニンの積算量で表
す。Hファクターは温度と時間の関数であるので、蒸解
の過程で反応系に与えられた熱の総量を表す目安とも解
釈できる。
【0005】回転式あるいは固定式のバッチ式蒸解釜を
用いるKP蒸解においては、従来から釜内のチップの全
てが十分に蒸解液に浸かるように液比を高くして蒸解が
行われてきた。また、チップへの蒸解液の浸透段階専用
の釜を別に持たない連続式蒸解釜は勿論のこと、浸透段
階専用の釜を別に持つ連続式蒸解釜においても、チップ
が蒸解液に完全に没していなければ、蒸解液がチップに
十分に浸透しないで蒸解が不均一になるとの配慮から、
釜全体として高めの液比が設定されている。
【0006】液比は、バッチ式の蒸解釜の方が低めに設
定できる場合があるが、これは釜内で蒸解液を循環させ
てチップを高い密度で詰め込むためである。連続式蒸解
釜も蒸解液の循環ラインを持つが、循環液によるチップ
に下向きに働く力の一部はチップを連続的に移動させる
力に消費されるため、バッチ式蒸解釜ほどチップを密に
詰めることができない。したがって、浸透段階専用釜の
有無に拘らず、チップを蒸解液に浸すためには、浸透段
階の液比は最低でも3〜4 l/kg程度であることが必要
とされている(例えば、紙パルプ技術協会編「紙パルプ
事典」第5版(平成1年9月20日発行)第218頁 参
照)。
【0007】このように、通常のKP蒸解を行う際の液
比は、従来3〜4 l/kgであるが、パルプ品質の均一性
の点では液比は高いことが望ましく、他方、消費熱量、
蒸解速度、回収黒液の固形分濃度の点では低い方が有利
である。低液比の蒸解方法に関する従来技術としては、
気相蒸解あるいは急速気相蒸解(RVC法)と呼ばれる
方法がある。この方法は連続式蒸解釜あるいはバッチ式
蒸解釜において、浸透段階終了後に蒸解液の一部を取り
去り、液比を1.5〜2.5 l/kgとした後、蒸気加熱により
急速に蒸解温度(約160 ℃)にして熱を効率的にチップ
に伝えて急速に蒸解を進めるものである。
【0008】気相蒸解については、例えば修正連続式蒸
解法(MCC)との関連で述べているBofeng Mao and N
ils Hartler : Nordic Pulp and Paper Reserch Journa
l on4/1992 などの文献がある。この中で気相蒸解法を
特徴づける2つの文献が紹介されている。これらの文献
のうち、Kleinert, T. N. (1964) : Pulp and PaperMa
g. Can.,65 : 7, T275、Kleinert, T. N. and Marracci
ni, L. M. (1965) : Tappi, 48 :8, 447では、通常120
〜180分の蒸解時間が気相蒸解では30〜45分に短縮され
ることが述べられている。また、Ahlgren, P. and Olau
sson, J. (1973): Svensk Papperstiden, 76 : 15, 57
2、 Ahlgren P. and Olausson, J. (1973): Svensk Pap
perstiden, 76 : 16, 592 では、気相蒸解の下、条件を
緩和にするとパルプ収率が約1%向上することが述べら
れている。Bofeng等はこれらの結果を基に、浸透段階の
液比を6.0 l/kg として常温で約1時間浸透を行った
後、液を抜いて液比を2.0 l/kgにして、毎分1℃昇温
して170℃でMCC蒸解を行っている。これらの文献に
記載された方法では、浸透段階での液比はいずれも3.0
l/kgより高く、浸透段階終了後に液を抜いて液比を下
げるものである。すなわち、蒸解段階で初めて低液比に
するのであって、所定の薬品添加量の下でも薬品のチッ
プへの浸透を促進するために、浸透段階から高濃度低液
比にするという考えに基づくものではない。また、浸透
段階の液比が高いため、十分な蒸解を行うためのHファ
クターは 300以上が必要である。
【0009】低液比に関連する発明としては、特公平2
−53550号(靭皮を常圧下で高速蒸解し高白色度の
長繊維パルプを製造する方法)があるが、この特公平2
−53550号公報に記載されている発明の対象は木材
チップではなく、またKP蒸解方法でもない。木材チッ
プのKP蒸解における液比について言及しているもの
に、特開昭46−7602号、特開昭49−57102
号、特開平1−239183号があるが、これらのいず
れも浸透段階の液比は3.7 l/kg 以上である。また、塔
状の連続式液相蒸解釜(釜内にあるチップが全て蒸解液
中に没している蒸解釜)では、チップの圧縮の影響によ
り釜頂部にある浸透段階の層が最も液比が高い部分であ
るが、浸透段階の液比を明確に規定して蒸解結果との関
係を論じた報告は存在せず、また低液比かつ高薬品濃度
の蒸解を志向した報告も存在しない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】いずれにせよ従来は、
蒸解初期(浸透段階)においては釜内のチップは全て蒸
解液に没していなければ蒸解液の浸透を難しくするため
に、蒸解が不均一になり良好な結果(パルプの収率と品
質)が得られないという観点から、所定の対チップ薬品
添加量の下では、薬品濃度を犠牲にしてでも十分な液量
(液比)を用いて蒸解が行われてきた。
【0011】これに対し、本発明は、KP蒸解において
は蒸解液の薬品濃度が重要と考えて、従来にはない低い
液比を実現して液量を減少させる代りに、できるだけ高
い薬品濃度によって、結果としてより好適な蒸解を行う
ことができる蒸解方法を提供することを目的としてい
る。具体的には、対チップ薬品添加量を増加しないこ
と、蒸解時間を短縮すること、エネルギー消費を抑える
こと、蒸解釜単位容積当たりの生産性を上げること、多
