JPH07310501A - ガスタービン遮熱コーティング翼の劣化診断方法 - Google Patents

ガスタービン遮熱コーティング翼の劣化診断方法

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JPH07310501A
JPH07310501A JP10520294A JP10520294A JPH07310501A JP H07310501 A JPH07310501 A JP H07310501A JP 10520294 A JP10520294 A JP 10520294A JP 10520294 A JP10520294 A JP 10520294A JP H07310501 A JPH07310501 A JP H07310501A
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JP
Japan
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gas turbine
deterioration
thermal barrier
barrier coating
coating blade
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Application number
JP10520294A
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Inventor
Shigeo Sakurai
茂雄 桜井
Nobuhiro Isobe
展宏 磯部
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】ガスタービン遮熱コーティング翼について、よ
り合理的な保全管理を行うための高精度の劣化診断法を
提供する。 【構成】ガスタービン遮熱コーティング翼の劣化度につ
いて、1次、2次、3次及び4次の各段階の劣化度評価
値の求め方と、それらの各段階の劣化度の許容値とを設
定することにより、1次から順次に劣化度を診断し、劣
化度評価値が許容値を超えた場合には、次の段階の劣化
度診断を受けることによって、的確な保全指針が得られ
るようにしてあり、劣化度診断は、1次が運転履歴によ
る診断、2次が界面近傍の化学分析による診断、3次が
超音波による診断、及び4次が破壊強度試験による診断
の4つの診断体系によって構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はガスタービン遮熱コーテ
ィング翼の劣化診断方法に係り、特に高温で長期間稼働
するガスタービン遮熱コーティング翼の劣化診断方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】ガスタービンに使用されるような高温機
器は、長期の間には経年劣化し、材料脆化が進行する。
したがって、このような経年劣化を診断し、材料脆化を
予測することが、高温機器における強度信頼性の検討、
及び余寿命の評価をするうえで、最も重要な課題とな
る。
【0003】従来、高温部材の劣化診断技術として、低
合金耐熱鋼では、粒界腐食法に基づくレプリカ法の適用
が特開平1−110259号公報に、また、材料の脆化
の指標である破面遷移温度を電気分極法により推定し、
経年劣化した部材の最大許容欠陥寸法を評価する方法が
特開昭62−222155号公報に、それぞれ開示され
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述の方法を
用いて劣化度を評価することは、低合金耐熱鋼について
は非破壊的に可能であるが、ガスタービンに使用される
耐熱超合金については不可能である。したがって、ガス
タービンの定期点検時、又は補修若しくは交換時期の適
性化を図ることが難しい。
【0005】ガスタービンは起動が容易で、建設期間が
短くて済み、また、ガスタービンと蒸気タービンとを組
み合わせた複合プラントは、ガスタービンの排ガスを利
用して、高い熱効率が得られることから、近年の環境エ
ネルギー問題を背景として、複合プラント発電設備の建