材種混合チップ蒸解での難蒸解性樹種に対処するための
蒸解液使用量の増加を抑制すること、初期浸透の効果が
大きいとされるポリサルファイドサルファの浸透を促進
して、未漂白パルプの収率向上とカッパー価低減への効
果を上げること等を目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの技術的手段として、本発明に係るクラフトパルプの
蒸解方法は、回転型蒸解釜を用いるバッチ式蒸解方法に
おいて、有効アルカリ添加率を10.0%以上14.0%以下と
し、液比を0.7 l/kg以上3.0 l/kg以下として木材チッ
プの蒸解を行うことを特徴としている。
【0013】さらに、前記蒸解方法において、有効アル
カリ添加率(%)−1.5×液比(l/kg)≧9.5 を満た
し、Hファクターが120以上300以下であることを特徴と
している。
【0014】また、浸透段階専用釜を備えた連続式蒸解
釜により蒸解方法の場合にも、回転胴部を有する浸透段
階専用釜内を連続的に通過させて蒸解液を浸透させた
後、連続式蒸解釜を用いる蒸解方法において、浸透段階
における有効アルカリ添加率を10.0%以上14.0%以下と
し、液比を0.7 l/kg以上3.0 l/kg以下として木材チッ
プの蒸解を行うことを特徴としている。
【0015】あるいは、同一釜内に浸透段階と蒸解段階
を有する連続式蒸解釜を用いる蒸解方法において、浸透
段階の液比を2.5 l/kg以上3.0 l/kg以下として木材チ
ップの蒸解を行うことを特徴としている。
【0016】さらに、前記のそれぞれの方法により蒸解
を行う場合に、蒸解液の浸透段階において、ポリサルフ
ァイドサルファを木材チップの絶乾重量に対して0.4%
以上1.0%以下で添加することを特徴としている。
【0017】また、本発明に係るクラフトパルプの蒸解
装置は、水平方向に対して適宜に傾斜した円筒状の回転
胴部を備え、木材チップを、前記回転胴部の内部を蒸解
液の強制循環によって連続式蒸解釜まで移動させる浸透
専用釜であって、前記浸透専用釜内における有効アルカ
リ添加率を10.0%以上14.0%以下とし、液比を0.7 l/k
g以上 3.0 l/kg以下として浸透処理を行う浸透段階専
用釜を有することを特徴とし、さらに、蒸解液の浸透処
理において、ポリサルファイドサルファを木材チップの
絶乾重量に対して0.4%以上1.0%以下で添加することも
特徴としている。
【0018】本発明でいうKP蒸解とは、少なくとも水
酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを含む水溶液を蒸解薬
品として用いるパルプ化方法であって、単一種類のチッ
プ、あるいは幾種類か混合されたチップに対して適用さ
れる方法をいい、蒸解薬品の組成は以下に説明する語に
よって定義される。すなわち、蒸解液の基本的な組成を
表すために、有効アルカリと硫化度が用いられる。有効
アルカリとは、蒸解液中の水酸化ナトリウムの重量に硫
化ナトリウムの重量の半分を加えた値をいい、硫化度と
は、蒸解液中の硫化ナトリウムの重量の、液中の水酸化
ナトリウムの重量と硫化ナトリウムの重量の和に対する
百分率をいう。なお、本発明でいう蒸解液とは、チップ
に対して系外から添加される蒸解薬品の水溶液をいう
が、主に薬品回収工程から回収された薬液(いわゆる白
液)と蒸解釜循環液等の希釈液からなる。蒸解液の薬品
濃度の検出には一般にアルカリの濃度を検出する手段が
用いられ、これを基に液比および薬品添加量を決定して
蒸解を抑制する。
【0019】本発明でいうポリサルファイドサルファと
は、撥水処理した粒状活性炭を触媒にして蒸解液を空気
酸化するMOXY法あるいはこれに類似の方法によっ
て、蒸解液中の硫化ナトリウムから生成する蒸解液の組
成分である。ポリサルファイドサルファの量は、絶乾チ
ップに対する百分率として表している。
【0020】回転式蒸解釜を用いるバッチ蒸解方式と
は、球状の圧力容器が重力方向と所定の角度をなす軸を
中心に回転する、いわゆる地球釜等を用いる蒸解方式で
ある。
【0021】連続蒸解方式とは、チップが一つの反応容
器内を通過する間に、浸透段階、蒸解段階、洗浄段階
(洗浄段階は同一反応容器内に設けられていない場合も
ある。)を経て徐々にパルプ化していく蒸解方式であ
り、化学工学でいう回分(バッチ)系に対する連続系で
蒸解反応を行う方式である。2段(浸透段階〜蒸解段
階)連続方式とは、連続蒸解方式のうち、浸透段階専用
のものとして別の容器(浸透釜)を持つものであって、
2ベッセル型連続蒸解釜または Asplund連続蒸解釜と呼
ばれるものによって代表される。
【0022】回転胴部を有する浸透釜とは、図1に示し
たような圧力容器であり、後述するように、導入部から
導入されたチップが胴部の回転により蒸解液と混合、加
熱され、所定の滞留時間を経て、浸透済みのチップを排
出部から次の工程(蒸解釜)に排出する装置である。
【0023】多段連続蒸解方式とは、浸透〜蒸解用の釜
が複数に分割されたような構造を持つ連続式蒸解釜を用
いる蒸解方式であり、例えばPandia連続式蒸解釜のよう
な装置を用いるものである。
【0024】本発明においては低液比、高濃度蒸解の実
験を行うための装置として上記のうち、(1)バッチ式
蒸解に用いる回転式蒸解釜、(2)連続式蒸解に用いる
同一釜内に浸透段階と蒸解段階を有する1塔連続式蒸解
釜、および(3)回転胴部からなる浸透段階専用釜を別
に有する2段連続式蒸解釜を用いた。
【0025】本発明でいう浸透段階とは、2段連続蒸解
方式にあっては、チップに蒸解液が初めて添加される高
圧フィーダーの直近(浸透釜の直前)より始まり、浸透
釜のチップ排出側末端の直近に至るまでの段階をいう。
浸透段階専用の釜を有しない1塔連続蒸解方式にあって