設が積極的に進められている。
【0006】この発電設備の主要高温機器であるガスタ
ービンには高効率化が要求され、ガスタービン入口ガス
温度は年々急上昇してきている。これに伴い、ガスター
ビンの主要高温機器である、燃焼器及びガスタービン翼
に対する負荷条件は従来になく苛酷になってきており、
しかも、これらの主要高温機器は、安定した稼働につい
ての高い信頼性が要求されている。
【0007】しかし、ガスタービンの構成材料である、
Ni基及びCo基の耐熱超合金は、高温高強度の性質を
有するが、長時間にわたる高温負荷、又は起動停止の繰
り返しによって、材質劣化、及び損傷の累積の生じる恐
れがある。
【0008】したがって、高い信頼性を維持しながらガ
スタービンを運転するためには、これらの高温部材の劣
化損傷を的確に把握し、保全管理をする必要がある。そ
の中でも高温腐食及び疲労は、ガスタービン翼の寿命を
大きく左右するので、特に的確な把握が必要である。
【0009】ガスタービンは上述のように起動が容易で
あるため、その多くは、電力需要に応じて頻繁な起動停
止を行う。このため、ガスタービン翼は厳しい熱疲労損
傷を受けることになる。
【0010】現在、ガスタービン翼には、稼働中のガス
タービン翼を低温度に保持するための遮熱コーティング
翼が一般に用いられている。本発明は、ガスタービン遮
熱コーティング翼のコーティング材料の一部にセラミッ
クスを用いた場合であるが、いずれの材料であっても、
このコーティング翼についての劣化損傷に対する有効な
診断方法はない。
【0011】また、この診断方法への電気化学法の使用
が考えられるが、この場合はガスタービン発電設備現場
で発生する電気的ノイズの影響を受け、また、環境温度
及び腐食時間の設定が困難であるため、劣化度を評価す
る際に、大きな誤差を伴う可能性がある。
【0012】更に、ガスタービン発電設備の稼働条件が
よく変化し、それに伴いガスタービンの起動停止の頻度
が増加するので、従来のガスタービンの稼働データを用
いて作成されたトレンドカーブに基づく余寿命予測は、
困難になっている。
【0013】これらの状況に鑑み、ガスタービンの主要
高温機器の稼働時における劣化を、高精度で診断できる
手法の開発が強く望まれている。
【0014】本発明の目的は、ガスタービン遮熱コーテ
ィング翼について、より合理的な保全管理を行うための
高精度の劣化診断法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的は、次のように
して達成することができる。
【0016】(1)稼働中のガスタービン翼を低温度に
保持するための遮熱コーティングをガスタービン翼の表
面に施しているガスタービン遮熱コーティング翼の劣化
診断方法において、ガスタービン遮熱コーティング翼に
おける稼働時間と起動回数と破壊強度との第1の関係、
及びガスタービン遮熱コーティング翼におけるコーティ
ング層と母材との界面近傍の元素分布状態と破壊強度と
の第2の関係を、ガスタービン遮熱コーティング翼と同
材料からなる試験片を用いた実験により求めておき、第
1の関係と、ガスタービン遮熱コーティング翼における
稼働時間及び起動回数とから、ガスタービン遮熱コーテ
ィング翼の劣化度1次評価値を求めて、劣化度1次評価
値と予め設定している劣化度1次評価許容値との比較を
行い、劣化度1次評価値が劣化度1次評価許容値を超え
る場合には、ガスタービン遮熱コーティング翼から採取
した試料を用いてコーティング層と母材との界面近傍の
元素分布状態を実測し、この実測した元素分布状態から
所定時間稼働後の元素分布状態の予測計算を行い、この
予測計算から得られる元素分布状態と第2の関係とから
求められるガスタービン遮熱コーティング翼の破壊強度
から、ガスタービン遮熱コーティング翼の劣化度2次評
価値を求めることにより、劣化度2次評価値と予め設定
している劣化度2次評価許容値との比較を行い、劣化度
2次評価値が劣化度2次評価許容値を超える場合には、
ガスタービン遮熱コーティング翼から採取した試料を用
いて超音波による劣化診断を行うことにより劣化度3次
評価値を求め、劣化度3次評価値と予め設定している劣