は、チップに蒸解液が初めて添加される高圧フィーダー
の直近より始まり、蒸解のための温度(約150〜170℃)
に保持された蒸解液が供給される位置(温調循環)の直
前に至るまでの段階をいう。またバッチ式蒸解において
は、チップと蒸解液の釜詰め終了時点より始まり釜内部
が蒸解のための温度(約150〜170℃)に到達するまでの
段階をいう。以上のように、浸透段階はいずれの場合も
必要量の蒸解液をチップに滲み込ませるために設けられ
た段階のことである。
【0026】液比に関しては、一般にKP蒸解に用いら
れる塔状の蒸解釜においては、釜下部のチップまたはパ
ルプは、それより上部に在るチップまたはパルプの重力
からその浮力を差し引いた力と蒸解液による圧力とによ
り圧縮されている。この圧縮の度合は、蒸解が進行して
チップの状態が柔らかくなりパルプに近づくほど大き
い。そのため、塔状の連続式蒸解釜では釜頂部では液比
が高く、釜底部では液比が低くなる。
【0027】本発明では、2段連続蒸解方式における浸
透段階の液比は、浸透釜内の全チップの絶乾重量(kg)
に対する釜内の全蒸解液の容量(l)の比をいう。また
浸透段階用の浸透釜を別に有しない1塔連続蒸解方式に
おいては、蒸解釜内の浸透段階中に在る全チップの絶乾
重量に対する浸透段階中に在る全蒸解液の容量の比をい
う(この場合の液比は、釜内の全チップの絶乾重量に対
する釜内に流入する全蒸解液の容量の比ではない。)。
バッチ蒸解方式における液比は、チップと蒸解液の釜詰
め終了時点で蒸解釜内に存在する全チップの絶乾重量に
対する全蒸解液の容量の比である。浸透段階の液比を意
図的に変える場合には、浸透段階での最大の液比と最小
の液比との平均値を液比とする。
【0028】本発明で規定する蒸解液の初期濃度は、連
続蒸解方式の場合は、チップフィーダからのチップと蒸
解液供給ラインからの蒸解液とが混ざり合う所の有効ア
ルカリ濃度(g/l)をいう。すなわち、蒸解液浸透前の
チップに含まれる水分と循環液および新たに添加される
白液から成る蒸解液の容量との和に対する、循環液中の
有効アルカリと新たに添加される白液中の有効アルカリ
の重量の和で表す。バッチ蒸解方式の場合は、循環液が
ある場合には連続蒸解方式と同様であるが、循環液がな
い場合には、チップに含まれる水分と蒸解液の容量の和
に対する蒸解液が最初に含む有効アルカリの重量で表
す。
【0029】本発明で規定する対絶乾チップの有効アル
カリ添加率は、連続蒸解方式においては、単位時間当た
りに蒸解釜内に導入される循環液と新たに添加する白液
とに含まれる有効アルカリ重量の和を、単位時間当たり
に新たに釜内に導入されるチップの絶乾重量に対する百
分率で表す。また、バッチ蒸解方式においては、蒸解釜
仕込時に導入される蒸解液(循環液と新たに添加される
白液)に含まれる有効アルカリの重量を、仕込時のチッ
プの絶乾重量に対する百分率で表す。
【0030】液比、蒸解液の初期有効アルカリ濃度、対
絶乾チップ有効アルカリ添加率の3つの指標は、液比を
c(l/kg)、初期有効アルカリ濃度をd(g/l)、有効
アルカリ添加率をa(%)とすると、
【数1】10・a=c・d の関係にある。
【0031】Hファクターとは、前述したように、蒸解
の過程で反応系に与えられた熱の総量を表す目安であ
り、本発明では次の式によって表す。
【数2】 式中、HFはHファクターを、Tはある時点の絶対温度
を表し、dtは昇温プロファイルにより経時的に変化する
時間の関数である。Hファクターは、積分記号より右側
の項をチップと蒸解液が混ざった時点から蒸解終了時点
まで時間積分することで算出する。
【0032】パルプ収率は、仕込みチップの絶乾重量に
対する蒸解により得られた未漂白パルプの絶乾重量の百
分率をいう。粕率は、仕込みチップの絶乾重量に対する
蒸解によりパルプ化しなかったチップの絶乾重量の百分
率をいう。
【0033】以上のように木材のKP蒸解に関して定義
した用語を用いて、以下に本発明の内容を詳しく説明す
る。
【0034】本発明における液比の下限0.7 l/kg(以
下、液比について「l/kg」は省略する。)は、これ以
下に液比を下げると全てのチップに蒸解液が行き渡らな
くなり、粕率が約10%を越える点である。粕率は、液比
が1.5 を割った辺りから漸増し液比約0.7 では約10%に
なる。さらに液比を下げても急激に粕率が増加すること
はないと推測されるが、チップの平衡含水率と調製しう
る蒸解液の濃度の関係からこれ以下の液比を実機で実現
することは困難である。例えば、液比0.5 、対チップの
有効アルカリ添加率12.0%という条件で蒸解しようとす
ると、気乾チップの水分含水率は通常最低でも20%程度
あるため、チップに添加しようとする蒸解液の初期有効
アルカリ濃度は最低でも400 g/lとなり、このような濃
度で蒸解液を調製すると常温付近では結晶が析出する。
【0035】また、本発明における液比の上限 3.0は、
有効アルカリ添加率がある一定の条件のとき、パルプ収
率が増加し粕率が減少して良好な蒸解結果が得られる上
限の点である。さらに、有効アルカリ添加率がある一定
条件の下では、液比が高くなると(有効アルカリ濃度は
低くなる。)パルプ収率が低くなり、特に液比が 3.0〜
4.0の間で大きく低下する。例えば、有効アルカリ添加
率が10.0 %の下で液比が3.0から4.0に変化すると、パ
ルプ収率は50%以上から30%以下に急減し、粕率は2%
以下から30%以上に急増する。有効アルカリ添加率が1
4.0%の下では、液比2.8と4.0との差のパルプ収率、粕
率へ与える影響は小さい。
【0036】本発明を蒸解薬品使用量の面からみると、
低い有効アルカリ添加率、即ち10.0〜14.0%において、
本発明の効果が大きいことである。