化度3次評価許容値との比較を行い、劣化度3次評価値
が劣化度3次評価許容値を超える場合には、ガスタービ
ン遮熱コーティング翼から採取した試験片を用いて破壊
強度試験を行うことにより劣化度4次評価値を求め、劣
化度4次評価値と予め設定している劣化度4次評価許容
値との比較を行い、ガスタービン遮熱コーティング翼の
保全指針を得ること。
【0017】(2)(1)において、界面近傍の元素分
布状態の実測領域は、界面近傍における酸化層の形成領
域であること。
【0018】(3)(1)において、超音波による劣化
診断は、界面近傍の超音波減衰率を実測することにより
ボイド密度を推定し、ボイド密度から予測計算用の材料
定数を補正して行うこと。
【0019】(4)(1)において、破壊強度を、微小
パンチ試験により求めること。
【0020】(5)(1)において、破壊強度を微小パ
ンチ試験により求め、かつ微小パンチ試験の際に発生す
る音波発生密度をアコースティックエミッション法を用
いて検出することにより、コーティング層の亀裂発生強
度を求めること。
【0021】(6)(1)において、破壊強度を微小パ
ンチ試験により2箇所以上で実測し、この実測結果と、
予め実験的に求めておいたマスター線図とから、ガスタ
ービン遮熱コーティング翼の稼働条件に適合した、境界
条件及び材料定数の各補正を行うこと。
【0022】(7)(1)において、破壊強度を微小パ
ンチ試験により求め、かつ微小パンチ試験の際に発生す
る音波発生密度をアコースティックエミッション法を用
いて検出することにより、コーティング層の亀裂発生強
度を求め、得られた破壊強度と亀裂発生強度とを第2の
関係の作成に利用すること。
【0023】
【作用】ガスタービン遮熱コーティング翼の劣化は、コ
ーティング層と母材との界面近傍での酸化層の発達によ
る内部はくりの発生に特徴付けられ、この劣化の支配的
要因の一つは、コーティング層と母材との界面近傍での
高温酸化により発生する酸化層の厚さであることが知ら
れている。また、長時間の使用中では、コーティング層
と母材との界面近傍での酸化物元素の濃縮又は欠乏状態
が形成され、これに伴い材料強度又は耐腐食性が低下す
ることが知られている。
【0024】本発明では、まず、ガスタービン遮熱コー
ティング翼における稼働時間と起動回数と破壊強度との
関係を実験により求めておき、ガスタービン遮熱コーテ
ィング翼における稼働時間及び起動回数とから、前記ガ
スタービン遮熱コーティング翼の劣化度を診断してい
る。
【0025】この診断において、劣化度が許容値を超え
た場合には、界面近傍での酸化物元素の濃縮又は欠乏量
の時間的変化を、予測計算により予測している。そし
て、この予測値、及び予め実験により求めている界面近
傍での酸化物元素の濃縮又は欠乏量と材料強度との対応
関係を用いて、劣化度を診断している。
【0026】この診断においても、劣化度が許容値を超
えた場合には、更に、ガスタービン遮熱コーティング翼
から採取した試料を用いた超音波による診断、及びガス
タービン遮熱コーティング翼から採取した試験片を用い
た破壊試験による診断を行って、劣化度の診断の信頼性
を高めている。
【0027】また、これらの超音波による診断、及び破
壊試験による診断の各結果から、予測計算のための材料
定数又はマスター線図を的確に補正できるので、界面近
傍での酸化物元素の濃縮又は欠乏量と材料強度との対応
関係から求められる劣化度の診断精度を、より向上させ
ることができる。
【0028】以上のように、本発明では、ガスタービン
遮熱コーティング翼の劣化度について、非破壊又は破壊
の各手段を用いて、多面的、かつ段階的に評価を行うの
で、劣化度予測の高精度化及び高信頼化を図ることがで
きる。
【0029】
【実施例】本発明の実施例を、図1〜図9を用いて説明
する。図1はガスタービン遮熱コーティング翼の劣化診
断手順のフロー図である。
【0030】本実施例は、図1に示すように、運転履歴
による劣化度1次診断、界面近傍の化学分析による劣化
度2次診断、超音波による劣化度3次診断、及び破壊強
度試験による劣化度4次診断の4段階のフローに従い、
翼の劣化の程度に応じて、必要な段階までの劣化診断を
行うことにより、適切な保全指針の確保を図っている。