【0037】有効アルカリ添加率の下限は10.0%であ
り、これは国内で一般にパルプ原料として利用される樹
種のチップ(前処理を施していないチップ)をパルプ化
する場合に最低限必要な有効アルカリ添加率である。有
効アルカリ添加率が10.0%以下になると、他がいかなる
条件でもパルプ化できないことが多くなる。
【0038】また、有効アルカリ添加率の上限14.0%で
は、一般的な条件(例えば液比 4.0、Hファクター 700
以上)の下で蒸解を行った場合、原料として利用される
大半の樹種で良好な蒸解結果が得られる。14.0%以上の
有効アルカリ添加率は薬品費の増加となり、パルプ収率
の低下を起こす場合がある。
【0039】蒸解液の初期有効アルカリ濃度の下限33g
/lは、有効アルカリ添加率10.0%、液比3.0で蒸解を行
う場合の濃度であり、上限200g/lは有効アルカリ添加
率14.0%、液比0.7の場合の濃度であり、チップに水分
を加えて0.7程度の低液比の蒸解を蒸解液の結晶を出さ
ずに実現できる濃度である。初期アルカリ濃度を33g/l
以下にすると多量の粕(未蒸解のチップ)が発生するお
それがあり、200 g/l以上にすると過蒸解となりパルプ
収率が低下するおそれがある。
【0040】パルプ収率に対するポリサルファイドサル
ファ添加の効果については、対絶乾チップ添加率0.4%
以下では効果がなく、また1.0%以上加えても効果は殆
ど向上しない。ポリサルファイドサルファは、蒸解液
(白液)を空気酸化することによって蒸解液中の硫化ナ
トリウムから生成するが、実操業時の蒸解液の硫化度等
の組成を考慮すると、蒸解液中に生成しうるポリサルフ
ァイドサルファの量は対絶乾チップ約1.0 %がほぼ上限
であると思われる。ポリサルファイドサルファのパルプ
収率向上、およびリグニン含有量の指標を示すカッパー
価を低減させる効果は、液比が低いほど大きい。例えば
液比が2.0の場合は、パルプ収率で1.0%、カッパー価で
1.0ポイント以上の効果があるが、液比4.0の場合では、
収率で0.2 %(有意水準90%で有意な差ではない。)、
カッパー価で0.3 ポイント程度の効果しかない。この収
率向上、カッパー価低減の効果はポリサルファイドサル
ファの添加率が1.0 %のときの値であり、これ以上添加
率を増加しても効果の向上は殆どない。また、添加率を
減らしていくと効果は徐々に小さくなり、添加率0.4 %
以下にすると液比2.0でも有意な効果が認められなくな
る。
【0041】低液比における浸透を気相蒸解を併用した
場合、非常に短時間で低エネルギー消費の蒸解が可能に
なる。有効アルカリの初期添加率が14.0%で液比が2.5
の場合のHファクターは、蒸解性の良い広葉樹材チップ
ではHF=120 程度でも粕率は1%以下であり、蒸解性
の悪い材でもHF=300 程度で10%以下の粕率になる。
なお、HF=120 は、例えば常温から160 ℃まで90分か
けて昇温し、160 ℃を10分間保持したときのHファクタ
ーに等しい。液比をより小さくすると蒸解時間短縮の効
果はより大きくなり、液比をより大きくすると必要な蒸
解時間は長くなる。また、HF=120 の場合、有効アル
カリ添加率をより増やせば粕率は漸減し、より減らせば
樹種によっては粕率が急増する場合がある。有効アルカ
リ添加率が11%以下では蒸解性の良い材でも粕が急増す
るが、液比を2.5 よりさらに小さくすることにより粕の
量を減らせる。すなわち、短時間低エネルギー蒸解は、
低液比で高薬品添加率のときに特に有効であるが、低薬
品添加率でも液比をより下げて薬品濃度を上げることに
よって蒸解が可能になる。
【0042】回転型蒸解釜を用いるバッチ式蒸解におい
ては、Hファクターが 300以下で蒸解が可能となる初期
有効アルカリ添加率(ただし10.0〜14.0%の範囲)と液
比(ただし0.7〜3.0の範囲)との関係は、縦軸に初期有
効アルカリ添加率、横軸に液比をとった場合、
【数3】初期有効アルカリ添加率(%)−1.5×液比(l
/kg)≧9.5 の右上がりの直線の上部となる。初期有効アルカリ添加
率と液比がこの式を満足すれば、Hファクターが120〜3
00でも蒸解が可能になる。
【0043】浸透段階専用の釜がない連続式蒸解におい
ては、一般的な蒸解条件の下で浸透段階の液比を2.5 以
下にすると、粕が急激に増加し良好な蒸解ができない。
液比3.0ではパルプ収率が急増し粕率が急減する。しか
し液比4.0では、薬品濃度が低下するため良好な結果は
得られない。浸透段階専用の釜がない連続式蒸解では、
蒸解釜全体の液比によって浸透段階の液比が決り、釜全
体の液比を下げすぎると蒸解液は釜の下方に流れるため
浸透段階で蒸解液が循環せず、また蒸解液の循環が可能
でも十分な浸透のために必要な時間がとれない。このた
め、低液比の蒸解は困難である。
【0044】浸透専用釜を別にする2段連続式蒸解にお
いては、浸透段階の液比と蒸解段階の液比を別々に設定
できるため、蒸解段階の液比は浸透段階の液比より下げ
ることができ、また十分な浸透時間をとることができる
ので、低液比での蒸解が可能である。浸透段階の液比を
2.5 以下にする蒸解は、特に2段連続式蒸解において有
効である。
【0045】浸透釜の回転胴部は、例えばフィンランド
のAhlstrom社によって開発されたファイバーフローのよ
うな構造を持つものがある。図1に示すように、浸透釜
はほぼ円筒状の回転胴部1と該回転胴部1の一端部に配
設されたチップ導入部2、他端部に配設された排出部3
とを主体として構成されている。チップ導入部2と排出
部3は図示しない支持台などに保持されて固定されてお
り、回転胴部1はこれらチップ導入部2と排出部3とに
よって両端部が支持されるとともに、長手方向を軸とし
て回動自在に支持されている。回転胴部1の内面には、
長手方向に適宜高さの掻き上げ羽根11が周方向をほぼ等
間隔に分割して適宜数設けられ、また適宜高さの環状の
仕切板12が長手方向をほぼ等間隔に分割して適宜枚数設
けられている。回転胴部1とチップ導入部2および排出
部3との接続部は適宜にシールされており、回転胴部の
内部圧力が一定に保たれるようにしてある。
【0046】前記回転胴部1は、チップ導入部2を高い
側として水平方向に対し約1°から5°の範囲で傾斜角
度を調節できる支持台(図示せず)によって支持されて
いる。チップ導入部2と排出部3を固定して回転胴部1
を毎分数回転することにより、チップ導入部2から供給
されたチップCは蒸解液とともに排出部3の方向に送ら
れる。この浸透釜の内部にチップCが滞留する時間は、
回転胴部1の傾斜角度と回転速度を調節することにより
変更することができる。回転胴部1の内面に配置された
前記仕切板12は、蒸解液のみが先行して排出部3に達し
てしまうことを防止する。
【0047】浸透釜に導入されたチップCは回転胴部1
に達した後、該回転胴部1の回転によって、図2および
図3に示すように、前記掻き上げ羽根11によって掻き上
げられて適宜位置まで上昇すると落下することになる。
この際、回転胴部1の傾斜のためにチップCは僅かに排
出部3の側に落下することになり、この結果チップCは
仕切板12を越えることができ、排出部3に向って僅かず
つ送られる。また、掻き上げと落下の繰り返しによりチ
ップCは攪拌され十分に蒸解液と混ざることになる。蒸
解液は回転胴部1の傾きにも拘らず、仕切板12によって
阻止されて排出部3に向って先行して流れることはな
く、チップCに付随した状態で送られる。
【0048】浸透釜内に存在するチップCの量は、全て
に蒸解液が行き渡るよう十分に攪拌されるためには、釜
の全内容積の半分以下であることが望ましい。また、チ
ップCが釜内部に滞留する時間は30分以上が望ましい。
【0049】なお、傾斜角の下限の1°はチップCと蒸
解液を確実に排出部3の側へ送るために必要な最小の角
度であり、上限の5°は蒸解液のみが先行して排出部3
の方向に送られる可能性のある角度である。したがっ
て、傾斜角1°以下では浸透釜内のチップCの滞留時間
の調節が困難になり、5°以上ではチップCへの蒸解液
の浸透が不十分となる。ただし、回転胴部1の径が非常
に大きい場合には傾斜角が1°以下でも滞留時間の調節
が可能になり、また仕切板12の高さを高くすれば蒸解液
の流下は少なくできる。
【0050】浸透釜を通過したチップを蒸解釜に導く手
段は、例えばカミヤ社製の2ベッセルタイプの連続式蒸
解釜のトランスファー循環に相当する。浸透段階を終了
したチップは、浸透釜の底部近くに流入する蒸解液とボ
トムスクレーパーの作用により、導管内に押し出され希
釈された形で蒸解釜頂部に送られる。蒸解釜頂部では、
チップ搬送のための蒸解液と搬送されたチップとは分離
されて、前者は浸透釜底部に戻されるように循環してい
る。本発明のように、浸透段階を通過したチップが保持
している蒸解液は高濃度かつ少量であるため、搬送のた
めの蒸解液が低濃度の場合は、チップの表面近くの保持
されている蒸解液の濃度が低下するおそれがある。ま
た、搬送用の蒸解液の濃度が高い場合は過剰の薬品がチ
ップに付加されることになる。したがって、トランスフ
ァー循環に相当する手段を搬送手段として用いる場合に
は、チップ内に保持されている蒸解液とチップ搬送用の
蒸解液の有効アルカリ濃度、硫化度がほぼ等しいことが
望ましい。本発明では設備の配置が許せば、回転胴部を
有する浸透釜の排出部を蒸解釜の導入部よりも高い位置
に配置して、重力落下によりチップを蒸解釜に導く方式
にすることが最も望ましい。
【0051】
【作用】KP蒸解において蒸解液の薬品濃度が大きけれ
ば、浸透段階での蒸解液のチップへの浸透速度および蒸
解段階での脱リグニン反応速度が共に促進されると考え
られる。チップ当たり所定量の薬品使用量の下で、全て
のチップに蒸解液が均一に浸透するための必要最小限の
液比をそれに必要な条件を設定して実現すれば、より高
濃度でより低液量の蒸解液による蒸解が可能となり、パ
ルプの収率、パルプの品質、蒸解時間の短縮、Hファク
ターの減少、消費エネルギーの減少等の面で好ましい結
果が期待できる。
【0052】本発明は、木材チップに蒸解液が浸透する
段階において、短時間の内にチップのより内部まで高濃
度の蒸解液が浸透するように十分に薬品濃度を上げ、か
つ全てのチップに均一に蒸解液が浸透するように十分な
液比を保つことによって、もし対チップ薬品添加率と蒸
解プロファイルとを一定に設定するならば、より低いカ
ッパー価および粕率とにより高い未漂白精選パルプ収率
を得る蒸解を可能にする。一方、所望のカッパー価、粕
率、パルプ収率を設定するならば、より短時間、より低
温の蒸解を可能にする。これは溶液の濃度が高ければ、
溶質の浸透の速度が早くなること、溶質と基質との化学
反応速度が大きくなることによる。
【0053】この際、液比を低くしすぎると、個々のチ
ップの内部空隙および外周に存在する蒸解液が少なくな
り蒸解液の浸透が不十分なチップが生じるようになる。
一般に、国内で蒸解に用いられる広葉樹のチップ(比重
は0.5 程度)が水を最大限吸った時の飽水含水率は、常
温で100〜150%前後である。したがって、個々のチップ
の飽水含水率に依存するものではあるが、液比が1.5 l
/kg を割ると、理論的には蒸解液と接触できないチッ
プが生じる可能性が高くなる。なお、飽水含水率は、チ
ップが繊維飽和点を越えてチップ内部の空隙が全て水で
満たされたときの含水率である。
【0054】しかし、チップ内部の空隙が全て蒸解液で
満たされていることは、浸透の十分条件であって必要条
件ではない。すなわち、飽水含水率に達するのに十分な