【0031】ガスタービンは、前述のように起動が容易
であることから、使用方法は多様であり、発電設備、又
は同じ発電設備であっても構成する機器によって、著し
く運転履歴が異なる。
【0032】ガスタービン遮熱コーティング翼の劣化度
1次評価値C3は、ガスタービンの起動停止回数、運転
時間、異常発生時における急速停止回数、及び排気ガス
温度の各履歴などから、次式、すなわち、
【0033】
【数1】C3=αN/C1+βt/C2…………………
…………………(1) によって、求めることができる。ここに、αは疲労に関
する定数、Nはガスタービンの起動停止回数、C1は疲
労に関する材料定数、βはクリープ損傷に関する定数、
tはガスタービンの運転時間、C2はクリープに関する
定数である。
【0034】ここで、Cc1を劣化度1次評価許容値と
した場合、C3≦Cc1のときは、1次診断では劣化度
は許容値を超えていないと診断され、そのときの劣化の
状態を更に詳しく診断する場合は、簡易な方法のみで行
っている。これが、本実施例の劣化度1次診断である。
【0035】反対に、C3>Cc1である場合には、劣
化度2次診断を行っている。この診断を、図2を用いて
説明する。図2は、本実施例のガスタービン遮熱コーテ
ィング翼におけるコーティング層の説明図である。
【0036】本実施例の場合、コーティングの施工法
は、従来のものと同様であるが、まず、その施工法につ
いて説明する。
【0037】ガスタービン翼の劣化防止対策として、種
々の施工により、ガスタービン翼の表面にコーティング
を施し、コーティング中間層を形成させることが、一般
に行われている。
【0038】最近、コーティング中間層を形成させる場
合、MCrAlY合金を用いた、プラズマ溶射によるコ
ーティングが一般に採用されている。ここで、Mは基本
元素であり、MがNiのときはNiCrAlY、MがC
oのときはCoCrAlYである。
【0039】また、NiとCoとを組み合わせた、Co
NiCrAlY又はNiCoCrAlYの各合金が開発
されている。これらの合金は、コーティング中間層の耐
酸化性、耐硫化腐食特性及び使用温度によって使い分け
られている。
【0040】また、上述の合金により形成されているコ
ーティング中間層の上に、セラミックスコーティングが
行われている。セラミックスコーティングの材料は、ジ
ルコニア酸化物とイットリア酸化物との混合物のセラミ
ックスであり、セラミックスコーティング層を形成され
ている。すなわち、ガスタービン翼には、2重にコーテ
ィングが施されるが、このようなガスタービン翼におけ
る亀裂の発生機構は、次のように考えられている。
【0041】まず、コーティング中間層が劣化する。す
なわち、コーティング中間層の組織が1相(γ)から2
相(βとγ’)に変化して脆くなり、微小はくりが母材
とコーティング中間層との界面に発生する。次に、亀裂
がコーティング中間層に発生する。一方、酸化又は硫化
腐食がコーティング中間層に発生して母材に及び、腐食
が発生した部分で、亀裂の成長が行われる。また、亀裂
の成長は、環境に著しく影響されることが組織観察によ
り確認されている。
【0042】したがって、ガスタービン遮熱コーティン
グ翼の劣化過程のうち、界面近傍の変化の状態を解析的
又は非破壊的に、そして破壊評価で劣化度の診断を下す
ことが不可欠となる。
【0043】本実施例では、劣化度2次診断を、上述の
劣化のメカニズムに焦点を絞って行っている。すなわ
ち、コーティング中間層及び母材の劣化過程を、図3を
用いて説明する。図3は、コーティング中間層及び母材
の劣化過程の説明図である。
【0044】図3の(a)、(b)及び(c)の各図と
も、中央部の縦線はコーティング中間層と母材との境界
面、すなわち界面であり、界面の左側がコーティング中
間層、右側が母材の場合である。また、横軸は境界線か
らの距離を示している。
【0045】上述のような図の構成において、図3の
(a)は、コーティング中間層及び母材の組成元素であ
るNi及びAlが、コーティング中間層及び母材で、そ
れぞれ濃度勾配を形成していることを示している。
【0046】このような濃度勾配によって、Ni及びA
lの各元素は、高温の稼働状態では、図(b)に示すよ