蒸解液の量が無くても、繊維飽和点(常温で含水率約30
%)に達するのに必要な液量と、チップ内部の空隙に表
面張力等によって固定される液量との和以上の水分量が
あれば、蒸解液量としては十分である。また、蒸解が行
われるような高温条件下では蒸解液の流動性が常温の場
合よりも大きくなるため、チップの内部に浸透する蒸解
液は多くなる。本発明の作用は、このような現象を利用
して必要に応じてチップと蒸解液とを浸透させることに
より、液比が1 l/kg以下の蒸解をも可能にする。
【実施例】以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説
明する。なお、実施例において、「液比」は全て l/kg
を示す。また、それぞれの結果をまとめて表1に示して
ある。
【0055】〔実施例1〕実施例1は、バッチ式回転型
蒸解釜を用いて比較的高い薬品添加率と液比による蒸解
の一例である。
【0056】モリシマアカシアのチップを用い、硫化度
25.0%、有効アルカリ添加率14.0%、蒸解初期の有効ア
ルカリ濃度50 g/l、液比2.8としてバッチ式蒸解実験を
行い、その時のパルプ収率、粕率、カッパー価を測定し
た。蒸解は2.4 l容のバッチ式回転型蒸解釜を用い、浸
透段を120 ℃、30分、蒸解段を160 ℃、90分とし、昇温
部分の昇温速度を80℃/hrにして行った。用いた蒸解釜
は形状が円筒型であり、1分間に2回転し2回転毎に回
転方向を反転させ、蒸気温度プロファイルを辿るように
エアバス内で空気を媒体にして加熱した。チップは釜容
積の80%程度に相当する量(約400 g)を仕込み、最初
からチップが釜内部で動けるように配慮した。なお、チ
ップが釜の内部で攪拌されていることは、同量のチップ
と蒸解液と同量の水を釜に入れ、透明アクリル板で蓋を
して回転させて確認した。
【0057】この時のHファクターはおよそ700 であっ
た。パルプ収率と粕率は、6カットフラットスクリーン
を通過したものをパルプとし、通過しなかったものを粕
として、それぞれの絶乾量を仕込んだチップの絶乾量に
対する百分率で表した。この結果、パルプ収率は50.8
%、粕率は0.7 %、カッパー価は12.7ポイントであっ
た。
【0058】〔実施例2〕実施例2は、バッチ式回転型
蒸解釜を用いて中位の薬品添加率と液比による蒸解の一
例である。この実施例2では、実施例1のバッチ式蒸解
実験において、初期の有効アルカリ濃度73 g/l、有効
アルカリ添加率11.0%、液比1.5として蒸解を行った。
この結果、パルプ収率は56.4%、粕率は0.5 %、カッパ
ー価は22.4ポイントであった。
【0059】〔実施例3〕実施例3は、実施例1のHフ
ァクターを小さくした蒸解の一例であり、前記実施例1
のバッチ式蒸解実験において、浸透段を120 ℃、30分、
蒸解段を160 ℃、10分、昇温部分の昇温速度を80℃/hr
として蒸解を行った。すなわち、実施例1とは、蒸解段
の最高温度保持時間を非常に短くした点で異なってい
る。この時のHファクターは120 であった。この結果、
パルプ収率は50.4%、粕率は0.7 %、カッパー価は30.5
ポイントであった。
【0060】〈比較例1〉実施例3のバッチ式蒸解実験
において、液比4.0 、蒸解初期の有効アルカリ濃度35g
/lとして蒸解を行った。この時のHファクターは、実
施例3と同様に120であった。この結果、パルプ収率は1
5.1%、粕率は42.0%、カッパー価は50.0ポイント以上
であった。
【0061】〔実施例4〕実施例4は、バッチ式回転型
蒸解釜を用いて実施例2よりもさらに低液比による蒸解
の一例である。すなわち、この実施例4では、前記実施
例1のバッチ式蒸解実験において、有効アルカリ添加率
11.0%、蒸解初期の有効アルカリ濃度110g/l、液比1.0
として蒸解を行った。この時のHファクターは700 で
あった。この結果、パルプ収率は56.1%、粕率は1.5
%、カッパー価は22.5ポイントであった。
【0062】〔実施例5〕実施例5は、実施例4のHフ
ァクターを小さくした蒸解の一例であり、前記実施例4
のバッチ式蒸解実験において、浸透段を120 ℃、30分、
蒸解段を160 ℃、10分、昇温部分の昇温速度を80℃/hr
として蒸解を行った。すなわち、実施例4とは、蒸解段
の最高温度保持時間を非常に短くした点で異なってい
る。この時のHファクターは120 であった。この結果、
パルプ収率は55.8%、粕率は3.8 %、カッパー価は28.0
ポイントであった。
【0063】〔実施例6〕実施例6は、バッチ式回転型
蒸解釜を用いて最も低い液比にした蒸解の一例である。
すなわち、この実施例6では、前記実施例4のバッチ式
蒸解実験において、有効アルカリ添加率11.0%、蒸解初
期の有効アルカリ濃度157g/l、液比0.7として蒸解を行
った。この結果、パルプ収率は54.8%、粕率は3.0 %、
カッパー価は22.4ポイントであった。
【0064】〈比較例2〉実施例4のバッチ式蒸解実験
において、有効アルカリ添加率10.5%、蒸解初期の有効
アルカリ濃度210 g/l、液比0.5 として蒸解を行った。
常温で蒸解液を調製したところ結晶が析出したが、加温
すると溶解することが別の実験によって確認されたの
で、そのままチップに添加して蒸解を行った。この結
果、パルプ収率は49.0%、粕率は4.7 %、カッパー価は
22.7ポイントであった。
【0065】〈比較例3〉実施例1のバッチ式蒸解実験
において、有効アルカリ添加率14.0%、蒸解初期の有効
アルカリ濃度35g/l、液比4.0 として蒸解を行った。こ
の結果、パルプ収率は49.9%、粕率は1.2 %、カッパー
価は12.7ポイントであった。
【0066】〔実施例7〕実施例7は、バッチ式回転型
蒸解釜を用いて最も低い薬品添加率と比較的高い液比に
した蒸解の一例であり、前記実施例1のバッチ式蒸解実
験において、有効アルカリ添加率10.0%、液比3.0、蒸
解初期の有効アルカリ濃度33 g/lとして蒸解を行っ
た。また原料チップには、易蒸解性の南アフリカ産広葉
樹材の混合チップを使用した。この結果、パルプ収率は
51.8%、粕率は1.8 %、カッパー価は36.5ポイントであ
った。
【0067】〈比較例4〉実施例7のバッチ式蒸解実験
において、液比4.0 、蒸解初期の有効アルカリ濃度25g
/lとして蒸解を行った。この結果、パルプ収率は28.1
%、粕率は31.1%、カッパー価は50.0ポイント以上であ
った。
【0068】〔実施例8〕実施例8は、同一釜内に浸透
段階と蒸解段階とを有する1塔式の連続式蒸解釜を用い
た蒸解の一例である。輸入広葉樹材チップを用いて、白
液濃縮用エバポレータを備えた1塔式の連続式蒸解釜
(カミヤ社製、内容積 100 l)により、硫化度25.0%、
有効アルカリ添加率12.0%、有効アルカリ濃度43g/l、
浸透段階の液比が2.8 となるようにして蒸解を行った。
【0069】連続蒸解方式では正確な液比の調節は困難
である。しかし、予備検討の結果、温調循環より上部で
は、チップに滲み込んでいない蒸解液が絶乾チップ1.0
kgに対して1.2 lの容積を占めた場合、浸透段階の液比
が2.8 になることを確認した。これを基に、釜内のレベ
ル(=チップレベル)によって浸透段階の液比を調節し
た。なお、温調循環とは、釜内の浸透段階と蒸解段階の
境目付近の釜側壁にあるストレーナを通して抜き取った
蒸解液を、所定の蒸解温度まで加温して、再び浸透段階
と蒸解段階の境目付近の釜中心部に戻す蒸解液の循環系
である。
【0070】また、蒸解初期の有効アルカリの添加率
は、12.0%となるように調節した。その方法は、木材チ
ップに随伴して釜内に入る水分と釜内を加温するための
蒸気の凝縮水分とにより蒸解液が希釈されることを勘案
して、白液濃縮用エバポレータを経由して得られる白液
と経由しない白液との混合割合を加減することによって
白液の濃度を調節し、その混合白液を、釜の頂部中央
と、一部は導入チップと共に蒸解系内に添加するもので
ある。さらに蒸解初期の有効アルカリの濃度が適正なも
のであったかどうか(43g/l)を、予備検討の結果に基
づき、温調循環液の有効アルカリ濃度を測定することに
より確認した。
【0071】蒸解釜に導入されたチップが約30分で温調
循環の位置に至り、かつHファクターが700 以上になる
ように蒸解温度と蒸解時間を設定して蒸解を行った。系
が安定した時点で、未漂白パルプのパルプ収率、粕率、
カッパー価を求めた。パルプ収率は、漂白工程の直前に
あるタンクに未漂白パルプを送るラインでパルプ流量と
パルプ濃度とを測定し、蒸解釜内に導入される木材チッ
プ量を計量することによって算出した。粕率は、粕を分
別する装置から排出される粕を一定時間採取、絶乾量を
求めて算出した。カッパー価は、パルプ収率測定のため
に採取したパルプについて測定した。この結果、パルプ
収率は51.3%、粕率は0.9 %、カッパー価は17.0ポイン
トであった。
【0072】〈比較例5〉実施例8の1塔式の連続式蒸
解実験において、硫化度25.0%、有効アルカリ添加率1
3.0%、有効アルカリ濃度32.5g/l、浸透段階での液比
が4.0 となるように蒸解液を添加して蒸解を行った。浸
透段階の液比の調整は、チップレベルより液レベルを高
くすることによって行った。なお、厳密には浸透段階で
蒸解液に没しているチップの量が増加するために、釜上
部にあるチップに働く浮力が大きくなり、より下方にあ
るチップが圧縮される程度が小さくなり、そのため蒸解
段階以降の液比も実施例8と比べて若干高くなる。この
結果、パルプ収率は48.0%、粕率は2.7 %、カッパー価
は24.0ポイントであった。
【0073】〔実施例9〕実施例9は、浸透釜を別にす
る2段連続式蒸解釜を用いた蒸解の一例である。蒸解実
験には、輸入広葉樹材チップを使用して、実施例8で用
いた1塔式の連続式蒸解釜の低圧フィーダーと高圧フィ
ーダーとの間にある低圧プレスチーマに代えて、前述し
た図1に示したような回転胴部を有する浸透釜を設けた
装置を用いた。薬品濃度を調整して約100 ℃に加温した
蒸解液を、浸透釜内の液比が1.5 になるように低圧フィ
ーダーの直近に添加した。有効アルカリ添加率は11.0
%、硫化度は25.0%とした。浸透釜を通過したチップを
連続式蒸解釜に導入し、釜の頂部より蒸気を吹き込んで
蒸解温度(155 ℃)まで昇温してHファクターが700 以
上になるように蒸解し、蒸解釜内部における向流洗浄
(ハイヒート洗浄)以降の通常の工程を通過させた。蒸
解液は、浸透釜に導入されるチップの水分量と加温のた
めに蒸解釜に吹き込まれる蒸気の凝縮水量とを含めて、
有効アルカリ濃度が73g/lになるように調節した。
【0074】チップは、加圧蒸気によって120 ℃に加温
され、毎分1回転する浸透釜をその内容積のほぼ1/3を
満たす状態で蒸解液と混合されつつ30分かけて通過し、
高圧フィーダーを経由して蒸解釜に達する。次いで、蒸
解釜頂部付近から吹き込まれる加圧蒸気によって90分の
昇温段階を経て155 ℃まで加熱され(加熱蒸気の凝縮水
によってこの時点で液比は若干上昇する)、ハイヒート
洗浄ゾーンで100 ℃以下になって蒸解釜から排出され
る。この際に蒸解液が適切に添加されたかどうかを確認
することは、蒸解釜内の液面が浸透循環の位置まで達し
ていない、即ち気相蒸解の状態で蒸解されているために
できなかった。
【0075】この結果、実施例8と同様な方法で測定し
たパルプ収率は54.4%、粕率は0.2%、カッパー価は23.