うに、拡散移動をし、それに伴い物質移動と空孔移動と
が発生する。この結果、図(c)に示すように、界面で
は析出物及びボイドが発生する。
【0047】この過程は、NiとAlとに着目したKi
rkendall拡散として知られているものであり、
この拡散において、タービン翼の劣化度に関連のある、
ボイド密度Cvは、次式、すなわち、
【0048】
【数2】Cv=−1/(NsF)Jv/x………………
………………(2) によって診断できる。ここで、Nsは空孔源密度、Fは
温度に依存する定数、Jvは空孔の流束、xは上述の界
面からの距離である。
【0049】(2)式で得られたボイド密度Cvと、ボ
イド密度Cvと破壊強度との関係との対応から、予め実
験的に求めておいた劣化度3次評価許容値Cc2とを比
較する。そして、Cv≦Cc2のときには、次回の定期
診断時までガスタービンの稼働は可能であると診断す
る。
【0050】反対に、Cv>Cc2のときには、続い
て、次のような非破壊的な劣化度3次診断を行う。これ
を、図4を用いて説明する。図4は超音波応用のガスタ
ービン遮熱コーティング翼劣化の診断原理とその装置の
概要図である。
【0051】上述のように、図3を用いて説明した、遮
熱コーティング翼の劣化メカニズムによれば、界面近傍
ではボイドが発達し、材料の剛性及び物性が変化するの
で、超音波を用いて非破壊的に劣化度を診断することが
できる。
【0052】図4の(a)は、超音波減衰率とボイド密
度との関係線図である。すなわち、遮熱コーティング翼
の劣化に伴い界面近傍ではボイドが発達するが、これ
は、図4に示すように、超音波減衰率の測定により推定
することができる。
【0053】図4の(b)には超音波による劣化度診断
装置の概要を示す。すなわち、ガスタービン遮熱コーテ
ィング翼に超音波センサーを当て、波形受信装置により
信号を受け、波形解析装置で波形解析を行ったデータ
を、データ処理劣化度診断装置に入力して、超音波減衰
率を実測し、予め求めておいた超音波減衰率とボイド密
度との関係から劣化度3次評価値を求める。
【0054】そして、劣化度3次評価値と劣化度3次評
価許容値とを比較する劣化度3次診断を行う。この診断
において、劣化度が許容値を超えない場合は、次回の定
期点検時までガスタービンの稼働は可能であると判断す
る。
【0055】もし劣化度が許容値を超えた場合には、ガ
スタービン遮熱コーティング翼から試験片を採取し、こ
の試験片の破壊強度試験により劣化評価を行う。これ
が、劣化度4次診断であり、この破壊強度試験には、微
小パンチ試験法(スモールSPパンチ試験法)を用い
た。
【0056】図5は、本実施例の微小パンチ試験法の説
明図である。図5の(a)には、本実施例の微小パンチ
試験の状況を示している。この試験では、10mm角で
0.5mm厚さの微小試験片を採用することができる。
この試験片は、ガスタービン遮熱コーティング翼から採
取したものであり、高精度に劣化度の診断を行うことが
できる。
【0057】図5の(b)は、微小パンチ試験法を用い
て材料劣化診断をする際のパラメータであるSPエネル
ギーの説明図である。図5の(b)に示すように、図5
の(a)に示す試験により得られる荷重−変位曲線と、
この曲線の横軸(変位)上に投影される線と、この曲線
の最終端を通る縦軸(荷重)に平行な縦線とによって形
成される面積が、SPエネルギーを示し、SPエネルギ
ーの大小により劣化度が評価できる。
【0058】図6は、図5の試験法に使用する試験片の
採取方法の説明図である。本実施例では、図6に示すよ
うに、ガスタービン遮熱コーティング翼の静翼におけ
る、劣化の進行していないと思われる低温部Cと、最も
劣化が進行していると思われる高温部Hとから、それぞ
れ採取した試験片を用いて微小パンチ試験を行い、この
試験結果から得られる2つのSPエネルギーの比較を行
うとともに、それらのSPエネルギーと、別途に標準試
験片により求めたSPエネルギーとを比較することによ
り、劣化度の診断を行っている。
【0059】図7は微小パンチ試験における試験片への
加負荷方向の説明図、図8の(a)は微小パンチ試験の
要部拡大図、図8の(b)は試験結果の一例の説明図で