1ポイントであった。
【0076】〔実施例10〕実施例10は、浸透釜を別にす
る2段連続式蒸解釜を用いた蒸解の一例である。前記実
施例9と同じ装置を用いて、浸透釜内の液比が1.0 、有
効アルカリ添加率11.0%、有効アルカリ濃度110 g/l、
硫化度25.0%となるように蒸解液を調節して添加した。
蒸解の方法は、昇温段階の時間を20分とした以外は実施
例9と同様に行った(Hファクターは700 )。この結
果、前記実施例8と同様な方法で測定したパルプ収率は
52.7%、粕率は2.5 %、カッパー価は29.2ポイントであ
った。
【0077】〈比較例6〉前記実施例9と同じ装置を用
いて、浸透釜内の液比が0.6 、有効アルカリ添加率13.0
%、有効アルカリ濃度216 g/l、硫化度25.0%となるよ
うに蒸解液を調節して添加した。蒸解の方法は実施例9
と同様にした行ったが、蒸解液が少ないため、釜底部か
ら導入されたハイヒート洗浄液が黒液とともに抜き取ら
れる位置にチップが達するまでは、これより上部にある
循環系を全て閉止した。この結果、前記実施例8と同様
な方法で測定したパルプ収率は45.3%、粕率は5.2 %、
カッパー価は25.0ポイントであった。
【表1】
【0078】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るクラ
フトパルプの蒸解方法および蒸解装置によれば、木材チ
ップ当たりの蒸解薬品の使用量をとくに増加することな
く、必要最小限の液比による蒸解が可能となる。すなわ
ち、浸透段階と蒸解段階とを通じて従来にない少ない液
量と蒸解時間の短縮によって、所定の未漂白精選パルプ
の収率と品質とを維持しながら、加熱に要するエネルギ
ーの消費量を減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】浸透段階専用釜の回転胴部の構造を説明する正
面図で、一部を透過して示してある。
【図2】浸透段階専用釜の回転胴部における木材チップ
の移動状態を説明するための一部省略正面図である。
【図3】浸透段階専用釜の回転胴部の中央部縦断面図
で、木材チップの移動状態を説明するものである。
【符号の説明】
1 回転胴部 2 チップ導入部 3 排出部 11 掻き上げ羽根 12 仕切板 C 木材チップ

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転型蒸解釜を用いるバッチ式蒸解方法
    において、 有効アルカリ添加率を10.0%以上14.0%以下とし、液比
    を0.7 l/kg以上3.0 l/kg以下として木材チップの蒸解
    を行うことを特徴とするクラフトパルプの蒸解方法。
  2. 【請求項2】 有効アルカリ添加率(%)−1.5×液比
    (l/kg)≧9.5 を満たし、Hファクターが120以上300
    以下であることを特徴とする請求項1に記載のクラフト
    パルプの蒸解方法。
  3. 【請求項3】 回転胴部を有する浸透段階専用釜内を連
    続的に通過させて蒸解液を浸透させた後、連続式蒸解釜
    を用いる蒸解方法において、 浸透段階における有効アルカリ添加率を10.0%以上14.0
    %以下とし、液比を0.7 l/kg以上3.0 l/kg以下として
    木材チップの蒸解を行うことを特徴とするクラフトパル
    プの蒸解方法。
  4. 【請求項4】 同一釜内に浸透段階と蒸解段階を有する
    連続式蒸解釜を用いる蒸解方法において、 浸透段階の液比を2.5 l/kg以上3.0 l/kg以下として木
    材チップの蒸解を行うことを特徴とするクラフトパルプ
    の蒸解方法。
  5. 【請求項5】 蒸解液の浸透段階において、ポリサルフ
    ァイドサルファを木材チップの絶乾重量に対して0.4%
    以上1.0%以下で添加することを特徴とする請求項1、
    3、4のいずれかに記載のクラフトパルプの蒸解方法。
  6. 【請求項6】 水平方向に対して適宜に傾斜した円筒状
    の回転胴部を備え、木材チップを、前記回転胴部の内部
    を蒸解液の強制循環によって連続式蒸解釜まで移動させ
    る浸透専用釜であって、前記浸透専用釜内における有効
    アルカリ添加率を10.0%以上14.0%以下とし、液比を0.
    7 l/kg以上3.0 l/kg以下として浸透処理を行う浸透段
    階専用釜を有することを特徴とするクラフトパルプの蒸
    解装置。
  7. 【請求項7】 蒸解液の浸透処理において、ポリサルフ
    ァイドサルファを木材チップの絶乾重量に対して0.4%
    以上1.0%以下で添加することを特徴とする請求項6に
    記載のクラフトパルプの蒸解装置。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114768275A (zh) * 2022-04-08 2022-07-22 胡安群 一种硫酸蒸发器

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CN114768275A (zh) * 2022-04-08 2022-07-22 胡安群 一种硫酸蒸发器
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