ある。
【0060】試験片のコーティング層は約100μmほ
どに薄いものであり、試験片への加負荷時において、コ
ーティング層が引張り側になるように、試験片を微小パ
ンチ試験機に取り付けている。
【0061】したがって、表面層の劣化が進行している
場合には、それが感度よく試験荷重の低下に現われる。
この試験荷重の低下位置からSPエネルギーを求めるこ
とにより、表面のコーティング層の劣化を正確に診断す
ることができる。
【0062】また、図8に合わせて示すように、この試
験において、アコースティック・エミッション(AE)
センサーを試験部に装着して実験すれば、コーティング
層での亀裂発生時の音波発生、すなわちアコースティッ
ク・エミッション(AE)頻度を感度よく検出すること
ができ、亀裂発生強度を求めることができる。
【0063】以上の方法により、ガスタービン遮熱コー
ティング翼の破壊強度及び亀裂発生強度が求められるの
で、これらの値と、予め設定しているこれらの値の許容
値とを、それぞれ比較することにより、ガスタービン遮
熱コーティング翼の保全指針を決定することができる。
【0064】なお、図9は、微小パンチ試験で得られ
る、SPエネルギーESPと温度・時間パラメータPとの
関係を示している。温度・時間パラメータPは、次式、
すなわち、
【0065】
【数3】P=T(C+logt)…………………………
…………………(3) により求めることができる。ここに、Tは温度、Cは材
料係数、tは時間である。図9は、(3)式により求め
られる温度・時間パラメータPと、稼働時の温度と稼働
時間とが共に異なる材料の試験片を用いた微小パンチ試
験結果とから得られ、この線図は、いわゆるマスター線
図として、劣化度2次評価値を求める際に利用すること
ができる。
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、ガスタービン遮熱コー
ティング翼について、より合理的な保全管理を行うため
の高精度の劣化診断法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のガスタービン翼劣化診断手
順のフロー図である。
【図2】本発明の一実施例のガスタービン翼コーティン
グ層の断面図である。
【図3】本発明の一実施例のコーティング中間層及び母
材の劣化過程の説明図である。
【図4】本発明の一実施例に使用した超音波応用手法の
説明図である。
【図5】本発明の一実施例の微小パンチ試験法の説明図
である。
【図6】図5の試験法に使用する試験片の採取方法の説
明図である。
【図7】図5の試験法に使用する試験片への加負荷方向
の説明図である。
【図8】図5の試験法における試験片取り付け、及び試
験結果の説明図である。
【図9】図5の試験法で得られたSPエネルギーと温度
・時間パラメータとの関係線図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 稼働中のガスタービン翼を低温度に保持
    するための遮熱コーティングを前記ガスタービン翼の表
    面に施しているガスタービン遮熱コーティング翼の劣化
    診断方法において、前記ガスタービン遮熱コーティング
    翼における稼働時間と起動回数と破壊強度との第1の関
    係、及び前記ガスタービン遮熱コーティング翼における
    コーティング層と母材との界面近傍の元素分布状態と破
    壊強度との第2の関係を、前記ガスタービン遮熱コーテ
    ィング翼と同材料からなる試験片を用いた実験により求
    めておき、前記第1の関係と、前記ガスタービン遮熱コ
    ーティング翼における稼働時間及び起動回数とから、前
    記ガスタービン遮熱コーティング翼の劣化度1次評価値
    を求めて、前記劣化度1次評価値と予め設定している劣
    化度1次評価許容値との比較を行い、前記劣化度1次評
    価値が前記劣化度1次評価許容値を超える場合には、前
    記ガスタービン遮熱コーティング翼から採取した試料を
    用いてコーティング層と母材との界面近傍の元素分布状
    態を実測し、この実測した元素分布状態から所定時間稼
    働後の元素分布状態の予測計算を行い、この予測計算か
    ら得られる元素分布状態と前記第2の関係とから求めら
    れる前記ガスタービン遮熱コーティング翼の破壊強度か
    ら、前記ガスタービン遮熱コーティング翼の劣化度2次
    評価値を求めることにより、前記劣化度2次評価値と予
    め設定している劣化度2次評価許容値との比較を行い、
    前記劣化度2次評価値が前記劣化度2次評価許容値を超
    える場合には、前記ガスタービン遮熱コーティング翼か
    ら採取した試料を用いて超音波による劣化診断を行うこ
    とにより劣化度3次評価値を求め、前記劣化度3次評価
    値と予め設定している劣化度3次評価許容値との比較を
    行い、前記劣化度3次評価値が前記劣化度3次評価許容
    値を超える場合には、前記ガスタービン遮熱コーティン
    グ翼から採取した試験片を用いて破壊強度試験を行うこ
    とにより劣化度4次評価値を求め、前記劣化度4次評価
    値と予め設定している劣化度4次評価許容値との比較を
    行い、前記ガスタービン遮熱コーティング翼の保全指針
    を得ることを特徴とするガスタービン遮熱コーティング
    翼の劣化診断方法。
  2. 【請求項2】 前記界面近傍の元素分布状態の実測領域
    は、前記界面近傍における酸化層の形成領域である請求
    項1記載のガスタービンの遮熱コーティング翼の劣化診
    断方法。
  3. 【請求項3】 前記超音波による劣化診断は、前記界面
    近傍の超音波減衰率を実測することによりボイド密度を
    推定し、前記ボイド密度から予測計算用の材料定数を補
    正して行う請求項1記載のガスタービンの遮熱コーティ
    ング翼の劣化診断方法。
  4. 【請求項4】 前記破壊強度を、微小パンチ試験により
    求める請求項1記載のガスタービンの遮熱コーティング
    翼の劣化診断方法。
  5. 【請求項5】 前記破壊強度を微小パンチ試験により求
    め、かつ前記微小パンチ試験の際に発生する音波発生密
    度をアコースティックエミッション法を用いて検出する
    ことにより、前記コーティング層の亀裂発生強度を求め
    る請求項1記載のガスタービンの遮熱コーティング翼の
    劣化診断方法。
  6. 【請求項6】 前記破壊強度を微小パンチ試験により2
    箇所以上で実測し、この実測結果と、予め実験的に求め
    ておいたマスター線図とから、前記ガスタービン遮熱コ
    ーティング翼の稼働条件に適合した、境界条件及び材料
    定数の各補正を行う請求項1記載のガスタービンの遮熱
    コーティング翼の劣化診断方法。
  7. 【請求項7】 前記破壊強度を微小パンチ試験により求
    め、かつ前記微小パンチ試験の際に発生する音波発生密
    度をアコースティックエミッション法を用いて検出する
    ことにより、前記コーティング層の亀裂発生強度を求
    め、得られた前記破壊強度と前記亀裂発生強度とを前記
    第2の関係の作成に利用する請求項1記載のガスタービ
    ンの遮熱コーティング翼の劣化診断方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009282020A (ja) * 2008-04-23 2009-12-03 Central Res Inst Of Electric Power Ind コーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラム
JP2010008403A (ja) * 2008-05-27 2010-01-14 Central Res Inst Of Electric Power Ind コーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラム
JP2016099294A (ja) * 2014-11-25 2016-05-30 中日本高速道路株式会社 Pc構造物の診断方法

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